説明

弁体回転発電装置

【課題】流体管路のリフト弁に発電機を設置しやすくする。
【解決手段】流体管路1にその管路を開閉するリフト弁10を介設し、そのリフト弁10の弁体5の回転により発電機20を駆動させるようにした弁体回転発電装置において、前記弁体5を弁軸7の軸心周りに回転自在に設ける。前記弁体5の弁孔4側に前記弁軸7と同一軸心の弁体軸8を設けてその弁体軸8は前記弁体5と一体に回転可能とし、前記弁孔4の内側に、アーム14aを介して、前記弁体軸8を回転自在に支持するとともに前記軸心方向にガイドするガイド部9を設ける。そのガイド部9に発電用の電磁コイル21を、弁体軸8に永久磁石22を設けて前記発電機20を構成したので、弁体5は、弁軸7と弁体軸8及びガイド部9によってガイドされてその回転が安定し、発電機20は、弁孔4の内側にコンパクトに収めることができるので、弁箱内に発電機20を設置しやすい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体の流量、圧力等を制御するリフト弁に発電機を備えた弁体回転発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、玉形弁などのリフト弁式の弁装置は、様々な流体物を移送する流体管路に設置され、その管路に流れる流体物の流量、圧力等を制御するために用いられる。例えば、建築物、構造物、鉄道車両、自動車、航空機、船舶等に設置される各種管路において、流量調整装置、遮断装置、減圧装置等として使用されている。
【0003】
上記リフト弁は、所定の止水機能を確保するために、弁体と弁軸とが相互に軸心周りに回転自在になるように嵌め合わされて固定されている。これは、弁体と弁軸とが相互に軸心周りに回転しないように結合されていると、弁体が弁座に対していわゆる片当たり状態となる場合があるからである。
【0004】
上記流体管路および弁類は、各種施設、車両、あるいは船舶内等において、限られたスペース内に収まるよう密に配置されるため、流体管路は複雑な構造となる。したがって、管路内の流体には、管路各所に流れの偏り(偏流)を生じやすい。
この偏流が生じると、弁体に作用する流体圧が弁体各部で不均一となり、その結果、弁体が弁軸の軸心周りに回転することがある。
【0005】
そこで、リフト弁の弁装置内に発電機を備えて、その弁体の回転を利用して発電できるようにした技術が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1に記載のリフト弁は、弁体とそれを支える弁軸とが、弁箱内で一体に軸心周りに回転するようになっており、その弁軸上部に永久磁石を取り付け、弁箱内には、その永久磁石周囲に電磁コイルを配置して発電機を構成するようにしたものである。弁体及び弁軸が弁箱内で軸心周りに回転することにより発電され、発生した電流は、弁箱外に設けた蓄電池に補給されて充電される(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、特許文献2に記載のリフト弁は、弁箱内に流体圧を受けて弁孔を開閉する浮遊式弁体を備えた流量調整弁であり、その浮遊式弁体の上部にはストッパが設けられている。このストッパは、駆動部材を介して弁箱に支持されて、前記弁体の開閉方向に進退することにより弁孔の最大開度を調整できるようになっている。また、モータにより駆動部材を動作させれば、ストッパを弁体に当接させて閉弁させることができる。
その弁箱の外側において、前記弁体近傍には発電用の電磁コイルが設けられており、弁体外周面には磁極が形成されているので、開弁状態において弁体が回転すれば、発電されるしくみになっている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−106757号公報
【特許文献2】特開2002−130506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に示すリフト弁は、弁軸の端部を弁箱外へ突出させて、その突出した弁軸端部に発電機を設けている。このため、その突出した弁軸及び発電機により、弁装置が大型化する。流体管路には多数の弁装置が介在するため、その多数の弁装置が大型化すると、配管の設置に必要なスペースが著しく増大するので好ましくない。また、スペースが足りない場合には、発電機を設置できない場合も生じ得る。また、多数の弁装置がすべて大型化すると、配管全体の重量が著しく増大するので好ましくない。
【0009】
また、特許文献2に示すリフト弁は、弁体の外周面に磁極を形成し、弁箱外周に電磁コイルを設けている。したがって、既に設置されている弁装置に発電機を設けるためには、弁箱全体を交換する必要があるので、容易に発電機を設置できない。さらに、配管には多数の弁装置が設けられているので、多数の弁箱を発電機対応のものに交換することは、作業が大がかりとなり好ましくない。
【0010】
