説明

建築設備部材の配設方法およびレイアウトシート

【課題】 正確かつ円滑に建築設備部材を配設することを可能にする。
【解決手段】 配管やダクトなどの配設状態が原寸大で図示され、インサートやスリーブなどの埋設位置に墨付け孔13が形成されたレイアウトシート1を作成し、このレイアウトシート1をコンクリート受け材側に配設して、墨付け孔13を介してコンクリート受け材にマーキングをする。次に、マーキングに基づいてコンクリート受け材にインサートやスリーブなどを配置してコンクリートを打設し、レイアウトシート1に基づいて、必要な配管や継手などを準備して、これらを配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管やダクトなどの建築設備部材を配設する建築設備部材の配設方法および、建築設備部材を配設するための建築設備部材のレイアウトシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築設備部材を支持する天井吊りボルトを取り付けるためのインサートや、コンクリート製の梁や壁などに貫通孔を形成するためのインサートやスリーブなどの埋設部材は、次のようにして、コンクリート製の躯体に埋設される。すなわち、コンクリートを打設する前に、型枠を形成するコンパネ板(合板、ベニヤ板)やデッキプレート(鉄骨造の床を構成する波状のプレート)などのコンクリート受け材に、埋設部材の埋設位置をマーキング(墨出し)する。このとき、配管やダクトなどの施工図にインサートの配設位置が図示された縮尺のインサート図などを現場に持参して参照し、通り芯などの基準線からスケールなどで埋設部材の埋設位置を測定して、コンクリート受け材にその測定位置をマーキングする。そして、マーキングした位置に埋設部材を配置した状態で、コンクリート受け材にコンクリートを打設することで、埋設部材を躯体に埋設するものである。
【0003】
しかしながら、埋設部材の数は非常に多く、上記のようにしてすべての埋設部材の埋設位置をマーキングするには、多大な時間と労力とを要する。一方、学校の各教室やホテルの各客室などは、建築設備部材が同じパターンで配設され、埋設部材の埋設位置も同じパターンで配設されている場合が多い。このようなことから、同じパターンで配設される埋設部材の埋設位置を容易にマーキングすることを可能にする位置出し作業方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、建物内で繰り返される基準平面パターンに対応する大きさの位置出しシートを用意し、このシートに基準平面パターン内での埋設部材の埋設位置に合致する位置出し孔を予め形成する。そして、基準平面パターンに合致する部分のコンクリート受け材に位置出しシートを敷いて、コンクリート受け材に位置出し孔を利用して埋設部材の埋設位置をマーキングするものである。
【特許文献1】特開平07−054493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配管やダクトなどの建築設備部材の配設は、施工図に基づいて行われる。例えば、施工の元請会社で作図した施工図が下請会社に交付され、下請会社では、この施工図に基づいて継手の選定や、定尺管を必要長さに切断したり、接続フランジを取り付けたりする配管加工などを行う。このとき、交付される施工図は、1フロアの全体施工図を複数に分割した図である場合が多いため、隣接する図とのつながり関係を確認しながら、継手の選定や配管加工などを行う必要があった。
【0005】
しかも、交付される施工図は縮尺図であるため、例えば、調整用の単管を製作する場合に、施工図のみで差込代やねじ込み代を検討しながら、単管の長さを適正に決定することが困難であった。このため、長さが異なる単管を複数用意し、現場で適正な長さの単管を選定しなければならかった。また、インサートを用いてダクトを吊ったり、スリーブに配管を貫通させたりする場合にも、現物(現場)との寸法が著しく異なる縮尺された工区ごとの施工図を見ながら施工しなければならない。このため、円滑かつ適正な施工や部材点数の計上(拾い出し)が困難で、あるいは熟練を要し、作業員などによる個人差が生じていた。
【0006】
さらに、施工図には、多種の工事区分(職種)の建築設備部材が図示されている場合があり、例えば、衛生設備の空調配管を配設する場合に、施工図から空調配管のみを正確に読み取ることが困難で、施工に長時間を要したり、読み間違いや施工ミスをしたりするおそれがあった。また、インサートやスリーブを埋設する場合に、配管の施工図とは別に、インサート図やスリーブ図といった図が作成される場合があるが、この場合には各図に差異が生じるおそれがあり、施工ミスを防止するには各図を確認する必要などがあった。
【0007】
