説明

廃水処理装置および方法

【課題】 共存カチオンの濃縮水を定期的に排出することが必要な場合でも、廃水を連続的に処理することができる廃水処理装置および方法を提供する。
【解決手段】 廃水中から金属イオンと共存するカチオンを分離し、金属イオンおよび共存するカチオン濃度が低められた処理水と金属イオンおよび共存するカチオン濃度が高められた濃縮水とを得る金属イオン分離・濃縮装置1と、前記濃縮水を金属イオン分離・濃縮装置1に循環供給して、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を得る濃縮系統2と、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水から電解析出装置3により、金属イオンを選択的に回収し、金属イオン濃度を低めた濃縮水を前記金属イオン分離・濃縮装置1に循環供給する回収系統4と、共存するカチオン濃度が高まった濃縮水を電解析出装置3に循環供給する金属イオン低減系統5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種廃水から連続的に金属イオンを除去し、固体として回収する廃水処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき廃水、半導体装置製造工程廃水、プリント基板製造廃水、鉱山廃水などのような廃水中には、比較的少量であるが有価物である貴金属イオンや環境上の観点から外部放出が規制される重金属イオンが含有されている。
また、連続製造プロセスの採用により、廃水も連続的に発生することが多くなっている。
このような貴金属や重金属を含む廃水の処理にあたっては、廃水中の貴金属を高度に回収すること、または廃水を無害化して外部に放出可能なレベルにまで重金属を高度に除去し、必要に応じてこれを回収することが求められているとともに、連続処理が求められている。
【0003】
例えば、近年、半導体集積回路などの半導体装置の製造において、微細化への要求が一段と厳しくなるのに伴って、配線抵抗による信号遅延が問題になってくる。この問題を解決するためにアルミニウムやタングステンなどに代えて銅配線が用いられるようになってきた。
【0004】
即ち、CPUやDRAMなどの半導体チップの高集積化に伴い、チップ内の配線材料として、従来のアルミニウムから、より電気抵抗の低い銅が採用されつつあり、特に配線の最小線幅が0.13μm以下のチップで採用されつつある。
【0005】
このような銅配線を用いる場合、銅はエッチングによるパターン形成が困難なため、通常、めっきによるダマシンプロセスで成膜し、成膜後に化学機械研磨(CMP)や電解研磨(ECP)などの方法によって膜の表面を研磨して配線を形成する。図12(a)乃至図12(e)にその配線形成方法の一例を示す。
【0006】
まず、図12(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材201の上に導電層202を形成し、この上に更にSiOからなる絶縁膜203を堆積する。そして、絶縁膜203の層の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、コンタクトホール204と配線用の溝205を形成する。次に、図12(b)に示すようにバリア層206を形成する。バリア層としては、例えば、Ta、TaN、TiN、WN、SiTiN、CoWP、CoWB等の金属若しくは金属化合物材料が用いられる。次に、電解めっき法で銅層を形成する場合には、図12(c)に示すように、バリア層206の上に電解めっきの給電層としての銅シード層207をスパッタリング法などにより形成する。また、銅層を無電解めっき法で形成する場合には、銅シード層に代えて、バリア層206の上に前処理を行って触媒層207を形成する。
【0007】
次に、図12(d)に示すように、銅シード層若しくは触媒層207の表面に電解めっき法若しくは無電解めっき法で銅めっきを施すことにより、コンタクトホール204及び配線用溝205内に銅を充填させると共に、絶縁膜203の上に銅層208を堆積させる。その後、化学機械研磨(CMP)法や電解研磨(ECP)法などによって絶縁膜203上の銅層208を除去して、コンタクトホール204及び配線用溝205に充填した銅層208の表面と絶縁膜203の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図12(e)に示すように、絶縁膜203の内部に銅シード層若しくは触媒層207、銅層208からなる配線を形成する。
【0008】
このような状況下で、半導体装置製造工程における電解若しくは無電解めっき法による銅めっき工程や、集積回路マイクロチップの化学機械研磨(CMP)若しくは電解研磨(ECP)工程においては、銅イオンを含む廃水が大量かつ連続的に生じる。
廃水中の銅イオンに関しては、許容限度として、日本では最大濃度が3.0mg/L以下に規制されており、また米国においては、一例として最大濃度が2.7mg/L以下、一日あたりの平均濃度が1.0mg/L以下、1年あたりの平均濃度が0.4mg/L以下に、より厳しく規制されている。従って、廃水中の銅を効率よく且つ連続的に除去する技術を提供することが強く求められている。
【0009】
現在の半導体装置製造工場においては、CMP装置1台あたり最大で0.5m/h程度の廃水が生成され、廃水中の銅濃度は最大で100mg/L程度であり、同様に銅めっき装置1台あたり最大で0.2m/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で200mg/L程度というのが大凡の現状である。銅配線を利用する半導体装置の平均的な半導体装置製造工場では、一つの工場あたり銅配線工程用のCMP装置が10台程度、銅めっき装置が5台程度設置されている場合があり、これら装置から排出される銅含有廃水の総量は最大で220m/日程度になり、廃水中に含まれる銅の総量は最大で約22kg−Cu/日にもなる。従って、この連続的に廃水から銅を効率よく回収して、再利用することが、環境保護のみならず省資源の観点からも強く求められている。
【0010】
