説明

建物の防水構造

【課題】施工作業性に優れ、簡単に防水効果を確保することのできる建物の防水構造を得る。
【解決手段】上階建物ユニット21Aの広幅溝形鋼柱23を、外装材25よりも上階外付架構ユニット31A側へ突出させた。また、上階建物ユニット21Aの防水シート26を、入隅部を超えて広幅溝形鋼柱23の屋外側端部に至るまで延長させた。そして、上階外付架構ユニット31Aの防水シート126の端部を広幅溝形鋼柱23に連結される溝形鋼柱122よりも屋内側へ向けて延長させた。そして、上階建物ユニット21Aに上階外付架構ユニット31Aを連結する際に、防水シート126の延長部分を上階建物ユニット21Aの防水シート26に重複させて、当該重複部分35において接着した。この場合、防水シート26,126同士の継目は、上階外付架構ユニット31Aの側面に形成されるようにして、継目が入隅部から外れた位置となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体とその建物本体に対し外付けされる外付架構ユニットとを含む建物の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物においては、建物本体にバルコニーやパイプスペース等の架構を外付で組み付けることがある。ユニット式建物の場合には、予め工場で組み立てられてユニット化された外付架構ユニットを、建物本体に組み付けることとなる。この場合、建物本体と外付架構ユニットとの連結箇所から雨水等の水分が外壁層内部に侵入することを防ぐため、その連結箇所において防水処理が施される。また外付架構ユニットを下階(例えば1階)及び上階(1階に対する2階)部分の建物本体にそれぞれ取り付ける場合には、下階の外付架構ユニットと、上階の外付架構ユニットとの間に形成される横目地においても防水処理が必要となる。
【0003】
そこで、例えば上階部分の入隅部についても、従来から防水処理が施されている(例えば、特許文献1参照)。この防水構造の一例について、図8に基づいて説明する。
【0004】
図8(a)に示すように、建物本体51側の2本の山形鋼52は、その一辺同士が連結され、両他辺が上階外付架構ユニット56を向いて配設されている。これら山形鋼52の上階外付架構ユニット56側の側面下部に帯状の防水シート53が貼り付けられている。さらに屋外側には山形鋼52同士の連結部分の隙間を塞ぐように上下方向に沿って止水シート54が貼り付けられている。そして、一方の山形鋼52に外装材55が取り付けられている。
【0005】
一方、上階外付架構ユニット56の山形鋼52は、その屋外側の一辺の下部に防水シート53が貼り付けられている。その屋外側に上下方向に沿って止水シート54が貼り付けられている。さらにその屋外側には外装材55が取り付けられている。防水シート53の一端及び外装材55の端面は山形鋼52の角部に位置合わせされている。
【0006】
そして、図8(b)に示すように、建物本体51に上階外付架構ユニット56を連結固定する。その際には、上階外付架構ユニット56の外装材55の端面を建物本体51の止水シート54に当接させる。そして、直交する防水シート53にブチルテープ等の防水テープを貼り付けて連結する。また防水テープでは塞ぐことのできない防水シート53と止水シート54との隙間などはコーキングを行う。
【0007】
これによれば、止水シート54によって、建物本体51側の外装材55と上階外付架構ユニット56の外装材55との入隅部において防水効果を奏する。また張り合わされた防水シート53を下階の外装材に貼り付けることで、上階の外装材と下階の外装材との間に形成される横目地において防水効果を奏する。
【特許文献1】特開平11−71824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では、防水シート53同士を防水テープによって貼り付ける際は、施工作業効率が上がらないという課題がある。
【0009】
すなわち、ユニット式建物の場合には、建物本体51及び外付架構ユニットは、山形鋼52等から構成される骨組フレームに、防水シート53、止水シート54及び外装材55が予め工場にて取り付けられた状態で現場に搬入される。
【0010】
