説明

廃棄物の分別方法

【課題】含水率の高い土砂を含む大量の瓦礫等の含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物を、周囲の環境に悪影響を及ぼさず、また、処理にエネルギや時間を要することなく処理することができる廃棄物の分別方法を提供すること。
【解決手段】含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、下記(A)〜(F)の物質のいずれか又は複数を添加、混練した後、篩い分けを行うことにより、前記廃棄物から篩目より大きな異物を分離する。
(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(C)アルキルアミノアクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(D)アルキルアミノメタクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(E)天然多糖類
(F)無機系凝集剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の分別方法に関し、特に、含水率の高い土砂を含む大量の瓦礫等の含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物の分別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、震災時に大量に発生する瓦礫は、被災地で発生した瓦礫を、集積地に集め、可燃物、不燃物等の分別作業が行った後、処理施設に搬出し、必要に応じて、破砕処理を行い、環境創造用資材、リサイクル製品、埋立資材等に有効利用するととともに、有効利用できないものは、必要に応じて、焼却処理された後、管理型処分場等で処理するようにしている。
【0003】
ところで、上記瓦礫の処理方法として、都市型の街区におけるビルの破壊跡等から発生するいわゆる瓦礫の処理方法として、例えば、特許文献1に開示されたような方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−75772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、今回の東日本大震災のような津波を伴う震災時に発生した瓦礫は、含水率の高い土砂を大量に含むため、被災地からそのままの状態で瓦礫を集積地に搬送することは困難であり、また、特許文献1に開示された方法では、大量の処理水及びその後処理が必要になることから、インフラストラクチャーが壊滅状態にある被災地では採用することが困難であった。
【0006】
一方、含水率の高い土砂を含む瓦礫の場合、これを加熱したり、含水率の高い土砂を含む瓦礫に生石灰等の改質剤を添加することによって、含水率を低下させた後、篩い分けを行うことにより瓦礫から土砂を分離し、該土砂を分離した瓦礫を、集積地や処理施設に搬出することも考えられるが、粉塵やアンモニア等の有害ガスが発生しやすく周囲の環境に悪影響を及ぼすおそれがあり、また、処理にエネルギや時間を要し、大量の瓦礫の処理には適さない等の問題があった。
【0007】
また、上記の含水率の高い土砂を含む瓦礫以外でも、有害物質(PCB、VOC、重金属、農薬、油等)を含有する土砂等の電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物から異物を分別するための簡易な処理方法が要請されていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、含水率の高い土砂を含む大量の瓦礫等の含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物を、周囲の環境に悪影響を及ぼさず、また、処理にエネルギや時間を要することなく処理することができる廃棄物の分別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の廃棄物の分別方法は、含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、下記(A)〜(F)の物質のいずれか又は複数を添加、混練した後、篩い分けを行うことにより、前記廃棄物から篩目より大きな異物を分離することを特徴とする。
(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(C)アルキルアミノアクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(D)アルキルアミノメタクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(E)天然多糖類
(F)無機系凝集剤
【0010】
この場合において、含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、前記(A)〜(F)の物質のいずれか又は複数に加え、さらに、セメント、石膏、生石灰、酸化マグネシウム、吸水性ポリマー及び界面活性剤のいずれか又は複数を添加することができる。
【0011】
そして、本発明の廃棄物の分別方法は、含水率の高い土砂を含む瓦礫の処理の用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃棄物の分別方法によれば、含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、上記物質を添加、混練することにより、電荷を有する粒子(粘土、シルト、コロイド粒子等。以下同じ。)を化学的に結合させることで、含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物を含水した状態のままで改質し、篩い分け可能な状態となるようにするとともに、上記粒子を異物から離脱しやすくし、その後、篩い分けを行うことにより、廃棄物から篩目より大きな異物を効率よく分離することができる。
この場合、改質した上記粒子は、必要に応じて、埋立資材等として有効利用することができる。
【0013】
