説明

建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造

【課題】防止壁に形成された穴に挿通される長尺体が可撓性を有するものであっても、長尺体の曲げ等による防止壁の周縁における隙間の発生を防ぐことができる。
【解決手段】エンジン5と、このエンジン5の上流側に配置される熱交換器6と、この熱交換器6を通過する風の流れを生起させるファン7とを有する油圧ショベルの旋回体1に備えられ、熱交換器6を通過した熱風が再び熱交換器6に吸い込まれるサーキュレーションの発生、及びエンジン5の駆動に伴う騒音の外部への漏れの防止が可能な柔軟性を有する発泡ポリウレタン樹脂から成る防止壁8を有し、この防止壁8が、肉薄部8aと、この肉薄部8aよりも厚さ寸法の大きい肉厚部8bとを含み、この肉厚部8bに配管、配線、あるいはホースから成る長尺体、例えば可撓性を有するホース14が挿通される穴8b1を形成してある。肉薄部8aと肉厚部8bとは、例えば互いに分離させて設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に備えられ、サーキュレーションの発生防止、及び外部への騒音の漏れの防止が可能な防止壁を有する建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。この特許文献1に示される従来技術は、エンジン及びファンが収容されるエンジンルームすなわちエンジン室を備え、このエンジン室のエンジン及びファンの上流側にラジエータ等の熱交換器を配置し、この熱交換器の周囲に、熱交換器を通過した熱風が再び熱交換器に吸い込まれるサーキュレーションの発生を防止可能な柔軟性を有する樹脂、例えば発泡ポリウレタン樹脂等から成る防止壁を備えた構成になっている。熱交換器の上部に配置される防止壁には、長尺体である流入側配管及び流出側配管が挿通される穴が形成されている。
【0003】
上述した従来技術は、防止壁の穴に挿通される長尺体が剛性を有する配管から成っているが、このような長尺体としては他に可撓性を有する油圧ホース、エアホース、ヒータホース、燃料ホース、あるいは電線などがある。このような可撓性を有するホース等が防止壁の穴に挿通される場合の従来のサーキュレーション防止構造について、以下に説明する。
【0004】
図8は従来考えられる建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造の一例を示す要部側面図、図9は図8のC−C断面図、図10は図8のD−D断面拡大図である。
【0005】
例えば図8に示すように、油圧ショベルを構成する旋回体1に備えられる旋回フレーム1aの前側位置には運転室2が配置され、この運転室2の後方位置にはエンジン室3が配置され、旋回体1の後側部分にはカウンタウエイト4が配置されている。図9に示すように、エンジン室3内には、エンジン5及びファン7が収容され、これらの上流側にはラジエータ等の熱交換器6が配置されている。
【0006】
例えば図8に示すように、運転室2とエンジン室3との間に形成され、上部カバー9と、運転室2側に配置される側部カバー10と、エンジン室3側に配置される側部カバー11と、旋回フレーム1aとによって形成される空間部に防止壁30が設けられる。この防止壁30は、図10に示すように、全体が同じ厚さの柔軟性を有する樹脂、例えば発泡ポリウレタン樹脂等によって形成されている。
【0007】
防止壁30は、エンジン室3側の側部カバー11にボルト21を介して固定されたブラケット12に接着保持されている。図8に示すように、この防止壁30の例えば運転室2側の側部カバー10付近の下方位置には、穴30a及びこの穴30aに連通する切込み30bが形成されている。この穴30a内に例えば可撓性を有する長尺体であるホース14が挿通されている。
【0008】
上述の防止壁30によって、熱交換器6を通過した熱風が再び熱交換器6に吸い込まれるサーキュレーションの発生が防止される。なお、防止壁30は、エンジン5及びファン7の駆動に伴う騒音が外部に漏れることも防止している。
【特許文献1】特開2000−352315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に示される従来技術におけるように、防止壁に形成された穴に挿通される長尺体が剛性を有する配管等である場合は、ほとんど問題を生じないが、図8〜図10に示す従来技術におけるように、防止壁30の穴30aに挿通される長尺体が可撓性を有するホース14等である場合には問題を生じる懸念がある。
【0010】
すなわち、防止壁30の厚さがそれ程厚くない場合には、この油圧ショベルで行なわれる各種作業に伴って生じるホース14の曲げ変形、あるいは長さ方向への動きなどによって、防止壁30の穴30a、及びホース14の穴30aへの挿入に際して活用される切込み30bに、ホース14を介して大きな力が伝えられ、この防止壁30の穴30a及び切り込み30b付近の部分に撓み、めくれが生じ、これによって防止壁30の周縁と運転室2側の側部カバー10との間、あるいは防止壁30の周縁と旋回フレーム1aとの間などに隙間を生じ、この隙間から熱交換器6を通過した熱風が漏れてサーキュレーションを生じたり、エンジン5等の駆動に伴う騒音が漏れてしまう懸念がある。
