説明

廃棄物焼却プラントの運転方法

【課題】 廃棄物等の変化により排ガスの性状が急激又は緩慢に変化した場合でも、熱交換器の低温腐食を生じさせることなく熱回収量を最大化できるようにする。
【解決手段】 廃棄物の焼却炉1と、焼却炉1から排出された排ガスGの熱を回収するボイラ2及びエコノマイザ3と、エコノマイザ3を通過した排ガスG中の煤塵、酸性ガス及び窒素酸化物を除去する排ガス処理システムとを備えた廃棄物焼却プラントの運転方法に於いて、エコノマイザ3の入口側の排ガスG中の酸露点及びSO濃度を連続的に測定し、前記酸露点の測定結果に基づいて焼却炉1内及びエコノマイザ3の入口側の排ガスG中に尿素又はアンモニアを噴霧してSOを除去することにより排ガスG中の酸露点温度を低下させ、また、前記SO濃度の測定結果に基づいてエコノマイザ3及びボイラ2へ供給される給水Wの温度を制御してエコノマイザ3の伝熱管の表面温度を酸露点温度以上に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を焼却する焼却炉から排出された排ガスの熱をボイラ及びエコノマイザにより熱回収すると共に、熱回収された排ガス中の煤塵、酸性ガスをバグフィルタ等から成る排ガス処理システムにより除去するようにした廃棄物焼却プラントの運転方法の改良に係り、低温腐食に係るパラメータを常時監視・演算し、エコノマイザの低温腐食を抑制しながら、できるだけ低温まで熱回収することにより排ガスの熱回収量を最大化できるようにした廃棄物焼却プラントの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、都市ごみ等の廃棄物を焼却する焼却炉及び焼却炉から排出された高温の排ガスの熱を回収するボイラ等を備えた廃棄物焼却プラントに於いては、エコノマイザ等の熱交換器によりSOxを含む高温の排ガスから熱回収するプロセスに於いて熱交換器の低温腐食を防止するため、熱交換器の伝熱管の鉄皮温度が酸露点温度以上になるように運転が行われている。
【0003】
尚、低温腐食は、排ガス中に含まれるSOxやHCl等の酸性ガスが露点温度以下になっている金属表面で凝縮し、硫酸や塩酸になって金属が浸食される現象を言い、特に、SO(無水硫酸)による影響が大きい。
【0004】
従って、廃棄物の焼却炉及び排ガスの熱を回収するボイラ等を備えた廃棄物焼却プラントに於いては、エコノマイザ等の熱交換器の低温腐食を防止するため、脱気器の運転圧力を0.3MPa程度、ボイラへの給水温度を130℃〜140℃程度に保つことが一般的に行われている。
【0005】
従来、排ガス中に含まれるSOxによる熱交換器等の機器の低温腐食を抑制する方法としては、例えば特開2003−106796号公報(特許文献1)や特開2003−9792号公報(特許文献2)に開示された方法が知られている。
【0006】
即ち、前者の方法は、ボイラで発生した燃焼排ガス中に含まれるSO濃度と水分量から現在の酸露点を算出し、その酸露点に基づいて熱交換器に流入する冷媒の温度を調節することにより、燃焼排ガス中のSOによる熱交換器の低温腐食を抑制するようにしたものである。
【0007】
また、後者の方法は、排ガス中のSOx濃度と水分濃度を測定して酸露点を求め、その結果に基づいて脱気器内の温度、圧力を調節し、脱気器から節炭器(エコノマイザ)への給水温度を調節することにより、排ガス中に含まれるSOxによる低温腐食を抑制するようにしたものである。
【0008】
上述したように、従来の熱交換器の低温腐食対策としては、排ガス中のSO濃度や水分濃度の計測により酸露点を予測しながら焼却プラントや発電プラント等の運転を行うようにしていた。
【0009】
しかし、前記各方法は、硫黄分を高濃度で含む化石燃料(石炭や重油等)を燃料として用いる燃焼炉等を備えたプラントには燃焼排ガスの性状が安定(燃焼排ガス中のSOx濃度の変動が小さい)しているで適用可能であるが、都市ごみ等の廃棄物を燃料とする廃棄物焼却炉等を備えたプラントには不向きであった。
【0010】
何故なら、一般の廃棄物焼却炉に於いては、燃焼排ガス中のSOx濃度は20ppm〜50ppm程度であり、その中でも低温腐食に大きな影響を与えるSOの濃度は0.01ppm〜0.1ppm程度のオーダーであり、このような濃度域に於いて連続的にSO濃度を測定する装置は未だ実用化されていないうえ、SO濃度が極めて低いのでSO濃度を正確に測定するのが困難であるからである。
【0011】
