説明

座屈拘束ブレース

【課題】軽量であってしかも低コストで容易に製作することのできる座屈拘束ブレースを提供する。
【解決手段】座屈拘束ブレース10は、ブレース芯材12と、このブレース芯材が座屈するのを防止する座屈拘束用の補剛材14とを備える。ブレース芯材12を構成する鋼材は一定断面を有する形鋼である。補剛材14は、形鋼の長手方向中間部分をその内部に収容し、形鋼の両端部分がその両端から延出する鋼製の外套管16と、形鋼の長手方向中間部分に当接して形鋼に沿って延在する少なくとも1枚の内挿板18と、形鋼と形鋼に当接した内挿板とから成るアセンブリの外側面と外套管の内側面との間に画成された空間に充填された、セメントと骨材とを含有する充填材20とを備える。更に、そのアセンブリの内部に、充填材が充填されない非充填空間24が画成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は座屈拘束ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
座屈拘束ブレースは制振ダンパの一種であり、建築構造物の骨組にブレースとして組込まれ、地震等によってその骨組に大きな変形が生じたときに振動エネルギを吸収するものである。座屈拘束ブレースは1980年代後半から開発され、現在では様々な構成のものが広く使用されている。座屈拘束ブレースは、長手方向の引張荷重及び圧縮荷重を受けて伸縮するように塑性変形する鋼材から成るブレース芯材と、長手方向の圧縮荷重を受けたブレース芯材が座屈するのを防止するべくブレース芯材の長手方向中間部分を囲繞してブレース芯材を補剛する座屈拘束用の補剛材とを備えている。補剛材としては、ブレース芯材の側面ないし側縁に相対滑り可能に当接する鋼管等の鋼材で構成した補剛材も用いられており、また、ブレース芯材を収容する鋼管とこの鋼管の中に充填したコンクリートやモルタルなどの硬化性充填材とで構成され、硬化した充填材の表面がブレース芯材の表面にアンボンド状態で当接するようにした補剛材も用いられている。座屈拘束ブレースを開示した先行技術文献としては、例えば以下に示す特許文献1、特許文献2などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−291704
【特許文献2】特開2008−002133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋼管の中にモルタルなどを充填して構成した補剛材は、良好な座屈拘束性能を有しており、また、ブレース芯材及び/または鋼管の寸法誤差を充填材により吸収できるメリットがあるが、モルタルなどの充填材が大重量であるため、座屈拘束ブレースの重量が大きくなるという短所がある。一方、ブレース芯材の側面ないし側縁に相対滑り可能に当接する鋼管等で構成された補剛材は、軽量であるものの、ブレース芯材とその補剛材との間の隙間を数mm以下の高い精度で仕上げる必要があるため、製作に手間がかかり製作コストが嵩むという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するべくなされたものであり、本発明の目的は、軽量であってしかも低コストで容易に製作することのできる座屈拘束ブレースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る座屈拘束ブレースは、長手方向の引張荷重及び圧縮荷重が作用したときに伸縮するように塑性変形可能な鋼材から成るブレース芯材と、長手方向の圧縮荷重を受けた前記ブレース芯材が座屈するのを防止するべく前記ブレース芯材を囲繞して前記ブレース芯材を補剛する座屈拘束用の補剛材とを備えた座屈拘束ブレースにおいて、(A)前記ブレース芯材を構成する前記鋼材は一定断面を有する形鋼であり、(B)前記補剛材は、前記形鋼の長手方向中間部分をその内部に収容し、前記形鋼の両端部分がその両端から延出する鋼製の外套管と、前記形鋼の前記長手方向中間部分に当接して前記形鋼に沿って延在する少なくとも1枚の内挿板と、前記形鋼と該形鋼に当接した前記内挿板とから成るアセンブリの外側面と前記外套管の内側面との間に画成された空間に充填された、補剛材として機能し得る剛性を有する充填材とを備えており、(C)前記形鋼と該形鋼に当接した前記内挿板とから成る前記アセンブリの内部に、前記充填材が充填されない非充填空間が画成されていることを特徴とする。
