説明

建築物の小屋裏換気構造

【課題】防火性及び防水性が必要充分に確保でき、コンパクトでありながら通気量が確保でき、建物の屋根のデザイン上、ノイズにならない建築物の小屋裏換気構造を提供する。
【解決手段】勾配屋根の勾配を形成する屋根下地材2と、屋根下地2上に設けられる野地板3と、屋根下地材2の下端面と略同一面上に先端部が至る屋根仕上げ材11と、屋根下地材2又は野地板3の下端縁に対向して設けられる第1の水切り5と、野地板3の下端縁から延在されて第1の水切り5に対向する第2の水切り6とを備え、第2の水切り6は、勾配屋根の下り勾配方向に延長された傾斜延長部6aと、傾斜延長部6aの先端で折曲して垂下する鉛直部6bとを備え、これら第1の水切り5と第2の水切り6の鉛直部6a及び傾斜延長部6bとの間に外気から野地板3の下端縁までを連通する通気路7が設けられている建築物の小屋裏換気構造1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物の小屋裏換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物の小屋裏換気構造(「屋根裏換気構造」ともいう)は、防火性、防水性(雨水の浸入)、通気量確保が問題となる。
従来、建築物の小屋裏換気構造のため通気口は、屋根の軒裏天井に設置する場合が多い。連続して通気口を設けることができ、開口面積が大きくなるので通気量をも確保できるからである。
そして、軒裏天井は、そもそも隣家火災による延焼を直接的に受ける部位であり、防火上の弱点となる部位であるため、軒裏天井の通気口に火災遮蔽手段を設けた技術が開示されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、最近では、陸屋根の一部に勾配屋根を形成する場合があり、軒裏天井がない屋根の部位では、軒裏天井用通気口を設けることはできない。また、軒裏天井は、そもそも防火上の弱点であり隣家火災による延焼を直接的に受ける部位であるためにできれば通気口を設けないほうが望ましい。
【0004】
これに対して、従来より特許文献2、特許文献3、または特許文献4のような屋根面換気ユニットがある。これによれば、軒裏天井がなくとも屋根の小屋裏に通気口を設けることができる。
【0005】
しかし、防水層である屋根面を貫通する屋根面換気ユニットを多数設置すると、防水上不利な部位がたくさんできてしまい好ましくない。このため、屋根面換気ユニットを設置する数は制限され、通気用の開口面積を確保しにくい。
【0006】
また、屋根面換気ユニットの内部には、雨水の浸入を阻止する通気路を形成する必要があるため、屋根面換気ユニットの断面形状が大きくなり、屋根面から突出してしまう。このため、建物の屋根部のデザイン上も好ましくない。
【0007】
他方、特許文献5には軒先通気防火構造が記載されている。しかし、瓦と野地板の間の通気を目的としたものであり、勾配屋根の小屋裏換気を軒の先端で行う構造には適用できない。
【0008】
【特許文献1】特開2003−82783号公報
【特許文献2】特開昭59−196625号公報
【特許文献3】特開2000−257228号公報
【特許文献4】特開2001−173181号公報
【特許文献5】特開平9−177198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術に伴う問題点の少なくとも一つを解決することを課題とする。
よって、本発明の一態様では、防火性と共に通気量を十分に確保できる小屋裏換気構造を提供することを目的とする。
他の態様では、本発明は、外部から遮蔽され、防水性にも優れる小屋裏換気構造を提供することを目的とする。
更に他の態様では、本発明は、コンパクトでデザイン上も優れた小屋裏換気構造を提供することを目的とする。
【0010】
