説明

弁装置および給湯装置

【課題】小型で簡易な構成で分配比または混合比を調整可能な弁装置およびそれを有する給湯装置を提供する。
【解決手段】軸体12は、軸線C−Cを中心に回転可能である。第1の弁体13aは第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間に位置し、第1の切欠を有している。第2の弁体13bは第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間に位置し、第2の切欠を有している。軸線C−Cを中心Oとした第1および第2の弁体13a、13bの回転により第1および第2の切欠の開閉操作が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置およびそれを用いた給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給湯装置には、バイパス回路と熱交換器とへの分配比を調整するための弁装置が設けられている。弁装置は、たとえば特開平4−141709号公報に記載されている。この公報に記載の弁装置は、湯水混合弁であって、湯流路と水流路との双方に接続された混合室内に湯用弁体と水用弁体とを取付けられた弁軸を有している。この弁軸を回転により軸方向に移動させることで、湯用弁体による湯用弁座に対する開度と、水用弁体による水用弁座に対する開度とが調節されて、湯水の混合比率が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−141709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記公報に記載の弁装置では、湯水の混合比率を制御するために、弁軸の回転により弁軸を軸方向に移動させる必要がある。このため、弁軸にネジ切りをする必要があり、弁軸を太くする必要がある。よって、弁軸の外周に嵌められるOリングも大型のものを使用する必要がある。これにより、弁軸の回転時に生じるOリングによる抵抗が大きくなるため摺動トルクが大きくなる。したがって弁軸を回転させるために大型のモータが必要となり、装置が大型化・複雑化するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、小型で簡易な構成で分配比または混合比を調整可能な弁装置およびそれを有する給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、弁本体と、軸体と、第1の弁体と、第2の弁体とを備えている。弁本体は、第1の開口部と、その第1の開口部を挟むように配置された第2の開口部および第3の開口部とを有する流路を含んでいる。軸体は、弁本体の流路内に配置され、かつ軸線を中心に回転可能に構成されている。第1の弁体は、流路内において第1の開口部と第2の開口部との間に位置するように軸体に接続され、かつ軸線を中心とした円盤形状に第1の切欠が形成された形状を有している。第2の弁体は、流路内において第1の開口部と第3の開口部との間に位置するように軸体に接続され、かつ軸線を中心とした円盤形状に第2の切欠が形成された形状を有している。弁装置は、軸線を中心とした第1および第2の弁体の回転により第1および第2の切欠の開閉操作が可能なように構成されている。
【0007】
本発明の弁装置によれば、第1および第2の弁体の回転により第1および第2の切欠の開閉操作が可能であり、これにより第1の開口部と第2の開口部との間の流路の開度と、第1の開口部と第3の開口部との間の流路の開度とを調整することができる。このため、第1の開口部と第2の開口部との間の流量と、第1の開口部と第3の開口部との間の流量とを同時に制御することができる。
【0008】
また上記開度を調整するために第1および第2の弁体を軸体とともに軸線方向に移動させる必要がない。よって、軸体にネジ切りをする必要がなく、軸体を細くすることができるため、軸体を回転させるための駆動源(たとえばモータ)を小型化できる。したがって、小型で簡易な構成で分配比または混合比を調整することが可能となる。
【0009】
上記の弁装置においては、第1の切欠は、第2の切欠に対して軸線を中心とした点対称となるように配置されている。これにより軸体を回転させることで、第1の開口部と第2の開口部との間の流路の開度と、第1の開口部と第3の開口部との間の流路の開度との各々の変化を対称にすることが容易となる。
【0010】
上記の弁装置においては、第1の開口部が流路への流体の流入口であり、かつ第2および第3の開口部の各々が流路からの流体の流出口であり、第2および第3の開口部の合計の流出量に対する第2および第3の開口部のいずれか一方の流出量の比が装置の制御範囲内において軸体の軸線を中心とした回転におけるステップ数に対して直線的に変化するように構成されている。上記の流出量の比が直線的に変化するため、ステップ数の変化量に対して分配比の変化量が一定となり、分配比の制御が容易になる。
【0011】
上記の弁装置においては、第1の弁体の軸線を中心とした回転により第1の弁体の第1の切欠を開閉可能なように流路内に配置された第1の遮蔽部と、第2の弁体の軸線を中心とした回転により第2の弁体の第2の切欠を開閉可能なように流路内に配置された第2の遮蔽部とがさらに備えられている。これにより簡易な構成で第1および第2の切欠の開閉操作が可能となる。
【0012】
上記の弁装置においては、第1の遮蔽部は、第2の遮蔽部に対して軸線を中心とした点対称となるように配置されている。これにより軸体を回転させることで、第1の開口部と第2の開口部との間の流路の開度と、第1の開口部と第3の開口部との間の流路の開度との各々の変化を対称にすることが容易となる。
【0013】
上記の弁装置においては、第1および第2の遮蔽部を有するスペーサが弁本体と別体で設けられ、かつ弁本体の流路の壁面に固定されている。これにより装置の組立が可能かつ容易となるとともに、軸体の回転時にスペーサが軸体とともに回転することを防止することができる。
【0014】
上記の弁装置においては、第1および第2の切欠の各々の第1および第2の遮蔽部から開いた部分の面積の変化が軸体の回転角度の2乗に比例するように第1および第2の切欠は構成されている。これにより第2および第3の開口部の合計の流出量に対する第2および第3の開口部のいずれかの流出量の比を、弁装置の制御範囲内において軸体の回転のステップ数に対して直線的に変化させることが可能となる。このため制御が容易となる。
【0015】