また、従来の半導体装置製造を含む設備産業では、工場内における各種工程からの廃水を集めて回収し、これを一括して処理するという総合廃水処理設備の考え方が主流であったが、製造プロセスの技術の進化が早い半導体装置製造においては、それぞれの工程での廃水をその場で処理するという方法、即ちユースポイントで廃水を処理する方法が求められている。これは、従来の少品種・大量生産型から多品種・少量生産型へと生産方式が変わってきているため、製造品種の変更頻度の増加に伴って廃水の性状変動も大きくなり、従来の方法ではこの性状の変動に対応することが難しいことや、各プロセスから発生する個別の廃水に対応して処理を行った方が金属の回収・再利用のプロセスが容易であることなどの理由による。
【0011】
また、連続的に発生する廃水の処理には、廃水処理施設も連続的に処理可能であることが求められる。もし、廃水処理施設が運転維持や保守のために断続運転の必要がある場合は、廃水処理施設の中に予備機を設けるかまたは廃水のバッファータンクを設けるといった対策が必要となり、結果として設備が大きくなり、コストも大きくなるという問題が生じる。
【0012】
従来、これらの金属イオンを含む廃水の処理方法としては、(1)不溶性の水酸化物や硫化物を形成する薬品を添加する沈殿法、(2)イオン交換樹脂に吸着させるイオン交換法、(3)陰極表面における電気化学反応により析出させる電解析出法が主に用いられてきた。
金属イオン濃度が比較的濃厚な場合は電解析出法が金属の回収ができるので多く用いられている。金属イオン濃度が希薄な場合は、イオン交換樹脂法や沈殿法が用いられている場合が多い。これは、金属イオン濃度が200mg/L程度を下回るような希薄な廃液を直接電解析出法で処理しようとすると、電解析出槽の運転電圧が上昇し、電流効率が低下するので採用しがたいためであった。
【0013】
CMPプロセス廃水や銅めっき廃水中の銅濃度は通常200mg/L以下と希薄な廃水であるので、これまでは、これらの廃水からの銅の回収処理には、電解析出法は用いられていなかった。イオン交換樹脂法では銅は銅イオンとしてイオン交換樹脂に吸着されて回収され、また凝集沈殿法では銅は水酸化物又は酸化物の形態で沈殿・回収されるので、いずれも、回収された銅を再利用する際には、更なる処理が必要である。
【0014】
沈殿法は、廃水の連続処理が可能な方法であるが、大量の薬品を使用することと金属含有スラッジが副生して二次処理が必要という問題がある。特に、銅含有廃液を処理した場合には沈殿した水酸化銅は含水率が高くすなわち単位体積あたりの銅含有量が小さいスラッジであり、再利用が困難な金属水酸化物が多量に生産され、しかも後で銅が再溶解して環境を汚染しないような方法で保管しなければならないという問題がある。
【0015】
イオン交換法は、高度に金属イオンの吸着除去ができる方法であるが、吸着飽和したイオン交換樹脂の再生に多量の酸を必要とすることと金属含有濃縮排水が副生して同様に二次処理が必要であるという問題がある。特に、CMPプロセス廃水のように、銅イオンのほかにアンモニウムイオンやカリウムイオンなどの共存カチオンを多量に含む場合は、多量のイオン交換樹脂が必要であり、再生廃水も多量になるという問題がある。また、再生操作のため廃水の連続処理ができないので、連続的に発生する廃水の処理には問題がある。
【0016】
電解析出法は、廃水中に溶解している金属イオンを陰極上に析出させて金属として回収する方法であり、銅の回収方法としては工業的規模で100年以上も実施されている操作が簡便で安価な方法であるが、CMP廃水やメッキ装置リンス水などの希薄でしかも性状が一定ではない半導体製造工程排水の処理に適用する場合にはいくつかの課題がある。
【0017】
第1の課題として、電解析出を工業的に行なうためには電解槽からの金属の排出を安定して望ましくは連続的に行なう必要がある。溶液中の金属イオンが銅の場合には、容易に粉末状または微粒子状に電解析出させることができるので、電解槽から銅粉末状態で排出することが可能である。ただし、粉末状態で安定して排出するためには、銅粉末の析出状態を一定に保つこと及び陰極からの銅粉末の掻き落し及び陰極室からの銅粉末の排出を安定してかつ連続的に行なうことが求められる。
【0018】
第2の課題として、電解析出を廃水処理に適用するには電解槽の出口処理水の金属イオン濃度が所望する許容濃度まで安定して低減できることが必要である。出口処理水の金属イオン濃度が許容濃度まで安定して低減できない場合には再度廃水処理装置の入口に戻して許容濃度まで低減することが必要となり、結果として複雑な工程となり、設備は大きくなって処理費用が高くなるという問題が生じてくる。もちろん再度排水処理装置の入口に戻さずにイオン交換樹脂法などの追加の処理工程を設けてもよいが、その場合は、更に装置の機器点数が増加して設備が大きくなるという問題が生じる。
【0019】
第3の課題として、金属イオンと共存する廃水中のカチオン対策がある。例えば、CMP廃水には、銅イオンのほかに電解析出されないアンモニウムイオンやカリウムイオンなどのカチオンが大量に含まれている場合がある。めっきリンス水には、銅イオンのほかにめっき性を向上させるための添加剤として電解析出されない有機物のカチオンが含まれている場合がある。
これらの共存カチオンは、金属イオン分離・濃縮装置で銅イオンとともに透析され、濃縮水中に移行するが、銅などの金属イオンと異なり、電解析出装置で析出して除去されないため、濃縮水内で次第に濃度が高まっていき、液中に許容される溶解度を超えると析出物を生じるので、共存カチオンの濃度が所定の値を越えないようにする必要がある。
【0020】
第4の課題としては、共存カチオンの濃度が所定の値を越えないようにするために、共存カチオンの濃縮水を周期的に排出するようにしたとしても、連続的に発生してくる廃液の処理を連続処理可能とすることが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みなされたもので、共存カチオンの濃縮水を定期的に排出することが必要な場合でも、廃水を連続的に処理することができる廃水処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、廃水中から電気透析操作と電解析出操作を組み合わせて金属イオンを回収する方法において、金属イオンおよび共存するカチオンを濃縮する濃縮系統または濃縮工程、金属イオンを回収する回収系統または回収工程、金属イオン回収後の濃縮水を系統外に排出する排水路または排出工程を組み合わせることにより、廃水中に金属イオンおよび共存するカチオンを含有する場合でも、連続的に廃水の処理ができ、金属イオン濃度が低められた処理水と金属を回収できることを見出した。
【0023】
