説明

廃液回収方法、液体噴射装置及びカートリッジセット

【課題】装置又はカートリッジの小型化を図ることができる廃液回収方法、液体噴射装置、及びカートリッジセットを提供すること。
【解決手段】プリンタは、記録ヘッドと、記録ヘッド内のインクを吸引するメンテナンス機構を備えている。プリンタに装着される複数のカートリッジCは、記録ヘッドに供給するインクを貯留する第1収容部と、メンテナンス機構から排出された廃インクを貯留する第2収容部S2とを備えている。各カートリッジCのうち第1カートリッジC1は、廃インク導入部37から、廃インク貯留部45を介して、廃インク貯留部45内の空気を外部に排出する大気連通孔46までのカートリッジ側流路Rの流路抵抗が、その他のカートリッジCのカートリッジ側流路Rの流路抵抗よりも小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液回収方法、液体噴射装置及びカートリッジセットに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドから液体をターゲットに対して吐出する液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンタと言う)が知られている。このプリンタ内の非印刷領域には、通常、メンテナンス機構が配設されている。このメンテナンス機構は、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドのノズル目詰まり等を防止するため、ノズルから増粘したインク、気泡等を吸引する吸引クリーニング等を行う。
【0003】
メンテナンス機構が記録ヘッドから吸引した廃インクは、プリンタ内に設けられた廃インクタンクに送出される。或いは、未使用のインクを収容したインク貯留部と廃インク貯留部とを備えたインクカートリッジに廃インクを送出する場合もある(例えば、特許文献1参照)。この場合、カートリッジ交換時に、廃インク貯留部も同時に交換できるので、廃インクタンクを装置内に設けるよりも、廃液収容スペースを縮小できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−118144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、各カートリッジは、各種インクの消耗量の違いにより、その交換時期に差があるにも関わらず、廃液貯留部の容積は同一に形成されていた。従って、交換時期の早いカートリッジは、廃インク貯留部の廃インク充填率が低い状態で交換される可能性がある。逆に交換時期の遅いカートリッジは、装着期間が長いため、廃インクを多く回収する傾向にある。このため、廃インクの漏出防止等の目的で、廃インク貯留部の容量は、交換時期の遅いカートリッジが回収する廃インク量に合わせて設定されていた。このため、廃インク貯留部及びカートリッジが大型化する傾向にあった。
【0006】
一方、メンテナンス機構から各カートリッジまでの廃インク導入路の構成を異ならせたり、バルブ等の廃インク制御機構を配設して、交換時期の早いカートリッジに廃インクを多く送出することも提案されている。しかし、これらの場合には、廃インク導入機構や、廃インク制御機構が複雑化し、装置の小型化を図る上で好ましくない。また、装置の個体差、使用状況によって、交換時期が早いカートリッジがそれぞれ異なる場合には、カートリッジのレイアウトの制限がある廃インク導入機構等は対応できない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置又はカートリッジの小型化を図ることができる廃液回収方法、液体噴射装置、及びカートリッジセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を吐出する液体噴射ヘッドと、同液体噴射ヘッド内の液体を吸引するメンテナンス機構とを備えた液体噴射装置の廃液回収方法において、前記液体噴射ヘッドに供給する液体を貯留する複数のカートリッジに、前記メンテナンス機構から排出された廃液を貯留する廃液貯留部と、同廃液貯留部に廃液を導入する導入部と、同廃液貯留部内の気体を外部に排出する開放孔とを設け、前記各カートリッジのうち、液体消耗量が多い前記カートリッジに備えられる、前記導入部から、前記廃液貯留部を介して、前記開放孔までのカートリッジ側流路の流路抵抗を小さくして、前記廃液貯留部に導入された廃液量を他の前記カートリッジよりも多くする。
【0009】
これによれば、カートリッジには、導入部、廃液貯留部、開放孔からなるカートリッジ側流路が備えられる。また、液体消耗量が多いカートリッジに設けられたカートリッジ側流路は、その流路抵抗が、その他のカートリッジに比べて小さくなるように形成される。従って、カートリッジ側流路の流路抵抗が小さいカートリッジには、メンテナンス機構から排出される廃液が導入されやすくなり、その結果、そのカートリッジの廃液充填率が高くなる。即ち、液体消耗量が多く、交換時期が早いカートリッジを交換すると同時に、廃液充填率の高い廃液貯留部を交換できる。つまり、比較的多量の廃液を頻繁に廃棄することができるので、各カートリッジの廃液貯留部に貯留しておく廃液量が少なくなり、廃液貯留部の容量を小さくすることができる。これにより、カートリッジの小型化を図ることができる。また、廃液の流れを制御する制御バルブ等を設けることなく、簡単な構成で、カートリッジの廃液充填率を異ならせることができる。さらに、カートリッジに備えられる流路の抵抗を異ならせるので、液体噴射装置側の各部材の構成、レイアウトを変更することなく、各カートリッジの廃液充填率を異ならせることができる。
【0010】
本発明は、液体を吐出する液体噴射ヘッドと、同液体噴射ヘッド内の液体を吸引するメンテナンス機構とを備えた液体噴射装置において、前記液体噴射ヘッドに供給する液体を貯留する複数のカートリッジは、前記メンテナンス機構から排出された廃液を貯留する廃液貯留部をそれぞれ備えるとともに、前記廃液を導入する導入部から、前記廃液貯留部を介して、前記廃液貯留部内の気体を外部に排出する開放孔までの各カートリッジ側流路の流路抵抗が、互いに異なる。
【0011】
