説明

建設機械

【課題】ボンネット支持構造がエンジンルーム内機器類のメンテナンスの邪魔にならず、しかもボンネットを安定良く支持する。
【解決手段】エンジンルーム33を開閉するボンネット32を閉じ状態で支持するボンネット支持手段として、ボンネット32の前端部を支持する門形の前フレーム40と、パイプ材等から成るリブ状のサポート部材41とを設ける。サポート部材41は、エンジンルーム33の上部を縦断して前端が前フレーム40の左右方向中間部に連結された縦辺部45と、この縦辺部45の後端から左右いずれか一方に延びる横辺部46と、この横辺部46の先端から垂下してアッパーフレーム30に取けられる後柱47とによって構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンルームをボンネットで上から覆い、かつ、このボンネット上に運転席が設けられた油圧ショベル等の建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の好適例である小型の油圧ショベル(ミニショベル)を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ミニショベルは、図5,6に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に、ブーム3、アーム4、バケット5及びこれらを駆動する各油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ)6〜8から成る作業アタッチメント9が装着されて構成される。
【0004】
上部旋回体2を構成するアッパーフレーム10の後部に、左右のサイドパネル(片側のみ図示)11、ボンネット12等で囲われたエンジンルーム13が設けられ、図示しないエンジン、バッテリ、ラジエータ、燃料タンク、作動油タンク等の機器類がこのエンジンルーム13に収容される。
【0005】
ボンネット12は、エンジンルーム13の上面側と後面側を覆うL字形に形成され、前端部に設けられたボンネット軸(ヒンジ)14を中心に回動して上面及び後面両開口部を開閉する状態でアッパーフレーム10に取付けられる。
【0006】
図5はボンネット12を閉じた状態、図6は開いた状態をそれぞれ示し、開いた状態で機器類のメンテナンスが行われる。
【0007】
また、ボンネット12上に運転席15が設けられ、図示のようにオペレータOが運転席15に着座した状態で、運転席12の左右両側に設けられた作業用操作レバー(図示省略)の操作を行う。
【0008】
以上の構成は特許文献1に示されている。
【0009】
このミニショベルにおいて、従来、ボンネット支持構造として、梁材にて門形等に組み立てた支持フレームをエンジンルーム13の前後、左右でアッパーフレーム10に立て、ボンネット12を四周で支持する構成がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−107394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、このように従来のボンネット支持構造によると、エンジンルーム13の左右及び後面両開口部、すなわちエンジンルーム13内に収容された機器類にアクセスするメンテナンス口に支持フレームが位置するため、この支持フレームが機器類のメンテナンスの邪魔になり、とくに機器類の交換時の障害となっていた。
【0012】
そこで本発明は、ボンネット支持構造がエンジンルーム内機器類のメンテナンスの邪魔にならず、しかもボンネットを安定良く支持することができる建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、下部走行体上に搭載された上部旋回体のアッパーフレームの後部に、上面及び後面が開口するエンジンルームと、前側を支点に回動して上記エンジンルームの開口部を開閉するボンネットとが設けられ、このボンネット上に運転席が設けられた建設機械において、上記ボンネットを閉じ状態で支持するボンネット支持手段として、ボンネットの前端部をボンネット幅方向の一定長さ範囲に亘って支持する前フレームと、パイプ材等から成るリブ状のサポート部材とを備え、このサポート部材は、上記エンジンルームの上部を縦断して前端が上記前フレームの左右方向中間部に連結された縦辺部と、この縦辺部の後端から左右いずれか一方に延びる横辺部と、この横辺部の先端から垂下して上記アッパーフレームに取付けられる後柱とによって構成されたものである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記前フレームが、左右左右両側前柱間に横梁が架け渡された門形に形成され、上記両側前柱の下端が上記アッパーフレームに取付けられたものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、上記ボンネットの下面に部分的に接触してボンネット上方からの荷重を受けるマウント部材が、上記サポート部材の縦辺部を挟んで左右両側に設けられたものである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、上記左右両側のマウント部材が、ボンネットの後部下面に接触する状態で設けられたものである。