上記の弁装置においては、第1および第2の切欠の少なくとも1つの切欠は、第1および第2の弁体の少なくとも1つの弁体の円盤形状の外形を維持したまま、円盤形状の少なくとも1つの弁体を貫通するように形成された切欠開口である。これにより第1および第2の弁体の少なくとも1つの弁体が円盤形状の外形を維持できるため、その円盤形状の外周全周を弁本体の流路内における壁面に沿わせることが可能となる。このため、弁本体と上記少なくとも1つの弁体との2部品の軸精度のみを考慮すれば足り、他の部品について厳密な軸精度が不要となる。また円盤形状の外周全周を弁本体の流路内における壁面に沿わせることが可能となるため、少なくとも1つの弁体の回転を安定させることができる。
【0016】
上記の弁装置においては、第1および第2の弁体のいずれか一方の円弧部と流路壁面との間の径方向の隙間は、第1および第2の弁体のいずれか他方の円弧部と流路壁面との間の径方向の隙間よりも大きい。これにより上記の径方向の隙間が大きくなる弁体側では弁体と流路壁面とが接触することによる摩耗を防止することができる。また径方向の隙間が大きくなる弁体側では、弁体と流路壁面との間に異物を噛み込み難くなるとともに、その隙間から流体が流れやすくなり排水性の向上効果も得られる。
【0017】
また上記径方向の隙間が大きくなる弁体側の流路を熱交換器側に接続することで、その弁体の切欠が閉じた状態でも熱交換器側へ流体を供給することができるため、熱交換器での流体の沸騰や空焚きを防止することが可能となる。また上記径方向の隙間が小さくなる弁体側の流路をバイパス回路側に接続することで、その弁体の切欠が閉じた状態ではバイパス回路側への流体の漏れ出しを抑制することが可能となる。これにより、分配比(バイパス回路側への流量/全流量)を小さくでき、高温出湯が可能となる。
【0018】
上記の弁装置においては、第2および第3の開口部のいずれか一方と第1の開口部とは軸線に対して直交する向きに設けられており、第2および第3の開口部のいずれか他方は軸線に平行な向きに設けられている。この弁装置は、第1および第2の弁体の回転により第1および第2の切欠の開閉操作が可能な構成を有しているため、上記のように軸線に対して直交する向きだけでなく平行な向きにも開口部を設けることが可能となる。そして平行な向きにも開口部を設けることができるため、弁装置を給湯装置などの器具に組み込んだ際の組立が容易となる。
【0019】
本発明の給湯装置は、上記のいずれかの弁装置と、その弁装置の第2および第3の開口部のいずれか一方に接続された熱交換器と、その弁装置の第2および第3の開口部のいずれか他方に接続されたバイパス回路とを備えている。
【0020】
本発明の給湯装置によれば、熱交換器側への流量とバイパス回路側への流量とを同時に制御することが可能となるとともに、装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、小型で簡易な構成で分配比または混合比を調整可能な弁装置およびそれを有する給湯装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における弁装置およびステッピングモータの構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す弁装置およびステッピングモータにおける弁装置部分の断面を概略的に示す図である。
【図3】図1に示す弁装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図4】図1に示す弁装置に用いられる第1および第2の弁体の形状を説明するための図である。
【図5】図1に示す弁装置に用いられるスペーサの構成を下側から概略的に示す斜視図である。
【図6】図1に示す弁装置に用いられる軸体、弁体、スペーサなどの構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】図1に示す弁装置に用いられる弁本体の破断斜視図である。
【図8】図1に示す弁装置において弁本体にスペーサが固定された様子を示す断面図である。
【図9】図1に示す弁装置において弁体と弁本体内部の流路壁面との間の径方向の隙間を説明するための断面図である。
【図10】図1に示す弁装置が設けられた給湯装置の構成を概略的に示す図である。
【図11】図1に示す弁装置の動作を説明するための図である。
【図12】弁体に設けられる切欠の形状と流量との関係を説明するための図である。
【図13】弁体の形状を半円形とした場合の構成を示す概略斜視図である。
【図14】図13に示す半円形の切欠を有する弁体を用いた場合のステップ数と分配比またはバイパス比との関係を示す図である。
【図15】図4に示す形状の切欠を有する弁体を用いた場合のステップ数と分配比またはバイパス比との関係を示す図である。
【図16】弁体と流路壁面との間に径方向の隙間がある場合とない場合との出湯温度の制御可能範囲を説明するための図である。
【図17】切欠が180°未満の範囲で弁体に設けられた場合の構成を説明するための図である。
【図18】切欠が180°を超えた範囲で弁体に設けられた場合の構成を説明するための図である。
【図19】弁体に設けられた切欠が切欠開口である場合の軸体、弁体などの構成を概略的に示す斜視図である。
【図20】図19に示す軸体、弁体などを有する弁装置において弁体の円盤形状の外周全周が弁本体の流路内における壁面に沿った様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず本実施の形態の弁装置およびステッピングモータの構成を図1〜図9を用いて説明する。
【0024】
主に図1を参照して、本実施の形態の弁装置1にはステッピングモータ2が取付け固定されている。このステッピングモータにより、後述するように弁装置1内の軸体および弁体が回転駆動可能なように構成されている。
【0025】
主に図2および図3を参照して、本実施の形態の弁装置1は、弁本体11と、軸体12と、第1および第2の弁体13a、13bと、スペーサ14と、弁カラー15と、Oリング16a、16bとを主に有している。
【0026】
弁本体11は、内部に流路11Aを有している。その流路11Aは、第1の開口部11aと、その第1の開口部11aを挟むように配置された第2の開口部11bおよび第3の開口部11cとを有している。
【0027】
この弁装置1が分配弁である場合には、第1の開口部11aは流体(たとえば湯水)のたとえば流入口であり、第2および第3の開口部11b、11cの各々は流体のたとえば流出口である。また弁装置1が混合弁である場合には、第1の開口部11aは流体のたとえば流出口であり、第2および第3の開口部11b、11cの各々は流体のたとえば流入口である。