【0011】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、防止壁に形成された穴に挿通される長尺体が可撓性を有するものであっても、長尺体に生じる曲げや動きに伴う防止壁の周縁における隙間の発生を防ぐことができる建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造は、エンジンと、このエンジンの上流側に配置される熱交換器と、この熱交換器を通過する風の流れを生起させるファンとを有する建設機械に備えられ、上記熱交換器を通過した熱風が再び熱交換器に吸い込まれるサーキュレーションの発生防止、及び上記エンジンの駆動に伴う騒音の外部への漏れの防止が可能な柔軟性を有する樹脂から成る防止壁を有し、この防止壁に配管、配線、あるいはホースから成る長尺体が挿通される穴を形成した建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造において、上記防止壁が、肉薄部と、この肉薄部よりも厚さ寸法の大きい肉厚部とを含み、この肉厚部に上記穴を形成したことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、肉厚部の穴に挿入された長尺体が可撓性を有するホース等であって、この建設機械で行なわれる各種作業等に伴って、曲げや動きを生じやすいものであっても、可撓性を有する長尺体の曲げや動きに伴う力の伝達を比較的剛性の高い肉厚部が受け、したがって、この肉厚部の撓み、めくれの発生を抑えることができる。すなわち、防止壁を構成する肉厚部に形成された穴に挿通される長尺体が可撓性を有するものであっても、長尺体に生じる曲げや動きに伴う防止壁の周縁における隙間の発生を防ぐことができ、このような隙間を介してのサーキュレーションの発生を防止でき、また、騒音の外部への漏れを防止することができる。また、防止壁全体を肉厚に形成するのでなく、長尺体が挿通される穴が形成される肉厚部のみを厚くし、他の部分は肉薄部によって構成してあることから、防止壁に係る材料の増加を抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造は、上記発明において、上記肉薄部と上記肉厚部とを互いに分離させて設けたことを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、長尺体が挿入される穴が形成される肉厚部は防止壁の一部を構成するものであることから、比較的小さな形状に製作可能である。このため、肉薄部とは分離される肉厚部の製作に際して、穴寸法の製作精度を高めることが可能となる。これにより、長尺体を肉厚部の穴との間に隙間を生じさせることなく、穴に密着するように挿通させることができる。また、防止壁を所定の部位に取り付けるに際して、防止壁の穴に事前に長尺体を挿通させた状態で防止壁を所定の部位に取り付けようとする場合、本発明では、比較的小さな形状の肉厚部の穴に事前に長尺体を挿通させ、この状態で所定の部位に、長尺体が保持されていない薄肉部と組み合わせるようにして取り付ければよいので、長尺体及び防止壁の取り扱いが比較的容易である。
【0016】
また、本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造は、上記発明において、上記肉薄部を固定するブラケットと、上記肉厚部を固定するブラケットとを設けたことを特徴としている。
【0017】
このように構成した本発明は、両ブラケットによって肉厚部と肉薄部を固定することから安定した防止壁の取り付け構造を実現できる。
【0018】
また、本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造は、上記発明において、上記建設機械が、旋回フレームを有する旋回体と、この旋回体の前側位置に配置される運転室と、この運転室の後方に配置され上記エンジンが収容されるエンジン室とを備え、上記運転室と上記エンジン室との間に形成され、上部カバーと、上記運転室側に配置される側部カバーと、上記エンジン室側に配置される側部カバーと、上記旋回フレームとによって形成される空間部に、上記防止壁を設け、この防止壁が発泡ポリウレタン樹脂から成ることを特徴としている。
【0019】
このように構成した本発明は、熱交換器を通過した熱風の回り込みが生じやすい運転室とエンジン室との間の空間部におけるサーキュレーションの発生防止、及び騒音の防止を実現できる。また、発泡ポリウレタンは比較的入手しやすいことから防止壁の製作が容易となる。
【0020】
また、本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造は、上記発明において、上記肉薄部を固定するブラケットを上記エンジン室側に配置された側部カバーに取り付け、上記肉厚部を固定するブラケットの一端を上記運転室側に配置された側部カバーに取り付け、他端を上記旋回フレームに取り付けたことを特徴としている。
【0021】