このため、作業スペースの確保が困難な外装材55の裏側において、防水シート53同士を張り合わせなければならず作業効率が悪い。また防水効果を確保する必要があることから、慎重に作業をせざるを得ない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、施工作業性に優れ、簡単に防水効果を確保することのできる建物の防水構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するのに好適な発明について、作用効果等を示しつつ以下に説明する。
【0013】
第1の発明は、外壁下地に外装材が取り付けられている建物本体と、その建物本体に外付けされるとともに外壁下地に予め外装材が取り付けられている外付架構ユニットとを含む建物の防水構造であって、
前記建物本体又は前記外付架構ユニットのうち一方については外壁下地が外装材よりも突出するとともに、他方については外壁下地よりも外装材が突出しており、
前記建物本体及び前記外付架構ユニットのそれぞれの外壁下地にはそれらより下方に垂下されるように防水シートがそれぞれ取り付けられており、
前記一方については防水シートが外壁下地の前記突出された部位まで延長されるとともに、前記他方については防水シートが外装材の前記突出された部位まで延長されており、
前記外付架構ユニットが前記建物本体に組み付けられた状態において両外装材間に目地が形成されるとともに、前記両防水シートの端部同士が重ね合わされる部分がその目地形成位置に沿った位置から外れた位置に配設されていることを特徴とする。
【0014】
第1の発明によれば、建物本体の外壁下地又は外付架構ユニットの外壁下地のうちいずれか一方については外装材よりも突出し、他方については外壁下地よりも外装材が突出し、外付架構ユニットの下部に設けられる防水シートと、建物本体の下部に設けられる防水シートとが重ね合わせられる。この重ね合わせ部分は適宜接着等により連結すればよい。これにより、従来よりも施工が容易となるし、建物本体の外装材と外付架構ユニットの外装材との境界部位である目地と両防水シートの重ね合わせ部位とが異なる位置にあることから、例えば縦目地を伝ってきた雨水のような、目地に入り込んだ水分が防水シート同士の継目に流れ込むことが抑制されるため、防水シートによる防水効果を好適に確保することができる。
【0015】
第2の発明は、外壁下地に外装材が取り付けられている建物本体と、その建物本体に外付けされるとともに外壁下地に予め外装材が取り付けられている外付架構ユニットとを含む建物の防水構造であって、
前記建物本体又は前記外付架構ユニットのうち一方については外壁下地が外装材よりも突出するとともに、他方については外壁下地よりも外装材が突出しており、
前記外装材より突出された外壁下地の前記突出された部位には、当該外装材の裏面に一部を入り込ませた防水シートが上下方向へ延びるようにして取り付けられており、
前記外付架構ユニットが前記建物本体に組み付けられた状態において両外装材間に縦目地が形成されるとともに、前記防水シートの前記外装材から突出された端部が前記縦目地形成位置に沿った位置から外れた位置に配設されていることを特徴とする。
【0016】
第2の発明によれば、建物本体の外壁下地又は外付架構ユニットの外壁下地のうちいずれか一方については外装材よりも突出し、他方については外壁下地よりも外装材が突出し、前記一方については外壁下地の前記突出された部位について当該外装材の裏面に一部を入り込ませた防水シートが上下方向へ延びるようにして取り付けられている。これにより、他方については特に縦目地の止水用の防水シートを設ける必要がなくなり、コーキング等による後処理も不要となって、従来よりも施工が容易となる。また、一方について設けられた防水シートの面が縦目地の背後に位置することになることから、縦目地に入り込もうとする雨水等の水分が防水シートに確実に受け止められるため、防水シートによる防水効果を好適に確保することができる。
【0017】
ここで、上記第1の発明は、前記外付架構ユニットは前記建物本体の上階部分に連結される上階外付架構ユニットであり、前記建物本体の上階部分及び上階外付架構ユニットと、前記建物本体の下階部分及びその下階部分に連結されるとともに前記上階外付架構ユニットの下方に配置される下階外付架構ユニットとの間には、それらの外装材間に横目地が形成されており、前記両防水シートの下部は前記横目地を介して前記建物の下階部分及び下階外付架構ユニットの外装材における屋外側の表面に垂れ下げられていることが好ましい。両防水シートは、上階部分と下階部分との間に形成される横目地を防水するための防水シートとして使用されるのに適しているからである。
