説明

廃アスベスト無害化装置

【課題】装置全体の大型化を招来する虞れがなく、かつ破砕された廃アスベストを良好に乾燥させることができる廃アスベスト無害化装置を提供すること。
【解決手段】投入された廃アスベストを破砕する破砕機20と、破砕機20により破砕された廃アスベストを乾燥させる乾燥機30と、乾燥機30により乾燥させた廃アスベストに溶融温度を降下させる融剤を混合させた混合材を溶融する誘導加熱炉50とを備えた廃アスベスト無害化装置であって、乾燥機30は、上下方向に沿って螺旋状に延在する搬送路32aを構成し、かつ自身に振動が付与されることにより下方の投入口35より投入された廃アスベストを上方の搬出口36に向けて搬送するスパイラルフィーダ32と、スパイラルフィーダ32により搬送される廃アスベストを加熱するシースヒータ33とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃アスベスト無害化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特別管理産業廃棄物の一種である廃アスベストは、発ガン性等が指摘される有害固形廃棄物であり、これを無害化する処理装置に関して種々検討されている。
【0003】
その一つに、廃アスベストを破砕したものに溶融温度を降下させる融剤を混合させた混合材を溶融して、非晶質(ガラス)の固形物に変化させることで廃アスベストの無害化を行うものがあり、これら廃アスベストの破砕、溶融等を移動可能な牽引コンテナ車等に画成された作業室で行えるようにしたオンサイト式の廃アスベスト無害化装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなオンサイト式の廃アスベスト無害化装置は、各地に点在するアスベスト含有保温材(廃アスベスト)が発生する事業所構内に、トレーラヘッドに牽引されて搬入される。そして、解体作業現場で袋詰等された廃アスベストが、作業室内に投入され、破砕、溶融処理を行って無害化処理を行うことができ、上記事業所構内で解体及び無害化処理が完結するため有用なものとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−000604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、廃アスベスト無害化装置に投入される廃アスベストは、アスベスト製品の解体,除去時の飛散防止のための湿潤化により、水分を比較的多量に含有しているのが一般的であり、廃アスベストを破砕した後、溶融する前に乾燥させる必要がある。破砕した廃アスベストを十分に乾燥させるには、乾燥装置内に滞留する時間を長大化させる必要があるが、それでは無害化処理の処理速度の低下を招来し好ましくない。また乾燥装置を大型化することにより、乾燥処理できる廃アスベストの量を増大化させることができるが、それでは廃アスベスト無害化装置自体の大型化を招来し、特にオンサイト式の廃アスベスト無害化装置のように移動可能な作業室に設置する場合には困難である。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、装置全体の大型化を招来する虞れがなく、かつ破砕された廃アスベストを良好に乾燥させることができる廃アスベスト無害化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る廃アスベスト無害化装置は、投入された廃アスベストを破砕する破砕手段と、前記破砕手段により破砕された廃アスベストを乾燥させる乾燥手段と、前記乾燥手段により乾燥させた廃アスベストに溶融温度を降下させる融剤を混合させた混合材を溶融する溶融手段とを備えた廃アスベスト無害化装置であって、前記乾燥手段は、上下方向に沿って螺旋状に延在する搬送路を構成し、かつ自身に振動が付与されることにより下方の投入口より投入された廃アスベストを上方の搬出口に向けて搬送する搬送路部材と、前記搬送路部材により搬送される廃アスベストを加熱する加熱手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る廃アスベスト無害化装置は、上述した請求項1において、前記加熱手段は、前記搬送路部材により構成される搬送路に上下に挟まれる態様で延在し、自身が通電状態になることにより直下の搬送路を通過する廃アスベスト、並びに直上の搬送路を通過する廃アスベストを加熱する加熱ヒータを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る廃アスベスト無害化装置は、上述した請求項1