説明

建具

【課題】気密性を確保することができるとともに障子の開閉動作を良好なものとすることができ、メンテナンス作業を良好なものとすることができる建具を提供すること。
【解決手段】基枠10の上枠部材11と下枠部材12とを連結して開口部10aを構成する方立20と、戸車311が上枠部材11に配設された上レール111に載置することで吊り下げられ、かつ進入溝321に下枠部材12に配設された下レール40が進入した状態で戸車311が上レール111を転動することにより基枠10に対してスライドする障子30とを備えた建具において、下レール40を構成する第1下レール41は、沓摺部材44を装着するためのアタッチメント部材43に一体的に形成され、かつアタッチメント部材43が下枠部材12に取り付けられることで下枠部材12に配設されており、アタッチメント部材43は、障子30の下端部の室内側面に摺接する気密材45を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関し、より詳細には、例えば玄関等に障子を開閉可能に支持させた引戸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば玄関に設置された引戸のような建具においては、基枠と障子とが備えられている。基枠は、上枠部材、下枠部材及び一対の縦枠部材を四周枠組みすることによって構成されるものである。
【0003】
障子は、上端部に設けられた上戸車が上枠部材に配設された上レールに載置することで吊り下げられており、下端部に設けられた下戸車も下枠部材に配設された下レールに載置している。このような障子は、上戸車が上レールを転動し、かつ下戸車が下レールを転動することで基枠に対してスライド可能となっている。また障子の下端部には、見付け方向全体に亘って下方に向けて突出するゴム製の気密材が設けられており、かかる気密材が下枠部材に摺接することで、該障子と下枠部材との気密性を確保している。
【0004】
そして、かかる障子においては、下端部が上下方向に沿って移動可能であってバネ部材によって下方に向けて付勢されることで、下枠部材に対する当接圧を略一定にした建具が提案されている。かかる建具においては、施工誤差等により障子と下枠部材との隙間の大きさが変わっても、バネ部材の付勢力により気密材を下枠部材に摺接させて気密性を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−76358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した特許文献1に提案されているような建具では、バネ部材の付勢力により気密材を下枠部材に摺接するようにしていたために、バネ部材が経年劣化により付勢力が弱まると気密材と下枠部材との接触が十分なものとならず、気密性を確保することが困難となることがある。またバネ部材の付勢力が過大なものとなると気密材が下枠部材に干渉する結果、障子の開閉動作に不具合が生ずる虞れがあった。また、上吊引戸の障子の上下方向の調整は困難であるため、障子と下枠部材との間の障子下端部に気密材を設けたのでは気密材と下枠部材との摺接量を一定にすることが困難であり、気密材が消耗しやすいといった欠点がある。そのため、気密材が損傷した場合、障子を取り外して気密材を交換しなければならず、非常に手間がかかりメンテナンス作業が煩雑なものとなる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、気密性を確保することができるとともに障子の開閉動作を良好なものとすることができ、メンテナンス作業を良好なものとすることができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る建具は、上枠部材、下枠部材及び一対の縦枠部材を四周枠組みして構成した基枠と、前記上枠部材と前記下枠部材とを連結するよう配設され、かつ該上枠部材の一部、該下枠部材の一部及び一方の縦枠部材とともに矩形状の開口部を構成する方立と、上端部に設けた戸車が前記上枠部材に配設された上レールに載置することで吊り下げられ、かつ下端部に設けた進入溝に前記下枠部材に配設された下レールが進入した状態で前記戸車が前記上レールを転動することにより前記基枠に対して開閉移動するようスライドし、閉移動する場合に前記開口部を閉塞する障子とを備えた建具において、前記下レールのうち前記開口部に対応する部位は、沓摺部材を装着するためのアタッチメント部材に一体的に形成され、かつ該アタッチメント部材が前記下枠部材に取り付けられることで該下枠部材に配設されており、前記アタッチメント部材は、前記障子の下端部の室内側面に摺接する気密材を備えたことを特徴とする。
【0009】