【0018】
また、第1の発明においては、前記建物本体の外装材と前記外付架構ユニットの側面の外装材との突き合わせ端部に入隅部が形成されることにより、当該入隅部に縦目地が形成されるものであり、
前記建物本体の外壁下地が外装材よりも突出されるものであり、
その突出された部位は、前記外付架構ユニットの側面と同一方向に沿って延びるように前記入隅部から直角に延長されており、
その直角部位を含むようにして前記建物本体側の防水シートが設けられており、
前記外付架構ユニットの側面において両防水シートの重ね合わせ部分が形成されていることが好ましい。
【0019】
同様に、第2の発明においては、前記建物本体の外装材と前記外付架構ユニットの側面の外装材との突き合わせ端部に入隅部が形成されることにより、当該入隅部に前記縦目地が形成されるものであり、
前記建物本体の外壁下地が外装材よりも突出されるものであり、
その突出された部位は、前記外付架構ユニットの側面と同一方向に沿って延びるように前記入隅部から直角に延長されており、
その直角部位を含むようにして前記防水シートが設けられていることが好ましい。
【0020】
これらによれば、建物本体側の防水シートが外付架構ユニットの側面に至るまで延長されることにより、入隅部に防水シートの端部が存在することがなくなり、当該入隅部における防水効果を確実なものとすることができるからである。
【0021】
また、この場合、前記建物本体側の防水シートは、建物本体の外装材の裏面から前記直角部位を介して、建物本体の外壁下地の突出された部位にまで切れ目無く延長されていることが好ましい。入隅部周辺に防水シートの端部が存在しないことが防水効果を一層高めることになるからである。
【0022】
さらに、前記建物本体と前記外付架構ユニットとの連結部分において、前記建物本体の外壁下地としてフレーム材が用いられ、当該フレーム材が前記建物本体の外装材よりも突出されている構造とすることができる。このように構成すれば、フレーム材を外装材から突出させることで、当該フレーム材を外付架構ユニットの連結のために用いることができるようになるためである。
【0023】
さらにまた、第1,第2の発明においては、前記建物本体は建物ユニットを複数組み合わせて構築されるユニット式建物であり、いずれかの建物ユニットに開口部が形成されるとともに、当該開口部を塞ぐようにして外付架構ユニットが取り付けられるものである構造を採用することができる。このようにすれば、建物ユニットに外付架構ユニットが取り付けられ、それらの連結部分において第1又は第2の発明における防水構造を得られる。ユニット式建物は施工現場における作業工数を減らすことができ、個体差の少ない建物を得ることができる利点があるが、外付架構ユニットが取り付けられる建物において前記した利点を享受し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(全体概要)
本実施形態では、建物としてユニット式建物に適用した例について説明する。図2に示すように、ユニット式建物11は、基礎12上に配設される建物本体13と、この建物本体13の上方に配設される屋根14とにより構成されている。建物本体13は複数の建物ユニット21から構成されている。この建物ユニット21は、2階部分を構成する上階建物ユニット21Aと1階部分を構成する下階建物ユニット21Bとを備えている。
【0026】
基礎12は、ユニット式建物11の正面15側に張り出している張出部11aを備えている。なお、本実施形態では、張出部11aが設けられている側を、便宜上、正面15と称しているが、張出部11aは必ずしも正面15に設けられる必要はない。この張出部11aの上方には下階外付架構ユニット31Bが配設され、この下階外付架構ユニット31Bの上方に上階外付架構ユニット31Aが配設されている。
【0027】
下階外付架構ユニット31Bは、その下面が基礎12の張出部11aの上面に係合されているとともに、下階外付架構ユニット31Bの建物本体13側の側面上部が、建物本体13の正面15を構成する建物ユニット21Bに連結固定されている。上階外付架構ユニット31Aは、その下面が下階外付架構ユニット31Bの上面に係合されているとともに、上階外付架構ユニット31Aの建物本体13側の側面上部が、建物本体13の正面15を構成する建物ユニット21Aに連結固定されている。
【0028】
