説明

延伸装置の制御方法

【課題】延伸装置において、手動介入後の自動運転復帰で、各セクションの速度到達時刻がバラツキ、製品の延伸率にバラツキがでるため、製品むらが大きくなっていた。
【解決手段】延伸装置において、複数の延伸ロールは各々が減速機を介して電動機によって駆動され、前記各電動機は駆動電流を検出する電流検出器と回転速度を検出する回転速度検出を備え、前記電流検出器および前記回転速度検出の検出信号はそれぞれ前記各電動機の駆動制御を行う駆動制御器に入力され、前記駆動制御器には延伸制御器から各延伸ロールの回転速度制御信号が入力されており、前記駆動制御器は前記回転速度制御信号に基づいて電動機の回転制御を行い、手動介入後の自動運転復帰時には、各延伸ロールの回転速度および加減速度は再計算され、設定速度到達時間の最も遅いものの設定速度到達時刻に、各延伸ロールが同時に設定速度に達するように設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムや合成繊維や針金など延伸製品の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
延伸製品は、成形に必要なデータ(延伸率、加速度、減速度などを)テーブルに保存し、生産時このテーブルからデータを呼び出して生産を行う。
生産中に不具合があった場合などは、自動運転を中断する手動介入が可能である。
【0003】
しかし、手動介入後、自動運転に復帰させた場合、従来の制御では人が介入した幾つかのセクションでは、自動運転時の目標到達時間にバラツキが出ると言った欠点があった。
【0004】
この時間のバラツキは、セクション間の延伸率の違いとなって現れ製品の品質の大きなバラツキにつながり、当該事態には、製品むらが大きく検出され、加減速中は十分な製造品質を備えた製品とならないことが散見されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−154290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、手動介入後の自動運転復帰で各セクションの速度到達時間のバラツキが製品のバラツキとなって現れる点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、制御装置と複数の電動機をそれぞれ駆動する駆動装置で構成された延伸装置において、複数の延伸ロールは各々が加減速機を介して電動機によって駆動され、前記各電動機は駆動電流を検出する電流検出器と回転速度を検出する回転速度検出機を備え、前記電流検出器および前記回転速度検出機の検出信号はそれぞれ前記各電動機の駆動制御を行う駆動制御器に入力され、前記駆動制御器には延伸制御器から各延伸ロールの回転速度制御信号が入力されており、前記駆動制御器は前記回転速度制御信号に基づいて電動機の回転制御を行い、手動介入後の自動運転復帰時には、各延伸ロールの回転速度および加減速度は再計算され、設定速度到達時間の最も遅いものの設定速度到達時刻に、各延伸ロールが同時に設定速度に達するように設定されていることを特徴とする延伸装置の制御方法。
【0008】
上記課題の改善策として、本発明は、手動介入後、自動運転復帰時に加減速度をセクション中で最も到達時間の遅いものに合わせ、全てのセクションの到達時間を一致させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明を利用することにより、延伸装置において、製品のバラツキを抑制し、場合によっては加減速中でも製品取りが可能となり、歩留まりの向上、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の制御方法
【図2】従来の制御方法
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【実施例1】
【0012】
従来の制御方法(図1)では、セクション間で到達時間に差があったところ、本発明(図2)では、自動運転復帰時に加減速度を再計算し、到達時間の最も遅いセクションに他のセクションを合わせることにより、セクション間の到達時差の問題を解消した。
【0013】
例として、3セクションの延伸装置で加速側のみを考える。
手動介入後の各セクションの値が下記とした場合
セクション1の現在速度 v1
セクション1の目標速度 V1
セクション1の加速度 a1
セクション1の目標到達時刻t1
セクション2の現在速度 v2
セクション2の目標速度 V2
セクション2の加速度 a2
セクション2の目標到達時刻t2
セクション3の現在速度 v3
セクション2の目標速度 V3
セクション3の加速度 a3
セクション3の目標到達時刻t3
とすると、
V1=v1+a1×t1 (式1)
V2=v2+a2×t2 (式2)
V3=v3+a3×t3 (式3)
ここで、t1〜t3までで最も長い時刻をtとすると、
V1=v1+a1’ ×t (式4)
V2=v2+a2’ ×t (式5)
V3=v3+a3’ ×t (式6)
が成立するa1’〜a3’を求める事で、各セクションの予定速度到達時間を一致させる事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
フィルム、合成繊維、針金などの延伸製品の製造設備の制御に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と複数の電動機をそれぞれ駆動する駆動装置で構成された延伸装置において、
複数の延伸ロールは各々が加減速機を介して電動機によって駆動され、
前記各電動機は駆動電流を検出する電流検出器と回転速度を検出する回転速度検出機を備え、
前記電流検出器および前記回転速度検出機の検出信号はそれぞれ前記各電動機の駆動制御を行う駆動制御器に入力され、
前記駆動制御器には延伸制御器から各延伸ロールの回転速度制御信号が入力されており、
前記駆動制御器は前記回転速度制御信号に基づいて電動機の回転制御を行い、
手動介入後の自動運転復帰時には、各延伸ロールの回転速度および加減速度は再計算され、設定速度到達時間の最も遅いものの設定速度到達時刻に、各延伸ロールが同時に設定速度に達するように設定されていることを特徴とする延伸装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−115011(P2012−115011A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260957(P2010−260957)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】