説明

建設機械

本発明の建設機械は、原動機10により駆動される可変容量油圧ポンプ11,12と、この油圧ポンプ11からの吐出油により駆動される単一の走行用アクチュエータ5と、油圧ポンプ11,12からの吐出油により駆動される複数の作業用アクチュエータ2a,4d〜4fと、油圧ポンプ11から走行用アクチュエータ5および複数の作業用アクチュエータ2a,4d〜4fへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数のコントロールバルブ13〜17と、走行用アクチュエータ2の駆動指令を検出する検出手段24と、検出手段24により走行用アクチュエータ5の駆動指令が検出されると、油圧ポンプ11の最大吐出量を増加させる吐出量制御手段11a,30,40,43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、油圧アクチュエータを駆動するための複数のコントロールバルブを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
一般に、一対のクローラを有するクローラ式建設機械には、各クローラを駆動する一対の走行用油圧モータ、各油圧モータに駆動圧を供給する一対の油圧ポンプ、各油圧ポンプから各油圧モータへの圧油の流れを制御する一対のコントロールバルブなどの油圧機器が設けられる。
このようなクローラ式建設機械(例えばクローラ式油圧ショベル)のコントロールバルブのセクションをクローラ専用として用いるのではなく、ホイール式建設機械(例えばホイール式油圧ショベル)に流用可能とすることが、コスト低減の点からは好ましい。クローラ式油圧ショベルのコントロールバルブのセクションをホイール式油圧ショベルに流用する場合、各油圧ポンプからの圧油をコントロールバルブの下流側で合流させ、この合流油をホイール用油圧モータに供給する。これにより油圧モータが高速回転し、ホイール式油圧ショベルの高速走行が可能となる。
しかし、ホイール式油圧ショベルでは、一般的に走行用油圧モータが1つであるにも拘わらず、一対のコントロールバルブを用い、合流等を要するため、走行系の回路構成が複雑となってしまう。
また、ホイール式油圧ショベルには多種多様の作業用アタッチメントが装着されるため、クローラ式油圧ショベルに比べてアクチュエータの数が増加する場合がある。ところが、アクチュエータの数が増加するとコントロールバルブを追加しなければならないため、クローラ式油圧ショベルのコントロールバルブのセクションをそのまま流用することができず、コストの増加を招来する。
【発明の開示】
本発明の目的は、走行系の回路構成の複雑化を防ぎ、しかもコントロールバルブのセクションを節約することができる建設機械を提供することにある。
本発明による建設機械は、原動機により駆動される可変容量油圧ポンプと、この油圧ポンプからの吐出油により駆動される単一の走行用アクチュエータと、油圧ポンプからの吐出油により駆動される複数の作業用アクチュエータと、油圧ポンプから走行用アクチュエータおよび複数の作業用アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数のコントロールバルブと、走行用アクチュエータの駆動指令を検出する検出手段と、検出手段により走行用アクチュエータの駆動指令が検出されると、油圧ポンプの最大吐出量を増加させる吐出量制御手段とを備える。
これにより単一のメインポンプからの吐出油により走行モータを高速で駆動することができる。したがってホイール式建設機械の走行回路を合流回路とする必要がなく、コントロールバルブのセクションを節約することができる。
本発明は、ホイール式油圧ショベルに適用することが好ましい。この場合、走行用、旋回用、ブーム用、アーム用、作業具用の各アクチュエータとこれら各アクチュエータへの圧油の流れを制御するコントロールバルブを設ければよい。これに加えて予備のコントロールバルブを設けてもよい。これによりホイール式油圧ショベルのコントロールバルブのセクションをクローラ式油圧ショベルに流用することができる。
油圧ポンプの最大傾転角を増減する、あるいは油圧ポンプの最大傾転角と原動機回転数を増減することでポンプ吐出量を増加することが好ましい。走行用アクチュエータへ圧油を供給する油圧ポンプのみ、最大傾転を増加すればよい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明が適用されるホイール式油圧ショベルの外観を示す図。
