説明

底面にラベルまたはシートを貼付したカップ状容器、及び底面に対するラベルまたはシートの貼付方法

【課題】遮光性やガスバリア性を高めるためのラベルまたはシートが、側壁は勿論底面にも一体化されていて、特に、底面のラベルまたはシートについては、穴が全く開いておらず、しかも底面外側に完全に一体化されたカップ状容器を提供すること。
【解決手段】糸尻12によって囲まれた底面11に、第2ラベルまたはシート22を、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂により一体成形されて、例えば、ヨーグルト、コーヒーゼリー、アイスクリーム等の食品を収容するためのカップ状容器に関し、特に、側壁にラベルまたはシートを一体化するとともに、底面にもラベルまたはシートを貼付したカップ状容器、及びこのラベルまたはシートの底面に対する貼付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のカップ状容器としては、特許文献1に開示されているインモールドラベリング成形容器が知られている。この成形容器は、インモールド成形した添加物無添加のポリエチレン系樹脂製射出成形容器であって、該容器の外側壁面及び底外側壁面に、最内層と最外層とが同質の層からなり、さらにその層間に少なくとも強度を有する樹脂フィルム層及びバリアー性基材層とが積層されているラベルを密接着させたものである。この成形容器は、遮光性及び酸素、水蒸気等に対するバリアー性を有し、さらに成形容器内に乳及び乳製品を充填包装して乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の衛生基準に合致するように構成されている。
【0003】
ところが、この特許文献1のインモールドラベリング成形容器では、製造のための射出成形金型に、側壁用及び底面用の2枚のラベルを所定位置に密接着させるための真空吸引装置を設ける必要があったことから、金型が複雑かつ高価となって製造コストの上昇を招いていた。
【0004】
さらに、この成形容器を製造する際には、各型締め及び型開き工程において金型内の所定位置に2枚のラベルのそれぞれを密接着させる工程が必要であるうえ、この金型内に密接着されたラベルの位置がずれないようにするために、樹脂の射出速度を大幅に低減させる必要があった。このため、1回の型締め及び型開き工程に要する時間間隔が長くなることから、製造作業における作業効率が著しく低下し、製造コストの上昇を招いていた。
【0005】
しかも、特許文献1のインモールドラベリング成形容器では、射出成形用のキャビティー金型に設けられたゲート口を通して合成樹脂を射出するように構成されていたことから、底面側ラベルについては、前記ゲート口と対向する位置の底外側壁面に密接着させることができなかった。つまり、当該カップ状容器を成形するにあたって、図5に示すように、底面ラベルについては、ゲート口部分には丸穴等を形成しなければならないため、この丸穴の存在によって底面ラベルにおけるバリアー性が十分ではなく、この底面ラベルの丸穴からの酸素等の透過によって内容物が酸化(劣化)されやすくなっていた。
【0006】
そこで、特許出願人は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目して、特許文献2の出願を行っているのであるが、この特許文献2の発明の目的とするところは、製造コストを低減させながら、その底面におけるバリアー的機能を容易に高めることができるように構成された食品用容器を提供することであった。
【0007】
すなわち、この特許文献2に記載された発明は、図6にも示すように、「底壁と、その底壁の周縁に立設された側壁とより有底筒状に形成された合成樹脂製の容器本体を備え、その容器本体の底面にバリアー的機能を付与するように構成された食品用容器であって、前記容器本体を成形した後、その容器本体の底壁の下面に、バリアー的機能を発揮する機能性フィルムをヒートシールにより溶着することによって製造したことを特徴とする食品用容器」である。
【特許文献1】特開平11−28741号公報、要約、代表図
【特許文献2】特開2002−154592号公報、要約、代表図、段落0031
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、この特許文献2の発明では、当該文献の段落0031に記載されているように、
・このヒートシール装置31を用いて、底壁21の外面に機能性フィルム13を溶着させる際には、まず、容器本体12を上下逆に(底壁21及び支持脚24が上方に位置するように)した状態でマンドレル32上に載置固定させる
・容器本体12の底壁21上に機能性フィルム13を載置する(図6のa参照)
・なおこのとき、機能性フィルム13が底壁21とほぼ同じ大きさに形成されている場合には、底壁21の周縁が支持脚24に取り囲まれていることから、機能性フィルム13の位置合わせをほとんど行う必要がない