又は請求項2において、前記加熱手段は、前記溶融手段により溶融されて吐出された溶融物の熱を回収し、回収した熱を導入して前記搬送路部材により搬送される廃アスベストを加熱する排熱回収機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る廃アスベスト無害化装置は、上述した請求項1〜3のいずれか一つにおいて、前記破砕手段、前記乾燥手段及び前記溶融手段を移動可能な作業室に搭載してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送路部材が上下方向に沿って螺旋状に延在する搬送路を構成し、かつ自身に振動が付与されることにより下方の投入口より投入された廃アスベストを上方の搬出口に向けて搬送し、加熱手段が搬送路部材により搬送される廃アスベストを加熱するので、廃アスベストの搬送距離、すなわち乾燥時間を十分に確保することができ、装置を大型化させなくても、廃アスベストを良好に乾燥させることができる。従って、装置全体の大型化を招来する虞れがなく、かつ破砕された廃アスベストを良好に乾燥させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である廃アスベスト無害化装置の構造を模式的に示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示した乾燥機を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図2に示した乾燥機の要部を上方から見た場合を示す説明図である。
【図4】図4は、図2に示した乾燥機の要部を拡大して示す部分縦断面図である。
【図5】図5は、図1に示した誘導加熱炉の内部構造を模式的に示すもので、一部を断面で示している。
【図6】図6は、図5に示した誘導加熱炉の吐出動作を模式的に示す説明図である。
【図7】図7は、図1に示した受皿の周辺の構成を模式的に示す説明図である。
【図8】図8は、図1に示した排気ユニットの要部を模式的に示す説明図である。
【図9】図9は、図8に示したバグフィルタに付着した粉塵物の除去の仕方を模式的に示す説明図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態である廃アスベスト無害化装置の特徴的な制御系を示すブロック図である。
【図11】図11は、炉圧制御部が実施する炉内圧力制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る廃アスベスト無害化装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態である廃アスベスト無害化装置の構造を模式的に示す模式図である。ここで例示する廃アスベスト無害化装置は、図示せぬトレーラヘッドに牽引される牽引式コンテナ車1に画成された作業室に配設されたオンサイト式のものである。作業室は、前室2、中室3、後室4に区画されている。前室2には、図1には明示していないが、廃アスベスト無害化装置の制御装置や各種モニター、分電盤等が配設されており、廃アスベスト無害化装置の稼働状態の監視や各種構成要素の駆動制御を行う制御室としての役割を有している。
【0016】
上記廃アスベスト無害化装置は、投入機構10、破砕機(破砕手段)20、乾燥機(乾燥手段)30、混合機40、誘導加熱炉(溶融手段)50、排熱回収機構60及び排気ユニット(排気手段)70を備えて構成してある。
【0017】
投入機構10は、後室4に配設されており、円筒状の蓋付密閉容器5aに詰められたアスベスト含有保温材(廃アスベスト)、あるいは袋5bに詰められた廃アスベストを、外気に晒されることなく装置内部に投入するためのものである。この投入機構10の具体的な構成についての説明は割愛するが、投入機構10に投入された廃アスベストは、所定の搬送機構等により連通する破砕機20に搬送されることになる。
【0018】
破砕機20は、中室3に配設されており、投入機構10に投入され、かつ上記搬送機構等により搬送された廃アスベストを破砕するものであり、周囲から区画された破砕機本体21の内部に例えば二軸の破砕ローラカッター22が設けてある。このような破砕機20では、破砕機本体21の内部において、例えば上方から廃アスベストが落下し、破砕ローラカッター22が駆動することにより落下する廃アスベストが破砕されて粗破砕し、下方に設けた送出フィーダ23により乾燥機30に送出されることになる。
【0019】
図2は、図1に示した乾燥機30を示す縦断面図である。乾燥機30は、図1に示すように中室3に配設してあり、周囲から区画された乾燥機本体31の内部にスパイラルフィーダ32及びシースヒータ33が設けてある。
