説明

建築物の外断熱壁構造

【課題】日射熱による変形の問題がなく、火災時の防耐火性の確保が容易で、かつ、建築物の下地壁からの水蒸気を、湿式塗り仕上げ面から屋外まで透過させ、結露の発生を低減でき、湿式塗り仕上げ層剥離の心配のない外断熱壁構造を提供することである。
【解決手段】建築物の下地壁の前面に断熱パネルを貼り付け、該断熱パネルの外表面に湿式塗り仕上げを施す外断熱壁構造において、前記断熱パネルとして、不織布、織布あるいは繊維混抄紙を外表面に積層一体化したフェノールフォーム断熱パネルを用い、かつ、該フェノールフォーム断熱パネルの外表面に補強メッシュを介して湿式塗り仕上げを施してなることを特徴とする外断熱壁構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外断熱壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、建築物に断熱パネルで構成された外断熱壁構造については、例えば、特開平8−1846(特許文献1)の従来技術にあるように、建築物の下地壁にビーズ法ポリスチレンフォーム断熱パネルを貼り付け、その外表面に、ガラス繊維メッシュを介して、モルタル等の湿式塗り仕上げを施す技術がある。ここに、ビーズ法ポリスチレンフォーム断熱パネルは、透湿係数が、パネル厚が100mmであっても、72ng/m・s・Pa程度(本発明者による測定値)と大きく、水蒸気を透過しやすいため、建築物の室内で発生し下地壁を透過してきた水蒸気を、ビーズ法ポリスチレンフォーム断熱パネルを通して、湿式塗り仕上げから屋外まで透過させ、壁体内の結露発生を低減させることが出来る技術であり、従来より、広く用いられてきた。
【0003】
しかし、特許文献1の技術では、ビーズ法ポリスチレンフォームの加熱変形温度が低いため、仕上げ厚が薄い場合や、施工される面の方角や壁の勾配などによって、日射熱によって、壁面の表面温度が80℃前後まで上昇するような場合、変形して外表面に凹凸が顕れ、外観上、問題となることがあった。また、火災時には、ビーズ法ポリスチレンフォームに着火して炎が広がりやすく、建築物の下地壁側に十分な防耐火性能を確保しておく必要があった。
これに対して、特許文献1の技術の問題を解決する改良技術として、特開2002−235386(特許文献2)の従来技術にあるように、建築物の下地壁に難燃性を有したフェノールフォーム断熱パネルを貼り付け、その外表面に、防水紙および鉄網を介して、モルタル等の湿式塗り仕上げを施す技術が、近年、開発された。
【0004】
特許文献2の技術では、難燃性を有したフェノールフォーム断熱パネルを用いたため、日射熱によって、壁面が変形する問題や、火災時に、断熱パネルに着火して炎が広がりやすい問題を回避することが出来るようになった。また、フェノールフォーム断熱パネルの外表面に、防水紙及び鉄網を介して、モルタル等の湿式塗り仕上げを施すため、防水紙には、吸水性がなく、モルタル等の湿式塗り仕上げの吸水に起因する伸びやコテじわによるクラックを減少させ、モルタルの施工性及び壁面の仕上げ精度を改善することが出来た。
しかしながら、特許文献2の技術では、フェノールフォーム断熱パネルの外表面に、透湿係数の小さな防水紙を介しているため、建築物の室内で発生し下地壁および断熱パネルを透過してきた水蒸気が、透湿係数の小さな防水紙で遮断され、水分を蓄積して結露の問題を引き起こす可能性が高かった。例えば、実施例で具体的に示されている防水紙には、MTシート(旭デュポン製)、アスファルトフェルト430(JIS A 6005)があるが、明らかに、透湿係数の小さいものである。なお、MTシートは、ポリプロピレン・スパンボンド不織布「ザバーン」と架橋ポリエチレン発泡体の積層シート、アスファルトフェルト430は、有機天然繊維を主原料とした原紙に、アスファルトを浸透したものである。
【0005】
また、フェノールフォーム断熱パネルの外表面に、防水紙および鉄網を取り付けているため、フェノールフォーム断熱パネルに作用する鉛直方向の面内荷重は、モルタル湿式塗り仕上げの重量に加え、防水紙および鉄網の重量による面内の負担荷重増があり、断熱性が良く、壁体内結露を懸念して、透湿係数の比較的大きなフェノールフォーム断熱パネルを用いた場合、その種のフェノールフォーム断熱パネルは、低密度かつ低強度であるため、フェノールフォーム断熱パネルと防水紙の界面での接着性について、特に、フェノールフォーム断熱パネルの母材剥離に対して、不安感があり、モルタル等の湿式塗り仕上げ層の剥離が懸念された。ここに、「低密度」とは、密度が20〜49kg/mであり、「透湿係数の比較的大きな」とは、10〜100ng/m・s・Paである。