また、含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、さらに、セメント、石膏、生石灰、酸化マグネシウム、吸水性ポリマー及び界面活性剤のいずれか又は複数を添加することにより、改質した上記粒子の埋立資材等としての品質を高めることができるようにしたり、有害物質(PCB、VOC、重金属、農薬、油等)の封じ込めを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の廃棄物の分別方法の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明の廃棄物の分別方法は、例えば、津波を伴う震災時に発生する瓦礫のような含水率の高い土砂を大量に含む瓦礫等の含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、下記(A)〜(F)の物質のいずれか又は複数を添加、混練した後、篩い分けを行うことにより、前記廃棄物から篩目より大きな異物を分離するものである。
(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(C)アルキルアミノアクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(D)アルキルアミノメタクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(E)天然多糖類
(F)無機系凝集剤
【0016】
この場合において、(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のポリカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。
また、(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のポリスルホン酸としては、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等を挙げることができる。
また、(C)アルキルアミノアクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のアルキルアミノアクリレート塩重合体としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイル2−ヒドロキシプロピルリド等を挙げることができる。
また、(D)アルキルアミノメタクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のアルキルアミノメタクリレート塩重合体としては、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイル2−ヒドロキシプロピルリド等を挙げることができる。
また、(E)天然多糖類としては、グアーガム、グルコマンナン、キタンサンガム、アルギン酸ナトリウム、プルラン等を挙げることができる。
また、(F)無機系凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化カルシウム等を挙げることができる。
【0017】
上記(A)〜(F)の物質は、液体又は粉体のいずれでもよいが、液体のものの方が、添加のしやすさや飛散による周囲の環境への悪影響を及ぼすおそれが少ない点で好ましい。
【0018】
上記(A)〜(F)の物質の混練は、例えば、リボン式、パドル式、回転ドラム式等の任意の方式の混合機を用いることができる。
【0019】
また、篩い分けは、例えば、円筒篩、振動篩等の任意の方式の篩い機を用いることができる。
【0020】
この廃棄物の分別方法によれば、含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、上記物質を添加、混練することにより、電荷を有する粒子を化学的に結合させることで、含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物を含水した状態のままで改質し、篩い分け可能な状態となるようにするとともに、上記粒子を異物から離脱しやすくし、その後、篩い分けを行うことにより、廃棄物から篩目より大きな異物を効率よく分離することができる。
この場合、改質した上記粒子は、必要に応じて、埋立資材等として有効利用することができる。
【0021】
また、含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、前記(A)〜(F)の物質のいずれか又は複数に加え、さらに、セメント、石膏、生石灰、酸化マグネシウム、吸水性ポリマー及び界面活性剤のいずれか又は複数を添加することができる。
これにより、改質した上記粒子の埋立資材等としての品質を高めることができるようにしたり、有害物質(PCB、VOC、重金属、農薬、油等)の封じ込めを行うことができる。
【0022】
以下、本発明の廃棄物の分別方法について実施した実証試験について説明する。
【0023】
まず、上記(A)〜(F)の物質にそれぞれ対応する下記(A1)〜(F1)の薬剤を用いて実施した実証試験について説明する。
[試験目的]
含水率ごとの模擬異物混入土砂にて薬剤の異物を分別する効果を確認すること。
[試験使用薬剤]
(A1)アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物
(B1)アクリルアミド/ビニルスルホン酸ナトリウム共重合物
(C1)アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合物
(D1)アクリルアミド/メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合物
(E1)グアーガム
(F1)ポリ塩化アルミニウム(PAC)
[模擬異物混入土砂]
川砂:35容積%、粘土質:35容積%、異物(石):30容積%
含水率:15%(模擬異物混入土砂1m当たりの添加水量:150リットル)、20%(同200リットル)、25%(同250リットル)、30%(同300リットル)
[試験手順]
(1)各模擬異物混入土砂ごとに薬剤を添加し、均一に混合する。
(2)26.5mmメッシュの篩にて26.5mmアンダーと26.5mmオーバーに分別する。
(3)分別前重量と分別後の重量より、分別割合を算出する。
[試験結果の考察]
下記の表1−1〜表1−2に示す試験結果からも明らかなように、(A1)〜(F1)の薬剤は、模擬異物混入土砂に含まれる水が異物を分別する効果を奏するようになる含水率が30%の場合を除き、異物を分別する効果を有することを確認した。
【0024】
【表1−1】