【0020】
図2に示すようにスパイラルフィーダ32は、例えばステンレス等の金属材から形成されるものであり、上下方向に沿って延在するロッド状の軸状部34の周囲を上下方向に沿って螺旋状に延在する搬送路32aを構成し、かつ図示せぬ機構により自身に振動が付与されることにより下方の投入口35より投入された廃アスベストを上方の搬出口36に向けて搬送する搬送路部材である。このスパイラルフィーダ32の下面32bには、遠赤外線を吸収する黒体塗料が塗布してある。
【0021】
シースヒータ33は、図2に示すように、スパイラルフィーダ32により構成される搬送路32aに上下に挟まれる態様で延在している。より詳細に説明すると、シースヒータ33は、図3に示すようにその先端部33aが円弧状をなす態様で湾曲されている。このようなシースヒータ33は、自身が通電状態になることにより、遠赤外線を照射する加熱ヒータである。
【0022】
このシースヒータ33による加熱は、次のようにして行われる。図4に示すように、シースヒータ33から遠赤外線が上下左右に照射される。ここでスパイラルフィーダ32の下面32bには遠赤外線を吸収する黒体塗料が塗布してあることから、かかるスパイラルフィーダ32を通じてシースヒータ33の直上にある廃アスベストは加熱される。また、該シースヒータ33の直下に廃アスベストは、該シースヒータ33から照射される遠赤外線により直接加熱される。
【0023】
混合機40は、乾燥機30と搬出口36を通じて連通しており、融剤が収容されたホッパー41が設けてある。ここで融剤は、廃アスベストの溶融温度を降下させるためのもので、例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、ホウ酸塩等である。このような混合機40においては、搬出口36を通じて搬出された乾燥処理済の廃アスベストに対し、ホッパー41から供給された融剤を混合して混合材を形成するものである。形成された混合剤は、混合機40の下方に設けた供給フィーダ42で誘導加熱炉50に供給されることになる。
【0024】
図5は、図1に示した誘導加熱炉50の内部構造を模式的に示すもので、一部を断面で示している。ここで例示する誘導加熱炉50は、上面が開口した有底円筒状の炉本体50aに、炉蓋体50bが炉本体50aの上面開口を閉塞する態様で配設してなるものである。炉本体50aの内部には、坩堝51が配設してあり、誘導加熱炉50(炉本体50a)の側周面の一部には、外方に突出する突出部52が設けてある。この突出部52には貫通孔521が設けてあり、この貫通孔521には、ロッド状の軸部522が貫通しており、これにより、誘導加熱炉50は、軸部522の軸心回りに傾動可能となっている。
【0025】
坩堝51は、例えばステンレス材やインコネル材(商品名)等の金属からなるものであり、上端に開口51aを有する有底筒状のものである。この坩堝51は、炉本体50a(誘導加熱炉50)の中央域に配設してあり、側部の内面が誘導加熱炉50の内周面の一部を構成し、かつ底部が誘導加熱炉50の内底部を構成している。図には明示しないが、この坩堝51の外周面には断熱材に覆われているとともに、耐火材が充填してある。また、坩堝51の外周面から所定の距離だけ離隔した位置に該坩堝51を巻回する態様で円筒状をなした誘導加熱コイルが継鉄に支持されて配設してある。誘導加熱コイルは、一の電源に接続されて電気回路を構成している。この電源は、数十Hz〜数kHzの交流電流を供給するものである。
【0026】
炉蓋体50bには、出湯口53、供給フィーダ42の先端部に連通する供給筒54が貫通する貫通孔541、並びに坩堝51の内部に投入された混合材を撹拌する撹拌機55が設けてある。出湯口53は、坩堝51の内部で溶融させた溶融物を外部に吐出するための開口である。撹拌機55は、駆動モータ55aと、該駆動モータ55aの駆動により自身の軸心回りに回転することにより坩堝51の内部の混合材を撹拌する撹拌ロッド55bとにより構成されるものである。ここで撹拌ロッド55bの形状は特に限定されるものではないが、自身の軸心回りに回転することにより、混合材を下方に押し込むとともに、遠心力により坩堝51の周囲に向けて押し出すことができるような形状であることが望ましい。
【0027】