これによれば、液体噴射装置に搭載されるカートリッジには、導入部、廃液貯留部、開放孔からなるカートリッジ側流路が備えられる。また、各カートリッジ側流路は、その流路抵抗が互いに異なるように形成されている。従って、カートリッジ側流路の流路抵抗が小さいカートリッジには、メンテナンス機構からの廃液が導入されやすくなり、廃液充填率が高くなる。従って、例えば、液体消耗量が多く、交換時期が早いカートリッジのカートリッジ側流路の流路抵抗を小さくすると、そのカートリッジを交換すると同時に、廃液充填率の高い廃液貯留部を交換できる。つまり、比較的多量の廃液を頻繁に廃棄することができるので、各廃液貯留部の容量を小さくしても、廃液を漏出させることなく回収することができる。従って、廃液貯留部及びカートリッジの小型化を図ることができる。また、廃液の流れを制御する制御バルブ等を設けることなく、簡単な構成で、カートリッジの廃液充填率を異ならせることができる。さらに、カートリッジに備えられる流路の抵抗を異ならせるので、液体噴射装置側の各部材の構成、レイアウトを変更することなく、各カートリッジの廃液充填率を異ならせることができる。
【0012】
この液体噴射装置において、前記各カートリッジに備えられた前記カートリッジ側流路の少なくとも一部の流路断面積又は流路長を互いに異ならせて、前記各カートリッジ側流路の流路抵抗をそれぞれ異ならせた。
【0013】
これによれば、カートリッジ側流路の少なくとも一部の流路断面積又は流路長が互いに異なることにより、カートリッジ側流路の流路抵抗が異なっている。即ち、流路断面積が大きいとき又は流路長が小さいときは、流路抵抗が小さい。このため、各カートリッジの構成をほぼ同じ構成にして、各カートリッジ側流路の流路抵抗を容易に変更することができる。
【0014】
この液体噴射装置において、前記各カートリッジ側流路のうち、前記導入部から前記廃液貯留部までの流路断面積又は流路長が互いに異なっている。
これによれば、各カートリッジ側流路のうち、廃液導入口から廃液貯留部までの流路断面積又は流路長が互いに異なることにより、流路抵抗が異なっている。従って、廃液が通過する流路の構成がカートリッジによって異なるので、確実に流路抵抗を異ならせることができる。
【0015】
この液体噴射装置において、前記各カートリッジに設けられ、前記開放孔を塞ぐように配設された各透気フィルムの透気率を互いに異ならせて、前記各カートリッジ側流路の流路抵抗を異ならせた。
【0016】
これによれば、透気フィルムの単位時間当たりの透気量(透気率)を異ならせることで、各カートリッジ側流路の流路抵抗を異ならせている。このため、カートリッジの大きさ又は構成を変えずに流路抵抗を容易に変えることができる。
【0017】
この液体噴射装置において、前記各透気フィルムの透気面積を互いに異ならせた。
これによれば、透気フィルムの透気面積を異ならせることで、各透気フィルムの透気率を異ならせている。即ち、透気フィルムの透気面積が大きい場合には、廃液貯留部内の気体との接触面積が大きくなるので、透気率が大きく、カートリッジ側流路の流路抵抗が小さい。このため、カートリッジの大きさ又は構成を変えずに流路抵抗を容易に変えることができる。
【0018】
この液体噴射装置において、前記各透気フィルムの厚さを互いに異ならせた。
これによれば、透気フィルムの厚さを異ならせることで、各透気フィルムの透気率を異ならせている。即ち、透気フィルムの厚さが小さい場合には、透気率が大きく、カートリッジ側流路の流路抵抗が小さい。このため、カートリッジの大きさ又は構成を変えずに流路抵抗を容易に変えることができる。
【0019】
この液体噴射装置において、前記各透気フィルムの材質を互いに異ならせて、前記各透気フィルムの透気率を異ならせた。
これによれば、透気フィルムの材質を異ならせることで、各透気フィルムの透気率が異なっている。即ち、透気フィルムが透気率が大きい材質からなる場合には、カートリッジ側流路の流路抵抗が小さい。このため、カートリッジの大きさ又は構成を変えずに流路抵抗を容易に変えることができる。
【0020】
この液体噴射装置において、前記カートリッジのケースに、前記廃液貯留部に連通した排気流路を設け、前記排気流路の途中に、使用時に大気開放可能な複数の大気連通部を形成し、前記各大気連通部を、前記廃液貯留部から前記各大気連通部までの流路長又は流路断面積がそれぞれ異なるように配置した。
【0021】
これによれば、カートリッジのケースに、廃液貯留部に連通した排気流路を設けた。また、排気流路の途中に、使用時に大気開放可能な複数の大気連通部を設けた。さらに、各大気連通部を、廃液貯留部からの流路長又は流路断面積がそれぞれ異なるように配置した。即ち、廃液貯留部から比較的近い大気連通部を大気開放した場合には、廃液貯留部から大気連通部に至る流路長が小さくなるので、流路抵抗が小さくなる。また、廃液貯留部から比較的遠い大気連通部を大気開放した場合には、廃液貯留部から大気連通部に至る流路長が大きくなるので、流路抵抗が大きくなる。このため、例えば、カートリッジの交換時期が、使用状況、装置の個体差等によって異なる場合に、カートリッジの流路抵抗を適宜変更することができる。
【0022】
本発明は、液体を収容する液体貯留部と、廃液を収容する廃液貯留部とを備える複数のカートリッジからなるカートリッジセットであって、前記各カートリッジの液体消耗量に応じて、前記各カートリッジに形成された導入部から、前記廃液貯留部を介して、前記廃液貯留部の気体を外部に放出する開放孔に至るカートリッジ側流路の流路抵抗をそれぞれ異なるように形成した。
【0023】
これによれば、液体貯留部及び廃液貯留部を有する各カートリッジは、その液体消耗量に応じて、カートリッジ側流路の流路抵抗が異なっている。このため、流路抵抗の小さいカートリッジに対して廃液が導入されやすくなり、そのカートリッジの廃液充填率が高くなる。即ち、液体消耗量が多く、交換時期が早いカートリッジを交換する際に同時に、廃液充填率の高い廃液貯留部を交換できる。つまり、比較的多量の廃液を頻繁に廃棄することができるので、各カートリッジの廃液貯留部に貯留しておく廃液量が少なくなり、廃液貯留部の容量を小さくすることができる。これにより、カートリッジの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態のプリンタの斜視図。
【図2】同プリンタの要部斜視図。
【図3】同プリンタのクリーニング動作を説明する模式図。
【図4】同カートリッジに対するインクと廃インクの流れを説明する説明図。