【0007】
前記形鋼の全長のうちの前記補剛材の内部から前記補剛材の外部へ移行する部分に、前記形鋼に沿って延在する鋼製の補強プレートが接合されており、それによって当該部分が前記形鋼に長手方向の荷重が作用しても塑性変形することのない非塑性化部分とされているようにするとよい。また、前記形鋼の全長のうちの前記非塑性化部分の長さが調節されることで、前記形鋼の全長のうちの前記形鋼に長手方向の荷重が作用したときに塑性変形する部分である塑性化部分の長さが調節されるようにするとよい。また、前記補強プレートの少なくとも一部分が前記非充填空間の中に位置しているようにするとよい。
【0008】
前記形鋼は、その外側面の一部が前記内挿板で覆われることなくアンボンド材を介して前記充填材に臨んでいるようにするのもよく、或いは、前記形鋼は、その外側面の一部がアンボンド材を介して前記内挿板及び前記充填材に臨んでいるようにするのもよい。
【0009】
前記形鋼は、H形鋼、I形鋼、T形鋼、Z形鋼、山形鋼、及び溝形鋼から成る部類中から選択された形鋼とするとよい。
【0010】
また、前記形鋼はH形鋼とし、前記少なくとも1枚の内挿板は、前記H形鋼の一方のフランジの一方のエッジと他方のフランジの一方のエッジとに当接する断面コ字形の第1内挿板と、前記H形鋼の一方のフランジの他方のエッジと他方のフランジの他方のエッジとに当接する断面コ字形の第2内挿板とから成るものとし、そして、それら第1及び第2内挿板によって、前記H形鋼のウェブの両側に前記非充填空間が画成されているようにするのもよい。また、前記補剛材の端部に補強材を接合し、それによって、前記形鋼の全長のうちの前記非塑性化部分から前記補剛材の端部への応力伝達を可能とするのもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る座屈拘束ブレースによれば、ブレース芯材を形鋼で構成し、補剛材を外套管と、内挿板と、充填材とで構成し、そして、ブレース芯材を構成する形鋼とその形鋼に当接した内挿板とから成るアセンブリの外側面と外套管の内側面との間に画成される空間に充填材を充填する一方で、ブレース芯材を構成する形鋼とその形鋼に当接した内挿板とから成るアセンブリの内部に、充填材が充填されない非充填空間が画成されるようにしているため、軽量であってしかも低コストで容易に製作することのできる座屈拘束ブレースが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係る座屈拘束ブレースの断面側面図、(B)は(A)のB−B線に沿った横断面図、そして(C)は(A)のC−C線に沿った横断面図である。
【図2】図1の座屈拘束ブレースの変更例に係る座屈拘束ブレースを示した図であり、(A)及び(B)は、夫々、図1の(B)及び(C)に対応した横断面図である。
【図3】(A)及び(B)は、座屈拘束ブレースの補剛材の端部に設けることのできる補強材の具体例を示した図である。
【図4】(A)及び(B)は、図1の座屈拘束ブレースの様々な変更例に係る座屈拘束ブレースの横断面図である。
【図5】(A)〜(D)は、図1の座屈拘束ブレースの様々な変更例に係る座屈拘束ブレースの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1の(A)〜(C)に本発明の実施の形態に係る座屈拘束ブレース10を示した。この座屈拘束ブレース10は制振ダンパの一種であり、建築構造物の骨組にブレースとして組込まれ、地震等によってその骨組に大きな変形が生じたときに振動エネルギを吸収するものである。
【0014】
座屈拘束ブレース10はブレース芯材12を備えており、このブレース芯材12は長手方向の引張荷重及び圧縮荷重が作用したときに伸縮するように塑性変形可能な細長い鋼材から成り、その鋼材としては、例えば低降伏点鋼などをはじめとする様々な種類の鋼材が用いられ、このブレース芯材12が組成変形することで振動エネルギが吸収される。本発明においては、ブレース芯材12を構成する鋼材として、一定断面を有する形鋼を用いるようにしており、特に図1に示した実施の形態では、その形鋼としてH形鋼が用いられている。このH形鋼はビルト材であってもよく、ロール材であってもよい。
