説明

建設機械のパイロット油圧源

【課題】 パイロット油圧源は油圧ポンプの吐出油を直接利用しており、減圧弁によってパイロット圧にまで減圧しているために油圧エネルギーを無駄に消費しているというという課題があった。
【構成】 油圧ポンプのセンタ油路に1又は複数の制御弁とネガコン用絞りと油タンクを設けた建設機械の油圧回路において、前記ネガコン用絞りの上流から分岐油路を設け、該分岐油路にリリーフ弁を接続すると共に、該分岐油路にロードホールドチェック弁とアキュムレータを接続し、該アキュムレータに蓄積された圧油をリモコン弁等のパイロット油圧源としたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は建設機械のパイロット回路を有する油圧回路に関するものである。更に詳細には、パイロット用油圧ポンプを使用しないパイロット油圧源の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械の油圧回路においては、メインポンプにカップリングを介して駆動軸同士が連結された低圧かつ小容量のパイロットポンプより吐出されたパイロット圧油を油圧リモコン弁に供給し、制御弁のパイロットポートに供給されるパイロット圧油で、操作レバーなどの操作量に応じた制御弁の制御が行われていた。しかし、このような従来の油圧回路では、オペレータが休んでいる間も、エンジンが回転している状態ではパイロットポンプがパイロット圧油を吐出し続け、パイロットリリーフ弁の設定圧力を超えた圧油を油タンクにブリードするので、無駄なエネルギーを浪費するという問題があった。また、小容量ではあるが比較的コストの高いパイロットポンプを設置するコストも発生していた。
【0003】
このような問題を解決するためにパイロット用油圧ポンプを不要とする油圧回路が提案されている。この種の油圧回路としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【特許文献1】特開2001−20903、流体回路
【0004】
図3はこの油圧回路を示した図である。以下これについて簡単に説明する。図3において、エンジン51にメイン油圧ポンプ52が連結されている。メイン油圧ポンプ52のセンタ油路53にはリリーフ弁54などが接続され、更に制御弁55が接続されている。制御弁55のパイロットポートには操作弁56が接続され、制御弁55の出力側に油圧シリンダ57が接続されている。センタ油路53に分岐油路58を設け、分岐油路58からパイロット圧油を得る圧油源としている。この回路では、先ず、分岐油路58を減圧弁60の入口に接続している。
【0005】
減圧弁60の本体61の下半部にはスプール嵌合穴63が設けられ、嵌合穴63にスプール64が摺動自在に嵌合されている。嵌合穴63の上部には圧油の入口部65が設けられ、下部には出口穴66が設けられている。出口穴66の下方底部には平穴67が設けられ、縦穴68を介して出口穴と連通している。更にスプール64の上側にスプリング室70が設けられ、平穴67とスプリング室70を連通させる細穴69がスプール64の内部に設けられている。スプリング室70にはスプール64を下方向きに付勢するスプリング71が装着されている。スプリング室70の上壁にはドレン室72に通じるドレン孔73が設けられている。ドレン室72の上方に調節ネジ74が螺号して設けられている。ドレン室72の底部にはドレン孔73が設けられ、ドレン孔73を開閉自在にするポペット75が付勢バネ76により下向きに(閉じる向きに)付勢されて設けられている。ポペット75のドレン孔73を閉じる付勢力は調節ネジ74により調節可能になっている。
【0006】
嵌合穴63と出口穴66に連通する油路80との間にスプール64により絞り部81が形成されるように構成されている。油路80の下流にはロードホールドチェック弁85が設けられている。ロードホールドチェック弁85は、油路80と油路86との間を開閉するポペット87と、ポペット87と調節用ネジ89との間に設けられ、ポペット87を付勢するバネ90とから構成されている。また油路87にはパイロット油圧を平滑するためのアキュムレータ91が設けられると共に操作弁56等にパイロット圧油を供給する分岐油路92が設けられている。
【0007】