【0028】
また第4の開口部11dが流路11Aに通じるように形成されていてもよい。弁装置1が分配弁である場合には、この第4の開口部11dは流体の流出口であることが好ましい。
【0029】
軸体12は、弁本体11の流路11A内に配置されており、かつ仮想の軸線C−Cを中心に回転可能に構成されている。つまり軸体12は、その外周部に取付られた弁カラー15を介在して弁本体11に取付けられることにより、軸線C−Cを中心に回転可能である。
【0030】
軸体12と弁カラー15との間にはOリング16aが配置されており、かつ弁カラー15と弁本体11との間にはOリング16bが配置されている。また軸体12は、ステッピングモータ2により回転駆動力を与えられるように構成されている。このステッピングモータ2は、サーボ取付板3を介在して弁本体11に取付け固定されている。
【0031】
第1および第2の弁体13a、13bの各々は軸体12に取付けられている。第1の弁体13aは、流路11A内において第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間に位置している。第2の弁体13bは、流路11A内において第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間に位置している。
【0032】
主に図4を参照して、第1の弁体13aは軸線C−Cを中心Oとした円盤形状に第1の切欠13a1が形成された形状を有している。この第1の切欠13a1は、円盤形状の第1の弁体13aの中心Oの周りに約180°の角度範囲で設けられている。第1の切欠13a1が設けられていない第1の弁体13aの部分13a2は円弧形状を有している。また第1の切欠13a1が設けられた第1の弁体13aの部分はたとえばインボリュート曲線に似た外形を有している。
【0033】
第2の弁体13bも、第1の弁体13aと同様、軸線C−Cを中心Oとした円盤形状に第2の切欠13b1が形成された形状を有している。この第2の切欠13b1は、円盤形状の第2の弁体13bの中心Oの周りに約180°の角度範囲で設けられている。第2の切欠13b1が設けられていない第2の弁体13bの部分13b2は円弧形状を有している。また第2の切欠13b1が設けられた第2の弁体13bの部分はたとえばインボリュート曲線に似た外形を有している。
【0034】
第1および第2の弁体13a、13bの双方は1つの軸体12に取付けられているため、第1の弁体13aの中心Oと第2の弁体13bの中心Oとは同一の軸線(直線)C−C上に位置している。第1の弁体13aの円弧部13a2の中心Oからの半径R1は、第2の弁体13bの円弧部13b2の中心Oからの半径R2と同じであってもよく、または異なっていてもよい。本実施の形態においては、半径R1は半径R2よりも小さくなっている。
【0035】
第1の切欠13a1は、軸線C−C方向から見たときに、第2の切欠13b1に対して軸線C−Cを中心Oとした点対称となるように配置されていることが好ましい。上述のように本実施の形態では半径R1が半径R2よりも小さくなっている場合には、軸線C−C方向から見た第1の弁体13aの形状は第2の弁体13bの形状の相似形状を有している。
【0036】
主に図3および図5を参照して、スペーサ14は、第1および第2の遮蔽部14a、14bと、連結部14cと、2つの凸状係合部14dとを主に有している。第1および第2の遮蔽部14a、14bの各々は、たとえば半円形状を有している。連結部14cは、第1および第2の遮蔽部14a、14bの双方に接続される部分であり、かつ軸体12の外周面に沿ってその外周面を覆う半円筒形状部を有している。
【0037】
連結部14cには軸線C−C方向と直交する方向に延びる貫通孔14eが形成されている。2つの凸状係合部14dは、それぞれ連結部14cの両端部に配置されており、かつ第1および第2の遮蔽部14a、14bの双方の外周端部よりも外周側に突き出すとともに、軸線C−C方向に延在している。
【0038】
主に図2および図6を参照して、スペーサ14は、第1の弁体13aと第2の弁体13bとの間で挟み込まれるとともに、貫通孔14e内に第2の弁体13bを挿通させることにより、軸体12に取付けられている。この取付け状態において、連結部14cの半円筒形状部は軸体12の外周面に沿ってその外周面を覆っている。またこの取付け状態において、第1および第2の遮蔽部14a、14bは、軸線C−Cに対して互いに同じ方向に位置している。
【0039】
この取付け状態においてスペーサ14に対して軸体12を回転させることにより、第1の切欠13a1を第1の遮蔽部14aで開閉可能であり、かつ第2の切欠13b1を第2の遮蔽部14bで開閉可能である。そして第1および第2の切欠13a1、13b1が軸線C−Cに対して互いに異なる方向に位置し、かつ第1および第2の遮蔽部14a、14bが軸線C−Cに対して互いに同じ方向に位置しているため、第1の遮蔽部14aが第1の切欠13a1を閉じているときに、第2の遮蔽部14bが第2の切欠13b1を開くことができる。また逆に、第1の遮蔽部14aが第1の切欠13a1を開いているときに、第2の遮蔽部14bが第2の切欠13b1を閉じることもできる。
【0040】
主に図7および図8を参照して、弁本体11の流路11Aの壁面(以下、「流路壁面」とも称する)には、軸線C−Cの延びる方向に延在する直線状の溝11eが形成されている。スペーサ14は、凸状係合部14dが溝11e内に嵌め込まれた状態で、溝11eで案内されながら流路11A内に挿入されることにより、流路壁面に固定され得る。つまりスペーサ14が流路11A内に挿入された状態ではスペーサ14の両側の凸状係合部14dのそれぞれが溝11e内に嵌り込んでいるため、軸体12が軸線C−Cを中心として回転してもスペーサ14が軸体12とともに回転することはない。
【0041】
主に図7および図9を参照して、弁本体11の流路壁面には、周方向に沿って約180°の角度範囲で延在する溝11fが形成されている。
【0042】
なお軸線C−Cに対して、第1、第2および第4の開口部11a、11b、11dは直交する向きに設けられており、第3の開口部11cは平行な向きに設けられていることが好ましい。
【0043】