より詳細な態様では、本発明は、防火上の弱点である軒裏をさけ、更に軒裏天井がない屋根部位にも設置するために、防火性及び防水性が必要充分に確保でき、コンパクトでありながら通気量が確保でき、建物の屋根のデザイン上のノイズにならない建築物の小屋裏換気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の発明は、勾配屋根の勾配を形成する屋根下地材と、該屋根下地材の下端面よりも上方に下端面を位置づけた状態で当該屋根下地上に設けられる野地板と、該野地板の下縁側端面よりも下方に延びて前記屋根下地材の下端面と略同一面上に先端部が至る屋根仕上げ材と、前記屋根仕上げ材先端部の下方であって且つ前記屋根下地材又は野地板の下端縁に対向して設けられる第1の水切りと、前記野地板の下端縁から延在されて第1の水切りに対向する第2の水切りとを備え、該第2の水切りは、前記第1の水切り及び前記屋根仕上げ材の先端部と同一或いはそれよりも前記勾配屋根の下り勾配方向に延長された傾斜延長部と、該傾斜延長部の先端で折曲して垂下する鉛直部とを備え、これら第1の水切りと第2の水切りの鉛直部及び傾斜延長部との間に外気から前記野地板の下端縁までを連通する通気路が設けられている建築物の小屋裏換気構造である。
【0012】
なお、水切りの形状は、軒先先端部付近の断面形状に基づく形状が採用され、本発明の実施態様における勾配屋根との軒先鉛直部とで形成される軒先先端部では、通常「へ」の字状であるが、この形状のみに限られるものではない。
また、水切り材は、軽量金属で成型し、加工され、防水塗料の塗布などの防水加工も施されている。
【0013】
このような換気構造によれば、防火上の弱点でもある軒裏天井に開口を設けずに換気を行うことができる。また、たとえ軒裏天井がなくても防火性能を確保し、屋根面の貫通部をなくして防火性能を確保することができる。
【0014】
ここで、本発明は、小屋裏空間を有する屋根の勾配屋根面と軒先鉛直部が交差する軒先先端部に設置した建築物の小屋裏換気構造に関するものであり、勾配屋根の形状は問わない、切妻形状の勾配屋根の建築物、寄棟形状の勾配屋根の建築物、陸屋根の一部を勾配屋根形状にした建築物などが挙げられる。このような構成の屋根であれば、如何なる詳細構造を有するものにも適用可能である。
なお、小屋裏換気構造とは、換気装置、換気ユニット、換気設備等を包含する概念の用語である。
【0015】
また、軒先先端部とは、軒先鉛直部の上方への延長線と勾配屋根部の下り勾配方向への延長線との交差する部位(いわゆる軒の先端)である。例えば、軒先鉛直部である外壁や鼻先板と、勾配屋根部である屋根パネルや垂木など屋根下地材やこの屋根下地材に敷設される野地板材との交差する部位である。本発明では、屋根の軒先構造についても、特に限定されるものではなく、屋根仕上げ材が建物外壁より外方に突出して延びる一般的な構造の屋根であってもよい。しかしながら、好適には、陸屋根の屋根面の一部に設けられる勾配屋根構造のように、建物外壁(パラペット)よりも内側に位置させ、軒裏天井を構成することができない勾配屋根構造の建築物に用いる。
【0016】
本願発明において、建築物の軒先の鉛直部を構成する軒先鉛直部材から、勾配屋根を構成する屋根仕上げ材、野地板及び屋根下地材に連続し、これらの部材が交差する軒先先端部に跨って、軒先の断面形状に沿って通気路が設置される。
ここで、前記通気路は、外気側は第1の水切りの下端部側と第2の水切りの鉛直部とによって外気に開放され、屋内側は第1の水切りの上端部側と第2の水切りの傾斜延長部とによって屋内側に開放される。
特に、通気路の屋内側は、野地板の下端面及び屋根下地材の下端面に向けて開放されることとなり、そうすると、当該通気路の屋内側は、野地板の下端面或いは野地板から屋根下地材を含めて形成される屋根勾配部材の下端面に対向して設けられることとなり、当該屋根勾配部材の下方に外気に連通する通気路を形成する必要は無く、屋根先端部の層構成を単純化が図られる。また、屋根の層構成の薄化が図られ、ひいては屋根全体の薄化が図られるものとなる。さらには、係る構成により通気路が屋根仕上げ材の直下に設けられることとなり、さらには外面側が第2の水切りに覆われることとなるので、屋根先端部の概観が単純化され、意匠性の向上が図られるものとなる。
【0017】
上記通気路にはフィルター部材が設置されうる。上記フィルター部材は、上記通気路に収容されれば、通気路内の何れの場所に配しても構わないが、第2の水切が傾斜延長部と鉛直部を有する形状の態様の場合、一例では、第2の水切の上記傾斜延長部により形成される通気路部分に一又は複数のフィルター部材が収容され、他の例では、第2の水切の上記鉛直部により形成される通気路部分に一又は複数のフィルター部材が収容されうる。また更なる例では、傾斜延長部により形成される通気路部分と鉛直部により形成される通気路部分の双方に一又は複数のフィルター部材が収容される。
このような構成の何れによっても、換気構造は、第2の水切によって外部から遮蔽されるため意匠性に優れ、外からの水切り作用を奏するために防水性にも優れるものとなる。上記フィルター部材は、好適には上記通気路の横断面全体にわたって設置される。
