説明

建設機械の開閉カバー装置

【課題】簡単な構造で部品点数を増加させることなく、エンジンフードの開閉操作力を軽減させる。
【解決手段】エンジン19及びマフラー20等の排気系機器が収納されたエンジンルーム18の上面開口部をエンジンフード21により開閉可能に施蓋すると共に、エンジンフード21の下面側に排気系機器を保護するカバー体22を設けて成る建設機械の開閉カバー装置であって、エンジンフード21とカバー体22とは互いに独立に上下回動可能に設けられ、且つ、エンジンフード21とカバー体22とはリンク機構26を介して連結されていることにより、該エンジンフード21の開閉操作力が軽減するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の開閉カバー装置に関するものであり、特に、エンジンフードの開閉操作力を軽減させることができる建設機械の開閉カバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種建設機械の機体(上部旋回体)には、エンジン及びマフラー(排気系機器)等のエンジン関連機器を収納するエンジンルームが設けられている。又、該エンジンルーム上面に形成された保守点検用の開口部は、エンジンフードにより開閉可能に施蓋されている。
【0003】
例えば、図5乃至図7に示すように、エンジンルーム1内にはエンジン2、マフラー3等の装置機器が収納されている。そして、エンジンルーム1の上面開口部には縦断面L字状のエンジンフード4が蝶着部材6を介して開閉可能に取り付けられている。又、該エンジンフード4の下側には、マフラー3等の排気系機器を被蔽するための保護用のカバー体5が設けられ、該カバー体5の上端部はエンジンフード4下面に一体に固定されている。而して、図7に例示すように、エンジンフード4を開放操作又は閉鎖操作すると、これと共にカバー体5も一体に回動して開放又は閉鎖される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3652076号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記エンジンルームの上面開口部は、エンジン等の保守点検の作業性を確保すべく大きく形成する必要がある。依って、エンジンフードの形状寸法は、エンジンルームの上面開口部の大きさに応じて大型化している。しかも、エンジンフードの内側には上記カバー体が一体に固設されているために、エンジンフード全体の重量はカバー体の分だけ更に重くなる。その結果、エンジンフードを開閉操作する際に、エンジンフードの開閉操作力が増大して、作業者に大きな負担が強いられるという問題があった。
【0005】
上記エンジンフードの開閉操作力を軽減させるためには、エンジンフード下面の複数箇所にトーションバー等の付勢手段を設けてエンジンフードを弾性的に支持することが考えられる。しかし、この場合は、エンジンフード下面に広い設置スペースを確保する必要があり、加えて、部品点数が増加して構造が複雑になるという問題が生じる。
【0006】
そこで、簡単な構造で部品点数を増加させることなく、エンジンフードの開閉操作力を軽減させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、エンジン及びマフラー等の排気系機器が収納されたエンジンルームの上面開口部をエンジンフードにより開閉可能に施蓋すると共に、該エンジンフードの下面側に前記排気系機器を保護するカバー体を設けて成る建設機械の開閉カバー装置において、前記エンジンフードとカバー体とは互いに独立に上下回動可能に設けられ、且つ、該エンジンフードとカバー体とはリンク機構を介して連結され、該エンジンフードの開放動作と前記カバー体の開放動作を連動して行えるように構成した建設機械の開閉カバー装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、エンジンフードとカバー体とは互いに独立に上下回動可能、且つ、リンク機構を介して連結されているので、エンジンフードとカバー体の開放操作時には双方が連動して動くことになる。
【0009】
請求項2記載の発明は、上記リンク機構は上記カバー体を支持する支持機構を兼用することを特徴とする請求項1記載の建設機械の開閉カバー装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、エンジンフードとカバー体との間に介設したリンク機構は、該エンジンフードに対してカバー体を支持する支持機構の役目を果たすので、カバー体の支持機構を別途設ける必要がない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、エンジンフードを持ち上げると、エンジンフードの開放動作に連動してカバー体が開放動作するので、該エンジンフードとカバー体とが一体構造の従来例の様に、カバー体の重量がそのまま重量としてエンジンフードに付加される事がなく開閉操作力の軽減となり、作業者の負担を大幅に減少させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、カバー体の支持機構を別途設ける必要がないので、請求項1記載の発明の効果に加えて、付勢手段を新たに付設する方式に比べて、部品点数が減少して構成が簡素化するメリットを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、簡単な構造で部品点数を増加させることなく、エンジンフードの開閉操作力を軽減させるという目的を達成するため、エンジン及びマフラー等の排気系機器が収納されたエンジンルームの上面開口部をエンジンフードにより開閉可能に施蓋すると共に、該エンジンフードの下面側に前記排気系機器を保護するカバー体を設けて成る建設機械の開閉カバー装置において、前記エンジンフードとカバー体とは互いに独立に上下回動可能に設けられ、且つ、該エンジンフードとカバー体とはリンク機構を介して連結され、該エンジンフードの開放動作と前記カバー体の開放動作を連動して行えるように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図4に従って説明する。図1は、本実施例に係る建設機械としての油圧ショベルを示す側面図、図2は油圧ショベルに搭載された開閉カバー装置の閉鎖状態を示す断面図、図3は開閉カバー装置のリンク機構を示す要部拡大図、図4は開閉カバー装置の開放状態を示す断面図である。
【0015】