【0025】
【表1−2】

【0026】
次に、特定の薬剤を用いて実施したより詳しい実証試験について説明する。
[試験目的]
含水率ごとの各種模擬異物混入土砂にて薬剤の異物を分別する効果を確認すること。
[試験使用薬剤]
(A1)アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物
(C1)アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合物
[模擬異物混入土砂]
(1)川砂:35容積%、粘土質:35容積%、異物(石):30容積%
含水率:15%(模擬異物混入土砂1m当たりの添加水量:150リットル)、20%(同200リットル)、25%(同250リットル)、30%(同300リットル)
(2)川砂:23容積%、粘土質:47容積%、異物(石):30容積%
含水率:25%(模擬異物混入土砂1m当たりの添加水量:250リットル)、30%(同300リットル)、35%(同350リットル)、40%(同400リットル)
(3)川砂:47容積%、粘土質:23容積%、異物(石):30容積%
含水率:15%(模擬異物混入土砂1m当たりの添加水量:150リットル)、20%(同200リットル)、25%(同250リットル)
[試験手順]
(1)各模擬異物混入土砂ごとに薬剤を添加し、均一に混合する。
(2)26.5mmメッシュの篩にて26.5mmアンダーと26.5mmオーバーに分別する。
(3)分別前重量と分別後の重量より、分別割合を算出する。
(4)判定基準は、最適な分別割合の25mmアンダー:65.5%、25mmオーバー:34.5%とする。
[試験結果の考察]
下記の表2−1−1〜表2−3−3に示す試験結果からも明らかなように、試験使用薬剤は、異物を分別する効果を有することを確認した。
【0027】
【表2−1−1】

【0028】
【表2−1−2】

【0029】
【表2−1−3】

【0030】
【表2−1−4】

【0031】
【表2−2−1】

【0032】
【表2−2−2】

【0033】
【表2−2−3】

【0034】
【表2−2−4】

【0035】
【表2−3−1】

【0036】
【表2−3−2】

【0037】
【表2−3−3】

【0038】
以上、本発明の廃棄物の分別方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の廃棄物の分別方法は、含水率の高い土砂を含む大量の瓦礫等の含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物を、周囲の環境に悪影響を及ぼさず、また、処理にエネルギや時間を要することなく処理することができることから、津波を伴う震災時に発生する含水率の高い土砂を含む瓦礫の処理の用途に好適に用いることができほか、有害物質(PCB、VOC、重金属、農薬、油等)を含有する土砂等の電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物から異物を分別するための用途に広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、下記(A)〜(F)の物質のいずれか又は複数を添加、混練した後、篩い分けを行うことにより、前記廃棄物から篩目より大きな異物を分離することを特徴とする廃棄物の分別方法。
(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(C)アルキルアミノアクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(D)アルキルアミノメタクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)
(E)天然多糖類
(F)無機系凝集剤
【請求項2】
含水した電荷を有する粒子及び異物を含む廃棄物に、前記(A)〜(F)の物質のいずれか又は複数に加え、さらに、セメント、石膏、生石灰、酸化マグネシウム、吸水性ポリマー及び界面活性剤のいずれか又は複数を添加することを特徴とする請求項1記載の廃棄物の分別方法。
【請求項3】
廃棄物が、含水率の高い土砂を含む瓦礫であることを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物の分別方法。

【公開番号】特開2012−176394(P2012−176394A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−114200(P2011−114200)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(390036515)株式会社鴻池組 (41)
【出願人】(511123429)テクニカ合同株式会社 (1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(000204114)太洋マシナリー株式会社 (18)
【Fターム(参考)】