図2は、図1のホイール式油圧ショベルの油圧回路図。
図3は、本発明の実施の形態に係わるホイール式油圧ショベルの走行パイロット油圧回路図。
図4は、本発明の実施の形態に係わるホイール式油圧ショベルの作業用パイロット油圧回路図。
図5は、図2に示した油圧ポンプの傾転角を制御する制御回路のブロック図。
図6は、図5の制御回路の詳細を示す図。
図7は、図2に示したエンジンの回転数を制御する制御回路のブロック図。
図8は、図7の制御回路の詳細を示す図。
図9は、エンジン回転数の制御手順を示すフローチャート。
図10は、本発明が適用されるクローラ式油圧ショベルの外観を示す図。
図11は、図10のクローラ式油圧ショベルの油圧回路図。
図12は、本発明が適用されるホイール式油圧ショベルの変形例を示す図。
図13は、図12のホイール式油圧ショベルの油圧回路図。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図1〜図13を参照して本発明をホイール式油圧ショベルに適用した一実施の形態を説明する。
図1に示すようにホイール式油圧ショベルは、走行体1と、走行体1の上部に旋回可能に搭載された旋回体2とを有する。旋回体2には運転室3とブーム4a、アーム4b、バケット4cからなる作業用フロントアタッチメント4が設けられている。ブーム4aはブームシリンダ4dの駆動により起伏し、アーム4bはアームシリンダ4eの駆動により起伏し、バケット4cはバケットシリンダ4fの駆動によりクラウドまたはダンプする。走行体1には油圧駆動による走行モータ5が設けられ、走行モータ5の回転はプロペラシャフト、アクスルを介して車輪6(タイヤ)に伝達される。
図2は、本実施の形態に係わる建設機械に設けられたアクチュエータ駆動用の油圧回路図である。この油圧回路は、エンジン10により駆動される一対のメインポンプ11,12と、メインポンプ11に対して直列に配設された3つのコントロールバルブ13〜15と、メインポンプ12に対して直列に配設された3つのコントロールバルブ16〜18と、コントロールバルブ13により制御された圧油により駆動する走行モータ5と、コントロールバルブ14により制御された圧油により駆動するバケットシリンダ4fと、コントロールバルブ15により制御された圧油により駆動するブームシリンダ4dと、コントロールバルブ16により制御された圧油により駆動するアームシリンダ4eと、コントロールバルブ17により制御された圧油により駆動する旋回モータ2aとを備える。なお、コントロールバルブ18は予備であり、必ずしも必要ではない。
本実施の形態では、メインポンプ11,12からの圧油を合流して走行モータ5へ導くのではなく、メインポンプ11の吐出油を後述するように増量して走行モータ5へ導く。これにより走行用コントロールバルブの個数を1つ節約することができる。
パイロットポンプ21は走行用コントロールバルブ13および作業用コントロールバルブ14〜17にそれぞれパイロット圧を供給する。
図3は、ホイール式油圧ショベルの走行パイロット油圧回路図である。この油圧回路は、パイロットポンプ21と、走行ペダル22aによって駆動されるパイロットバルブ22と、図示しない前後進切換スイッチの操作により前進位置、後進位置、中立位置に切り換えられる前後進切換バルブ23とを備える。スイッチ操作により前後進切換バルブ23を前進位置または後進位置に切り換え、走行ペダル22aを操作すると、コントロールバルブ13にはパイロットポンプ21からのパイロット圧が作用する。これによりメインポンプ11からの圧油がコントロールバルブ13を介して走行モータ5に供給され、走行モータ5の回転により車両を前進または後進させることができる。パイロットバルブ22には圧力センサ24が接続され、圧力センサ24により走行指令としてのパイロット圧Ptが検出される。
作業用パイロット回路の一例として、ブームパイロット回路を図4に示す。この油圧回路は、パイロットポンプ21と、操作レバー25によって駆動されるパイロットバルブ26とを有する。なお、図示は省略するが他の作業用パイロット回路も同様に構成される。操作レバー25を操作するとその操作量に応じてパイロットバルブ26が駆動され、コントロールバルブ15にはパイロットポンプ21からのパイロット圧が作用する。これによりメインポンプ11からの圧油がコントロールバルブ15を介してブームシリンダ4dに導かれ、ブームシリンダ4dの伸縮によりブーム4aが昇降する。パイロットバルブ26には圧力センサ27が接続され、圧力センサ27により作業指令としてのパイロット圧が検出される。