この従来装置は以上のように構成され、以下の様に機能する。即ち油圧ポンプ52からの高圧の圧油が嵌合穴63に供給され、この圧油は縦穴68,底部の平穴67,細穴69を通ってスプリング室70に誘導される。スプリング室70内の圧油が一杯になり、油圧が上昇するとドレン孔73を通って油タンクTに流出しようとする。このときドレン孔73はポペット75に塞がれ、付勢バネ76によって付勢されている。従って、ドレン孔73から圧油が流出している状態では出口穴66の油圧又は底部の平穴67の油圧はスプリング室70の油圧より高くなる。底部の平穴67の油圧力がスプリング71のバネ力及びスプリング室70の油圧力の合力よりも大きくなるとスプール64が上方に変位し、絞り部81は絞られた状態になる。このため、嵌合穴63から油路80に流れる油圧は減圧された状態になる。
【0008】
減圧弁60により減圧された圧油は油路80の右端に設けられているポペット87を押して、この力が付勢バネ90の力より大きくなるとポペット87が右方に変位し、油路80の圧油は油路86に流出する。油路86に流入した圧油はアキュムレータ91によって油圧が平滑にされると共に、この平滑にされた圧油は油路92を通って操作弁56等に流れ、操作弁56の操作量に応じて制御弁55のパイロットポートに流れ、制御弁55の操作が行われる。従って、油路92のパイロット圧油は減圧弁70によって減圧され、かつ、ロードホールドチェック弁85によるチェック圧よりも高い油圧となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した従来発明はパイロット油圧ポンプの設置を不要にしている。しかし、パイロット油圧源の圧油を油圧ポンプの吐出油を直接利用しており、減圧弁によってパイロット圧にまで減圧しているために油圧エネルギーを無駄に消費しているというという問題がある。また、減圧弁も高圧な圧油を対象とするために材料費も高くなり、加工費も高くなり、コスト高になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するための手段として以下の構成を採用している。即ち、
請求項1に記載の発明は、油圧ポンプのセンタ油路に1又は複数の制御弁とネガコン用絞りと油タンクを設けた建設機械の油圧回路において、前記ネガコン用絞りの上流から分岐油路を設け、該分岐油路にリリーフ弁を接続すると共に、該分岐油路にロードホールドチェック弁とアキュムレータを接続し、該アキュムレータに蓄積された圧油をリモコン弁等のパイロット油圧源としたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、2個の油圧ポンプを具備し、前記各油圧ポンプのセンタ油路に1又は複数の制御弁とネガコン用絞りと油タンクを設けた建設機械の油圧回路において、前記各ネガコン絞りの上流から第2分岐油路を設けて合流させ、該合流油路にリリーフ弁を接続すると共に、該合流油路にロードホールドチェック弁とアキュムレータを接続し、該アキュムレータに蓄積された圧油をリモコン弁等のパイロット油圧源としたことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記油圧回路におけるブームシリンダ又はアームシリンダの操作時に、前記ブームシリンダ又はアームシリンダの保持側の圧油を前記分岐油路又は前記合流油路に合流させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は油タンクに戻す帰還油を利用しているために無駄なエネルギー消費が少なくなり、エネルギー効率が改良されるという効果が得られる。また、パイロットポンプが不要になり、エンジンの燃費の改良という効果が得られる。また、シリンダの保持圧力を合流させた場合は操作レバーの操作中でネガコン圧が低いときにもパイロット圧油が得られるのでアキュムレータの大型化は必要でなくなるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図2は、本発明を実施した建設機械の油圧回路例を示し、図1は本発明を実施した構成例を示す。図2において、油圧ポンプ11、12は吐出量可変の油圧ポンプで、エンジン10の出力軸に連結されている。油圧ポンプ11のセンタ油路13,油圧ポンプ12のセンタ油路14には各々複数(4個)の制御弁(13a〜13d)、(14a〜14d)がカスケード接続され、最下流端にネガコン絞り15、16が設けられ、ネガコン絞り15,16の下流の油路15a、16aは合流し、合流路17にはチェック弁18が挿入され、油タンクTに接続されている。また、合流路17にはチェック弁18と並列なバイパス回路19が設けられ、バイパス回路19に冷却器20が挿入されている。チェック弁18を設けたことにより合流油路17及びネガコン絞り15,16の下流の油路15a、16aの油圧は何れも油タンク圧より大きい油圧となっている。なお、チェック弁18は前後の差圧が調節できるものを使用する事が望ましい。又、チェック弁18の代わりにポペット弁を使用してもよい。