・加熱状態のヒートシール熱板33をゆっくりと下動させ、好ましくは機能性フィルム13と底壁21との間の空気を逃がしながら、機能性フィルム13のヒートシール層と底壁21の外面とを熱溶着させる(図6のb参照)ものであるため、次のような解決しなければならない点が存在する。
【0009】
つまり、この特許文献2の発明では、「機能性フィルム13のヒートシール層と底壁21の外面とを熱溶着させる」必要があることから、「底壁13」に熱による悪影響、例えば底壁13の変形や白化現象が発生する可能性がある。
【0010】
また、この特許文献2の容器では、「機能性フィルム13と底壁21との間の空気を逃がしながら」「機能性フィルム13のヒートシール層と底壁21の外面とを熱溶着させる」ものであることから、機能性フィルム13と底壁21との間の空気の逃がしが不十分であると、この閉じこめられた空気が溶着時に加えられる熱によって膨張することになり、熱溶着が不十分となる可能性があるだけでなく、空気の熱膨張によって、「機能性フィルム13」の破損が発生する可能性も出てくるのである。
【0011】
そこで、本発明者等は、底面外側に第2ラベルまたはシートを一体化するにあたって、このラベルやシールの破損が発生せず、一体化も完全にするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、遮光性やガスバリア性を高めるためのラベルまたはシートが、側壁は勿論底面にも一体化されていて、特に、底面のラベルまたはシートについては、穴が全く開いておらず、しかも底面外側に完全に一体化されたカップ状容器、及びこのラベルまたはシートの底面に対する貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に掛かる発明の採った手段は、後述する最良の形態の説明中において使用する符号を付して説明すると、
「底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器10であって、
糸尻12によって囲まれた底面11に、第2ラベルまたはシート22を、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付したことを特徴とするカップ状容器10」
である。
【0014】
すなわち、この請求項1に係るカップ状容器10は、その基本的構成が、図5及び図6に示した従来のカップ状容器と略同じである。つまり、このカップ状容器10は、その底面11に貼付される第2ラベルまたはシート22を除いて、図1に示すように、合成樹脂の射出成形によって一体成形されるものであり、底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えているものである。
【0015】
本発明に係るカップ状容器10の底面11においては、図1及び図2に示すように、図5に示した従来技術ものとは異なって、内側面も外側面も全く凹凸がないものとなっている。つまり、当該カップ状容器10を成形するにあたっては、図1に示したように、底面11について、ゲート口部分に丸穴や凹凸等を形成する必要が殆どないものとなっているのである。
【0016】
また、このカップ状容器10を構成している糸尻12は、当該カップ状容器10全体を机の上に置いた場合等の安定化を図り、かつ、底面11が机の表面にベッタリと接触しないようにするものである。この糸尻12は、側壁13の下端を延長することで形成されるものであり、当該カップ状容器10の多数を積み重ねたときのブロッキングを防止するだけでなく、カップ状容器10全体の外形形状を決定するものである。
【0017】
側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21は、遮光性やガスバリア性を有しているものであり、側壁13を射出成形する際に、側壁13のためのキャビティ内に収納されて当該キャビティ内に合成樹脂が射出されることにより、側壁13と一体化されるものである。勿論、この第1ラベルまたはシート21の一体化場所は、側壁13の内側の場合と外側の場合との両方がある。
【0018】
そして、この請求項1のカップ状容器10においては、図1及び図2に示すように、糸尻12によって囲まれた底面11に、第2ラベルまたはシート22が、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付してある。
【0019】
この第2ラベルまたはシート22は、上述した第1ラベルまたはシート21と同様に、当該カップ状容器10内への湿気や酸素の浸入を防止するガスバリア性や、紫外線の浸入を防止する遮光性を有したものであり、裏面の接着剤層23によって底面11の外側に貼付されるものである。接着剤層23は、常温で合成樹脂表面に粘着するものであり、ヒートシールしなければ、つまり熱を掛けないと接着機能を発揮することができない、というものではない。
【0020】
