説明

引き込み装置及び画像形成装置

【課題】 装置本体とユニットが係合しない状態で引き込み機構に振動や衝撃が加わっても、ユーザが復帰操作を行うことなく、ユニットを装置本体に装着できる引き込み装置を提供する。
【解決手段】 ユニットである給紙カセット9を装置本体の所定位置に引き込んで位置決めする引き込み装置には、引き込み機構Dの引き込み動作を規制するストッパ部材54が設けられている。ユニット9が装置本体に装着される際にストッパ部材退避機構60が、ストッパ部材54を引き込み機構Dの引き込み動作を規制しない位置に退避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットを装置本体に引き込むための引き込み装置およびこの引き込み装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成するプリンタ等の画像形成装置には、画像形成装置本体(以下、装置本体という)に対して、装着および引き出し可能なユニットが設けられている。このユニットとしては、例えば、シートを収納する給紙カセットや、給紙カセットからシートを給送するためシート給送装置(シート給送ユニット)や、シートに画像を形成するための画像形成部(転写ユニット、定着ユニット等)などがある。
【0003】
これらのユニットは、装置本体に対して、確実に位置決めして装着される必要がある。
【0004】
そこで、従来は、ユニットを装置本体に引き込むための引き込み装置が提案されている。例えば、トグル機構を利用した引き込み装置がある(特許文献1)。
【0005】
トグル機構を利用した引き込み装置101は、図15に示すように、揺動軸107を中心に揺動可能に構成されたトグルアーム106を備えている。このトグルアーム106の揺動端部には、給紙カセットの係止ピン102(図16に図示)を係止するための係止溝106aが形成されている。また、装置本体に設けられた軸110およびトグルアーム106側に設けられた軸109との間に掛けられたトグルバネ108を備えている。また、係止ピン102を係止して案内するガイド部材111を備えている。
【0006】
そして、給紙カセットを装置本体の収納部に挿入すると、図16に示すように、給紙カセットの係止ピン102がトグルアーム106の係止溝106aに係止され、引き込み装置101により給紙カセットが給紙可能位置まで引き込まれる。これを具体的に説明する。
【0007】
トグルバネ108は、バネ力の付勢方向が、中立位置を境に時計周り方向から反時計周り方向に反転するようになっており、給紙カセットが挿入される前は中立位置付近の中立位置より位相の少しずれた待機位置で待機しており、時計周り方向に付勢されている。
【0008】
そして、給紙カセットが挿入されて、係止ピン102がトグルアーム106の係止溝106aに係止され、中立位置を超えるまでトグルアーム106が揺動させられると、トグルバネ108の付勢方向が反時計周り方向に反転し、カセットが装置本体に引き込まれる。
【0009】
ところで、このような引き込み装置においては、装置本体と給紙カセットなどのユニットが係合しない状態で、引き込み機構に振動や衝撃が加わった場合に、振動や衝撃がアームや弾性体に伝達され、引き込み機構が誤作動してしまうことがあった。すなわち、給紙カセットが引き込み機構に係合されていない状態で振動や衝撃が引き込み装置に加わると、アーム106がトグルバネ108により引き込み位置(図16に示す状態)に移動してしまうことがある。そして、このような状態では、アーム106は、給紙カセットに設けられた係止ピン102をつかむことができないため、給紙カセットを装置本体に引き込んで装着することができない。
【0010】
そこで、装置本体と給紙カセットが係合しない状態で、振動や衝撃により引き込み機構が誤作動してしまった場合に、引き込み機構をホームポジションに復帰させるための方法が提案されている(特許文献2)。
【0011】
この復帰させる方法では、図17に示すように、給紙カセットの正面からドライバZを挿入し、アーム106の他端部を押し込んで、トグルバネ108の弾性力に抗してアーム106を強制的に引き込み位置からホームポジションに戻すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−85220
【特許文献2】特開2006−151687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2で提案されている方法では、誤作動をしてしまった引き込み機構をホームポジションに復帰させる操作をユーザが行う必要があり、ユーザビリティの点で改良の余地あった。
【0014】
本発明の目的は、装置本体とユニットが係合しない状態で引き込み機構に振動や衝撃が加わっても誤作動により引き込み状態にならないようにする引き込み装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は「装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体に引き込む引き込み装置であって、
