説明

建設機械

【課題】回収したエネルギを効率良く使用することで、大きな燃料低減効果が得られる建設機械を提供する。
【解決手段】2つ以上のアクチュエータ7,8と、アクチュエータ7,8を駆動するための油圧エネルギを発生するメインポンプ3と、メインポンプ3とアクチュエータ7,8との間に設けた流量調整手段4と、油圧エネルギに追加するためのエネルギを発生する追加エネルギ発生手段11と、追加エネルギ発生手段11でエネルギが発生するときに、メインポンプ3の発生する油圧エネルギを減少させる制御手段20とを備えた建設機械であって、追加エネルギ発生手段からのエネルギを追加する場所をアクチュエータ7,8に応じて選択的に切り替える切替手段12を更に備え、制御手段20は、エネルギを追加するアクチュエータ7,8に応じて、メインポンプ3の発生する油圧エネルギの減少率を変更制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、特に、1つのアクチュエータに対して2つ以上のエネルギ供給手段を有する建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の1つである油圧ショベルは、エンジン等の原動機と、この原動機により駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油によりブーム、アーム、バケット、及び旋回体等を駆動する各油圧シリンダとを含む油圧アクチュエータと、油圧ポンプからの圧油を油圧アクチュエータに切替え供給するコントロールバルブ(操作弁)を備えている。このような建設機械において、動力源の動力を低減して建設機械全体の燃量消費を低減するために、自重で落下するブームの位置エネルギや、旋回体の慣性運動エネルギを回収し、有効活用する技術が提案されている。
【0003】
例えば、油圧アクチュエータからの戻り油を回収手段で回収後、回生手段により回生し、回生した回生流量を油圧ポンプからの吐出流量に合流させるとき、エンジン等の駆動手段によって駆動される前記油圧ポンプからの吐出流量を前記回生流量に応じて制御するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−84907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来技術において、回生した回生流量と油圧ポンプからの吐出流量とを合流させた作動油の全流量は、コントロールバルブ(操作弁)を介して油圧アクチュエータに供給されている。
【0006】
コントロールバルブにおいては、作動油の漏れや圧力損失を原因とするエネルギ損失が生じるので、回収したエネルギの全てを油圧アクチュエータで使用することは難しかった。このため、上述した従来技術においては、十分な燃料低減効果を得られないという課題があった。
【0007】
本発明は上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、回収したエネルギを効率良く使用することで、大きな燃料低減効果が得られる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、2つ以上のアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動するための油圧エネルギを発生するメインポンプと、前記メインポンプと前記アクチュエータとの間に設けた流量調整手段と、前記油圧エネルギに追加するためのエネルギを発生する追加エネルギ発生手段と、前記追加エネルギ発生手段でエネルギが発生するときに、前記メインポンプの発生する油圧エネルギを減少させる制御手段とを備えた建設機械であって、前記追加エネルギ発生手段からの前記エネルギを追加する場所を前記アクチュエータに応じて選択的に切り替える切替手段を更に備え、前記制御手段は、前記エネルギを追加する前記アクチュエータに応じて、前記メインポンプの発生する油圧エネルギの減少率を変更制御するものとする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記切替手段は、前記エネルギを追加する前記アクチュエータに応じて、前記エネルギを追加する場所を、前記流量調整手段よりも前記メインポンプ側または前記流量調整手段よりも前記アクチュエータ側に供給するように切り替えることを特徴とする。
【0010】
更に、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記追加エネルギ発生手段は、エネルギ蓄積手段と、前記エネルギ蓄積手段に蓄えられたエネルギにより動作する原動機と、前記原動機により駆動される油圧ポンプとを備えることを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記切替手段は、前記エネルギを追加する前記アクチュエータに応じて、前記エネルギを追加する場所を、前記流量調整手段よりも前記メインポンプ側または前記アクチュエータに直接作用するように切り替えることを特徴とする。
【0012】
更に、第5の発明は、第1又は第4の発明のいずれかにおいて、前記追加エネルギ発生手段は、エネルギ蓄積手段と、前記エネルギ蓄積手段に蓄えられたエネルギにより動作する原動機とを備え、前記アクチュエータの少なくとも1つは、少なくとも1つの前記原動機と連結された複合アクチュエータであることを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、第5の発明において、前記追加エネルギ発生手段は、前記複合アクチュエータを構成する前記原動機で発生するエネルギの増減の変化速度を、前記メインポンプの出力の増減の応答遅れに合わせて制御可能としたことを特徴とする。