【図5】同カートリッジの斜視図。
【図6】同カートリッジの分解斜視図。
【図7】同カートリッジの上カバーの下面図。
【図8】同カートリッジの断面図。
【図9】同カートリッジの上カバーの下面図。
【図10】第2の実施形態のカートリッジの上カバーの下面図。
【図11】同カートリッジの上カバーの下面図。
【図12】第3の実施形態のカートリッジの上カバーの下面図。
【図13】第4の実施形態のカートリッジの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図9に従って説明する。図1は、液体噴射装置としてのプリンタ1の斜視図、図2はプリンタ1の要部斜視図、図3はプリンタ1のクリーニング動作を説明する模式図、図4は、カートリッジCに対する液体としてのインク及び廃液としての廃インクの流れを説明する説明図である。
【0026】
図1に示すように、プリンタ1は、カバー2の上面にカートリッジホルダ3を備えている。カートリッジホルダ3には、第1〜第4カートリッジC1〜C4が着脱可能にそれぞれ装着されている。第1〜第4カートリッジC1〜C4は、カートリッジホルダ3に順番に、一列に並べて配置されている。カートリッジホルダ3の隣りには、長尺状に形成された接続部5が設けられている。第1〜第4カートリッジC1〜C4がカートリッジホルダ3に装着されると、第1〜第4カートリッジC1〜C4は、接続部5の図示しない連結部に接続される。
【0027】
また、図1中、右端の第1カートリッジC1に破線で示すように、第1〜第4カートリッジC1〜C4は、内部に各種インクを収容する、液体貯留部としての第1収容部S1を備えている。第1カートリッジC1は、その第1収容部S1にブラックインクを収容し、第2〜第4カートリッジC2〜C4は、シアン、マゼンタ、イエローの各種カラーインクをそれぞれ収容している。
【0028】
また、第1〜第4カートリッジC1〜C4は、その内部であって第1収容部S1の上方に破線で示すように、液体を収容可能な第2収容部S2を備えている。この第2収容部S2には、プリンタ1が印刷不良を防止する目的で行うクリーニングの際に排出された廃インクが収容される。尚、これらの第1〜第4カートリッジC1〜C4を互いに区別しないで説明する場合には、単にカートリッジCとして説明する。また、第1〜第4カートリッジC1〜C4は、カートリッジセットを構成する。
【0029】
図3及び図4に示すように、各カートリッジCには、各カートリッジCとキャリッジ6とを連通させる各供給流路4がそれぞれ接続されている。各供給流路4は、接続部5に形成された図示しない流路と、接続部5に連結した供給チューブ7(図2参照)とから構成されている。この供給チューブ7は、一端が接続部5、他端がキャリッジ6側に連結され、内部に4本の供給流路4を備えている。
【0030】
図2に示すように、キャリッジ6は、カバー2内の1対のフレーム8に架設されたガイド部材9に挿通支持されている。キャリッジ6は、タイミングベルトを介してキャリッジモータ(いずれも図示せず)に駆動連結され、前記キャリッジモータの駆動によってガイド部材9に沿って主走査方向(X軸方向)に往復移動する。
【0031】
キャリッジ6の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド10が配設されている。記録ヘッド10は、圧電素子(図示せず)、各ノズルN(図3参照)等を備えている。また、キャリッジ6には、図2に示すように、4個のサブタンク11が搭載され、これらの各サブタンク11には、各カートリッジCから供給流路4(接続部5及び供給チューブ7)を介して供給されたインクが一時貯留されている。各サブタンク11は、記録ヘッド10から吐出されたインク量に応じて、記録ヘッド10にインクを供給する。従って、記録ヘッド10が主走査方向に移動しながら紙P(図1参照)にインク滴を吐出する動作と、図示しない紙送り機構による紙Pの副走査方向(Y軸方向)の搬送動作を交互に繰り返すことで印刷が行われる。また、このプリンタ1では、インク消耗量(液体消耗量)が最も多いインクは、ブラックインクであることが、統計により予め判っているものとする。このため、第1カートリッジC1の交換時期は、最も早くなる。
【0032】
また、キャリッジ6の移動経路であって、紙Pの搬送経路外である非印刷領域のうち、図2に示すキャリッジ6のホームポジションには、メンテナンス機構15が配設されている。メンテナンス機構15は、そのケース15a内に、図3に示す四角枠状のキャップ16を備えている。キャップ16は、図示しない昇降機構により、図3に示す記録ヘッド10下面に当接する作用位置と、記録ヘッド10から離間した退避位置との間で上下方向に往復移動するようになっている。また、キャップ16の底壁には、排出口17が貫通形成され、この排出口17には、チューブ等の排出流路18が接続されている。排出流路18は、キャップ16と接続部5とを接続し、その途中には、吸引ポンプ19が設けられている。
【0033】
吸引クリーニングの際には、キャップ16が作用位置に配置され、記録ヘッド10の下面を封止した状態で吸引ポンプ19が駆動される。すると、排出流路18内及びキャップ16内の空気及びインクが吸引排出され、キャップ16内に負圧が蓄積される。この負圧の作用により、記録ヘッド10のノズルN及びその下面から、増粘したインク、塵埃、気泡等がキャップ16内に排出される。
【0034】
キャップ16内に排出されたインク等は、吸引ポンプ19を介して、排出流路18に連通された廃インク流路20に圧送される。この廃インク流路20は、図3に示すように、接続部5に形成されている。また、廃インク流路20は、図4に示すように、その途中で各カートリッジCの方向にそれぞれ分岐するように形成されている。この構成により、廃インク流路20に流入した廃インクは、各カートリッジCの第2収容部S2にそれぞれ分配されて貯留される。また、廃インク流路20の入口20aから各カートリッジC入口までの各流路長は、第1及び第2カートリッジC1,C2に連通した流路長d1,d2が等しく、第3及び第4カートリッジC3,C4に連通した流路長d3,d4は、それよりも長い流路長になっている(即ち、d1=d2<d3<d4)。
【0035】
次に、各カートリッジCについて図5〜図8に従って説明する。図5はカートリッジCの斜視図、図6はカートリッジCの分解斜視図、図7はカートリッジCの上カバーの下面図、図8は、カートリッジCの横断面図である。