【0018】
の発明においては、フィルター部材の内部は、複数の貫通孔構造として構成される通気部材である。上記フィルター部材は、不燃性を有する材料であることが好ましく、例えばアルミニウム板をハニカム状に成形した成形材等の不燃材料を使用することができる。なお、フィルター部材に火炎遮断部材が配設されているときには、上記フィルター部材が可燃性の材料、例えば樹脂を成形した成形材等であってもよい。
このような構成によれば、通気量を十分に確保しながらコンパクトな換気構造とすることができる。
【0019】
の発明においては、好適には、上記換気構造は屋根の桁行き方向に連続して設置される。このような構成により、通気量を十分に確保できる。
【0020】
また、第の発明において、上記フィルター部材には、火炎遮断部材が配設されることが望ましい。該火炎遮断部材は、火災時に膨張して通気路を遮断し、通常時には収縮状態にあるので、通気路の通気を妨げることはなく、火災時には熱により瞬時に膨張して通気路を確実に遮断し、隣家からの延焼をより確実に防ぐことができ、防火対策が万全なものとなる。
【0021】
ここで、火炎遮断部材は、どこに設置しても構わず、例えば、火災時に膨張して通気路を遮断できる位置であれば通気路に複数のフィルター部材を離間させて配置し、該フィルター部材の間に配置することができる。またフィルター部材の中に中空部分を設けて、そこに配置し、フィルター部材と一体化させてもよい。
【0022】
以上が本発明であるが、以下に記載する実施形態から当業者が理解し把握する他の種々の態様も本発明の対象に包含される。
例えば、以下のような態様も本発明の対象である。
(1)板状体に、複数の通気路を有する不燃性の材料からなる一対の通気路部材が通気路を同軸方向に向けて離間して固着され、上記板状体には、非火災時には収縮状態にあり火災時には熱により膨張する火炎遮断部材が上記一対の通気路部材の間に位置せしめられて固着されてなるフィルター部材。
(2)第2の水切の一方の板状部に、複数の通気路を有する材料からなる通気路部材が固着されてなる屋根換気用フィルター部材。
(3)第2の水切の一方の板状部に、複数の通気路を有する材料からなる一対の通気路部材が通気路を同軸方向に向けて離間して固着され、上記第2の水切の上記一方の板状部には、非火災時には収縮状態にあり火災時には熱により膨張する火炎遮断部材が上記一対の通気路部材の間に位置せしめられて固着されてなる屋根換気用フィルター部材。
なお、通気路部材(板状体)は、不燃性を有することが好ましいが、火炎遮断部材を設けた場合は、可燃性であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本願の第一の発明によれば、軒の出(軒裏天井)がない勾配屋根についても軒先部で通気がとれるので小屋裏の換気性能を低下させることがない。また、軒先の防水性を確保する水切りの機能を兼ねた通気路を形成するので、部材点数も少なく、小屋裏換気構造を複雑化させない。
本願の第の発明によれば、防火上の弱点である軒裏天井に開口を設けずに換気口を設けることができる。また軒裏天井がなくても防火性能を確保し、屋根面の貫通部をなくして防火性能を確保した換気構造が得られる。
また、フィルター部材は、屋根仕上げ面に隠れるので、意匠(デザイン)がよく、かつ換気量を確保することができる。第の発明によれば、更なる通気量を確保でき、第の発明によれば、防火性能が更に向上し、小屋裏へ火がまわることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、添付図を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0025】
図1から図4は、本発明の第一の実施形態に係る小屋裏換気構造を建築物に設けた状態を示す概略図である。
先ず、建物の屋根の構造から説明すると、図1中、2は、屋根の小屋組をなし、建物中心部から外壁側へ向けて下方に傾斜した勾配屋根構造とされている屋根下地材である。この屋根下地材2の上面には屋根下地材2の略全体にわたって断熱材18及び野地板3が積層状態で敷設され、各下端面が同一面になるように固定されている。すなわち、屋根下地材2の下縁側端面2aと野地板3の下縁側端面3aは、屋根が延びる方向に略直交する同一平面に位置せしめられている。そして、上記野地板3の上には、瓦等を含んでなる屋根仕上げ材11が野地板3に沿って屋根勾配なりに傾斜して敷設されている。図から明らかなように、この実施形態においては、屋根仕上げ材11と野地板3の間は僅かな隙間が形成されているに過ぎず、通気口とはされていない。
