説明

引出体を有する装置及び画像形成装置

【課題】 装置本体と、その装置本体に引き出し可能に装着された引出体とを有する装置において、引出体を奥方向に押し込んだとき、容易にその引出体を装置本体に対して位置決めできるようにする。
【解決手段】 引出体102に対して回転可能に組み付けられた規制部材120の奥側部にローラ125を設けると共に、装置本体101の奥側板131に形成された孔132のまわりにカム152を設け、引出体102を奥方向Bに押し込んで、ローラ125が孔132を通過した後、規制部材120を回転させ、ローラ125をカム132のカム面138上を転動させて、規制部材120と引出体102を奥方向Bに移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出体を有する装置と、引出体を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
装置本体と、その装置本体に引き出し可能に装着される引出体とを有する装置は従来より周知であり、複写機、プリンタ、ファクシミリ又はその複合機などとして構成される画像形成装置がその一例である(例えば、特許文献1参照)。従来のこの種の装置においては、引出体を奥方向に押し込んだとき、装置本体と引出体のうちの一方に形成された位置決め孔に、その他方に設けられた位置決めピンを嵌合させることにより、引出体を装置本体に対して位置決めしていた。ところが、引出体とこれに搭載された装置の総重量が大きくなると、その引出体を画像形成装置本体内に押し込んだとき、位置決めピンと位置決め孔を嵌合させるのに大きな力が必要となり、その操作性が低下する。
【0003】
【特許文献1】特許第2698135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記従来の欠点を除去し、従来よりも小さな力で引出体を画像形成装置本体に対して位置決めすることのできる引出体を有する装置と画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するため、装置本体に対して手前方向に引き出され、又は奥方向に押し込まれて装置本体内に位置決めされる引出体を有する装置において、前記引出体に回転可能に組み付けられた規制部材と、該規制部材の奥側部に設けられた位置決めロック部材と、装置本体の奥側部分に形成された孔のまわりに設けられたカムとを有し、前記引出体を奥方向に押し込んで、前記規制部材に設けられた位置決めロック部材を、前記装置本体の奥側部分に形成された孔を通過させた後、前記規制部材を回転させたとき、前記位置決めロック部材が前記カムのカム面に案内されて、該位置決めロック部材と規制部材が、前記引出体と共に奥方向に移動するように、当該カムのカム面が形成されていることを特徴とする引出体を有する装置を提案する(請求項1)。
【0006】
また、上記請求項1に記載の引出体を有する装置において、前記位置決めロック部材が複数個設けられ、これらの位置決めロック部材が前記規制部材の中心軸線に対して対称に配置されていると有利である(請求項2)。
【0007】
さらに、上記請求項1又は2に記載の引出体を有する装置において、前記装置本体の奥側部分に位置決め孔が形成され、前記引出体の奥側部に位置決めピンが設けられ、前記位置決めロック部材が前記カムのカム面に案内されて最も奥方向の位置を占めたとき、前記位置決めピンの段差部が前記装置本体の奥側部分に圧接して、引出体が前後方向に位置決めされるように構成され、前記カムが設けられた装置本体の奥側部分と、前記位置決め孔が形成された装置本体の奥側部分とが同一部材であると有利である(請求項3)。
【0008】
また、上記請求項1又は2に記載の引出体を有する装置において、前記引出体の奥側部に位置決め孔が形成され、前記装置本体の奥側部分に位置決めピンが設けられ、前記位置決めロック部材が前記カムのカム面に案内されて最も奥方向の位置を占めたとき、前記位置決めピンの段差部が前記引出体の奥側部に圧接して、引出体が前後方向に位置決めされるように構成され、前記カムが設けられた装置本体の奥側部分と、前記位置決めピンが形成された装置本体の奥側部分とが同一部材であると有利である(請求項4)。
【0009】
さらに、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の引出体を有する装置において、前記位置決めロック部材がローラより成ると有利である(請求項5)。
【0010】
また、上記請求項1乃至5のいずれかに記載の引出体を有する装置において、前記規制部材が前記引出体に対して所定のストロークを移動可能に組み付けられていると共に、前記引出体に倍力装置が設けられ、該倍力装置は、前記引出体を引き出すべく、前記規制部材を引出体に対して手前方向に移動させたとき、該規制部材の加圧部によって加圧され、かつその加圧力よりも大きな力で装置本体の奥側部分を押圧し、その反力によって引出体を手前方向に移動させるように構成されていると有利である(請求項6)。