このように下レールのうち開口部に対応する部位がアタッチメント部材に一体的に形成され、かつ気密材が上記アタッチメント部材に取り付けてあるので、下レールのうち開口部に対応する部位と気密材との設置寸法精度を十分に高いものとすることができる。そして、下レールは、障子の進入溝に進入するので、基枠に対してスライドする障子が室内外方向に沿って変位する変位量を十分に規制することができる。これにより気密材が障子の下端部の室内側面から離間したり、室内側面に過大に押圧することがない。しかも、アタッチメント部材を交換するだけで気密材も交換することができ、気密材のメンテナンス作業を容易なものとすることができる。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る建具は、上述した請求項1において、前記アタッチメント部材は、締結部材により前記下枠部材に固定してあることを特徴とする。
【0011】
このようにアタッチメント部材が締結部材により下枠部材に固定してあるので、かかる締結部材による締め付けを緩めることでアタッチメント部材を下枠部材から離脱させることができ、下レールの交換を容易に行うことができる。また、アタッチメント部材を下枠部材に固定することで、下レールの取り付けを容易に行うことができ、施工性を良好なものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気密性を確保することができるとともに障子の開閉動作を良好なものとすることができ、メンテナンス作業を良好なものとすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である建具を室外側から見た場合を簡略的に示す外観図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態である建具の横断面図であり、一部を拡大して示している。
【図3】図3は、図1におけるA−A線断面図であり、一部を拡大して示している。
【図4】図4は、図1におけるB−B線断面図であり、一部を拡大して示している。
【図5】図5は、下レールの構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1〜図4は、それぞれ本発明の実施の形態である建具を示すものであり、図1は室外側から見た場合を簡略的に示す外観図、図2は横断面図、図3は図1におけるA−A線断面図、図4は図1におけるB−B線断面図である。これら図2〜図4においては、それぞれ一部を拡大して示している。ここで例示する建具は、玄関に設置された引戸であり、基枠10と、方立20と、障子30とを備えて構成してある。
【0016】
基枠10は、例えばアルミニウムの押し出し材である上枠部材11、下枠部材12及び左右一対の縦枠部材13,14を四周枠組みすることによって構成した矩形状を成すものである。左右一対の縦枠部材13,14のうち一方の縦枠部材(以下、右縦枠部材13とも称する)は、建物躯体1の玄関開口2の右側開口縁部の室外側に上下方向に沿って延在するよう設けてある。その一方、他方の縦枠部材(以下、左縦枠部材14とも称する)は、建物躯体1の室外側に上下方向に沿って延在するよう設けてある。これにより上枠部材11は、その一部が上記玄関開口2の上側開口縁部の室外側に左右方向に沿って延在するよう設けてあり、下枠部材12は、その一部が上記玄関開口2の下側開口縁部の室外側に左右方向に沿って延在するよう設けてある。ここで、本明細書においては、「右側」は建具を室外側から見た場合における右方を示し、「左側」は建具を室外側から見た場合における左方を示すものとして説明する。
【0017】
方立20は、図2にも示すように、建物躯体1の玄関開口2の左側開口縁部の室外側に上下方向に沿って延在するよう設けてある。この方立20は、上枠部材11の見付け方向中央域の室内側部位と下枠部材12の見付け方向中央域の室内側部位とを連結するよう設けてある。かかる方立20により基枠10により形成される矩形状の開口は2つに分割され、開口部10aと引込部10bとが形成される。
【0018】
開口部10aは、方立20と、上枠部材11のうち方立20よりも右側の部分と、右縦枠部材13と、下枠部材12のうち方立20よりも右側の部分とにより形成される矩形状のものであり、建物躯体1の玄関開口2に対応している。つまり、方立20は、上枠部材11の一部、下枠部材12の一部及び一方の縦枠部材13とともに矩形状の開口部10aを構成している。
【0019】
引込部10bは、方立20と、上枠部材11のうち方立20よりも左側の部分と、左縦枠部材14と、下枠部材12のうち方立20よりも左側の部分とにより形成される矩形状のものである。かかる引込部10bは、建物躯体1に取り付けた外壁面3により閉塞してある。
【0020】
障子30は、上フレーム部材31、下フレーム部材32及び左右一対の縦フレーム部材33,34を四周組みすることによって構成したフレーム枠の内部にパネル材35を保持したもので、基枠10の内部に装着可能な大きさに構成してある。
【0021】
