説明

座標検出装置及び座標検出方法

【課題】二点接触における位置検出が可能な座標検出装置を提供する。
【解決手段】絶縁体からなる四角形状の基板上に形成された抵抗膜と、抵抗膜に電圧を印加するための電源と、電源と接続されている四隅の抵抗膜上に設けられた4個の電極と、電源と各々の電極との間に設けられた4個のスイッチと、各々の電極に流れる電流を測定するための4個の電流測定器と、抵抗膜と接触させることにより抵抗膜における接触位置座標を検出するため接地されている導電膜を有し、スイッチの開閉を行うことにより、4個の電極に順次電圧を印加し、抵抗膜と前記導電膜と接触させ、電極に接続されている4個の電流測定器により順次各々の電流値を測定し、各々の電流値に基づき得られた抵抗値により、各々の電極と抵抗膜と導電膜との接触位置を検出することを特徴とする座標検出装置を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標検出装置及び座標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンピュータシステムの入力デバイスとして、タッチパネルがある。タッチパネルは、ディスプレイ上に搭載されて、ディスプレイ上の座標位置を検出し、座標位置に応じた検出信号を取得できる。直接入力を可能として、簡単に、かつ、直感的な入力が可能となるものである。
【0003】
タッチパネルには、抵抗膜方式、光学方式、容量結合方式など種々の方式が提案されている。タッチパネルとしては、構造がシンプルで、制御系も簡単な抵抗膜方式のものが一般的である。低抵抗方式のタッチパネルには、抵抗膜上への電極の配置の仕方により4線式、5線式、8線式等がある。
【0004】
このうち、5線式のタッチパネルは、4線式や8線式の抵抗膜方式のタッチパネルと比較して、操作面側に配置される上部基板の導電膜は、単に電位読取専用となっているため、4線式や8線式の欠点であるエッジ摺動の課題がない。このため、厳しい使用環境や長期にわたる耐久年数が望まれる市場において使用されている。
【0005】
図12に5線式抵抗膜方式タッチパネルの構成図を示す。5線式抵抗膜方式タッチパネル1は、上部基板11と下部基板12から構成されている。下部基板12には、ガラス基板21上に透明抵抗膜22が一面に形成されており、透明抵抗膜22上にX軸座標検出用電極23、24及びY軸座標検出用電極25、26が形成されている。上部基板11には、フィルム基板31上に透明抵抗膜32が形成されており、透明抵抗膜32上に座標検出用電極33が形成されている。
【0006】
最初に、X軸座標検出用電極23、24に電圧を印加することにより、下部基板12における透明抵抗膜22のX軸方向に電位分布が発生する。このとき、下部基板12の透明抵抗膜22における電位を検出することにより、上部基板11の下部基板12への接触位置のX座標を検出することが可能となる。次に、Y軸座標検出用電極25、26に電圧を印加することにより、下部基板12における透明抵抗膜22Y軸方向に電位分布が発生する。このとき、下部基板12の透明抵抗膜22における電位を検出することにより、上部基板11の下部基板12への接触位置のY座標を検出することができる。
【0007】
特許文献1には、このような座標検出装置であって、検出位置の精度を高めた座標検出装置が開示されている。
【特許文献1】特開平10−83251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている座標検出装置では、一点が接触している場合は、精度よく検出することができるものの、二点で接触している場合には、二点の区別をつけることができず、二点の接触位置の検出をすることが、まったくできなかった。また、二点の接触位置を検出する方法は提案されているものの、透明抵抗膜を分割することによるものが殆どであり、透明抵抗膜を分割することにより、分割境界が浮き出てしまい、視認的な品位を低下させてしまう。このような視認的な品位の低下は、タッチパネル等の表示パネルにおいては、致命的となる場合があり、透明抵抗膜を分割することなく、二点で接触している場合の接触位置を検出する方法が望まれていた。
【0009】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、美観や視認的な品位を損なうことなく、二点で接触している場合であっても、その座標位置を検出することが可能な座標検出装置及び座標検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶縁体からなる四角形状の基板上に形成された抵抗膜と、前記抵抗膜に電圧を印加するための電源と、前記電源と接続されている前記基板の四隅の抵抗膜上に設けられた4個の電極と、前記電源と各々の前記電極との間に設けられた4個のスイッチと、各々の前記電極に流れる電流を測定するための4個の電流測定器と、前記抵抗膜と接触させることにより前記抵抗膜における接触位置座標を検出するため接地されている導電膜と、を有し、前記スイッチの開閉を行うことにより、前記4個の電極に順次電圧を印加し、前記抵抗膜と前記導電膜と接触させ、前記電極に接続されている4個の電流測定器により順次各々の電流値を測定し、前記各々の電流値に基づき得られた抵抗値により、各々の電極と前記抵抗膜と前記導電膜との接触位置を検出することを特徴とする。