【0011】
さらに、上記請求項6に記載の引出体を有する装置において、前記倍力装置は、引出体に回動可能に連結された第1のリンクと、一端側が前記第1のリンクに対して相対的に回動可能に連結された第2のリンクとを有し、前記引出体に対する前記第1のリンクの回動中心から前記規制部材の加圧部によって加圧される第1のリンクの被加圧部までのアーム長が、前記引出体に対する第1のリンクの回動中心から前記第2のリンクが第1のリンクに対して相対的に回動するときの回動中心までのアーム長よりも大きく設定され、前記第1のリンクが前記規制部材の加圧部によって加圧されて回動し、これに伴って前記第2のリンクが前記第1のリンクに対して相対的に回動したとき、該第2のリンクは前記引出体に対して奥方向へ移動して、該第2のリンクの他端が装置本体の奥側部分を押圧するように構成されていると有利である(請求項7)。
【0012】
また、上記請求項6又は7に記載の引出体を有する装置において、前記装置本体の奥側部分を押圧する倍力装置の部分が、引出体の幅方向におけるほぼ中央部に位置していると有利である(請求項8)。
【0013】
さらに、上記請求項6乃至8のいずれかに記載の引出体を有する装置において、前記規制部材の加圧部は、その規制部材がいかなる角度位置にあるときも、前記倍力装置を加圧できるように構成されていると有利である(請求項9)。
【0014】
また、上記請求項6乃至9のいずれかに記載の引出体を有する装置において、前記引出体と装置本体の一方に位置決めピンが設けられ、その他方には位置決め孔が形成され、前記引出体が装置本体内の所定の位置に位置決めされたとき、前記位置決めピンの先細先端部以外の部分が前記位置決め孔に嵌合しており、少なくとも、前記位置決めピンの先細先端部以外の部分と位置決め孔との嵌合が外れるまで、前記倍力装置による引出体の手前方向への移動動作が行われると有利である(請求項10)。
【0015】
さらに、本発明は、上記目的を達成するため、請求項1乃至10のいずれかに記載の引出体を有していることを特徴とする画像形成装置を提案する(請求項11)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来よりも小さな力で引出体を装置本体に対して位置決めし、かつロックすることができ、その操作性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を画像形成装置に適用した実施形態例を説明する。
【0018】
図1は、画像形成装置の垂直断面図であり、ここに示した画像形成装置は、給紙テーブル200と、これに支持された作像部100と、その上に取り付けられたスキャナ300と、さらにその上に取り付けられた原稿自動搬送装置400とを有している。スキャナ300は、図示していない原稿が載置されるコンタクトガラス32と、その下方に配置されていて、光源と第1ミラーを有する第1走行体33と、第2及び第3ミラーを有する第2走行体34と、結像レンズ35と、たとえばCCDより成る読み取りセンサ36とを有している。
【0019】
図1に示した画像形成装置を用いてコピーを取るときは、原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットするか、又は自動原稿搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、次いで原稿自動搬送装置400を閉じ、その装置400によってコンタクトガラス32上の原稿を押える。そして、図示していないスタートスイッチを押下すると、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした場合には、その原稿がコンタクトガラス32上へ搬送された後に、コンタクトガラス32上に原稿をセットした場合には、直ちに、スキャナ300が作動を開始して、第1及び第2走行体33,34が、そのホームポジションから図1における右方に移動する。このとき、第1走行体33の光源から発射する光によって、コンタクトガラス32上に載置された原稿が照明され、その反射光が第1走行体33の第1ミラー、第2走行体の第2及び第3ミラーで反射して結像レンズ35を通り、読み取りセンサ36に原稿画像が結像され、原稿画像の内容が読み取られる。
【0020】
一方、作像部100において、上述のように読み取られた画像情報に対応する記録画像が次のようにして形成される。
【0021】