さらに、防水紙には、吸水性がなく、濡れ性が乏しいため、鉄網を介してのモルタル等の湿式塗り仕上げとの定着効果はあるものの、防水紙とモルタルとの付着性に対しても、不安感があり、やはり、モルタル等の湿式塗り仕上げ層の剥離が懸念された。
【特許文献1】特開平8−1846号公報
【特許文献2】特開2002−235386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、建築物の下地壁の前面に断熱パネルを貼り付け、該断熱パネルの外表面にモルタル等の湿式塗り仕上げを施す外断熱壁構造において、日射熱による変形の問題がなく、火災時の防耐火性の確保が容易で、かつ、建築物の下地壁からの水蒸気を、モルタル等の湿式塗り仕上げ面から屋外まで透過させ、結露の発生を低減させた外断熱壁構造を提供することである。
また、断熱性が良く、壁体内結露を懸念して、透湿係数の比較的大きなフェノールフォーム断熱パネルを用いた場合でも、モルタル等の湿式塗り仕上げ層剥離の心配のない外断熱壁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による請求項1に記載の第1発明は、建築物の下地壁の前面に断熱パネルを貼り付け、該断熱パネルの外表面に湿式塗り仕上げを施す外断熱壁構造において、前記断熱パネルとして、不織布、織布あるいは繊維混抄紙を外表面に積層一体化したフェノールフォーム断熱パネルを用い、かつ、該フェノールフォーム断熱パネルの外表面に補強メッシュを介して湿式塗り仕上げを施してなることを特徴とする外断熱壁構造である。
次に、本発明による請求項2に記載の第2発明は、前記フェノールフォーム断熱パネルの透湿係数が10〜100ng/m・s・Paであることを特徴とする請求項1に記載の外断熱壁構造である。
【0008】
さらに、本発明による請求項3に記載の第3発明は、前記フェノールフォーム断熱パネルの内表面には、不織布、織布あるいは繊維混抄紙が積層一体化されており、建築物の下地壁の前面に対して、該フェノールフォーム断熱パネルを、モルタルあるいは接着剤で、内表面に積層一体化した不織布、織布あるいは繊維混抄紙を介して貼り付けたことを特徴とする請求項1〜2に記載の外断熱壁構造である。
最後に、本発明による請求項4に記載の第4発明は、建築物の下地壁に対して貼り付けられた前記フェノールフォーム断熱パネルの接着面積が、全体面積の過半以下であることを特徴とする請求項3に記載の外断熱壁構造である。
【0009】
本発明に係る外断熱壁構造の第1発明によれば、前記断熱パネルとして、不織布、織布あるいは繊維混抄紙を外表面に積層一体化したフェノールフォーム断熱パネルを用い、かつ、フェノールフォーム断熱パネルの外表面に補強メッシュを介してモルタル等の湿式塗り仕上げを施した構造で、フェノールフォーム断熱パネルの難燃性により、日射熱による変形の問題がなく、火災時の防耐火性の確保が容易で、かつ、不織布、織布あるいは繊維混抄紙、及び、補強メッシュは、全て繊維状物を絡み合わせたものであり、水蒸気を透過しやすいため、建築物の室内で発生し下地壁を透過してきた水蒸気を、フェノールフォーム断熱パネルを通して、湿式塗り仕上げから屋外まで透過させ、壁体内の結露発生を低減させることが出来る。
【0010】
また、不織布、織布あるいは繊維混抄紙を外表面に積層一体化したフェノールフォーム断熱パネルを用い、かつ、該フェノールフォーム断熱パネルの外表面に補強メッシュを介してモルタル等の湿式塗り仕上げを施した構造であるため、補強メッシュを介してのモルタル等の湿式塗り仕上げとの定着効果に加え、不織布、織布あるいは繊維混抄紙を構成する繊維状物と、モルタル等の湿式塗り仕上げが絡まって固着するため、より強固に、モルタル等の湿式塗り仕上げ層を固着することが可能である。なお、不織布、織布あるいは繊維混抄紙、及び、補強メッシュは、全て軽量であり、特に、断熱性が良く、壁体内結露を懸念して、透湿係数の比較的大きなフェノールフォーム断熱パネルを用いた場合、すなわち、低密度かつ低強度であるフェノールフォーム断熱パネルを用いた場合でも、重量負荷によるモルタル等の湿式塗り仕上げ層剥離の心配のない外断熱壁構造が可能である。このことにより、低密度で断熱性の良好なフェノールフォーム断熱パネルを用いることが出来るため、より断熱性の優れる外断熱壁構造が可能になる。