また、廃棄物焼却炉等を備えた廃棄物焼却プラントに於いては、COの排出量削減の観点から、廃棄物の廃熱回収を極大化することが求められることが必要とされており、ボイラの腐食を抑制しながら給水温度を低減する方法が求められている。
【0012】
その一方で、廃棄物焼却プラントに於いては、地震やそれに伴う火災等で発生した害ごみを受け入れる必要性があり、これら災害ごみについては倒壊家屋等から発生する石膏ボードによりSOxの濃度が極端に上昇することが一般的に知られている。
【0013】
このような状況下に於いて、ボイラへの給水温度を通常の給水温度で廃棄物焼却プラントの運転を継続していると、SOx濃度の値が極端に高くなっているのでエコノマイザ等の熱交換器の伝熱管の低温腐食が進行することが懸念される。
また、このような状況での運転を前提とすると、ボイラへの給水温度を高く設定することにより熱回収量の低下を招くことになる。
【0014】
これらの背反する要求を解決するためには、ボイラへの給水温度を一定とするのではなく、常時排ガスの性状を監視し、状況に応じて変化させることが必要であった。
【0015】
しかし、上述した従来の技術のように、SO濃度や水分濃度を連続的に測定し、酸露点を予想しながらボイラへの給水温度を制御する方法は、燃料となる廃棄物中の硫黄分を測定するが困難であり、また、その排ガスの性状を予測することも困難であり、更に、数秒〜数分でSOx濃度が一桁変化する現象を引き起こすことがあるので廃棄物焼却プラントには採用できないと言う問題があった。
しかも、ボイラ給水ポンプに於けるキャビテーションの懸念があるため、給水温度の変更(例えば、脱気器の運転圧力変更)には数十分〜1時間程度要するので低温腐食対策としては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−106796号公報
【特許文献2】特開2005−9792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、燃料となる廃棄物や運転状態の変化により排ガスの性状が急激又は緩慢に変化した場合でも、熱交換器に低温腐食を生じさせることなく廃熱回収量を最大化できるようにした廃棄物焼却プラントの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、廃棄物を焼却する焼却炉と、焼却炉から排出された排ガスの熱を回収するボイラと、ボイラから排出された排ガスの熱を更に回収するエコノマイザと、エコノマイザを通過した排ガス中の煤塵、酸性ガス及び窒素酸化物を除去する排ガス処理システムとを備えた廃棄物焼却プラントの運転方法に於いて、エコノマイザの入口側の排ガス中の酸露点及びSO濃度を連続的に測定し、前記酸露点の測定結果に基づいて焼却炉内及びエコノマイザの入口側の排ガス中に尿素又はアンモニアを噴霧してSOを除去することにより排ガス中の酸露点温度を低下させ、また、前記SO濃度の測定結果に基づいてエコノマイザ及びボイラへ供給される給水の温度を制御してエコノマイザの伝熱管の表面温度を酸露点温度以上に保つようにしたことに特徴がある。
【0019】
本発明の請求項2の発明は、ボイラのドラム水の一部をエコノマイザの入口側の給水に還流し、エコノマイザ及びボイラへ供給される給水の温度を上げるようにしたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、廃棄物の焼却炉から排出された高温の排ガスをボイラ及びエコノマイザにより熱回収し、エコノマイザを通過した排ガス中の煤塵、酸性ガス及び窒素酸化物を排ガス処理システムにより除去するようにした廃棄物焼却プラントの運転方法に於いて、エコノマイザの入口側の排ガス中の酸露点及びSO濃度を連続的に測定し、前記酸露点の測定結果に基づいて焼却炉内及びエコノマイザの入口側の排ガス中に尿素又はアンモニアを噴霧してSOを除去することにより排ガス中の酸露点温度を低下させ、また、前記SO濃度の測定結果に基づいてエコノマイザ及びボイラへ供給される給水の温度を制御してエコノマイザの伝熱管の表面温度を酸露点温度以上に保つようにしている。
【0021】
その結果、本発明は、災害ごみの混入により排ガスの性状が変化して酸露点の値が急激に変化した場合でも、焼却炉内及びエコノマイザの入口側の排ガス中に尿素又はアンモニアを噴霧してSOと尿素又はアンモニアを反応させることによりSOを除去し、排ガス中の酸露点温度を下降させることができるため、エコノマイザに低温腐食を生じさせることなく廃棄物焼却プラントの運転が可能となる。
