説明

廃液計量袋

【課題】人体から排出された廃液の廃液処理システムに用いて好適な廃液計量袋、すなわち、収容される廃液量を重量計により計量し、しかも、廃液収容の初期にも液の片寄りにより袋が傾いて重量計の計量ミスを引き起こすことがなく、常に、正確な測定ができるようにした廃液計量袋を提供する。
【解決手段】本願袋1は、重量計31への懸吊部2の下側に人体から排出された廃液の流入部5と収容液の排出部6とを備えた廃液収容部3を設け、該廃液収容部3の底部を半円状に形成し、廃液収容の初期にも袋が傾くことがないように構成した。また、廃液収容部3は袋自体が扁平になるようにし、廃液の流入部5は貯留した廃液の流下力にてスムーズな流入が可能なようにし、さらに廃液の排出部6は廃液の収容中は邪魔にならず、廃液の排出時には簡易な操作で放出させることができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体から排出された廃液の廃液処理システムに用いて好適な廃液計量袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近代医学の手術室では、人体(手術中の患者など)から排出される廃液(尿、血液等)を廃液チューブを介して廃液収容袋に収容し、一定時間毎に(手術中は約5分毎、ベッドサイドでは約20分或いは1時間毎等)にその貯留量を時系列測定することが行われている。また、安静が要求される患者に対しても廃液量の監視が行われている。これは廃液量の変動が、血圧、体温、脈拍などと同様に手術の経過や患者の健康状態を知る上で重要な生理データであることによるものである。
【0003】
このような廃液収容袋として、たとえば特開2002−34958がある。この従来型の廃液収容袋は、図6の如く、表面に目盛り61が印刷された透明素材からなる袋体62を備え、該袋体62には人体から排出された廃液が廃液流入部63を通して流入するようになっている。この従来型の廃液収容袋は、通常、手術台またはベッドの脇に吊り下げるための吊具64を備え、定時測定に際し、ナースは廃液収容袋を手で持ちあげて液面の位置を目盛り61によって確認し、その貯留量を所定の記録用紙に記録する。また、廃液収容袋内に貯留された廃液は、記録後の廃液を排出部65より排出するか、袋ごと廃棄処分されることとなる。
【特許文献1】特開2002−34958
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来型の廃液収容袋では、貯留量の測定に際し、尿などを繰り返し直視しなければならず、不快感を伴ったばかりでなく、特に、尿の場合には重量が嵩むため肉体的負担も少なくなく、しかも、目視による測定は誤差が大きいという問題点があった。さらに、上記従来型の廃液収容袋はその形状が図示の如く四角形であり、貯留初期には液が一つの隅角部に片寄って傾くことがあり、正確な測定ができないという大きな問題があった。
【0005】
この発明は上記の点に鑑み、廃液収容袋に触れたり直視することなく、収容される廃液量を重量計により計量し、しかも、廃液収容の初期にも袋が傾いて重量計の計量ミスを引き起こすことがなく、常に、正確な測定ができるようにした廃液計量袋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の廃液計量袋は、重量計への懸吊部の下側に、人体から排出された廃液の流入部と収容液の排出部とを備えた廃液収容部を設け、該廃液収容部の底部を半円状に形成したことを特徴とし、廃液収容の初期にも袋が傾くことがないように構成した。
【0007】
また、請求項2に記載の廃液計量袋は、前記廃液収容部が、表シートと裏シートとを重ね、その周縁部及び懸吊部との分境部を熱溶着してなることを特徴とし、袋自体が扁平になるように構成した。
【0008】
さらに、請求項3に記載の廃液計量袋は、前記廃液の流入部が、廃液収容部の上位の表シートに設けた透孔の周囲に溶着したプラスチック成形品に、人体から排出された廃液をいったん貯留できるようになっていることを特徴とし、貯留した廃液の流下力にて密接している表・裏シートを離反させることができるように構成した。
【0009】