上記坩堝51の側部においては、上記上面開口51aを形成するとともに、坩堝51上部から混合材が溢れることを回避するために、湯面より上方に向けて延設された上延部51bを有している。この坩堝51の上延部51bは混合材の溶融に寄与しないが、誘導加熱されることになるため、該上延部51bは、周方向に沿ってスリット51cを所定間隔で形成して、上延部51bに渦電流が流れにくくして、上延部51bでの誘導加熱を抑制している。ここで、上延部51bにより形成される上面開口51aは、炉蓋体50bの貫通孔541を貫通する供給筒54の下面よりも上方側に位置しており、スリット51cの下端は、供給筒54の下面よりも下方に位置するよう調整してある。またスリット51cには、絶縁性を有する耐火物51dが埋設してある。
【0028】
このような誘導加熱炉50においては、供給フィーダ42から供給筒54を介して混合材(廃アスベスト+融剤)が供給された後、誘導加熱コイルに交流電流を流して通電状態にし、交番磁束を印加する。これにより坩堝51に渦電流が発生し、坩堝51が渦電流損によるジュール熱で加熱され、坩堝51からの熱伝達により内部に供給された混合材が加熱され、撹拌機55により撹拌されて、図6の(a)に示すように、溶融されることになる。このとき、坩堝51の側部の上延部51bには周方向に沿ってスリット51cが形成されていることから渦電流が流れにくく、該上延部51bは加熱されにくくなっている。
【0029】
混合材を溶融させた後、供給フィーダ42を水平方向に移動させて炉蓋体50bの上方域から退避させ、図6の(b)に示すように、誘導加熱炉50を軸部522の軸心回りに傾動させて坩堝51の内部にある溶融物を出湯口53から受皿56に吐出させる。
【0030】
受皿56に吐出された溶融物は、図7に示すように、該受皿56の下方域を搬送ローラ57により搬送される回収容器58に投入され、搬送ローラ57による搬送途中において排熱回収機構60により排熱を回収されることになる。
【0031】
排熱回収機構60は、排熱回収部61と排熱回収配管62とを備えて構成してある。排熱回収部61は、受皿56の近傍に配設してあり、受皿56により溶融物が投入され、かつ搬送ローラ57により搬送される回収容器58から該溶融物の排熱を回収するための開口である。この排熱回収部61は排熱回収配管62の一端に接続されている。排熱回収配管62の他端は、乾燥機30の排熱導入口37に接続されており、これにより排熱回収部61は、排熱回収配管62を通じて乾燥機30の乾燥機本体31の内部に連通している。
【0032】
このような排熱回収配管62には、排熱回収ブロア63が配設しており、この排熱回収ブロア63が駆動することにより、排熱回収部61を通じて回収容器58の溶融物の排熱(例えば500℃)が吸引され、排熱回収配管62を通過した後に、排熱導入口37を通じて乾燥機本体31の内部に導入されることになる。
【0033】
このように排熱回収機構60は、誘導加熱炉50により溶融されて吐出された溶融物の熱を回収し、回収した熱を導入してスパイラルフィーダ32により搬送される廃アスベストを加熱する加熱手段を構成している。
【0034】
排気ユニット70は、排気本体71及び大気導入配管72を備えて構成してある。排気本体71は、後室4に配設してあり、排気管73を介して中室3における廃アスベスト無害化装置の各構成要素、例えば破砕機20、乾燥機30及び誘導加熱炉50に連通している。
【0035】
この排気本体71の内部には、図8に示すように、排出ブロア74、除去機構75及び送出機構76が配設してある。この排出ブロア74は、駆動することにより、排気管73を通じて空気を吸引し、バグフィルタ(フィルタ部材)77を通過させて粉塵物をバグフィルタ77の表面に付着させ、該バグフィルタ77を通過した清浄空気を外部に排出するものである。本実施の形態においては、この排出ブロア74は常時駆動しており、排気管73を通じて誘導加熱炉50の内部雰囲気を吸引して該誘導加熱炉50の内部を負圧に調整する吸引手段を構成している。
【0036】
除去機構75は、予め決められた時間毎に択一的に選択された任意のバグフィルタ77に圧縮空気を、排気管73を通過した空気を吸引する方向とは反対方向に向けて噴射して該バグフィルタ77の表面に付着する粉塵物を除去するものである。
【0037】
送出機構76は、排気本体71の内部から破砕機本体21の内部に至るバイパス配管761を有し、該バイパス配管761に配設されバイパスバルブ762を開成することにより、上記除去機構75により除去された粉塵物を破砕機本体21の内部に送出するものである。
【0038】
大気導入配管72は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、それぞれが個別に設けられた大気導入口(図示せず)に連通し、かつ該大気導入口より導入された空気の通過を許容、あるいは規制する調整バルブ721が配設されたものである。これら大気導入配管72は、排気管73に途中から合流する態様で連設してある。調整バルブ721は、例えばエアーにより開閉する弁体であり、常態においては開成している。
