説明

建築部材

【課題】 建築物の下地面に剥離自在に接着される建築部材の外周部のめくれ上がりを防止する。
【解決手段】 建築部材10は、相互に側面を突き当てた状態で下地面18に取り付けられる建築部材本体15を有し、建築物の下地面に剥離自在に接着される。建築部材本体15の裏面に固定される導電性シート21は、建築部材本体15の側面よりも外方に部分的に突出して隣り合う他の建築部材本体の外周部に積層される突き出し部23を有している。導電性シート21の裏面には、電磁誘導加熱により発熱した導電性シート21により加熱溶融される熱可塑性接着剤層24が塗布されている。建築部材本体の側面が相互に突き当てられるようにして下地面に18に配置した状態のもとで、突き出し部23に対向させた電磁誘導コイルにより熱可塑性接着剤層24を溶融することにより建築部材10は下地面18に接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床板下地等の下地面に接着されるとともに下地面から容易に剥離し得るようにした建築部材に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション、オフィスビルおよび木造家屋等の建築物内に構築された部屋等の内部空間の内面を仕上げるために、内装下地面に内装板を建築部材として取り付ける場合がある。例えば、内部空間を形成する床板の下地面にフローリングを施す場合には、床板の下地面にフローリング材としての化粧パネルつまり建築部材を取り付ける場合がある。また、垂直の内壁面にも同様にその下地面に建築部材を取り付ける場合がある。
【0003】
床板の下地面に内装板であるフローリング材を取り付ける場合には、通常、一方の側面に突起が設けられ対向する他方の側面に凹部が設けられた帯状の板材を用いている。この場合には、隣り合う帯状の板材を突起と凹部とを嵌め合わせるとともに釘を用いて下地板に固定することにより下地面に敷きつめるようにしている。このように釘で固定された建築部材を、床面張り替えの際に撤去するには、建築部材を破壊する必要があり、撤去作業には騒音の発生が不可避である。また、建築部材を接着剤により下地面に固定するようにした場合にも、建築部材を撤去するには建築部材を破壊する必要がある。
【0004】
そこで、建築部材を建築部材本体とその裏面に固定される金属シートとこの金属シートの裏面に塗布される熱可塑性接着剤層とにより形成し、建築物の下地面に建築部材を取り付ける際に、電磁誘導コイルにより金属シートを発熱させて金属シートの熱により熱可塑性接着剤を溶融させるようにした技術が特許文献1に記載されるように開発されている。
【特許文献1】特開2000−220288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように電磁誘導加熱により金属シートを発熱させ発熱した金属シートによって熱可塑性接着剤を溶融して建築部材を下地面に接着するようにすると、釘を用いて建築部材を固定する場合のような施工時の騒音発生がない。さらに、部屋の模様替えを行う際には電磁誘導加熱によって再度金属シートを発熱させて熱可塑性接着剤を溶融させれば、容易に建築部材を下地面から剥離させることができ、その剥離作業においては外部に騒音を発生させることがなく、内装材を再利用することができるという利点がある。
【0006】
しかしながら、従来では建築部材を下地面に電磁誘導加熱により取り付けたときに、建築部材の突き当て面がめくれ上がるという現象が発生した。例えば、建築部材として比較的軟質なラバーコルクやコルクを用いて床板下地面をフローリング施工した場合に、ラバーコルクの外周の突き当て面の一部がめくれ上がることがあった。ラバーコルクの床面は、居住者の歩行時に足に負担が掛からないだけでなく、歩行音を発生させずに部屋の静粛性を保てるという利点があり、ラバーコルクはフローリング材として使用されつつあるが、フローリング材の突き当て面がめくれ上がると、老人ホームや介護施設においては、老人の歩行時にめくれ上がった部分に足を引っかけて歩行者が転倒しかねないという問題がある。
【0007】