【0036】
図5に示すように、カートリッジCは、略直方体形状のケースCSを備え、このケースCSは、下カバー25を備えている。この下カバー25は、上側が開口する箱体状に形成されている。下カバー25の前壁部25aには、導出部26及び導入部27が設けられ、その略中央には、孔28,29が前壁部25aを貫通するように形成されている。また、導入部27は、前壁部25aにおいて導出部26よりも上方に設けられている。
【0037】
この下カバー25には、図6に示すインクパック30が収容される。インクパック30は、インク袋31と取出口32とを備えている。インク袋31は、可撓性材質からなるフィルムで形成されている。取出口32は、その一端がインク袋31から突出し、他端がインク袋31内に差し込まれた状態で固着され、インク袋31内のインクを外部に導出するように構成されている。インクパック30を下カバー25に収容する際は、取出口32を導出部26に内側から係合し、導出部26の孔28を介して、図示しないインク針が取出口32に差し込み可能となるように配設する。
【0038】
インクパック30を収容した下カバー25には、ケースを構成する上カバー33が固定される。上カバー33は、図6に示すように、長方形の板状部34と、板状部34の下面において枠状に立設された内枠部35とを備えている。この内枠部35は、前壁部35a、左壁部35b、右壁部35c、背壁部35dを備えている。
【0039】
図7に示すように、前壁部35aの右壁部35c寄りの位置には、前壁部35aの内側と外側とを連通させる貫通孔36が形成されている。この貫通孔36は、内枠部35の前壁部35aに連続するように設けられた、導入部としての廃インク導入部37内に形成されている。廃インク導入部37には、弁体39、弁座40、弁体39を弁座40に付勢する付勢ばね41からなる弁機構が設けられている。廃インク導入部37の差込口には、接続部5の先端に設けられた廃液針N2(図4参照)が差し込まれる。廃液針N2が差し込まれると、弁体39が付勢ばね41の付勢力に抗して弁座40から離間する。これにより、内枠部35の内側と外部とが、貫通孔36を介して連通される。
【0040】
また、図6及び図7に示すように、板状部34には、内枠部35の内側に、略L字状の仕切部42が立設されている。仕切部42は、前壁部35a及び左壁部35bにほぼ平行に設けられ、その後方端部は、背壁部35dと拡開するように形成されている。また、仕切部42の前方端部は、貫通孔36を囲むように、前壁部35aと連続して形成されている。その結果、内枠部35の内部は、仕切部42によって、流路44と、廃液貯留部としての廃インク貯留部45に区画される。流路44は、仕切部42と前壁部35a及び左壁部35bとの間に溝状に形成され、貫通孔36側を始端として、上カバー33の前方左隅部にて屈曲し、左壁部35bに沿って延びている。また、廃インク貯留部45は、仕切部42と右壁部35c及び背壁部35dとの間に設けられた空間であり、流路44と廃インク貯留部45とは、仕切部42と背壁部35dとの間の拡開部44aを介して連通されている。
【0041】
また、図6に示すように、板状部34において、廃インク貯留部45の前方右隅部に対応する位置には、開放孔としての大気連通孔46が貫通形成されている。この大気連通孔46は、図7に示すように、矩形状の透気フィルム47が板状部34の下面に貼着されることで閉塞されている。また、図7中破線で示すように、透気フィルム47は、その縁47aのみが板状部34に貼着され、透気フィルム47と板状部34との間には、隙間が設けられるようになっている。また、この透気フィルム47は、撥液性と透気性を備えている。このため、透気フィルム47は、廃インク貯留部45内の空気(気体)を通過させる一方、インク等の液体を通過させないようになっている。さらに、透気フィルム47は、インクを弾くので、インクが付着しにくい。
【0042】
透気フィルム47を貼着した廃インク貯留部45には、図6に示す吸収材48が配設される。吸収材48は、透気フィルム47と重ならないような長さに切断されている。
吸収材48を配設した上カバー33の内枠部35下面には、内枠部35の開口を封止可能な大きさに形成された、図6に示すフィルム49が貼着される。図8に示すように、フィルム49によって、内枠部35の内側が封止されると廃インク貯留部45及び流路44が密閉される。これにより、流路44、廃インク貯留部45、大気連通孔46からなるカートリッジ側流路Rが形成され、上カバー33に第2収容部S2が設けられる。また、大気連通孔46は、排気流路R1を構成する。
【0043】
廃インク導入部37から廃インクを導入すると、廃インクは、流路44を介して廃インク貯留部45に送出され、吸収材48に吸収される。また、廃インクが含有する空気は、透気フィルム47を通過し、大気連通孔46から外部に押し出される。
【0044】
この上カバー33を下カバー25に固定すると、廃インク導入部37が、下カバー25の導入部27の内側面に嵌合された状態になる。その結果、前記廃液針N2が、導入部27の孔29を介して廃インク導入部37に差込可能になる。また、下カバー25の内側面と上カバー33のフィルム49との間には、第1収容部S1が設けられ、第1収容部S1内にはインクパック30が収容される。
【0045】
一方、カートリッジCの流路44は、その流路抵抗が、カートリッジCによって異なるように形成されている。具体的には、ブラックのインクを収容する第1カートリッジC1は、その流路44の流路断面積A1が最も大きくなるように形成され、第2カートリッジC2〜第4カートリッジC4の流路断面積A2〜A4は第1カートリッジC1の流路断面積A1よりも小さくなるように形成されている(A1>A2=A3=A4)。
【0046】
詳述すると、図7に示すように、第1カートリッジC1の仕切部42は、前壁部35a及び左壁部35bとの間の幅が、幅W1になるように配設されている。即ち、第1カートリッジC1の流路44の幅は、幅W1である。図9に示すように、第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路44は、幅W1よりも小さい、幅W2になるように形成されている。また、第1カートリッジC1と、第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路44の長さ、各廃インク貯留部45の容量は等しくなっている。
