説明

建物外壁の防水用水切り材

【課題】建築物の上階と下階の外壁間の隙間をシールするため、上階と下階の下地材間に差込んで取付けられる取付部と、下階の外壁パネルの上端部に覆い被さるカバー部を有する水切り本体と、カバー部の裏面に取付けられ、下階の外壁パネル上端部に弾接するシール部からなる水切り材において、シール部の取付けが容易であり、しかもシール性に優れて反力が小さく、浮きを生ずることがないようにすると共に、保水性を持たせないようにする。
【解決手段】カバー部裏面にリブ25により凹状の被嵌合部26を形成してシール部23の嵌合部29を押込んで嵌合し取付ける。シール部23は硬質樹脂製の本体27と軟質樹脂製の複数のリップ28a、28b、28cよりなり、各リップが外壁パネル4上端部の内外及び上面に弾接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の上階と下階の外壁パネル間の隙間(横目地)或いは建築物の基礎構造と外壁パネルとの間の隙間を防水する水切り材に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、建築物の上階と下階の外壁パネル間の隙間を防水する従来の水切り材1について示すもので、図2に示すように外壁パネル4の壁下地材2間に差込んで取付けられる取付部3と、上階と下階の外壁パネル間の隙間9より延出して下階の外壁パネル4の上端部に前面まで覆い被さるカバー部5よりなる金属(主としてアルミニウム)製の水切り本体6と、該水切り本体6のカバー部裏面に接着され、下階の外壁パネル4の上端部に密着してシールするゴム又は樹脂製のスポンジ7よりなっている。
【0003】
水切り材としてはこのほか、下記特許文献1に開示されるような水切り金具が知られる。この水切り金具は、図3に示すように、胴縁11にビス又は釘12にて止着される取付部13と、該取付部13に一体形成され、下階の外壁パネル14の上端部に前面まで覆い被さるカバー部15と、同じく取付部13に一体形成され、上階の外壁パネル14の下端部より前面に覆い被さる第2のカバー部16と、取付部13より垂下し、カバー部15との間で下階の外壁パネル14の上端部を挟持する挟持片部17と、下階の外壁パネル14の上端部に当接して雨水の侵入を防ぐ弾性変形可能な当接片部18よりなり、アルミニウム等の金属の押出し成形により成形されている。
【特許文献1】特開平11−62030号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示す従来の水切り材は、図2に示す取付状態で雨水が下方より吹き込むと、スポンジ7が雨水を保水し、このために外壁パネル4が腐蝕したり、かびが生えたりし、また水切り材1が錆付くなど外壁パネル4や水切り材1に悪影響を及ぼす懸念がある。またスポンジ7の反力によって水切り材1が所定の位置に納まらず、図2の矢印方向に浮きを生ずるおそれがある。
【0005】
一方、図3に示す水切り金具においては、弾性変形可能な当接片部18が外壁パネル14の上端部に当接してシールするが、当接片部18は弾性変形可能ではあっても金属であるため、スポンジに比べシール性が劣り、シール性を増すため、強く押付けるほど、反力も増し、カバー部16が浮上がりがちとなる。また水切り金具は、金属製であるため、複雑な成形加工が困難であり、例え樹脂材料と組合わせて複合化させるにしても、金属の躯体部へ樹脂を一体化させる必要があり、成形加工性が煩雑である。
【0006】
本発明は、スポンジ或いは当接片部によるシールの上記問題点を解決することができる水切り材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、外壁パネルが取付けられる下地材に取付けられる取付部と、上階と下階の外壁パネル間の隙間より延出して下階の外壁パネルの上端部前面、又は基礎構造と外壁パネル間の隙間より延出して基礎構造の上端部に前面まで覆い被さるカバー部を有する金属製又は硬質樹脂ないし硬質ゴム製の水切り本体と、該水切り本体の裏面に取付手段によって取付けられ、外壁パネル又は基礎構造の上端部に弾接する軟質樹脂又は軟質ゴム製のリップを一体形成した樹脂又はゴム成形品よりなるシール部とを有することを特徴とし、
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の取付手段が水切り本体に形成される被嵌合部と、シール部に一体形成され、上記被嵌合部に押し込んで嵌合係止する嵌合部とよりなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、リップが外壁パネル上端部又は基礎構造上端部に内外から弾接する第1及び第2のリップと、外壁パネル上端面又は基礎構造上端面に弾接する第3のリップとよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、リップは軟質樹脂又は軟質ゴムで形成されるため、外壁パネル又は基礎構造に弾接した状態で金属製のリップに比べ、シール性に優れ、又反力も小さく、水切り材の浮きを生ずることがないこと、リップはまた、スポンジと異なって保水性がなく、そのため外壁パネルや水切り本体の腐蝕、かびの発生等の問題を生ずることがないこと等の効果を有する。
【0010】
シール部の水切り本体への取り付けは、両面粘着テープや接着剤により接着して行うこともできるが、請求項2に係る発明のように、シール部に嵌合部を設けると共に、水切り本体に被嵌合部を設ければ、嵌合部を被嵌合部に押込んで嵌め込むだけで取付けることができ、取付作業が容易となる。
【0011】
請求項3に係る発明においては、第1〜第3のリップが外壁パネル又は基礎構造の上端部の内外及び上面に弾接して防水が三段階で行われ、シール性が向上すること、各リップが外壁パネル又は基礎構造上端部に三方から当たることにより装着時の納まりがよく、また各リップは軟質樹脂又は軟質ゴムで形成されるため、いずれの方向への反力も小さく、水切り材に浮きを生ずることがないこと等の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の水切り材について図面により説明する。図中、図1及び図2に示す従来のものと同一構造部分には同一符号を付した。