本実施形態における防水構造は、この上階外付架構ユニット31Aと上階建物ユニット21Aとの連結部分に適用されるものである。そこで、以下において、上階外付架構ユニット31A及び上階建物ユニット21Aの各構成について、図1及び図3を参照しながら説明する。
【0029】
(上階建物ユニット21A)
まず、上階建物ユニット21Aの構成について説明する。図1及び図3に示すように、上階建物ユニット21Aは、溝形鋼柱22、広幅溝形鋼柱23、溝形鋼梁24及び外装材25を備えている。広幅溝形鋼柱23は、溝形鋼柱22及び溝形鋼梁24よりも広幅に形成されている。なお、溝形鋼柱22、広幅溝形鋼柱23及び溝形鋼梁24は、溝形鋼とされている。
【0030】
溝形鋼柱22及び広幅溝形鋼柱23は、建物本体13の正面15に沿って、横方向に所定間隔をおいて配設され、それぞれが鉛直方向に延びている。具体的には、広幅溝形鋼柱23は、互いに側面開口が対向して配設されており、これら両広幅溝形鋼柱23の外方に溝形鋼柱22が側面開口を屋内側へ向くようにして配設されている。両広幅溝形鋼柱23によって形成される間隔は、隣接する溝形鋼柱22間の間隔や溝形鋼柱22と広幅溝形鋼柱23とによって形成される間隔よりも広幅に設定されている。
【0031】
溝形鋼柱22及び広幅溝形鋼柱23の上下両端部には、建物本体13の正面15に沿って延びる溝形鋼梁24が配設されている(下端部の溝形鋼梁24のみ図示)。そして、溝形鋼柱22及び広幅溝形鋼柱23のそれぞれの上下両端部が、上下に配設された各溝形鋼梁24に連結されることにより、上階建物ユニット21Aの骨組フレームが構成されている。
【0032】
溝形鋼柱22には、両広幅溝形鋼柱23の間隙を除いて外装材25が複数取り付けられている。具体的には、広幅溝形鋼柱23の背面における左右方向の略中央に端部が位置するように、外装材25が溝形鋼柱22に取り付けられている。広幅溝形鋼柱23の背面には、その屋内側に横断面L字状の山形鋼29が設けられている。山形鋼29は、その内面が屋内側を向いて設けられている。そして、山形鋼29の屋外側の面にも外装材25の端部が取り付けられている。
【0033】
以上により、一対の広幅溝形鋼柱23間には外装材25が配設されておらず、それらの間は開口している。また、広幅溝形鋼柱23は外装材25に覆われておらず、上階建物ユニット21A単体では外部に露出されている。より詳細には、各広幅溝形鋼柱23の略半分は外装材25よりも上階外付架構ユニット31Aへの取り付け方向に突出した状態となっている。なお、両広幅溝形鋼柱23間の開口部分に上階外付架構ユニット31Aが取り付けられるが、その際、両広幅溝形鋼柱23が上階外付架構ユニット31Aの連結部材として機能することとなる。
【0034】
外装材25と溝形鋼柱22との間隙の下部には、防水性を有する帯状の防水シート26が横方向に延びるようにして配設されている。防水シート26は下階建物ユニット21Bとの間に形成される横目地の防水機能を担うものであり、一部が外装材25よりも下方にはみ出しかつ垂れ下がった状態となっている。また、防水シート26は、広幅溝形鋼柱23と山形鋼29とにより形成される入隅部を介して、広幅溝形鋼柱23の屋外側の角部に至るまで延びた状態で貼り付けられている。換言すれば、防水シート26は、上階建物ユニット21Aの正面15側における下部のうち、一対の広幅溝形鋼柱23間の開口部を除いた全域に設けられている。
【0035】
各広幅溝形鋼柱23の背面には、上下方向に止水シート27が貼り付けられている。止水シート27は塩化ビニル等の材質により形成され弾性を有している。止水シート27は上階外付架構ユニット31Aとの間に形成される縦目地の防水機能を担うものであり、一部が外装材25よりも側方にはみだした状態となっている。詳細には、止水シート27は、広幅溝形鋼柱23と山形鋼29とにより形成される入隅部を覆うようにして貼り付けられている。この場合、止水シート27はその下端部において防水シート26に重複しているが、本実施形態では特に、防水シート26よりも止水シート27が屋外側になるように重ね合わされている。これにより、防水シート26の表面を流下する水分は、防水シート26と止水シート27との間から屋内側へ入り込むことなく防水シート26を伝って流下されることとなる。
【0036】
なお、上述のとおり、山形鋼29及び溝形鋼柱22の背面には、外装材25が取り付けられているが、より詳細には、外装材25の端面と広幅溝形鋼柱23の背面との間に、上階外付架構ユニット31Aの外装材25の厚さ寸法と略同一寸法の間隙が形成されるようにして、外装材25が取り付けられている。