図3,4のメインポンプ11は可変容量型ポンプであり、その傾転角はレギュレータ11aにより調整される。図5は、ポンプ傾転角を制御する制御回路のブロック図である。図示のようにレギュレータ11aは電磁弁31を介して油圧源32に接続され、レギュレータ11aには電磁弁31の切換に応じたパイロット圧が作用する。CPUなどで構成される制御回路30には、走行モータ5の回転数を検出する回転数センサ33と、圧力センサ24,27がそれぞれ接続されている。傾転角制御回路30では以下のような演算を実行し、電磁弁31にロー信号またはハイ信号を出力する。これによりメインポンプ11の最大傾転角はqp1(増量)またはqp2(通常)のいずれかに制御される。
図6は、傾転角制御回路30の詳細を説明する概念図である。回転数センサ33と圧力センサ24,27からの信号は判定部31に入力される。判定部36は回転数センサ33からの信号によりモータ回転数が所定値N1以上の高回転か、所定値N2(<N1)未満の低回転か、所定値N2以上かつ所定値N1未満の不感帯かを判定する。また、圧力センサ27からの信号によりフロントアタッチメント4の操作の有無を、圧力センサ24からの信号により走行ペダル22aの操作の有無をそれぞれ判定する。
そして、走行操作有り、かつ、モータ回転が低回転、かつ、フロント操作有りの場合は通常と判定し、フロント操作無しの場合は増量と判定する。走行操作有り、かつ、モータ回転が高回転の場合は、フロント操作に拘わらず傾転角増量と判定し、走行操作無しの場合は、フロント操作に拘わらず傾転角通常と判定する。走行操作有り、かつ、モータ回転が不感帯の場合は、傾転角変化なしと判定する。
設定部37には傾転角qp2が設定され、設定部38には傾転角qp1が設定されている。なお、qp1>qp2である。選択部39は判定部36の判定結果に応じて傾転角qp1,qp2のいずれかを選択する。すなわち判定部36で傾転角増量と判定されると傾転角qp1を選択し、傾転角通常と判定されると傾転角qp2を選択し、変化無しと判定されると現在の傾転角qp1またはqp2をそのまま選択する。そして、傾転角qp1が選択されると電磁弁31にハイ信号を出力し、ポンプ最大傾転角をqp1に制御する。傾転角qp2が選択されると電磁弁31にロー信号を出力し、ポンプ最大傾転角をqp2に制御する。
ポンプ吐出量はエンジン回転数に応じて変化する。図7は、エンジン回転数を制御する制御回路のブロック図である。エンジン10のガバナレバー41は、リンク機構42を介してパルスモータ43に接続され、パルスモータ43の回転によりエンジン回転数が変更される。すなわちパルスモータ43の正転でエンジン回転数が上昇し、逆転で低下する。ガバナレバー41にはリンク機構42を介してポテンショメータ44が接続され、ポテンショメータ44によりエンジン10の回転数に応じたガバナレバー角度を検出し、エンジン制御回転数Nθとして制御回路40に入力される。
制御回路40には、回転数センサ33と、圧力センサ24,27と、図示しない回転数指令用の操作部材(例えば燃料レバー)の操作量を検出する検出器45がそれぞれ接続されている。回転数制御回路40は以下のような演算を実行し、パルスモータ43に制御信号を出力する。
図8は、回転数制御回路40の詳細を説明する概念図である。回転数演算部47,48には、各々図示のように圧力センサ24による検出値Ptと目標回転数Nt1,Nt2の関係が予め記憶され、この特性から走行ペダル22aの操作量に応じた目標回転数Nt2,Nt1をそれぞれ演算する。なお、回転数演算部47の特性は走行に適した特性であり、目標回転数演算部48の特性は作業用アタッチメント4を使用して作業を行う場合に適した特性である。これらの特性によれば、ペダル操作量の増加に伴い目標回転数Nt1,Nt2がアイドル回転数Niから直線的に増加している。目標回転数Nt1の増加の傾きは目標回転数Nt2の増加の傾きより急であり、目標回転数Nt1の最大値Nt1maxは目標回転数Nt2の最大値Nt2maxより大きい。
回転数演算部46には、図示のように検出器45による検出値Xと目標回転数Nxの関係が予め記憶され、この特性から燃料レバーの操作量Xに応じた目標回転数Nxを演算する。なお、目標回転数Nxの最大値Nxmaxは、回転数演算部48の最大値N2maxに等しく設定されている。