【0014】
更に、第7の発明は、第1の発明において、前記制御手段は、前記追加エネルギ発生手段の発生したエネルギが前記アクチュエータを駆動するまでに生じる損失が小さいほど、前記メインポンプが発生するエネルギの減少率を大きくするように、前記メインポンプを制御することを特徴とする。
【0015】
また、第8の発明は、第7の発明において、前記制御手段は、エネルギを追加する場所が前記流量調整手段よりも前記アクチュエータ側の時は、エネルギを追加する場所が前記流量調整手段よりも前記メインポンプ側の時よりも、前記メインポンプが発生するエネルギの減少率を大きくするように、前記メインポンプを制御するこことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回収したエネルギを効率良く使用することで、動力源の動力を低減して建設機械全体の燃量消費を大幅に低減することのできる建設機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の建設機械の第1の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。
【図2】本発明の建設機械の第1の実施の形態のブーム上げ操作時における油圧ポンプモータ発生エネルギとメインポンプ発生エネルギとブームシリンダに供給されるエネルギとの関係の一例を示す特性図である。
【図3】本発明の建設機械の第1の実施の形態の旋回操作時における油圧ポンプモータ発生エネルギとメインポンプ発生エネルギと旋回油圧モータに供給されるエネルギとの関係の一例を示す特性図である。
【図4】本発明の建設機械の第2の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。
【図5】本発明の建設機械の第2の実施の形態の旋回操作時における旋回電動機発生エネルギとメインポンプ発生エネルギと旋回油圧モータ及び旋回電動機の合計エネルギとの関係の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、建設機械として油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は、旋回体を備えた建設機械全般(作業機械を含む)に適用が可能であり、本発明の適用は油圧ショベルに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の建設機械の第1の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。図1において、1は動力源であるエンジン、2はエンジンに供給される燃料を貯蔵する燃料タンク、3はエンジン1に駆動される可変容量型のメインポンプ、4は流量調整手段としてのコントロールバルブ、5はブーム操作用の制御弁、6は旋回体操作用の制御弁、7はブームシリンダ、8は旋回油圧モータ、9は発電・電動機(原動機)、10はキャパシタ又はバッテリで構成する蓄電手段(エネルギ蓄積手段)、11は発電・電動機9により駆動する油圧ポンプモータ(追加エネルギ発生手段)、12a〜fは切替弁、20はコントローラ(制御手段)を示す。メインポンプ3は可変容量機構として例えば斜板を有していて、この斜板の傾転角を容量制御装置3aで調整することによりメインポンプ3の容量(押しのけ容積)を変化させ、圧油の吐出流量を制御している。
【0020】
メインポンプ3から吐出される圧油を、ブームシリンダ7、旋回油圧モータ8等の各アクチュエータへ供給する主管路30には、主管路30内の圧油の圧力を制限するリリーフ弁14と圧油の方向と流量を制御するコントロールバルブ4とが設けられている。リリーフ弁14は、油圧配管内の圧力が設定圧力以上に上昇した場合に、主管路30の圧油を作動油タンク16へ逃がすものである。
【0021】
流量調整手段としてのコントロールバルブ4は、ブーム操作用の制御弁5と旋回体操作用の制御弁6とを備えている。ブーム操作用の制御弁5と旋回体操作用の制御弁6とは、3位置6ポートの切替制御弁であって、その両パイロット操作部(図示せず)へ供給されるパイロット圧力により、各制御弁位置を切り替えて、作動油の流路の開口面積を変化させる。このことにより、メインポンプ3から各アクチュエータ7,8へ供給される作動油の方向と流量を制御して、各アクチュエータ7,8を駆動している。また、ブーム操作用の制御弁5と旋回体操作用の制御弁6とは、メインポンプ3からの圧油が供給される入口ポート5c,6cと、作動油タンク16に連通する出口ポート5d,6dと、中立位置のときに連通するセンターポート5T,6Tと、各アクチュエータ7,8側に接続する接続ポート5a,5b,6a,6bとを有している。
【0022】
ブームシリンダ7は、シリンダとピストンロッドとを有していて、シリンダは、ボトム側の油室7aとロッド側の油室7bとを備えている。ボトム側の油室7aには、後述する切替弁12aが配設された第1管路31の一端側が接続されていて、第1管路31の他端側は、ブーム操作用の制御弁5の接続ポート5aに接続されている。ロッド側の油室7bには、第2管路32の一端側が接続されていて、第2管路32の他端側は、ブーム操作用の制御弁5の接続ポート5bに接続されている。
【0023】
旋回油圧モータ8は、2つの作動油入口8a,8bを有していて、供給する作動油入口を変更することで、回転方向の変更を可能とする。一方の作動油入口8aには、第3管路33の一端側が接続されていて、第3管路33の他端側は、旋回体操作用の制御弁6の接続ポート6aに接続されている。他方の作動油入口8bには、第4管路34の一端側が接続されていて、第4管路34の他端側は、旋回体操作用の制御弁6の接続ポート6bに接続されている。