弁本体11、軸体12、第1および第2の弁体13a、13b、スペーサ14および弁カラー15の材質はたとえばPPS(polyphenylene sulfide)からなっており、サーボ取付板3はたとえば亜鉛めっき鋼板からなっている。また第1および第2の弁体13a、13bは軸体12と一体的に形成されたものであってもよく、また軸体12と別体からなり軸体12に取付け固定されたものであってもよい。
【0044】
次に、本実施の形態の弁装置1を有する給湯装置の構成について図10を用いて説明する。
【0045】
図10を参照して、給湯装置20は、弁装置1と、ステッピングモータ2と、熱交換器21と、バイパス回路22と、燃焼バーナ23と、送風機24と、給水配管31と、出湯配管32とを主に有している。
【0046】
熱交換器21には、熱交換器21に給水するための給水配管31と、熱交換器から出湯するための出湯配管32とが接続されている。バイパス回路(バイパス配管)22は、この給水配管31と出湯配管32とを接続している。
【0047】
熱交換器21は、燃焼バーナ23で発生する燃焼ガスとの間で熱交換を行なうものであり、送風機24は、燃焼バーナ23に対して燃焼に必要な空気を供給するためのものである。図1〜図9に示す構成を有する本実施の形態の弁装置1は、たとえば給水配管31とバイパス回路22との接続部に接続されている。
【0048】
主に図2および図10を参照して、弁装置1の第1の開口部11aは給水配管31の給水側部分31aに接続されており、第2の開口部11bは給水配管31の熱交換器側部分31bに接続されている。また第3の開口部11cはバイパス回路22に接続されている。なお第4の開口部11dは、この弁装置1を追焚付き給湯装置に使用した場合などに、その追焚付き給湯装置に含まれる水圧導入口を有する逆流防止(図示せず)などに接続されることが好ましい。
【0049】
この給湯装置20においては、弁装置1が給水配管31とバイパス回路22との接続部に配置されているため、熱交換器21およびバイパス回路22への分配比を弁装置1により調整することができる。
【0050】
つまり給湯装置20においては、当該装置への入水が一旦、熱交換器21側とバイパス回路22側とへ分配され、熱交換器21を通過した高温水とバイパス回路22を通過した低温水とが混合されて所望の出湯温度が得られる。この際に弁装置1により分配比を調整することにより所望の出湯温度に制御することが可能となる。
【0051】
次に、本実施の形態の弁装置1の動作について図11(A)〜図11(C)を用いて説明する。
【0052】
図11(A)を参照して、この状態は、第1の弁体13aの第1の切欠13a1の全体が第1の遮蔽部14aで覆われておらず開いており、かつ第2の弁体13bの第2の切欠13b1の全体が第2の遮蔽部14bで覆われて閉じた状態を示している。この状態では図9に示すように、第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間で流体(たとえば湯水)が流通可能であり、かつ第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間で流体の流通は遮断されている。
【0053】
なお第1および第2の切欠13a1、13b1が形成された部分のうち第1および第2の遮蔽部で覆われておらず開いた部分には図中ハッチングが付されている。このハッチングは、図11(B)、(C)にも同様に付されている。
【0054】
図11(B)を参照して、この状態は図11(A)の状態から軸体12を矢印RDで示すように図中時計周りに約90°回転させた状態である。この状態では、第1の弁体13aの第1の切欠13a1の一部が第1の遮蔽部14aで覆われているが、残りの部分は第1の遮蔽部14aで覆われておらず開いている。また第2の弁体13bの第2の切欠13b1の一部が第2の遮蔽部14bで覆われているが、残りの部分は第2の遮蔽部14bで覆われておらず開いている。つまり、第1および第2の切欠13a1、13b1の双方の一部分が開いた状態となっている。このため、この状態では、第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間で所定量の流体が流通可能であり、かつ第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間でも所定量の流体が流通可能である。
【0055】
図11(C)を参照して、この状態は図11(B)の状態から軸体12を矢印RDで示すように図中時計回りにさらに約90°回転させた状態である。この状態では、第1の弁体13aの第1の切欠13a1の全体が第1の遮蔽部14aで覆われて閉じており、かつ第2の弁体13bの第2の切欠13b1の全体が第2の遮蔽部14bで覆われておらず開いた状態となっている。この状態では図2に示すように、第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間で主たる流体の流通は遮断されており、かつ第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間で流体は流通可能である。
【0056】
このように軸体12を回転させることにより、第1および第2の切欠13a1、13b1の開閉操作を行なうことができる。これにより、第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間の流路の開度と、第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間の流路の開度とを調整することができる。このため、第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間の流量と、第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間の流量とを同時に制御することが可能となる。
【0057】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の弁装置1によれば、上述のように軸体12の回転により第1および第2の切欠13a1、13b1の開閉操作が可能である。これにより第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間の流路の開度と、第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間の流路の開度とを調整することができる。このため、第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間の流量と、第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間の流量とを同時に制御することができる。よって、この弁装置1を図10に示すように給湯装置20に用いることにより、缶体流量(熱交換器21内に流れる流量)とバイパス流量(バイパス回路内に流れる流量)とを同時に制御することが可能となる。