ユニットを装置本体に引き込む引き込み機構と、
前記引き込み機構の引き込み動作を規制するストッパ部材と、
前記ユニットが前記装置本体に装着される際に、前記ストッパ部材を、引き込み機構の引き込み動作を規制しない位置に退避させるストッパ部材退避機構と、
を有することを特徴とする引き込み装置。」である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ストッパ部材が引き込み機構の引き込み動作を規制する。そして、ユニットが装置本体に装着される際には、ストッパ部材退避機構がストッパ部材を、引き込み機構の引き込み動作を規制しない位置に退避させる。したがって、装置本体とユニットが係合しない状態で装置本体に振動や衝撃が加わっても、ユーザが復帰操作を行うことなく、ユニットを装置本体に装着することができる。すなわち、本発明の引き込み装置は、装置本体とユニットが係合しない状態での引き込み機構の作動(引き込み機構の誤作動)を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用された引き込み装置の第1の実施形態を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態によるユニットを引き込む動作を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態によるユニットを引き出す動作を示す図
【図4】ユニットの装着動作の作用力を示す図
【図5】本発明の引き込み装置が適用された画像形成装置を示す図
【図6】図5に示した画像形成装置の斜視図
【図7】本発明が適用された引き込み装置の第1の実施形態を示す図
【図8】本発明が適用された引き込み装置の第1の実施形態を示す図
【図9】本発明が適用された引き込み装置の第1の実施形態を示す図
【図10】本発明が適用された引き込み装置の第2の実施形態を示す図
【図11】本発明が適用された引き込み装置の第3の実施形態を示す図
【図12】本発明が適用された引き込み装置の第3の実施形態を示す図
【図13】本発明が適用された引き込み装置の第4の実施形態を示す図
【図14】本発明が適用された引き込み装置の第5の実施形態を示す図
【図15】特許文献1に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【図16】特許文献2に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【図17】特許文献2に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に説明する。
図5(a)は、本発明の引き込み装置が適用された画像形成装置の全体構成を示し、図5(b)は、画像形成装置に設けられている給紙カセット9の断面図を示している。また、図6は画像形成装置の斜視図を示している。
【0019】
図5(a)において、1はフルカラーレーザービームプリンタ(以下、プリンタという)、1Aは画像形成装置本体(プリンタ本体)、1Bはシートに画像を形成する画像形成部、20は定着部である。2は装置本体1Aの上方に略水平に設置された上部装置である画像読取装置であり、この画像読取装置2と装置本体1Aとの間に、シート排出用の排紙空間Sが形成されている。なお、15はトナーカートリッジである。
【0020】
画像形成部1Bは、プロセスカートリッジ11を備えている。プロセスカートリッジ11は、感光体ドラム12と、帯電手段である帯電器13と、現像手段である現像器14を備えている。また、プロセスカートリッジ11の上方には、中間転写ユニット1Cが備えられている。
【0021】
中間転写ベルト16に1次転写ローラ19によって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の負極性を持つトナー像が中間転写ベルト16に転写される。中間転写ユニット1Cの駆動ローラ16aと対向する位置には、中間転写ベルト上に形成されたカラー画像をシートPに転写する2次転写部を構成する2次転写ローラ17が設けられている。さらに、この2次転写ローラ17の上部に定着部20が配置されている。
【0022】
次に、このように構成されたプリンタ1の画像形成動作について説明する。まず、原稿の画像情報を画像読取装置2によって読み取ると、この画像情報は画像処理された後、電気信号に変換されて画像形成部1Bのレーザスキャナ10に伝送される。なお、画像情報はパソコン等の外部機器から画像形成部1Bに入力される場合もある。そして、画像形成部1Bでは、各プロセスカートリッジ11の感光体ドラム12の表面をレーザスキャナ10から射出されたレーザ光により走査する。これにより、帯電器13によって表面が所定の極性・電位に一様に帯電されている感光体ドラム12の表面が順次露光され、各プロセスカートリッジ11の感光体ドラム上に静電潜像が順次形成される。