また、この第2ラベルまたはシート22は、丸穴や凹凸のない底面11に貼付されているから表面に凹凸がないものとなっているだけでなく、成形された後の平らな底面11に貼付されるものであるから、ゲートからの樹脂を通す丸穴等が不要となっている。このため、この第2ラベルまたはシート22は、その表面全体に印刷が可能であるだけでなく、印刷した文字や標章が確実に確認できるものとなっているのである。
【0021】
従って、この請求項1に係るカップ状容器10は、側壁13に設けてある第1ラベルまたはシート21と、糸尻12に貼付してある第2ラベルまたはシート22とによって、ガスバリア性や遮光性が十分になっているとともに、特に、第2ラベルまたはシート22については穴が不要で平らなものであるから、そのガスバリアー性が十分であり、酸素等の透過を確実に防止するものとなっていて、全体として、内容物の酸化(劣化)を生じさせにくいものとなっているのである。
【0022】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、同様に、
「底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器10の糸尻12によって囲まれた底面11に、次の各工程を含んで、第2ラベルまたはシート22を、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付する方法。
【0023】
(1)剥離紙24上に接着剤層23にて貼付されている第2ラベルまたはシート22を、その表面側にて吸着具40の先端で吸着する工程;
(2)カップ状容器10を、糸尻12が外方となるようにしてマンドレル30上に載置する工程;
(3)吸着具40によって吸着している第2ラベルまたはシート22を、マンドレル30上のカップ状容器10の糸尻12内に収納する工程;
(4)吸着具40の吸引口41から空気を排出するか、または吸着具40自体をカップ状容器10の底面11に向けて移動させることにより、第2ラベルまたはシート22の裏面を、カップ状容器10の底面11に対して、接着剤層23の接着力により貼付する工程」
である。
【0024】
すなわち、この請求項2の発明は、請求項1に係るカップ状容器10を形成するためのものであって、底面11に第2ラベルまたはシート22を貼付するための方法であり、工程(1)〜工程(4)を含んで、第2ラベルまたはシート22を、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付する方法である。
【0025】
勿論、カップ状容器10は、上述したように、合成樹脂を材料として一体成形したものであり、底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えているものである。
【0026】
まず、工程(1)では、図示しない剥離紙24上に接着剤層23にて貼付されている第2ラベルまたはシート22の表面側を、図2の(イ)に示すように、各吸引口41から空気を吸引することにより吸着具40の先端(図示下端面)で吸着し、貼付の準備をする。このとき、第2ラベルまたはシート22は穴を形成する必要がないものであったから、各吸引口41の吸引による吸着具40に対する吸着は効果的に行われる。
【0027】
また、第2ラベルまたはシート22の裏面に形成してある接着剤層23は、常温で粘着力を発揮するものであり、剥離紙24から剥離したままの状態で、例えば合成樹脂の表面に接着できるものである。
【0028】
一方、工程(2)において、図2の(イ)に示すように、上述したカップ状容器10を、糸尻12が外方となるようにしてマンドレル30上に載置するのである。このとき、底面11は、その内面も外面も凹凸の全くない平らなものであるから、マンドレル30の上端も平らなものでよく、平らなもの同士を重ねる結果、マンドレル30上の底面11は安定した状態で載置されている。
【0029】
工程(3)では、図2の(ロ)に示すように、吸着具40を降下させることによって、これが吸着していた第2ラベルまたはシート22を、マンドレル30上のカップ状容器10の糸尻12内に収納するのである。
【0030】
そして、工程(4)では、吸着具40の吸引口41から空気を排出するか、あるいは吸着具40を降下させることによって、第2ラベルまたはシート22をカップ状容器10の底面11に向け、接着剤層23の接着力による貼付を行うのである。このとき、底面11の図示上面は凹凸のない平らなものであったから、吸着具40による第2ラベルまたはシート22の押圧だけで、当該第2ラベルまたはシート22の底面11に対する貼付は、空気の閉じ込めをしないで完全な状態でなされる。
【0031】
従って、この請求項2に係る貼付方法によれば、熱が加えられるヒートシールを行わなくても、底面11に対する第2ラベルまたはシート22の貼付が確実に行えるのであり、カップ状容器10の合成樹脂部分に変形や白化を生じさせることなく、第2ラベルまたはシート22によるガスバリア性あるいは遮光性が十分となったカップ状容器10を製造することができる。