【0026】
また図1中、16は建物の外壁を示すもので、その上部の内側には、底面が中央部に向けて下方に傾斜した凹状の排水溝13が、その外方側の縁部を外壁16の上部に固着され、その内側の側縁部及び下面を軒先鉛直部材4で支持されて設けられている。そして、外壁16の上部には、外壁16の長手方向に沿って延びる屋根仕上げ材11が排水溝13の外方側縁部を覆って取り付けられている。
【0027】
ここで、屋根仕上げ材11は、野地板3の下縁側端面3aよりも更に下方に延びているが、その下端縁11aは、外壁16より内側に排水溝13が設けられているため、外壁16より内側で排水溝13の内側近傍の上方位置で終端せしめられている。すなわち、屋根を伝って流れ落ちる雨滴を的確に受けることができるように、屋根仕上げ材11の下端縁11aは排水溝13の内側側面より若干外側の位置で終端せしめられている。
【0028】
第一の実施形態に係る小屋裏換気構造は、上記のような軒のない屋根に好適に形成されるもので、野地板3の上面縁部に付設された第2の水切6と、第2の水切6の下方に第2の水切6と対向して配設された第1の水切5と、第2の水切6と第1の水切5の間に形成された通気路7に収容されたフィルター部材10を具備する。
【0029】
上記第2の水切6は、断面「へ」の字状の軽量金属で成形され、防水塗料を施した板部材で、設置した状態で傾斜延長部6aとなる第一の部分と、該第一の部分から折曲されて延び、設置した状態で鉛直部6bとなる第二の部分を具備してなり、第一の部分の端部側が野地板3の上面に固着され、傾斜延長部6aが野地板3の上面から少なくとも屋根仕上げ材11の下端縁11aより若干突出した位置まで屋根仕上げ材11に沿って外方に延び、鉛直部6bが下方に向けて延び、排水溝13の排水溝内側に位置するように、配置されている。図2から明らかなように、第2の水切6は屋根の桁行き方向にも連続して屋根面と軒先鉛直部の軒先先端部Nを蔽う部材である。
【0030】
上記第1の水切5は、図1の例では、軒先鉛直部材4を蔽い、排水溝13を形成する板部材を兼ねて一体に形成されている。すなわち、排水溝13を構成するように5b1〜3の排水構辺を有している。また、第1の水切5は、軒先鉛直部材4の略への字型の形状に沿って、内側側面部5aから、軒先鉛直部材4の上縁で内方に折曲されて建物内側に向けて屋根の勾配に沿って延びる折曲辺5cと連続し、更に、水返し用にその縁部5dが上方に立ち上げてある。そして、この内側側面部5aと折曲部5cを含む部位は、第2の水切6に対向して位置する第1の水切5を構成し、第2の水切6と第1の水切5の間に通気路7が形成されている。この第1の水切5についても勾配屋根の桁行き方向に勾配屋根面と軒先鉛直部で形成される軒先先端部Nを蔽う部材である。
【0031】
上記フィルター部材10は、第2の水切6の傾斜延長部6aと第1の水切5(排水溝13)の折曲部5cの間に通気路7の横断面全体にわたって収容されている。すなわち、図1から明らかなように第2の水切6と第1の水切5の間を上下方向だけでなく、屋根の桁行き方向においても連続して配設されている。
上記フィルター部材10は、複数の通気流路を備えた通気部材10aで、図3(a)に詳細に示すように、具体的には蜂の巣状の多数の流路が形成されてなるアルミニウム製のハニカム通気部材10aであり、通気流路の出入口を通気路7に連通させて配設されている。ここで、上記フィルター部材10は、不燃性材料であることが好ましいが、図3(b)に示すように、フィルター部材12に火炎遮断部材12aが配設されているときには、火炎遮断部材12aによって燃焼防止をはかることができるので、上記フィルター部材12及びその通気部材10aが可燃性の材料であってもよい。
【0032】
このような換気構造では、外気は排水溝13の内側部分の第1の水切5とその外方の第2の水切6の間で構成される通気路7の第1通気口8aに流れ込み、フィルター部材10を通過して、第2通気口8bから小屋裏9に向けて流通する。他方、小屋裏のよどんだ空気は、棟換気部材22(図4)から排出される。
【0033】