【0011】
さらに、フェノールフォーム断熱パネルの外表面に、不織布、織布あるいは繊維混抄紙が一体化しているため、外部からの衝撃荷重などが加わった場合などでも、フェノールフォーム母材の組織が破壊されない限り、湿式塗り仕上げ層が剥離する心配はない。そのような衝撃荷重は、湿式塗り仕上げ層を破損させるほど過大なものである必要があり、第1発明の構成により、フェノールフォーム断熱パネルを用いた外断熱壁構造として、フェノールフォーム断熱パネルと湿式塗り仕上げ層は、必要十分な付着性能を有するものである。
【0012】
次に、本発明に係る外断熱壁構造の第2発明によれば、前記フェノールフォーム断熱パネルの透湿係数が10〜100ng/m・s・Paと、透湿係数を大きめとし、水蒸気の透過性をより向上させたため、建築物の室内で発生し下地壁を透過してきた水蒸気を、フェノールフォーム断熱パネルの目地間に水蒸気を集中させることなく、フェノールフォーム断熱パネルを通して、湿式塗り仕上げから屋外まで透過させることが可能である。ここに、フェノールフォーム断熱パネルの透湿係数が、10ng/m・s・Pa以下となると、フェノールフォーム断熱パネルの目地間に水蒸気を集中しやすくなり、そこでの結露の可能性が大きくなる。よって、第2発明の構成では、パネル厚を薄くすることと、透湿率の大きなフェノールフォームを選択することを、適宜選択し、フェノールフォーム断熱パネルの透湿係数を10〜100ng/m・s・Paの範囲内とすることにより、壁体内の結露発生を、より低減させることが可能である。
【0013】
なお、透湿係数は、大きいほどこれらの作用効果は顕著であるため、上限値とした100ng/m・s・Paは特別な意味をもたないが、ここでは、密度が27kg/m程度の低密度のフェノールフォーム断熱パネルで、パネル厚を10mm程度とすると、透湿係数が100ng/m・s・Pa程度となり、現実に、パネル厚を10mm以下とした外断熱壁構造も考えにくいことより、上限値とした。また、本発明者による測定では、例えば、密度が27kg/m3程度の低密度であれば、透湿率が、105ng/m・s・Paであって、パネル厚12.5mmの場合は、透湿係数は82ng/m・s・Pa、パネル厚100mmの場合は、透湿係数は10.5ng/m・s・Paであった。なお、透湿係数の測定は、JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験方法によった。
【0014】
また、第2発明による透湿係数が10〜100ng/m・s・Paのフェノールフォーム断熱パネルは、低密度で断熱性の良好なフェノールフォーム断熱パネルとなり、より断熱性の優れる外断熱壁構造が可能になる。
次に、本発明に係る外断熱壁構造の第3発明によれば、前記フェノールフォーム断熱パネルの内表面には、不織布、織布あるいは繊維混抄紙が積層一体化されており、建築物の下地壁の前面に対して、該フェノールフォーム断熱パネルを、モルタルあるいは接着剤で、内表面に積層一体化した不織布、織布あるいは繊維混抄紙を介して貼り付けた構造であるため、不織布、織布あるいは繊維混抄紙を構成する繊維状物と、モルタルあるいは接着剤が絡まって固着するため、フェノールフォーム断熱パネルを、より強固に、建築物の下地壁に固着することが可能である。
【0015】
最後に、本発明に係る外断熱壁構造の第4発明によれば、前記フェノールフォーム断熱パネルが、建築物の下地壁に対して貼り付けられた接着面積が、全体面積の過半以下であるため、建築物の室内で発生し下地壁を透過してきた水蒸気を、モルタルあるいは接着剤に遮蔽されることなく、フェノールフォーム断熱パネルに移行させ、さらに、フェノールフォーム断熱パネルを通して、湿式塗り仕上げから屋外まで透過させることが可能で、壁体内、特に、フェノールフォーム断熱パネルの内表面での結露発生を低減させることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る外断熱壁構造によれば、日射熱による変形の問題がなく、火災時の防耐火性の確保が容易で、かつ、不織布、織布あるいは繊維混抄紙、及び、補強メッシュは、全て繊維状物を絡み合わせたものであり、水蒸気を透過しやすいため、建築物の室内で発生し下地壁を透過してきた水蒸気を、フェノールフォーム断熱パネルを通して、湿式塗り仕上げから屋外まで透過させ、壁体内の結露発生を低減させることが出来る。