【0032】
そして、上述した課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、同様に、
「底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器10の糸尻12によって囲まれた底面11に、次の各工程を含んで、第2ラベルまたはシート22を、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付する方法。
【0033】
(a)多数の第2ラベルまたはシート22が貼付されている剥離紙24の先端を、両ロール51・52間に掛装されて駆動される無端ベルト50によって巻き込みながら搬送することにより、第2ラベルまたはシート22の先端を剥離紙24より剥離する工程;
(b)カップ状容器10を、糸尻12が外方となるようにしてマンドレル30上に載置する工程;
(c)無端ベルト50の先端を、糸尻12内に向けることにより、第2ラベルまたはシート22の先端を糸尻12内面に当接させて糸尻12内に収納する工程;
(d)第2ラベルまたはシート22の裏面を底面11に向け、接着剤層23の接着力による貼付を行う工程」
である。
【0034】
すなわち、この請求項3に係る発明は、上記請求項1に係るカップ状容器10とするために、第2ラベルまたはシート22を糸尻12によって囲まれた底面11の外面に、工程(a)〜工程(d)を経て、貼付する方法である。勿論、この請求項3のカップ状容器10も請求項1のそれと同様なものであることは言うまでもない。
【0035】
さて、まず、工程(a)では、図3の(イ)に示すように、多数の第2ラベルまたはシート22が貼付されている剥離紙24の先端を、両ロール51・52間に掛装されて駆動される無端ベルト50によって巻き込むようにするのである。通常、各第2ラベルまたはシート22は、その裏面に形成した接着剤層23によって長尺な剥離紙24の表面に貼付されているし、それ自体剥離紙24よりも大きな剛性を有したものであるから、この剥離紙24を巻き込みながら無端ベルト50の下側に搬送すれば、各第2ラベルまたはシート22の先端は、図3の(イ)に示すように、その剛性によって剥離紙24から剥離されるのである。
【0036】
一方、工程(b)において、カップ状容器10を、図3の(イ)に示すように、糸尻12が外方となるようにしてマンドレル30上に載置しておく。
【0037】
そこで、工程(c)において、無端ベルト50の先端(図示した例では前方ロール51側)を糸尻12内に向けて、さらに無端ベルト50の搬送を続行すれば、図3の(ロ)に示すように、第2ラベルまたはシート22は、その先端が糸尻12内面に当接してから、糸尻12内に収納されることになるのである。このときには、無端ベルト50を傾斜させておくことにより、第2ラベルまたはシート22の先端が糸尻12と底面11との境界部分に到達するようにしておく。
【0038】
最後に、図4にて示すように、工程(d)として、先端が糸尻12と底面11との境界部分に到達した第2ラベルまたはシート22の裏面を、押さえ板53にて底面11に向けて押し付けることにより、当該第2ラベルまたはシート22の底面11に対する貼付が接着剤層23の接着力によって行われるのである。
【0039】
従って、この請求項3に係る貼付方法によれば、熱が加えられるヒートシールを行わなくても、底面11に対する第2ラベルまたはシート22の貼付が確実に行えるのであり、カップ状容器10の合成樹脂部分に変形や白化を生じさせることなく、第2ラベルまたはシート22によるガスバリア性あるいは遮光性が十分となったカップ状容器10を製造することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上詳述した通り、請求項1に係る発明によれば、
「底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器10であって、
糸尻12によって囲まれた底面11に、第2ラベルまたはシート22を、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付したこと」にその構成上の特徴があり、これにより、遮光性やガスバリア性を高めるためのラベルまたはシート21・22が、側壁13は勿論底面11にも一体化されていて、特に、底面11のラベルまたはシート22については、穴が全く開いておらず、しかも底面外側に完全に一体化されたカップ状容器10を提供することができるのである。
【0041】
ずなわち、この請求項1のカップ状容器10によれば、側壁13に設けてある第1ラベルまたはシート21と、糸尻12に貼付してある第2ラベルまたはシート22とによって、ガスバリア性や遮光性を十分なものとすることができ、第2ラベルまたはシート22については穴が不要で平らなものであるから、そのガスバリアー性を十分なものとすることができて酸素等の透過を確実に防止することができ、内容物の酸化(劣化)を生じさせにくいものとすることができるのである。