【0023】
この後、この静電潜像を各色トナーにより現像して可視化すると共に、1次転写ローラ19に印加した1次転写バイアスにより、各感光体ドラム上の各色トナー像を中間転写ベルト16に順次重ね合わせて転写する。これにより、中間転写ベルト16上にトナー画像が形成される。
【0024】
また、このトナー画像形成動作に並行してシート給送装置30からシートPが送り出される。シート給送装置30は、図7(b)に示すように、シートPを積載する積載板35を備えたシートP給紙カセット9、最上面のシートをピックアップする給紙ローラ31により搬送ローラ32と分離ローラ33から成る分離搬送ローラ対にシートを搬送する構成である。シートPが給送されるのにしたがって減少するのに合わせて、シート積載板35は給紙可能高さにシート面を上昇させる制御がされている。給送されてシートが無くなると、シート有無検知センサ36で検知されて給紙動作が停止して、シート補給の報知をパネルなどにする。給紙カセット9に収納されているシートが無くなった場合には、ユーザは給紙カセット9を引き出して、新たにシートを給紙カセット9に補給して給紙カセット9にシートを収納する。
【0025】
この後、シートPは、レジストローラ対40から2次転写部まで搬送される。この後、2次転写部にて、2次転写ローラ17に印加した2次転写バイアスにより、トナー像がシートP上に転写される。
【0026】
次に、このようにトナー像が転写されたシートPは、定着部20に搬送され、定着部20において熱及び圧力を受けて、シートPにカラーの画像として定着される。この後、画像が定着されたシートPは、定着部20の下流に設けられた第1排出ローラ対25aによって排出空間Sに排出され、排出空間Sの底面に突出された積載部23に積載される。
【0027】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1において、9は、装置本体1Aに対して装着および引き出し可能なユニットとしての給紙カセットである。Dは、給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置に引き込んで位置決めする引き込み機構である。
【0028】
まず、図1を用いて、弾性体の飛び移り座屈機構を利用したユニットの引き込み機構について説明する。
3は飛び移り座屈をする弾性体としての板バネであり、4は板バネ3に設けられた係合部であり、5は係合部に係合する被係合部である。被係合部5は、係合部4に係合するピン6と、ピン6を揺動可能に支持するアーム7と、アーム7を回転可能に支持する回転軸8を備えている。係合部4を有する板バネ3は装置本体1Aに取り付けられ、被係合部5は給紙カセット9に取り付けられている。
【0029】
図1に示すように、給紙カセット9が装置本体1Aから引出された状態において、板バネ3は、装置本体1Aに設けられた両端支持部50により、たわませた状態で両端を支持され、係合部4は板バネ3に沿って配置されている。
【0030】
板バネ3は、給紙カセット9の装置本体1Aへの装着方向X,引き出し方向Yに力を加えられると、弾性変形をする。また、板バネ3は、たわませた状態で支持されているので、装着方向X、引き出し方向Yに加えられた力が一定限度を超えると、力が加えられた方向に飛び移り座屈による変形をする。
【0031】
本発明において、飛び移り座屈とは、たわんでいる弾性体に外側から力が加えられた場合に、その力が一定限度以上となると、それ以上の力を加えなくとも、弾性体が急激に変形し、力が加えられた方向(たわんでいる方向と逆方向)に反りかえる現象をいう。また、飛び移り座屈による変形は、弾性変形であり、飛び移り座屈による変形をした弾性体は、逆方向に力が加えられると、その方向に飛び移り座屈をする。
【0032】
なお、本発明の飛び移り座屈をする弾性体に用いることができる材料としてバネ用ステンレス鋼や、バネ用ベリリウム銅・りん青銅・洋白等を使用可能である。なお、板厚が比較的薄い板状の金属が、飛び移り座屈を起こしやすい。
【0033】
次に、引き込み機構Dにより、給紙カセット9を装置本体1Aに装着および引き出す動作について、図2および図3に基づいて説明する。図2(a)〜(c)は、給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置である装着完了位置まで装着する際の動作概略図である。図2(a’)〜(c’)は、それらに対応したピン6と板バネ3および係合部4の状態図である。図3(a)〜(c)は、給紙カセット9を装置本体1Aの装着完了位置から引出す際の引き込み機構Dの動作概略図、図3(a’)〜(c’)は、それらに対応したピン6と板バネ3および係合部4の状態図である。
【0034】
まず、給紙カセット9を装置本体1Aに装着する動作について説明する。給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、図2(a’)に示すように、ピン6は、6aにある位置から6bの位置に移り、係合部4に当接する。さらに、給紙カセット9を装着方向Xに挿入すると、係止ピン6は、係合部4にガイドされてアーム7が揺動し、6cの位置を通って、6dの位置へ移動して板バネ3に当接する。なお、符号6a、6b、6c、6dは、ピン6の移動位置を示す。