また、フェノールフォーム断熱パネルの外表面に補強メッシュを介してモルタル等の湿式塗り仕上げを施した構造であるため、補強メッシュを介してのモルタル等の湿式塗り仕上げとの定着効果に加え、不織布、織布あるいは繊維混抄紙を構成する繊維状物と、モルタル等の湿式塗り仕上げが絡まって固着するため、より強固に、モルタル等の湿式塗り仕上げ層を固着することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図により本発明に係る外断熱壁構造について説明する。
図1は、本発明の実施例の外断熱壁構造を示す切欠き斜視説明図である。
図2は、本発明の実施例の外断熱壁構造を示す断面図である。
図3は、本発明の実施例のフェノールフォーム断熱パネルの構成を示す断面図である。
図1、図2において、本発明に係る外断熱壁構造について説明すると、建築物の下地壁6のラスモルタル壁の前面に対して、不織布1bがフェノールフォーム1aの表裏面に積層一体化されたフェノールフォーム断熱パネル1を、その内表面には、モルタル5によって、接着面積が全体面積の40%となるように貼り付け、その外表面に補強メッシュ3を介して下地モルタル2が塗りつけられ、その上に塗り仕上げ4を行い、湿式塗り仕上げが施されている。ここで、下地壁6としては、ラスモルタル壁以外にも、鉄筋コンクリート壁、軽量気泡コンクリート壁、サイディング壁などが可能である。
【0018】
なお、フェノールフォーム断熱パネル1は、図3に示すもので熱伝導率0.020W/m・K、厚さ25mm、密度が27kg/m程度の低密度で、表裏面に合成繊維(ポリエチレンテレフタレート)不織布1bが積層一体化され、断熱パネルの透湿係数が40ng/m・s・Paとなるように構成した。ここで、不織布1bとして、合成繊維不織布を用いたが、他に無機繊維を用いた、例えばガラス繊維によるガラス繊維不織布、ガラスパルプ混抄紙などを用いてもよい。もちろん、これ以外の不織布、織布あるいは繊維混抄紙であってもよい。
モルタル5は、樹脂モルタルを用いたが、その他、変成シリコーン系、変成シリコーン・エポキシ系、ウレタン系、エポキシ系の有機接着剤が使用できる。
【0019】
補強メッシュ3は、耐アルカリ性ガラス繊維を用いたが、その他、耐アルカリ性繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維等のメッシュを用いることができる。
下地モルタル2には、アクリル系エマルジョンにセメントを混ぜた樹脂モルタルを用いたが、その他、エチレン酢ビ系エマルジョン、合成ゴム系ラテックスのいずれかにセメントを混ぜた樹脂モルタル等のモルタルを使用することができる。
塗り仕上げ4には、アクリル系エマルジョン塗料を用いたが、その他、アクリル系リシン、アクリル系マスチックの塗料や、前記の樹脂モルタル、モルタル等を使用できる。
【0020】
このように、建築物の下地壁6の前面に断熱パネル1を貼り付け、断熱パネル1の外表面に下地モルタル2と塗り仕上げ4を施す外断熱壁構造において、断熱パネル1として、不織布1bを表裏面に積層一体化したフェノールフォーム断熱パネル1を用い、かつ、フェノールフォーム断熱パネル1の外表面に補強メッシュ3を介して、下地モルタル2と塗り仕上げ4を施した構造であるため、日射熱による変形の問題がなく、火災時の防耐火性の確保が容易で、かつ、不織布1bと補強メッシュ3は、ともに繊維状物を絡み合わせたものであり、水蒸気を透過しやすいため、建築物の室内で発生し下地壁6を透過してきた水蒸気を、フェノールフォーム断熱パネル1を通して、湿式塗り仕上げから屋外まで透過させ、壁体内の結露発生を低減させ、火災時の防耐火性の確保の容易さと、壁体内の結露発生低減を同時に解決することが出来る。
【0021】
さらに、フェノールフォーム断熱パネル1の透湿係数を40ng/m・s・Paと、透湿係数を大きめとし、水蒸気の透過性をより向上させたため、建築物の室内で発生し下地壁6を透過してきた水蒸気を、フェノールフォーム断熱パネル1の目地間に水蒸気を集中させることなく、フェノールフォーム断熱パネル1を通して、湿式塗り仕上げ4から屋外まで透過させることが可能である。ここでフェノールフォーム断熱パネル1の透湿係数は10〜100ng/m・s・Paの範囲内でよいが、透湿係数が40ng/m・s・Paで、熱伝導率0.020W/m・K、厚さ25mmのフェノールフォーム断熱パネル1を用いたことで、壁体内の結露発生を低減させつつ、新省エネ基準のIV地区の断熱厚みをクリアし、断熱性の優れる外断熱壁構造が可能になる。なお、透湿係数は30〜100ng/m・s・Paの範囲内がより好ましい。