【0037】
(上階外付架構ユニット31A)
次に、上階外付架構ユニット31Aの構成について説明する。図1及び図3に示すように、上階外付架構ユニット31Aは、複数(例えば4本)の溝形鋼柱122と、複数(例えば2本)の角形鋼管柱128と、複数の溝形鋼梁(図示略)と、複数枚(例えば3枚)の外装材125とを備えている。
【0038】
これら外装材125のうち1枚の外装材125は板面が正面15側へ向けられている。その板面が正面15へ向けられた外装材125の両端からは、一対の外装材125が正面15に対して垂直になるようにかつ互いに同方向へ延びるようにして取り付けられている。このため、上階外付架構ユニット31Aは全体として横断面コ字状となっており、その側面開口は上階建物ユニット21Aへ向けられている。
【0039】
これら外装材125の各内面には、前記溝形鋼柱122、角形鋼管柱128及び溝形鋼梁(図示略)が所定間隔をおいて枠組されて、各外装材125を背面側から支持するようになっている。具体的には、上階外付架構ユニット31Aのコーナ部に角形鋼管柱128がそれぞれ設けられている。これら角形鋼管柱128の間に溝形鋼柱122が2本設けられ、残りの2本は上階外付架構ユニット31Aの側面を形成する一対の外装材125にそれぞれ設けられている。これら溝形鋼柱122は、側面開口が上階外付架構ユニット31Aの内周側へ向けられた状態で取り付けられている。
【0040】
各溝形鋼柱122のうち、上階建物ユニット21Aに近い一対の溝形鋼柱122が上階建物ユニット21Aの広幅溝形鋼柱23に高力ボルト30(図4及び図5参照)等の締結部材を利用して連結されるようになっている。ここで、左右一対の外装材125は、広幅溝形鋼柱23に連結される一対の溝形鋼柱122よりも更に上階建物ユニット21A側へ延びている。すなわち、左右一対の外装材125の屋内側端部が自由端とされており、広幅溝形鋼柱23と溝形鋼柱122との連結状態において、この自由端部分が広幅溝形鋼柱23と外装材25との間隙に入り込むことのできる寸法となっている。
【0041】
各外装材125の内面側の下部には、防水性を有する帯状の防水シート126が配設されている。防水シート126は下階外付架構ユニット31Bとの間に形成される横目地の防水機能を担うものであり、一部が外装材125よりも下方にはみだしかつ垂れ下がった状態となっている。より詳細には、防水シート126の一端部は、上階建物ユニット21Aの広幅溝形鋼柱23に連結される溝形鋼柱122の屋内側の端部よりも更に屋内側へ延びた状態で貼り付けられている。なお、上階外付架構ユニット31Aを上階建物ユニット21Aに連結する前の状態においては、防水シート126の延長部分の上部が、外装材125の裏面に仮止めされている。これにより、防水シート126の延長部分が折れ曲がるなどの不具合を解消でき、円滑に上階外付架構ユニット31Aに連結することができる。
【0042】
なお、上階外付架構ユニット31Aは、予め工場で溝形鋼柱122や角形鋼管柱128、外装材125、防水シート126等が組み付けられた状態のものが現場に搬入され、上階建物ユニット21Aに連結されることとなる。
【0043】
(両ユニット21A,21Bの連結方法及び連結構造)
次に、上階外付架構ユニット31Aの上階建物ユニット21Aへの連結方法及び連結構造について、図4及び図5を参照しつつ説明する。なお、図5(a)においては外装材25,125の背面側(屋内側)の状態を説明するために、外装材25,125の図示を省略している。
【0044】
上階外付架構ユニット31Aを上階建物ユニット21Aへ連結する際には、上階建物ユニット21Aの施工後に、当該上階建物ユニット21Aの広幅溝形鋼柱23間の開口部を塞ぐようにして上階外付架構ユニット31Aが取り付けられる。
【0045】
詳細を説明すると、図4に示すように、上階建物ユニット21Aに対して上階外付架構ユニット31Aを水平に移動させる。上階建物ユニット21Aに対する上階外付架構ユニット31Aの水平移動は、上階建物ユニット21Aの広幅溝形鋼柱23に上階外付架構ユニット31Aの溝形鋼柱122が当接する位置まで行われる。
【0046】