【0024】
第3管路33と第4管路34とには、オーバーロードリリーフ弁8cと8dとがそれぞれ設けられている。また、第3管路33と第4管路34には、各管路側からの流出のみを許可するチェック弁8e,8fがそれぞれ設けられ、これらのチェック弁8e,8fの出口側は、第5管路35によって接続されている。
【0025】
発電・電動機9は、後述するコントローラ20からの指令により、蓄電手段10の電力を使ってトルクを発生する力行制御、又は、トルクを吸収することで発電し電力をエネルギ蓄積手段である蓄電手段10に蓄える回生制御のいずれかが実行される。
【0026】
油圧ポンプモータ11は、その回転軸を発電・電動機9の回転軸と、直接又はギア等を介して機械的に連結している。発電・電動機9が力行制御される場合には、油圧ポンプモータ11は油圧ポンプとして作動し、作動油を作動油タンク16から吸引して後述する第1副管路36と第2副管路37とへ吐出する。一方、発電・電動機9が回生制御される場合には、油圧ポンプモータ11は油圧モータとして作動し、後述する第3副管路38からの作動油の圧力により回転される。
【0027】
油圧ポンプモータ11が、油圧ポンプとして作動する場合は、追加エネルギ発生手段となり、ブームシリンダ7や旋回油圧モータ8を駆動するための追加エネルギを発生する。この追加エネルギは、予め設定されている油圧ポンプモータ11の容積と検出される油圧ポンプモータ11の回転数と吐出圧力との積を時間積分することで求めることができる。
【0028】
油圧ポンプモータ11が油圧ポンプとして作動する場合に、油圧ポンプモータ11からの圧油が吐出される第1副管路36には、第1副管路36内の圧油の圧力を制限するリリーフ弁15と圧油の連通/遮断を制御する切替弁12d〜12fとが設けられている。第2副管路37は、切替弁12fを介して一端側を第1副管路36と接続し、他端側を主管路30と接続している。第3副管路38は、一端側で第1副管路36と分岐接続し、他端側で切替弁12b,12cを介して第1管路31,第5管路35とそれぞれ接続している。リリーフ弁15は、油圧配管内の圧力が設定圧力以上に上昇した場合に、第1副管路36の圧油を作動油タンク16へ逃がすものである。なお、切替弁12b〜12fは、2ポート2位置の電磁切替弁であって、その切替は、後述するコントローラ20からの指令により制御されている。
【0029】
切替弁12bは、一方のポートを、第1管路31からの流出のみを許可するチェック弁の出口側に接続し、他方のポートを第3副管路38に接続している。
切替弁12cは、一方のポートを第5管路35の分岐部に接続し、他方のポートを第3副管路38に接続している。
切替弁12dは、一方のポートを、第3管路33への流入のみを許可するチェック弁の入口側に接続し、他方のポートを第1副管路36に接続している。
切替弁12eは、一方のポートを、第4管路34への流入のみを許可するチェック弁の入口側に接続し、他方のポートを第1副管路36に接続している。
切替弁12fは、一方のポートを、第2副管路37を介して主管路30への流入のみを許可するチェック弁の入口側に接続し、他方のポートを第1副管路36に接続している。
【0030】
切替弁12d,12e,12fは、本発明の特徴の一つである切替手段であり、これらを開閉制御することによりエネルギを追加する場所を切り替える。具体的には、エネルギを追加する場所を、旋回油圧モータ8の作動油入口8a、作動油入口8b、メインポンプ3の吐出管路となる主管路30のいずれかに切り替え可能とする。
【0031】
コントローラ20は、図示しない各操作レバーの操作信号と、蓄電手段10の電力の蓄電量とを入力し、容量制御装置3aへ吐出流量指令を出力し、メインポンプ3の容量を制御し、発電・電動機9へ力行指令、又は回生指令を出力して、油圧ポンプモータ11のトルクを制御している。また、切替弁12a〜12fの電磁操作部へ電流指令を出力し、各切替弁の開閉状態を制御する。
【0032】
次に、上述した本発明の建設機械の第1の実施の形態の動作について説明する。まず、オペレータによるブーム操作について説明する。
図1において、ブーム操作用の制御弁5は、図示しない操作レバーの操作量がゼロである中立の場合の配置を示している。ここで、接続ポート5aと5bは、入口ポート5cと出口ポート5dとそれぞれ遮断されていて、センターポート5Tが連通するので、メインポンプ3からの圧油は、作動油タンク16へ供給される。
【0033】
図示しない操作レバーによりブーム上げの操作が行われると、パイロット操作部(図示せず)へ供給されるパイロット圧力により、ブーム操作用の制御弁5は右方向へ移動してA位置に切換えられる。このことにより、入口ポート5cと接続ポート5aとが連通し、出口ポート5dと接続ポート5bとが連通する。また、コントローラ20は、ブーム上げの操作信号を入力し、切替弁12aの電磁操作部へ開指令を、切替弁12bの電磁操作部へ閉指令をそれぞれ出力する。このことにより、メインポンプ3からの圧油は、第1管路31を通ってブームシリンダ7のボトム側の油室7aに供給され、ブームシリンダ7のロッド側の油室7b内の圧油は、第2管路32を通って作動油タンク16に排出される。この結果、ブームシリンダ7のピストンロッドが伸長する。
【0034】