このように、従来の建築設備部材の配設方法では、多大な労力と時間とを要し、しかも施工ミスを招くおそれがあった。これに対し、上記特許文献1に記載された方法では、埋設部材の埋設位置のマーキングを容易にするのみであり、このような問題を解決することができない。しかも、建物内で繰り返される基準平面パターンにおけるマーキングを容易にするものであり、多種の平面パターンや埋設部材の埋設位置パターンに対しては、適用することができない。つまり、このような場合には従来のように、基準線からスケールなどで埋設部材の埋設位置を測定して、コンクリート受け材にマーキングしなければならない。
【0008】
そこでこの発明は、正確(適正)かつ円滑(容易)に建築設備部材を配設することを可能にする建築設備部材の配設方法およびレイアウトシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、配管やダクトなどの建築設備部材を配設する建築設備部材の配設方法であって、前記建築設備部材の配設状態が原寸大で図示され、インサートやスリーブなどの埋設部材の埋設位置が示されたレイアウトシートを、CAD(Computer Aided Design)装置を使用して作成するシート作成ステップと、前記レイアウトシートをコンクリート受け材側に配設し、前記埋設部材の埋設位置に形成された墨付け孔を介して、前記コンクリート受け材に前記埋設位置をマーキングするマーキングステップと、前記マーキングに基づいて前記コンクリート受け材に前記埋設部材を配置して、コンクリートを打設する打設ステップと、前記レイアウトシートに基づいて必要な建築設備部材を準備する設備部材準備ステップと、前記レイアウトシートに基づいて、前記埋設部材を介して前記必要な建築設備部材を配設する設備部材配設ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、シート作成ステップで原寸大のレイアウトシートが作成され、マーキングステップでコンクリート受け材に埋設部材の埋設位置がマーキングされ、打設ステップでコンクリート躯体に埋設部材が埋設され、設備部材準備ステップで必要な建築設備部材が準備され、設備部材配設ステップで必要な建築設備部材が配設される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建築設備部材の配設方法において、前記シート作成ステップにおいて、前記必要な建築設備部材に関する情報を記したレイアウトシートを作成する、ことを特徴とする。ここで、必要な建築設備部材に関する情報とは、設備部材準備ステップで準備する必要な建築設備部材の種類や寸法に関する情報や、設備部材配設ステップで配設する建築設備部材の位置情報などを意味する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の建築設備部材の配設方法において、前記シート作成ステップにおいて、所定の建築設備部材の配設状態が識別可能に図示されたレイアウトシートを作成する、ことを特徴とする。ここで、所定の建築設備部材とは、所定の業者が加工、配設(施工)を行う建築設備部材や、同一の系統・工事区分に属する建築設備部材などを意味し、識別可能とは、色分けによる識別や、所定の建築設備部材のみを図示することによる識別などが可能なことを意味する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の建築設備部材の配設方法において、前記マーキングステップにおいて、前記埋設部材の種類や大きさなどが識別可能に前記マーキングをする、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、配管やダクトなどの建築設備部材を配設するための建築設備部材のレイアウトシートであって、CAD装置を使用して、前記建築設備部材の配設状態が原寸大で図示され、インサートやスリーブなどの埋設部材の埋設位置が示され、前記建築設備部材に関する情報が記されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、個々の埋設部材の埋設位置が図示されたレイアウトシートに基づいて埋設位置をマーキングする。このため、マーキングステップにおいて、埋設位置が繰り返される標準的なパターンでなくても、埋設部材の埋設位置をコンクリート受け材に容易かつ適正にマーキングすることができる。また、設備部材準備ステップにおいて、建築設備部材の配設状態が原寸大で図示されたレイアウトシートに基づいて必要な建築設備部材を準備する。このため、例えば、差込代やねじ込み代を検討しながら、単管の長さを適正に決定することや、部材点数の計上を正確に行うことなどが可能となる。さらに、設備部材配設ステップにおいて、建築設備部材の配設状態が原寸大で図示されたレイアウトシートに基づいて必要な建築設備部材を配設するため、円滑かつ適正な配設施工が可能となる。