この当接位置迄の水平移動によって、上階建物ユニット21Aの外装材25の端面と広幅溝形鋼柱23の背面との隙間に、上階外付架構ユニット31Aの外装材125が挿入される。この際、上階外付架構ユニット31Aの外装材125の先端部背面側を止水シート27に当接させる。ここで、止水シート27は弾性を有していることから、外装材125と止水シート27との隙間の発生を弾力によって抑制することが可能であり、それらの間の防水効果を高めることができる。
【0047】
この場合、上階建物ユニット21Aの外装材25の端面と、上階外付架構ユニット31Aの外装材125の側面との間に上下方向へ延びる縦目地33が形成される。この縦目地33を防水するために、当該縦目地33に沿ってシーリング材34によりシールする。すなわち、入隅部の縦目地33においては、止水シート27及びシーリング材34の2重構造により防水処理が施されることとなり、止水シート27はバックアップシールとして機能する。
【0048】
この状態において、互いに当接されている上階建物ユニット21Aの広幅溝形鋼柱23と上階外付架構ユニット31Aの溝形鋼柱122とを、高力ボルト30により固定する。高力ボルト30は、上下方向に所定間隔をおいて複数取り付けられている。これにより、上階建物ユニット21Aに上階外付架構ユニット31Aが連結される。
【0049】
この取り付け状態では、図5(a)に示すように、上階建物ユニット21Aの防水シート26の一端と、上階外付架構ユニット31Aの防水シート126の一端とが、上階外付架構ユニット31Aの防水シート126を屋外側とした状態で重ね合わされている。そして、この重複部分35において、防水シート26,126同士を接着剤等によって固定する。これにより、図5(b)に示すように、上階建物ユニット21Aの防水シート26と、上階外付架構ユニット31Aの防水シート126との継目は、従来例(図8参照)のように入隅部には形成されず、入隅部から外れた箇所、本実施形態では上階外付架構ユニット31Aの側面に形成されることとなる。
【0050】
(本実施形態の効果)
以上の特徴点を有する本実施形態によれば、以下に示す有利な効果が得られる。
【0051】
上階建物ユニット21Aの広幅溝形鋼柱23を、外装材25よりも上階外付架構ユニット31A側へ突出させた。また、上階建物ユニット21Aの防水シート26を、入隅部を超えて広幅溝形鋼柱23の屋外側端部に至るまで延長させた。そして、上階外付架構ユニット31Aの防水シート126の端部を広幅溝形鋼柱23に連結される溝形鋼柱122よりも屋内側へ向けて延長させた。そして、上階建物ユニット21Aに上階外付架構ユニット31Aを連結する際に、防水シート126の延長部分を上階建物ユニット21Aの防水シート26に重複させて、当該重複部分35において接着した。この場合、防水シート26,126同士の継目は、上階外付架構ユニット31Aの側面に形成されるようにして、継目が入隅部から外れた位置となるようにした。
【0052】
これにより、従来例のように防水シート26,126同士が突き合わされる箇所において、ブチルテープ等の防水テープにより張り合わせる必要もなく、さらに防水テープでは塞ぐことが困難な防水シート26と止水シート27との小さな隙間などをコーキングにより埋めるなどの煩雑な作業を行うことなく、好適に防水効果を奏することができる。その結果、施工作業が容易になる。
【0053】
広幅溝形鋼柱23と山形鋼29とにより形成される入隅部に止水シート27を貼り付け、当該入隅部に上階外付架構ユニット31Aの外装材125の先端部を挿入した。これにより、従来例のように、止水シートを上階外付架構ユニット31Aに貼り付けたものを連結しなくても、施工作業を簡略化しつつ防水効果を高めることができる。
【0054】
ユニット式建物11において、各建物ユニット21A,21Bのみならず、外付架構についても外付架構ユニット31A,31Bとしてユニット化した。また、上記のように上下階間の横目地における止水処理や、上階建物ユニット21Aと上階外付架構ユニット31Aとの間の縦目地33における止水処理の作業が極めて容易になるとともに防水信頼性も高められている。したがって、ユニット式建物11の利点である施工現場における作業工数の低減や、個体差の少ない均質な仕上がり等の効果を、外付架構を有する建物においても引き継ぐことができる。
【0055】
(他の実施形態)
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0056】