【0013】
図4に示す水切り材21は、水切り本体22と、該水切り本体22の内側に取付手段によって取付けられる樹脂成形品のシール部23よりなっており、以下、その詳細について順に説明する。
【0014】
水切り本体22は、金属、好ましくはアルミニウム製で、外壁パネル4の下地材2に取付けられる取付部3(この取付部3は図示する例では、図2に示す従来例と同様、上階と下階の外壁パネル4の下地材2間に差込んで取付けているが、胴縁8を含む下地材2にビス又は釘等によって取付けてもよい)と、取付部3から上階と下階の外壁パネル間の9を通って延出し、下階の外壁パネル4の上端部にその前面まで覆い被さるカバー部5と、該カバー部5の内側に突出するリブ25によりカバー部5との間に形成される凹状の被嵌合部26とよりなっている。
【0015】
シール部23は、天井部27aと、その両側の脚部27b、27cとで台形断面をなし、一方の脚部27bの根元に外側方に突出するリブ27dを形成した硬質樹脂製の本体27と、各脚部27b、27cの先端に斜め内向きに突出形成されると共に、脚部27c寄りの天井部27aから斜め下向きに突出形成される軟質樹脂製(スポンジを含む)のリップ28a、28b、28cと、リブ27dの先端に同じく軟質樹脂製のリップにより矢印状に形成され、前記被嵌合部26と共に樹脂成形品23の取付手段を構成する嵌合部29とからなり、シール部23は水切り本体22に嵌合部29を水切り本体22の被嵌合部26に押し込んで嵌め込むことにより取付けられるようになっている。なお、シール部23の本体27を形成する硬質樹脂と、各リップ28a、28b、28c及び嵌合部29を構成するリップを形成するスポンジを含む軟質樹脂としては、いずれも例えばポリプロピレンやオレフィン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂、例えばEPDMゴムやウレタンゴム等のゴム、或いは熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0016】
上記実施形態では、嵌合部29が矢印状をなして凹状の被嵌合部26に押し込んで装着されるようになっているが、嵌合部29を断面U形状に形成してリブ25に差込んで取付けられるようにしてもよい。この場合にはしたがってリブ25が被嵌合部となる。
【0017】
水切り材21の施工は、上階の外壁パネル4取付前の上階と下階の下地材2間にシール部23を取付けた水切り材21の取付部3を差込み、各リップ28a、28b、28cが下階の外壁パネル4の上端部に内外及び上面から当たるようにしてシール部23を外壁パネル上端部に被せ装着する。この状態で水切り本体22のカバー部5は図5に示すように下階の外壁パネル4の上端部に前面まで覆い被さる。水切り材21取付後、上階の外壁パネル4が取付けられる。図5は施工後の状態を示す。
【0018】
なお、外壁パネル4の上端部に内外及び上面から当たる上述するリップ28a、28b、28cは、そのうちの一つだけでも前記した請求項1に係る発明の効果を奏することが可能であり、したがってリップ28a、28b、28cのうち、少なくとも一つのリップを除き、他のリップは必須ではない。
【0019】
また上記実施形態の水切り材は、上階と下階の外壁パネル間の隙間を防水するために用いられているが、これ以外に、基礎構造と外壁パネル間の隙間を防水するためにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の水切り材の一部を切り欠いた斜視図。
【図2】図1に示す水切り材を用いて施工した建物外壁の要部の断面図。
【図3】別の従来例の断面図。
【図4】本発明に係る水切り材の断面図。
【図5】図4に示す水切材を用いて施工した建物外壁の要部の断面図。
【符号の説明】
【0021】
2・・下地材
3・・取付部
4・・外壁パネル
5・・カバー部
8、11・・胴縁
9・・外壁パネル間の隙間
21・・水切り材
22・・水切り本体
23・・シール部
25・・リブ
26・・被嵌合部
27・・本体
28a、28b、28c・・リップ
29・・嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネル4が取付けられる下地材2に取付けられる取付部3と、上階と下階の外壁パネル4間の隙間9より延出して下階の外壁パネル4の上端部前面、又は基礎構造と外壁パネル間の隙間9より延出して基礎構造の上端部に前面まで覆い被さるカバー部5を有する金属製又は硬質樹脂ないし硬質ゴム製の水切り本体22と、該水切り本体22の裏面に取付手段によって取付けられ、外壁パネル4又は基礎構造の上端部に弾接する軟質樹脂又は軟質ゴム製のリップ28a、28b、28cを一体形成した樹脂又はゴム成形品よりなるシール部23とを有することを特徴とする建物外壁の防水用水切り材。
【請求項2】
上記取付手段が水切り本体に形成される被嵌合部26と、シール部23に一体形成され、上記被嵌合部26に押し込んで嵌合係止する嵌合部29とよりなることを特徴とする請求項1記載の建物外壁の防水用水切り材。
【請求項3】
上記リップが外壁パネル上端部又は基礎構造上端部に内外から弾接する第1及び第2のリップ28a、28bと、外壁パネル上端面又は基礎構造上端面に弾接する第3のリップ28cとよりなることを特徴とする請求項1又は2記載の建物外壁の防水用水切り材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−2105(P2009−2105A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166292(P2007−166292)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】