このようにして、正確かつ円滑に建築設備部材を配設することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、レイアウトシートに必要な建築設備部材の種類や寸法に関する情報や、位置情報などが記されているため、必要な建築設備部材を正確かつ容易に準備し、さらには、建築設備部材を正確かつ円滑に配設することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、レイアウトシートに所定の建築設備部材の配設状態が識別可能に図示されているため、施工業者(作業者)などは自己が加工、配設すべき建築設備部材の配設状態を正確かつ容易に読み取ることができ、その結果、正確かつ円滑に建築設備部材を配設することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、埋設部材の種類や大きさなどが識別可能にマーキングされるため、種類や大きさなどが適正な埋設部材を正確かつ円滑にコンクリート受け材に配置することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、このレイアウトシートを使用することで、請求項1、2と同様にして、正確かつ円滑に建築設備部材を配設することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る建築設備部材の配設方法を示すフローチャートである。この建築設備部材の配設方法は、配管やダクトなどの建築設備部材を配設する方法であり、主として、シート作成ステップと、マーキングステップと、打設ステップと、設備部材準備ステップと、設備部材配設ステップとを有している。
【0022】
シート作成ステップは、建築設備部材の配設状態が原寸大で図示され、インサートやスリーブなどの埋設部材の埋設位置が図示されたレイアウトシートを作成するステップである。具体的には、まず、CAD装置(CADシステム)などを使用して建築設備部材の配設状態図を作成する(ステップS1)。ここで、建築設備部材の配設状態図とは、配管やダクトなどが配設された最終状態を示す図であり、すべての建築設備部材の大きさ、形状、曲げ状態、傾きなどが正確に図示されたものである。また、建築設備部材にはバルブや継手などの付属品も含まれ、バルブのハンドルの位置などの施工情報(配設状態)も含む。
【0023】
さらに、埋設部材の埋設位置、つまり、インサートの打ち込み位置やスリーブの配置位置などを含み、埋設部材の種類に応じて色分けして図示する。例えば、インサートの打ち込み位置には赤丸(後述する図3、4では破線の円)で図示し、スリーブの配置位置には青丸(後述する図3、4では二点鎖線の円)で図示する。ここで、埋設部材の埋設位置は、すべての建築設備部材の配設状態や作業性などを考慮して設定する。例えば、インサートの打ち込み位置は、配管の大きさに適した吊りボルトのピッチ(間隔)や、配管の納まり具合(安定性)などを考慮して設定する。また、スリーブの配置位置は、床コンクリートの上層階と下層階の設備の配置(例えば、他の配管やケーブル、ダクトなどとの干渉)や、スリーブを貫通する配管の納まり具合などを考慮して設定する。
【0024】
このような配設状態図に、さらに、必要な建築設備部材に関する情報を記入する。ここで、必要な建築設備部材に関する情報とは、後述する設備部材準備ステップで準備する必要な建築設備部材の種類や寸法に関する情報や、設備部材配設ステップで配設する建築設備部材の位置情報などを意味する。具体的には、配管の口径や長さ、スリーブの開口径など、建築設備部材や埋設部材などの必要部材の拾い出しや加工に必要な情報や、配管の天井面からの高さ位置などの位置情報などを記入する。また、配設状態図には、躯体の通り芯(基準線)の番号に対応した通り芯の番号を記入する。
【0025】
次に、作図した配設状態図を原寸大でプロッタ等から印刷出力する(ステップS2)。ここで、一般に原寸大の配設状態図が大きいため、プロッタが出力可能な大きさの用紙に分割して、複数の分割図面を出力する。分割は、通り芯(図3参照)を境にして分割する。そして、後述するように、通り芯に合わせてコンクリート受け材側に配設する。これにより、分割図面の貼り合わせを正確かつ容易に行うことが可能となる。ただし、障害物のために通り芯を境にして分割することができない場合や、配設状態図が大きい場合などには、分割図面に通り芯までの距離、位置関係を記入する(図4参照)こともできる。また、所定の建築設備部材の配設状態を識別可能に図示して出力する。ここで、所定の建築設備部材とは、所定の業者が加工、配設(施工)を行う建築設備部材や、同一の系統・工事区分に属する建築設備部材などを意味し、識別可能とは、色分けによる識別や、所定の建築設備部材のみを図示することによる識別などが可能なことを意味する。具体的には、この実施の形態では、衛生設備の空調配管を配設すること(衛生工事の配管)を目的とし、衛生設備の配管とその埋設部材などの関連部材のみの図と、これらの部材に関する情報のみを残し、その他の部材については削除した図を出力する。また、CAD装置のプロッタにセットされるロール紙は、幅が約60cm〜1mで、1巻きの長さは例えば50mである。このようなロール紙を3〜4mに切断すると、機械室や便所などの室に好適である。
【0026】