一方、ブーム下げの操作が行われると、パイロット操作部(図示せず)へ供給されるパイロット圧力により、ブーム操作用の制御弁5は左方向へ移動してB位置に切換えられる。このことにより、入口ポート5cと接続ポート5bとが連通し、出口ポート5dと接続ポート5aとが連通する。また、コントローラ20は、ブーム下げの操作信号を入力し、切替弁12aの電磁操作部へ閉指令を、切替弁12bの電磁操作部へ開指令をそれぞれ出力する。このことにより、メインポンプ3からの圧油は、第2管路32を通ってブームシリンダ7のロッド側の油室7bに供給され、ブームシリンダ7のピストンロッドが縮小すると共に、ブームシリンダ7のボトム側の油室7aから排出された圧油は、第1管路31と第3副管路38とを通って油圧ポンプモータ11に導かれる。このことにより、油圧ポンプモータ11は油圧モータとして作動し、発電・電動機9を回転させる。このとき、コントローラ20は、発電・電動機9を回転方向と逆向きにトルクが発生するように回生制御し、その発電電力を蓄電手段10に蓄える。
【0035】
ところで、エネルギ蓄積手段である蓄電手段10に十分な電力が蓄電されているときに、図示しない操作レバーによるブーム上げの操作が行われた場合には、コントローラ20により、以下の追加エネルギシーケンス制御が行われる。ブーム操作用の制御弁5等の動作は上述のブーム上げ操作時と同じである。
【0036】
まず、コントローラ20に入力される蓄電手段10の電力の蓄電量と、予め設定されている設定値とを比較し、入力値が設定値を超えている場合に、ブーム上げの操作信号が入力すると、コントローラ20は、上述した切替弁12a,12bの電磁操作部への指令信号に加えて、切替弁12fの電磁操作部へ開指令を出力する。また、発電・電動機9へ力行指令を出力し、油圧ポンプモータ11を油圧ポンプとして作動させ、油圧ポンプモータ11から吐出された圧油を第1副管路36、切替弁12fと第2副管路37とを介して主管路30へ合流させる。このことにより、ブーム上げを行うために、追加エネルギが付加されている。
【0037】
一方、コントローラ20は、容量制御装置3aへ吐出流量減指令を出力し、メインポンプ3の容量を減少制御し、油圧ポンプモータ11からの追加された吐出流量分を減少させる。このことにより、ブームシリンダ7に供給される作動油の量が変化しないため、追加エネルギあり/なしによる操作性の変化は発生しない。また、メインポンプ3の吐出流量を減少させるということは、メインポンプ3が発生する油圧エネルギを減少させることになる。この結果、駆動源であるエンジン1の負荷が減少するので、エンジン1の燃料消費量を減少することができる。
【0038】
次に、オペレータによる旋回操作について説明する。
図1において、旋回体操作用の制御弁6は、図示しない操作レバーの操作量がゼロである中立の場合の配置を示している。図示しない操作レバーにより右旋回の操作が行われると、パイロット操作部(図示せず)へ供給されるパイロット圧力により、旋回体操作用の制御弁6は右方向へ移動してA位置に切換えられる。このことにより、入口ポート6cと接続ポート6aとが連通し、出口ポート6dと接続ポート6bとが連通する。また、コントローラ20は、右旋回の操作信号を入力し、切替弁12cの電磁操作部へ閉指令を出力する。このことにより、メインポンプ3からの圧油は、第3管路33を通って旋回油圧モータ8の作動油入口8aに供給され、旋回油圧モータ8の作動油入口8bからの圧油は、第4管路34を通って作動油タンク16に排出される。この結果、旋回油圧モータ8を右方向に回転操作する。
【0039】
一方、上述した右旋回の操作が行われ、その後図示しない操作レバーが中立にされたとき、すなわち旋回減速のときは、旋回体操作用の制御弁6は、図1に示す状態となり、接続ポート6aと6bは、入口ポート6cと出口ポート6dとそれぞれ遮断されていて、センターポート6Tが連通する。また、コントローラ20は、旋回中立の操作信号を入力し、切替弁12cの電磁操作部へ開指令を出力する。このことにより、旋回油圧モータ8の作動油入口8a,8bから排出された圧油は、第5管路35と第3副管路38とを通って油圧ポンプモータ11に導かれる。このことにより、油圧ポンプモータ11は油圧モータとして作動し、発電・電動機9を回転させる。このとき、コントローラ20は、発電・電動機9を回転方向と逆向きにトルクが発生するように回生制御し、その発電電力を蓄電手段10に蓄える。
【0040】
ところで、エネルギ蓄積手段である蓄電手段10に十分な電力が蓄電されているときに、図示しない操作レバーによる右旋回の操作が行われた場合には、コントローラ20により、以下の追加エネルギシーケンス制御が行われる。旋回体操作用の制御弁6等の動作は上述の右旋回操作時と同じである。
【0041】
まず、コントローラ20に入力される蓄電手段10の電力の蓄電量と、予め設定されている設定値とを比較し、入力値が設定値を超えている場合に、右旋回の操作信号が入力すると、コントローラ20は、上述した切替弁12cの電磁操作部へ閉指令を、切替弁12dの電磁操作部へ開指令を、切替弁12eの電磁操作部へ閉指令をそれぞれ出力する。また、発電・電動機9へ力行指令を出力し、油圧ポンプモータ11を油圧ポンプとして作動させ、油圧ポンプモータ11から吐出された圧油を第1副管路36、切替弁12dを介して第3管路33へ合流させる。このことにより、右旋回を行うために、追加エネルギが付加される。
【0042】
一方、コントローラ20は、容量制御装置3aへ吐出流量減指令を出力し、メインポンプ3の容量を減少制御し、油圧ポンプモータ11からの追加された吐出流量分を減少させる。この旋回操作において、作動油を合流させる場所(エネルギを追加する場所)は旋回体操作用の制御弁6と旋回油圧モータ8の間の第3管路33になるため、上述したブーム上げの場合と異なり、油圧ポンプモータ11から吐出した作動油は旋回体操作用の制御弁6を通過しない。このため、制御弁通過による作動油の漏れや圧力損失を原因とするエネルギ損失が生じないので、コントローラ20は、メインポンプ3の吐出流量を油圧ポンプモータ11の吐出流量以上に大きく減少させる。