判定部49は、前述した判定部36におけるのと同様な判定を行う。すなわち、走行操作有り、かつ、モータ回転が低回転、かつ、フロント操作有りの場合は回転数通常と判定し、フロント操作無しの場合は回転数増量と判定する。走行操作有り、かつ、モータ回転が高回転の場合は、フロント操作に拘わらず回転数増量と判定し、走行操作無しの場合は、フロント操作に拘わらず回転数通常と判定する。走行操作有り、かつ、モータ回転が不感帯の場合は、変化なしと判定する。
選択部50は判定部49の判定結果に応じて目標回転数Nt1,Nt2のいずれかを選択する。すなわち判定部49で回転数増量と判定されると目標回転数Nt1を選択し、回転数通常と判定されると目標回転数Nt2を選択し、変化無しと判定されると現在の目標回転数Nt1またはNt2をそのまま選択する。
選択部51は、選択部50で選択された目標回転数Nt1またはNt2と目標回転数演算部46で演算された目標回転数Nxを比較し、その大きい方の値を選択する。サーボ制御部52は、選択された回転数(回転数指令値Nin)とポテンショメータ44により検出されたガバナレバー41の変位量に相当する制御回転数Nθとを比較する。そして、図9に示す手順にしたがって両者が一致するうようにパルスモータ43を制御する。
図9において、まずステップS21で回転数指令値Ninと制御回転数Nθとをそれぞれ読み込み、ステップS22に進む。ステップS22では、Nθ−Ninの結果を回転数差Aとしてメモリに格納し、ステップS23において、予め定めた基準回転数差Kを用いて、|A|≧Kか否かを判定する。肯定されるとステップS24に進み、回転数差A>0か否かを判定し、A>0ならば制御回転数Nθが回転数指令値Ninよりも大きい、つまり制御回転数が目標回転数よりも高いから、エンジン回転数を下げるためステップS25でモータ逆転を指令する信号をパルスモータ43に出力する。これによりパルスモータ43が逆転しエンジン回転数が低下する。
一方、A≦0ならば制御回転数Nθが回転数指令値Ninよりも小さい、つまり制御回転数が目標回転数よりも低いから、エンジン回転数を上げるためステップS26でモータ正転を指令する信号を出力する。これにより、パルスモータ43が正転し、エンジン回転数が上昇する。ステップS23が否定されるとステップS27に進んでモータ停止信号を出力し、これによりエンジン回転数が一定値に保持される。ステップS25〜S27を実行すると始めに戻る。
次に、本実施の形態に係わる油圧制御装置の特徴的な動作について説明する。
車両走行のみを行う場合には、例えば回転数指令用の燃料レバーをアイドル位置に操作し、操作レバー25を中立位置に操作し、前後進切換スイッチを前進位置または後進位置に操作する。この状態で走行ペダル22aを最大操作すると、コントロールバルブ13にパイロット圧が作用してコントロールバルブ13が切り換えられ、メインポンプ11からの圧油によって走行モータ5が回転する。
このとき傾転角制御回路30での演算により選択部39は傾転角qp1を選択し、電磁弁31にハイ信号を出力してポンプ最大傾転角を通常よりも大きい傾転角qp1に制御する。また、回転数制御回路40での演算により選択部50,51は回転数指令値Ninとして目標回転数Nt1maxを選択し、サーボ制御によりパルスモータ43に制御信号を出力してエンジン回転数を通常よりも高い回転数Nt1に制御する。
このように走行時にポンプ最大傾転角とエンジン回転数を増量することで、メインポンプ11の吐出量が増加する。この場合、吐出油の増加量は、走行性能を確保するために必要な流量、例えばメインポンプ12の吐出量相当となるように、ポンプ最大傾転角qp2とエンジン回転数Nt1maxが決定される。これにより単一のメインポンプ11から走行モータ5に十分な圧油が供給され、ホイール式油圧ショベルを高速走行させることができる。この場合、目標回転数設定部47で設定された目標回転数Nt1の増加の傾きは急なので、走行ペダル22aの操作によりエンジン回転数が即座に増加し、加速性も良好である。
フロントアタッチメント4を操作しながら車両走行する場合、走行モータ5の回転数が所定値N2以上(場合によってはN1以上)であれば、前述したのと同様にポンプ最大傾転角がqp1に制御され、エンジン回転数は目標回転数Nt1に制御される。これに対して走行モータ5の回転数が所定値N1未満(場合によってはN2未満)の低速走行時には、選択部39は傾転角qp2を選択し、選択部50,51は回転数指令値Ninとして目標回転数Nt2を選択する。これによりポンプ最大傾転角がqp1より小さいqp2に制御され、エンジン回転数がNt1より小さいNt2に制御される。