【0022】
また、本発明は、エコノマイザの入口側の排ガス中のSO濃度を連続的に測定し、その測定結果に基づいてエコノマイザ及びボイラへ供給される給水の温度を制御してエコノマイザの伝熱管の表面温度を酸露点温度以上に保つようにしているため、エコノマイザの低温腐食を防止することができる。
【0023】
更に、本発明は、酸露点の測定による尿素噴霧制御又はアンモニア噴霧制御とSO濃度の測定による給水温度制御とを組み合せているため、短期的、長期的な排ガスの性状変動が生じた場合でも、エコノマイザの低温腐食を抑制しながら、できるだけ低温まで熱回収することができるので排ガスからの回収熱量を最大化することができる。
【0024】
加えて、本発明は、ボイラのドラム水の一部をエコノマイザの入口側の給水に還流し、エコノマイザ及びボイラへ供給される給水の温度を上げるようにしているため、例えば、災害ごみが数日間に亘って混入し、排ガス中の硫黄酸化物の濃度が極端に上昇した場合でも、ボイラへ供給される給水の温度を脱気器の能力以上に上げることができるのでエコノマイザの低温腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の方法を実施する廃棄物焼却プラントの概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の方法を実施する廃棄物焼却プラントの概略系統図を示し、当該廃棄物焼却プラントは、都市ごみ等の廃棄物を焼却する焼却炉1(例えば、ストーカ式焼却炉)と、焼却炉1の下流側に設置され、焼却炉1で発生した高温の排ガスGの熱を回収して蒸気を発生するボイラ2と、ボイラ2からの蒸気により発電する蒸気タービン及び発電機から成る発電設備(図示省略)と、ボイラ2の下流側に設置され、ボイラ2から排出された排ガスGの熱を更に回収するエコノマイザ3と、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ2の給水Wとして脱気器4、エコノマイザ3及びボイラ2の順に供給する給水供給ライン5と、エコノマイザ3の下流側に設置され、排ガスGの温度を下げる減温塔6と、減温塔6の下流側に設置され、減温された排ガスG中の煤塵、酸性ガス(SOxやHCl等)及び窒素酸化物を除去するバグフィルタ7及び無触媒脱硝又は触媒脱硝の設備等から成る排ガス処理システム(バグフィルタ7のみ図示)と、焼却炉1内の高温の排ガスGを誘引する誘引通風機(図示省略)と、排ガス処理システムにより処理されたクリーンな排ガスGを大気中へ放出する煙突(図示省略)とから構成されており、エコノマイザ3の入口側の排ガスG中の酸露点及びSO濃度を連続的に測定し、前記酸露点の測定結果に基づいて焼却炉1内及びエコノマイザ3の入口側の排ガスG中に尿素又はアンモニアを噴霧してSOを除去することにより排ガスG中の酸露点温度を低下させ、また、前記SO濃度の測定結果に基づいてエコノマイザ3及びボイラ2へ供給される給水Wの温度を制御してエコノマイザ3の伝熱管の表面温度を酸露点温度以上に保つようにし、更に、ボイラ2のドラム水W′の一部をエコノマイザ3の入口側の給水Wに還流し、エコノマイザ3及びボイラ2へ供給される給水Wの温度を更に上げるようにしたものである。
【0027】
即ち、前記廃棄物焼却プラントは、エコノマイザ3の入口側の排ガスG中の酸露点を連続的に測定する酸露点計8と、エコノマイザ3の入口側の排ガスG中のSO濃度を連続的に測定するSO濃度測定器9と、焼却炉1内及びエコノマイザ3の入口側ダクト内の排ガスG中に尿素又はアンモニアを噴霧する薬剤供給管10と、薬剤供給管10に介設され、酸露点計8からの検出信号に基づいて尿素又はアンモニアの噴霧を制御する薬剤用制御弁11と、脱気器4内の圧力を検出してその検出信号とSO濃度測定器9からの検出信号に基づいて蒸気タービンからの抽気蒸気Sを脱気器4へ供給する抽気蒸気供給管12に介設した抽気蒸気量制御弁13を制御し、脱気器4内の圧力を制御してエコノマイザ3及びボイラ2へ供給される給水Wの温度を制御する圧力制御器14と、ボイラ2のドラム水W′の一部をエコノマイザ3の入口側の給水供給ライン5に還流するドラム水環流管15と、ドラム水環流管15に介設されたドラム水環流用ポンプ16及びドラム水用制御弁17と、エコノマイザ3の出口側の給水供給ライン5を流れる給水Wの温度を検出してその検出信号とSO濃度測定器9からの検出信号に基づいてドラム水用制御弁17を制御し、給水Wの温度を更に上昇させる