【0058】
また上記開度を調整するためには第1および第2の弁体13a、13bを回転させるだけでよく、第1および第2の弁体13a、13bを軸線C−C方向に移動させる必要はない。つまり第1および第2の弁体13a、13bを回転のみによって上記開度を調整することができる。これにより、軸体12を軸線C−C方向に移動させるために軸体12にネジ切りをする必要がなく、軸体12を細くすることができるため、軸体12を回転させるためのステッピングモータ2を小型化することができる。このため弁装置1を小型で簡易な構成としつつ、分配比または混合比を調整することが可能となる。したがって、この弁装置1を備えた給湯装置20も小型化することが可能となる。
【0059】
また第1の切欠13a1が第2の切欠13b1に対して軸線C−Cを中心Oとした点対称となるように配置されている。これにより軸体12を回転させることで、第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間の流路の開度と、第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間の流路の開度との各々の変化を対称にすることが容易となる。
【0060】
また第1および第2の遮蔽部14a、14bを有するスペーサ14が弁本体11と別体で設けられ、かつ弁本体11の流路壁面に固定されている。これにより2つの弁体13a、13bを1つの軸体12に接合した弁装置1の組立が可能かつ容易となるとともに、軸体12の回転時にスペーサ14が軸体12とともに回転することを防止することができる。
【0061】
つまり、第1および第2の遮蔽部14a、14bが弁本体11と一体的に形成されていた場合、1つの軸体12に接合された2つの弁体13a、13bを流路11A内に挿入しようとしても、流路11A内の第1および第2の遮蔽部14a、14bが弁体の侵入を遮ることになる。このため、1つの軸体12に接合された2つの弁体13a、13bを流路11A内に挿入することはできず、弁装置1を組み立てることができない。
【0062】
これに対して本実施の形態では、第1および第2の遮蔽部14a、14bを有するスペーサ14は、弁本体11と別体で形成され、かつ軸体12および弁体13a、13bに組み付けられた状態で流路11A内に挿入される。これにより、第1および第2の弁体13a、13bの流路11A内への挿入が第1および第2の遮蔽部14a、14bによって遮られることがなくなる。このため、2つの弁体13a、13bを1つの軸体12に接合した弁装置1の組立が可能となる。
【0063】
加えて図8に示すようにスペーサ14の両端部に設けられた2つの凸状係合部14dのそれぞれが、流路壁面に設けられた溝11e内に嵌めこまれる。このため、軸体12の回転時にスペーサ14が軸体12とともに回転することが防止される。これにより、第1および第2の切欠13a1、13b1の開閉操作を正確に行なうことが可能となる。
【0064】
またスペーサ14に設けられた第1および第2の遮蔽部14a、14bにより第1および第2の切欠13a1、13b1の開閉が可能となるため、簡易な構成で第1および第2の切欠13a1、13b1の開閉操作が可能となる。
【0065】
また第1および第2の開口部11a、11bは軸線C−Cに対して直交する向きに設けられており、第3の開口部11cは軸線C−Cに平行な向きに設けられている。この弁装置1は、上述したように第1および第2の弁体13a、13bの回転により第1および第2の切欠13a1、13b1の開閉操作が可能な構成を有しているため、上記のように軸線C−Cに対して直交する向きだけでなく平行な向きにも第3の開口部11cを設けることが可能となる。そして平行な向きにも第3の開口部11cを設けることができるため、弁装置1を給湯装置20などの器具に組み込んだ際の組立が容易となる。
【0066】
なお本実施の形態においては、第1および第2の切欠13a1、13b1が軸線C−Cに対して互いに異なる方向に位置し、かつ第1および第2の遮蔽部14a、14bが軸線C−Cに対して互いに同じ方向に位置している場合について説明した。しかし、第1および第2の切欠13a1、13b1が軸線C−Cに対して互いに同じ方向に位置し、かつ第1および第2の遮蔽部14a、14bが軸線C−Cに対して互いに異なる方向に位置していてもよい。この場合、第1の遮蔽部14aは、第2の遮蔽部14bに対して軸線C−Cを中心Oとした点対称となるように配置されていることが好ましい。この場合にも、軸体12を回転させることで、第1の開口部11aと第2の開口部11bとの間の流路の開度と、第1の開口部11aと第3の開口部11cとの間の流路の開度との各々の変化を対称にすることが可能かつ容易となる。
【0067】
また図11に示すように、第1の遮蔽部14aが第1の切欠13a1を閉じているときに第2の遮蔽部14bが第2の切欠13b1を開くことができ、かつ第1の遮蔽部14aが第1の切欠13a1を開いているときに第2の遮蔽部14bが第2の切欠13b1を閉じることができるのであれば、第1および第2の切欠13a1、13b1と第1および第2の遮蔽部14a、14bとの位置は特に制限されるものではない。
【0068】
(実施の形態2)
本実施の形態における弁装置1は、第1および第2の切欠13a1、13b1の形状に特徴を有している。
【0069】
本実施の形態においては、第1の切欠13a1が設けられた第1の弁体13aの部分および第2の切欠13b1が設けられた第2の弁体13bの部分の各々は、図4に示すようにインボリュート曲線に似た外形を有している。具体的には、軸体12を図11に示すように回転させたときに、第1および第2の切欠13a1、13b1の各々の第1および第2の遮蔽部14a、14bから開いた部分(図11中のハッチング領域)の面積の変化が軸体12の回転角度θの2乗に比例するような形状を第1および第2の切欠13a1、13b1は有している。
【0070】
これにより弁装置1が図10に示すような給湯装置20に取付けられた場合、第2および第3の開口部11b、11cの合計の流出量に対する第3の開口部11cの流出量の比(バイパス流量/全流量)を、弁装置1の制御範囲内において軸体12の回転のステップ数に対して直線的に変化させることが可能となる。以下、そのことを詳細に説明する。