続いて、出力した複数の分割図面を貼り合わせて、1枚の配設状態図面とする(ステップS3)。ここで、図面の貼り合わせには、図や数字などが判読できるように透明または半透明で、しかも、湿気などによる伸縮で剥れるのを防止するために、伸縮性が図面の用紙と同等なテープを使用するのが好ましい。例えば、基材が和紙で接着材がゴム系の養生テープを使用する。また、屋外で雨天などでも使用できるように、このようにして貼り合わせた図面にラミネート加工したり、図面の上に透明なゴムシートを敷いてもよい。図3は、配設状態図面の一例を示し、この実施の形態では、左端に通り芯の番号(「6」〜「9」)が記入されている。
【0027】
次に、配設状態図面に、埋設部材の埋設位置に墨付け孔を形成する(ステップS4)。すなわち、ステップS1でインサートの打ち込み位置として図示された赤丸や、スリーブの配置位置として図示された青丸の中心と同心上に、円形の墨付け孔を開ける。ここで、例えば、円筒状のステンレス鋼管の先端を尖らせたものを配設状態図面に押し付けることで、墨付け孔を開ける。図4は、墨付け孔が形成された状態を示す一例であり、図中符号11が上記赤丸(図中破線の円)、符号12が上記青丸(図中二点鎖線の円)で、符号13が墨付け孔である。以上のようにして、レイアウトシート1が作成される。このように、この実施の形態では、墨付け孔13が形成された状態をレイアウトシート1としているが、墨付け孔13が形成される前の状態(ステップS3の状態)をレイアウトシートとし、このレイアウトシートを後述するようにコンクリート受け材に貼り付けた後に、墨付け孔13を形成してもよい。
【0028】
マーキングステップは、レイアウトシート1をコンクリート受け材側に配設し、埋設部材の埋設位置に形成された墨付け孔13を介して、コンクリート受け材に埋設位置をマーキングするステップである。具体的には、上記のレイアウトシート1をコンパネ板やデッキプレートなどのコンクリート受け材の上に配置して、仮固定する(ステップS5)。このとき、コンクリート受け材の通り芯の番号とレイアウトシート1の通り芯の番号とを合わせることで、位置合わせを行う。または、梁面などにレイアウトシート1の一端を合わせることで、位置合わせを行う。
【0029】
次に、墨付け孔13の中心に向けてカラーインキを噴き付け、カラーインキをコンクリート受け材に付着させることで、埋設部材の埋設位置をコンクリート受け材にマーキングする(ステップS6)。このとき、赤丸11の墨付け孔13、つまりインサートの打ち込み位置には赤インキを噴き付け、青丸12の墨付け孔13、つまりスリーブの配置位置には青インキを噴き付ける。これにより、埋設部材の種類に応じてマーキングが色分けされ、後述するようにレイアウトシート1を取り除いても、埋設部材の種類を識別できる。さらに、レイアウトシート1の墨付け孔13の周りにもカラーインキが付着され、後述する設備部材準備ステップや設備部材配設ステップにおいて、埋設部材の埋設位置や種類を確認したりするのに役立つものである。
【0030】
打設ステップは、上記のマーキングに基づいてコンクリート受け材に埋設部材を配置して、コンクリートを打設するステップである。具体的には、まず、レイアウトシート1をコンクリート受け材から取り除き(ステップS7)、マーキングした部位に、埋設部材の寸法を書き写す(ステップS8)。つまり、各スリーブの寸法をレイアウトシート1から読み取り、例えば図5に示すように、青インキの上に白インキでスリーブの寸法を書き込む。ここで、図中符号2は、コンクリート受け材としてのコンパネ板、符号21は赤インキ(インサートの打ち込み位置)、符号22は青インキ(スリーブの配置位置)である。また、インサートの寸法はすべて同一であるため、インサートの寸法は書き写す必要がない。
【0031】
次に、マーキングに従って、コンパネ板2に埋設部材を配置する(ステップS9)。すなわち、赤インキの上にインサートを配置し、青インキの上に、書き込まれた寸法のスリーブを配置する。続いて、コンパネ板2で構成された型枠にコンクリートを打設する(ステップS10)。そして、コンクリートが固まることで、コンクリート躯体にインサートやスリーブが埋設、配設される。
【0032】
設備部材準備ステップは、レイアウトシートに基づいて必要な建築設備部材を準備するステップである。具体的には、まず、打設されたコンクリート床の下層階に、通り芯を合わせて上記のレイアウトシート1を敷く(ステップS11)。そして、このレイアウトシート1を見ながら必要な建築設備部材を拾い出す(ステップS12)。すなわち、レイアウトシート1に図示された配管の大きさ、形状、配設状態や、レイアウトシート1に記入された上記の必要な建築設備部材に関する情報に基づいて、必要な配管の径、長さや形状、継手のネジ径や長さ、あるいは調整用の単管の長さを拾い出し、さらにはこれらの部材の必要数を拾い出す(計上する)。
【0033】