上述した目的を達成するため、本発明の廃水処理装置は、少なくとも金属イオン及び共存するカチオンを含む廃水を処理し、金属イオン濃度が低められた処理水を得るとともに、金属イオンを金属として回収する廃水の処理装置であって、廃水中から電気透析操作により金属イオンと共存するカチオンを分離し、金属イオンおよび共存するカチオン濃度が低められた処理水と金属イオンおよび共存するカチオン濃度が高められた濃縮水とを得る金属イオン分離・濃縮装置と、前記濃縮水を金属イオン分離・濃縮装置に循環供給して、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を得る濃縮系統と、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を電解析出装置に受け入れて、金属イオンを選択的に回収し、金属イオン濃度を低めた濃縮水を前記金属イオン分離・濃縮装置に循環供給する回収系統と、共存するカチオン濃度が高まった濃縮水を前記電解析出装置により金属イオン濃度を低めた濃縮水を得るために前記電解析出装置に循環供給する金属イオン低減系統を備えることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の一態様によれば、前記金属イオン低減系統により金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出する排水路を備えることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記濃縮系統または回収系統または金属イオン低減系統は、系統内に純水および酸水溶液を受け入れることができることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記電解析出装置は、陰極の外部に陽極を配置して陰極を回転させながら陰極表面に金属を析出させる回転電解槽からなることを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様によれば、前記回転可能な陰極に接触または近接してスクレイパーを配置し、陰極に析出した金属を掻き取るようにしたことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記スクレイパーで掻き取られて陰極表面から剥離した金属は、濃縮水とともにフィルタに送られ、該フィルタによりろ過捕捉されることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記濃縮系統と前記金属イオン低減系統は同時に運転可能であることを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様によれば、前記回収系統の運転中に前記排水路から金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出することを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記金属イオン含有廃水は、半導体製造装置からの廃水または該廃水を前処理した廃水であることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記金属イオン含有廃水中の金属イオンは、銅配線形成工程の半導体製造装置から発生する銅イオンであることを特徴とする。
【0027】
本発明の廃水処理方法は、少なくとも金属イオン及び共存するカチオンを含む廃水を処理し、金属イオン濃度が低められた処理水を得るとともに、金属イオンを金属として回収する廃水の処理方法であって、廃水中から電気透析操作により金属イオンと共存するカチオンを分離し、金属イオンおよび共存するカチオン濃度が低められた処理水と金属イオンおよび共存するカチオン濃度が高められた濃縮水とを得る金属イオン分離・濃縮工程と、前記濃縮水を金属イオン分離・濃縮装置に循環供給して、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を得る濃縮工程と、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を電解析出装置に受け入れて、金属イオンを選択的に回収し、金属イオン濃度を低めた濃縮水を前記金属イオン分離・濃縮装置に循環供給する回収工程と、共存するカチオン濃度が高まった濃縮水を前記電解析出装置により金属イオン濃度を低めた濃縮水を得るために前記電解析出装置に循環供給する金属イオン低減工程を備えることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の一態様によれば、前記金属イオン低減工程により金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出する排出工程を備えることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記排出工程の後に、系統内に純水および酸水溶液を補充する補充工程を備えることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記電解析出装置は、陰極の外部に陽極を配置して陰極を回転させながら陰極表面に金属を析出させる回転電解槽からなることを特徴とする。
【0029】
本発明の一態様によれば、前記回転可能な陰極に接触または近接してスクレイパーを配置し、陰極に析出した金属を掻き取るようにしたことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記スクレイパーで掻き取られて陰極表面から剥離した金属は、濃縮水とともにフィルタに送られ、該フィルタによりろ過捕捉されることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記濃縮工程と前記金属イオン低減工程は同時に行うことが可能であることを特徴とする。
【0030】
本発明の一態様によれば、前記回収工程中に金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出する排出工程を行うことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記金属イオン含有廃水は、半導体製造装置からの廃水または該廃水を前処理した廃水であることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記金属イオン含有廃水中の金属イオンは、銅配線形成工程の半導体製造装置から発生する銅イオンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、金属イオンおよび共存するカチオンを含有した廃水中の共存するカチオンの濃度を所定の値を越えないようにすることができるとともに、共存カチオンの濃縮水を周期的に排出するようにしたとしても、連続的に発生してくる廃液を連続的に処理することができる。