【0047】
このため、第1カートリッジC1と、第2〜第4カートリッジC2〜C4とは、その流路44の幅W1,W2のみが異なり(即ち、W1>W2)、その他の構成は同様になっている。従って、ブラックインクを収容する第1カートリッジC1の流路44(カートリッジ側流路R)の流路抵抗が最も小さく、第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路44(カートリッジ側流路R)の流路抵抗は等しくなっている。
【0048】
次に、プリンタ1の廃インク回収手順について説明する。プリンタ1は、所定のタイミングでメンテナンス機構15により吸引クリーニングを行う。吸引クリーニングの際には、前記したように、キャップ16が記録ヘッド10の下面を封止した状態で、吸引ポンプ19が駆動する。すると、記録ヘッド10のノズルNからキャップ16内にインク、空気等が排出され、排出されたインクは、吸引ポンプ19を介して、接続部5に設けられた廃インク流路20に送られる。
【0049】
廃インク流路20の入口20aから流入した廃インクは、各カートリッジCのカートリッジ側流路Rの流路抵抗に基づいて、各カートリッジCの廃インク貯留部45にそれぞれ分配される。このとき、廃インク流路20の入口20aから、第1及び第2カートリッジC1,C2の各廃インク貯留部45までの流路長が等しいにも関わらず、第1カートリッジC1には、第2カートリッジC2よりも優先して廃インクが導入される。第3及び第4カートリッジC3,C4には、入口20aから廃インク導入部37入口までの流路長と、流路44の流路抵抗に基づいて、第1及び第2カートリッジC1,C2よりも少量の廃インクが貯留される。
【0050】
このクリーニングが複数回行われると、第1カートリッジC1の廃インク貯留部45の廃インクの充填率は、その他の第2〜第4カートリッジC2〜C4の廃インク貯留部45の充填率よりも大きくなる。また、前記したように、この第1カートリッジC1は、インク消耗量が多いため、交換時期が早い。従って、第1カートリッジC1の交換とともに、充填率の大きい廃インク貯留部45を比較的早く交換することになる。つまり、比較的多量の廃インクを頻繁に廃棄することができるので、各カートリッジCの容量が比較的小さくても、廃インクを漏出することなく貯留できる。尚、廃インク充填率(廃液充填率)とは、廃インク貯留部45の容積に対して廃インクが占める割合を言う。
【0051】
また、交換時期の早い第1カートリッジC1が、プリンタ1のレイアウト上、廃インク流路20の入口20aから遠い位置(図4中、第4カートリッジC4の位置)にやむを得ず配置された場合にも、第1カートリッジC1内の流路44の流路抵抗を他のカートリッジCよりも小さくすることで、第1カートリッジC1の廃インク充填率が大きくなる。
【0052】
第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1の実施形態では、各カートリッジCは、未使用のインクを貯留する第1収容部S1と、廃インクを貯留する第2収容部S2とを備えるようにした。そして、各カートリッジCに、カートリッジ側流路Rを設け、このカートリッジ側流路Rを、廃インク貯留部45と、廃インク導入部37から廃インク貯留部45に連通する流路44と、大気連通孔46とから構成した。さらに、交換時期が早い第1カートリッジC1のカートリッジ側流路Rの流路抵抗を、第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路抵抗よりも小さくなるようにした。このため、メンテナンス機構15から廃インクを送出する際に、第1カートリッジC1に廃インクが送出されやすくなるので、第1カートリッジC1の廃インク充填率を大きくすることができる。即ち、比較的多量の廃インクを頻繁に廃棄できるので、各カートリッジCの廃インク貯留部45の容量が小さくても、廃インクを漏出することなく回収できる。従って、廃インク貯留部45及びカートリッジCの小型化を図ることができる。また、バルブ等を設けることなく、簡単な構成で各カートリッジCの廃インクの充填率を制御できる。さらに、カートリッジCに備えられる流路の抵抗を異ならせるので、プリンタ1側に備えられる供給流路4、排出流路18、廃インク流路20等の構成、カートリッジCのレイアウトを変更することなく、各カートリッジCの廃インク充填率を異ならせることができる。
【0053】
(2)第1の実施形態では、カートリッジCの上カバー33に、内枠部35と仕切部42とを立設した。そして、内枠部35及び仕切部42等から構成される廃インクの流路44の流路断面積を、仕切部42の位置を変更することによって、異なるようにした。つまり、第1カートリッジC1の流路44の流路断面積A1(幅W1)を大きくし、第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路断面積A2〜A4(幅W2)を、流路断面積A1よりも小さくした。このため、各カートリッジCの構成を、仕切部42の位置以外は同じ構成にして、各流路44の流路抵抗を異なるものにすることができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図10及び図11に従って説明する。尚、第2の実施形態は、第1の実施形態のカートリッジCを変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、図10に示すように、第1カートリッジC1の仕切部42を構成し、前壁部35aに平行に設けられた第1仕切部42aは、その長さがL1になるように形成されている。また、同じく仕切部42を構成する第2仕切部42bは、左壁部35bに平行に設けられ、その長さがL2になっている。この構成により、廃インク導入部37と廃インク貯留部45とを連通する流路44は、その流路長Laが、第1仕切部42aの長さL1と、第2仕切部42bの長さL2とを加算した長さにほぼ等しくなっている(即ち、La=L1+L2)。
【0056】