このようにポンプ傾転角とエンジン回転数を走行時よりも低い値に制御することで、メインポンプ11からの吐出量が低減され、作業用アクチュエータ4d,4fの駆動速度を一定以下に保つことができる。この場合、モータ回転数が不感帯域にある場合には、ポンプ最大傾転角と目標回転数は変化しないで現在の値に保持される。これによりモータ回転数が低回転から高回転、または高回転から低回転に変化する場合に制御のハンチングを防止できる。
車両を停止した状態で作業を行う場合、選択部39は傾転角qp2を選択し、選択部50,51は回転数指令値Ninとして目標回転数Nt2を選択する。これによりポンプ最大傾転角がqp2に制御され、エンジン回転数がNt2に制御され、ポンプ吐出量が低減される。なお、非走行時には、ペダル操作をやめて燃料レバーの操作によりエンジン回転数を制御してもよい。
以上説明したホイール式油圧ショベルの油圧回路は、以下のようにクローラ式油圧ショベルに流用することができる。
図10に示すように、クローラ式油圧ショベルは一対のクローラ1A,1Bを有し、各クローラ1A,1Bは走行モータ5A,5Bによりそれぞれ、駆動される。旋回体2の前部には図1と同様のフロントアタッチメント4が装着されている。
クローラ式油圧ショベルに設けられたアクチュエータ駆動用の油圧回路を図11に示す。なお、図2と同一の箇所には同一の符号を付す。図11に示すように、コントロールバルブ13には一方の走行モータ5Aが接続され、予備のコントロールバルブ18には他方の走行モータ5Bが接続されている。メインポンプ11,12からの吐出油はコントロールバルブ13,18を介してそれぞれ走行モータ5A,5Bに供給され、各走行モータ5A,5Bが駆動される。これにより各クローラ1A,1Bを互いに独立駆動することができる。この場合、メインポンプ11の最大傾転角とエンジン回転数はともに増量されることなく、ポンプ11の最大吐出量は通常の値に制御される。
本実施の形態によれば以下のような効果を奏することができる。
(1) ホイール式油圧ショベルの走行時にメインポンプ11の最大傾転角とエンジン回転数を増加するようにした。これによりポンプ吐出量を増量することができ、合流回路を形成することなくメインポンプ11からの圧油のみによって車両を高速走行することができる。その結果、図2に示すように、ブームシリンダ4d、アームシリンダ4e、バケットシリンダ4f、旋回モータ2a、走行モータ5の各アクチュエータに対応してそれぞれコントロールバルブ13〜17を1つづつ設けるだけでよく、コントロールバルブのセクションを節約することができる。
(2)コントロールバルブのセクションの節約により、油圧回路の圧力損失を低減することができる。
(3)クローラ式油圧ショベルのコントロールバルブのセクションをホイール式油圧ショベルに流用する場合、コントロールバルブを余らせることができる。これによりホイール式油圧ショベルに新たにアクチュエータを追加することが可能となる。この場合のホイール式油圧ショベルの一例を図12に、その油圧回路を図13にそれぞれ示す。図12のものは、図1に示すブーム4aを第1のブーム4a1、第2のブーム4a2の2分割構造にし、それらの間に、それらを相対的に回動可能にするポジショニングシリンダ4hを設けたものである。ポジションシリンダ4hの伸縮はコントロールバルブ18の駆動により制御される。
(4)メインポンプ11の最大傾転を2段階に制御するようにしたので、走行時にポンプ吐出油を容易に増量することができる。
(5)ポンプ最大傾転角の増量時に、エンジン回転数を増加するようにしたので、走行時にポンプ吐出油を大幅に増量することができる。
(6)一対のメインポンプ11,12のうち、一方のメインポンプ11からの吐出量を増加して走行モータ5を駆動するので、他方のメインポンプ12の最大傾転角を変更可能とする必要はなく、メインポンプ12については従来のものをそのまま使用することができる。
なお、上記実施の形態では、ポンプ最大傾転角とエンジン回転数をそれぞれ変更するようにしたが、ポンプ最大傾転角のみ、またはエンジン回転数のみを変更するようにしてもよい。ホイール式油圧ショベルとクローラ式油圧ショベルに用いたアクチュエータの種類や数は上記実施の形態に限定されない。走行パイロット圧により走行モータ5の駆動指令を検出するようにしたが、モータ駆動圧により検出してもよい。制御回路30,40、レギュレータ11a、パルスモータ43等により吐出量制御手段を構成したが、他の構成によりポンプ吐出量を変更するようにしてもよい。走行指令および作業指令をパイロット回路に設けた圧力センサ24,27で検出しているが、圧力スイッチ等、他の検出手段を用いてもよい。また、走行ペダル22aと操作レバー25の操作をストローク計やマイクロスイッチ等で直接検出してもよい。作業用フロントアタッチメント4としてバケット4c以外の作業具を用いてもよい。例えば掘削作業具としてのバケット4c以外に、把持、荷役作業具としてのフォーク、リフティングマグネット等や、破砕作業具としての破砕装置等、作業形態に応じた種々の作業具を用いてもよい。