【0011】
又、本発明は、前記抵抗膜と前記導電膜との接触位置は、一点又は二点であることを特徴とする。
【0012】
又、本発明は、前記導電膜は、可視領域で透明である材料であって、前記抵抗膜のシート抵抗値に対し、低いシート抵抗値であることを特徴とする。
【0013】
又、本発明は、前記抵抗膜の四辺に沿うように、抵抗膜除去領域を形成したことを特徴とする。
【0014】
又、本発明は、前記導電膜は、ITO、導電ポリマー、SnO、In又はZnOを含む材料により構成されていることを特徴とする。
【0015】
又、本発明は、前記導電膜は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、ポリオレフィン又はミクロオレフィンポリマー等からなる基板上に形成されているものであることを特徴とする。
【0016】
又、本発明は、絶縁体からなる四角形状の基板上に形成された抵抗膜と、前記抵抗膜に電圧を印加するための電源と、前記電源と接続されている前記基板の四角の抵抗膜上に設けられた4個の電極と、前記電源と各々の前記電極との間に設けられた4個のスイッチと、各々の前記電極に流れる電流を測定するための4個の電流測定器と、前記抵抗膜と接触させることにより前記抵抗膜における接触位置座標を検出するため接地されている導電膜と、を有する座標検出装置における座標検出方法であって、前記4つのスイッチのうち第1のスイッチのみを閉じ、前記抵抗膜に電圧を印加し、前記第1のスイッチに直列に接続された第1の電流計により電流を測定する第1の測定工程と、前記第1のスイッチを開き、その後、前記4つのスイッチのうち第2のスイッチのみを閉じ、前記抵抗膜に電圧を印加し、前記第2のスイッチに直列に接続された第2の電流計により電流を測定する第2の測定工程と、前記第2のスイッチを開き、その後、前記4つのスイッチのうち第3のスイッチのみを閉じ、前記抵抗膜に電圧を印加し、前記第3のスイッチに直列に接続された第3の電流計により電流を測定する第3の測定工程と、前記第3のスイッチを開き、その後、前記4つのスイッチのうち第4のスイッチのみを閉じ、前記抵抗膜に電圧を印加し、前記第4のスイッチに直列に接続された第4の電流計により電流を測定する第4の測定工程と、前記第1から第4の測定工程により測定された電流値により各々の抵抗値を算出する工程と、
前記算出された抵抗値より、前記抵抗膜と前記導電膜との一点または二点の接触位置を算出する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
又、本発明は、前記接触位置を算出する工程において、算出された前記抵抗値のうち最も低い抵抗値の値と、前記最も低い抵抗値に対応する電極に隣接する電極におけるいずれか一方の抵抗値の値により、二点のうち一点の接触位置を算出することを特徴とする。
【0018】
又、本発明は、前記算出された各々の抵抗値に基づき、前記抵抗値の抵抗が並列に接続されている場合の合成抵抗の値を算出し、前記合成抵抗の抵抗値の値に基づき、接触位置が一点であるか二点であるかの判別を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、座標検出装置において、二点で接触している場合であっても、各々の接触位置の位置座標の検出をすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、以下に説明する。本実施の形態は、座標検出装置に関するものである。
【0021】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態は、二点で接触させた場合においても座標位置を検出することが可能な、座標検出装置と座標検出方法に関するものである。
【0022】
(座標検出装置)
本実施の形態における座標検出装置について、具体的に図1、図2に基づき説明する。図1は、本実施の形態における座標検出装置の斜視図であり、図2は、断面図である。
【0023】
本実施の形態における座標検出装置は、上部基板110と下部基板120により構成されている。上部基板110は、フレキシブルな可視光を透過する長方形状の透明基板であって、その表面の下部基板120側には可視光を透過し導電性を有する透明導電膜111が形成されている。一方、下部基板120は、可視光を透過する長方形状の透明基板であって、その表面の上部基板110側には、可視光を透過する透明抵抗膜121が形成されている。尚、図1では、上部基板110、下部基板120は省略されている。