また本発明によれば、金属イオンの濃度が薄く、共存するカチオンを含む廃水を、金属イオン分離・濃縮装置に連続的に受け入れ、共存カチオンを排出しつつ金属を回収することが1台の回転電解槽で行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図を参照しながら本発明の基本概念および各種態様を説明する。以下の図面において、同じ参照番号は同じ構成要素を意味する。
【0033】
図1(a)および図1(b)は、本発明に係る廃水処理装置の基本概念を示す概念図である。図1(a)および図1(b)に示すように、本発明の廃水処理装置は、廃水中から電気透析操作により金属イオンと共存するカチオンを分離し、金属イオンおよび共存するカチオン濃度が低められた処理水と金属イオンおよび共存するカチオン濃度が高められた濃縮水とを得る金属イオン分離・濃縮装置(電気透析装置)1と、前記濃縮水を金属イオン分離・濃縮装置1に循環供給して、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を得る濃縮系統2(図1(a))と、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を電解析出装置3に受け入れて、金属イオンを選択的に回収し、金属イオン濃度を低めた濃縮水を前記金属イオン分離・濃縮装置1に循環供給する回収系統4(図1(b))と、共存するカチオン濃度が高まった濃縮水を前記電解析出装置3により金属イオン濃度を低めた濃縮水を得るために前記電解析出装置3に循環供給する金属イオン低減系統5(図1(a))を備えている。
【0034】
図1(a)に示すように、本発明の廃水処理装置は、金属イオン低減系統5により金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出する排水路6を備えている。また、図1(a)及び図1(b)に示すように、本発明の廃水処理装置における濃縮系統2または回収系統4または金属イオン低減系統5は、系統内に、純水を受け入れることができる供給路7aと酸水溶液を受け入れることができる供給路7bとを備えている。
【0035】
図2乃至図5は、図1に示す本発明の基本概念に基づいて連続運転可能な廃水処理装置の構成を示す処理フロー図である。図6は、図2乃至図5に示す処理フロー図に基づく金属イオン濃度および共存するカチオン濃度の推移を示した図である。図2乃至図5に示す実施形態では、金属イオン分離・濃縮装置1、濃縮系統2、電解析出装置3、回収系統4、金属イオン低減系統5、2つのタンクT1,T2、2台のポンプP1,P2、排水路6、供給路7a,7bを備えた廃水処理装置が示されている。
【0036】
図2は、原水(廃水)から金属イオン及び共存するカチオンを電気透析操作により選択的に分離し、処理水として金属イオン及び共存カチオンの濃度を低めた処理水を得るとともに金属イオン及び共存イオンの濃度を高めた濃縮水を得る濃縮工程と、既に処理装置内にある濃縮水を排出するために濃縮水中の金属イオン濃度を低める金属イオン低減工程を行なう処理フローを示す。
【0037】
濃縮工程においては、濃縮水が金属イオン分離・濃縮装置1、第1タンクT1を通る濃縮系統2を循環する。金属イオン低減工程においては、共存するカチオン濃度が高まった濃縮水が電解析出装置3、第2タンクT2を通る金属イオン低減系統5を循環する。
【0038】
電解析出操作で効率的に陰極上に金属を析出させるには、濃縮水中の金属イオン濃度は100mg/L以上、好ましくは200mg/L以上の濃度を有することが高い電流効率を得ることができるので望ましい。また、析出物の性状を一定(例えば粉末状)にする場合には、濃縮水の金属イオン濃度はほぼ一定になっていることが望ましい。また、濃縮水中で金属水酸化物や金属酸化物を生成しないように、濃縮水のpHは酸性側、好ましくはpH1から4に維持する必要があるが、加える酸としては有害な電極反応を生じない硫酸が好ましい。
【0039】
一方、電気透析操作でイオン交換膜を介してイオンを原水側から濃縮水側に移動させてイオン濃度を1mg/L以下のレベルまで低めた処理水とイオン濃度を高めた濃縮水を得る際に、濃縮水の濃度を高めて1000mg/L以上になると、濃縮水から処理水にイオンが濃度拡散で逆流して処理水の金属イオン濃度を高めてしまう現象が現れる場合があり、好ましくない。
【0040】
従って、原水(廃水)を電気透析操作で金属イオンを低めた外部に放出可能な処理水を得るとともに、金属イオンが濃縮された濃縮水を得て、その濃縮水から電解析出操作で金属を粉末状に回収しようとする際には、濃縮水は純水に硫酸を加えて、pHを1から4に調整したものが好ましく、濃縮水中の金属イオン濃度も100から1000mg/L、好ましくは200から500mg/Lにするのが、処理水の金属イオン濃度を0.5mg/L以下に保ちながら、電解析出装置の電流効率を80%以上に維持できるので好適である。
【0041】
処理装置内にある濃縮水を排水路6から外部に排出する際は、金属イオン濃度を許容限度以下に低下させる必要がある。濃縮水を電解析出装置に循環供給すれば、次第に金属イオン濃度は低下し、外部に放出可能な濃度を下回ることができる。濃縮水中の金属イオン濃度が低下して100mg/L以下になると電流効率は次第に低下するが、装置内に残留する濃縮水を排出するための一時的な運転であるので問題にはならない。
【0042】
処理装置の立ち上げ時などで装置内に排出すべき濃縮水を保有していないときは金属イオン低減工程を行なう必要がないことは言うまでもない。
【0043】
図3は、原水(廃水)から金属イオン及び共存するカチオンを電気透析操作により選択的に分離し、処理水として金属イオン及び共存カチオンの濃度を低めた処理水を得るとともに金属イオン及び共存イオンの濃度を高めた濃縮水を金属イオン分離・濃縮装置1で分離した金属イオンに相当する量を電解析出装置3で析出させて金属として回収する回収工程と、前記金属イオン低減工程で金属イオン濃度を低めた濃縮水を排水路6から系外に排出する排出工程と、系統内に純水および硫酸水溶液を補充する補充工程を行う処理フローを示す。回収工程においては、濃縮水が金属イオン分離・濃縮装置1、電解析出装置3、第1タンクT1を通る回収系統4を循環する。排出工程においては、第2タンクT2から金属イオン濃度を低めた濃縮水を排水路6を介して系外に排出する。補充工程においては、純水および硫酸水溶液を第2タンクT2に所定量補充する。