そこで、この発明は、流体管路のリフト弁に発電機を設置しやすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、流体管路にその管路を開閉するリフト弁を介設し、そのリフト弁の弁体の回転により発電機を駆動させるようにした弁体回転発電装置において、前記弁体を弁軸の軸心周りに回転自在に設け、前記弁体と弁軸とで構成される回転部に前記発電機を構成したのである。
【0012】
このようにすれば、発電機を、弁体と弁軸とで構成される回転部にコンパクトに収めることができるので、弁箱内に発電機を設置しやすい。また、既設のリフト弁において、弁体と弁軸とを発電機対応のものに交換すれば、蓄電池、整流器等の付属機器やその機器への配線類に対応することにより、リフト弁に容易に発電機を設置することができる。
【0013】
また、同じく、上記の課題を解決するために、次の構成としてもよい。すなわち、流体管路にその管路を開閉するリフト弁を介設し、そのリフト弁の弁体の回転により発電機を駆動させるようにした弁体回転発電装置において、前記弁体を弁軸の軸心周りに回転自在に設け、前記弁体の弁孔側に前記弁軸と同一軸心の弁体軸を設けてその弁体軸は前記弁体と一体に回転可能とする。その弁孔の内側に、アームを介して、前記弁体軸を前記軸心方向にガイドするガイド部を設け、その弁体軸とガイド部とで構成される回転部に前記発電機を構成する。
【0014】
このようにすれば、弁体は、弁軸に支持されるとともに、弁体軸によってガイドされて、その回転が安定する。また、発電機は、弁孔の内側にコンパクトに収めることができるので、弁箱内に発電機を設置しやすい。さらに、前述の構成の場合と同様、既設のリフト弁において、弁体とガイド部とを発電機対応のものに交換すれば、蓄電池、整流器等の付属機器やその機器への配線類に対応することにより、リフト弁に容易に発電機を設置することができる。
【0015】
上記の弁体軸とガイド部を設けた構成において、前記ガイド部に発電用の電磁コイルを、弁体軸に永久磁石を設けて発電機を構成すれば、ガイド部は、弁体軸の軸心周り外側に位置するので、電磁コイルは、前記弁体軸に設けた永久磁石を軸心周りに囲むように配置しやすい。
【0016】
また、前記ガイド部及び前記アームを、前記弁箱に着脱可能に設ければ、発電機を弁箱から容易に着脱できるようになる。特に、前記ガイド部に発電用の電磁コイルを、弁体軸に永久磁石を設けた場合には、弁体及び弁体軸とともに永久磁石を、ガイド部及びアームとともに電磁コイルを脱着できるようになる。このため、発電機をさらに設置しやすいものとし得るとともに、発電機の部品交換も容易となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、以上のようにしたので、流体管路のリフト弁に、発電機を設置しやすいものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
一実施形態を図1乃至図2に示す。この実施形態のリフト弁10は、弁箱2の両端に接続口15,16を有し、フランジ15a,16aを介して、管路1,1に接続されるようになっており、その弁箱2内部は、隔壁3を介して、一次側弁室11と二次側弁室12とに上下方向に区画されている。
【0019】
その隔壁3に、前記両弁室11,12を連通する上下方向の弁孔4を形成し、その弁孔4周りの上向き弁座6に弁体5が接離するようになっている。弁体5には、図1に示すように、その上部の孔5aを介して弁軸7が一体に嵌められて軸心方向に抜けないように固定されており、弁体5と弁軸7とは、相互に軸心周りに回転可能に支持されている。
その弁軸7の上端は、弁箱2の上蓋17を弁軸受13で貫通し、弁箱2上部の適宜の位置に設けた支持部(図示せず)にねじ込まれて、弁箱2に昇降可能に支持されている。弁軸7上端に設けた回転杆(図示せず)を回すことにより、弁軸7はその軸心方向に沿って進退し、その進退に伴い弁体5を前記弁座6に接離させることができる。
【0020】
前記一次側弁室11、二次側弁室12は、それぞれ一次側接続口15、二次側接続口16に連通しており、流体は、一次側接続口15を介して弁箱2内の一次側弁室11にまず流入し、弁孔4を通って二次側弁室12に流入した後、二次側接続口16を介して外部へ流出していく。なお、リフト弁10の前後の流体管路1の形態を、図2に示す。
【0021】
前記弁体5には、その弁体5を挟んで弁軸7の対側、すなわち弁体5の弁孔4側の面に、前記弁軸7と同一軸心の弁体軸8が設けられており、その弁体軸8は前記弁体5と一体に回転可能となっている。
【0022】
また、弁孔4内には、環状のリング14が嵌められており、そのリング14の上面が前記弁座6を構成する。また、そのリング14のアーム14aを介して、その弁孔4の中央部に筒状のガイド部9が設けられている。前記弁体軸8は、このガイド部9に対して軸心周り回転自在であり、且つ、そのガイド部9によって、前記軸心方向に沿ってその進退がガイドされる。
【0023】