図1に示した作像部100は、その装置本体101内に配置された第1乃至第4の作像手段18Y,18C,18M,18BKと、第1乃至第3の支持ローラ14,15,16に巻き掛けられた無端ベルトより成る中間転写体10を具備し、その中間転写体10は矢印方向に回転駆動される。また、各作像手段18Y乃至18BKは、ドラム状の感光体より成る像担持体40Y,40C,40M,40BKを有し、かかる像担持体の上方には露光装置21が配置されている。この露光装置21からは、前述のようにスキャナ300によって読み取られた画像情報に対応して変調された書き込み光が出射し、その書き込み光が、帯電された各像担持体40Y乃至40BKに照射され、これによって各像担持体に静電潜像が形成される。これらの静電潜像は、それ自体周知のように、現像装置によって現像され、各像担持体40Y乃至40BK上にそれぞれイエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像及びブラックトナー像が形成される。これらのトナー像は、矢印方向に回転駆動された中間転写体10上に、各一次転写装置62Y,62C,62M,62BKの作用により転写され、中間転写体10上に合成カラー画像が形成される。トナー像転写後の各像担持体上に付着する転写残トナーは、クリーニング装置によって除去される。
【0022】
一方、中間転写体10を挟んで各像担持体と反対の側には二次転写装置22が設けられている。ここに例示した二次転写装置22は、2つのローラ23,23に掛け渡されて矢印方向に回転駆動される無端状の二次転写ベルト24を有し、この二次転写ベルト24は、中間転写体10を介して第3の支持ローラ16に押し当てられている。
【0023】
図1に示すように、給紙テーブル200内には、複数の給紙カセット44と、その各給紙カセット44に収容された転写紙又は樹脂シートなどから成る記録媒体(図示せず)を送り出す給紙ローラ42を有する給紙装置43が設けられている。スタートスイッチの押下に伴って、選択されたいずれか1つの給紙カセット44に対応する給紙ローラ42が回転し、その給紙カセット44に積載された記録媒体が送り出される。送り出された記録媒体は分離ローラ45で1枚ずつ分離されて給紙路46に進入し、次いで搬送ローラ47によって搬送されつつ、作像部100の給紙路48に導かれ、レジストローラ対49に突き当てられて止められる。
【0024】
或いは、手差しトレイ51上に記録媒体をセットし、給紙ローラ50の回転により、その記録媒体を送り出し、当該記録媒体を分離ローラ52で1枚ずつ分離し、分離した1枚の記録媒体を手差し給紙路53に導き、これを同じくレジストローラ対49に突き当てて止めるようにしてもよい。
【0025】
いずれの場合も、中間転写体10上に転写された合成カラー画像が記録媒体に整合するタイミングでレジストローラ49対が回転を開始し、これにより中間転写体10と二次転写ベルト24との間に記録媒体が搬送され、その二次転写装置22の作用で中間転写体10上の合成カラー画像が記録媒体に二次転写される。記録媒体に転写されずに中間転写体10上に付着している転写残トナーは、中間転写体10を挟んで第2の支持ローラ15に対向して配置された中間転写体用のクリーニング装置17によって除去され、その中間転写体10の表面が清掃される。レジストローラ対49は一般的には接地されて使用されるが、紙粉除去のために、レジストローラ対49にバイアスを印加することもできる。
【0026】
合成トナー像を転写された記録媒体は、引き続き二次転写ベルト24に担持されて搬送され、次いで定着装置25を通り、このとき熱と圧力の作用によってその合成カラー画像が記録媒体上に定着される。定着装置25を通過した記録媒体は、排出ローラ56によって排紙トレイ57上に排出される。図1に示した定着装置25は、無端状の定着ベルト26と、これに押し当てられた加圧ローラ27を有し、その定着ベルト26と加圧ローラ27の間を記録媒体が搬送されるとき、合成カラー画像が熱と圧力の作用により記録媒体上に定着される。
【0027】
また、図1に示した画像形成装置においては、二次転写装置22と定着装置25の下方に記録媒体の両面に画像を形成すべく記録媒体を反転させるシート反転装置28が設けられている。記録媒体の両面に画像を形成するときは、定着装置25を通った記録媒体を、切換爪55を切り換えることによってシート反転装置28に送り込み、ここでその記録媒体の表裏を反転して再び中間転写体10と二次転写装置22との間に送り込み、その記録媒体の裏面にも中間転写体10上の合成カラー画像を転写し、その画像を定着装置25によって定着した後、当該記録媒体を排紙ローラ56によって排紙トレイ57上に排出する。
【0028】
図2は、装置本体101の外装カバーを外した状態の作像部100を示す斜視図である。この図から判るように、作像部100は、装置本体101と、その装置本体101に引き出し可能に装着された引出体102を有している。
【0029】