(1)上記実施の形態では、建物本体13の2階部分を構成する上階建物ユニット21Aに上階外付架構ユニット31Aを連結する箇所について説明したが、これに限定されない。すなわち、縦目地の防水構造に関するものであれば建物ユニットの階数は無関係であり、1階部分を構成する下階建物ユニット21Bに適用することも可能であり、2階部分よりも上階の建物ユニットにおいて適用することも可能である。また、下階部分との間に形成される横目地の防水構造に関するものであれば、2階以上の上階部分を構成する建物ユニットであれば適用することができる。
【0057】
(2)上記実施の形態では、建物本体の一部を構成する上階建物ユニット21A側について外壁下地としての広幅溝形鋼柱23を上階外付架構ユニット31A側に突出させ、その一方で上階外付架構ユニット31A側では外装材125を上階建物ユニット21A側に突出させたが、この関係を逆にしてもよい。すなわち、上階建物ユニット21Aと上階外付架構ユニット31Aとの連結部分について、一方の外装材が外壁下地から突出するとともに他方の外壁下地が外装材から突出し、これにより防水シート26,126の継目や止水シート27の端部が縦目地33から外れた位置に配置されるものであればよい。
【0058】
(3)上記実施の形態では、外壁下地として溝形鋼柱22や広幅溝形鋼柱23等の金属フレーム材を用いたが、外装材25,125を支持するものであれば木製フレーム材等の他の外壁下地を用いてもよい。
【0059】
(4)上記実施の形態では、防水構造を上階建物ユニット21Aと上階外付架構ユニット31Aとにより形成される入隅部に適用したが、平継部に適用してもよい。すなわち、建物本体13の角部C(図2参照)において、上階外付架構ユニット31Aの側面と建物本体13の側面16とが同一平面上になるような部分に連結してもよい。この場合の例を図6及び図7に示した。建物本体13の角部Cに上階外付架構ユニット31Aを平継する場合には、角部Cに対応させて広幅溝形鋼柱23に代えて例えば中空状の角形鋼管柱41を設けることが好ましい。この場合も、角形鋼管柱41を角部Cから上階外付架構ユニット31A側へ突出させておけば、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0060】
(5)上記実施の形態では、複数の建物ユニット21A,21Bを備えたユニット式建物を例に説明したが、他の工法で構築された建物について適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】一実施形態における建物ユニットと外付架構ユニットとの連結部分を示す分解斜視図。
【図2】ユニット式建物の概要を示す斜視図。
【図3】建物ユニットと外付架構ユニットとの連結部分の下部側を示す分解斜視図。
【図4】建物本体と上階外付架構ユニットとの連結部分を示す一部断面図。
【図5】(a)は外装材を除外して図示し、(b)は外装材を含めて図示したものであり、いずれも建物ユニットと上階外付架構ユニットとの連結部分を示す一部斜視図。
【図6】他の実施形態における建物ユニットと外付架構ユニットとの連結部分を示す分解斜視図。
【図7】他の実施形態における建物ユニットと外付架構ユニットとの連結部分を示す一部断面図。
【図8】(a)は従来例の建物本体と外付架構ユニットとの連結部分を示す分解斜視図、(b)は連結状態における一部斜視図。
【符号の説明】
【0062】
11…ユニット式建物、21…建物本体を構成する建物ユニット、21A…上階建物ユニット、21B…下階建物ユニット、22,122…溝形鋼柱、23…外壁下地としての広幅溝形鋼柱、24…溝形鋼梁、25,125…外装材、26,126…横目地用の防水シート、27…縦目地用の防水シートを構成する止水シート、128…角形鋼管柱、31A…上階外付架構ユニット、31B…下階外付架構ユニット、33…縦目地、35…重複部分、41…外壁下地としての角形鋼管柱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁下地に外装材が取り付けられている建物本体と、その建物本体に外付けされるとともに外壁下地に予め外装材が取り付けられている外付架構ユニットとを含む建物の防水構造であって、
前記建物本体又は前記外付架構ユニットのうち一方については外壁下地が外装材よりも突出するとともに、他方については外壁下地よりも外装材が突出しており、
前記建物本体及び前記外付架構ユニットのそれぞれの外壁下地にはそれらより下方に垂下されるように防水シートがそれぞれ取り付けられており、