このようなめくれ上がりが発生するのは、電磁誘導加熱により建築部材を下地面に接着する際に、建築部材の側辺の部分が確実に下地面に接着されないことがあるためである。実験によると、相互に突き当てられる両方の内装材の側面エッジまで確実に接着されないと、突き当てられた側辺部のめくれ上がりが発生することになるということが判明した。さらに、相互に突き当てられる内装材のうち一方の内装材の側面エッジまで接着されていれば、他方の内装材の側面エッジまで接着されていなくとも、両方の内装材は相互に突き当て面により突き当てられた状態となっているので、めくれ上がり現象は発生しないことが判明した。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、建築物の下地面に剥離自在に接着される建築部材の外周部のめくれ上がりを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の建築部材は、床板下地等の建築物の下地面に剥離自在に接着される建築部材であって、側面を相互に突き当てて前記下地面に取り付けられる建築部材本体と、前記建築部材本体の側面よりも外方に部分的に突出して隣り合う他の前記建築部材本体の外周部に積層される突き出し部を有するとともに前記建築部材本体の裏面に固定される導電性シートと、前記導電性シートの裏面に塗布され、電磁誘導加熱により発熱した前記導電性シートにより加熱溶融される熱可塑性接着剤層とを有し、複数の前記建築部材本体をそれぞれの側面が相互に突き当てられるとともに前記突き出し部を隣り合う他の前記建築部材本体に積層した状態のもとで前記下地面に接着する際に、前記突き出し部に対向させた電磁誘導コイルにより熱可塑性接着剤層を溶融することを特徴とする。
【0010】
本発明の建築部材は、相互に隣り合う前記建築部材本体の側面を直接または目地部材を介して相互に突き当てることを特徴とする。
【0011】
本発明の建築部材は、前記目地部材を熱可塑性樹脂により形成し、前記電磁誘導コイルにより前記目地部材を溶融することを特徴とする。
【0012】
本発明の建築部材は、前記突き出し部の表面に熱可塑性接着剤層を塗布することを特徴とする。
【0013】
本発明の建築部材は、前記下地面に接着された前記建築部材本体を前記下地板から剥離する際に、前記突き出し部に対向させた電磁誘導コイルにより前記建築部材本体の側面に対応する熱可塑性接着剤層を溶融することを特徴とする。
【0014】
本発明の建築部材は、前記導電性シートを前記建築部材本体と同一サイズに形成し、前記導電性シートの一部を前記建築部材本体の側面から突出するように前記建築部材本体にずらして固定し、突出した部分により前記突き出し部を形成することを特徴とする。
【0015】
本発明の建築部材は、前記建築部材本体はほぼ四辺形であり、4つの側面のうち相互に隣り合う2つの側面から前記導電性シートの前記突き出し部を突出することを特徴とする。
【0016】
本発明の建築部材は、前記建築部材本体はほぼ六角形であり、6つの側面のうち相互に隣り合う3つの側面から前記導電性シートの前記突き出し部を突出することを特徴とする。
【0017】
本発明の建築部材は、それぞれの側面に他の建築部材本体と噛み合う凹凸部を設けることを特徴とする。
【0018】
本発明の建築部材は、前記建築部材本体をコルクにより形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、側面を相互に直接または目地部材を介して突き当てて下地面に取り付けられる建築部材本体には、隣り合う他の建築部材本体の外周部に積層される突き出し部が側面から突出して設けられており、電磁誘導コイルをそれぞれの建築部材本体の側辺に対向させた状態で電磁誘導コイルに通電すると、突き出し部に塗布された熱可塑性接着剤が溶融して突き出し部が下地面に接着されることになる。これにより、突き出し部が設けられた建築部材本体の側面に対応する部分は確実に熱可塑性接着剤により下地面に接着されることになり、接着された建築部材の側辺部のめくれ上がり現象の発生を防止できる。したがって、建築部材を床板の下地面に接着すると、フローリング仕上げされた床表面は表面に突出する部分がなく、床面を全体的に平坦に仕上げることができる。同様に、垂直の側壁に建築部材を取り付けると、側壁面を平坦に仕上げることができる。
【0020】
建築部材は熱可塑性接着剤により接着されているので、部屋等の建築物内の空間を形成する床面や側壁面の模様替えを行う際には、熱可塑性接着剤を電磁誘導加熱により溶融することによって建築部材を破損させることなく、容易に下地面から剥離させることができる。
【0021】
建築部材の形状としては、正方形や長方形などの四辺形でも良く、六角形としても良く、それぞれの形状の側面に凹凸部を設けるようにしても良い。建築部材をコルクやラバーあるいはこれらの積層板等のように比較的変形し易い材質とした場合でも、経時変化による建築部材のめくれ上がりの発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である建築部材を示す斜視図であり、図2は図1の平面図であり、図3は図1に示す建築部材を下地面に敷き詰めた状態を示す平面図であり、図4は図3におけるA−A線に沿う断面図であり、図5は図4における符号Bで示す部分の一部拡大断面図である。
【0023】