【0024】
下部基板120上の透明抵抗膜121の四隅には、透明抵抗膜121に電圧を印加するための4個の電極が形成されている。具体的には、第1の電極131、第2の電極132、第3の電極133、第4の電極134が透明抵抗膜121上の四隅に形成されている。この4個の電極、第1の電極131、第2の電極132、第3の電極133、第4の電極134には、各々の電極に電圧を印加するか否かの制御するためのスイッチが設けられている。具体的には、第1のスイッチ141、第2のスイッチ142、第3のスイッチ143、第4のスイッチ144が各々の電極に対応して接続されている。また、各々の電極に流れる電流を測定するための電流計測器である第1の電流計151、第2の電流計152、第3の電流計153、第4の電流計154が各々の電極に対応して接続されており、更には、電圧Vを印加するための電源に接続されている。
【0025】
本実施の形態における座標検出装置では、接地されている上部基板110を指等で押すことにより、下部基板120と上部基板110が接触する。即ち、下部基板20における透明抵抗膜121と上部基板110における透明導電膜111とが接触することにより、下部基板120上の透明抵抗膜121の接触位置における電位は0〔V〕となり、電圧Vの電源より電圧を印加することにより、各々の電流計151、152、153、154に流れる電流量を計測し位置検出を行うものである。図1では、二点の接触の場合を示しており、第1の接触位置101、第2の接触位置102において接触している様子を抽象的に示している。
【0026】
なお、上述のような位置検出を行うために、下部基板120に形成されている透明抵抗膜よりも上部基板110に形成されている透明導電膜の方が、シート抵抗が低くなるように構成されている。即ち、下部基板120上の透明抵抗膜121における接触位置の電位をできるだけ0〔V〕に近い値とするためには、上部基板110に形成されている透明導電膜111の抵抗は低くする必要があり、発明者の経験に基づくならば、透明導電膜111のシート抵抗値は、透明抵抗膜121のシート抵抗値の1/10以下であることが必要である。この条件を満たさないと、本実施の形態における座標検出装置は、位置検出の精度が極端に低下し、位置検出を行うことができなくなってしまうことが、発明者の経験上の知見により得られているからである。
【0027】
また、このような機能を発揮するため、透明導電膜11は、可視域で透明となるITO、導電ポリマー、SnO、In又はZnOを含む材料により形成されている。また、上部基板110を指等で押すことにより上部基板110に形成された透明導電膜111と下部基板120に形成されている透明抵抗膜121とを接触させるためには、上部基板110は、曲げやすい材料、即ち、可撓性を有する材料により構成されている必要がある。具体的に、上部基板110を構成する材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、ポリオレフィン又はミクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0028】
(座標検出方法)
次に、図3に基づき本実施の形態における座標検出方法について説明する。
【0029】
前述した位置検出装置において、第1の接触位置101と、第2の102の二点で接触させた場合について説明する。即ち、上部基板110における2点を指等で押すことにより、上部基板110における透明導電膜111と下部基板120における透明抵抗膜121とが、第1の接触位置101と、第2の接触位置102の二点で接触している場合である。
【0030】
最初に、ステップ102(S102)に示すように、第1の電極131に電圧Vを印加する。具体的には、図4に示すように、第1のスイッチ141のみを閉じ、第2のスイッチ142、第3のスイッチ143、第4のスイッチ144を開いた状態にする。このようにして、電圧Vの電源は、第1の電流計151を介し第1の電極131と接続される。
【0031】
この際、上部基板110における透明導電膜111と下部基板120における透明抵抗膜21とが、第1の接触位置101と、第2の接触位置102の二点で接触しており、透明導電膜111は接地されているため、電圧Vの電源から第1の電流計151を介し、第1の電極131から第1の接触位置101と、第2の接触位置102より、透明導電膜111に電流が流れる。
【0032】