【0043】
すなわち、コントローラ20は、右旋回の場合におけるメインポンプ3が発生する油圧エネルギの減少率を、ブーム上げの場合の減少率よりも大きくする。ここで、メインポンプ3が発生する油圧エネルギの減少率Kは次式で定義される。 K={(追加エネルギなしの場合にメインポンプ3が発生するエネルギ)−(追加エネルギありの場合にメインポンプ3が発生するエネルギ)}÷(油圧ポンプモータ11が発生するエネルギ)
このことにより、旋回油圧モータ8に供給される作動油の量を追加エネルギあり/なしで変化させず、操作性の変化を発生させない。また、油圧ポンプモータ11が発生したエネルギ以上にメインポンプ3が発生するエネルギを減少させることになる。この結果、駆動源であるエンジン1の負荷が減少するので、エンジン1の燃料消費量を減少することができる。
【0044】
左旋回の操作が行われると、パイロット操作部(図示せず)へ供給されるパイロット圧力により、旋回体操作用の制御弁6は左方向へ移動してB位置に切換えられる。このことにより、入口ポート6cと接続ポート6bとが連通し、出口ポート6dと接続ポート6aとが連通する。また、コントローラ20は、左旋回の操作信号を入力し、切替弁12cの電磁操作部へ閉指令を出力する。このことにより、メインポンプ3からの圧油は、第4管路34を通って旋回油圧モータ8の作動油入口8bに供給され、旋回油圧モータ8の作動油入口8aからの圧油は、第3管路33を通って作動油タンク16に排出される。この結果、旋回油圧モータ8を左方向に回転操作する。
【0045】
コントローラ20は、蓄電手段10に十分な電力が蓄電されている時は、切替弁12eを開き、切替弁12dを閉じるように制御する。その他の制御方法、及び制御の効果は、右旋回の場合と同様なので詳細説明は省略する。
【0046】
次に、上述した本発明の建設機械の第1の実施の形態における油圧ポンプモータ発生エネルギとメインポンプ発生エネルギ等との関係について図2及び図3を用いて説明する。図2は本発明の建設機械の第1の実施の形態のブーム上げ操作時における油圧ポンプモータ発生エネルギとメインポンプ発生エネルギとブームシリンダに供給されるエネルギとの関係の一例を示す特性図、図3は本発明の建設機械の第1の実施の形態の旋回操作時における油圧ポンプモータ発生エネルギとメインポンプ発生エネルギと旋回油圧モータに供給されるエネルギとの関係の一例を示す特性図である。
【0047】
図2及び図3において、破線部は「追加エネルギなし」の特性を示し、蓄電手段10に十分な電力が蓄電されておらず、油圧ポンプモータ11で追加エネルギを発生しない場合を表す。実線部は「追加エネルギあり」の特性を示し、蓄電手段10に十分な電力が蓄電されていて、油圧ポンプモータ11で追加エネルギを発生する場合を表す。
【0048】
図2のブーム上げ操作において、「追加エネルギあり」の場合は、ブーム上げ操作に応じて油圧ポンプモータ11で油圧エネルギS2を発生する(作動油を吐出する)。同時に、メインポンプ3で発生する油圧エネルギM2を、「追加エネルギなし」の場合のエネルギM1よりも小さくしている。この時、コントローラ20は、次式が成立するように制御する。
M2=M1−S2
このような制御が実行されることで、「追加エネルギあり」の時にブームシリンダ7に供給されるエネルギと、「追加エネルギなし」の時にブームシリンダ7に供給されるエネルギとが同じになり、追加エネルギあり/なしで同じ操作性を保つことができる。また、「追加エネルギあり」の場合は、メインポンプ3が発生するエネルギを減少させて、駆動源であるエンジン1の負荷が減少するので、エンジン1の燃料消費量を減少することができる。
【0049】
しかしながら、上述したように、ブーム上げの場合、追加エネルギはコントロールバルブ4を通過してアクチュエータであるブームシリンダ7に作用するため、コントロールバルブ4でエネルギ損失が生じ、十分な燃料低減効果が得られないという憾みがあった。そこで、旋回操作の場合には、以下の制御を行っている。
【0050】
図3の旋回操作において、「追加エネルギあり」の場合は、ブーム上げの場合と同様に、旋回操作に応じて油圧ポンプモータ11で油圧エネルギS4を発生する(作動油を吐出する)。同時に、メインポンプ3で発生する油圧エネルギM4を、「追加エネルギなし」の場合のエネルギM3よりも小さくしている。この時、コントローラ20は、次式が成立するように制御する。
M4=M3−S4×K
ここで、Kは上述した減少率を示し、作動油が旋回体操作用の制御弁6を通過する時に失われるエネルギに基づいて1以上の値を、予め設定する。具体的には、旋回体操作用の制御弁6に入る作動油のエネルギ(圧力×流量の時間積分値)を、旋回体操作用の制御弁6から出てくる作動油のエネルギ(圧力×流量の時間積分値)で除した値にする。
【0051】
例えば、旋回体操作用の制御弁6の効率(=(出てくる作動油のエネルギ)÷(入る作動油のエネルギ))が0.8の場合、減少率Kは、1÷0.8=1.25として算出され、この値を設定する。このことは、旋回体操作用の制御弁6の効率が悪ければ(損失が大きければ)、減少率Kを大きくすることを意味する。
【0052】
一方、コントローラ20は、容量制御装置3aへ吐出流量減指令を出力し、メインポンプ3の容量を減少制御し、油圧ポンプモータ11からの追加された吐出流量分を減少させる。この旋回操作において、作動油を合流させる場所(エネルギを追加する場所)は旋回体操作用の制御弁6と旋回油圧モータ8の間の第3管路33になるため、上述したブーム上げの場合と異なり、油圧ポンプモータ11から吐出した作動油は旋回体操作用の制御弁6を通過しない。このため、制御弁通過による作動油の漏れや圧力損失を原因とするエネルギ損失が生じないので、コントローラ20は、メインポンプ3の吐出流量を油圧ポンプモータ11の吐出流量以上に大きく減少させる。