図示された建築部材10は同一長さの4つの側辺を有する正方形の建築部材本体15を備えており、それぞれの側辺をなす4つの側面11〜14が突き当て面となっている。建築部材本体15はゴム層16とこれの表面側に積層されたコルク層17とからなり、図4および図5に示すように床板の下地面18に接着されてフローリングの化粧板として使用される。建築部材本体15の裏面にはアルミニウム合金やステンレス等の金属により形成された導電性シート21が固定されており、この導電性シート21は建築部材本体15よりもやや小型の正方形となっている。導電性シート21はその表面と建築部材本体15の裏面との間に塗布される接着剤層22により建築部材本体15に固定されている。この接着剤層22は熱硬化性樹脂により形成されている。図示する導電性シート21は1枚のシートにより形成されているが、複数枚の導電性シートを建築部材本体15の裏面に接着するようにしても良く、その場合には複数枚の導電性シートを隙間を隔てて建築部材本体15の裏面に接着する。
【0024】
建築部材本体15と同一のサイズの導電性シート21を建築部材本体15にずらして固定することにより、建築部材本体15の4つの側面のうち相互に直角をなして隣り合う2つの側面11,12よりも導電性シート21は外方に突出し、突出した部分が突き出し部23となっている。図2に示すように、建築部材本体15の1辺の長さ寸法はWであり、突き出し部23の突き出し寸法はLとなっている。建築部材本体15のサイズWは、例えば15cm〜50cm程度であり、突き出し寸法Lとしては、0.5cm〜数cm程度に設定されている。
【0025】
導電性シート21の裏面つまり下地面に対向する面には、図4および図5に示すように、熱可塑性接着剤層24が塗布されており、導電性シート21を電磁誘導加熱により発熱させると、導電性シート21の熱により熱可塑性接着剤層24が加熱溶融されて熱可塑性接着剤層24により建築部材10を下地面18に接着することができる。下地面18は、図示する場合には床板がコンクリート製となっていることからコンクリート面となっているが、この建築部材10は木材製の床板の上面つまり下地面に接着するためにも使用することができる。
【0026】
図6は本発明の他の実施の形態である建築部材10を示す平面図であり、図7は図6に示す建築部材10を下地面18に接着した状態における建築部材10の一部拡大断面図である。これらの図においては前述した実施の形態の建築部材10と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0027】
図6および図7に示す建築部材10の建築部材本体15は、コルクのみにより形成されている。導電性シート21の突き出し部23の表面には熱可塑性接着剤が塗布されており、熱可塑性接着剤層25が設けられている。したがって、この建築部材10は導電性シート21を電磁誘導加熱により発熱させると、導電性シート21の熱により熱可塑性接着剤層25も加熱溶融されて熱可塑性接着剤層25により突き出し部23の表面は建築部材本体15の裏面にも接着されることになる。
【0028】
図8は本発明の他の実施の形態である建築部材10を示す平面図であり、図9は建築部材本体15の側面の間に目地部材26を埋め込んだ状態を示す平面図であり、図10は図9におけるC−C線に沿う拡大断面図である。これらの図においては前述したそれぞれの実施の形態の建築部材10と共通する部材には同一の符号が付されている。なお、図8および図9においては下地面18に接着された建築部材10のうち9枚が示されている。
【0029】
図8〜図10に示される建築部材10はタイルであり、図8に示すように建築部材10は、下地面18に敷き詰められた状態のもとで隣り合う建築部材本体15の側面間に隙間が形成されるように下地面18に接着される。隣り合う建築部材本体15の側面間には図9に示すように目地部材26が組み込まれるようになっており、それぞれの建築部材10は相互に隣り合う建築部材本体15の側面が樹脂製の目地部材26を介して相互に突き当られるようになっている。それぞれの目地部材26はL字形状に折り曲げられた形状となっており、内側側面は建築部材本体15の2つの側面11,14に接触し、外側側面は他の建築部材10の側面12,13に接触する。目地部材26は熱可塑性樹脂を用いて図示する形状に成型することにより製造されるが、目地部材26の形状としてはL字形状に限られず、真っ直ぐな棒状としても良い。
【0030】