【0071】
まず本発明者らは、上記の比(バイパス流量/全流量)を弁装置1の制御範囲内において軸体12の回転のステップ数に対して直線的に変化させるためには、第1および第2の切欠13a1、13b1をどのような形状にすべきかについて以下のように考察した。
【0072】
図12を参照して、半径rの円形において角度θのときの面積(ハッチング部分の面積)をSとし、そのSを流体の通る面積とし、Qをその流体の流量とし、さらにvをその流体の平均流速とすると、S、Qおよびvの関係から以下の式(1)が導き出される。
【0073】
【数1】

【0074】
ここで上記Qを以下の式(2)に近似できるとすると、上記式(1)は以下の式(3)で表すことができる。
【0075】
【数2】

【0076】
【数3】

【0077】
上記式(3)の両辺をθで微分すると以下の式(4)が得られる。なお式(4)におけるCは定数である。
【0078】
【数4】

【0079】
この式(4)から、平均流速vが回転角度θと半径rとの2乗に反比例すると仮定することができる。ここで、流量Qの特性を直線(Q=Aθ+B)にしたいため、流量Qをこの直線の式にあてはめると以下のように表すことができる。なお上記A、Bは定数である。
【0080】
【数5】

【0081】
上記のあてはめの式に上記式(4)を代入し、かつdS/dθを出すためにdS=(dS/dθ)・dθと変形すると以下の式(5)が得られる。なおdS/dθは角度変化に対する面積変化である。
【0082】
【数6】

【0083】
この式(5)の両辺をθで微分すると以下の式(6)が得られる。
【0084】
【数7】

【0085】
上記式(6)から、流量Qの特性を直線(Q=Aθ+B)にするためには、面積Sは回転角度θの3乗に比例する必要があり、また流体の通る面積Sの回転による変化量が回転角度θの2乗に比例する必要があることが分かった。よって、第1の切欠13a1が設けられた第1の弁体13aの部分および第2の切欠13b1が設けられた第2の弁体13bの部分の各々が、図4に示すようにインボリュート曲線に似た外形を有している必要があることが分かった。
【0086】
また本発明者らは、上記事項を確認するために第1および第2の切欠13a1、13b1の形状を変えたときの分配比(バイパス流量/全流量)を調べた。その内容および結果を図13〜図15を用いて以下に説明する。
【0087】
本発明者らは、図13に示すように第1および第2の弁体13a、13bの各々を半円形にした場合と、図4に示すようにインボリュート曲線に似た外形(開口面積変化が回転角度の2乗に比例する外形)にした場合との双方で、回転のステップ数に対する分配比(バイパス流量/全流量)とバイパス比(バイパス流量/缶体流量)とを調べた。その結果を図14および図15に示す。
【0088】
図14の結果から、図13に示すように第1および第2の弁体13a、13bの各々を半円形にした場合には、分配比が回転角度(ステップ数)に対して反比例曲線となることが確認された。この場合には、回転角度と分配比との関係が曲線状で分かり難い。このため、仮にこの弁装置を量産した場合に各個体ごとにばらつきが生じると、分配比の制御が困難になる。ただし、バイパス比が直線状に近似できるというメリットはある。
【0089】
一方、図15の結果から、図4に示すようにインボリュート曲線に似た外形にした場合には、分配比が回転角度(ステップ数)に対して直線近似が可能となることが確認された。この場合には、回転角度と分配比との関係が直線状で分かり易い。このため、仮にこの弁装置を量産した場合に各個体ごとにばらつきが生じた場合でも、回転角度から分配比を容易に割り出すことができ、分配比の制御が容易になる。
【0090】
なお上記において分配比が直線で近似できる制御範囲は、分配比が0.15〜0.75の範囲内であることが好ましい。一般的には、熱交換器への入水温度は5℃〜25℃であり、給湯装置からの出湯温度を32℃〜60℃にしたいという要望がある。この場合、最も低い入水温度5℃を最も高い出湯温度60℃にするためには通常、缶体温度(熱交換器21の温度)は70℃程度必要であり、その缶体温度を実現するためには上記分配比を0.15程度にする必要がある。また最も高い入水温度25℃を最も低い出湯温度32℃にするためには通常、缶体温度は50℃程度必要であり、その缶体温度を実現するためには上記分配比を0.75程度にする必要がある。よって、上記の一般的な要望を実現できる範囲で分配比の制御を容易にするためには、分配比が0.15〜0.75の範囲で分配比が直線で近似可能であればよい。
【0091】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
図10に示す給湯装置20においては、当該装置20への入水が一旦、熱交換器21側とバイパス回路22側とへ分配され、熱交換器21を通過した高温水とバイパス回路22を通過した低温水とが混合されて所望の出湯温度が得られる。このため、分配比を制御できない弁装置や、分配比を制御できても分配比を正確に知ることができない弁装置では、適切な出湯温度を得ることができない。また弁装置を大量生産する場合、各個体ごとに組立誤差などが生じた場合には、出湯温度もばらつく。
【0092】
本実施の形態によれば、上述したように弁装置1の制御範囲内において、回転角度と分配比との関係が直線状で分かり易いため、回転角度から分配比を知ることが容易である。また仮にこの弁装置1を量産して各個体ごとに組立誤差などが生じた場合でも回転角度から分配比を容易に割り出すことができ、分配比の制御が容易になる。これにより出湯特性の良好な給湯装置を得ることができる。
【0093】
また図13に示した第1および第2の弁体13a、13bの各々を半円形にした場合には、バイパス比を基準にして制御すれば、バイパス比と回転角度との関係が直線状であるため、回転角度からバイパス比を容易に知ることができ、この点で制御が容易となる。
【0094】
(実施の形態3)
本実施の形態における弁装置1は、図2に示す第1の弁体13aの円弧部13a2と流路壁面との間の径方向の隙間の大きさL1が、図9に示す第2の弁体13bの円弧部13b2と流路壁面との間の径方向の隙間の大きさL2よりも大きくなっている点に特徴を有している。
【0095】