【0035】
さらに給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、ピン6は板バネ3を装置本体1Aの後側板に向かって押し込んでいくと、板バネ3は、図2(b)、(b’)の状態になるまで装着方向Xに弾性変形していく。図2(b)、(b’)の状態から、さらに給紙カセット9を装着方向Xに挿入し、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、板バネ3は装着方向Xに飛び移り座屈による変形を起こし、図2(c)、(c’)の状態となる。図2(c)は、引き込み機構Dによって給紙カセット9が装置本体1Aに引き込まれて装着された状態の図である。
【0036】
板バネ3は、飛び移り座屈による変形をする際に、装着方向Xに引き込み力を生じる。板バネ3が図2(b)、(b’)の状態から図2(c)、(c’)の状態へ飛び移り座屈をする際に、係合部4とピン6は係合したままであるので、給紙カセット9は、係合部4と被係合部5を介して装置本体1Aに引き込まれる。
【0037】
一般的に、画像形成装置には、ユニットを装置本体への装着方向で位置決めをするための位置決め機構が設けられている。本実施形態での位置決め機構は、図6で示すように、給紙カセット9に設けられている突き当て部材21aと、装置本体1Aに設けられている基準部材21bとで構成されている。そして、給紙カセット9が装置本体1Aに装着されて突き当て部材21aが基準部材21bに突き当ることにより、給紙カセット9の装着方向の位置決めがされる。
【0038】
給紙カセット9が位置決め機構により位置決めされた状態では、板バネ3は、飛び移り座屈による変形を途中で止められた状態となっている。もし、位置決め機構による給紙カセット9の位置決めがされない場合には、図2(c’)に示すように、点線で示される状態まで板バネ3は飛び移り座屈により変形する。このように、給紙カセット9は、装置本体1Aに装着された状態において、位置決め機構により板バネ3が飛び移り座屈による変形を途中で止めた位置にある。したがって、板バネ3により、給紙カセット9に装着方向Xの力が働き、給紙カセット9は引き込み方向に付勢される。これにより、給紙カセット9は装置本体1Aの装着完了位置で確実に位置決めされる。
【0039】
すなわち、ユーザが給紙カセット9を装置本体1Aに対して装着方向Xに挿入していき、板バネ3に一定限度以上の力が加えられると、給紙カセット9は、装着完了位置である図2(c)の状態へ板バネ3が飛び移り座屈をすることで引き込まれる。したがって、給紙カセット9を装置本体に対して確実に位置決めすることができる。一方、給紙カセット9の挿入による板バネ3に加えられる力が一定限度未満であれば、弾性変形した板バネ3は図2(a)の状態に戻るので、ユーザは給紙カセット9が装着されたと誤認することはない。
【0040】
次に、引き込み機構Dにより、給紙カセット9を装置本体1Aに装着された状態から引出す動作について、図3に基づいて説明する。図3(a)、(a’)の装着完了位置にある給紙カセット9を引き出し方向Yに引出し始めると、図3(b)、(b’)に示すように、係合部4に係合した被係合部5の係止ピン6が板バネ3を引き出し方向Yに弾性変形させる。
【0041】
図3(b)、(b’)の状態から、さらに給紙カセット9を引き出し方向Yに引き出すと、板バネ3に加えられた力は一定限度以上となるので、板バネ3は挿入した際とは逆向きである引き出し方向Yに飛び移り座屈を起こし、図3(c)、(c’)の状態となる。
【0042】
板バネ3は、飛び移り座屈をする際に引き出し方向Yの向きに力を生じる。板バネ3が図3(b)、(b’)の状態から図3(c)、(c’)の状態へ飛び移り座屈をする際に、係合部4とピン6は係合したままであるので、給紙カセット9は、係合部4と被係合部5を介して引き出される。
【0043】
なお、図3(c’)に示すように、板バネ3が図3(b)から図3(c)へ飛び移り座屈をする過程において、係止ピン6は、係合部4にガイドされてアーム7が揺動し、6aの位置から、6bの位置、6cの位置へと順に揺動していく。そして、飛び移り座屈後は、被係合部との係合が解除され6dの位置となる。
【0044】
以上説明したように、弾性体の飛び移り座屈機構を利用した引き込み機構Dによれば、簡易な構成で、ユニットを装置本体1Aに確実に位置決めすることができる。
【0045】
なお、図4は、給紙カセット9の装着および引き出す動作における板バネ3の作用力を表した図である。縦軸は板バネ3が給紙カセット9に作用する力を示し、横軸は給紙カセット9の装置本体1Aの装着完了位置からの距離を示す。作用力が正の値を示す場合は、板バネ3が給紙カセット9を引き出し方向Yに押し出す力を持っていることを示し、負の値を示す場合は板バネ3が給紙カセット9を装着方向Xに引き込む力を持っていることを示す。