図11は導電性シート21を発熱させて熱可塑性接着剤層24を溶融するための接着剤溶融装置を示す正面図であり、接着剤溶融装置31は前記特許文献1に記載されたものとほぼ同様の構造となっている。接着剤溶融装置31は、加熱ヘッド32が取り付けられる装置本体33を有し、加熱ヘッド32は樹脂製のカバーとこの中に組み込まれる渦巻き状の電磁誘導コイル34とを有している。装置本体33には電源ユニット35が接続され、この電源ユニット35は商用電源を変圧する変圧器と交流を直流に変換する整流器とを有し、直流電力が電源ユニット35からケーブル36を介して装置本体33に送られる。装置本体33には直流を高周波電流に変換する高周波発生器が組み込まれており、電磁誘導コイル34には例えば20〜30kHz程度の高周波電流が供給されるようになっている。
【0031】
図11に示すように、加熱ヘッド32を建築部材10の表面に押し当てて電磁誘導コイル34に高周波電流を供給すると、電磁誘導コイル34には交流磁界が発生し、磁力線が導電性シート21を通過する。これにより、電磁誘導の法則によって導電性シート21に渦電流が発生し、この渦電流によるジュール熱により導電性シート21が発熱し、この熱により熱可塑性接着剤層24は溶融することになる。
【0032】
図1に示す建築部材10を床板の下地面18に敷き詰める場合には、図3に示すように、突き出し部23が突出している側面11,12と、突き出し部23が突出していない側面13,14とが相互に突き当てられるようにして建築部材10を下地面18の上に配置する。このように配置すると、突き出し部23は相互に隣り合う他の建築部材本体15の外周部に積層され、建築部材本体15の4つの外側面11〜14、つまり突き当て面に対応する部分には導電性シート21の突き出し部23が横断することになる。なお、図3においては下地面18の全体に配置される多数枚の建築部材10のうち4枚のみが示されている。
【0033】
このように、それぞれの外側面が相互に突き当てられるとともに突き出し部23を他の建築部材本体15に積層した状態のもとで、図11に示した接着剤溶融装置31を用いて、加熱ヘッド32を突き出し部23に対向させて電磁誘導コイル34に通電する。これにより、電磁誘導コイル34により建築部材本体15の突き当て面つまり側面に対応する熱可塑性接着剤層24の部分が導電性シート21により加熱されて溶融し、通電を解くと導電性シート21が冷却されるので、溶融した部分が固化して建築部材10は下地面18に接着される。建築部材本体15の側辺に対応する部分に加えて、中央部分に対応する部分にも電磁誘導コイル34を突き当ててそれに対応する熱可塑性接着剤層24の部分を溶融する。突き当て面に電磁誘導コイル34を対向させてこれに通電する際には、各々の側辺に沿って電磁誘導コイル34を移動させながら通電させても良く、側辺に沿って所定間隔毎に移動させた後に所定時間通電させるようにしても良い。
【0034】
電磁誘導加熱により突き当て面に対応する部分の突き出し部23における熱可塑性接着剤層24を溶融接着させると、図5および図7に示すように、突き出し部23が固定された右側の建築部材本体15の側面11に対応する部分が熱可塑性接着剤層24により下地面18に接着され、その側面11に他の建築部材本体15の側面13が突き当てられることになる。これにより、両方の側面11,13の摩擦抵抗により図5における左側の建築部材本体15の側辺が浮き上がることがなかった。床面全体に図1に示す建築部材10を敷き詰めて実験をしたところ、施工時に全ての建築部材10のうちいずれも側辺の浮き上がりが発生しないだけでなく、所定期間の居住試験を行っても経時変化による側辺の浮き上がり発生はなかった。
【0035】
これに対して、突き出し部23を設けることなく建築部材本体15の裏面全体に導電性シート21を固定し、その導電性シート21の裏面に熱可塑性接着剤層24が塗布された建築部材10を用いて比較実験を行ったところ、施工時に側辺の一部が浮き上がってしまう建築部材10が発生し、さらには施工時には浮き上がっていない部分であっても経時変化によって浮き上がる部分が発生した。このように、建築部材本体15の裏面に固定される導電性シート21の一部を側面から突き出させて突き出し部23を形成すると、浮き上がり部を発生させることなく、建築部材10を下地面18に接着することが可能であることが判明した。
【0036】
図5に示す場合には突き出し部23の上に積層されて隣り合った図5における左側の建築部材本体15の裏面と突き出し部23との間には接着剤が介在していないが、図7に示す場合には突き出し部23の表面にも熱可塑性接着剤層25が形成されているので、突き出し部23の表面は隣り合う他の建築部材本体15の裏面にも接着されることになり、それぞれの建築部材10のいずれも側辺も浮き上がり発生をより確実に防止することができる。
【0037】