また、図11に示すように、第2〜第4カートリッジC2〜C4の仕切部42を構成する第1仕切部42aは、第1カートリッジC1の第1仕切部42aと同じ長さ(長さL1)になっている。また、左壁部35bと平行に形成された第2仕切部42bは、第1カートリッジC1の第2仕切部42bより長くなるように、長さL3に形成されている(即ち、L3>L2)。このため、第2〜第4カートリッジC2〜C4に設けられた拡開部44aは、第1カートリッジC1の拡開部44aよりも小さくなっている。このため、第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路44は、その流路長Lbが、第1カートリッジC1の流路長Laより大きくなっている(即ち、Lb>La)。
【0057】
これらの第1〜第4カートリッジC1〜C4は、仕切部42以外の構成は同一に形成されている。このため、第1カートリッジC1の流路44の流路抵抗は、他の第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路44の流路抵抗よりも小さくなっている。従って、第1カートリッジC1の廃インク充填率は、他のカートリッジCに比べて大きくなる。
【0058】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(3)第2の実施形態では、カートリッジCの上カバー33に、内枠部35と仕切部42とを立設した。そして、カートリッジCによって、仕切部42の長さを変更して、内枠部35及び仕切部42等から構成される流路44の流路長が異なるようにした。つまり、第1カートリッジC1の流路長Laを短くし、第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路長Lbを、流路長Laよりも長くした。このため、各カートリッジCの構成を、仕切部42の位置以外は同じ構成にして、各流路44の流路抵抗を異なるものにすることができる。
【0059】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した第3の実施形態を図12に従って説明する。尚、第3の実施形態は、第1の実施形態のカートリッジCを変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0060】
図12に示すように、第1カートリッジC1は、大気連通孔46を閉塞する透気フィルム47が、右壁部35cの内側面から仕切部42までの長さを有している。また、透気フィルム47は、前記したように、その縁47aのみが板状部34に貼着されている。従って、廃インク貯留部45内の空気は、透気フィルム47の縁47a以外の部分を通過して、透気フィルム47と板状部34との間に流入し、大気連通孔46から排出される。この透気フィルム47において、空気が通過する部分は縁47a以外の部分であって、その透気面積はM1となっている。
【0061】
第2〜第4カートリッジC2〜C4の透気フィルム47は、図11に示すように、上カバー33の右壁部35cの内側面から、左壁部35b側の仕切部42まで届かない長さになっており、その透気面積が、第1カートリッジC1の透気フィルム47の透気面積M1よりも小さい、透気面積M2になっている(即ち、M2<M1)。即ち、第1カートリッジC1の透気フィルム47と板状部34との間に設けられる空間は大きく、比較的多量の空気を通過させることができるので、第1カートリッジC1の透気フィルム47の透気率は、他のカートリッジCの透気フィルム47の透気率よりも大きい。尚、透気率とは、一定圧力及び一定温度等の同じ条件下で、各透気フィルム47が透気させる、単位時間当たりの気体の透気量を指す。
【0062】
従って、第1カートリッジC1は、廃インク貯留部45内の空気を排出しやすいので、他のカートリッジCに比べて、カートリッジ側流路Rの流路抵抗が小さい。このため、第1カートリッジC1は、他のカートリッジCに比べて廃インク充填率が大きくなる。
【0063】
従って、第3の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(4)第3の実施形態では、各カートリッジCによって、大気連通孔46を閉塞する透気フィルム47の大きさが異なるようにした。つまり、第1カートリッジC1に設けられる透気フィルム47の透気面積M1を大きくし、第2〜第4カートリッジC2〜C4に設けられる透気フィルム47の透気面積M2を、透気面積M1よりも小さくした。このため、各カートリッジCの構成をほぼ同じにして、透気フィルム47の大きさを変更するのみで、カートリッジ側流路Rの流路抵抗を容易に異なるものにすることができる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した第4の実施形態を図13に従って説明する。尚、第4の実施形態は、第1の実施形態のカートリッジCを変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0065】
図13に示すように、本実施形態のカートリッジCは、第1の実施形態の構成に加えて、ケースを構成する上カバー33の上面に連通溝50を備えている。連通溝50は、上面側が開口するように形成され、大気連通孔46から、上カバー33の上面を蛇行するように延設されている。また、上カバー33には、開放孔及び大気連通部としての第1〜第3凹部51〜53が連通溝50の途中又は端に設けられている。第1凹部51は、連通溝50の途中に設けられ、大気連通孔46からの流路長r1が最も短い位置に形成されている。第2凹部52は、連通溝50の途中に設けられ、大気連通孔46からの流路長r2が第1凹部51よりも大きくなるように配置されている。第3凹部53は、連通溝50の終端に設けられ、大気連通孔46からの流路長r3が最も長い位置に形成されている(即ち、r1<r2<r3)。
【0066】
これらの大気連通孔46、連通溝50、第1〜第3凹部51〜53には、封止フィルム54が上カバー33の上面に貼着されることにより封止される。従って、封止フィルム54に孔を開けて、大気連通孔46に連通する開放孔を形成しない限り、大気連通孔46から排出された空気は外部に放出されないようになっている。また、大気連通孔46から、連通溝50、第1〜第3凹部51〜53は、排気流路R1を構成する。
【0067】
