説明

建築部材

【課題】空気に十分に接触させることにより、光触媒の浄化・消臭機能を十分にいかすことができる光触媒を用いた建築部材を提供する。
【解決手段】扉部材1や窓部材の少なくとも一部を、光触媒3の配合された塗料が塗布された光透過性を有する多孔質セラミックス体2とする。扉部材1や窓部材の開閉作業により、多孔質セラミックス体2の隙間を空気が通過するので、より多くの空気が光触媒3と接触し、浄化することができる。さらに、セラミックスは有害物質に対して吸着性を持つため、より多くの空気を浄化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築部材に関し、特に、光触媒を塗布することにより大気中の有害物質を除去することができる建築部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化チタンに代表される光触媒の機能が注目されはじめ、光触媒を表面に塗布した建築部材が広く用いられている。光触媒は、空気中の臭気の原因となる窒素酸化物NO、アンモニア等や、いわゆるシックハウスの原因となるホルムアルデヒドなどのVOC(揮発性有機化合物)を吸着・分解するため、空気の浄化・消臭のために室内の内装部材などに用いられている。
【0003】
この光触媒の浄化・消臭機能を十分に発揮させるためには、空気に十分に接触させ、光触媒の表面に吸着させなければならない。このため、例えば特許文献1には、空気との接触面を増やすため、光触媒入り塗料をポーラス状に塗布したことを特徴とする建築部材が記載されている。
【特許文献1】特開2003−328527号報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光触媒の有害物質を吸着力は非常に弱く、光触媒を塗布した建築部材の表面わずかな大気にしか働かない。そのため、上記の建築部材は表面のわずかな部分の空気しか浄化・消臭することができない。このため、部材表面に塗布した塗料をポーラス状にして接触面を大きくしても、光触媒表面付近の空気が循環しなければ、浄化機能は飛躍的に向上することは期待できない。
【0005】
そこで、本発明の目的は空気に十分に接触させることにより、光触媒の浄化・消臭機能を十分にいかすことができる光触媒を用いた建築部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建築部材は、光のあたる部位に設けられる開け閉め可能な建築部材であって、少なくとも一部に光触媒の配合された塗料を塗布された光透過性を有する多孔質体を備えること特徴とする。また、前記多孔質体は多孔質セラミックスであることが望ましい。
【0007】
上記の発明によれば、建築部材を開閉する際、または、空気が出入りする際に、多孔質体の空隙を空気が通過するため、光触媒と多くの空気が接触することができる。さらに、セラミックスは有害物質を吸着するため、より多くの有害物質を分解することができる。
【発明の効果】
【0008】
建築部材を開閉することにより、光触媒の塗布された多孔質セラミックス体の隙間を空気が通過するので、光触媒がより多くの空気と接触し、より多くの空気中のNO、アンモニア、ホルムアルデヒド等の有害物質を分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の建築部材の一実施形態について図面に基づき説明する。ここでは、建築部材の一例として扉部材を用いて説明する。
図1は本実施形態の扉部材1を示す正面図である。図1に示すように、扉部材1は隣接した2室を隔てる壁部材に一辺が蝶番等により回動自在に取付けられた開き戸であり、人の出入りにより頻繁に開閉される。扉部材1が設けられた室内には、蛍光灯が設けられており、扉部材1には蛍光灯の直接光又は間接光が当たる位置に設けられている。
【0010】
扉部材1はその一部に多孔質セラミックス体2を備え、多孔質セラミックス体2は光透過性を持つ多孔質セラミックスからなる基板に、酸化チタン等のいわゆる光触媒3を含む塗料が塗布されている。このような光透過性を持つセラミックスとしては、例えば特開平10―316466に記載されている透光性セラミックス等がある。
また、多孔質セラミックス体2は、開口率が80〜90%程度であり、その内部に細かい空隙を大量に有することが望ましい。このような多孔質セラミックス体2の作成方法として、例えば、無機化合物と有機化合物を混合し、焼成により内部の有機化合物を燃焼させ、その部分が空隙として残ることで多孔質に形成する方法、SiCや金属アルミ等の発泡剤を混入しておき、発泡させることで多孔質に形成する方法、押出し成形により多孔質に形成する方法等が従来より広く知られている。また、特開2004−277260に記載の方法によっても、多孔質セラミックス体を製造することが可能であり、いずれか一つの方法を用いて形成すればよい。