次に、ステップ104(S104)に示すように、第1の電流計151に流れる電流量I1を測定する。厳密には、第1の電流計151により検出される電流の値は、第1の電極131から第1の接触位置101に流れる電流と、第1の電極131から第2の接触位置102に流れる電流と合計した値となる。しかしながら、流れる電流としては、第1の電極131から近い接触位置に流れる電流が支配的となり、この場合は、図に示すように第1の接触位置101を介し流れる電流が支配的となる。このため、第2の接触位置102を介し流れる電流を無視し、第1の電流計151により計測される電流I1は、第1の接触位置101を介し流れる電流であるものとみなす。後述するように、このようなみなしを行っても位置検出装置としての機能は十分確保される。これにより、電流I1は、第1の電極131と第1の接触位置101の間の透明抵抗膜121を流れる電流であるものとし、後述するように、電源の電圧Vと第1の電流計151により計測された電流I1より、第1の電極131と第1の接触位置101の間の透明抵抗膜121の抵抗値R1を算出する。
【0033】
尚、本実施の形態は、座標検出装置であるが、タッチパネル等に用いるものであり、指等で押す場合を想定しているため、極めて高い位置精度を要求するものではなく、おおまかな位置を検出することができれば機能として十分である。よって、二点で接触している場合、電流の流れが支配的となっている接触位置のみを介して電流が流れるものとみなしても、座標検出装置としての機能は十分に発揮される。
【0034】
次に、ステップ106(S106)に示すように、第2の電極132に電圧Vを印加する。具体的には、図5に示すように、第2のスイッチ142のみを閉じ、第1のスイッチ141、第3のスイッチ143、第4のスイッチ144を開いた状態にする。このようにして、電圧Vの電源は、第2の電流計152を介し第2の電極132と接続される。
【0035】
この際、上部基板110における透明導電膜111と下部基板120における透明抵抗膜121とが、第1の接触位置101と、第2の接触位置102の二点で接触しており、透明導電膜111は接地されているため、電圧Vの電源から第2の電流計152を介し、第2の電極132から第1の接触位置101と、第2の接触位置102より、透明導電膜111に電流が流れる。
【0036】
次に、ステップ108(S108)に示すように、第2の電流計152に流れる電流量I2を測定する。厳密には、第2の電流計152により検出される電流の値は、第2の電極132から第1の接触位置101に流れる電流と、第2の電極132から第2の接触位置102に流れる電流と合計した値となる。しかしながら、流れる電流としては、第2の電極132から近い接触位置に流れる電流が支配的となり、この場合は、図に示すように第1の接触位置101を介し流れる電流が支配的となる。このため、第2の接触位置102を介し流れる電流を無視し、第2の電流計152により計測される電流I2は、第1の接触位置101を介し流れる電流であるものとみなす。前述したように、このようなみなしを行っても位置検出装置としての機能は十分確保される。これにより、電流I2は、第2の電極132と第1の接触位置101の間の透明抵抗膜121を流れる電流であるものとし、後述するように、電源の電圧Vと第2の電流計152により計測された電流I2より、第2の電極132と第1の接触位置101の間の透明抵抗膜21の抵抗値R2を算出する。
【0037】
次に、ステップ110(S110)に示すように、第3の電極133に電圧Vを印加する。具体的には、図6に示すように、第3のスイッチ143のみを閉じ、第1のスイッチ141、第2のスイッチ142、第4のスイッチ144を開いた状態にする。このようにして、電圧Vの電源は、第3の電流計153を介し第3の電極133と接続される。
【0038】
この際、上部基板110における透明導電膜11と下部基板120における透明抵抗膜21とが、第1の接触位置101と、第2の接触位置102の二点で接触しており、透明導電膜111は接地されているため、電圧Vの電源から第3の電流計153を介し、第2の電極133から第1の接触位置101と、第2の接触位置102より、透明導電膜111に電流が流れる。
【0039】
次に、ステップ112(S112)に示すように、第3の電流計153に流れる電流量I3を測定する。厳密には、第3の電流計153により検出される電流の値は、第3の電極133から第1の接触位置101に流れる電流と、第3の電極133から第2の接触位置102に流れる電流と合計した値となる。しかしながら、流れる電流としては、第3の電極133から近い接触位置に流れる電流が支配的となり、この場合は、図に示すように第2の接触位置102を介し流れる電流が支配的となる。このため、第1の接触位置101を介し流れる電流を無視し、第3の電流計153により計測される電流I3は、第2の接触位置102を介し流れる電流であるものとみなす。前述したように、このようなみなしを行っても位置検出装置としての機能は十分確保される。これにより、電流I3は、第3の電極132と第2の接触位置102の間の透明抵抗膜121を流れる電流であるものとし、後述するように、電源の電圧Vと第3の電流計153により計測された電流I3より、第3の電極133と第2の接触位置102の間の透明抵抗膜121の抵抗値R3を算出する。