本例の引出体102は、図3に示すように前側板103と、後側板104と、これらの側板103,104を固定連結するステー105,106と、両側板103,104に固定された底板107によって構成されている。かかる引出体102の左右の部分には、スライドレール108,109が固定され、これらのスライドレール108,109が、装置本体101に固定された相手スライドレール110,111に摺動自在に嵌合している。これにより装置本体101に対して、引出体102を、図2及び図3に矢印Aで示した手前方向に引き出し、又は矢印Bで示した奥方向に押し込んで、これを装置本体内に位置決めすることができる。矢印A,Bの方向は、図1の紙面に対して垂直な前後方向である。このように、引出体102を、装置本体101に対して、その前後方向A,Bに脱着することができるのである。
【0030】
引出体102には、図1に示したレジストローラ対49、二次転写装置22、定着装置25、及び切換爪55などの記録媒体の搬送に関連する装置が搭載されている。これらの装置により構成された記録媒体搬送経路にて記録媒体が詰まった場合には、引出体102を手前方向Aに引き出す。これにより、記録媒体搬送経路が露出するので、ここに詰まった記録媒体を容易に除去することができる。ジャム処理終了後、引出体102を奥方向Bに押し込んで、その引出体102を装置本体101内にセットし、画像形成動作を再開することができる。
【0031】
図4及び図5は、記録媒体の搬送に関連する装置が搭載された引出体102を装置本体101内に位置決めしてセットしたときの様子を示す斜視図である。この状態では、引出体102の前側板103に形成された位置決め孔112,113に、図6の(a)にも示すように、装置本体101に突設された位置決めピン114,115がそれぞれ嵌合し、しかも図3に示した引出体102の後側板104に突設された位置決めピン116,117が、図6の(b)にも示すように、装置本体101の奥側部分、図示した例ではその奥側板131(図7及び図8も参照)に形成された各位置決め孔151にそれぞれ嵌合し、引出体102が装置本体101に対して位置決めされる。より具体的に示すと、これらの位置決めピン114,115,116,117は、図6の(a),(b)に示す如く、先細先端部118と、これ以外の円柱状の部分119とから成り、その各位置決めピンの先細先端部118以外の部分119が、各位置決め孔112,113に嵌合することによって、引出体102が装置本体101に対して位置決めされる。その際、図6の(a),(b)に示すように、各位置決めピン114,115,116,117の基端部には、円柱状の部分119よりも径が大きくなった段差部150が形成され、図6の(b)に示すように、奥側の位置決めピン116,117の段差部150が装置本体101の奥側板131に圧接することにより、装置本体101に対して、引出体102の前後方向、すなわち、引出体102の引き出し又は押し込み方向における位置決めがなされる。
【0032】
位置決めピン114,115,116,117と、位置決め孔112,113,151は、装置本体101と引出体102のいずれに設けることもできる。
【0033】
ところで、引出体102に多数の装置が搭載されていると、その全重量が大きくなる。このため、引出体を引き出す際、これを引き出し始めたときに大きな力が必要となり、その操作性が低下するおそれがある。引出体が装置本体内にセットされているとき、位置決めピンと位置決め孔が嵌合して、引出体が位置決めされるように構成されている場合には、引出体を引き出し始めたとき、位置決めピンと位置決め孔との間に大きな摺動抵抗が生じるので、引出体を引き出すのに特に大きな力が必要である。
【0034】
そこで、本例の引出体102には、図3に示す規制部材120が、引出体102に対して、その前後方向A,Bに所定のストロークだけ移動可能に組み付けられている。しかも、この規制部材120は、その中心軸線のまわりに回転可能に引出体102に組み付けられている。図示した規制部材120は、引出体102の前側板103と後側板104を貫通して延びる規制棒121と、この規制棒121に固定された円板122により構成された加圧部123を有している。前側板103よりも手前側の規制棒端部には操作レバー124が固定され、後側板104よりも奥側の規制棒端部には、図11にも示すように、ローラ125より成る位置決めロック部材が設けられている。
【0035】
図7は、図3と同様に引出体102が装置本体101内の所定の位置に装填されているときの様子を示している。これらの図に示すように、引出体102には倍力装置126が設けられている。この倍力装置は、引出体102を引出し始めるとき、その引出体102を小さな力で手前方向に移動させることのできる装置である。図に一例として示した倍力装置126は、引出体102の底板107に第1枢ピン127を介して矢印C,D方向に回動可能に連結された第1のリンク128と、一端側129Aが第2枢ピン130を介して第1のリンク128に対して相対的に回動可能に連結された第2のリンク129とを有し、その第2のリンク129は、引出体102の後側板104に形成された孔を貫通して奥方向に延び、その他端129Bが、装置本体101の奥側部分、図の例では装置本体101の奥側板131に当っている。