隙間の大きさL1を隙間の大きさL2よりも大きくするために、図4に示すように第1の弁体13aの円弧部13a2の半径R1が第2の弁体13bの円弧部13b2の半径R2よりも小さくされてもよく、また図7に示すように第1の弁体13aが位置する部分の流路壁面に周方向に延びる溝11fが形成されてもよい。また半径R1が半径R2よりも小さくされた構成と、溝11fが形成された構成とが組み合わされてもよい。
【0096】
具体的には、第1の弁体の円弧部13a2と流路11Aの壁面との間の径方向の隙間の大きさL1はたとえば0.数mm(10分の数mm)程度であり、第2の弁体の円弧部13b2と流路11Aの壁面との間の径方向の隙間の大きさL2はたとえば0.0数mm(100分の数mm)程度である。
【0097】
図9に示すようにバイパス側(第3の開口部11c側)の第2の切欠13b1が全閉のとき、熱交換器側(第2の開口部11b側)の第1の切欠13a1は全開となる。この場合には、バイパス側への流量はほとんどない状態となり、分配比(バイパス流量/全流量)は小さくなり給湯装置は高温出湯の状態となる。バイパス側への流量が少なければ少ないほど図16の破線で示すように高温出湯の制御可能範囲を広げることが可能となる。
【0098】
逆に図2に示すようにバイパス側(第3の開口部11c側)の第2の切欠13b1が全開のとき、熱交換器側(第2の開口部11b側)の第1の切欠13a1は全閉となる。熱交換器側が全閉となる場合には、予め第1の弁体13aの円弧部13a2と流路壁面との間に径方向の隙間が設けられており、全閉ではあるものの、弁装置1はある一定流量の水が流れる構造となっている。
【0099】
上記の一定流量とは、流量センサが検知できる流量以上(MOQ(Minimum Operation Quantity)≒熱交換器側に流れる流量1.0L/min)のことである。
【0100】
この場合には、隙間がない場合と比べると、図16の実線で示すように低温出湯の制御可能範囲は狭くなるが、分配比として0.7程度であれば入水25℃の時(缶体設定温度50℃)でも約32℃の出湯(給湯器設定最低温度)が可能である。
【0101】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
図10に示す給湯装置20においては、当該装置20への入水が一旦、熱交換器21側とバイパス回路22側とへ分配され、熱交換器21を通過した高温水とバイパス回路22を通過した低温水とが混合されて所望の出湯温度が得られる。この分配において、熱交換器21側の流量が極端に減ることで流量センサが検知できる流量未満になって装置20が作動しない可能性がある。また燃焼バーナ23での燃焼中に一気に熱交換器21側への給水が完全に遮断されることで、熱交換器21での沸騰や空焚きが生じる可能性もある。
【0102】
本実施の形態によれば、上述したように図2に示す第1の弁体の円弧部13a2と流路11Aの壁面との間の径方向の隙間の大きさL1が、図9に示す第2の弁体の円弧部13b2と流路11Aの壁面との間の径方向の隙間の大きさL2よりも大きくなっている。このため、第2の開口部11bを熱交換器21側に接続することで、第1の弁体13aの第1の切欠13a1が閉じた状態でも寸法L1の隙間を通って熱交換器21側へ水を供給することができるため、熱交換器21での沸騰や空焚きを防止することが可能となる。また第3の開口部11cをバイパス回路22に接続することで、第2の弁体13bの第2の切欠13b1が閉じた状態ではバイパス回路22側への水の漏れ出しを防止することが可能となる。これにより、分配比(バイパス回路側への流量/全流量)を小さくでき、高温出湯が可能となる。
【0103】
また第1の弁体13aの円弧部13a2と流路11Aの壁面との間の径方向の隙間の大きさL1が大きくなるため、第1の弁体13aの円弧部13a2と流路壁面とが接触することによる摩耗を防止することができる。また第1の弁体13aの円弧部13a2と流路壁面との間に異物が噛み込み難くなるとともに、その隙間から湯水が流れやすくなり排水性の向上効果も得られる。
【0104】
なお上記実施の形態1〜3においては、第1および第2の弁体13a、13bの各々に設けられる第1および第2の切欠13a1、13b1はともに約180°の角度範囲で形成されている。この第1および第2の切欠13a1、13b1の形成角度範囲θ1、θ2は、ともに図17に示すように180°未満であってもよく、また図18に示すように180°を超えていてもよい。
【0105】
(実施の形態4)
上記の実施の形態1〜3においては図3、図4に示すように第1および第2の切欠13a1、13b1の各々の外周側に第1および第2の弁体13a、13bの肉厚部が存在しない構成について説明した。しかし図19および図20に示す本実施の形態の弁装置1のように、第1および第2の切欠13a1、13b1の各々の外周側に第1および第2の弁体13a、13bの肉厚部13a3、13b3が存在していてもよい。
【0106】
主に図19を参照して、本実施の形態においては第1の切欠13a1は、第1の弁体13aの円盤形状(軸体12の軸方向から見て円形)の外形を維持したまま、その円盤形状の第1の弁体13aを貫通するように形成された切欠開口である。このため第1の切欠13a1の外周側には、第1の弁体13aの肉厚部(たとえば円弧形状を有する部分)13a3が位置している。これにより軸体12の軸方向から見て第1の切欠13a1の周囲全周は第1の弁体13aの肉厚部により取り囲まれている。
【0107】
また第2の切欠13b1は、第2の弁体13bの円盤形状(軸体12の軸方向から見て円形)の外形を維持したまま、その円盤形状の第2の弁体13bを貫通するように形成された切欠開口である。このため第2の切欠13b1の外周側には、第2の弁体13bの肉厚部(たとえば円弧形状を有する部分)13b3が位置している。これにより軸体12の軸方向から見て第2の切欠13b1の周囲全周は第2の弁体13bの肉厚部により取り囲まれている。
【0108】
主に図20を参照して、上記第1および第2の弁体13a、13bを有する軸体12を弁本体11の流路11A内に配置した状態において、第1および第2の弁体13a、13bは、その外周全周が弁本体11の流路11A内における壁面に沿った状態となる。
【0109】
なお上記以外の本実施の形態の構成は、図1〜図3に示す実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0110】