続いて、これらの必要な建築設備部材を入手して、必要な加工を行う(ステップS13)。例えば、配管の切断、配管や継手のネジ切りや、フランジの取り付け、曲げ加工などを行う。ここで、建築設備部材には、配管やダクトの他に、バルブや継手などの付属品も含まれる。また、この実施の形態では、打設ステップの後に設備部材準備ステップを行っているが、打設ステップの前に、あるいは打設ステップと並行して、設備部材準備ステップを行ってもよい。さらに、必ずしもレイアウトシート1はコンクリート床の下層階に敷かなくてもよく、レイアウトシート1から必要な情報が読み取れる状態であればよい。
【0034】
設備部材配設ステップは、レイアウトシートに基づいて、埋設部材を介して必要な建築設備部材を配設するステップである。すなわち、上記のレイアウトシート1を見ながら、設備部材準備ステップで拾い出し、加工した建築設備部材を配設する(ステップS14)。具体的には、インサートに吊りボルトを取り付けて、この吊りボルトで所定の配管やダクトを吊って配設したり、スリーブに所定の配管やダクトを貫通させたり、あるいは、所定の継手やバルブなどを所定の位置、方向に取り付けたりする。
【0035】
そして、レイアウトシート1を撤去して、配設作業を終了する(ステップS15)。ここで、建築設備部材の配設後に、配管やダクトなどに断熱材を被覆する作業などの後続作業を行う場合や、配設後の検査を行う場合などには、レイアウトシート1を撤去しないで、レイアウトシート1を見ながら後続作業や検査などを行ってもよい。
【0036】
以上のように、この建築設備部材の配設方法およびレイアウトシート1によれば、設備部材準備ステップにおいて、建築設備部材の配設状態が原寸大で図示され、しかも建築設備部材の種類や寸法に関する情報が記入されたレイアウトシート1を見ながら必要な建築設備部材を準備する。このため、例えば、差込代による配管の伸び縮みを検討しながら、単管の長さを適正に決定することや、必要な部材を必要数正確に拾い出すことを、円滑に行える。また、設備部材配設ステップにおいても、建築設備部材の配設状態が原寸大で図示され、しかも建築設備部材の位置情報などが記入されたレイアウトシート1を見ながら配設を行うため、円滑かつ適正な配設が可能となる。例えば、取り付けるべき配管や継手、あるいはバルブなどを付け間違えたり、接続向きや取付方向などを間違えることなどを削減できる。
【0037】
さらに、レイアウトシート1には、所定の建築設備部材の図および情報のみが図示、記入されている。つまり、この実施の形態では、衛生設備の空調配管とその関連部材の図と、これらの部材に関する情報のみが図示、記入されている、このため、多くの系統・工事区分(多業種・多職種)の配管やダクトなどが複雑に交錯する図面を見る場合に比べて、配管業者などは、自己が配設すべき建築設備部材の配設状態や情報を、迷うことなく正確かつ容易に読み取ることができる。また、マーキングステップにおいて、埋設部材の種類に応じてマーキングが色分けされるため、打設ステップにおいて、適正な種類の埋設部材を正確かつ円滑にコンクリート受け材に配置することができる。ここで、埋設部材の種類だけではなく、大きさや形状などが識別できるようにマーキングを色分けや模様分けなどすることで、多種、多様な埋設部材を正確かつ円滑に配置することが可能となる。
【0038】
以上のことから、構造体の変更などの大規模な対応を要することなく、正確かつ円滑に建築設備部材を配設することが可能となり、その結果、施工での無駄をなくし、かつ、品質向上や作業員数の削減を図ることが可能となる。さらに、上記のように、レイアウトシート1を見ながら後続作業や検査などを行うことで、円滑かつ正確に作業や検査などを行うことが可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
この実施の形態では、レイアウトシート1を配設状態図面とゴムシートとから構成する点で、実施の形態1と構成が異なる。
【0040】
ここで、ゴムシートとしては、衛生工事の水パッキンなどに使用され厚みが3mm程度のゴムシートを用い、このゴムシートの上に、上記のようにして作成した配設状態図面を貼り付ける。次に、上記と同様にして、埋設部材の埋設位置に墨付け孔を形成する。このとき、配設状態図面とゴムシートとを貫通するように墨付け孔を形成して、レイアウトシート1とする。そして、このようなレイアウトシート1を用いて、埋設部材の埋設位置をコンクリート受け材にマーキングする(上記のステップS6)ものである。
【0041】
このようなレイアウトシート1によれば、マーキングに際して繰り返し使用することができる。このため、マンションやホテルの室などのように、設備や配管などの配設位置が同じパターンの室に対して、より円滑、短時間に、かつ正確に複数のマーキングを行うことが可能となる。また、高層階の建物のように室数が多数あっても、それぞれにレイアウトシート1を作成する必要がないため、マーキングのし忘れ(施工漏れ)などが起こり難くなる。