図1において、油圧ショベル11の下部走行体12上には上部旋回体13が旋回可能に搭載され、上部旋回体13の前方一側部にはキャブ14が設けられている。又、上部旋回体13の前方中央部にはブーム15が俯仰自在に連結され、更に、ブーム15の先端部にはアーム16が上下回動可能に枢着されていると共に、アーム16の先端部にはバケット17が揺動可能に取り付けられている。
【0016】
又、キャブ14の後方には、保守点検用の上面開口部を有するエンジンルーム18が設けられ、エンジンルーム18内にはエンジン19及びマフラー(排気系機器)20等の装置機器が収納されている。該エンジンルーム18の上面開口部はエンジンフード21により開閉可能に施蓋されている。又、エンジンフード21の下面側(内面側)には、マフラー20等の装置機器を被蔽する保護用のカバー体22が設けられている。
【0017】
エンジンフード21は縦断面L字状に形成され、該エンジンフード21の水平面部左端部は、水平回動軸23に上下回動可能に取り付けられている。同様に、エンジンフード21下側に配置したカバー体22も縦断面L字状に形成され、該カバー体22の水平面部左端部は水平回動軸24に上下回動可能に取り付けられている。尚、水平回動軸23,24はエンジンルーム18内の上面開口部近傍に設けられている。
【0018】
カバー体22側の水平回動軸24は、エンジンフード21側の水平回動軸23の下方近傍(図2における右下側近傍)に配置され、且つ、該水平回動軸23と平行になるように設けられている。更に、カバー体22の水平面部は、エンジンフード21の水平面部と略平行に配置されている。
【0019】
前記エンジンフード21とカバー体22とはリンク機構Lを介して連結されている。即ち、エンジンフード21の水平面部下面における略中央部には、図3に例示するように、ブラケット25が固設されているとともに、該ブラケット25にはリンク26の上端部が連結ピン27を介して上下回動可能に枢着されている。
【0020】
上記同様に、カバー体22の水平面部上面における略中央部にはブラケット28が固設され、該ブラケット28にはリンク26の上端部が連結ピン30を介して上下回動可能に枢着されている。
【0021】
依って、エンジンフード21及びカバー体22は、それぞれ水平回動軸23,24の回りに独立に上下回動するように連結されている。依って、エンジンフード21の開放動作と前記カバー体22の開放動作とを互いに独立に行えるので、エンジンフード21の開閉とカバー体22の開閉はリンク26にて連動させて操作させることができる。
【0022】
次に、本実施例に係る開閉カバー装置の開閉操作について説明する。エンジンフード21及びカバー体22を開放操作する際、該エンジンフード21及びカバー体22は、リンク26を介して枢着連結されているので、エンジンフード21の開放動作に連動して前記カバー体22が開放動作する。
【0023】
いま、エンジンフード21が閉鎖している図2の状態から、該エンジンフード21を持ち上げて開放操作すると、エンジンフード21は水平回動軸23を中心として上方回動して開放動作する。
【0024】
そして、エンジンフード21の開放動作に連動して、カバー体22が水平回動軸24を中心として上方回動して開放動作する。図4は、エンジンフード21及びカバー体22が開放された状態を示す。
【0025】
以上の如く本発明によると、エンジンフード21及びカバー体22は、リンク26を介して枢着連結され、且つ、水平回動軸23,24の回りに夫々上下回動可能に取り付けられているので、エンジンフード21の開放動作に連動して前記カバー体22が開放動作する。
【0026】
斯くして、エンジンフード21及びカバー体22を開放操作する場合は、エンジンフード21のみを持ち上げて開放操作することにより、従来例に比べてカバー体22の重量相当分が全部付加されることはなく、エンジンフード21の持ち上げ力(開放操作力)が軽減するため、作業者の労力が大幅に軽くなる。
【0027】
更に、エンジンフード21を持ち上げたとき、マフラー20はカバー体22で覆われているので、作業者はマフラー20の高温部に触れて火傷する恐れがなく、安全に作業を行うことができる。
【0028】
又、リンク26は、エンジンフード21に対してカバー体22を支持するステー部材(支持機構)の役目を兼用している。依って、リンク26は、既存のステー部材を用いて製作できる。斯くして、部品点数を増加させることなく製作コストを削減できると共に、構造が簡素化して広い設置スペースを必要としない。
【0029】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例を示し、建設機械としての油圧ショベルを示す側面図。
【図2】本発明に係る開閉カバー装置の閉鎖状態を示す断面図。
【図3】本発明に係る開閉カバー装置のリンク機構を示す詳細図。
【図4】本発明に係る開閉カバー装置の開放状態を示す断面図。
【図5】従来例を示し、エンジンルームに設置した開閉カバー装置の後面図。
【図6】図5の開閉カバー装置の閉鎖時における拡大側面図。
【図7】図5の開閉カバー装置の開放時における拡大側面図。
【符号の説明】
【0031】
11 油圧ショベル(建設機械)
13 上部旋回体
18 エンジンルーム
19 エンジン
20 マフラー(排気系機器)
21 エンジンフード
22 カバー体
23 水平回動軸
24 水平回動軸
26 リンク(リンク機構L)
27 連結ピン
30 連結ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及びマフラー等の排気系機器が収納されたエンジンルームの上面開口部をエンジンフードにより開閉可能に施蓋すると共に、該エンジンフードの下面側に前記排気系機器を保護するカバー体を設けて成る建設機械の開閉カバー装置において、
前記エンジンフードとカバー体とは互いに独立に上下回動可能に設けられ、且つ、該エンジンフードとカバー体とはリンク機構を介して連結され、該エンジンフードの開放動作と前記カバー体の開放動作を連動して行えるように構成したことを特徴とする建設機械の開閉カバー装置。
【請求項2】
上記リンク機構は上記カバー体を支持する支持機構を兼用することを特徴とする請求項1記載の建設機械の開閉カバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−156148(P2010−156148A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334952(P2008−334952)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】