図8〜図10に示すように目地部材26をそれぞれの建築部材本体15の側面間に埋め込む場合には、目地部材26を熱可塑性樹脂により形成すると、電磁誘導コイル34により導電性シート21を発熱させると、熱可塑性接着剤層24,25のみならず、目地部材26も加熱されて溶融状態となり、建築部材本体15の側面間に隙間無く埋め込まれることになる。このように目地部材26を用いる場合には、接着剤溶融装置31の加熱ヘッド32の先端に目地部材26に突き当てられる突起部を設けるようにしても良い。
【0038】
既に下地面18に接着された建築部材10を、室内の模様替えのために剥離させるときには、図11に示す接着剤溶融装置を用いて熱可塑性接着剤層24を溶融させると、接着時と同様に騒音を発生させることなく、しかも建築部材10を破損させることなく、下地面18から取り除くことができ、建築部材10を再利用することができる。
【0039】
電磁誘導コイル34により導電性シート21を発熱させると、建築部材本体15と導電性シート21とをそれぞれの内面で接着させる接着剤層22も加熱されるが、この接着剤層22は熱硬化性接着剤により形成されているので、接着剤層22は溶融することがない。この接着剤層22を形成するための接着剤としては、熱可塑性接着剤層24を溶融させたときに溶融状態とならない接着剤であれば、熱可塑性接着剤層24よりも溶融温度が、例えば30℃以上高い熱可塑性接着剤を用いるようにしても良く、溶剤を含み化学反応により硬化する接着剤を用いるようにしても良い。さらに、物理的に噛み合わせて導電性シート21を建築部材本体15に固定するようにしても良い。
【0040】
図12〜図14は、それぞれ本発明の他の実施の形態である建築部材を示す平面図であり、図12に示す建築部材10は建築部材本体15および導電性シート21がそれぞれ六角形となるとともに相互に同一のサイズとなっており、導電性シート21の突き出し部23は、6つの側面のうち相互に隣り合う3つの側面から突出している。図13に示す建築部材10は建築部材本体15および導電性シート21が同一サイズの長方形となっており、突き出し部23は1つの長辺とこれに隣り合う1つの短辺のそれぞれの側面から突出している。
【0041】
図14に示す建築部材10は、建築部材本体15および導電性シート21がそれぞれ全体的にほぼ正方形であり相互に同一のサイズとなっているが、4つの側面のうち隣り合う2つの側面には凸部27が設けられ、他の2つの側面には凸部27が噛み合う凹部28が形成されている。この場合には、図14に示すように突き出し部23を凸部27が設けられた側面11,12側に突き出されているが、凹部28が設けられた側面13,14側に突き出させるようにしても良く、さらには2つの側面11,14と側面12,13とのいずれか一方側に突き出させるようにしても良い。
【0042】
図14に示すように、側面11〜14に凹凸部を設け、ずらし量を凹凸部の長さ寸法よりも少なくすると、2つの側面11,12のほぼ全体から突き出し部23が突出するとともに、他の側面13,14からも導電性シート21の一部が突出することになる。なお、図12および図13に示す形状の建築部材10についても凸部27と凹部28を設けるようにしても良い。
【0043】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図示する建築部材10は木製床板またはコンクリート製床板の下地面に接着されるフローリング用の化粧板つまり内装板を示すが、建物の内壁に取り付けられる化粧板としても本発明の建築部材10を使用することができ、建物の外壁に取り付けられる外装板としても本発明の建築部材10を用いることができる。また、建築部材本体15の材質としては、図1〜図5に示したラバーとコルクの積層板のみならず、図6および図7に示すようにコルクまたはラバーのみからなる板材としても良く、木材のみからなる板材や石膏ボード、および図8〜図10に示すようにタイルなどを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態である建築部材を示す斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1に示す建築部材を下地面に敷き詰めた状態を示す平面図である。
【図4】図3におけるA−A線に沿う断面図である。
【図5】図4における符号Bで示す部分の一部拡大断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態である建築部材を示す平面図である。
【図7】図6に示す建築部材を下地面に接着した状態における建築部材の一部拡大断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である建築部材を示す平面図である。
【図9】建築部材本体の側面の間に目地部材を埋め込んだ状態を示す平面図である。
【図10】図9におけるC−C線に沿う拡大断面図である。