さらにまた、請求項4に記載の廃液計量袋は、前記廃液の排出部が、廃液収容部の底部の表シートに基端を貫通接合したチューブと、該チューブの中間部を挟圧・解除できる挟み具と、該チューブ先端を格納する鞘部とを備えたことを特徴とし、廃液の収容中は邪魔にならず、廃液の排出時には簡易な操作で放出できるように構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手術中或いは術後(療養期間中)の患者のベッド近くに設置した重量計に懸吊して使用され、患者から排出された廃液重量の変化を時系列測定記録するに当たり、測定の開始初期、すなわち、廃液の収容の初期にも袋が傾くことがないように底部を半円状に形成したから、重量計に計量ミスを引き起こさせることがなく、正確な測定値が得られる利点がある。しかも、ナースによる目視の測定が不要になることから、廃液量の測定の作業環境が大幅に改善されるとともに、手術中或いは術後(療養期間中)の患者から排出される廃液の医学データの信頼性をより向上させることができるなど各種の優れた効果を奏するものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記廃液収容部が、表シートと裏シートとを重ね、その周縁部及び懸吊部との分境部を熱溶着してなることを特徴としているから、袋自体が扁平になり、保管保存に有利となるという優れた効果を奏するものである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、前記廃液の流入部が、廃液収容部の上位の表シートに設けた透孔の周囲に溶着したプラスチック成形品に、人体から排出された廃液をいったん貯留できるようになっていることを特徴としているから、貯留された廃液の流下力にて密接している表裏シートを離反させることができ、特に、廃液の初期における流入をスムーズにするという優れた効果を奏するものである。
【0013】
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、前記廃液の排出部が、廃液収容部の底部の表シートに基端を貫通接合したチューブと、該チューブの中間部を挟圧・解除できる挟み具と、該チューブ先端を格納する鞘部とを備えたことを特徴としているから、廃液の収容中は邪魔にならず、廃液の排出時に簡易な操作、すなわち、チューブ先端を鞘部から出し、挟み具から開放するだけで廃液を一定の捨て場に向けて放出できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願廃液収容袋の正面図、図2は同側面断面図、図3は使用状態を示す斜視図、図4は重量計より垂下したフックを示す側面図、図5は排出チューブの挟み具の側面図である。
【0015】
図において、1は本願袋で、該本願袋1は、図3に示す如く、重量計31から垂下したシャフト32の下端部に設けたフック33への懸吊部2を有し、該懸吊部2の下側に、人体(患者)から排出された廃液の収容部3を設けている。その廃液収容部3はその底部4を、図1の如く、半円状に形成している。これは廃液が停滞するような隅角部を作らないためである。この収容部3の上位には、人体から排出された廃液の流入部5が、また底部6の半円状域には廃液の排出部6がそれぞれ備えられている。
【0016】
前記重量計31から垂下したシャフト32は、上端部にネジ等からなる結合部32′が設けられ、該重量計31に内蔵の計測主部31′に着脱自在に結合している。また、シャフト32の下端部前面には断面U型のフック33がT字型に結着(固定)されている。
【0017】
前記本願袋1は、図1及び図2の如く、表シート1aと裏シート1bとを重ね、周縁部E、懸吊部2と廃液収容部3との分境部Bを線状に熱溶着してなる。この周縁部Eの熱溶着は、溶断(熱溶着と同時に切断)方式にて形成してもよい。
【0018】
前記懸吊部2は、前記重量計31から垂下したシャフト32の下端フック33に係合するための横長穴2aが設けられている。この横長穴2aの上縁側及び両端縁側は強度を出すために熱溶着線2bにより縁取りしている。また、懸吊部2の強度を増大化するため、上縁に沿って横長袋2cを設け、この袋2cに骨材2dを収納している。なお、当然であるが、前記重量計31から垂下したシャフト32の下端フック33へ係止した本願袋1はバランスが保たれる。
【0019】
前記廃液収容部3の底部6の半円状は、廃液が停滞する隅角部を作らない円弧であれば真半円状でなくてもよい。廃液収容部3の貯留容量は、2500〜3000ml程度あれば十分であるが、最大貯留容量の決定は自由である。なお、廃液収容部3の表面には、便宜的に目視計測用の目盛り3′を設けておくこともある。
【0020】
前記廃液流入部5は、図2の如く、収容部3の上位の表シート1aに設けた透孔7の周囲にプラスチック成形品8を溶着している。該成形品8はその上面にチューブ接続パイプ9及び空気抜きパイプ9′が貫通して設けられている。該チューブ接続パイプ9の外端には人体から排出される廃液を導く廃液チューブ10を連繋させるためのものである。すなわち、人体から排出された廃液は、廃液チューブ10を通して前記成形品8にいったん貯留され、一定の流下力を得て透孔7を通して密接している表シート1a、裏シート1b間を離反しつつ収容部3に流入できるようになっている。この場合、前記成形品8の正面側(透孔7の対向面)には図示の如く下向き傾斜面8aを形成しておくと、成形品8内の廃液に流下力が増大してよりスムーズに流入させることができるようになる。なお、前記空気抜きパイプ9′は成形品8が真空にならないようにするためのものである。