【0042】
また、請求項2に係る方法によれば、
「底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器10の糸尻12によって囲まれた底面11に、次の各工程を含んで、第2ラベルまたはシート22を、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付する方法。
【0043】
(1)剥離紙24上に接着剤層23にて貼付されている第2ラベルまたはシート22を、その表面側にて吸着具40の先端で吸着する工程;
(2)カップ状容器10を、糸尻12が外方となるようにしてマンドレル30上に載置する工程;
(3)吸着具40によって吸着している第2ラベルまたはシート22を、マンドレル30上のカップ状容器10の糸尻12内に収納する工程;
(4)吸着具40の吸引口41から空気を排出するか、または吸着具40自体をカップ状容器10の底面11に向けて移動させることにより、第2ラベルまたはシート22の裏面を、カップ状容器10の底面11に対して、接着剤層23の接着力により貼付する工程」
に特徴があり、また、請求項3の方法によれば、
「底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器10の糸尻12によって囲まれた底面11に、次の各工程を含んで、第2ラベルまたはシート22を、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付する方法。
【0044】
(a)多数の第2ラベルまたはシート22が貼付されている剥離紙24の先端を、両ロール51・52間に掛装されて駆動される無端ベルト50によって巻き込みながら搬送することにより、第2ラベルまたはシート22の先端を剥離紙24より剥離する工程;
(b)カップ状容器10を、糸尻12が外方となるようにしてマンドレル30上に載置する工程;
(c)無端ベルト50の先端を、糸尻12内に向けることにより、第2ラベルまたはシート22の先端を糸尻12内面に当接させて糸尻12内に収納する工程;
(d)第2ラベルまたはシート22の裏面を底面11に向け、接着剤層23の接着力による貼付を行う工程」
にその特徴があり、これにより、熱が加えられるヒートシールを行わなくても、底面11に対する第2ラベルまたはシート22の貼付が確実に行えるのであり、カップ状容器10の合成樹脂部分に変形や白化を生じさせることなく、第2ラベルまたはシート22によるガスバリア性あるいは遮光性が十分となった請求項1に係るカップ状容器10を確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態であるカップ状容器10について説明するが、このカップ状容器10は、特にその底面11に対する第2ラベルまたはシート22の貼付が、実施例1または実施例2に係る方法によって行われるものである。
【0046】
まず、請求項1に係るカップ状容器10は、その基本的構成が、図5及び図6に示した従来のカップ状容器と略同じものである。つまり、このカップ状容器10は、その底面11に貼付される第2ラベルまたはシート22を除いて、図1に示したように、合成樹脂の射出成形によって一体成形されるものであり、底面11と、その周囲から立ち上がる側壁13と、底面11の周囲から下方に突出する糸尻12と、側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21とを備えている。
【0047】
このカップ状容器10の底面11は、図1及び図2に示すように、図5に示した従来技術ものとは異なって、内側面も外側面も全く凹凸がないものとなっている。つまり、当該カップ状容器10を成形するにあたっては、図1に示したように、底面11について、ゲート口部分に丸穴や凹凸等を形成する必要が全くないものである。また、このカップ状容器10の糸尻12は、当該カップ状容器10全体を机の上に置いた場合等の安定化を図り、かつ、底面11が机の表面にベッタリと接触しないようにするものである。
【0048】
側壁13に一体化した第1ラベルまたはシート21は、遮光性やガスバリア性を有しているものであり、側壁13を射出成形する際に、側壁13のためのキャビティ内に収納されて当該キャビティ内に合成樹脂が射出されることにより、側壁13と一体化されるものである。勿論、この第1ラベルまたはシート21の一体化場所は、側壁13の内側の場合と外側の場合との両方がある。
【0049】
そして、このカップ状容器10においては、図1及び図2に示したように、糸尻12によって囲まれた底面11に、第2ラベルまたはシート22が、その裏面に形成した接着剤層23によって貼付してある。この第2ラベルまたはシート22は、上述した第1ラベルまたはシート21と同様に、当該カップ状容器10内への湿気や酸素の浸入を防止するガスバリア性や、紫外線の浸入を防止する遮光性を有したものであり、裏面の接着剤層23によって底面11の外側に貼付されるものである。接着剤層23は、常温で合成樹脂表面に粘着するものであり、ヒートシールしなければ、つまり熱を掛けないと接着機能を発揮することができない、というものではない。