【0044】
濃縮水中の金属イオン濃度は、濃縮工程において電解析出装置で効率的に電解析出される濃度にまで高まっており、かつ金属イオン分離・濃縮装置で富化されるので、電解析出装置の電流値を適正に制御することにより濃縮水中の金属イオン濃度のレベルをほぼ一定に保ちながら、金属イオンを電解析出装置で回収するのは容易である。もちろん電解析出装置が効率的に運転できる範囲で、電解析出装置の電流値を制御して、濃縮水中の金属イオン濃度を増加傾向に運転することも減少傾向に運転することも可能であり、なんら問題はない。
【0045】
電解析出装置は、スクレイパーを内蔵する回転電解槽が連続運転に適しており好ましい。回転する陰極の表面に析出した金属は、スクレイパーでかきとられ、陰極面から剥離した金属粉末はバグフィルタ(BF)で捕捉される。バグフィルタは並列に複数設置するか、バグフィルタにバイパス経路を設置してバグフィルタの交換時にはバイパス運転をすれば容易に交換可能である。
【0046】
濃縮水中の共存カチオンは、電解析出装置では析出しないので濃縮水中の濃度は次第に増加する。共存カチオンの濃度が溶解度を超えるまで高まると溶液中に析出し、回収をする金属に混入し、ひいては配管内を閉塞させるので好ましくない。
このため、回収工程の運転は、共存カチオンの濃度が溶解度を超えない範囲で行なうのが好ましく、共存カチオンの濃度が溶解度に近くなった際に回収運転を停止すればよい。
【0047】
系統内にある金属イオン濃度が低められた濃縮水を排出する際は、一度に排出してもよいし、少量ずつ処理水に混入させながら排出してもよい。金属イオン濃度がまだ十分に低められていない場合は、少量ずつ処理水に混入させながら排出することにより金属イオン濃度は許容値を下回ることができる。
濃縮水を排出した後は、純水と硫酸水溶液を系統内に補充し、次の濃縮工程に備えて待機する。
【0048】
図4は、図2に示す処理フローと同一操作を装置内の別の系統を利用して行う処理フローを示す。
このフローに示す濃縮工程においては、濃縮水が金属イオン分離・濃縮装置1、第2タンクT2を通る濃縮系統2を循環する。一方、金属イオン低減工程においては、共存するカチオン濃度が高まった濃縮水が電解析出装置3、第1タンクT1を通る金属イオン低減系統5を循環する。
【0049】
図5は、図3に示す処理フローと同一操作を装置内の別の系統を利用して行う処理フローを示す。ここに示す回収工程においては、濃縮水が金属イオン分離・濃縮装置1、電解析出装置3、第2タンクT2を通る回収系統4を循環する。一方、排出工程においては、第1タンクT1から金属イオン濃度を低めた濃縮水を排水路6を介して系外に排出する。補充工程においては、純水および硫酸水溶液を第1タンクT1に所定量補充する。
図2から図5は、図1(a)および図1(b)に示す基本概念における配管系統を示した一例であり、本発明を制約するものではない。なお、図では計器や弁類は記載を省略している。
【0050】
図6は、図2から図5に示した濃縮工程、回収工程、金属イオン低減工程、排出工程及び補充工程におけるタンクT1及びタンクT2の内部の金属イオン及び共存するカチオン濃度の推移を模式的に示したものである。
濃縮工程では、タンク内の金属イオン及び共存するカチオン濃度は次第に高まり、金属イオン濃度は電解析出に適した濃度に至る。
共存するカチオン濃度も高まるが、例えば、Cu−CMP廃水のように共存カチオンとして、カリウムイオンやアンモニウムイオンを含む場合は、電気透析操作では析出しないカチオンであり、かつ処理水中の濃度を1mg/L以下に低める必要がないイオンであるので、濃縮工程では共存するカチオン濃度による影響を考慮する必要がない。
【0051】
回収工程では、タンク内の金属イオン濃度は金属イオン分離・濃縮装置1により富化された分が、電解析出装置3で低められるので、ほぼ同じ濃度レベルを維持する。
タンク内の共存するカチオン濃度は電解析出装置3では低めることはできないので、次第に濃度が高まり、共存カチオンの種類で設定される共存カチオン上限濃度に至る。
【0052】
金属イオン低減工程では、タンク内の金属イオン濃度は次第に低下し、外部に放出可能な金属イオン濃度に至る。共存するカチオン濃度は変化しない。
排出工程では、タンク内から濃縮水の排出を行うだけなので、タンク内の金属イオン及び共存するカチオン濃度は変化しない。
補充工程では、純水及び硫酸水溶液をタンク内に補充することにより金属イオン濃度と共存するカチオン濃度は希釈されて低下する。
【0053】
以下、本発明の電解析出装置3を図7乃至図11を参照して説明する。以下の図面において、同じ参照番号は同じ構成要素を意味する。
図7は、本発明に係る電解析出装置の一実施形態を示す概略図である。
図7に示すように、電解析出装置3は、電解槽12と、電解槽12内に配置された略円筒状の陰極13と、電解槽12内に配置されるとともに陰極13の外周側に配置されたカチオン交換膜14と、カチオン交換膜14の外周表面にカチオン交換体15を介して設置された陽極16とを備えている。
【0054】
陰極13には回転軸17が設けられており、回転軸17に連結されたモータ(図示せず)により陰極13は回転されるようになっている。陽極16はガス透過性の材料から構成されている。また、陰極13と陽極16との間に直流電流を供給する直流電源(図示せず)が設けられている。陰極13の近傍には、陰極13の表面に析出した金属の一部を剥離させるスクレイパー18が設置されている。電解槽12内は、カチオン交換膜14により、陽極室19と陰極室20とに区分されている。
電解槽12の底部には循環ライン21が配設されており、循環ライン21には循環ポンプ22とバグフィルタ23とが設置されている。
【0055】
図7に示す電解析出装置3において、まず、原水(被処理水)は回転する陰極13とカチオン交換膜14との間に設けられた陰極室20に導入される。陰極13と陽極16との間に印加した直流電流により、廃水中の金属イオンは陰極13の表面上に粉末状または針状の金属として析出する。析出した金属の一部は、陰極表面近傍に設けられたスクレイパー18により陰極13より剥離させる。陰極表面から剥離した金属は電解槽12の底部に設けられた循環ライン21に導入され、バグフィルタ23により回収される。このとき、陰極13の表面は常にスクレイパー18により掻き取られているので、陰極13の表面状態が一定となり、析出金属の状態も電解質溶液、電流密度、陰極回転数等を調整することにより容易に制御できる。