この弁体軸8とガイド部9とで構成される回転部に、弁体回転発電装置の発電機20を構成する。発電機20の構成は、図1に示すように、前記弁体軸8が挿通されるガイド部9の外側に発電用の電磁コイル21が埋め込まれている。また、弁体軸8の下端部には永久磁石22が埋め込まれており、弁体5の開弁状態において、その永久磁石22が電磁コイル21内に位置するようになっている(図1参照)。
【0024】
流体が弁孔4を通過することにより弁体5が回転すると、弁体軸8の回転により、電磁コイル21内で永久磁石22が回転し電磁コイル21内で磁極が変化する。この磁極の変化により発電がなされ、電流は、例えば、図3に示す回路を通じて、整流器等を経て蓄電池等に供給される。
【0025】
この回路において、発電機20の電磁コイル21から、弁箱2外に設けた蓄電池、整流器等の付属機器への配線は、リング14のアーム14a及び隔壁3の表面に沿って、又は、リング14のアーム14a及び隔壁3内に埋め込まれて配設され、弁箱2外へ引き出される。
このとき、リング14、すなわち前記ガイド部9及び前記アーム14aは、前記弁箱2に着脱可能に設けられているので、電磁コイル21の設置及び固定、配線が容易である。なお、図1では、前記付属機器、及び配線等を図示省略している。
また、そのガイド部9、アーム14aを有するリング14の上面が、前記弁座6を構成するので、部品点数を減らし構造を簡単にすることができる。
【0026】
この実施形態では、発電機20を弁体軸8とガイド部9とで構成される回転部に配置し、弁体軸8に永久磁石22を、ガイド部9に電磁コイル21を設けたが、弁体軸8に電磁コイル21を、ガイド部9に永久磁石22を設置してもよい。このとき、電磁コイル21から引き出される配線は、弁体軸8から、弁体5と弁軸7とで構成される回転部に導かれて、ブラシ等を介して、弁軸7内に設けた対応する配線に接続されるようにし回路を構成する。
【0027】
また、他の実施形態として、図4に示すように、その弁体5と弁軸7とで構成される回転部に発電機20を構成してもよい。弁体5に永久磁石22を、弁軸7に電磁コイル21を設置してもよいし、弁体5に電磁コイル21を、弁軸7に永久磁石22を設置してもよい。なお、この図4においても、前記付属機器、及び配線等を図示省略している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態の斜視図
【図2】同実施形態の管路の配置を示す平面図
【図3】弁体回転発電装置を設置する場合の回路図の例を示す
【図4】他の実施形態の斜視図
【符号の説明】
【0029】
1 流体管路
2 弁箱
3 隔壁
4 弁孔
5 弁体
6 弁座
7 弁軸
8 弁体軸
9 ガイド部
10 リフト弁
11 一次側弁室
12 二次側弁室
13 弁軸受
14 リング
14a アーム
15 一次側接続口
16 二次側接続口
17 上蓋
20 発電機
21 電磁コイル
22 永久磁石
15a,16a フランジ
E 曲管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管路1にその管路を開閉するリフト弁10を介設し、そのリフト弁10の弁体5の回転により発電機20を駆動させるようにした弁体回転発電装置において、
前記弁体5を弁軸7の軸心周りに回転自在に設け、前記弁体5と弁軸7とで構成される回転部に前記発電機20を構成したことを特徴とする弁体回転発電装置。
【請求項2】
流体管路1にその管路を開閉するリフト弁10を介設し、そのリフト弁10の弁体5の回転により発電機20を駆動させるようにした弁体回転発電装置において、
前記弁体5を弁軸7の軸心周りに回転自在に設け、前記弁体5の弁孔4側に前記弁軸7と同一軸心の弁体軸8を設けてその弁体軸8は前記弁体5と一体に回転可能とし、前記弁孔4の内側に、アーム14aを介して、前記弁体軸8を前記軸心方向にガイドするガイド部9を設け、その弁体軸8とガイド部9とで構成される回転部に前記発電機20を構成したことを特徴とする弁体回転発電装置。
【請求項3】
前記発電機20は、前記ガイド部9に発電用の電磁コイル21を、弁体軸8に永久磁石22を設けたことを特徴とする請求項2に記載の弁体回転発電装置。
【請求項4】
前記ガイド部9及び前記アーム14aは、前記弁箱2に着脱可能に設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の弁体回転発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−266372(P2006−266372A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84322(P2005−84322)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人日本マリンエンジニアリング学会 刊行物名 第72回(平成16年秋季)マリンエンジニアリング学術講演会講演論文集 巻数,号数 ISSN1346−1435
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】