【0046】
すなわち、給紙カセット9を挿入するユーザは、給紙カセット9の装着完了位置からの距離が図4(a)から図4(b)のときは、作用力が正の値を示すので、給紙カセット9を装着方向Xに押し込む力が必要である。また、給紙カセット9の装着完了位置からの距離が図4(b)から図4(c)のときは、作用力が負の値を示すので、ユーザが手で押し込まなくとも給紙カセット9は装着方向Xに引き込まれる。
【0047】
以上の説明では、弾性体および係合部が装置本体1Aに設けられ、被係合部がユニットである給紙カセット9に設けられているが、本発明はこれに限らず、ユニットに弾性体が設けられていても良い。すなわち、装置本体およびユニットの一方であるユニットに弾性体および係合部を設け、装置本体およびユニットの他方である装置本体に被係合部を設けてもよい。
【0048】
次に、本発明の特徴であるストッパ部材およびストッパ部材退避機構について説明する。図1において、54は、引き込み機構Dをの引き込み動作を規制するストッパ部材であり、回動軸51を中心として装置本体1Aに取り付けられている。9aは給紙カセット9に設けられた突起であり、50aは装置本体に設けられたカム部材であり、これらはストッパ部材退避機構を構成している。
【0049】
続いて、ストッパ部材およびストッパ部材退避機構について、図7〜図9を基に詳細に説明する。図7〜9は、本発明が適用された引き込み装置の詳細図であり,それぞれの図における(a)図は左視断面図,(b)図は上視図である。
【0050】
図7は、給紙カセット9が装置本体1Aから引き出された状態の図である。このとき、装置本体1Aと給紙カセット9は係合しない状態である。Dは、給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置に引き込んで位置決めする上述した引き込み機構であり、上記の弾性体の飛び移り座屈の機構を利用している。54は、引き込み機構Dの引き込み動作を規制するストッパ部材であり、ストッパ部54aを有している。ストッパ部材54は、移動可能に設けられ、回動軸51を中心として回動自在に装置本体に取り付けられている。また、ストッパ部材54は、バネ部材53で図7(a)中、上方向に付勢され、装置本体に設けられた制止部材52に当接している。このストッパ部材54が制止部材52に当接して停止している位置をストッパ部材54の規制位置とする。
【0051】
図7に示すように、ストッパ部54aは、給紙カセット9の着脱方向において、カセット9を装着する際の係合部4とピン6が係合する位置(係合位置という)と、カセット9が完全に装着された状態の係合部4の位置(引き込み位置という)との間に位置している。これにより、給紙カセット9が引き出された状態において、ストッパ部材54が、引き込み機構Dが移動しようとする板バネ3を制止することができ、引き込み機構Dの係合部4を係合位置から引き込み位置に移動することを規制して誤作動を防止する。
【0052】
ストッパ部材54のストッパ部54aは、板バネ3の付勢方向が変わり、板バネ3が装着方向Xに飛び移り座屈をする際の係合部4の位置である中立位置と係合位置の間に位置していることが好ましい。この位置に配置することにより、引き込み機構Dに振動や衝撃が加わっても、板バネ3が装着方向Xに飛び移り座屈をすることを確実に規制することができる。また、給紙カセット9を装着する際に、板バネ3の弾性力(飛び移り座屈により発生する力)を用いて、給紙カセット9を装着することができる。
【0053】
60は、引き込み機構Dの引き込み動作を規制しない位置にストッパ部材54を退避させるストッパ部材退避機構である。ストッパ部材退避機構60は、給紙カセット9に設けられた突起部9aと装置本体に設けられたカム部材50aを有している。
【0054】
以上説明した構成による給紙カセット9の装着動作を説明する。ユーザが給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、給紙カセット9に設けられた突起部9aがカム部材50aを押圧し、ストッパ部材54が回動軸51を中心にバネ部材53の弾性力に抗して図中反時計周りに回動する。ストッパ部材54が回動することにより、図8(a)および(b)に示すように、ストッパ部材54のストッパ部54aは、係合部4が係合位置から引き込み位置に移動することが可能な位置に退避する。このストッパ部材54が突起部9aによりカム部材50aを介して下方に退避している位置をストッパ部材54の退避位置とする。
【0055】
すなわち、ユーザが給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、ストッパ部材54が引き込み機構Dの引き込み動作を規制しているため、ユーザは、確実に給紙カセット9のピン6を係合部4に係合させることができる。そして、さらに給紙カセット9を装着方向Xに挿入すると、ストッパ部材退避機構60により、ストッパ部材54を引き込み機構Dの板バネ3を規制しない退避位置に移動させる。これにより、引き込み機構Dの板バネ3の弾性力(飛び移り座屈により発生する力)を用いて、図9に示すように、確実に給紙カセット9を装置本体1A内の所定の位置に装着することができる。