【0040】
次に、ステップ114(S114)に示すように、第4の電極134に電圧Vを印加する。具体的には、図7に示すように、第4のスイッチ144のみを閉じ、第1のスイッチ141、第2のスイッチ142、第3のスイッチ143を開いた状態にする。このようにして、電圧Vの電源は、第4の電流計154を介し第4の電極134と接続される。
【0041】
この際、上部基板110における透明導電膜111と下部基板120における透明抵抗膜121とは、第1の接触位置101と、第2の接触位置102の二点で接触しており、透明導電膜11は接地されているため、電圧Vの電源から第4の電流計154を介し、第4の電極134から第1の接触位置101と、第2の接触位置102より、透明導電膜111に電流が流れる。
【0042】
次に、ステップ116(S116)に示すように、第4の電流計154に流れる電流量I4を測定する。厳密には、第4の電流計154により検出される電流の値は、第4の電極134から第1の接触位置101に流れる電流と、第4の電極134から第2の接触位置102に流れる電流と合計した値となる。しかしながら、流れる電流としては、第4の電極134から近い接触位置に流れる電流が支配的となり、この場合は、図に示すように第2の接触位置102を介し流れる電流が支配的となる。このため、第1の接触位置101を介し流れる電流を無視し、第4の電流計154により計測される電流I4は、第2の接触位置102を介し流れる電流であるものとみなす。前述したように、このようなみなしを行っても位置検出装置としての機能は十分確保される。これにより、電流I4は、第4の電極134と第2の接触位置102の間の透明抵抗膜121を流れる電流であるものとし、後述するように、電源の電圧Vと第4の電流計154により計測された電流I4より、第4の電極134と第2の接触位置102の間の透明抵抗膜121の抵抗値R4を算出する。
【0043】
次に、ステップ118(S118)に示すように、測定された電流値より抵抗値を算出する。具体的には、第1の電流計151により測定された電流I1に基づき、抵抗値R1=V/I1、第2の電流計152により測定された電流I2に基づき、抵抗値R2=V/I2、第3の電流計153により測定された電流I3に基づき、抵抗値R3=V/I3、第4の電流計154により測定された電流I4に基づき、抵抗値R4=V/I4として各々算出する。
【0044】
次に、ステップ120(S120)に示すように、ステップ118において得られた抵抗値より第1の接触位置101、第2の接触位置102の座標位置を算出する。即ち、第1の接触位置101を流れる電流は、I1、I2であることから、第1の接触位置101の座標位置は、抵抗値R1、R2に基づき算出する。
【0045】
具体的には、事前に第1の電極131と第2の電極132の間に電流を流し、流れる電流の値より第1の電極131と第2の電極132の間の抵抗値R12を測定する。尚、第1の電極131の端と第2の電極132の端との距離L12は、本実施の形態における座標検出装置を作製する際に定められている。
【0046】
ここで、透明抵抗膜121における抵抗値と電流が流れる距離との間には相関関係を有している。即ち、電流が流れる距離と、その間の抵抗値との間には、比例関係がある。このことから、抵抗値R12と、第1の電極131と第2の電極132と間の距離L12と、抵抗値R1に基づき、第1の電極131と第1の接触位置101との距離L1を求めることができる。また、抵抗値R12と、第1の電極131と第2の電極132と間の距離L12と、抵抗値R2に基づき、第2の電極132と第1の接触位置101との距離L2を求めることができる。
【0047】
具体的には、図8に示すように、距離L1=(L12/R12)×R1、距離L2=(L12/R12)×R2となり、この結果、距離L1、L2、L12の値を得ることができる。この後、余弦定理に基づき、距離L1と距離L2とのなす角α1を求めることにより、第1の接触位置101の座標位置を算出することができる。
【0048】
同様に、事前に第3の電極133と第4の電極134の間に電流を流し、流れる電流の値より第3の電極133と第4の電極134の間の抵抗値R34を測定する。尚、第3の電極133の端と第4の電極134の端との距離L34は、本実施の形態における座標検出装置を作製する際に定められている。
【0049】