【0021】
前記廃液排出部6は、前記収容部3の底部6の半円状域に対応する表シート1aに基端を貫通接合したゴムなどの弾性素材からなる排出チューブ11と、表シート1aに基縁を接合し、該チューブ11の中間部を挟圧・解除できる挟み具12と、表シート1aに設置し、該排出チューブ11の先端11aを格納する鞘部13とを備えてなる。なお、前記排出チューブ11の基端部が前記カバー体14により表シート面に沿うように屈曲させ、先端11aを鞘部13に格納させたのは廃液排出部6が廃液処理作業時や本願袋の保管保存時に嵩張らない(邪魔にならない)ようにするためである。
【0022】
前記挟み具12は、図5の如く、前記収容部3の表シート1aに、基縁12aを接合した枠体12bに、細溝部と径大部とを持つスリット12cを形成してなる。しかして、排出チューブ11は、枠体12bのスリット12cの細溝部12c′にあるときは、挟圧されて液の流動を止め、該細溝部12c′から径大部12c″へと移動させると素材の弾性により挟圧解除されるようになっている。なお、図示の例では挟み具12の基縁12aは長辺側にし、細溝部と径大部とを持つスリット12cが上下方向になるようにしているが、基縁12aを短辺側にし、細溝部と径大部を持つスリット12cが前後方向になるようにすることもある。
【0023】
しかして、廃液の流入部5を経て廃液収容部3に人体からの廃液を収容するに際し、当初、廃液排出部6は閉じられている。すなわち、排出チューブ11の中間部を挟み具12のスリット12bの細溝部にて挟圧し、先端を鞘部13に格納されている。しかして、廃液収容部3が満杯になるなどの理由により廃液収容部3内の廃液を捨てる場合、まず、排出チューブ11の先端を鞘部13から抜き出して手指で強く摘み、この状態で排出チューブ11の中間部を挟み具12のスリット12cの径大部に移動させ、手指で摘んでいたチューブ先端を捨て場所に向けて開放させればよい。
【0024】
前記重量計31は、テーブル34上に設置されている。該テーブル34はその四隅の脚部35が高さ調整器36の操作盤36′の調整により水平を保っている。しかして、前記重量計31の下端フック33はテーブル34の天板34′に設けた透孔34″を通して垂下している(図4参照)。したがって、前記本願袋1は懸吊部2に設けた横長孔2aをテーブル34の下から重量計31の下端フック33に懸けることとなる。
【0025】
前記テーブル34上には、前記重量計31を覆うハウジング37が設置されている。該ハウジング37は、前記重量計31とは電気的に接続され、その頂面には重量計31の下端フック33に加わる本願袋1に収容された廃液の重量を表示する重量表示窓37aと、一分間当たりの変化量を表示する変化量表示窓37bを備える。また、測定月日を表示する月日表示窓37cと、測定日の時分を表示する時分表示窓37dと、測定開始停止のためのオンオフボタン37eと、モード設定ボタン37fとを備えている。このモード設定ボタン37fは設定モード(重量表示モード)と履歴モードとの切換えのためのものである。
【0026】
前記ハウジング37には、測定履歴表示のキーボード38が備えられ、該ボード38のうち、左矢印ボタン38aを押すと、今までに記録されたもののうち、最新の履歴が重量表示窓37a及び変化量表示窓37bに表示され、続けて押すと履歴を現在から過去に向けて順次表示できるようになっている。一方、右矢印ボタン38bを押すと、最も古い履歴が重量表示窓37a及び変化量表示窓37bに表示され、続けて押すと履歴を過去から現在に向けて順次表示するようになっている。
【0027】
前記ハウジング37には、水平器39が設けられ、前述の如く、高さ調整器36の調整により得られるテーブル34(及び重量計31)の水平度が目視により判るようにしている。更に、前記ハウジング37には、本願袋1が予め設定した貯留容量に近づいた(満タン)ことを知らせるアラームランプなどを設けるようにしてもよい。
【0028】
しかして、今、手術中或いは術後(療養期間中)の患者のベッド近くに設置したテーブル34上の重量計31の下端フック33に懸けた廃液収容部3に、患者から排出された廃液を廃液チューブ10を通して流入させると、その廃液量は、重量表示窓37aと変化量表示窓37bに、その重量と一分間当たりの変化量が計測・表示されるとともに、履歴として図示しないメモリに記録されるようになっている。