【0056】
このように、給紙カセット9が装置本体に係合しない状態では、引き込み機構Dに振動や衝撃が加わっても、ストッパ部材54により係合部4が係合位置から引き込み位置に移動することが規制されている。一方、給紙カセット9を装着する際には、ストッパ部材退避機構60により、ストッパ部材54は、引き込み機構Dの引き込み動作を規制しない退避位置に移動する。
【0057】
したがって、給紙カセット9が装置本体から引き出されている状態で引き込み機構Dに振動や衝撃が加わっても、引き込み機構Dが誤作動をすることがなく、確実に給紙カセット9を装置本体1Aに装着することができる。
【0058】
給紙カセット9を装置本体1Aに装着された状態から引出すときは、上記とは反対の順で引き込み機構D、ストッパ部材54およびストッパ部材退避機構60が動作する。そして、給紙カセット9が装置本体1Aから引き出されると、ストッパ部材54は規制位置に復帰して、引き込み機構Dの誤作動を防止する。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図10に基づいて説明する。図10(a)および(b)は、第2の実施形態による引き込み装置の部分詳細図であり、左視断面図である。
【0060】
なお、第2の実施形態は、ストッパ部材54のストッパ部のみが第1の実施形態と異なり、それ以外の構成は第1の実施形態と同じであるため同等の構成については説明を省略する。第2の実施形態の引き込み装置は、図10に示すように、ストッパ部材のストッパ部が54bのように弾性ストッパ部で構成されている。
【0061】
図10(a)は、給紙カセット9が装置本体1Aから引き出された状態の図であり、ストッパ部材54の弾性ストッパ部54bが板バネ3に係合して、引き込み機構Dを規制している。すなわち、弾性ストッパ部54bは、板バネ3を装着方向Xに飛び移り座屈することを規制している。第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、給紙カセット9が引き出されている状態では、ストッパ部材54は規制位置に位置しており、誤作動により引き込み機構Dの係合部4を係合位置から引き込み位置に移動することを規制している。
【0062】
また、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、ユーザが給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、図10(b)に示すように、ストッパ部材54の弾性ストッパ部54bは引き込み機構Dを規制しない退避位置に退避する。そして、給紙カセット9のピン6を係合部4に係合させることができ、引き込み機構Dにより給紙カセット9を装置本体1A内に引き込むことができる。この動作も第1の実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0063】
これにより、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0064】
なお、図10(a)に示すように、第2の実施形態の弾性ストッパ部54bは、ゴムやスポンジ等の弾性部材で構成されており、板バネ3の一部(図中下部)を覆うように当接している。したがって、第2の実施形態によれば、弾性部材で構成された弾性ストッパ部54bが、給紙カセット9を引き出す際に、板バネ3の引き出し方向Yへの飛び移り座屈により生じる振動を抑制できる。すなわち、給紙カセット9が引き出された状態で、弾性部材で構成された弾性ストッパ部54bを、板バネ3の一部を覆うように第2の実施形態の構成では、防振・防音の効果を奏する。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図11および図12に基づいて説明する。第3の実施形態は、ストッパ部材退避機構の構成のみが第1の実施形態と異なり、それ以外の構成は第1の実施形態と同じであるため同等の構成については説明を省略する。
【0066】
図11において、100はソレノイド、110はソレノイドの作動棒、120は、作動棒110をストッパ部54と連結する連結軸である。また、Sは、給紙カセット9の挿入を検知するためのセンサである。第3の実施形態は、センサS、ソレノイド100、作動棒110、連結軸120をストッパ部材退避機構として用いている。なお、連結軸120はストッパ部54に設けられている図示しない長孔に嵌合している。
【0067】
図12に示すように、センサSとソレノイド100は、コントローラに接続されている。センサSは、ピン6を揺動可能に支持するアーム7の先端を検知すると、コントローラに信号を送る。コントローラは、センサSからの信号を検知すると、ソレノイド100に信号を送る。ソレノイド100は、コントローラから信号が送られると、作動棒110を図10中下方向に短縮する。