また、抵抗値R34と、第3の電極133と第4の電極134と間の距離L34と、抵抗値R3に基づき、第3の電極133と第2の接触位置102との距離L3を求めることができる。また、抵抗値R23と、第3の電極133と第4の電極134と間の距離L34と、抵抗値R4に基づき、第4の電極134と第2の接触位置102との距離L4を求めることができる。
【0050】
具体的には、図8に示すように、距離L3=(L34/R34)×R3、距離L4=(L34/R34)×R4となり、L3、L4、L34の値を得ることができる。この後、余弦定理に基づき、距離L3と距離L4とのなす角α2を求めることにより、第2の接触位置102の座標位置を算出することができる。
【0051】
以上のステップ102からステップ120を繰返し行うことにより、連続的に二点における接触位置の検出を行うことが可能となる。尚、本実施の形態では、二点で接触している場合に限らず、一点で接触している場合も同様な方法により座標位置の検出が可能である。この場合、第1の電極131、第2の電極132、第3の電極133、第4の電極134における電流値の高いもの、即ち抵抗値の低いものを二つ選び、その二つの抵抗値に基づき算出された距離の値をもとに、余弦定理によって角度を求めることにより、一点で接触している場合においても、接触している位置の座標位置を算出することが可能である。
【0052】
尚、抵抗値の低い値となる電極は、接触位置に最も近いため接触位置を求める際には、精度が高くなり、特に、最も低い抵抗値となる電極は、接触位置に最も近くなるため、位置検出精度をより一層高めることができるからである。この場合、もう一つの抵抗値の値は、最も低い抵抗値に対応する電極に隣接するいずれか一方の電極における抵抗値の値を用いる。通常、接触位置は、中心から偏る場合が殆どであり、最も低い抵抗値に対応する電極の近傍が接触位置である場合、その電極に隣接する電極のどちらか一方が接触位置に近いためである。
【0053】
また、本実施の形態では、接触している接触位置が一点であるか、二点であるかの判別を行うことも可能である。具体的には、上述の座標検出方法により、各々の抵抗値を算出した後、その抵抗値の逆数の和を算出する。即ち、抵抗値R1、R2、R3、R4の抵抗が並列に接続されているものとして合成抵抗の値を算出する。一点で接触している場合に比べ、二点で接触している場合には、この合成抵抗の値が低くなり、一点で接触している場合の合成抵抗の範囲を超えた低い抵抗値を示す。これにより、このような合成抵抗の値が低い抵抗値を示す場合には、二点で接触しているものと判断することにより、一点で接触しているか二点で接触しているかの判別を行うことが可能となる。
【0054】
尚、本実施の形態では、透明抵抗膜として、ITOを用いたが、この他、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛を含む材料であって、可視域において透明となる材料であれば、同様な効果を得ることができる。
【0055】
また、図9に示すように第1の電極131と第2の電極132との間における抵抗値R12、第2の電極132と第3の電極133との間における抵抗値R23、第3の電極133と第4の電極134との間における抵抗値R34、第4の電極134と第1の電極131との間における抵抗値R41をより正確に求めるために、各々の電極間の内側に抵抗膜除去領域150を形成する。これにより、各々の電極間を流れる電流は、直線的となり、正確な電極間の抵抗値を得ることができるからである。
【0056】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における座標検出装置を用いて、より高い精度の位置検出を行う座標検出方法である。即ち、通常、座標検出装置をタッチパネルとして使用する場合には、指等による接触により、接触させた位置の位置検出を行う。指等による接触により位置検出を行う場合において、二点同時に接触するケースは、極めて少なく、どちらか一方が先に接触し、他方は少し遅れて接触する場合が大半である。
【0057】
従って、最初に、先に接触した位置を検出した後、先に接触した位置情報と、その後の測定結果をもとに、後に接触した位置を検出することにより、より高い精度で二点の位置を検出することが可能である。
【0058】
具体的には、第1の接触位置101に最初に接触し、第2の接触位置102は後で接触したものとした場合、最初に接触した第1の接触位置101の座標位置を第1の実施の形態による座標検出方法(最初の計測)により検出する。この後、第2の接触位置102に接触がされた後、第1の実施の形態による座標検出方法(後の計測)を行い、この時の各々の抵抗値を算出する。
【0059】