【0015】
座屈拘束ブレース10は更に補剛材14を備えており、この補剛材14は、長手方向の圧縮荷重を受けたブレース芯材12が座屈するのを防止するべくブレース芯材12の長手方向中間部分を囲繞してブレース芯材12を補剛する座屈拘束用の補剛材である。本発明においては、この補剛材14を、鋼製の外套管16と、少なくとも1枚の内挿板18と、充填材20とを備えた構成のものとしている。特に図1に示した実施の形態では、外套管16として丸形鋼管が用いられており、内挿板18として一対の断面コ字形の鋼板(第1内挿板18−1及び第2内挿板18−2)が用いられており、また充填材20としてモルタルが用いられている。
【0016】
外套管16は、その内部に、ブレース芯材12を構成するH形鋼の長手方向中間部分を収容しており、このH形鋼12の両端部分が外套管16の両端から延出している。この座屈拘束ブレース10を建築構造物に装備する際には、ブレース芯材12の両端を例えばガセットプレート(不図示)などを介して建築構造物の骨組の柱と梁とに夫々連結するなどして、その取付けが行われる。
【0017】
内挿板18(第1内挿板18−1及び第2内挿板18−2)は、ブレース芯材12を構成するH形鋼の長手方向中間部分に当接しており、このH形鋼12に沿って延在し、またこのH形鋼12の長手方向中間部分に亘って延在している。より詳しくは、断面コ字形の第1内挿板18−1は、H形鋼12の一方のフランジ(図中の上側フランジ)の一方のエッジ(図中の左側エッジ)と他方のフランジ(図中の下側フランジ)の一方のエッジ(図中の左側エッジ)とに当接しており、同じく断面コ字形の第2内挿板18−2は、H形鋼12の一方のフランジの他方のエッジ(図中の右側エッジ)と他方のフランジの他方のエッジ(図中の右側エッジ)とに当接している。尚、内挿板18(第1内挿板18−1及び第2内挿板18−2)とH形鋼12のフランジとは、互いに当接しているだけであって、互いに接合されてはおらず、即ち互いにアンボンド状態とされている。そのため、H形鋼12が長手方向の引張荷重及び圧縮荷重を受けて伸縮するときには、H形鋼12のフランジのエッジと内挿板18(第1内挿板18−1及び第2内挿板18−2)との当接部では相対摺動が発生する。
【0018】
図1の(B)及び(C)に示したように、ブレース心材12を構成するH形鋼とこのH形鋼に当接した一対の内挿板18−1及び18−2とから成るアセンブリの外側面(外周面)と、外套管16の内側面(内周面)との間に、空間が画成されており、モルタル20はこの空間に充填されている。尚、この空間に充填する充填材はモルタルに限られず、補剛材として機能し得る剛性を有する様々な充填材を用いることができ、例えばコンクリートを用いるようにしてもよく、また、樹脂材料などを用いるようにしてもよい。
【0019】
ブレース芯材12を構成しているH形鋼は、その外表面の一部(上側フランジの上面の幅方向中央領域、及び、下側フランジの下面の幅方向中央領域)が内挿板18で覆われておらず、その部分の表面にはアンボンド材22が設けられており、従って、内挿板18で覆われていない当該部分はアンボンド材22を介して充填材であるモルタル20に臨んでいる。アンボンド材22を設ける方法としては、例えば、粘着テープの形態のアンボンドテープを当該部分に貼着する方法、アンボンド塗料を当該部分に塗布する方法、それに、薄い鋼板をアンボンド材として当該部分に当接させる方法などがあり、更にその他の方法を用いることも可能である。以上の構成によれば、ブレース芯材12を構成するH形鋼は、内挿板18とアンボンド材22とによって、充填材であるモルタル20に対して完全にアンボンド状態とされている。
【0020】
更に、ブレース芯材12を構成しているH形鋼とこのH形鋼に当接した内挿板18(内挿板18−1及び18−2)とから成るアセンブリの内部に、充填材が充填されない非充填空間24−1及び24−2が画成されており、かかる非充填空間は、ブレース芯材12を構成しているH形鋼のウェブの両側に位置している。
【0021】