【0011】
塗布される光触媒3としては、酸化チタンがよく知られている。酸化チタンは、光が照射されると光エネルギーを吸収すると、強い酸化力を持つようになり、NO、ホルムアルデヒド、アンモニア等の有害物質を分解することができる。また、光触媒3を塗布した表面は超親水性を持ち、光触媒を塗布した表面では水が一様な水膜となるため、曇りが生じず、また、表面に汚れが付着しても、汚れの下に水が容易に入り込むので、容易に汚れが落ちるため汚れを防止することもできる。
【0012】
このような光触媒3を多孔質セラミックス体2に塗布するためには、光触媒3を混合した塗料を作成し、塗料の中に多孔質セラミックス体2を浸すことにより、多孔質セラミックス体2の空隙細部まで、光触媒3の混合した塗料を塗布することが可能である。
【0013】
上記の構成の扉部材1が頻繁に開閉されることで以下の効果が得られる。
多孔質セラミックスを基板として、その表面に光触媒を塗布したため、光触媒を含む塗料と空気との界面面積が大きくなる。また、光触媒3は、その表面に付着した有害物質を分解するためには、光エネルギーが必要となるが、基板となる多孔質セラミックスが透光性を持つため、その内部にまで光を透過することができる。これにより、多孔質セラミックス体2内部においても浄化・消臭機能を発揮することができ、より多くの空気を浄化・消臭することが可能となる。
【0014】
また、光触媒3の吸着力は非常に弱く、表面付近のわずかな空気しか浄化・消臭することができない。しかし、人の出入りにより扉部材1が開閉されると、多孔質セラミックス体2は開口率が大きいため、容易に空気が流入し、多孔質セラミックス体の空隙を通過していく。このため、光触媒3はより多くの空気と接触することができ、光触媒3の浄化・消臭機能を十分に発揮することができる。また、扉部材1が頻繁に開閉されなくても、自然換気などにより2室間に風の流れが起これば、多孔質セラミックス体2を通して空気の出入りがあるため、同様の効果が得られる。
【0015】
また、セラミックスはVOCやFO、NO等の有害物質を吸着する機能を有する。このため、光触媒3の有害物質の吸着力を補い、空気浄化機能を飛躍的に向上することができる。
【0016】
さらに、多孔質セラミックス体2表面に微量の汚れが付着しても、表面に塗布された光触媒3の分解機能により表面の汚れが分解されるので、清掃を行わなくてもよい。また、大量の汚れが付着したとしても、光触媒3の表面は超親水性を有するため、多孔質セラミックス体2に水を散布すると、水が表面と汚れの間に入り込み、汚れを浮き上がらせるので、容易に洗い流すことができる。
【0017】
なお、本発明の実施形態は上記の扉部材に限られない。窓部材のように開閉可能な部材に光触媒を塗布した光透過性を持つ多孔質セラミックス体を設ければ、同様の効果が得られる。また、本実施形態では光触媒として酸化チタンを用いたが、これに限らず、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等の光触媒を用いることも可能である。また、本実施形態では、多孔質セラミックス体を設ける位置として、室内の蛍光灯の光が当たる位置としたが、これに限らず、太陽光等の光が当たる位置に設置する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の扉部材を示すための図である。
【符号の説明】
【0019】
1 扉部材
2 多孔質セラミックス体
3 光触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光のあたる部位に設けられる開け閉め可能な建築部材であって、
少なくとも一部に光触媒の配合された塗料を塗布された光透過性を有する多孔質体を備えること特徴とする建築部材。
【請求項2】
前記多孔質体がセラミックスからなることを特徴とする請求項1記載の建築部材。


【図1】
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【公開番号】特開2006−265902(P2006−265902A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83914(P2005−83914)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(504000502)近江窯業株式会社 (9)
【出願人】(593202302)株式会社ヒューネット (3)
【出願人】(599157882)株式会社インテックアーム (1)
【出願人】(500341296)
【Fターム(参考)】