通常、タッチパネルの操作を行う場合では、後の一点となる第2の接触位置102が接触する際には、最初に接触した第1の接触位置101はあまり移動しない場合が多く、仮に移動したとしても、接触する直前に最初の計測を行えば、精度は保つことができる。このことから、最初に接触した第1の座標位置101を算出するために用いた抵抗値(最初の計測による抵抗値)と、後の計測により得られた抵抗値により、後に接触した第2の座標位置102の位置を検出することが可能である。
【0060】
以上の工程を図10、図11に基づき説明する。
【0061】
最初に、図10に示すように先の接触位置である第1の接触位置101のみを接触させた場合、上述した最初の計測により、第1の電極131から第1の接触位置101における透明抵抗膜121の抵抗値R1F、第2の電極132から第1の接触位置101における透明抵抗膜121の抵抗値R2F、第3の電極133から第1の接触位置101における透明抵抗膜121の抵抗値R3F、第4の電極134から第1の接触位置101における透明抵抗膜121の抵抗値R4Fが得られる。これらの抵抗値の値に基づき、第1の実施の形態で説明したように、抵抗値の低いものを2選択し、これらの値に基づき、角度α1を得ることができ、これにより第1の接触位置101の座標位置を検出することができる。
【0062】
次に、図11に示すように、後の接触位置である第2の位置検出102における接触をさせる。この場合、第1の接触位置101と、第2の接触位置102の二点で接触させた状態となる。この状態で、後の計測を行い、第1の電極131から第1の接触位置101と第1の電極131から第2の接触位置102における透明抵抗膜121における合成された抵抗値R1G、第2の電極131から第1の接触位置101と第1の電極132から第2の接触位置102における透明抵抗膜121における合成された抵抗値R2G、第3の電極133から第1の接触位置101と第3の電極133から第2の接触位置102における透明抵抗膜121における合成された抵抗値R3G、第4の電極134から第1の接触位置101と第4の電極134から第2の接触位置102における透明抵抗膜121における合成された抵抗値R4Gを得る。
【0063】
ここで、第1の電極131から第2の接触位置102における透明抵抗膜121における抵抗値R1L、第2の電極132から第2の接触位置102における透明抵抗膜121における抵抗値R2L、第3の電極133から第2の接触位置102における透明抵抗膜121における抵抗値R3L、第4の電極134から第2の接触位置102における透明抵抗膜121における抵抗値R4Lとした場合、この合成抵抗は並列に接続されているものと考えられるため、R1L、R2L、R3L、R4Lは以下の値となる。
R1L=(R1×R1F)/(R1F−R1)
R2L=(R2×R2F)/(R2F−R2)
R3L=(R3×R3F)/(R3F−R3)
R4L=(R4×R4F)/(R4F−R4)
このようにして得られた抵抗値R1L、R2L、R3L、R4Lに基づき、第1の実施の形態におけるステップ120と同様の方法により、角度α2を得ることができ、第2の接触位置102の座標位置を算出することができる。これにより、第1の接触位置101と第2の接触位置102との二点の座標位置を正確に検出することができる。
【0064】
尚、本実施の形態を行うためには、第1の接触位置101に接触した後、第2の接触位置102に接触するまでの時間を考慮して、第1の電極131、第2の電極132、第3の電極133、第4の電極134に印加する周期を定める必要がある。
【0065】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施の形態における位置検出装置の斜視図
【図2】本実施の形態における位置検出装置の断面図
【図3】第1の実施に形態における位置検出方法のフローチャート
【図4】第1の実施の形態における位置検出方法の検出状況の概要図(1)
【図5】第1の実施の形態における位置検出方法の検出状況の概要図(2)
【図6】第1の実施の形態における位置検出方法の検出状況の概要図(3)
【図7】第1の実施の形態における位置検出方法の検出状況の概要図(4)
【図8】第1の実施の形態における位置検出方法の検出方法を示す上面図
【図9】第1の実施の形態における位置検出装置の変形例の上面図
【図10】第2の実施の形態における位置検出装置の検出状況の概要図(1)
【図11】第2の実施の形態における位置検出装置の検出状況の概要図(2)
【図12】5線式抵抗膜方式タッチパネルの構成図
【符号の説明】
【0067】
101 第1の接触位置
101 第2の接触位置
110 上部基板
111 透明導電膜
120 下部基板
121 透明抵抗膜
131 第1の電極
132 第2の電極
133 第3の電極
134 第4の電極
141 第1のスイッチ
142 第2のスイッチ
143 第3のスイッチ
144 第4のスイッチ
151 第1の電流計
152 第2の電流計