また、図1の(A)及び(C)に示したように、ブレース芯材12を構成しているH形鋼には、その全長のうちの、補剛材14の内部から補剛材14の外部へ移行する部分A0に、このH形鋼12に沿って延在する複数の鋼製の補強プレート26が接合されており、それによって当該部分A0が、H形鋼12に長手方向の荷重が作用しても塑性変形することのない非塑性化部分とされている。それら補強プレート26の各々は、その少なくとも一部分が非充填空間24−1、24−2の中に位置している。また、それら補強プレート26の各々は、H形鋼12の上側フランジと下側フランジとに亘って溶接されている。
【0022】
このようにH形鋼12は、その全長のうち、補強プレート26が接合されて補強された2箇所の補強部分A0が非塑性化部分とされており、それら非塑性化部分A0の間の中間部分A1がH形鋼12に長手方向の荷重が作用したときに塑性変形する塑性化部分とされている。この構成によれば、H形鋼12に接合する補強プレート26の長さを適宜設定して非塑性化部分A0の長さを調節することによって、塑性化部分A1の長さを調節することができる。また、非塑性化部分A0は、H形鋼12に長手方向の荷重が作用したときの座屈が補強プレート26により防止されている。即ち、非塑性化部分A0のうち、補剛材14の外部へ突出している部分は、補剛材14では補剛されておらず、その代わりに補強プレート26で補剛されている。
【0023】
図2の(A)及び(B)は、図1の座屈拘束ブレースの変更例に係る座屈拘束ブレースを示した図であり、(A)及び(B)は、夫々、図1の(B)及び(C)に対応した横断面図である。図1の座屈拘束ブレースでは、ブレース芯材を構成しているH形鋼の外表面のうち、内装板で覆われていない部分(上側フランジの上面の幅方向中央領域、及び、下側フランジの下面の幅方向中央領域)の表面にアンボンド材が設けられ、当該部分がアンボンド材を介して充填材であるモルタルに臨んでいたのに対して、図2の座屈拘束ブレース10では、ブレース材を構成しているH形鋼12の外表面のうち、上側フランジの上面全域及び左右両側縁、並びに、下側フランジの下面全域及び左右両側縁の表面にアンボンド材22が設けられ、当該部分がアンボンド材22を介して内挿板18及び充填材22に臨んでいる。図1の座屈拘束ブレースと相違しているのはこのアンボンド材22が設けられている領域だけであり、その他の点では同一構成であるため、図2の(A)及び(B)では、図1の座屈拘束ブレースの構成要素に対応する構成要素には同一の参照符号を付してあり、それら構成要についての説明は省略する。使用するアンボンド材22の種類によっては、図1の座屈拘束ブレースよりも、図2の座屈拘束ブレースの方が低コストで製造できることがある。
【0024】
また、補剛材14の端部を補強材によって補強するのもよい。図2の(A)及び(B)に、図1の座屈拘束ブレース10の補剛材14の端部に設けることのできる補強材の2つの具体例を示した。図2の(A)に示した補強材28は、外套管16の口縁部の外周に接合されたフランジ状の鋼板から成る補強材である。この形態の補強材28は、並設した複数の座屈拘束ブレースの夫々の補剛材の端部を共通する補強材で補強するのにも適している。図2の(B)に示した補強材30は、外套管16の口縁部の外周に嵌装して接合された厚肉の鋼管から成る補強材である。上で説明したように、ブレース芯材を構成するH形鋼12に補強プレート26を接合して補強する場合には、それによって形成されるH形鋼12の非塑性化部分A0の剛性が大きいことから、その非塑性化部分A0から補剛材14の端部へ大きな曲げモーメントが作用するようになるため、補剛材14の端部にこのような補強材28、30を接合することで、非塑性化部分A0から補剛材14の端部への応力伝達を可能にしておくことが好ましい。
【0025】
図1に示した実施の形態に係る座屈拘束ブレース10には、様々な変更を加えることが可能である。図4の(A)及び(B)、並びに、図5の(A)〜(D)は、そのような変更を加えた変更例に係る座屈拘束ブレースを示した横断面図である。
【0026】
図4の(A)に示した変更例に係る座屈拘束ブレース10は、外套管16として、丸形鋼管に替えて角形鋼管を用いたものであり、その他の点に関しては図1に示した座屈拘束ブレース10と同一構成である。また、図4の(B)に示した変更例に係る座屈拘束ブレース10は、外套管16として、ロール材の鋼管ではなく、ビルト材の角形鋼管を用いたものである。ブレース芯材12を構成するH形鋼は、その外側面の全領域が一対の内挿板18−1、18−2で覆われており、アンボンド材は用いられていない。その他の点に関しては図1に示した座屈拘束ブレース10と同一構成である。