【0029】
上記の廃液量の計測・表示に際し、本願袋1は、その収容部3の底部4が半円状に形成されているため、液が片寄る隅角部がなく、したがって、測定の初期にも袋の傾きがないため、重量計31による計量ミスの生ずるおそれがなく、常に、正確な計測値が得られるものである。
【0030】
すなわち、計測に際し、前記本願袋1とシャフト32及び下端フック33の重量と廃液(尿、血液など)の比重などを予め前記ハウジング37に備えたメモリに記憶させておき、重量計31のシャフト32及び下端フック33に加わる荷重から廃液の体積(g)を算出し、その重量と変化量を、重量表示窓37aと変化量表示窓37bに表示する。
【0031】
なお、人体から排出された廃液の正確な測定が終了した後、本願袋1は廃棄処理されるが、廃液の正確な測定管理をより有効に行うために、本願袋1の廃棄処理後の追跡調査が極めて重要である。そのためには本願袋1に無線タグ(たとえば、ミニチップ)を取付けるか、ICタグを本願袋1の表面に貼着するか、素材中に埋設させるなどの方法によって測定器側(本願では重量計31又はハウジング37その他)に取付けた受信機にて情報収集が得られるようにするとよい。この廃液測定管理システムは、廃液の測定結果を適切に管理し、本人確認や本願袋1のリサイクル処理の追跡確認用としても役立てられることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
ベッド(または手術台等)の近傍適所においたテーブル上の重量計のフックにテーブル下から本願袋1を懸吊部2にて懸け、人体(患者)から排出された廃液をチューブを通して廃液収容袋に収容する。これにより、廃液収容部に貯留される廃液の重量に応じて重量計31が作動し、その計測した重量及び一定の変化量が出力され表示窓に表示されるようになっている有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本願廃液収容袋の正面図である。
【図2】同側面断面図である。
【図3】使用状態を示す斜視図である。
【図4】重量計より垂下したフックを示す側面図である。
【図5】排出チューブの挟み具の側面図である。
【図6】従来型の廃液計量袋を示す正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 本願廃液計量袋
1a 表層シート
1b 裏層シート
2 懸吊部
3 廃液収容部
4 底部
5 廃液流入部
6 廃液排出部
7 透孔
8 プラスチック成形品
9 パイプ
10 廃液チューブ
11 排出チューブ
12 挟み具
12a 基縁
12b 枠体
12c スリット
13 鞘部
14 カバー体
31 重量計
32 シャフト
33 下端フック
34 テーブル
34′ 天板
35 脚部
36 高さ調整器
36′ 調整盤
37 ハウジング
37a 重量表示窓
37b 変化量表示窓
37c 月日表示窓
37d 時分表示窓
37e オンオフボタン
37f モード設定ボタン
38 測定履歴表示のキーボード
38a 左矢印ボタン
38b 右矢印ボタン
39 水平器
E 周縁部
B 分境部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量計への懸吊部の下側に、人体から排出された廃液の流入部と収容液の排出部とを備えた廃液収容部を設け、該廃液収容部の底部を半円状に形成したことを特徴とする廃液計量袋。
【請求項2】
前記廃液収容部が、表シートと裏シートとを重ね、その周縁部及び懸吊部との分境部を熱溶着してなることを特徴とする請求項1に記載の廃液計量袋。
【請求項3】
前記廃液の流入部が、廃液収容部の上位の表シートに設けた透孔の周囲に溶着したプラスチック成形品に、人体から排出された廃液をいったん貯留できるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃液計量袋。
【請求項4】
前記廃液の排出部が、廃液収容部の底部の表シートに基端を貫通接合したチューブと、該チューブの中間部を挟圧・解除できる挟み具と、該チューブ先端を格納する鞘部とを備えたことを特徴とする請求項1〜3のうちの1に記載の廃液計量袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−61312(P2007−61312A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250358(P2005−250358)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(592044075)株式会社ハヤブサ技研 (4)
【Fターム(参考)】