【0068】
以下、第3の実施形態のストッパ部材退避機構の動作について説明する。
【0069】
図11(a)は、給紙カセット9が装置本体1Aから引き出された状態を示しており、ストッパ部材54のストッパ部54aが引き込み機構Dを規制している。図11(b)は給紙カセット9が挿入され、ストッパ部材54のストッパ部54aが引き込み機構Dの引き込み動作を規制しない位置に退避した状態を示している。
【0070】
ユニットとしての給紙カセット9を挿入していくと、センサSは給紙カセット9に設けられたアーム7の先端を検知する。センサSがアーム7の先端を検知すると、コントローラに信号が送られ、コントローラからソレノイド100に信号が送られる。ソレノイド100に信号が送られると、作動棒100は図11(b)のように短縮する。作動棒100とストッパ部材54は連結部材120で連結されているので、作動棒100が短縮すると、ストッパ部材54は回転軸51を中心に反時計周り方向に回動する。そして、ストッパ部材54は引き込み機構Dを規制しない退避位置に退避する。このように、給紙カセット9が挿入されるとセンサSにより検知されてストッパ部材54が退避位置に移動する。
【0071】
そして、さらに給紙カセットを挿入すると、給紙カセット9のピン6を係合部4に係合させることができ、引き込み機構Dにより給紙カセット9を装置本体1A内に引き込むことができる。
【0072】
これにより、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0073】
なお、ストッパ部材54を引き込み機構Dの引き込み動作を規制する規制位置から、引き込み機構Dを規制しない退避位置に退避させる手段としては、ソレノイドを用いる以外の構成を適用することも可能である。例えば、モータと、モータの回転で回転するカムを用いてストッパ部材54を揺動させてもよい。
【0074】
(第4の実施形態)
上記の第1の実施形態乃至第3の実施形態においては、引き込み機構の弾性体が装置本体1Aに設けられている場合について説明した。しかし、本発明においては、引き込み機構の弾性体はユニットに設けられていてもよい。
【0075】
図14に示すように、第4の実施形態において、弾性体としての板バネ3は、ユニットとしての給紙カセット9に設けられている。この場合、被係合部としてのアーム7およびピン6は不図示の装置本体1Aに設けられる。また、ストッパ部材54は給紙カセット9に設けられ、ねじりコイルバネ58により時計周り方向に付勢され、給紙カセット9に設けられている制止部材52に当接している。ストッパ部材退避機構としての突起9aは装置本体に設けられている。
【0076】
給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、突起9aがカム50aを押圧し、ストッパ部材54はねじりコイルバネ58の弾性力に抗して図中反時計周りに回動する。すると、ストッパ部材54のストッパ部54aは、引き込み機構の引き込み動作を規制しない位置に退避する。そして、装置本体に設けられているピン6を給紙カセット9の係合部4に係合させることができ、引き込み機構Dにより給紙カセット9を装置本体1A内に引き込むことができる。
これにより、第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0077】
(第5の実施形態)
上記の第1の実施形態乃至第4の実施形態においては、引き込み機構として、弾性体の飛び移り座屈機構を利用したものついて説明した。しかし、本発明の引き込み機構は、飛び移り座屈機構を利用したものに限られず、種々の引き込み機構を用いることができる。
【0078】
例えば、図13に示すように、引き込み機構として、トグル機構を用いてもよい。図13は、引き込み機構としてトグル機構を用いた本発明の第5の実施形態の上視図を示す。第5の実施形態においても、ストッパ部材およびストッパ部材退避機構の構成は第1の実施形態と同じである。
【0079】
引き込み装置101は、図13に示すように、揺動軸107を中心に揺動可能に構成されたトグルアーム106を備えている。このトグルアーム106の揺動端部には、給紙カセットの係止ピン6を係止するための係止溝106aが形成されている。また、装置本体に設けられた軸110およびトグルアーム106側に設けられた軸109との間に掛けられたトグルバネ108を備えている。また、係止ピン102を係止して案内するガイド部材111を備えている。
【0080】
この第5の実施形態においても、装置本体とユニットとしての給紙カセット9が係合しない状態において、ストッパ部材54のストッパ部材54aは、引き込み機構の引き込み動作を規制する。また、給紙カセット9が装着方向Xに挿入され、給紙カセット9aに設けられた突起9aが装置本体に設けられたカム50aを押圧すると、第1の実施形態と同様にストッパ部材54は引き込み機構の引き込み動作を規制しない退避位置に退避する。