【0027】
図5の(A)及び(B)に示した変更例に係る座屈拘束ブレース10は、ブレース芯材12を構成する形鋼として、H形鋼に替えて溝形鋼を用いたものであり、(A)に示した変更例では、溝形鋼の外側面のうち内挿版18で覆われていない部分だけにアンボンド材22が設けられ、(B)に示した変更例では、内挿版18に接する部分にもアンボンド材22が設けられている。図5の(C)に示した変更例に係る座屈拘束ブレース10は、ブレース芯材12を構成する形鋼として、H形鋼に替えて山形鋼を用いたものである。図5の(D)に示した変更例に係る座屈拘束ブレース10は、ブレース芯材12を2本の山形鋼で構成し、それら山形鋼の各々に内挿板18を当接させたものである。
【0028】
図5の(A)〜(D)の夫々の変更例に係る座屈拘束ブレース10においても、外套管16はブレース芯材12を構成する形鋼の長手方向中間部分をその内部に収容しており、その形鋼の両端部分が外套管16の両端から延出するようにしてある。また、内挿板18は、ブレース芯材12を構成する形鋼の長手方向中間部分に当接しており、その形鋼に沿って延在し、その形鋼の長手方向中間部分に亘って延在している。また更に、ブレース心材12を構成する形鋼とその形鋼に当接した内挿板とから成るアセンブリの外側面と、外套管の内側面との間に空間が画成されており、その空間に充填材20が充填されることで補剛材が構成されている。この充填材20は、補剛材として機能し得る剛性を備えたものである。また、ブレース芯材12を構成している形鋼は、その外表面の一部が内挿板18で覆われておらず、その部分の表面にはアンボンド材22が設けられており、従って、当該部分はアンボンド材22を介して充填材20に臨んでいる。また、ブレース芯材12を構成する形鋼とこの形鋼に当接した内挿板18とから成るアセンブリの内部に、充填材が充填されない非充填空間24が画成されている。
【0029】
更に、図5の(A)〜(D)の夫々の変更例に係る座屈拘束ブレース10においても、図1の実施の形態と同様に、ブレース芯材12を構成する形鋼の全長のうち、外套管16と充填材20とで構成される補剛材の内部から、この補剛材の外部へ移行する部分に、形鋼12に沿って延在する鋼製の補強プレートを接合して補強することで、当該部分を非塑性化部分とするのもよく、また、補剛材の端部(外套管16の端部)を補強材によって補強するのもよい。
【0030】
以上の変更例の説明から明らかなように、本発明においては、ブレース芯材を構成する形鋼として様々な形鋼を用いることができ、特に、H形鋼、I形鋼、T形鋼、Z形鋼、山形鋼、及び溝形鋼などは、本発明を実施する上で好適に用いることのできる形鋼である。
【0031】
以上から明らかなように、本発明に係る座屈拘束ブレースによれば、ブレース芯材を形鋼で構成し、補剛材を外套管と、内挿板と、充填材とで構成し、そして、ブレース芯材を構成する形鋼とその形鋼に当接した内挿板とから成るアセンブリの外側面と外套管の内側面との間に画成される空間に充填材を充填する一方で、ブレース芯材を構成する形鋼とその形鋼に当接した内挿板とから成るアセンブリの内部に、充填材が充填されない非充填空間が画成されるようにしている。そのため、軽量であってしかも低コストで容易に製作することのできる座屈拘束ブレースが得られる。
【符号の説明】
【0032】
10 座屈拘束ブレース
12、12−1、12−2 ブレース芯材
14 補剛材
16 外套管
18、18−1、18−2 内挿板
20 充填材
22 アンボンド材
24、24−1、24−2 非充填空間
26 補強プレート
28 補強プレート
30 補強プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の引張荷重及び圧縮荷重が作用したときに伸縮するように塑性変形可能な鋼材から成るブレース芯材と、長手方向の圧縮荷重を受けた前記ブレース芯材が座屈するのを防止するべく前記ブレース芯材を囲繞して前記ブレース芯材を補剛する座屈拘束用の補剛材とを備えた座屈拘束ブレースにおいて、