このカートリッジCをプリンタ1に搭載する際には、封止フィルム54に開放孔を形成してから使用するようになっている。例えば、交換時期の早いカートリッジCの場合には、封止フィルム54の大気連通孔46の真上に開放孔を形成する。交換時期の遅いカートリッジの場合には、第3凹部53の真上に開放孔を形成する。つまり、カートリッジCの交換時期に応じて、封止フィルム54において、大気連通孔46、第1〜第3凹部51〜53のいずれかに対応する位置に開放孔を形成して、各カートリッジCの排気流路R1(カートリッジ側流路R)の流路抵抗を異なるようにしている。
【0068】
このカートリッジCに廃インクが導入された場合には、廃インクに含有された空気は、透気フィルム47(図7参照)を介して大気連通孔46を通過する。そして、例えば、第3凹部53の位置に開放孔が設けられている場合には大気連通孔46から排出した空気が、連通溝50を通過して、その開放孔から外部に放出される。
【0069】
従って、第4の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5)第4の実施形態では、上カバー33に、大気連通孔46に連通する連通溝50を形成し、この連通溝50の途中に第1〜第3凹部51〜53を形成した。また、大気連通孔46、連通溝50及び第1〜第3凹部51〜53を、封止フィルム54を貼着することにより封止した。そして、カートリッジCの使用時には、そのカートリッジCの交換時期に応じて、大気連通孔46又は第1〜第3凹部51〜53の位置に開放孔を形成するようにした。従って、開放孔の位置を異ならせることで、大気連通孔46から開放孔に至る排気流路R1の長さを異ならせることができる。また、第1〜第3凹部51〜53を予め設けることで、開放孔を形成するのに適した位置が判るので、簡単に流路抵抗を異ならせることができる。さらに、プリンタ1の機種、使用状況等によって、消費量が多いインクが異なる場合にも、廃インク充填率の高いカートリッジCを適宜変更することができる。
【0070】
(6)第4の実施形態では、各種インクを収容する各カートリッジCを同じ構成とし、使用時に開放孔を形成することで、各カートリッジCのカートリッジ側流路Rの流路抵抗を異ならせた。従って、各カートリッジCの構成を異ならせる必要がないので、部品点数を少なくすることができる。
【0071】
(第5の実施形態)
次に、本発明を具体化した第5の実施形態を図7に従って説明する。尚、第5の実施形態は、第1の実施形態のカートリッジCを変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施形態のカートリッジCは、カートリッジCによって、透気フィルム47の厚み又は材質が異なるように形成されている。
例えば、第2〜第4カートリッジC2〜C4の透気フィルム47は、第1カートリッジC1の透気フィルム47と比較して、厚く形成されている。このため、第2〜第4カートリッジC2〜C4の透気フィルム47の透気率は、第1カートリッジC1の透気フィルム47の透気率よりも小さくなっている。
【0073】
または、第1カートリッジC1の透気フィルム47と、第2〜第4カートリッジC2〜C4の透気フィルム47とは、その材質が互いに異なっている。例えば、透気フィルム47が、多孔質材質から形成されている場合は、第1カートリッジC1の透気フィルム47の微細孔の数を多く、又は微細孔を大きくすることで、透気フィルム47自体の透気率を大きくしている。このように、カートリッジ側流路Rの途中に設けられる各透気フィルム47の透気率が互いに異なるので、第1カートリッジC1のカートリッジ側流路Rの流路抵抗は、第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路抵抗よりも小さくなっている。
【0074】
従って、第5の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(7)第5の実施形態では、カートリッジCによって、大気連通孔46を閉塞する透気フィルム47の厚さ又は材質が異なるようにした。つまり、第1カートリッジC1に設けられる透気フィルム47の厚さ又は材質を、透気フィルム47の透気率が大きくなるように変更した。このため、各カートリッジCの構成をほぼ同じにして、透気フィルム47の厚さ又は材質を変更するのみで、カートリッジ側流路Rの流路抵抗を容易に異ならせることができる。
【0075】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、プリンタ1に4個のカートリッジCを搭載するようにしたが、4個以外の複数個でもよい。
【0076】
・上記各実施形態では、各カートリッジCの廃インク貯留部45の容量が互いに異なるように形成してもよい。例えば、ブラックインクの消耗量が最も大きく、ブラックインクのカートリッジCの廃インク貯留部45が、他の廃インク貯留部45の容量よりも大きい場合、ブラックインクのカートリッジCの交換時期に廃インク充填率が所定値以上になるように、カートリッジ側流路Rの流路抵抗を変更してもよい。
【0077】
・上記各実施形態では、ブラックインクを収容する第1カートリッジC1の流路抵抗が最も小さく、その他の第2〜第4カートリッジC2〜C4の流路抵抗が大きくなるようにした。これ以外に、各カートリッジCのうち、第1カートリッジC1以外のカートリッジCの流路抵抗を最も小さくしてもよい。また、各カートリッジCのうち、複数のカートリッジCの流路抵抗を最も小さくしてもよい。さらに、各カートリッジCを全て異なる流路抵抗になるように形成してもよい。要は、カートリッジCのうち、インク消耗量が多い(交換時期が早い)カートリッジの流路抵抗を小さくできればよい。
【0078】
・上記各実施形態では、廃インク流路20は、接続部5に設けたが、この構成に限定されることはなく、チューブ等でもよい。また、各カートリッジCの位置は、図4のような配置順に限定されることはない。
【0079】
・上記各実施形態では、流路44は、L字状に設けられなくてもよい。例えば、略U字状、折れ曲がり部を設けていない直線状に形成してもよい。
・上記各実施形態では、各流路44の流路抵抗は、内枠部35の形状又は仕切部42の形状を変更することで、異ならせるようにしてもよい。例えば、第1カートリッジC1の流路44を直線状に形成し、他のカートリッジCの流路44を屈曲するように形成してもよい。又は、流路44の流路断面積を下流になるにつれて連続的に小さくなるように形成したり、流路44の途中に流体の流れを妨げる部材を配設して、流路抵抗を大きくしてもよい。