【0050】
また、この第2ラベルまたはシート22は、丸穴や凹凸のない底面11に貼付されているから表面に凹凸がないものとなっており、成形された後の平らな底面11に貼付されるるものであるから、ゲートからの樹脂を通す丸穴等がないものである。
【0051】
この第2ラベルまたはシート22は、上述したように、実施例1または実施例2の貼付方法によって、底面11の外面に対して貼付されるものであり、以下では、各実施例毎に項を分けて説明する。
【実施例1】
【0052】
上記第2ラベルまたはシート22は、次の工程(1)〜工程(4)を含んで、その裏面に形成した接着剤層23によって、底面11の外面に貼付される。この第2ラベルまたはシート22の裏面に形成してある接着剤層23は、常温で粘着力を発揮するものであり、剥離紙24から剥離したままの状態で、例えば合成樹脂の表面に接着できるものである。
【0053】
まず、工程(1)では、図示しない剥離紙24上に接着剤層23にて貼付されている第2ラベルまたはシート22の表面側を、図2の(イ)に示したように、各吸引口41から空気を吸引することにより吸着具40の先端(図示下端面)で吸着し、貼付の準備をする。このとき、第2ラベルまたはシート22は穴を形成する必要がないものであったから、各吸引口41の吸引による吸着具40に対する吸着は効果的に行われる。
【0054】
一方、工程(2)において、図2の(イ)に示したように、上述したカップ状容器10を、糸尻12が外方となるようにしてマンドレル30上に載置するのである。このとき、底面11は、その内面も外面も凹凸の全くない平らなものであるから、マンドレル30の上端も平らなものでよく、平らなもの同士を重ねる結果、マンドレル30上の底面11は安定した状態で載置される。
【0055】
工程(3)では、図2の(ロ)に示したように、吸着具40を降下させることによって、これが吸着していた第2ラベルまたはシート22を、マンドレル30上のカップ状容器10の糸尻12内に収納する。
【0056】
そして、工程(4)では、吸着具40の吸引口41から空気を排出するか、あるいは第2ラベルまたはシート22を吸着したままの吸着具40自体を降下させることにより、第2ラベルまたはシート22をカップ状容器10の底面11に押し付けて、接着剤層23の接着力による貼付を行うのである。このとき、底面11の図示上面は凹凸のない平らなものであったから、吸着具40による第2ラベルまたはシート22の押圧だけで、当該第2ラベルまたはシート22の底面11に対する貼付は完全な状態でなされる。
【実施例2】
【0057】
上記第2ラベルまたはシート22は、次の工程(a)〜工程(d)を含んで、その裏面に形成した接着剤層23によって、底面11の外面に貼付される。この第2ラベルまたはシート22の裏面に形成してある接着剤層23は、常温で粘着力を発揮するものであり、剥離紙24から剥離したままの状態で、例えば合成樹脂の表面に接着できるものであることは前述した通りである。
【0058】
さて、まず、工程(a)では、図3の(イ)に示したように、多数の第2ラベルまたはシート22が貼付されている剥離紙24の先端を、両ロール51・52間に掛装されて駆動される無端ベルト50によって巻き込むようにする。通常、各第2ラベルまたはシート22は、その裏面に形成した接着剤層23によって長尺な剥離紙24の表面に貼付されているし、それ自体剥離紙24よりも大きな剛性を有したものであるから、この剥離紙24を巻き込みながら無端ベルト50の下側に搬送すれば、各第2ラベルまたはシート22の先端は、図3の(イ)に示したように、その剛性によって剥離紙24から剥離される。
【0059】
一方、工程(b)において、カップ状容器10を、図3の(イ)に示したように、糸尻12が外方となるようにしてマンドレル30上に載置しておく。
【0060】
そこで、工程(c)において、無端ベルト50の先端(図示した例では前方ロール51側)を糸尻12内に向けて、さらに無端ベルト50の搬送を続行すれば、図3の(ロ)に示したように、第2ラベルまたはシート22の先端を糸尻12内面に当接させて、この糸尻12内に第2ラベルまたはシート22を収納する。このときには、無端ベルト50を傾斜させておくことにより、第2ラベルまたはシート22の先端が糸尻12と底面11との境界部分に到達するようにしておく。
【0061】
無端ベルト50は、図3に示したように、前方ロール51と後方ロール52との間に掛装したものであり、多数の第2ラベルまたはシート22が貼付されている剥離紙24をカップ状容器10に向けて順に送り出すものである。なお、図示はしていないが、前方ロール51の下側には第2ラベルまたはシート22が剥離された剥離紙24を巻き取る巻き取り器が、また、後方ロール52の後方には、多数の第2ラベルまたはシート22を貼付した剥離紙24を戻す巻き戻し器が設置してある。