かかる障子30の上フレーム部材31には、該障子30の見付け方向に沿って所定間隔毎に複数の戸車311が配設してある。これら戸車311は、図3に示すように、上枠部材11に取り付けられた上レール111に載置してある。これにより障子30は、上レール111に吊り下げられている。上レール111は、上枠部材11の見付け方向全長に亘って延在するよう取り付けてある。
【0022】
この図3における符号112及び113は、それぞれ上カバー部材及び保持部材である。上カバー部材112は、上枠部材11の室外域を覆うものであり、障子30の上フレーム部材31の室外側面に接するモヘア114を有している。保持部材113は、上枠部材11及び建物躯体1に取り付けてあり、障子30の上フレーム部材31の室内側面に摺接するゴム製の上側気密材115を有している。
【0023】
このような障子30は、戸車311が上レール111を転動することにより基枠10に対して左右方向に沿ってスライドするものであり、上記開口部10aを開閉するものである。つまり、障子30は、右方に向けてスライドすることで閉移動し、一方の縦フレーム部材(以下、右縦フレーム部材33とも称する)が右縦枠部材13に当接することで該開口部10aを閉塞するものである。このように開口部10aを閉塞する場合には、障子30の他方の縦フレーム部材(以下、左縦フレーム部材34とも称する)が方立20の室外側に位置することになる(図2参照)。
【0024】
上記障子30の下フレーム部材32には、図3に示すように、進入溝321が見付け方向全長に亘って形成してある。かかる進入溝321は、下枠部材12に配設した後述する下レール40を進入させるものである。ここで進入溝321の上下長さは、障子30の寸法誤差や施工誤差を吸収するのに十分な大きさに予め調整してある。これにより、障子30は、進入溝321に下レール40が進入した状態で基枠10に対してスライドするものである。
【0025】
下レール40は、第1下レール41と第2下レール42とを備えて構成してある。第1下レール41は、開口部10aに対応しており、アタッチメント部材43に一体的に形成してある。
【0026】
アタッチメント部材43は、例えばアルミニウムの押し出し材であり、下枠部材12における開口部10aを形成する部位(開口部形成部位)121にビス等の締結部材50により固定してある。かかるアタッチメント部材43は、下枠部材12の開口部形成部位121の見付け方向全長に亘って設けてあり、ゴム製の沓摺部材44を装着するためのものである。このアタッチメント部材43の室外側端部431より室外方向に沿って延在する室外延部432の延在端部より上方に向けて延在する部分が上記第1下レール41である。
【0027】
このようなアタッチメント部材43においては、その室外側端部431に下側気密材45が取り付けてある。下側気密材45は、アタッチメント部材43の見付け方向全長に亘って取り付けたゴム製部材であり、その先端が障子30の下フレーム部材32の室内側面に摺接するものである。尚、図3中の符号46は、下カバー部材である。下カバー部材46は、例えばステンレス等からなる板状体であり、第1下レール41よりも室外側において下枠部材12に取り付けてある。
【0028】
第2下レール42は、引込部10bに対応しており、図4に示すように、下レール基部47に一体的に形成してある。下レール基部47は、例えばアルミニウムの押し出し材であり、下枠部材12における引込部10bを形成する部位(引込部形成部位)122にビス等の締結部材50により固定してある。かかる下レール基部47は、下枠部材12における引込部形成部位122の見付け方向全長に亘って設けてある。この下レール基部47の室外側端部より上方に向けて延在する部位が上記第2下レール42である。
【0029】
このような第1下レール41と第2下レール42とは、図5の(a)及び(b)に示すように、アタッチメント部材43の室外延部432の右端部に形成した凹部4321に、下レール基部47の左端部に形成した凸部471を挿入させることで、左右方向に沿って一直線上に連結して下レール40を構成している。
【0030】
以上のような構成を有する本実施の形態である建具においては、第1下レール41がアタッチメント部材43に一体的に形成され、かつ下側気密材45が上記アタッチメント部材43に取り付けてあるので、第1下レール41と下側気密材45との設置寸法精度を十分に高いものとすることができる。そして、第1下レール41は、障子30の進入溝321に進入するので、基枠10に対してスライドする障子30が室内外方向に沿って変位する変位量を十分に規制することができる。これにより下側気密材45が障子30の下端部(下フレーム部材32)の室内側面から離間したり、室内側面に過大に押圧することがない。しかも、アタッチメント部材43を交換するだけで下側気密材45も交換することができ、下側気密材45のメンテナンス作業を容易なものとすることができる。