このように構成した本発明は、肉薄部を固定するブラケット、及び肉厚部を固定するブラケットをそれぞれ、エンジン室側に配置された側部カバー、あるいは運転室側に配置された側部カバー及び旋回フレームに堅固に取り付けることができる。また、長尺体が挿通される穴が形成された肉厚部を、運転室側に配置された側部カバー及び旋回フレームに接するように配置することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造は、防止壁が、肉薄部と、この肉薄部よりも厚さ寸法の大きい肉厚部とを含み、この肉厚部に配管、配線、あるいはホースから成る長尺体が挿通される穴を形成したことから、長尺体が挿通される穴の部分の剛性を高めることができ、防止壁に形成された穴に挿通される長尺体が可撓性を有するものであっても、長尺体に生じる曲げや動きに伴う防止壁の周縁における隙間の発生を防ぐことができる。したがって、上述のような隙間を介してのサーキュレーションの発生を防止でき、また騒音の外部への漏れを防止することができ、従来に比べて優れたサーキュレーション発生防止性能、及び騒音防止性能を得ることができる。また、防止壁は肉厚部のみを厚くするので、この防止壁に係る材料の増加を抑えることができる。これにより、製作費の増加を最小限に抑えることができ、実用性に富む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下,本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造の第1実施形態を示す要部側面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面拡大図、図4は図1に示す本発明の第1実施形態に備えられる防止壁を示す斜視図、図5は図4に示す防止壁を構成する肉厚部の取り付け状態を示す斜視図である。
【0025】
本発明のサーキュレーション及び騒音防止構造に係る第1実施形態も、例えば前述した図8〜10に示した従来技術と同様に、建設機械例えば油圧ショベルに備えられるものであり、図1に示すように、この油圧ショベルは図示しない走行体上に配置される旋回体1を有している。また、旋回体1には掘削作業等を行なう図示しないフロント作業機が取り付けられる。
【0026】
旋回体1の旋回フレーム1aの前側位置には運転室2が配置され、この運転室2の後方位置にはエンジン室3が配置され、旋回体1の後側部分にはカウンタウエイト4が配置されている。図2に示すように、エンジン室3内には、走行、旋回、フロント作業機の駆動を行なわせる圧油を吐出する図示しない油圧ポンプを駆動するエンジン5、及びこのエンジン5の駆動に伴って回転駆動されるファン7が収容され、これらのエンジン5及びファン7の上流側にはラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器6が配置されている。
【0027】
例えば図1に示すように、運転室2とエンジン室3との間に形成され、上部カバー9と、運転室2側に配置される側部カバー10と、エンジン室3側に配置される側部カバー11と、旋回フレーム1aとによって囲まれる空間部に、この第1実施形態の要部を構成する防止壁8を配置してある。この防止壁8は、熱交換器6を通過した熱風が回り込んで再び熱交換器6に吸い込まれるサーキュレーションの発生防止、及びエンジン5、ファン7の駆動に伴う騒音の外部への漏れの防止が可能な柔軟性を有する樹脂、例えば発泡ポリウレタン樹脂から成っている。
【0028】
この第1実施形態は、図4に示すように、防止壁8が、肉薄部8aと、この肉薄部8aよりも厚さ寸法の大きい肉厚部8bとを含み、肉厚部8aに、油圧ホース、エアーホース、ヒータホース、燃料ホース、あるいは電線等の可撓性を有する長尺体、及び可撓性を有さず剛性の高い配管等から成る長尺体のそれぞれが挿通可能な穴8b1と、この穴8b1に連通し長尺体の穴8b1への挿入時に活用される切り込み8b2とを設けてある。この第1実施形態では、可撓性を有する長尺体、例えばホース14を肉厚部8bの穴8b1に挿通させるように配置してある。
【0029】
図3〜5に示すように、防止壁8を構成する上述した肉薄部8aと肉厚部8bとは、互いに個別に製作され、分離したものを組み合わせて設けてある。また、図1,2に示すように、肉薄部8aが接着固定されるブラケット12と、図3,5等に示すように、肉厚部8bが接着固定されるブラケット13とを設けてある。肉薄部8aと接着するブラケット12の部分は、肉薄部8aの側面に応じた平板状に形成され、肉厚部8bと接触するブラケット13の部分は、肉厚部8bに形成した湾曲面に応じた曲面状に形成されている。また、薄肉部8aの下方部分には、肉厚部8bを接着したブラケット13が挿入可能な切り欠き部8a1を形成してある。
【0030】
肉厚部8aが固定されるブラケット12は、図2に示すように、エンジン室3側に配置された側部カバー11にボルト21によって固定されている。肉厚部8bが固定されるブラケット13は、図1,5に示すように、一端が運転室2側に配置された側部カバー10にボルト15によって取り付けられ、他端が旋回フレーム1aにボルト16によって取り付けられている。
【0031】