【0080】
・第4の実施形態では、大気連通孔46から開放孔までの排気流路R1の流路断面積を異ならせることで、カートリッジ側流路Rの流路抵抗を異ならせてもよい。また、連通溝50は、1本ではなく、複数本形成してもよい。この場合、複数の連通溝50が、上カバー33に大気連通孔46に連通するように形成されている。各連通溝50は、その長さ、断面積が互いに異なるように形成されている。そして、カートリッジC使用時には、いずれかの連通溝50に対応する開放孔を形成して、その連通溝50を大気開放する。このようにすると、大気開放する連通溝50の流路抵抗に応じて、各カートリッジCのカートリッジ側流路Rの流路抵抗を互いに異ならせることができる。
【0081】
・上記各実施形態においては、液体噴射装置として、インクを吐出するプリンタ1について説明したが、その他の液体噴射装置であってもよい。例えば、ファックス、コピア等を含む印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。また、液体もインクに限られず、他の液体に応用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…液体噴射装置としてのプリンタ、10…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、15…メンテナンス機構、27…導入部、37…導入部を構成する廃インク導入部、45…廃液貯留部としての廃インク貯留部、46…開放孔としての大気連通孔、47…透気フィルム、51〜53…開放孔及び大気連通部としての第1凹部〜第3凹部、C…カートリッジセットを構成するカートリッジ、C1〜C4…カートリッジ及びカートリッジセットとしての第1〜第4カートリッジ、CS…ケース、R…カートリッジ側流路、R1…排気流路、S1…液体貯留部としての第1収容部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体噴射ヘッドと、同液体噴射ヘッド内の液体を吸引するメンテナンス機構とを備えた液体噴射装置の廃液回収方法において、
前記液体噴射ヘッドに供給する液体を貯留する複数のカートリッジに、前記メンテナンス機構から排出された廃液を貯留する廃液貯留部と、同廃液貯留部に廃液を導入する導入部と、同廃液貯留部内の気体を外部に排出する開放孔とを設け、
前記各カートリッジのうち、液体消耗量が多い前記カートリッジに備えられる、前記導入部から、前記廃液貯留部を介して、前記開放孔までのカートリッジ側流路の流路抵抗を小さくして、前記廃液貯留部に導入された廃液量を他の前記カートリッジよりも多くすることを特徴とする廃液回収方法。
【請求項2】
液体を吐出する液体噴射ヘッドと、同液体噴射ヘッド内の液体を吸引するメンテナンス機構とを備えた液体噴射装置において、
前記液体噴射ヘッドに供給する液体を貯留する複数のカートリッジは、前記メンテナンス機構から排出された廃液を貯留する廃液貯留部をそれぞれ備えるとともに、
前記廃液を導入する導入部から、前記廃液貯留部を介して、前記廃液貯留部内の気体を外部に排出する開放孔までの各カートリッジ側流路の流路抵抗が、互いに異なることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記各カートリッジに備えられた前記カートリッジ側流路の少なくとも一部の流路断面積又は流路長を互いに異ならせて、前記各カートリッジ側流路の流路抵抗をそれぞれ異ならせたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記各カートリッジ側流路のうち、前記導入部から前記廃液貯留部までの流路断面積又は流路長が互いに異なっていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記各カートリッジに設けられ、前記開放孔を塞ぐように配設された各透気フィルムの透気率を互いに異ならせて、前記各カートリッジ側流路の流路抵抗を異ならせたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射装置において、
前記各透気フィルムの透気面積を互いに異ならせたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
請求項5に記載の液体噴射装置において、
前記各透気フィルムの厚さを互いに異ならせたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
請求項5に記載の液体噴射装置において、
前記各透気フィルムの材質を互いに異ならせて、前記各透気フィルムの透気率を異ならせたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記カートリッジのケースに、前記廃液貯留部に連通した排気流路を設け、
前記排気流路の途中に、使用時に大気開放可能な複数の大気連通部を形成し、
前記各大気連通部を、前記廃液貯留部から前記各大気連通部までの流路長又は流路断面積がそれぞれ異なるように配置したことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項10】
液体を収容する液体貯留部と、廃液を収容する廃液貯留部とを備える複数のカートリッジからなるカートリッジセットであって、
前記各カートリッジの液体消耗量に応じて、前記各カートリッジに形成された導入部から、前記廃液貯留部を介して、前記廃液貯留部の気体を外部に放出する開放孔に至るカートリッジ側流路の流路抵抗をそれぞれ異なるように形成したことを特徴とするカートリッジセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−155467(P2010−155467A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93845(P2010−93845)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2004−217611(P2004−217611)の分割
【原出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】