前記一方については防水シートが外壁下地の前記突出された部位まで延長されるとともに、前記他方については防水シートが外装材の前記突出された部位まで延長されており、
前記外付架構ユニットが前記建物本体に組み付けられた状態において両外装材間に目地が形成されるとともに、前記両防水シートの端部同士が重ね合わされる部分がその目地形成位置に沿った位置から外れた位置に配設されていることを特徴とする建物の防水構造。
【請求項2】
前記外付架構ユニットは前記建物本体の上階部分に連結される上階外付架構ユニットであり、
前記建物本体の上階部分及び上階外付架構ユニットと、前記建物本体の下階部分及びその下階部分に連結されるとともに前記上階外付架構ユニットの下方に配置される下階外付架構ユニットとの間には、それらの外装材間に横目地が形成されており、
前記両防水シートの下部は前記横目地を介して前記建物の下階部分及び下階外付架構ユニットの外装材における屋外側の表面に垂れ下げられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の防水構造。
【請求項3】
前記建物本体の外装材と前記外付架構ユニットの側面の外装材との突き合わせ端部に入隅部が形成されることにより、当該入隅部に縦目地が形成されるものであり、
前記建物本体の外壁下地が外装材よりも突出されるものであり、
その突出された部位は、前記外付架構ユニットの側面と同一方向に沿って延びるように前記入隅部から直角に延長されており、
その直角部位を含むようにして前記建物本体側の防水シートが設けられており、
前記外付架構ユニットの側面において両防水シートの重ね合わせ部分が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の防水構造。
【請求項4】
前記建物本体側の防水シートは、建物本体の外装材の裏面から前記直角部位を介して、建物本体の外壁下地の突出された部位にまで切れ目無く延長されていることを特徴とする請求項3に記載の建物の防水構造。
【請求項5】
前記建物本体と前記外付架構ユニットとの連結部分において、前記建物本体の外壁下地としてフレーム材が用いられ、当該フレーム材が前記建物本体の外装材よりも突出されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の建物の防水構造。
【請求項6】
外壁下地に外装材が取り付けられている建物本体と、その建物本体に外付けされるとともに外壁下地に予め外装材が取り付けられている外付架構ユニットとを含む建物の防水構造であって、
前記建物本体又は前記外付架構ユニットのうち一方については外壁下地が外装材よりも突出するとともに、他方については外壁下地よりも外装材が突出しており、
前記外装材より突出された外壁下地の前記突出された部位には、当該外装材の裏面に一部を入り込ませた防水シートが上下方向へ延びるようにして取り付けられており、
前記外付架構ユニットが前記建物本体に組み付けられた状態において両外装材間に縦目地が形成されるとともに、前記防水シートの前記外装材から突出された端部が前記縦目地形成位置に沿った位置から外れた位置に配設されていることを特徴とする建物の防水構造。
【請求項7】
前記建物本体の外装材と前記外付架構ユニットの側面の外装材との突き合わせ端部に入隅部が形成されることにより、当該入隅部に前記縦目地が形成されるものであり、
前記建物本体の外壁下地が外装材よりも突出されるものであり、
その突出された部位は、前記外付架構ユニットの側面と同一方向に沿って延びるように前記入隅部から直角に延長されており、
その直角部位を含むようにして前記防水シートが設けられていることを特徴とする請求項6記載の建物の防水構造。
【請求項8】
前記建物本体は建物ユニットを複数組み合わせて構築されるユニット式建物であり、いずれかの建物ユニットに開口部が形成されるとともに、当該開口部を塞ぐようにして外付架構ユニットが取り付けられるものである請求項1乃至7のいずれかに記載の建物の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−184828(P2008−184828A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20080(P2007−20080)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】