このような実施形態では、勾配屋根面や軒裏天井に通気口を設けていない上、通気路7には、複数の断面形状は小さなハニカム状またはコルゲート状の通気流路構造を持つフィルター部材10を軒先鉛直部材4先端から勾配屋根部材15の軒下頂部側終端15aに向かう登り勾配方向に流通するように配置しているために、雨や雪の吹き込みを防止でき、防水性が十分に確保できる。また、虫等の進入を防止できる。また、不燃性を有するフィルター部材を使用すれば、隣家からの延焼を効果的に防止する機能を発揮し、防火性能に優れ、火災時に火が廻っても有毒なガス等を発生させない。また、不燃性を有しないフィルター部材であっても火炎遮断材を組み込んで併用すれば、同様の効果が得られる。更に、フィルター部材10は屋根の長手方向に沿って連続して配設されているため、十分な通気量が確保できる。しかも、フィルター部材10が屋根仕上げ材11や第2の水切6に隠れるので意匠性に優れ、建物の屋根のデザイン上のノイズにならない。
【0034】
図4は、陸屋根を有する建築物における本願発明の第一の実施形態に係る小屋裏換気構造1の位置を示す建築物の断面図である。小屋裏換気構造1は、図4に示される陸屋根の屋上に設けた排水溝13や外壁の軒樋14(図7及び図8)のような、軒先に配設される部材と一体化された構造で配設されている。本願発明は、このような陸屋根構造の屋上に突出させた勾配付屋根19における勾配屋根面と軒先鉛直部で形成される軒先先端部Nの換気構造として特に有効である。
【0035】
図5は本発明の第二の実施形態に係る小屋裏換気構造を示すもので、図1と同一の符号を付している部材は図1の実施形態と変わるところはないので、その説明を省略する。
この実施形態では、屋根仕上げ材11の下端縁11aは、図1の実施形態と比較すると、屋根下地材2の下縁側端面2a又は野地板3の下縁側端面3aとの間の間隔が短くなっており、排水溝13の内側側面部5aは上方に延びた状態で終端し、内側側面部5aが第1の水切5を構成している。そして、第2の水切6の鉛直部6bと第1の水切5(排水溝13の内側側面部5a)の間にフィルター部材10が流路を上下方向に向けて収容されている。
【0036】
この実施形態でも、第一の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。また第一の実施形態と比較すると、屋根下地材2と野地板3を軒先鉛直部材の極近傍まで延ばすことができる。
【0037】
図6は本発明の第三の実施形態に係る小屋裏換気構造を示す。この実施形態は、図1の実施形態とフィルター部材の構成のみ異なり、その他の構成は同じであるので、フィルター部材以外には図1と同一の符号を付してその説明を省略する。
図6で用いられるフィルター部材12の一例について、図3(b)の拡大斜視図によって説明する。図中、フィルター部材12は、通気部材10aが2つに分かれており、複数の流路の長さが短くなっている点を除いて前述のフィルター部材10と同様の構成であり、一対の通気部材10a、10aが流路の流通方向に離間して配設され、その間の通気路には、火炎遮断部材12aが固着されて配設されている。上記火炎遮断部材12aは、火災時にその周囲の温度が高温になった際、熱により膨張して、通気部材10a、10a間の通気路を埋めてこれを遮断することができるものであり、例えばグラファイト系熱発泡材により構成されるが、同様の遮断効果が得られる材料であれば、如何なる材料を用いてもよい。通気部材10aと火炎遮断部材12aは、外枠フレーム12bによって固定化及び一体化されてフィルター部材12を形成している。外枠フレーム12bによってフィルター部材12を一体化することによって、屋根施工の際の強度確保を行うことができる。更に、外枠フレーム12に、ビス止め用孔12dを有する固定片12cを設けることにより、フィルター部材12をパッケージ化した状態で屋根面に安定して固定することができるので勾配屋根面の施工に有利である。
【0038】
このような火炎遮断部材を有するフィルター部材12の実施形態としては、(1)板状体に、アルミニウム製のハニカム通気部材等の一対の通気路部材が通気路を同軸方向に向けて離間して固着され、上記板状体には、火炎遮断部材が上記一対の通気路部材の間に位置せしめられて固着されてなるフィルター部材;(2)第2の水切の一方の板状部に、アルミニウム製のハニカム通気部材等の通気路部材が固着されてなる屋根換気用フィルター部材;(3)第2の水切の一方の板状部に、アルミニウム製のハニカム通気部材等の一対の通気路部材が通気路を同軸方向に向けて離間して固着され、上記第2の水切の上記一方の板状部には、火炎遮断部材が上記一対の通気路部材の間に位置せしめられて固着されてなる屋根換気用フィルター部材;などが考えられる。
