説明

建設機械運転室の水抜き構造

【課題】建設機械のキャブのドアを開放状態に保持すべく、キャブサイドに設けたロック機構用のロック穴からの雨水の浸入を防止し、かつアウタパネルとサイドパネルインナ間に浸入した雨水も室内に至らず排出する建設機械運転室の水抜き構造の提供。
【解決手段】サイドパネルインナ12に取付けたドアキャッチ13の、室外側を器状パネル14で、室内側を防水器状パネル15で各々覆い、両パネル間を水抜き穴16で連通し、器状パネル14をアウタパネルの内側に設けた水抜き溝18に連通して水を下方に排出するよう構成した。雨中の作業、洗車等によって、ロック穴17aよりロック機構部材のドアキャッチ13を経て浸入せんとする雨水は防水器状パネル15でその浸入を阻止され、仮に防水器状パネル15内に入った雨水は、水抜き穴16から器状パネル内14を経て水抜き溝18に導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殊に建設機械に適した同運転室の水抜き構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転室(キャブ)を備えた建設機械では、視界のより広い確保と運転室内換気のためドアを開放し、これを仮に固定した状態で作業を行うことがあるが、このドア開放状態を維持するためキャブ側面にロック機構を設けることがあり、具体的にはこのロック機構は、アウタパネルとサイドパネルインナ(インナパネル)間に設置され、アウタパネル側にはストライカがフックと噛み合うための穴(これをロック用穴という)が形成されている。
【0003】
従来から建設機械の作業は降雨でも行われわれることがあり、また、洗車によって前記ロック穴に雨がかかってキャブ内に雨水が浸入し、室内環境を悪化させることがあった。
【0004】
上記の対策としては(1)キャブのアウタパネルに水抜き穴を形成する、(2)樹脂カバーを前記ロック機構に設けて該ロック機構に浸入した水を運転室側面に排出する、或いは(3)ロック機構に面してアウタパネルに開けた穴に水の浸入を防ぐ防水カバーを設けていた。
【0005】
しかし、前記(1)、(2)は水が流れ落ちる部位に水垢などが付着し易く外観品質を損なう恐れがあり、前記(3)は一旦何らかの原因で水が入ってしまうと、水を完全に運転室外へ排出することができず、室内へ浸入する可能性が高かった。
【0006】
自動車車室内の水抜き構造として、サイドドアの下側に位置し、車両の前後方向に延設されたサイドシルの下壁部に複数の水抜き穴をあけたものが下記文献1に記載されているが、これは将に前記(1)に類似したもので、従って水が流れ落ちる部位、水抜き穴に水垢などが付着し易く外観品質を損なう恐れがある。
【特許文献1】特開2003−205867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明が解決しようとする課題は、建設機械の運転室における、ドアを開放状態に保持するためのドアロック機構のロック穴からの雨水の浸入を防止し、かつ万一キャブのアウタパネルとサイドハネルインナ間に浸入した雨水も室内に至らず効率よく排出し得る建設機械運転室の水抜き構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、サイドパネルインナに取付けたドアキャッチの室外側を補強を兼ねる器状パネルで、また室内側を防水器状パネルで各々覆い、両器状パネル間を水抜き穴で連通せしめるとともに、上記補強を兼ねる器状パネルをアウタパネルの内側に設けた水抜き溝に連通して浸入した水をキャブ下方に排出するよう構成したことを特徴とする建設機械運転室の水抜き構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建設機械運転室の水抜き構造では、サイドパネルインナに取付けたドアキャッチの室外側を補強を兼ねる器状パネルで、また室内側を防水器状パネルで各々覆い、両器状パネル間を水抜き穴で連通せしめるとともに、上記補強を兼ねる器状パネルをアウタパネルの内側に設けた水抜き溝に連通して水を下方に排出するよう構成したので、雨中の作業、洗車等によっても、前記ロック穴よりロック機構部材のドアキャッチを経て浸入しようとする雨水は防水器状パネルでその浸入を阻止され、仮に防水器状パネル内に入り込んだ雨水は、水抜き穴から器状パネル内を経て水抜き溝に導かれる。
【0010】
また、前記ドアキャッチに面して開けられたロック穴などから浸入した雨水は器状パネルから前記水抜き穴に導かれて下方へ排出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい実施の形態を図1乃至図4により説明すると、本発明建設機械運転室の水抜き構造は、キャブ11のサイドパネルインナ12に取付けたドアキャッチ13の、室外側を補強を兼ねる器状パネル14で、また室内側を防水器状パネル15で各々覆い、両器状パネル14、15間を水抜き穴16で連通せしめるとともに、上記補強を兼ねる器状パネル14をアウタパネル17の内側に設けた水抜き溝18に連通して水抜き構造部11内の水をキャブ下方に流下するよう構成したものである。