153 第3の電流計
154 第4の電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなる四角形状の基板上に形成された抵抗膜と、
前記抵抗膜に電圧を印加するための電源と、
前記電源と接続されている前記基板の四隅の抵抗膜上に設けられた4個の電極と、
前記電源と各々の前記電極との間に設けられた4個のスイッチと、
各々の前記電極に流れる電流を測定するための4個の電流測定器と、
前記抵抗膜と接触させることにより前記抵抗膜における接触位置座標を検出するため接地されている導電膜と、
を有し、
前記スイッチの開閉を行うことにより、前記4個の電極に順次電圧を印加し、
前記抵抗膜と前記導電膜と接触させ、前記電極に接続されている4個の電流測定器により順次各々の電流値を測定し、
前記各々の電流値に基づき得られた抵抗値により、各々の電極と前記抵抗膜と前記導電膜との接触位置を検出することを特徴とする座標検出装置。
【請求項2】
前記抵抗膜と前記導電膜との接触位置は、一点又は二点であることを特徴とする請求項1に記載の座標検出装置。
【請求項3】
前記導電膜は、可視領域で透明である材料であって、前記抵抗膜のシート抵抗値に対し、低いシート抵抗値であることを特徴とする請求項1または2に記載の座標検出装置。
【請求項4】
前記抵抗膜の四辺に沿うように、抵抗膜除去領域を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の座標検出装置。
【請求項5】
前記導電膜は、ITO、導電ポリマー、SnO、In又はZnOを含む材料により構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の座標検出装置。
【請求項6】
前記導電膜は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、ポリオレフィン又はミクロオレフィンポリマーからなる基板上に形成されているものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の座標検出装置。
【請求項7】
絶縁体からなる四角形状の基板上に形成された抵抗膜と、
前記抵抗膜に電圧を印加するための電源と、
前記電源と接続されている前記基板の四角の抵抗膜上に設けられた4個の電極と、
前記電源と各々の前記電極との間に設けられた4個のスイッチと、
各々の前記電極に流れる電流を測定するための4個の電流測定器と、
前記抵抗膜と接触させることにより前記抵抗膜における接触位置座標を検出するため接地されている導電膜と、
を有する座標検出装置における座標検出方法であって、
前記4つのスイッチのうち第1のスイッチのみを閉じ、前記抵抗膜に電圧を印加し、前記第1のスイッチに直列に接続された第1の電流計により電流を測定する第1の測定工程と、
前記第1のスイッチを開き、その後、前記4つのスイッチのうち第2のスイッチのみを閉じ、前記抵抗膜に電圧を印加し、前記第2のスイッチに直列に接続された第2の電流計により電流を測定する第2の測定工程と、
前記第2のスイッチを開き、その後、前記4つのスイッチのうち第3のスイッチのみを閉じ、前記抵抗膜に電圧を印加し、前記第3のスイッチに直列に接続された第3の電流計により電流を測定する第3の測定工程と、
前記第3のスイッチを開き、その後、前記4つのスイッチのうち第4のスイッチのみを閉じ、前記抵抗膜に電圧を印加し、前記第4のスイッチに直列に接続された第4の電流計により電流を測定する第4の測定工程と、
前記第1から第4の測定工程により測定された電流値により各々の抵抗値を算出する工程と、
前記算出された抵抗値より、前記抵抗膜と前記導電膜との一点または二点の接触位置を算出する工程と、
を有することを特徴とする座標検出方法。
【請求項8】
前記接触位置を算出する工程において、算出された前記抵抗値のうち最も低い抵抗値の値と、前記最も低い抵抗値に対応する電極に隣接する電極におけるいずれか一方の抵抗値の値により、二点のうち一点の接触位置を算出することを特徴とする請求項7に記載の座標検出方法。
【請求項9】
前記算出された各々の抵抗値に基づき、前記抵抗値の抵抗が並列に接続されている場合の合成抵抗の値を算出し、
前記合成抵抗の抵抗値の値に基づき、接触位置が一点であるか二点であるかの判別を行うことを特徴とする請求項7に記載の座標検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−282608(P2009−282608A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131940(P2008−131940)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】