【図11】導電性シートを発熱させて熱可塑性接着剤層を溶融するための接着剤溶融装置を示す正面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態である建築部材を示す平面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態である建築部材を示す平面図である。
【図14】本発明の他の実施の形態である建築部材を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 建築部材
11〜14 側面
15 建築部材本体
16 ゴム層
17 コルク層
18 下地面
21 導電性シート
22 接着剤層
23 突き出し部
24 熱可塑性接着剤層
25 熱可塑性接着剤層
26 目地部材
27 凸部
28 凹部
31 接着剤溶融装置
32 加熱ヘッド
33 装置本体
34 電磁誘導コイル
35 電源ユニット
36 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板下地等の建築物の下地面に剥離自在に接着される建築部材であって、
側面を相互に突き当てて前記下地面に取り付けられる建築部材本体と、
前記建築部材本体の側面よりも外方に部分的に突出して隣り合う他の前記建築部材本体の外周部に積層される突き出し部を有するとともに前記建築部材本体の裏面に固定される導電性シートと、
前記導電性シートの裏面に塗布され、電磁誘導加熱により発熱した前記導電性シートにより加熱溶融される熱可塑性接着剤層とを有し、
複数の前記建築部材本体をそれぞれの側面が相互に突き当てられるとともに前記突き出し部を隣り合う他の前記建築部材本体に積層した状態のもとで前記下地面に接着する際に、前記突き出し部に対向させた電磁誘導コイルにより熱可塑性接着剤層を溶融することを特徴とする建築部材。
【請求項2】
請求項1記載の建築部材において、相互に隣り合う前記建築部材本体の側面を直接または目地部材を介して相互に突き当てることを特徴とする建築部材。
【請求項3】
請求項2記載の建築部材において、前記目地部材を熱可塑性樹脂により形成し、前記電磁誘導コイルにより前記目地部材を溶融することを特徴とする建築部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の建築部材において、前記突き出し部の表面に熱可塑性接着剤層を塗布することを特徴とする建築部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の建築部材において、前記下地面に接着された前記建築部材本体を前記下地板から剥離する際に、前記突き出し部に対向させた電磁誘導コイルにより前記建築部材本体の側面に対応する熱可塑性接着剤層を溶融することを特徴とする建築部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の建築部材において、前記導電性シートを前記建築部材本体と同一サイズに形成し、前記導電性シートの一部を前記建築部材本体の側面から突出するように前記建築部材本体にずらして固定し、突出した部分により前記突き出し部を形成することを特徴とする建築部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の建築部材において、前記建築部材本体はほぼ四辺形であり、4つの側面のうち相互に隣り合う2つの側面から前記導電性シートの前記突き出し部を突出することを特徴とする建築部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の建築部材において、前記建築部材本体はほぼ六角形であり、6つの側面のうち相互に隣り合う3つの側面から前記導電性シートの前記突き出し部を突出することを特徴とする建築部材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の建築部材において、それぞれの側面に他の建築部材本体と噛み合う凹凸部を設けることを特徴とする建築部材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の建築部材において、前記建築部材本体をコルクにより形成することを特徴とする建築部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−77641(P2007−77641A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265804(P2005−265804)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(398048110)合資会社ブラウニー (3)
【Fターム(参考)】