【0053】
すなわち、コントローラ20は、右旋回の場合におけるメインポンプ3が発生する油圧エネルギの減少率を、ブーム上げの場合の減少率よりも大きくする。ここで、メインポンプ3が発生する油圧エネルギの減少率Kは次式で定義される。 K={(追加エネルギなしの場合にメインポンプ3が発生するエネルギ)−(追加エネルギありの場合にメインポンプ3が発生するエネルギ)}÷(油圧ポンプモータ11が発生するエネルギ)
換言すると、ブーム上げのように、追加エネルギ発生手段である油圧ポンプモータ11が発生したエネルギがアクチュエータであるブームシリンダ7を駆動するまでに生じる損失が大きい場合と、旋回のように、追加エネルギ発生手段である油圧ポンプモータ11が発生したエネルギがアクチュエータである旋回油圧モータ8を駆動するまでに生じる損失が小さい場合とでは、メインポンプ3が発生するエネルギの減少率Kが異なる。旋回のように、損失が小さければ小さいほど、減少率Kを大きくするようにコントローラ20は制御している。
【0054】
また、ブーム上げのように、エネルギを追加する場所が、流量調整手段としてのコントロールバルブ4のメインポンプ3側の場合と、旋回のように、流量調整手段としてのコントロールバルブ4のアクチュエータ8側の場合とでは、メインポンプ3が発生するエネルギの減少率Kが異なる。旋回のように、コントロールバルブ4のアクチュエータ8側のときに、減少率Kを大きくするようにコントローラ20は制御している。
【0055】
なお、旋回体操作用の制御弁6に入る作動油のエネルギを、旋回体操作用の制御弁6から出てくる作動油のエネルギで除した値は、操作量が小さい時ほど大きくなる傾向があるので、操作量が小さい時は減少率Kを大きくしても良い。
【0056】
このようにすることで、「追加エネルギあり」の時に旋回油圧モータ8に供給されるエネルギと、「追加エネルギなし」の時に旋回油圧モータ8に供給されるエネルギが同じになり、追加エネルギあり/なしで同じ操作性を保つことができる。また、「追加エネルギあり」の場合は、メインポンプ3が発生するエネルギを減少させて、駆動源であるエンジン1の負荷が減少するので、エンジン1の燃料消費量を減少することができる。
【0057】
以上のように、エネルギ蓄積手段である蓄電手段10に十分な電力が蓄電されている時に旋回操作が行われた時は、ブーム上げ操作が行われた時よりも大きな燃料低減効果が得られる。
【0058】
上述した本発明の建設機械の第1の実施の形態によれば、回収したエネルギを効率良く使用することで、動力源であるエンジン1の動力を低減して建設機械全体の燃量消費を大幅に低減することのできる建設機械を提供できる。
【0059】
なお、ブーム上げでエネルギを追加する場合は、メインポンプ3と油圧ポンプモータ11の流量制御に誤差が生じても、それらの合計流量はブーム操作用の制御弁5により調整されるため、ブームシリンダ7に供給される流量の誤差は小さく、操作性を大きく損なうことはない。しかし、旋回操作でエネルギを追加する場合は、油圧ポンプモータ11の流量制御の誤差は、旋回体操作用の制御弁6により調整されないため、そのまま旋回油圧モータ8に供給される流量の誤差になる。しかし、旋回体の慣性モーメントが大きいため、旋回動作に大きな影響を及ぼさず、操作性を大きく損なうことはない。
【0060】
また、本実施の形態においては、ブームシリンダ7と旋回油圧モータ8をアクチュエータとした場合について説明したが、これに限るものではない。ブームシリンダ7と旋回油圧モータ8の代わりに別のアクチュエータを用いても良い。ただし、油圧ポンプモータ11から吐出した作動油が旋回体操作用の制御弁6を通らずに直接供給されるアクチュエータ(図1の場合は旋回油圧モータ8)は、油圧ポンプモータ11の流量制御の誤差があまり影響しないアクチュエータにするか、その誤差による操作性悪化を許容できるアクチュエータにする必要がある。
【実施例2】
【0061】
以下、本発明の建設機械の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図4は本発明の建設機械の第2の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0062】
図4に示す本発明の建設機械の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。
第1の実施の形態における油圧ポンプモータ11が吐出した作動油を旋回体操作用の制御弁6と旋回油圧モータ8の間で合流させる構成(切替弁12d,12eとそれらの前後の油圧配管)を省略し、旋回油圧モータ8の回転軸とその回転軸を直接又はギア等を介して機械的に連結した旋回電動機13(原動機)を新たに設けている(追加エネルギ発生手段)。
【0063】
旋回電動機13は、コントローラ20からの指令により、蓄電手段10の電力を使ってトルクを発生する力行制御が実行される。旋回体は、旋回油圧モータ8と旋回電動機13の合計トルクで駆動される。換言すると、旋回体は旋回電動機13と旋回油圧モータ8とが連結された複合アクチュエータで駆動される。
【0064】
次に、上述した本発明の建設機械の第2の実施の形態の動作について説明する。まず、ブーム上げ、ブーム下げ、旋回減速のときにコントローラ20が実行する制御は、省略した切替弁12d,12eへの指令等を除き上述の第1の実施の形態と大略同じである。
【0065】