【0056】
ガス透過性の陽極16とカチオン交換膜14との間には、カチオン交換体15が設置されており、陽極16が設置されている陽極室19には純水が供給されている。このような構成とすることにより、陽極16のカチオン交換体15との接触表面で純水電解により発生する酸素ガスは、カチオン交換膜14で遮断されて陰極室20に混入しないので、陰極13から剥離した金属が再溶解して金属イオンに戻ってしまうことはない。また廃水が直接に陽極16に接することがないので、廃水の腐食性が高い場合においても陽極16の劣化が起きることはない。金属イオンが金属として回収された後の水は、陰極13とカチオン交換膜14との間の陰極室20から取り出される。
【0057】
図7に示すような陽極室19と陰極室20を隔離した構造ではなく、図11に示すように陽極室19と陰極室20を連通させ、陰極室19に、酸素を含まない不活性なガスを加圧して供給し陰極室から陽極室にガスの流れを作り、陽極室で発生する酸素が陰極室に混入しないようにすることにより剥離した金属の再溶解を防ぐことができる。このとき供給する不活性ガスとしては窒素ガス、アルゴンガスが好適に用いられる。
【0058】
図7に示す電解析出装置3においては、陽極室19では純水中で陽極16とカチオン交換体15が接触しているので、電位勾配下でカチオン交換体15と接触している陽極表面で容易に純水の電解が起こり、酸素ガスとHイオンが生成する。酸素ガスは、ガス透過性の電極である陽極16を通り電極背後の陽極室19に抜けて排出される。Hイオンは電位勾配によりカチオン交換体15を経由してカチオン交換膜14を透過して陰極室20に移動する。純水は電解により消費されるので補給を必要とするが、所定量供給して過剰な純水は陽極室19からオーバーフローさせる方式でもよいし、純水を循環供給させてもよい。
【0059】
陰極13の表面では金属が還元されて析出するが、金属イオン濃度が希薄になるとHイオンも還元されて水素ガスが発生するようになる。陰極13の表面で発生する水素ガスは系外に排出する。排出する際は外部より導入された希釈ガスと共に系外に排出してもよいし、陽極室19に導入して陽極16の表面で発生する酸素ガスとともに陽極室19から系外に抜き出してもよい。この希釈ガスは陰極液中に酸素を溶存させないようにするのが好ましく、窒素ガスや不活性なアルゴンガスが好適に用いられる。陰極13の表面は析出金属の剥離性を向上させることを目的として平滑な面としてもよい。また、陰極13の表面積を増して電流密度を低下させて、析出物を針状または粉末状で析出させることを目的として陰極13の表面に凹凸を設けてもよく、種々の表面状態が適用可能である。
【0060】
陰極表面に効率的且つ均一に析出物を析出させる点で、電解槽12内の被処理水を十分に撹拌することが好ましい。攪拌方法としては陰極の回転速度を高める方法および廃水(原水)を旋回させるように陰極の接線方向に導入する方法を挙げることができる。
図8は、原水を円筒状の電解槽12および円筒状のカチオン交換膜14の接線方向に導入し、原水を旋回させる例を示す概略図である。
【0061】
カチオン交換膜14と陽極16の間には、カチオン交換体15が充填される。この場合イオン交換体としては、公知のイオン交換樹脂またはイオン交換樹脂をバインダーで成型したものやイオン交換樹脂をスポンジ等の多孔質基材や布状の基材に接着したものを用いてもよいが、高分子繊維基材にイオン交換基をグラフト重合法によって導入したものが好ましく用いられる。高分子繊維よりなるグラフト化基材は、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、且つイオン交換基が連続して分布しているので好ましい。イオン交換繊維材料の形態としては、織布、不織布などを挙げることができる。
【0062】
なお、放射線グラフト重合法とは、高分子基材に放射線を照射してラジカルを形成させ、これにモノマーを反応させることによってモノマーを基材中に導入するという技法である。
放射線グラフト重合法に用いることができる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等を挙げることができるが、本発明においてはγ線や電子線を好ましく用いる。放射線グラフト重合法には、グラフト基材に予め放射線を照射した後、グラフトモノマーと接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、本発明においては、いずれの方法も用いることができる。また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などを挙げることができるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。
【0063】
不織布などの繊維基材に導入するイオン交換基としては、特に限定されることなく種々のカチオン交換基等を用いることができる。例えば、カチオン交換基としては、スルホン基などの強酸性カチオン交換基、リン酸基などの中酸性カチオン交換基、カルボキシル基などの弱酸性カチオン交換基を用いることができる。
【0064】
これらの各種イオン交換基は、これらのイオン交換基を有するモノマーを用いてグラフト重合、好ましくは放射線グラフト重合を行うか、またはこれらのイオン交換基に転換可能な基を有する重合性モノマーを用いてグラフト重合を行った後に当該基をイオン交換基に転換することによって、繊維基材に導入することができる。この目的で用いることのできるイオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸(AAc)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強酸性カチオン交換基であるスルホン基を導入することができる。また、イオン交換基に転換可能な基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)などが挙げられる。例えば、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフト重合によって基材に導入し、次に亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させることによって強酸性カチオン交換基であるスルホン基を基材に導入したりすることができる。