【0081】
第5の実施形態においても第1の実施形態と同様に、ユーザが給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、ストッパ部材54のストッパ部54aが引き込み機構Dを規制しない退避位置に退避する。そして、給紙カセット9のピン6をトグルアーム106の係止溝106aに係合させることができ、引き込み機構Dにより給紙カセット9を装置本体1A内に引き込むことができる。
これにより、第5の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0082】
D 引き込み機構
1A 装置本体
3 板バネ
4 係合部
5 被係合部
6 係止ピン
7 アーム
8 回転軸
9 給紙カセット
9a 突起部
50 両端支持部
50a カム部材
51 回動軸
53 バネ部材
54 ストッパ部材
54a ストッパ部
54b 弾性ストッパ部
58 ねじりコイルバネ
60 ストッパ部材退避機構
100 ソレノイド
110 作動棒
120 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記ユニットを前記装置本体に引き込む引き込み機構と、
前記引き込み機構の引き込み動作を規制するストッパ部材と、
前記ユニットが前記装置本体に装着される際に、前記ストッパ部材を、前記引き込み機構の引き込み動作を規制しない位置に退避させるストッパ部材退避機構と、
を有することを特徴とする引き込み装置。
【請求項2】
前記引き込み機構は、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられる被係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記被係合部と係合する係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と前記被係合部が係合した状態で、前記ユニットを前記装置本体に引き込む弾性体と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の引き込み装置。
【請求項3】
前記ストッパ部材は、前記ユニットが前記装置本体に装着される際の前記係合部の前記被係合部が係合する係合位置と、前記ユニットが前記装置本体に装着された際の前記係合部の引き込み位置との間に位置するストッパ部を有することを特徴とする請求項2に記載の引き込み装置。
【請求項4】
前記弾性体は、中立位置を境に付勢方向が変わることで、前記ユニットを前記装置本体の所定位置に引き込むことを特徴とする請求項2乃至3のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項5】
前記ストッパ部材を移動可能に設け、前記ストッパ部材を付勢するバネ部材と、前記バネ部材により付勢された前記ストッパ部材を制止する制止部材とを有し、前記ストッパ部材が前記制止部材により制止された位置で前記ストッパ部材は前記引き込み機構の引き込み動作を規制し、前記ストッパ部材退避機構は、前記ストッパ部材を前記バネ部材の弾性力に抗して前記引き込み機構の引き込み動作を規制しない退避位置に移動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項6】
前記ストッパ部材を、前記装置本体または前記ユニットの一方に設け、前記ストッパ部材退避機構は、前記ストッパ部材に設けられるカム部材と、前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられる突起部と、を有し、
前記ユニットが前記装置本体に装着される際に、前記突起部が前記カム部材を押圧することで、前記ストッパ部材を退避位置に移動させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項7】
前記弾性体は飛び移り座屈をする弾性体であり、前記係合部は前記飛び移り座屈をする弾性体に設けられていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項8】
前記ストッパ部は、弾性部材で構成され、前記装置本体と前記ユニットが係合しない状態において、前記引き込み機構に係合することで前記引き込み機構の引き込み動作を規制することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の引き込み装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−73083(P2013−73083A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212961(P2011−212961)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】