このように構成した第1実施形態は、薄肉部8aの切り欠き部8a1に、穴8b1にホース14が挿通されるとともにブラケット13に接着された肉厚部8bが嵌め込まれて成る防止壁8が、運転室2とエンジン室3との間に形成される空間部、すなわち、上部カバー9、側部カバー10,11、及び旋回フレーム1aで囲まれる空間部に嵌め込まれるようにして配置された状態では、熱交換器6を通過した熱風が再び熱交換器6に回り込むサーキュレーションの発生を防止でき、また、エンジン室3のエンジン5及びファン7の駆動に伴う騒音の外部への漏れを防止することができる。
【0032】
また、肉厚部8bの穴8b1に挿入されたホース14が可撓性を有するものであり、この油圧ショベルで行なわれる各種作業等に伴って、曲げや動きを生じた際には、これらの曲げや動きに伴う力の伝達を比較的剛性の高い肉厚部8bで受けさせることができる。これにより、ホース14の曲げや動きに伴う肉厚部8bの撓み、めくれの発生を抑えることができる。すなわち、防止壁8を構成する肉厚部8bに形成された穴8b1に挿通される長尺体が、可撓性を有するホース14であっても、このホース14に生じる曲げや動きに伴う防止壁8の周縁における隙間の発生、特に運端室2側に配置される側部カバー10と、この側部カバー10に対向する肉厚部8bの側面との間における隙間の発生、及び旋回フレーム1aと、この旋回フレーム1aに対向する肉厚部8の下面との間における隙間の発生を防ぐことができ、このような隙間を介してのサーキュレーションの発生を防止でき、また、騒音の外部への漏れを防止することができる。これにより、優れたサーキュレーション発生防止性能、及び騒音防止性能が得られる。
【0033】
また、防止壁8を構成する肉厚部8aと肉薄部8bとを互いに分離させて設けてあることから、すなわち、ホース14が挿入される穴8b1が形成される肉厚部8bは防止壁8の一部を構成するものであることから、比較的小さな形状に形成することができる。このため、肉薄部8aとは分離される肉厚部8bの製作に際し、穴8b1の寸法の精度を高めることが可能となる。これにより、ホース14と肉厚部8bの穴8b1との間に隙間を生じることなく、ホース14を穴8b1に密着するように挿通させることができ、サーキュレーションの発生防止性能、及び騒音防止性能の向上に貢献する。また、防止壁8を運転室2とエンジン室3との間に形成される空間部に取り付けるに際しては、比較的小さな形状の肉厚部8bの穴8b1に事前にホース14を挿通させ、このようにホース14を保持する肉厚部8bを上述した空間部において、ホース14を保持していない肉薄部8aの切り欠き部8a1に嵌め込めばよいので、肉薄部8a、及びホース14を保持する肉厚部8bの取り扱いが容易である。これにより、防止壁8の取り付け作業の能率を向上させることができる。
【0034】
また、ブラケット12,13によって、防止壁8を構成する肉薄部8aと肉厚部8bを接着固定、すなわち静止保持させたことから、安定した防止壁8の取り付け構造を実現でき、信頼性の高いサーキュレーション及び騒音防止構造を実現させることができる。
【0035】
また、上述のように運端室2とエンジン室3との間に形成される空間部に防止壁8を配置してあり、この運転室2とエンジン室3との間の空間部は熱交換器6を通過した熱風の回り込みを生じやすいことから、この部位におけるサーキュレーションの発生防止、及び騒音防止にきわめて有効である。また、防止壁8の肉薄部8a、肉厚部8bの材料が発泡ポリウレタン樹脂より成り、このような発泡ポリウレタン樹脂は比較的入手しやすいことから、防止壁8の製作が容易である。これらのことから、この第1実施形態は実用性に富む。
【0036】
また、肉薄部8aを固定するブラケット12をボルト21によってエンジン室3側に配置された側部カバー11に、あるいは肉厚部8bを固定するブラケット13をボルト16,17によって運転室2側に配置された側部カバー10、旋回フレーム1aに、それぞれ堅固に取り付けることができる。これにより安定した防止壁8の取り付け構造の実現に貢献する。また、ホース14が挿通される穴8b1が形成された肉厚部8bを、運転室2側に配置された側部カバー10及び旋回フレーム1aに接するように配置させてあり、これによって運転室2側の下方の位置においてホース14を肉厚部8bの穴8b1に挿通するように配置させることができる。
【0037】
図6は本発明の第2実施形態の要部を構成する防止壁を示す斜視図、図7は図6に示す防止壁を構成する肉厚部の取り付け状態を示す斜視図である。
【0038】
これらの図6,7に要部を示す第2実施形態に備えられる防止壁17は、薄肉部17aと、ホース14が挿通される穴17b1を有する肉厚部17bとを一体に設けた構成にしてある。肉厚部17bには、穴17b1に連通するホース14の挿入に際して活用される切り込み17b2を形成してある。肉厚部17bは肉薄部17aに対して突出した状態となる。この肉厚部17bがブラケット18に接着固定され、このブラケット18の一端はボルト19によって運転室2側の側部カバー10に取り付けられ、他端はボルト20によって旋回フレーム1aに取り付けられる。その他の構成は前述した第1実施形態と同等である。
【0039】
このように構成した第2実施形態も、防止壁17の一部を構成する肉厚部17bの穴17b1に可撓性を有するホース14を挿通させてあるが、防止壁17が肉厚部17bを備えているので、前述した第1実施形態と同様に、ホース14の曲げや動きに伴う肉厚部8bの撓み、めくれの発生を抑えることができ、この点において第1実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0040】