【0017】
請求項5の発明は、請求項3または4の構成において、上記両側マウント部材のうち片側のマウント部材が、上記エンジンルームの左右片側に設置された燃料タンクに取付けられたものである。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの構成において、上記ボンネットの開閉を助けるダンパーが、前フレームとボンネットとの間に取付けられたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ボンネット支持手段を、前フレームと、エンジンルームの上部を縦断するサポート部材とによって構成したから、エンジンルームの左右両側面にボンネット支持構造が無く、開放した状態となる。
【0020】
このため、エンジンルームに設置される機器類、とくに左右両側に配置される機器類(たとえばメンテナンス頻度が高いラジエータ、バッテリ、作動油タンク)の交換を含めたメンテナンスが容易となる。
【0021】
また、フレーム材(前フレーム)とリブ状のサポート部材とのみから成るため、簡素で軽量、低コストとなり、組立も容易となる。
【0022】
しかも、前フレームとサポート部材が互いに支え合い、かつ、前後方向荷重に対してはサポート部材の縦辺部が、ねじれ荷重に対しては前フレームと横辺部がそれぞれ高い抗力を発揮する構造であるため、ボンネット支持手段として十分な強度を有し、必要なボンネット支持機能を確保することができる。
【0023】
この場合、請求項2の発明によると、前フレームを、左右左右両側前柱間に横梁が架け渡された門形に形成したから、この前フレームが単独でも十分な強度を有する。
【0024】
また、両側前柱をアッパーフレーム底面に取付ければよいため、アッパーフレーム底面に凹凸があっても、両前柱を簡単に取付けることができる。
【0025】
請求項3〜5の発明によると、マウント部材を縦辺部を挟んで左右両側に設けているため、ボンネットを幅方向の中間部と左右両側で支持することにより、ボンネット支持強度を強化することができる。
【0026】
とくに、請求項4の発明によると、ボンネット支持力がやや手薄となる後端部にマウント部材を設けているため、ボンネット支持状態を一層安定させることができる。
【0027】
請求項5の発明によると、燃料タンクをマウント部材用の取付部材として兼用するため、部品点数を節減し、コストダウン及び組立性の点で有利となる。
【0028】
また、ボンネットに作用する荷重(運転席重量と着座したオペレータの体重、ボンネット自重の合計)がボンネットからマウント部材を介して燃料タンクにこれを下向きに押圧する力として伝えられるため、この押圧力によって燃料タンクの固定力を強化することができる。
【0029】
請求項6の発明によると、前フレームをダンパー取付部材として兼用するため、部品点数の節減、コストダウン及び組立性の点で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態にかかるミニショベルの概略側面図である。
【図2】同ショベルの上部旋回体に設けられたボンネット支持構造を示す斜視図である。
【図3】同平面図である。
【図4】ボンネット支持構造単独の斜視図である。
【図5】従来技術を説明するためのミニショベルの概略側面図である。
【図6】ボンネットを開いた状態の図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態を図1〜図4によって説明する。
【0032】
実施形態では、背景技術の説明に合わせてミニショベルを適用対象としている。
【0033】
この実施形態において、
(i)クローラ式の下部走行体21上に上部旋回体22が旋回自在に搭載され、この上部旋回体22に、ブーム23、アーム24、バケット25及びこれらを駆動する各油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ)26〜28から成る作業アタッチメント29が装着されてミニショベルが構成される点、
(ii)上部旋回体22を構成するアッパーフレーム30の後部に、左右のサイドパネル(片側のみ図示)31、ボンネット32等で囲われて上面及び後面が開口するエンジンルーム33が設けられ、エンジンをはじめとする機器類がこのエンジンルーム33に収容される点、