【0065】
図9は、本発明に係る電解析出装置の他の実施形態を示す概略図である。図7に示す実施形態においては処理水を陰極室20から取り出すようにしたが、図9に示す実施形態においては、バグフィルタ23を通過した後の処理水を取り出すようにしている。図9に示す実施形態のその他の構成は、図7に示す実施形態と同様である。
【0066】
図10は、本発明に係る電解析出装置の更に他の実施形態を示す概略図である。図10に示す実施形態においては、処理水を貯留する貯留槽24を設置し、陰極室20から取り出された処理水を貯留槽24に貯留している。そして、貯留槽24に貯留された処理水は、ポンプ25により陰極13とカチオン交換膜14との間に設けられた陰極室20に戻すことができるようになっている。その他の構成は、図7に示す実施形態と同様である。
【0067】
次に、図7に示す電解析出装置3の具体例を説明する。
陽極16はラス板状のTi/Ptめっきのものを用いている。陰極13はSUS304製の表面が平滑なものを用いている。陰極3の回転速度は1〜500rpmである。陰極表面での電流密度は1〜10A/dmである。陰極13の内周面及び外周面の水面部分はテフロン(登録商標)樹脂コーティングされていて所定の外周表面部にだけ金属が析出可能となっている。金属イオンを含有する陰極液(原水)はバッチで供給してもよいが、陰極室20に連続して供給、抜き出しをする方式が陰極室20の金属イオン濃度の変動が少なく電解析出条件として好ましい。陰極液を供給する一例としては、図7に示すように、回転陰極の外側に上部から陰極液(原水)を流入させ、回転陰極の内側に設けた堰の上部からオーバーフローして抜き出す方法が、スクレイパー18で掻き取られた金属粉末を陰極室20外に流出させることがないので好ましい。また、陰極液を陰極室20の側面から陰極13の接線方向で且つ回転方向に対向して流入させると、陰極表面の境膜厚さをより低減させることができるのでさらに好ましい。
スクレイパー18で掻き取られた金属粉末は、陰極室20の底部に設けた出口ノズルからポンプ流で循環してバグフィルタ23で濾過する。バグフィルタ23の孔径は1〜10μmである。
【0068】
陽極16の材質としては、Ti/Ptめっきなどの不溶解性電極として用いられるものが好ましい。陽極16の形状は多孔性であることが好ましく、網状またはラス網状(エキスパンデッドメタル)のものがよい。陰極13の材質はステンレスが好ましい。陰極13の回転速度は1〜500rpm、好ましくは50〜200rpmである。陰極13と陽極16の電極間距離は20〜50mmの中から選定することができる。陰極表面での電流密度は2〜3A/dmの範囲であることが好ましい。バグフィルタ23の孔径は1〜10μmの範囲であることが好ましい。処理水の取り出し口は陰極室またはバグフィルタの出口のいずれに設けてもよい。スクレイパー18の材質は、耐薬品性に優れた樹脂またはセラミックであることが好ましい。スクレイパー18と陰極13の距離は0.5〜5mmであることが好ましい。
【0069】
装置に供給する原水(被処理水)は、電解析出に有害な影響を与える物質を除去または分離し、及び必要に応じて効率良く電解析出できるように濃縮する前処理を行うことが好ましい。活性炭とイオン交換樹脂を用いて、廃液中の過酸化水素等の酸化剤を活性炭で分解した後に、金属イオンをイオン交換樹脂に吸着させて廃液から分離して酸で再生すれば、0.5〜5g/L程度の電解析出に適した酸性溶液が得られるので、これを用いるのが望ましい。また、本件出願人の先願である特願2003−125889(未公開)に示されるように白金担持触媒と電気透析の組合せで前処理をすれば、0.5〜1g/L程度の電解析出に適した酸性溶液が連続的に得られるので更に好ましい。廃液の性状によっては前処理を必要とせず、直接電解析出工程に廃液を導入してもよいのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1(a)および図1(b)は、本発明に係る廃水処理装置の基本概念を示す概念図である。
【図2】図1に示す本発明の基本概念に基づいて連続運転可能な廃水処理装置の構成を示す処理フロー図である。
【図3】図1に示す本発明の基本概念に基づいて連続運転可能な廃水処理装置の構成を示す処理フロー図である。
【図4】図1に示す本発明の基本概念に基づいて連続運転可能な廃水処理装置の構成を示す処理フロー図である。
【図5】図1に示す本発明の基本概念に基づいて連続運転可能な廃水処理装置の構成を示す処理フロー図である。
【図6】図2乃至図5に示す処理フロー図に基づく金属イオン濃度および共存するカチオン濃度の推移を示した図である。
【図7】本発明に係る電解析出装置の一実施形態を示す概略図である。
【図8】原水を円筒状の電解槽の接線方向に導入し、原水を旋回させる例を示す概略図である。
【図9】本発明に係る電解析出装置の他の実施形態を示す概略図である。
【図10】本発明に係る電解析出装置の更に他の実施形態を示す概略図である。
【図11】本発明に係る電解析出装置の更に他の実施形態を示す概略図である。
【図12】配線形成方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 金属イオン分離・濃縮装置
2 濃縮系統
3 電解析出装置
4 回収系統
5 金属イオン低減系統
6 排水路
7a,7b 供給路
12 電解槽
13 陰極
14 カチオン交換膜
15 カチオン交換体
16 陽極
17 回転軸
18 スクレイパー
19 陽極室
20 陰極室
21 循環ライン
22 循環ポンプ
23 バグフィルタ
24 貯留槽
25 ポンプ
30 銅
201 半導体基材
202 導電層
203 絶縁膜
204 コンタクトホール
205 溝
206 バリア層
207 銅シード層(触媒層)
208 銅層
P1,P2 ポンプ
T1,T2 タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金属イオン及び共存するカチオンを含む廃水を処理し、金属イオン濃度が低められた処理水を得るとともに、金属イオンを金属として回収する廃水の処理装置であって、