温度制御器18とを備えており、コノマイザの入口側の排ガスG中の酸露点及びSO濃度を酸露点計8及びSO濃度測定器9により連続的に測定し、前記酸露点の測定結果に基づいて薬剤供給管10から焼却炉1内及びエコノマイザ3の入口側の排ガスG中に尿素又はアンモニアを噴霧してSOを除去することにより排ガスG中の酸露点温度を低下させ、また、前記SO濃度の測定結果に基づいて脱気器4へ供給される蒸気タービンからの抽気蒸気Sの供給量を制御することによりエコノマイザ3及びボイラ2への給水Wの温度を制御してエコノマイザ3の伝熱管の表面温度を酸露点温度以上に保つようにし、更に、前記SO濃度の測定結果に基づいて温度制御器18によりドラム水用制御弁17を制御してドラム水W′の一部をエコノマイザ3の入口側に還流し、エコノマイザ3及びボイラ2へ供給される給水Wの温度を更に上昇させるようになっている。
【0028】
尚、酸露点計8及びSO濃度測定器9は、直接的にダクト内の排ガスGの露点及びSO濃度を連続的に測定する装置であり、これらは何れも実用化されているため、ここではその詳細な説明を省略する。
また、一般の廃棄物焼却プラントに於いては、窒素酸化物を除去するために無触媒脱硝又は触媒脱硝の何れかの設備が設置されているため、排ガスG中に尿素又はアンモニアを噴霧するための新しい噴霧設備を増設する必要もなく、既存の無触媒脱硝又は触媒脱硝の設備を使用することができる。
【0029】
上述した廃棄物焼却プラントによれば、焼却炉1内で発生した高温の排ガスGは、ボイラ2及びエコノマイザ3へ導かれてボイラ2及びエコノマイザ3により順次熱回収され、引き続き減温塔6により減温されてからバグフィルタ7等から成る排ガス処理システムに導かれ、ここで排ガスG中の煤塵、酸性ガス及び窒素酸化物が除去されてクリーンな排ガスGになった後、煙突から大気中へ放出されている。
また、ボイラ2で発生した蒸気は、蒸気タービン及び発電機から成る発電設備(図示省略)へ供給されて蒸気タービン及び発電機を駆動して発電させると共に、蒸気タービンから排出されて復水器(図示省略)で復水された後、復水タンク(図示省略)に貯留される。
更に、復水タンクに貯留された復水は、ボイラ2の給水Wとして脱気器4に供給され、ここで蒸気タービンからの抽気蒸気Sにより加熱及び脱気処理されてから給水ポンプ19によりエコノマイザ3へ供給されるようになっている。
【0030】
そして、前記廃棄物焼却プラントの運転に於いては、エコノマイザ3の入口側の排ガスG中の酸露点及びSO濃度が酸露点計8及びSO濃度測定器9により連続的に測定されており、前記酸露点の測定結果に基づいて薬剤供給管10から焼却炉1内及びエコノマイザ3の入口側の排ガスG中に尿素又はアンモニアを噴霧制御してSOを除去したり、或いは前記SO濃度の測定結果に基づいて脱気器4の運転圧力を制御することによりエコノマイザ3及びボイラ2への給水Wの温度を制御するようになっている。
【0031】
即ち、前記廃棄物焼却プラントに於いては、酸露点計8によりコノマイザの入口側の排ガスG中の酸露点を連続的に測定し、この値が急激に変化した場合(例えば、災害ごみの混入により排ガスGの性状が急激に変化して酸露点の値が上昇した場合)、酸露点計8からの検出信号に基づいて薬剤用制御弁11が開放制御され、薬剤供給管10から焼却炉1内及びエコノマイザ3の入口側の排ガスG中に尿素又はアンモニアを噴霧してSOと尿素又はアンモニアを反応させることによって、SOを除去して酸露点温度を下降させるようにしている。その結果、酸露点の値が急激に変化した場合でも、エコノマイザ3の低温腐食を防止することができる。
【0032】
尚、焼却炉1内及びエコノマイザ3の入口側の排ガスG中に尿素又はアンモニアを常時噴霧した場合、SOとアンモニアの反応により酸性硫安が生成されてこれがエコノマイザ3の伝熱面へ付着したり、或いは尿素又はアンモニアの常時噴霧により運転費用の増大につながるため、焼却炉1内及びエコノマイザ3の入口側の排ガスG中に尿素又はアンモニアを噴霧する制御は、短期的な酸露点の変動を抑制するために用いる。
【0033】
また、前記廃棄物焼却プラントに於いては、SO濃度測定器9によりエコノマイザ3の入口側の排ガスG中のSO濃度を連続的に測定し、SO濃度測定器9からの検出信号と脱気器4内の圧力検出に基づいて圧力制御器14により抽気蒸気供給管12に介設した抽気蒸気量制御弁13を制御して脱気器4内へ供給される抽気蒸気Sの量を調整し、脱気器4内の圧力を制御することによりエコノマイザ3及びボイラ2へ供給される給水Wの温度をエコノマイザ3の伝熱管の表面温度が酸露点温度以上に保たれるように制御するようになっている。その結果、硫黄酸化物の濃度が変化した場合でも、エコノマイザ3の低温腐食を防止することができる。