本実施の形態においては、第1および第2の弁体13a、13bが円盤形状の外形を維持できるため、その円盤形状の外周全周を弁本体11の流路11A内における壁面に沿わせることが可能となる。このため、弁本体11と第1および第2の弁体13a、13bとの2部品の軸精度のみを考慮すれば足り、他の部品(スペーサ14)について厳密な軸精度が不要となる。また円盤形状の外周全周を弁本体11の流路11A内における壁面に沿わせることが可能となるため、第1および第2の弁体13a、13bの回転を安定させることができる。
【0111】
本実施の形態においては第1および第2の切欠13a1、13b1の双方が切欠開口である場合について説明したが、第1および第2の切欠13a1、13b1のいずれか一方のみが切欠開口であって、いずれか他方は図4に示したような切欠の外周側に弁体の肉厚部が存在しない構成であってもよい。
【0112】
また第1の切欠13a1の外周側に位置する肉厚部13a3と第2の切欠13b1の外周側に位置する肉厚部13b3とは、それぞれ切欠13a1、13b1の外周側の全体を取り囲んでいなくてもよく、切欠13a1、13b1の外周側の一部において途切れていてもよい。
【0113】
また第1および第2の切欠13a1、13b1はともに約180°の角度範囲で形成されている。この第1および第2の切欠13a1、13b1の形成角度範囲θ1、θ2は、ともに図17に示すのと同様に180°未満であってもよく、また図18に示すのと同様に180°を超えていてもよい。
【0114】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
1 弁装置、2 ステッピングモータ、3 サーボ取付板、11 弁本体、11A 流路、11a 第1の開口部、11b 第2の開口部、11c 第3の開口部、11d 第4の開口部、11e,11f 溝、12 軸体、13a 第1の弁体、13b 第2の弁体、13a1 第1の切欠、13b1 第2の切欠、13a2 第1の円弧部、13b2 第2の円弧部、13a3,13b3 肉厚部、14 スペーサ、14c 連結部、14d 凸状係合部、14e 貫通孔、14a 第1の遮蔽部、14b 第2の遮蔽部、15 弁カラー、16a,16b Oリング、20 給湯装置、21 熱交換器、22 バイパス回路、23 燃焼バーナ、24 送風機、31 給水配管、31b 熱交換器側部分、31a 給水側部分、32 出湯配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口部と、前記第1の開口部を挟むように配置された第2の開口部および第3の開口部とを有する流路を含む弁本体と、
前記弁本体の前記流路内に配置され、かつ軸線を中心に回転可能に構成された軸体と、
前記流路内において前記第1の開口部と前記第2の開口部との間に位置するように前記軸体に接続され、かつ前記軸線を中心とした円盤形状に第1の切欠が形成された形状を有する第1の弁体と、
前記流路内において前記第1の開口部と前記第3の開口部との間に位置するように前記軸体に接続され、かつ前記軸線を中心とした円盤形状に第2の切欠が形成された形状を有する第2の弁体とを備え、
前記軸線を中心とした前記第1および第2の弁体の回転により前記第1および第2の切欠の開閉操作が可能なように構成されている、弁装置。
【請求項2】
前記第1の切欠は、前記第2の切欠に対して前記軸線を中心とした点対称となるように配置されている、請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記第1の開口部が前記流路への流体の流入口であり、かつ前記第2および第3の開口部の各々が前記流路からの前記流体の流出口であり、
前記第2および第3の開口部の合計の流出量に対する前記第2および第3の開口部のいずれか一方の流出量の比が装置の制御範囲内において前記軸体の前記軸線を中心とした回転におけるステップ数に対して直線的に変化するように構成されている、請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記第1の弁体の前記軸線を中心とした回転により前記第1の弁体の前記第1の切欠を開閉可能なように前記流路内に配置された第1の遮蔽部と、
前記第2の弁体の前記軸線を中心とした回転により前記第2の弁体の前記第2の切欠を開閉可能なように前記流路内に配置された第2の遮蔽部とをさらに備えた、請求項1〜3のいずれかに記載の弁装置。
【請求項5】
前記第1の遮蔽部は、前記第2の遮蔽部に対して前記軸線を中心とした点対称となるように配置されている、請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記第1および第2の遮蔽部を有するスペーサが前記弁本体と別体で設けられ、かつ前記弁本体の前記流路の壁面に固定されている、請求項4または5に記載の弁装置。
【請求項7】
前記第1および第2の切欠の各々の前記第1および第2の遮蔽部から開いた部分の面積の変化が前記軸体の回転角度の2乗に比例するように前記第1および第2の切欠は構成されている、請求項4〜6のいずれかに記載の弁装置。
【請求項8】
前記第1および第2の切欠の少なくとも1つの切欠は、前記第1および第2の弁体の少なくとも1つの弁体の円盤形状の外形を維持したまま、円盤形状の前記少なくとも1つの弁体を貫通するように形成された切欠開口である、請求項1〜7のいずれかに記載の弁装置。
【請求項9】
前記第1および第2の弁体のいずれか一方の円弧部と前記流路壁面との間の径方向の隙間は、前記第1および第2の弁体のいずれか他方の円弧部と前記流路壁面との間の径方向の隙間よりも大きい、請求項1〜8のいずれかに記載の弁装置。
【請求項10】
前記第2および第3の開口部のいずれか一方と前記第1の開口部とは前記軸線に対して直交する向きに設けられており、前記第2および第3の開口部のいずれか他方は前記軸線に平行な向きに設けられている、請求項1〜9のいずれかに記載の弁装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の前記弁装置と、
前記弁装置の前記第2および第3の開口部のいずれか一方に接続された熱交換器と、
前記弁装置の前記第2および第3の開口部のいずれか他方に接続されたバイパス回路とを備えた、給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−83345(P2013−83345A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157333(P2012−157333)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】