【0062】
最後に、図4にて示したように、工程(d)として、先端が糸尻12と底面11との境界部分に到達した第2ラベルまたはシート22の裏面を、押さえ板53にて底面11に向けて押し付けることにより、当該第2ラベルまたはシート22の底面11に対する貼付が、接着剤層23によって行われるのである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るカップ状容器の縦断面図である。
【図2】請求項2に係る貼付方法を説明するもので、(イ)は第2ラベルまたはシートを吸着具によって吸着するとともに、カップ状容器をマンドレル上に載置した状態を示す部分断面図、(ロ)は第2ラベルまたはシートを吸着した吸着具を糸尻内に入れた状態を示す部分断面図である。
【図3】請求項3に係る貼付方法を説明するもので、(イ)は無端ベルト50に掛けた剥離紙24を巻き込んで第2ラベルまたはシートの先端を糸尻内に入れようとしている状態を示す部分断面図、(ロ)は第2ラベルまたはシートの先端を糸尻に当接させた状態を示す部分断面図である。
【図4】請求項3に係る貼付方法の最終工程を説明する断面図である。
【図5】従来の技術を示す縦断面図である。
【図6】従来の他の技術を示すもので、(a)はラベルを底面内に収納する状態を示す縦断面図、(b)は底面内に収納したラベルを押圧している状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 カップ状容器
11 底面
12 糸尻
13 側壁
21 第1ラベルまたはシート
22 第2ラベルまたはシート
23 接着剤層
24 剥離紙
30 マンドレル
40 吸着具
41 吸引口
50 無端ベルト
51 前方ロール
52 後方ロール
53 押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、その周囲から立ち上がる側壁と、前記底面の周囲から下方に突出する糸尻と、前記側壁に一体化した第1ラベルまたはシートとを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器であって、
前記糸尻によって囲まれた底面に、第2ラベルまたはシートを、その裏面に形成した接着剤層によって貼付したことを特徴とするカップ状容器。
【請求項2】
底面と、その周囲から立ち上がる側壁と、前記底面の周囲から下方に突出する糸尻と、前記側壁に一体化した第1ラベルまたはシートとを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器の前記糸尻によって囲まれた底面に、次の各工程を含んで、第2ラベルまたはシートを、その裏面に形成した接着剤層によって貼付する方法。
(1)剥離紙上に接着剤層にて貼付されている前記第2ラベルまたはシートを、その表面側にて吸着具の先端で吸着する工程;
(2)前記カップ状容器を、前記糸尻が外方となるようにしてマンドレル上に載置する工程;
(3)前記吸着具によって吸着している前記第2ラベルまたはシートを、前記マンドレル上のカップ状容器の糸尻内に収納する工程;
(4)前記吸着具の吸引口から空気を排出するか、または前記吸着具自体を前記カップ状容器の底面に向けて移動させることにより、前記第2ラベルまたはシートの裏面を、前記カップ状容器の底面に対して、前記接着剤層の接着力により貼付する工程。
【請求項3】
底面と、その周囲から立ち上がる側壁と、前記底面の周囲から下方に突出する糸尻と、前記側壁に一体化した第1ラベルまたはシートとを備えて、射出成形によって一体成形されるカップ状容器の前記糸尻によって囲まれた底面に、次の各工程を含んで、第2ラベルまたはシートを、その裏面に形成した接着剤層によって貼付する方法。
(a)多数の第2ラベルまたはシートが貼付されている剥離紙の先端を、両ロール間に掛装されて駆動される無端ベルトによって巻き込みながら搬送することにより、前記第2ラベルまたはシートの先端を前記剥離紙より剥離する工程;
(b)前記カップ状容器を、前記糸尻が外方となるようにしてマンドレル上に載置する工程;
(c)前記無端ベルトの先端を、前記糸尻内に向けることにより、前記第2ラベルまたはシートの先端を前記糸尻内面に当接させて糸尻内に収納する工程;
(d)前記第2ラベルまたはシートの裏面を前記底面に向け、前記接着剤層の接着力による貼付を行う工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−96390(P2006−96390A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284539(P2004−284539)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(396000422)リスパック株式会社 (53)
【Fターム(参考)】