上記実施形態においては、通気部材10aは、アルミニウム製のハニカム通気部材としたが、防水性と不燃性を有する材料が好ましく、アルミニウム以外の他の金属材もしくはセラミック等を用いることが可能である。しかし、通気路部材(板状体)は、火炎遮断部材を設けた場合は、可燃性材料であってもよい。
また雨水が容易に還流したり流れたりしないように流路が細かく構成された構造であれば、ハニカム状以外の通気構造、例えばコルゲート状通気構造のものであってもよい。
また、フィルター部材は、屋根の桁方向に連続して延びる構成としたが、屋根の桁方向の要所に配設され、不連続な構成としてもよく、フィルター部材を着脱自在又は取替え可能に収容する構造としたり、一体化したフィルター部材としたものを、運搬等に都合のいいように、より小さくセグメント化し、現場で組み立てるものとしたりすることも可能である。
【0039】
上記図6の第三の実施形態では、図1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
更に、この実施形態では、隣家の火災等によってフィルター部材12、12に流入する空気が高温になると、火炎遮断部材12aが熱により膨張して、フィルター部材12、12間の空間内で膨張し通気路を埋めて遮断する。これにより、隣家の火災等からの延焼を確実に防止することができる。
【0040】
図7は本発明の第四の実施形態に係る小屋裏換気構造を示す。この実施形態は、図1の実施形態と比較して、排水溝と第1の水切の構造以外は同様である。よって、同一の部材には図1と同一の符号を付してその説明を省略する。
図7において、14は、図示しない外壁に沿って配設された軒樋であり、底部14aと、該底部14aの内側縁から上方に向けて延びる内側側部14bと、底部14aの外側縁から上方に向けて内側側部14bよりも高い位置まで伸びる外側側部14cとを具備してなる。そして、この実施形態では、軒樋14とは別個に第1の水切5が第2の水切6に対向して設けられている。第1の水切5は、軒先鉛直部材4に固着され、第2の水切6の鉛直部6bに対向して上下方向に延びる側面部5aの上縁が内方に折曲され建物内側に向けて延びる上部折曲部5eとされ、更にその縁部5dで上方に直角に折曲され、また側面部5aの下縁が外方下方に折曲されて下部折曲部5fとされ、その下端5gが軒樋14に向けて臨まされており、第1の水切5を伝って落ちる雨滴が軒樋14に案内される構造とされている。また、第2の水切6の鉛直部6bの下端は第1の水切5の下部折曲部5fの上方に第1の水切5から一定間隔をおいて位置せしめられ、その間を外気が流入する通気口とされている。
【0041】
この実施形態では、外気は第2の水切6と第1の水切5の間から通気路7に流れ込み、フィルター部材10を通過して再度通気路7に出て、屋根下地材2の下方に沿って屋根中心部に向けて流通する。
この実施形態にあっても、通気量を十分に確保でき、また高い防火性能を達成できる。
【0042】
図8は本発明の第五の実施形態に係る小屋裏換気構造を示す。この実施形態は、庇の出の無い屋根の場合の実施形態であって、本願発明の基本的な実施形態である。図7に記載の実施形態と比較して、外壁(軒先鉛直部材)17及び通気口8a,8bの構造、断熱材の有無以外は同様である。よって、同一の部材には図7と同一の符号を付してその説明を省略する。
図8に示される実施形態では、庇の出の無い屋根の軒先部にフィルター部材12が設置されている。また、この実施形態では、図7の軒先鉛直部材4として外壁17に直接第1の水切5が配設されていて、外壁17が図7に記載の実施形態の軒先鉛直部材4と同等の役割を果たしている。第1通気口8aより導入された外気は、通気路7を経由して、第2通気口8bから、屋根下地材2である屋根パネルのフレーム間を通過して、勾配屋根部材15(野地板3と屋根パネル)の下方に位置する小屋裏9に直接流入する。他方、小屋裏9のよどんだ空気は、棟換気部材22(図4)から排気される。
この実施形態でも他の実施形態と同様に野地板3の下方に断熱材等が敷かれていてもよく、屋根下地材2の材質は木の垂木あるいはスチール等から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る小屋裏換気構造の要部の概略断面図である。
【図2】図1の換気構造の要部の斜視図である。