ところで、エネルギ蓄積手段である蓄電手段10に十分な電力が蓄電されているときに、図示しない操作レバーによる右旋回又は左旋回の操作が行われた場合には、コントローラ20により、以下の追加エネルギシーケンス制御が行われる。旋回体操作用の制御弁6等の動作は上述の第1の実施の形態と同じである。
【0066】
まず、コントローラ20に入力される蓄電手段10の電力の蓄電量と、予め設定されている設定値とを比較し、入力値が設定値を超えている場合に、右旋回又は左旋回の操作信号が入力すると、コントローラ20は、上述した切替弁12cの電磁操作部へ閉指令を、旋回電動機13へ力行指令をそれぞれ出力するので、旋回電動機13は旋回油圧モータ8をアシストして、旋回体駆動のトルクを増加させる。このことにより、右旋回又は左旋回を行うために、追加エネルギが付加される。この追加エネルギは、検出される旋回電動機13のトルクと回転数との積を時間積分することで求めることができる。
【0067】
一方、コントローラ20は、旋回電動機13から旋回油圧モータ8に追加されたエネルギ分を減少させるように、容量制御装置3aへ吐出流量減指令を出力し、メインポンプ3の容量を減少制御する。この旋回体の操作において、旋回電動機13で発生するエネルギは旋回体に直接作用する。このため、上述したブーム上げの油圧ポンプモータ11で発生したエネルギの制御弁での損失ということは生じないので、コントローラ20は、メインポンプ3で発生するエネルギを旋回電動機13で発生するエネルギ以上に大きく減少させる。
【0068】
このことにより、旋回体を駆動するエネルギを変化させず、操作性の変化を発生させない。また、旋回電動機13が発生したエネルギ以上にメインポンプ3が発生するエネルギを減少させることになる。この結果、駆動源であるエンジン1の負荷が減少するので、エンジン1の燃料消費量を大きく減少できる。
【0069】
エネルギ蓄積手段である蓄電手段10に十分な電力が蓄電されている状態の下、コントローラ20は、旋回体駆動時に、旋回電動機13による追加エネルギシーケンス制御を行い、ブーム駆動時に、上述した油圧ポンプモータ11を油圧ポンプとして作動させる追加エネルギシーケンス制御を行う。ブームと旋回体を同時に駆動する場合には、旋回電動機13による追加エネルギシーケンス制御と油圧ポンプモータ11を油圧ポンプとして作動させる追加エネルギシーケンス制御とを行う。
【0070】
次に、上述した本発明の建設機械の第2の実施の形態における旋回電動機発生エネルギとメインポンプ発生エネルギ等と旋回体駆動エネルギとの関係について図5を用いて説明する。図5は本発明の建設機械の第2の実施の形態の旋回操作時における旋回電動機発生エネルギとメインポンプ発生エネルギと旋回油圧モータ及び旋回電動機の合計エネルギとの関係の一例を示す特性図である。図5において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0071】
図5において、破線部は「追加エネルギなし」の特性を示し、蓄電手段10に十分な電力が蓄電されておらず、旋回電動機13で追加エネルギを発生しない場合を表す。実線部は「追加エネルギあり」の特性を示し、蓄電手段10に十分な電力が蓄電されていて、旋回電動機13で追加エネルギを発生する場合を表す。
【0072】
図5の旋回操作において、「追加エネルギあり」の場合は、旋回操作に応じて旋回電動機13でエネルギS6を発生する(トルクを発生する)。同時に、メインポンプ3で発生する油圧エネルギM6を、「追加エネルギなし」の場合のエネルギM5よりも小さくしている。この時、コントローラ20は、次式が成立するように制御する。
M6=M5−S6×K
ここで、Kは上述した減少率を示し、作動油が旋回体操作用の制御弁6を通過する時に失われるエネルギに基づいて1以上の値を、予め設定する。具体的には、旋回体操作用の制御弁6に入る作動油のエネルギ(圧力×流量の時間積分値)を、旋回油圧モータで発生するエネルギ(トルク×角速度の時間積分値)で除した値にする。
【0073】
例えば、旋回体操作用の制御弁6の効率(=(出てくる作動油のエネルギ)÷(入る作動油のエネルギ))が0.8、旋回油圧モータ8の効率(=(発生する回転エネルギ)÷(入る作動油のエネルギ))が0.9の場合、減少率Kは、1÷(0.8×0.9)≒1.39として算出され、この値を設定する。
【0074】
また、旋回電動機13と旋回油圧モータ8との間にギアが設けられ、旋回電動機13が出力したエネルギの一部がそのギアによって失われる場合は、減少率Kはその分小さくする。
【0075】
例えば、旋回体操作用の制御弁6の効率が0.8、旋回油圧モータ8の効率が0.9、旋回電動機13のギアの効率が0.9の場合、減少率Kは、0.9÷(0.8×0.9)=1.25として算出され、この値を設定する。
【0076】
なお、旋回体操作用の制御弁6に入る作動油のエネルギを、旋回油圧モータ8で発生するエネルギで除した値は、操作量が小さい時ほど大きくなる傾向があるので、操作量が小さい時は減少率Kを大きくするように制御しても良い。
【0077】
また、旋回体操作用の制御弁6に入る作動油のエネルギを、旋回油圧モータ8で発生するエネルギで除した値は、旋回油圧モータ8のメータイン側の図示しないリリーフ弁でリリーフした時は大きくなるので、旋回油圧モータ8のメータイン圧があらかじめ設定した閾値を超えた時は減少率Kを大きくするように制御しても良い。
【0078】
さらに、一般的に電動機は油圧ポンプよりも出力を増減させる時の応答が速いため、旋回電動機13の出力を急激に増減させたとしても、それに合わせてメインポンプ3の出力は増減できない。よって、メインポンプ3の出力の増減の応答遅れの分だけ、旋回電動機13の出力の増減を遅らせるように制御しても良い。