【0042】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、ステップS1において、つまりCAD装置などにおいて必要な建築設備部材に関する情報を記入しているが、必要に応じて、それ以降に手書きなどによって記入してもよい。また、ステップS2において、衛生設備の空調配管とその埋設部材などの関連部材のみを図示して出力しているが、当該レイアウトシートの交付を受ける配管業者が担当する工事区分(職種)の建築設備部材やその埋設部材のみを図示して出力したり、衛生設備の空調配管とその埋設部材などの関連部材を他の部材と色分けして出力したりしてもよい。
【0043】
また、コンクリート受け材がコンパネ板2の場合について説明したが、波状のプレートであるデッキプレートなどであってもよく、デッキプレートの場合には、複数の山の頂面上にレイアウトシート1を張った状態で配置すればよい。さらに、屋上や土間などの結露しやすい部位には、コンパネ板の上に断熱材を敷く場合があるが、このような場合にも適用することができる。すなわち、上記のステップS5、S6と同様にして、レイアウトシート1を断熱材の上に配置してマーキングし、断熱材を貫通する孔を形成してこの孔にスリーブとボイド蓋(紙製のスリーブを塞ぐ蓋)を配置したり、断熱材を貫通するようにインサートを打ち込んだりする。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、この発明に係る建築設備部材の配設方法およびレイアウトシートは、正確かつ円滑に建築設備部材を配設することを可能にするものとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の実施の形態1に係る建築設備部材の配設方法を示すフローチャートである。
【図2】図1の続きを示すフローチャートである。
【図3】図1のフローチャートのステップS3において貼り合わせた配設状態図面の一例を示す図である。
【図4】図1のフローチャートのステップS4において配設状態図面に墨付け孔を形成した状態の一例を示す図である。
【図5】図1のフローチャートのステップS8において、コンクリート受け材のマーキング部位に埋設部材の寸法を書き写した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 レイアウトシート
11 赤丸(インサート位置)
12 青丸(スリーブ位置)
13 墨付け孔
2 コンパネ板(コンクリート受け材)
21 赤インキ(インサート位置)
22 青インキ(スリーブ位置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管やダクトなどの建築設備部材を配設する建築設備部材の配設方法であって、
前記建築設備部材の配設状態が原寸大で図示され、インサートやスリーブなどの埋設部材の埋設位置が示されたレイアウトシートを、CAD装置を使用して作成するシート作成ステップと、
前記レイアウトシートをコンクリート受け材側に配設し、前記埋設部材の埋設位置に形成された墨付け孔を介して、前記コンクリート受け材に前記埋設位置をマーキングするマーキングステップと、
前記マーキングに基づいて前記コンクリート受け材に前記埋設部材を配置して、コンクリートを打設する打設ステップと、
前記レイアウトシートに基づいて必要な建築設備部材を準備する設備部材準備ステップと、
前記レイアウトシートに基づいて、前記埋設部材を介して前記必要な建築設備部材を配設する設備部材配設ステップと、
を有することを特徴とする建築設備部材の配設方法。
【請求項2】
前記シート作成ステップにおいて、前記必要な建築設備部材に関する情報を記したレイアウトシートを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の建築設備部材の配設方法。
【請求項3】
前記シート作成ステップにおいて、所定の建築設備部材の配設状態が識別可能に図示されたレイアウトシートを作成する、ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の建築設備部材の配設方法。
【請求項4】
前記マーキングステップにおいて、前記埋設部材の種類や大きさなどが識別可能に前記マーキングをする、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の建築設備部材の配設方法。
【請求項5】
配管やダクトなどの建築設備部材を配設するための建築設備部材のレイアウトシートであって、
CAD装置を使用して、前記建築設備部材の配設状態が原寸大で図示され、インサートやスリーブなどの埋設部材の埋設位置が示され、前記建築設備部材に関する情報が記されている、ことを特徴とする建築設備部材のレイアウトシート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−215848(P2009−215848A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63379(P2008−63379)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】