(iii)ボンネット32は、エンジンルーム33の上面側と後面側を覆うL字形に形成され、前端部に設けられたボンネット軸(ヒンジ)34を中心に回動して上面及び後面両開口部を開閉する状態でアッパーフレーム30に取付けられる点、
(iv)ボンネット32上に運転席35が設けられ、図示のようにオペレータOが運転席35に着座した状態で、運転席12の左右両側に設けられた作業用操作レバー(図示省略)の操作を行う点
は、図5,6に示す公知のミニショベルと同じである。
【0034】
また、実施形態では、機器類として、エンジンルーム33の左側(運転席35に着座したオペレータOから見た方向性。以下にいう前後左右の方向性について同じ)にバッテリ36、作動油タンク37、燃料タンク38が前後方向に並んで配置され、右側にラジエータ39(いずれもメンテナンス頻度が高い)が配置された場合を例示している。
【0035】
実施形態におけるボンネット支持構造を説明する。
【0036】
ボンネット支持手段として、前フレーム40とサポート部材41とが設けられている。
【0037】
前フレーム40は、左右の前柱42,43と、この両前柱42,43の上端間に水平に架け渡された横梁44とから成る門形のフレーム構造体として形成され、エンジンルーム33の前端部においてエンジンルーム33をほぼ横断する状態で両前柱42,43の下端がアッパーフレーム30の底面に取付けられている。
【0038】
なお、アッパーフレーム底面は、通常、部位によって高低差(凹凸)があるため、両前柱42,43は、この凹凸に合わせて長さが設定され、適宜、図示しない取付座を介してアッパーフレーム30に取付けられる。
【0039】
サポート部材41は、パイプ材(図示の丸パイプ材が望ましいが、角パイプ材、もしくは棒材や型材でもよい)が曲げ加工されたリブ状、すなわち、エンジンルーム30の上面開口部を幅方向の中央部で縦断する縦辺部45と、この縦辺部45の後端から緩やかなアールを介して右側に水平に延びる横辺部46と、この横辺部46の先端から垂下する後柱47とから成り、縦辺部45の前端が連結金具48,49を介して前フレーム40における横梁44の左右方向中間部に連結される一方、後柱47の下端がアッパーフレーム30の底面に取付けられている。
【0040】
なお、縦辺部前端側の強度を強化するために、縦辺部45の前端部に取付座50が左向きに突設され、この取付座50が作動油タンク37の上面に取付けられている。
【0041】
こうして、前フレーム40とサポート部材41とを合わせたボンネット支持手段の全体形状が平面視左右逆向きのJ字形で側面視門形に構成されている。
【0042】
一方、ボンネット32の下面に部分的に接触してボンネット荷重を受ける左右両側マウント部材51,52が、エンジンルーム後部においてサポート部材41の縦辺部45を挟んだ左右両側に設けられている。
【0043】
具体的には、左側マウント部材51は燃料タンク38の上端部に、右側マウント部材52はサポート部材41の横辺部46にそれぞれ取付けられている。
【0044】
従って、ボンネット32は、直接的には前フレーム40によって前端部が、両側マウント部材51,52によって後部がそれぞれ支持される。
【0045】
そして、サポート部材41は、右側マウント部材52を介してボンネット荷重を間接的に支持するとともに、前フレーム40を後から支え、自らも前フレーム40によって前端側が支えられる。
【0046】
なお、図2〜図4に示すように、前フレーム40の横梁44の中間部にダンパー取付座53が後向きに突設され、ボンネット32の開閉を助けて操作を軽くするためのダンパー54(図4参照)の前端部がこのダンパー取付座53に取付けられる。
【0047】
図4中、55はボンネット開閉に応じてダンパー54を回動案内するためのダンパーガイド部材で、一端側がサポート部材41の縦辺部45の前端部に、他端側がダンパー54にそれぞれ取付けられている。
【0048】
この構成によると、ボンネット支持手段が、エンジンルーム前端部に設けられた前フレーム40と、エンジンルーム上部を縦断するリブ状のサポート部材32とによって構成されているため、エンジンルーム33の左右両側面にボンネット支持構造が無く、開放した状態となる。
【0049】
このため、エンジンルーム33に設置される機器類、とくにメンテナンス口となる左右両側に配置される機器類(実施形態ではメンテナンス頻度が高いバッテリ36、作動油タンク37、燃料タンク38、ラジエータ39)に対してアクセスし易くなり、これらの交換を含めたメンテナンスが容易となる。
【0050】
また、フレーム構造体である前フレーム40とリブ状のサポート部材41とのみから成るため、簡素で軽量、低コストとなり、組立も容易となる。
【0051】