【0039】
このような排気ユニット70においては、排出ブロア74が常時駆動していることにより、排気管73を通じて破砕機20等の構成要素の内部雰囲気を吸引し、図9の(a)に示すように吸引した内部雰囲気をバグフィルタ77に通過させることにより、通過した清浄空気を外部に排出することができるとともに、粉塵物をバグフィルタ77の表面に付着させて集塵することができる。
【0040】
そして図9の(b)に示すように、予め決められた時間毎に択一的に選択された任意のバグフィルタ77に圧縮空気を、排気管73を通過した空気を吸引する方向とは反対方向に向けて噴射して該バグフィルタ77の表面に付着する粉塵物を除去することができる。除去された粉塵物は、送出機構76がバイパスバルブ762を開成させることにより、バイパス配管761を通じて破砕機本体21に送出される。
【0041】
図10は、本発明の実施の形態である廃アスベスト無害化装置の特徴的な制御系を示すブロック図である。この図10に示すように、廃アスベスト無害化装置は、炉圧検知センサ(炉圧検知手段)Sと、炉圧制御部80とを備えて構成してある。
【0042】
炉圧測定口Pは、図5に示すように誘導加熱炉50の内部の任意の個所に配設してあり、この炉圧測定口Pと誘導加熱炉50の近傍に配設された圧力検知センサSとがパイプ等を介して接続されている。圧力検知センサSは、炉圧測定口Pから伝達された該誘導加熱炉50の圧力(炉圧)を検知するものである。炉圧検知センサSで検知された圧力は、検知信号として炉圧制御部80に送出される。
【0043】
炉圧制御部80は、メモリ84に予め格納されたプログラムやデータにしたがって動作するもので、入力処理部81、比較部82及び調整バルブ駆動処理部83を備えている。尚、本実施の形態においては、炉圧制御部80は、独立した制御機構として記載しているが、本発明においては、炉圧制御部80は、廃アスベスト無害化装置の動作を統括的に制御するメインコントローラに組み込まれていても良い。
【0044】
入力処理部81は、炉圧検知センサSから与えられる検知信号を入力処理するものである。比較部82は、メモリ84に予め格納してある設定情報を読み出して、入力処理部81を通じて入力処理された炉圧の圧力値が設定情報に含まれる設定上限値を超えているか否か、あるいは設定情報に含まれる設定下限値を下回っているか否かを比較するものである。ここで設定情報は、誘導加熱炉50の圧力を好ましい負圧状態に保持するために定められたものであり、設定上限値が例えば−100Paであり、設定下限値が例えば−500Paとされている。
【0045】
調整バルブ駆動処理部83は、大気導入配管72に配設された各調整バルブ721(第1調整バルブ721a、第2調整バルブ721b、第3調整バルブ721c)の開閉の駆動処理を行うものである。ここで調整バルブ駆動処理部83は、初期の常態においては、各調整バルブ721をいずれも開成させている。このように各調整バルブ721を開成させていることと、上述したように排出ブロア74が常時駆動していることにより、大気導入口から導入された空気は、大気導入配管72及び排気管73を通過して排気本体71に吸引され、バグフィルタ77を通過して外部に排出されている。
【0046】
図11は、上記炉圧制御部80が実施する炉内圧力制御処理の処理内容を示すフローチャートである。かかる炉内圧力制御処理を説明することにより、廃アスベスト無害化装置が実施する動作について説明する。
【0047】
炉内圧力制御処理において炉圧制御部80は、入力処理部81を通じて炉圧検知センサSから検知信号を入力した場合(ステップS101:Yes)、比較部82を通じてメモリ84から設定情報を読み出し、入力した検知圧力が設定情報に含まれる設定上限値(−100Pa)を超えているか否かを比較する(ステップS102)。
【0048】
検知圧力が設定上限値を超えている場合(ステップS102:Yes)、炉圧制御部80は、調整バルブ駆動処理部83を通じていずれかの調整バルブ721を閉動作させて(ステップS103)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。ここでステップS103の処理について詳細に説明すると、炉圧制御部80は、いずれの調整バルブ721も開成している場合には、第1調整バルブ721aを閉動作させ、第1調整バルブ721aのみが閉成している場合には、第2調整バルブ721bを閉動作させ、第1調整バルブ721a及び第2調整バルブ721bが閉成している場合には、第3調整バルブ721cを閉動作させる。