(A)前記ブレース芯材を構成する前記鋼材は一定断面を有する形鋼であり、
(B)前記補剛材は、
前記形鋼の長手方向中間部分をその内部に収容し、前記形鋼の両端部分がその両端から延出する鋼製の外套管と、
前記形鋼の前記長手方向中間部分に当接して前記形鋼に沿って延在する少なくとも1枚の内挿板と、
前記形鋼と該形鋼に当接した前記内挿板とから成るアセンブリの外側面と前記外套管の内側面との間に画成された空間に充填された、補剛材として機能し得る剛性を有する充填材とを備えており、
(C)前記形鋼と該形鋼に当接した前記内挿板とから成る前記アセンブリの内部に、前記充填材が充填されない非充填空間が画成されている、
ことを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記形鋼の全長のうちの前記補剛材の内部から前記補剛材の外部へ移行する部分に、前記形鋼に沿って延在する鋼製の補強プレートが接合されており、それによって当該部分が前記形鋼に長手方向の荷重が作用しても塑性変形することのない非塑性化部分とされていることを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記形鋼の全長のうちの前記非塑性化部分の長さが調節されることで、前記形鋼の全長のうちの前記形鋼に長手方向の荷重が作用したときに塑性変形する部分である塑性化部分の長さが調節されることを特徴とする請求項2記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記形鋼の全長のうちの前記非塑性化部分は、前記形鋼に長手方向の荷重が作用したときの座屈が前記補強プレートにより防止されていることを特徴とする請求項2記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記補強プレートの少なくとも一部分が前記非充填空間の中に位置していることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記形鋼は、その外側面の一部が前記内挿板で覆われることなくアンボンド材を介して前記充填材に臨んでいることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の座屈拘束ブレース。
【請求項7】
前記形鋼は、その外側面の一部がアンボンド材を介して前記内挿板及び前記充填材に臨んでいることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の座屈拘束ブレース。
【請求項8】
前記形鋼は、H形鋼、I形鋼、T形鋼、Z形鋼、山形鋼、及び溝形鋼から成る部類中から選択された形鋼であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の座屈拘束ブレース。
【請求項9】
前記形鋼はH形鋼であり、前記少なくとも1枚の内挿板は、前記H形鋼の一方のフランジの一方のエッジと他方のフランジの一方のエッジとに当接する断面コ字形の第1内挿板と、前記H形鋼の一方のフランジの他方のエッジと他方のフランジの他方のエッジとに当接する断面コ字形の第2内挿板とから成り、それら第1及び第2内挿板によって、前記H形鋼のウェブの両側に前記非充填空間が画成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の座屈拘束ブレース。
【請求項10】
前記補剛材の端部に補強材を接合し、それによって、前記形鋼の全長のうちの前記非塑性化部分から前記補剛材の端部への応力伝達を可能としたことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の座屈拘束ブレース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−237119(P2012−237119A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105793(P2011−105793)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】