【0022】
さらに、不織布1bがフェノールフォーム1aの表裏面に積層一体化されたフェノールフォーム断熱パネル1を用い、かつ、フェノールフォーム断熱パネル1の外表面に補強メッシュ3を介して、下地モルタル2と塗り仕上げ4を施した構造であるため、補強メッシュ3を介しての下地モルタル2及び塗り仕上げ4との定着効果に加え、不織布1bを構成する繊維状物と、下地モルタル2及び塗り仕上げ4とが絡まって固着するため、より強固に、下地モルタル2及び塗り仕上げ4を固着することが可能である。
さらに、不織布1bと補強メッシュ3は、ともに軽量であり、27kg/m程度の低密度でかつ低強度であるフェノールフォーム断熱パネル1を用いても、重量負荷による下地モルタル2及び塗り仕上げ4が剥離する心配のない、外断熱壁構造が可能である。
【0023】
さらに、フェノールフォーム断熱パネル1の外表面に、不織布1bが一体化しているため、外部からの衝撃荷重などが加わった場合などでも、フェノールフォーム1aの母材の組織が破壊されない限り、下地モルタル2及び塗り仕上げ4が剥離する心配はない。
さらに、フェノールフォーム断熱パネル1の内表面には、不織布1bが積層一体化されており、建築物の下地壁6の前面に対して、フェノールフォーム断熱パネル1を、接着剤5で、内表面に積層一体化した不織布1bを介して貼り付けた構造であるため、不織布1bを構成する繊維状物と、モルタル5が絡まって固着するため、フェノールフォーム断熱パネル1を、より強固に、建築物の下地壁6に固着することが可能である。
【0024】
さらに、フェノールフォーム断熱パネル1が、建築物の下地壁6に対して貼り付けられた接着面積が、全体面積の過半以下であるため、建築物の室内で発生し下地壁6を透過してきた水蒸気を、モルタル5に遮蔽されることなく、フェノールフォーム断熱パネル1に移行させ、さらに、フェノールフォーム断熱パネル1を通して、下地モルタル2及び塗り仕上げ4から屋外まで透過させることが可能で、壁体内、特に、フェノールフォーム断熱パネル1の内表面での結露発生を低減させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、建築物の外断熱壁構造として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例の外断熱壁構造を示す切欠き斜視説明図
【図2】本発明の実施例の外断熱壁構造を示す断面説明図
【図3】本発明の実施例のフェノールフォーム断熱パネルの構成を示す断面説明図
【符号の説明】
【0027】
1 フェノールフォーム断熱パネル
1a フェノールフォーム
1b 不織布
2 下地モルタル
3 補強メッシュ
4 塗り仕上げ
5 モルタル
6 下地壁
7 柱
8 内装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の下地壁の前面に断熱パネルを貼り付け、該断熱パネルの外表面に湿式塗り仕上げを施す外断熱壁構造において、前記断熱パネルとして、不織布、織布あるいは繊維混抄紙を外表面に積層一体化したフェノールフォーム断熱パネルを用い、かつ、該フェノールフォーム断熱パネルの外表面に補強メッシュを介して湿式塗り仕上げを施してなることを特徴とする外断熱壁構造。
【請求項2】
フェノールフォーム断熱パネルの透湿係数が10〜100ng/m・s・Paであることを特徴とする請求項1に記載の外断熱壁構造。
【請求項3】
フェノールフォーム断熱パネルの内表面には、不織布、織布あるいは繊維混抄紙が積層一体化されており、建築物の下地壁の前面に対して、該フェノールフォーム断熱パネルを、モルタルあるいは接着剤で、内表面に積層一体化した不織布、織布あるいは繊維混抄紙を介して貼り付けたことを特徴とする請求項1〜2に記載の外断熱壁構造。
【請求項4】
建築物の下地壁に対して貼り付けられたフェノールフォーム断熱パネルの接着面積が、全体面積の過半以下であることを特徴とする請求項3に記載の外断熱壁構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−146400(P2007−146400A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339238(P2005−339238)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】