【0049】
これによれば、排気管73を通じて誘導加熱炉50の内部雰囲気を吸引する力が相対的に大きくなり、これにより炉圧は、好ましい負圧状態(例えば−100Pa以下)に推移することになる。
【0050】
検知圧力が設定上限値以下で、かつ設定下限値以上の場合(ステップS102:No,ステップS104:No)、すなわち誘導加熱炉50の炉圧は、好ましい負圧状態にあることから、炉圧制御部80は、調整バルブ721の開閉状態を維持して、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0051】
一方、検知圧力が設定下限値未満の場合(ステップS102:No,ステップS104:Yes)、炉圧制御部80は、調整バルブ駆動処理部83を通じて既に閉動作させた調整バルブ721があるか否かを判断する(ステップS105)。既に閉動作させた調整バルブ721がない場合には(ステップS105:No)、炉圧制御部80は、後述する処理を実施することなく、手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0052】
既に閉動作させた調整バルブ721がある場合(ステップS105:Yes)、炉圧制御部80は、調整バルブ駆動処理部83を通じて閉動作させた調整バルブ721を開動作させて(ステップS106)、手順をリターンさせて今回の処理を終了する。ここでステップS106の処理について詳細に説明すると、炉圧制御部80は、第1調整バルブ721aのみを既に閉動作させていた場合には、該第1調整バルブ721aを開動作させ、第1調整バルブ721a及び第2調整バルブ721bを既に閉動作させていた場合には、第2調整バルブ721bを開動作させ、すべての調整バルブ721を既に閉動作させていた場合には、第3調整バルブ721cを開動作させる。
【0053】
これによれば、排気管73を通じて誘導加熱炉50の内部雰囲気を吸引する力が相対的に小さくなり、これにより炉圧は、好ましい負圧状態(例えば−500Pa以上)に推移することになる。
【0054】
以上説明したように、本発明の実施の形態である廃アスベスト無害化装置によれば、乾燥機30は、螺旋状に巻回したスパイラルフィーダ32で破砕機20により破砕された廃アスベストを搬送し、シースヒータ33で加熱して搬送中の廃アスベストを乾燥させるので、廃アスベストの搬送距離、すなわち乾燥時間を十分に確保することができ、乾燥機30自体を大型化させなくても、廃アスベストを良好に乾燥させることができる。従って、装置全体の大型化を招来する虞れがなく、かつ破砕された廃アスベストを良好に乾燥させることができる。
【0055】
特に、排熱回収機構60が誘導加熱炉50により溶融されて吐出された溶融物の熱を回収し、回収した熱を導入してスパイラルフィーダ32により搬送される廃アスベストを加熱するので、排熱を有効に活用して廃アスベストを乾燥させることができ、シースヒータ33の消費電力量を低減化させることができ、結果的にコストの低減化を図ることができる。
【0056】
上記廃アスベスト無害化装置によれば、誘導加熱炉50の坩堝51は、上面開口51aを形成するとともに上方に向けて延設された上延部51bを有しているので、坩堝51内に投入された廃アスベストが誘導加熱により溶融される際に外部に漏れてしまうことを回避することができ、しかも上延部51bには、周方向に沿ってスリット51cが所定間隔で形成されているので、渦電流が流れにくくなっており、該上延部51bが必要以上に加熱されることを抑制して、溶融に要する消費電力量の低減化を図ることができる。
【0057】
また、上記廃アスベスト無害化装置によれば、排気ユニット70において、排出ブロア74が常時駆動していることにより、排気管73を通じて破砕機20等の構成要素の内部雰囲気を吸引し、吸引した内部雰囲気をバグフィルタ77に通過させることにより、通過した清浄空気を外部に排出することができるとともに、粉塵物をバグフィルタ77の表面に付着させて集塵することができる。しかも、除去機構75が予め決められた時間毎に択一的に選択された任意のバグフィルタ77に圧縮空気を噴射して該バグフィルタ77の表面に付着する粉塵物を除去し、送出機構76が除去された粉塵物を破砕機本体21に送出させる。従って、廃アスベストの無害化処理により生じた粉塵物を良好に集塵することができるとともに、集塵した粉塵物を確実に無害化させることができる。
【0058】