廃水中から電気透析操作により金属イオンと共存するカチオンを分離し、金属イオンおよび共存するカチオン濃度が低められた処理水と金属イオンおよび共存するカチオン濃度が高められた濃縮水とを得る金属イオン分離・濃縮装置と、
前記濃縮水を金属イオン分離・濃縮装置に循環供給して、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を得る濃縮系統と、
金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を電解析出装置に受け入れて、金属イオンを選択的に回収し、金属イオン濃度を低めた濃縮水を前記金属イオン分離・濃縮装置に循環供給する回収系統と、
共存するカチオン濃度が高まった濃縮水を前記電解析出装置により金属イオン濃度を低めた濃縮水を得るために前記電解析出装置に循環供給する金属イオン低減系統を備えることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
前記金属イオン低減系統により金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出する排水路を備えることを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記濃縮系統または回収系統または金属イオン低減系統は、系統内に純水および酸水溶液を受け入れることができることを特徴とする請求項1または2記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記電解析出装置は、陰極の外部に陽極を配置して陰極を回転させながら陰極表面に金属を析出させる回転電解槽からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
前記回転可能な陰極に接触または近接してスクレイパーを配置し、陰極に析出した金属を掻き取るようにしたことを特徴とする請求項4記載の廃水処理装置。
【請求項6】
前記スクレイパーで掻き取られて陰極表面から剥離した金属は、濃縮水とともにフィルタに送られ、該フィルタによりろ過捕捉されることを特徴とする請求項5記載の廃水処理装置。
【請求項7】
前記濃縮系統と前記金属イオン低減系統は同時に運転可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の廃水処理装置。
【請求項8】
前記回収系統の運転中に前記排水路から金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の廃水処理装置。
【請求項9】
前記金属イオン含有廃水は、半導体製造装置からの廃水または該廃水を前処理した廃水であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の廃水処理装置。
【請求項10】
前記金属イオン含有廃水中の金属イオンは、銅配線形成工程の半導体製造装置から発生する銅イオンであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の廃水処理装置。
【請求項11】
少なくとも金属イオン及び共存するカチオンを含む廃水を処理し、金属イオン濃度が低められた処理水を得るとともに、金属イオンを金属として回収する廃水の処理方法であって、
廃水中から電気透析操作により金属イオンと共存するカチオンを分離し、金属イオンおよび共存するカチオン濃度が低められた処理水と金属イオンおよび共存するカチオン濃度が高められた濃縮水とを得る金属イオン分離・濃縮工程と、
前記濃縮水を金属イオン分離・濃縮装置に循環供給して、金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を得る濃縮工程と、
金属イオンおよび共存するカチオン濃度をより高めた濃縮水を電解析出装置に受け入れて、金属イオンを選択的に回収し、金属イオン濃度を低めた濃縮水を前記金属イオン分離・濃縮装置に循環供給する回収工程と、
共存するカチオン濃度が高まった濃縮水を前記電解析出装置により金属イオン濃度を低めた濃縮水を得るために前記電解析出装置に循環供給する金属イオン低減工程を備えることを特徴とする廃水処理方法。
【請求項12】
前記金属イオン低減工程により金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出する排出工程を備えることを特徴とする請求項11記載の廃水処理方法。
【請求項13】
前記排出工程の後に、系統内に純水および酸水溶液を補充する補充工程を備えることを特徴とする請求項12記載の廃水処理方法。
【請求項14】
前記電解析出装置は、陰極の外部に陽極を配置して陰極を回転させながら陰極表面に金属を析出させる回転電解槽からなることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の廃水処理方法。
【請求項15】
前記回転可能な陰極に接触または近接してスクレイパーを配置し、陰極に析出した金属を掻き取るようにしたことを特徴とする請求項14記載の廃水処理方法。
【請求項16】
前記スクレイパーで掻き取られて陰極表面から剥離した金属は、濃縮水とともにフィルタに送られ、該フィルタによりろ過捕捉されることを特徴とする請求項15記載の廃水処理方法。
【請求項17】
前記濃縮工程と前記金属イオン低減工程は同時に行うことが可能であることを特徴とする請求項11乃至16のいずれか1項に記載の廃水処理方法。
【請求項18】
前記回収工程中に金属イオン濃度を低めた濃縮水を系統外に排出する排出工程を行うことを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の廃水処理方法。
【請求項19】
前記金属イオン含有廃水は、半導体製造装置からの廃水または該廃水を前処理した廃水であることを特徴とする請求項11乃至18のいずれか1項に記載の廃水処理方法。
【請求項20】
前記金属イオン含有廃水中の金属イオンは、銅配線形成工程の半導体製造装置から発生する銅イオンであることを特徴とする請求項11乃至19のいずれか1項に記載の廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−95391(P2006−95391A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282685(P2004−282685)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】