【産業上の利用の可能性】
以上では、建設機械としてホイール式油圧ショベルとクローラ式油圧ショベルを例に挙げて説明したが、油圧ショベル以外の他の建設機械にも本発明を適用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機により駆動される可変容量油圧ポンプと、
この油圧ポンプからの吐出油により駆動される単一の走行用アクチュエータと、
前記油圧ポンプからの吐出油により駆動される複数の作業用アクチュエータと、
前記油圧ポンプから前記走行用アクチュエータおよび前記複数の作業用アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数のコントロールバルブと、
前記走行用アクチュエータの駆動指令を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記走行用アクチュエータの駆動指令が検出されると、前記油圧ポンプの最大吐出量を増加させる吐出量制御手段とを備えることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械はホイール式油圧ショベルである。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記作業用アクチュエータは、旋回体を旋回する旋回用アクチュエータと、ブーム、アーム、作業具をそれぞれ駆動するブーム用アクチュエータ、アーム用アクチュエータ、作業具用アクチュエータであり、
前記コントロールバルブは、前記走行用アクチュエータへの圧油の流れを制御する走行用コントロールバルブと、前記旋回用アクチュエータへの圧油の流れを制御する旋回用コントロールバルブと、前記ブーム用アクチュエータへの圧油の流れを制御するブーム用コントロールバルブと、前記アーム用アクチュエータへの圧油の流れを制御するアーム用コントロールバルブと、前記作業具用アクチュエータへの圧油の流れを制御する作業具用コントロールバルブである。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
さらに予備のコントロールバルブを備える。
【請求項5】
請求項4に記載のコントロールバルブと、
一対のクローラをそれぞれ駆動する一対のクローラ走行用アクチュエータとを備え、
前記走行用コントロールバルブと前記予備のコントロールバルブにより前記一対のクローラ走行用アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の建設機械において、
前記吐出量制御手段は、前記油圧ポンプの最大傾転を増減する傾転角制御手段を有し、前記検出手段により前記走行用アクチュエータの駆動指令が検出されると、前記油圧ポンプの最大傾転を増加する。
【請求項7】
請求項6記載の建設機械において、
前記吐出量制御手段は、さらに前記原動機の回転数を制御する回転数制御手段を有し、前記検出手段により前記走行用アクチュエータの駆動指令が検出されると、前記油圧ポンプの最大傾転を増加するとともに前記原動機の回転数を増加する。
【請求項8】
請求項6または7に項記載の建設機械において、
前記油圧ポンプは少なくとも前記走行用アクチュエータへ圧油を供給する第1の油圧ポンプと、少なくとも前記走行用アクチュエータ以外へ圧油を供給する第2の油圧ポンプを有し、前記検出手段により前記走行用アクチュエータの駆動指令が検出されると、前記第1の油圧ポンプのみ最大傾転を増加する。

【国際公開番号】WO2004/029369
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【発行日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539437(P2004−539437)
【国際出願番号】PCT/JP2002/009965
【国際出願日】平成14年9月26日(2002.9.26)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】