更に、上記廃アスベスト無害化装置によれば、炉圧制御部80が、常態においては調整バルブ721をそれぞれ開成させる一方、炉圧検知センサSにより検知された圧力が予め決められた設定上限値を超える場合には、開成している調整バルブ721の少なくとも一つを閉成させるので、排気管73を通じて誘導加熱炉50の内部雰囲気を吸引する力が相対的に大きくすることができ、これにより、誘導加熱炉50の内部を負圧に良好に保持させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明に係る廃アスベスト無害化装置は、特にオンサイト式の廃アスベストの無害化処理に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 牽引式コンテナ車
2 前室
3 中室
4 後室
10 投入機構
20 破砕機
21 破砕機本体
22 破砕ローラカッター
23 送出フィーダ
30 乾燥機
31 乾燥機本体
32 スパイラルフィーダ
32a 搬送路
33 シースヒータ
33a 先端部
34 軸状部
35 投入口
36 搬出口
37 排熱導入口
40 混合機
41 ホッパー
42 供給フィーダ
50 誘導加熱炉
50a 炉本体
50b 炉蓋体
51 坩堝
51a 上面開口
51b 上延部
51c スリット
51d 耐火物
52 突出部
53 出湯口
54 供給筒
55 撹拌機
55a 駆動モータ
55b 撹拌ロッド
56 受皿
57 搬送ローラ
58 回収容器
60 排熱回収機構
61 排熱回収部
62 排熱回収配管
63 排熱回収ブロア
70 排気ユニット
71 排気本体
72 大気導入配管
721 調整バルブ
73 排気管
74 排出ブロア
75 除去機構
76 送出機構
761 バイパス配管
762 バイパスバルブ
77 バグフィルタ
80 炉圧制御部
81 入力処理部
82 比較部
83 調整バルブ駆動処理部
84 メモリ
S 炉圧検知センサ
P 炉圧測定口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された廃アスベストを破砕する破砕手段と、
前記破砕手段により破砕された廃アスベストを乾燥させる乾燥手段と、
前記乾燥手段により乾燥させた廃アスベストに溶融温度を降下させる融剤を混合させた混合材を溶融する溶融手段と
を備えた廃アスベスト無害化装置であって、
前記乾燥手段は、
上下方向に沿って螺旋状に延在する搬送路を構成し、かつ自身に振動が付与されることにより下方の投入口より投入された廃アスベストを上方の搬出口に向けて搬送する搬送路部材と、
前記搬送路部材により搬送される廃アスベストを加熱する加熱手段と
を備えたことを特徴とする廃アスベスト無害化装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記搬送路部材により構成される搬送路に上下に挟まれる態様で延在し、自身が通電状態になることにより直下の搬送路を通過する廃アスベスト、並びに直上の搬送路を通過する廃アスベストを加熱する加熱ヒータを備えたことを特徴とする請求項1に記載の廃アスベスト無害化装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記溶融手段により溶融されて吐出された溶融物の熱を回収し、回収した熱を導入して前記搬送路部材により搬送される廃アスベストを加熱する排熱回収機構を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃アスベスト無害化装置。
【請求項4】
前記破砕手段、前記乾燥手段及び前記溶融手段を移動可能な作業室に搭載してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の廃アスベスト無害化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−16051(P2011−16051A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161257(P2009−161257)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19〜21年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「アスベスト含有建材等安全回収・処理等技術開発/オンサイト式・移動式アスベスト無害化・資源化装置の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(502165300)富士電機サーモシステムズ株式会社 (33)
【出願人】(000242644)北陸電力株式会社 (112)
【Fターム(参考)】