【0034】
尚、排ガスG中のSO濃度の測定によるボイラ2の給水温度制御は、SO濃度の1時間平均値により長期的な排ガスGの性状の変動(例えば、曜日によるごみ質の変動、ごみの収集形態による長期的な排ガスGの性状)を検知し、これに基づいてボイラ2の給水Wの温度を制御するようにしている。
即ち、ボイラ2への給水温度制御は、硫黄酸化物の長期的な変動の対応に用いられる。何故なら、廃棄物の焼却炉1に於いては、蒸発量自体が変動しながら運転されるため、給水温度の変更は時間をかけて緩慢に行う必要があるからである。
【0035】
更に、前記廃棄物焼却プラントに於いては、脱気器4は通常時の運転圧力0.3MPa、設計耐圧0.49MPa程度で運転されるケースが多いので給水Wの温度を150℃程度までしか上げることができない。
【0036】
そのため、前記廃棄物焼却プラントに於いては、ボイラ2の給水Wの温度を150℃以上に上げて運転したい場合(例えば、災害ごみが数日間に亘って混入する場合等)の対応として、ボイラ2のドラム水W′(ボイラ2の条件にもよるが、ドラム水W′の温度は一般的には200℃〜250℃程度)の一部をエコノマイザ3の入口側の給水Wに還流し、エコノマイザ3及びボイラ2へ供給される給水Wの温度を脱気器4の能力以上に上げられようになっている。
【0037】
即ち、廃棄物焼却プラントに於いては、例えば、災害ごみが数日間に亘って混入し、硫黄酸化物の濃度が大幅に上昇した場合、SO濃度測定器9からの検出信号に基づいて温度制御器18によりドラム水用制御弁17を開放制御し、ドラム水W′の一部をエコノマイザ3の入口側の給水Wに還流し、エコノマイザ3及びボイラ2へ供給される給水Wの温度を150℃以上に上昇させるようにしている。その結果、災害ごみが数日間に亘って混入し、排ガスG中の硫黄酸化物の濃度が極端に上昇した場合でも、ボイラ2へ供給される給水Wの温度を脱気器4の能力以上に上げることができ、エコノマイザ3の低温腐食を防止することができる。
【0038】
このように、上述した廃棄物焼却プラントに於いては、酸露点の測定による尿素噴霧制御又はアンモニア噴霧制御とSO濃度の測定による給水Wの温度制御とを組み合せているため、廃棄物や運転状態の変化により短期的、長期的な排ガスGの性状変動が生じた場合でも、エコノマイザ3の低温腐食を抑制しながら、できるだけ低温まで熱回収することができるので排ガスGからの回収熱量を最大化することができる。
【符号の説明】
【0039】
1は焼却炉、2はボイラ、3はエコノマイザ、8は酸露点計、9はSO濃度測定器、Gは排ガス、Wは給水、W′はドラム水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却する焼却炉と、焼却炉から排出された排ガスの熱を回収するボイラと、ボイラから排出された排ガスの熱を更に回収するエコノマイザと、エコノマイザを通過した排ガス中の煤塵、酸性ガス及び窒素酸化物を除去する排ガス処理システムとを備えた廃棄物焼却プラントの運転方法に於いて、エコノマイザの入口側の排ガス中の酸露点及びSO濃度を連続的に測定し、前記酸露点の測定結果に基づいて焼却炉内及びエコノマイザの入口側の排ガス中に尿素又はアンモニアを噴霧してSOを除去することにより排ガス中の酸露点温度を低下させ、また、前記SO濃度の測定結果に基づいてエコノマイザ及びボイラへ供給される給水の温度を制御してエコノマイザの伝熱管の表面温度を酸露点温度以上に保つようにしたことを特徴とする廃棄物焼却プラントの運転方法。
【請求項2】
ボイラのドラム水の一部をエコノマイザの入口側の給水に還流し、エコノマイザ及びボイラへ供給される給水の温度を上げるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物焼却プラントの運転方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−237137(P2011−237137A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110024(P2010−110024)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】