しかも、前フレーム40とサポート部材41が互いに支え合い、かつ、前後方向荷重に対してはサポート部材41の縦辺部45が、ねじれ荷重に対しては前フレーム40と横辺部46がそれぞれ高い抗力を発揮する構造であるため、ボンネット支持手段全体として十分な強度を有し、必要なボンネット支持機能を確保することができる。
【0052】
加えて、ボンネット荷重を直接受けるマウント部材51,52を、縦辺部45を挟んで左右両側、それもボンネット支持力が手薄となる後端部に設けているため、ボンネット支持強度を強化し、一層安定したボンネット支持状態を確保することができる。
【0053】
また、燃料タンク38を左側マウント部材51用の取付部材として兼用するため、部品点数を節減し、コストダウン及び組立性の点で有利となる。
【0054】
加えて、ボンネット32に作用する荷重(運転席重量と着座したオペレータの体重、ボンネット自重の合計)がボンネット32から左側マウント部材51を介して燃料タンク38にこれを下向きに押圧する力として伝えられるため、この押圧力によって燃料タンク38の固定力を強化することができる。
【0055】
いいかえれば、上記押圧力をタンク固定力に組み込むことにより、燃料タンク38の取付構造を簡略化することができる。
【0056】
さらに、前フレーム40をダンパー54の取付部材として兼用するため、部品点数の節減、コストダウン及び組立性の点で有利となる。
【0057】
ところで、他の実施形態として、サポート部材41の横辺部46を縦辺部45の後端から、上記実施形態のように右側ではなく左側に延ばしてもよい。
【0058】
また、前フレーム40を、門形でなく、上記実施形態の横梁44の左右方向中間部から前柱を垂下させたT字形、あるいは額縁状に形成してもよい。
【0059】
また、本発明はミニショベルに好適であるが、このミニショベルと同様の機械構成をとる他の建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
21 下部走行体
22 上部旋回体
30 アッパーフレーム
32 ボンネット
33 エンジンルーム
35 運転席
36 機器類としてのバッテリ
37 同作動油タンク
38 同燃料タンク
39 同ラジエータ
40 前フレーム
41 サポート部材
42,43 前フレームの左右両側前柱
44 同横梁
45 サポート部材の縦辺部
46 同横辺部
47 同後柱
48 縦辺部と前フレームとを連結する連結金具
51 左側マウント部材
52 右側マウント部材
53 ダンパー取付座
54 ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に搭載された上部旋回体のアッパーフレームの後部に、上面及び後面が開口するエンジンルームと、前側を支点に回動して上記エンジンルームの開口部を開閉するボンネットとが設けられ、このボンネット上に運転席が設けられた建設機械において、上記ボンネットを閉じ状態で支持するボンネット支持手段として、ボンネットの前端部をボンネット幅方向の一定長さ範囲に亘って支持する前フレームと、パイプ材等から成るリブ状のサポート部材とを備え、このサポート部材は、上記エンジンルームの上部を縦断して前端が上記前フレームの左右方向中間部に連結された縦辺部と、この縦辺部の後端から左右いずれか一方に延びる横辺部と、この横辺部の先端から垂下して上記アッパーフレームに取付けられる後柱とによって構成されたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
上記前フレームは、左右左右両側前柱間に横梁が架け渡された門形に形成され、上記両側前柱の下端が上記アッパーフレームに取付けられたことを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
上記ボンネットの下面に部分的に接触してボンネット上方からの荷重を受けるマウント部材が、上記サポート部材の縦辺部を挟んで左右両側に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械。
【請求項4】
上記左右両側のマウント部材が、ボンネットの後部下面に接触する状態で設けられたことを特徴とする請求項3記載の建設機械。
【請求項5】
上記両側マウント部材のうち片側のマウント部材が、上記エンジンルームの左右片側に設置された燃料タンクに取付けられたことを特徴とする請求項3または4記載の建設機械。
【請求項6】
上記ボンネットの開閉を助けるダンパーが、前フレームとボンネットとの間に取付けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265713(P2010−265713A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119639(P2009−119639)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】