【0079】
このようにすることで、「追加エネルギあり」の時に旋回体に与えられるエネルギと、「追加エネルギなし」の時に旋回体に与えられるエネルギとが同じになり、追加エネルギあり/なしで同じ操作性を保つことができる。また、「追加エネルギあり」の場合は、メインポンプ3が発生するエネルギを減少させて、駆動源であるエンジン1の負荷が減少するので、エンジン1の燃料消費量を減少することができる。
【0080】
以上のように、エネルギ蓄積手段である蓄電手段10に十分な電力が蓄電されている時に旋回操作が行われた時は、ブーム上げ操作が行われた時よりも大きな燃料低減効果が得られる。
【0081】
上述した本発明の建設機械の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0082】
なお、一般的に電動機は油圧ポンプよりも高い精度で発生するエネルギを制御することが可能であるため、旋回動作の操作性を大きく損なうことはない。
【0083】
また、本実施の形態においては、ブームシリンダ7と旋回油圧モータ8をアクチュエータとした場合について説明したが、これに限るものではない。ブームシリンダ7代わりに別のアクチュエータを用いても良いし、電動機によりエネルギを追加するアクチュエータは旋回以外でも良い。
【符号の説明】
【0084】
1 エンジン
2 燃料タンク
3 メインポンプ
4 コントロールバルブ(流量調整手段)
5 ブーム操作用の制御弁
6 旋回体操作用の制御弁
7 ブームシリンダ
8 旋回油圧モータ
9 発電・電動機(原動機)
10 蓄電手段(エネルギ蓄積手段)
11 油圧ポンプモータ
12 切替弁
13 旋回電動機(原動機)
14 リリーフ弁
15 リリーフ弁
16 作動油タンク
20 コントローラ(制御手段)
30 主管路
36 第1副管路
37 第2副管路
38 第3副管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動するための油圧エネルギを発生するメインポンプと、前記メインポンプと前記アクチュエータとの間に設けた流量調整手段と、前記油圧エネルギに追加するためのエネルギを発生する追加エネルギ発生手段と、前記追加エネルギ発生手段でエネルギが発生するときに、前記メインポンプの発生する油圧エネルギを減少させる制御手段とを備えた建設機械であって、
前記追加エネルギ発生手段からの前記エネルギを追加する場所を前記アクチュエータに応じて選択的に切り替える切替手段を更に備え、
前記制御手段は、前記エネルギを追加する前記アクチュエータに応じて、前記メインポンプの発生する油圧エネルギの減少率を変更制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記切替手段は、前記エネルギを追加する前記アクチュエータに応じて、前記エネルギを追加する場所を、前記流量調整手段よりも前記メインポンプ側または前記流量調整手段よりも前記アクチュエータ側に供給するように切り替える
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械において、
前記追加エネルギ発生手段は、エネルギ蓄積手段と、前記エネルギ蓄積手段に蓄えられたエネルギにより動作する原動機と、前記原動機により駆動される油圧ポンプとを備える
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械において、
前記切替手段は、前記エネルギを追加する前記アクチュエータに応じて、前記エネルギを追加する場所を、前記流量調整手段よりも前記メインポンプ側または前記アクチュエータに直接作用するように切り替える
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の建設機械において、
前記追加エネルギ発生手段は、エネルギ蓄積手段と、前記エネルギ蓄積手段に蓄えられたエネルギにより動作する原動機とを備え、前記アクチュエータの少なくとも1つは、少なくとも1つの前記原動機と連結された複合アクチュエータである
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械において、
前記追加エネルギ発生手段は、前記複合アクチュエータを構成する前記原動機で発生するエネルギの増減の変化速度を、前記メインポンプの出力の増減の応答遅れに合わせて制御可能とした
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1に記載の建設機械において、
前記制御手段は、前記追加エネルギ発生手段の発生したエネルギが前記アクチュエータを駆動するまでに生じる損失が小さいほど、前記メインポンプが発生するエネルギの減少率を大きくするように、前記メインポンプを制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項8】
請求項7に記載の建設機械において、
前記制御手段は、エネルギを追加する場所が前記流量調整手段よりも前記アクチュエータ側の時は、エネルギを追加する場所が前記流量調整手段よりも前記メインポンプ側の時よりも、前記メインポンプが発生するエネルギの減少率を大きくするように、前記メインポンプを制御する
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24387(P2013−24387A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162499(P2011−162499)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】