【図3】図1のフィルター部材の通気部材の拡大斜視図(a),火炎遮蔽部材を有するフィルター部材の拡大斜視図(b)である。
【図4】陸屋根を有する建築物における本願発明の小屋裏換気構造の位置を示す建築物の断面図である。
【図5】図1と同様の図で、本発明の第二の実施形態に係る小屋裏換気構造の要部の概略断面図である。
【図6】図1と同様の図で、本発明の第三の実施形態に係る小屋裏換気構造の要部の概略断面図である。
【図7】図1と同様の図で、本発明の第四の実施形態に係る小屋裏換気構造の要部の概略断面図である。
【図8】図1と同様の図で、本発明の第五の実施形態に係る小屋裏換気構造の要部の概略断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 小屋裏換気構造
2 屋根下地材(屋根パネルのフレームや垂木)
2a 屋根下地材の下縁側端面
3 野地板
3a 野地板の下縁側端面
4 軒先鉛直部材
5 第1の水切
5a 第1の水切の内側側面部
5b1〜3 第1の水切の排水構辺
5c 第1の水切の折曲辺
5d 第1の水切の縁部
5e 第1の水切の上部折曲部
5f 第1の水切の下部折曲部
5g 第1の水切の下端
6 第2の水切
6a 第2の水切の傾斜延長部
6b 第2の水切の鉛直部
7 通気路
8a 第1通気口
8b 第2通気口
9 小屋裏
10 フィルター部材
10a 通気部材
N 軒先先端部
11 屋根仕上げ材
11a 屋根仕上げ材の下端縁
12 フィルター部材(火炎遮断部材有)
12a 火炎遮断部材
12b 外枠フレーム
12c 固定片
12d ビス止め用孔
13 排水溝
14 軒樋
14a 軒樋の底部
14b 軒樋の内側側部
14c 軒樋の外側側部
15 勾配屋根部材
15a 勾配屋根部材の軒下頂部側終端
16 外壁(軽量気泡コンクリート板)
17 外壁(軒先鉛直部材;軽量気泡コンクリート板)
18 断熱材
19 勾配屋根
20 屋上床
21 パラペット
22 棟換気部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配屋根の勾配を形成する屋根下地材と、
該屋根下地材の下端面よりも上方に下端面を位置づけた状態で当該屋根下地上に設けられる野地板と、
該野地板の下縁側端面よりも下方に延びて前記屋根下地材の下端面と略同一面上に先端部が至る屋根仕上げ材と、
前記屋根仕上げ材先端部の下方であって且つ前記屋根下地材又は野地板の下端縁に対向して設けられる第1の水切りと、
前記野地板の下端縁から延在されて第1の水切りに対向する第2の水切りとを備え、
該第2の水切りは、
前記第1の水切り及び前記屋根仕上げ材の先端部と同一或いはそれよりも前記勾配屋根の下り勾配方向に延長された傾斜延長部と、
該傾斜延長部の先端で折曲して垂下する鉛直部とを備え、
これら第1の水切りと第2の水切りの鉛直部及び傾斜延長部との間に外気から前記野地板の下端縁までを連通する通気路が設けられている
建築物の小屋裏換気構造。
【請求項2】
前記通気路にフィルター部材が設置された
ことを特徴とする請求項1に記載の建築物の小屋裏換気構造。
【請求項3】
前記通気路が屋根の桁行き方向に連続して設置されており、更に、前記フィルター部材が屋根の桁行き方向に連続して設置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の建築物の小屋裏換気構造。
【請求項4】
前記フィルター部材の内部は、複数の貫通孔構造として構成される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の建築物の小屋裏換気構造。
【請求項5】
前記フィルター部材は、火炎遮断部材を含む構成である
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の建築物の小屋裏換気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−15011(P2013−15011A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210745(P2012−210745)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2006−341711(P2006−341711)の分割
【原出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】