なお、上記各実施形態は、運転室2側の側部カバー10及び旋回フレーム1aに接触するように防止壁8,17の肉厚部8a,17aを配置してあるが、これらの肉厚部8a,17aをエンジン室3側の側部カバー11及び旋回フレーム1aに接触するように設けてもよく、また、運転室2側の側部カバー10及び上部カバー9に接触するように設けてもよく、また、運転室2側の側部カバー10の高さ方向の中間部分に接触するように設けた構成にしてもよい。
【0041】
なお、肉厚部8b,17bの穴8b1,17b1に挿通される長尺体として、上述した可撓性を有するホース14に代えて、剛性を有する配管等を挿通させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造の第1実施形態を示す要部側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面拡大図である。
【図4】図1に示す本発明の第1実施形態に備えられる防止壁を示す斜視図である。
【図5】図4に示す防止壁を構成する肉厚部の取り付け状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態の要部を構成する防止壁を示す斜視図である。
【図7】図6に示す防止壁を構成する肉厚部の取り付け状態を示す斜視図である。
【図8】従来考えられる建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造の一例を示す要部側面図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】図8のD−D断面拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
1 旋回体
1a 旋回フレーム
2 運転室
3 エンジン室
4 カウンタウエイト
5 エンジン
6 熱交換器
7 ファン
8 防止壁
8a 肉薄部
8a1 切り欠き部
8b 肉厚部
8b1 穴
8b2 切り込み
9 上部カバー
10 側部カバー
11 側部カバー
12 ブラケット
13 ブラケット
14 ホース(長尺体)
15 ボルト
16 ボルト
17 防止壁
17a 肉薄部
17b 肉厚部
17b1 穴
17b2 切り込み
18 ブラケット
19 ボルト
20 ボルト
21 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンの上流側に配置される熱交換器と、この熱交換器を通過する風の流れを生起させるファンとを有する建設機械に備えられ、
上記熱交換器を通過した熱風が再び熱交換器に吸い込まれるサーキュレーションの発生防止、及び上記エンジンの駆動に伴う騒音の外部への漏れの防止が可能な柔軟性を有する樹脂から成る防止壁を有し、この防止壁に配管、配線、あるいはホースから成る長尺体が挿通される穴を形成した建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造において、
上記防止壁が、肉薄部と、この肉薄部よりも厚さ寸法の大きい肉厚部とを含み、この肉厚部に上記穴を形成したことを特徴とする建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造において、
上記肉薄部と上記肉厚部とを互いに分離させて設けたことを特徴とする建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造において、
上記肉薄部を固定するブラケットと、上記肉厚部を固定するブラケットとを設けたことを特徴とする建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造において、
上記建設機械が、旋回フレームを有する旋回体と、この旋回体の前側位置に配置される運転室と、この運転室の後方に配置され上記エンジンが収容されるエンジン室とを備え、 上記運転室と上記エンジン室との間に形成され、上部カバーと、上記運転室側に配置される側部カバーと、上記エンジン室側に配置される側部カバーと、上記旋回フレームとによって形成される空間部に、上記防止壁を設け、
この防止壁が発泡ポリウレタン樹脂から成ることを特徴とする建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造において、
上記肉薄部を固定するブラケットを上記エンジン室側に配置された側部カバーに取り付け、
上記肉厚部を固定するブラケットの一端を上記運転室側に配置された側部カバーに取り付け、他端を上記旋回フレームに取り付けたことを特徴とする建設機械のサーキュレーション及び騒音防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−31714(P2010−31714A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193472(P2008−193472)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】