【0031】
従って、本実施の形態である建具によれば、気密性を確保することができるとともに障子30の開閉動作を良好なものとすることができ、メンテナンス作業を良好なものとすることができる。
【0032】
上記建具においては、第1下レール41と一体的に形成されたアタッチメント部材43がビス等の締結部材50により下枠部材12に固定してあるので、かかる締結部材50による締め付けを緩めることでアタッチメント部材43を下枠部材12から離脱させることができ、第1下レール41の交換を容易に行うことができる。また、アタッチメント部材43を下枠部材12に固定することで、第1下レール41の取り付けを容易に行うことができ、施工性を良好なものとすることができる。
【0033】
また、ガイドローラを有する既存の建具に対して、下枠部材12にアタッチメント部材43を固定することで第1下レール41を配設し、かつ必要に応じて進入溝321を有する障子30に交換することで本実施の形態である建具とすることができ、この結果、互換性を良好なものとすることができる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0035】
上述した実施の形態では、下レール40は、第1下レール41と第2下レール42とが連結されて構成されるものであったが、本発明においては、下レール40は、第1下レール41のみによって構成されるものであってもよい。この場合、引込部形成部位122に対応する部分では、アタッチメント部材43を取り除くことになる。これによっても上述した作用効果を奏することができる。
【0036】
上述した実施の形態では、障子30は、進入溝321に下レール40が進入した状態で基枠10に対してスライドするものとしたが、本発明では、障子の下部に設けた戸車が下レール上を転動することで基枠に対してスライドするものであっても良いし、あるいは障子の下部に設けた下レールの幅と略同じ大きさの幅を有する溝を備えた摺動片を下レールに摺動させて基枠に対してスライドするものであっても良い。
【0037】
上述した実施の形態では、引込部10bが建物躯体1の室外側に設けられるものであったが、本発明においては、引込部が建物躯体の室内側に設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 建物躯体
2 玄関開口
3 外壁面
10 基枠
10a 開口部
10b 引込部
11 上枠部材
111 上レール
112 上カバー部材
113 保持部材
115 上側気密材
12 下枠部材
121 開口部形成部位
122 引込部形成部位
13 縦枠部材(右縦枠部材)
14 縦枠部材(左縦枠部材)
20 方立
30 障子
31 上フレーム部材
311 戸車
32 下フレーム部材
321 進入溝
33 縦フレーム部材(右縦フレーム部材)
34 縦フレーム部材(左縦フレーム部材)
35 パネル材
40 下レール
41 第1下レール
42 第2下レール
43 アタッチメント部材
431 室外側端部
432 室外延部
4321 凹部
44 沓摺部材
45 下側気密材
46 下カバー部材
47 下レール基部
471 凸部
50 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠部材、下枠部材及び一対の縦枠部材を四周枠組みして構成した基枠と、
前記上枠部材と前記下枠部材とを連結するよう配設され、かつ該上枠部材の一部、該下枠部材の一部及び一方の縦枠部材とともに矩形状の開口部を構成する方立と、
上端部に設けた戸車が前記上枠部材に配設された上レールに載置することで吊り下げられ、かつ下端部に設けた進入溝に前記下枠部材に配設された下レールが進入した状態で前記戸車が前記上レールを転動することにより前記基枠に対して開閉移動するようスライドし、閉移動する場合に前記開口部を閉塞する障子と
を備えた建具において、
前記下レールのうち前記開口部に対応する部位は、沓摺部材を装着するためのアタッチメント部材に一体的に形成され、かつ該アタッチメント部材が前記下枠部材に取り付けられることで該下枠部材に配設されており、
前記アタッチメント部材は、前記障子の下端部の室内側面に摺接する気密材を備えたことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記アタッチメント部材は、締結部材により前記下枠部材に固定してあることを特徴とする請求項1に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28993(P2013−28993A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167031(P2011−167031)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】