【0015】
前記したネガコン絞り15,16の上流側から分岐油路を設けてこの油路を記号(21)及び(22)で表す。図1において、分岐油路21及び22を合流させた合流油路24にリリーフ弁25設けて、合流油路24の油圧が所定の油圧以上にならないようにする。更に、合流油路24の下流にチェック弁26を設ける。チェック弁26はロードホールドチェック弁26とするのが望ましい。即ち、パイロット圧油として利用できる一定の油圧以上の圧油のみを下流の油路27に流すのが望ましい。油路27にはアキュムレータ28が接続されており、油圧の変動分を吸収して油圧を平滑している。平滑された圧油はリモコン弁29に操作圧油として供給される。
【0016】
以上の実施形態ではパイロット油圧源の圧油として絞り弁15,16の上流側から分岐した圧油のみを利用している。しかし、この圧油だけではパイロット圧油として十分な油圧が得られないときは、図1の点線で示したように、ブームシリンダやアームシリンダの保持圧力をパイロット油圧の油圧源として合流させてもよい。即ち、図1に示すように、制御弁31の出力側に接続されたブームシリンダ30の操作時にヘッド側30a(保持側)の油圧を合流させて油路25の油圧を増大するようにしてパイロット油圧源として構成してもよい。なお、操作時のヘッド側30aの油圧を合流させるために、ヘッド側30aの油路と合流用チェック弁との間に切換弁32を挿入し、リモコン弁29bの左右のパイロット油路にシャトル弁33を介してパイロット圧を求め、該パイロット圧を切換弁32の操作ポートに接続する。
【0017】
以上に説明したように、本実施形態によれば、パイロット油圧ポンプを設ける必要もなく、更に、油圧回路の油タンクに戻す廃油を利用しているので油圧エネルギーを有効に利用でき、その結果燃費が良くなり、大きな省エネ効果が期待できる。また、シリンダの保持圧力を合流させた場合は、操作レバーの使用中で、ネガコン圧が低いときにも必要なパイロット圧油を供給できるので、アキュムレータ28を大型にする必要がなくなるという効果が期待できる。
【0018】
以上本発明の実施形態を図面に基づいて詳述してきたが、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実施した回路図を示す。
【図2】本発明を実施する建設機械の油圧回路図の例を示す。
【図3】従来装置の回路図を示す。
【符号の説明】
【0020】
11、12 油圧ポンプ
15、16 ネガコン絞り
21、22 パイロット油圧源用の圧油供油路
25 リリーフ弁
26 チェック弁
28 アキュムレータ
30 ブームシリンダ
31 制御弁
32 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプのセンタ油路に1又は複数の制御弁とネガコン用絞りと油タンクを設けた建設機械の油圧回路において、前記ネガコン用絞りの上流から分岐油路を設け、該分岐油路にリリーフ弁を接続すると共に、該分岐油路にロードホールドチェック弁とアキュムレータを接続し、該アキュムレータに蓄積された圧油をリモコン弁等のパイロット油圧源としたことを特徴とする建設機械のパイロット油圧源
【請求項2】
2個の油圧ポンプを具備し、前記各油圧ポンプのセンタ油路に1又は複数の制御弁とネガコン用絞りと油タンクを設けた建設機械の油圧回路において、前記各ネガコン絞りの上流から第2分岐油路を設けて合流させ、該合流油路にリリーフ弁を接続すると共に、該合流油路にロードホールドチェック弁とアキュムレータを接続し、該アキュムレータに蓄積された圧油をリモコン弁等のパイロット油圧源としたことを特徴とする建設機械のパイロット油圧源
【請求項3】
前記油圧回路におけるブームシリンダ又はアームシリンダの操作時に、前記ブームシリンダ又はアームシリンダの保持側の圧油を前記分岐油路又は前記合流油路に合流させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建設機械のパイロット油圧源。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−96289(P2010−96289A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268236(P2008−268236)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】