【実施例1】
【0012】
図1〜図4に示す本発明の建設機械運転室の水抜き構造は、まず図1のごときキャブ11のアウタパネル17の中央付近に開けたロック穴17aに対向してサイドパネルインナ12に取り付けられた、ドアロック機構のドアキャッチ13を前後から囲んで器状パネル14及び防水器状ハネル15を設ける。
【0013】
前記器状パネル14は、装着部分の補強を兼ねており、底部14aに開けた穴にドアキャッチ13をほぼ半分嵌入した状態で、その上縁部14bを、取付け時下方になる後記凹部14cを除いてアウタパネル17のロック穴17aの周縁内側に固着する。尚、この固着に際しては構造用接着剤を使用することもできる。
【0014】
また、器状パネル14及びサイドパネルインナ12における、取付け時に防水器状パネル15の内部下端に面する箇所に水抜き穴16を開け、上記両器状パネル14、15の内部を連通せしめる。
【0015】
又、前記防水器状パネル15は、ドアキャツチ13の室内側のほぼ半分を囲むように固定具19によりサイドパネルインナ12に固定するが、この固定も前記構造用接着剤によってもよい。
【0016】
前記器状パネル14における水抜き穴16に通ずる上縁部14b’には、図4に示すように凹部14cを形成して、アウタパネル17との間で第2水抜き穴20を構成し、これをアウタパネル17の内側に設けた水抜き溝18に連通させている。
【0017】
上記水抜き溝18は、図3に示す如くサイドパネルインナ12に形成し、その両側をアウタパネル17に構造用接着剤で接着することにより構成するが、合成樹脂材により別部材として構成してもよい。
【0018】
前記水抜き溝18はキャブの下端まで延伸形成され、図示の例ではキャブの内側に形成した管路21に連通させており、雨水は上記管路21に形成した水抜き穴(図示せず)を経て排出するよう構成する。
【0019】
従って、雨天時にキャブ11におけるロック穴17aから浸入した雨水も、ドアキャッチ13が器状パネル14と防水器状パネル15に囲まれているので、ドアキャッチ13からの雨水の直接の浸入は阻止され、仮に、例えばパネル穴17aから浸入した雨水がドアキャッチ13を伝わってキャブ内側に浸入しようとしても、防水器状パネル15で阻止され、その雨水は水抜き穴16によって器状パネル14側に排出され、該パネル14に阻止された雨水とともに第2水抜き穴20を経て水抜き溝18に流下する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は建設機械の運転室ドアへの適用に限られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は本発明建設機械運転室の水抜き構造を備えたキャブの要部正面図である。
【図2】は図1におけるドアキャッチ付近の横断面図である。
【図3】は図1のF−F断面矢視図である。
【図4】は図1のL−L断面矢視図である。
【符号の説明】
【0022】
11 キャブ
12 サイドパネルインナ
13 ドアキャッチ
14 器状パネル
15 防水器状パネル
16 水抜き穴
17 アウタパネル
17a ロック穴
18 水抜き溝
19 固定具
20 第2水抜き穴
21 管路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドパネルインナに取付けたドアキャッチの室外側を補強を兼ねる器状パネルで、また室内側を防水器状パネルで各々覆い、両器状パネル間を水抜き穴で連通せしめるとともに、上記補強を兼ねる器状パネルをアウタパネルの内側に設けた水抜き溝に連通してドア内の水をドア下方に排出するよう構成したことを特徴とする建設機械運転室の水抜き構造。
【請求項2】
前記両器状パネルを、シールを兼ねた接着剤により前記パネルインナ又はアウタパネルに固定したことを特徴とする請求項1記載の建設機械運転室の水抜き構造。
【請求項3】
前記水抜き溝を前記パネルインナに形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の建設機械運転室の水抜き構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−38843(P2007−38843A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225175(P2005−225175)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】