【0036】
規制部材120の奥側部に設けられた位置決めロック部材の一例であるローラ125は、装置本体101の奥側板131に設けられたカムと協働して、引出体102を装置本体101に対して位置決めさせ、かつロックするものであるが、その具体的構成と作用については後述する。
【0037】
引出体102を手前方向に引き出すには、先ず作業者が、図3に示した操作レバー124を掴んで、これをほぼ90°だけ矢印E方向に回転させ、ローラ125が奥側板131に形成された孔132を通過できる状態にする(図8参照)。次いで、作業者が操作レバー124を手前方向Aに引き、規制部材120を引出体102に対して手前方向に移動させる。このとき、図8に示すように、規制部材120の加圧部123が第1のリンク128の被加圧部133を加圧するので、第1のリンク128は第1枢ピン127のまわりに矢印C方向に回動する。これにより、第2のリンク129が、第1のリンク128に対して相対的に第2枢ピン130のまわりに回動するが、この第2のリンク129は、引出体102に対しては回動しないように、後側板104に形成された孔によって規制されているので、第2のリンク129は、奥方向Bに移動する。このため、第2のリンク129の奥側の他端129Bが装置本体101の奥側板131を奥方向Bに押圧する。これにより、第2のリンク129は奥側板131から手前方向の反力を受けるので、引出体102が手前方向Aに移動する。第1のリンク128が規制部材120の加圧部123によって加圧されて矢印C方向に回動し、これに伴って第2のリンク129が第1のリンク128に対して相対的に回動したとき、その第2のリンク129が引出体102に対してその奥方向Bへ移動して、第2のリンク129の他端129Bが装置本体101の奥側部分の一例である奥側板131を押圧し、このときの反作用によって引出体102が手前方向Aに所定の距離移動するのである。この移動によって、前述の各位置決め孔112,113,151が各位置決めピン114,115,116,117から外れる。図8は、このときの第1及び第2のリンク128,129と、引出体102と、規制部材120の相対位置関係を示している。この状態から、さらに規制部材120を手前方向Aに引いても、規制部材120は図示していないストッパにより規制されて、引出体102に対して手前方向Aに移動することはなく、規制部材120と引出体102が共に手前方向Aに移動する。
【0038】
ここで、図7及び図8から明らかなように、引出体102に対する第1のリンク128の回動中心Oから規制部材120の加圧部123によって加圧される第1のリンク128の被加圧部133までのアーム長をLとし、引出体102に対する第1のリンク128の回動中心Oから第2のリンク129が第1のリンク128に対して相対的に回動するときの回動中心Oまでのアーム長をLとしたとき、前者のアーム長Lが後者のアーム長Lよりも大きく設定されている。例えばL:L=2:1に設定される。このため、第2のリンク129は、規制部材120の加圧部123が第1のリンク128に加える力よりも大きな力で奥側板131を加圧することになる。作業者が操作レバー124を手前方向Aに引くときの力よりも大きな力が引出体102に加えられて、その引出体102が手前方向Aに移動するのである。このため、作業者は小さな力で楽に各位置決め孔112,113を各位置決めピン114乃至117から外すことができる。L:L=2:1に設定した場合には、操作レバー124を手前方向Aに引く力は、引出体102の引き抜き摺動抵抗の1/2に低減される。仮に、引出体102の引き抜き摺動抵抗が100N(10kgf)としたとき、操作レバー124を引く力はその半分の50N(5kgf)となる。
【0039】
上述のように、倍力装置126は、引出体102を引き出すべく、規制部材120を引出体102に対して手前方向Aに移動させたとき、規制部材120の加圧部123によって加圧され、かつその加圧力よりも大きな力で装置本体101の奥側部分を押圧し、その反力によって引出体102を手前方向Aに移動させるように構成されている。
【0040】
作業者が操作レバー124をつかんで、これを手前方向Aに引き、前述のようにして各位置決め孔112,113,151と各位置決めピン114乃至117との嵌合が外れると、それ以降、引出体102に作用する抵抗は、スライドレール108,109に作用する抵抗のみとなるので、小さな力で引出体102を規制部材120と共に手前方向Aに引き出すことができる。
【0041】
次に、引出体102を装置本体101内の所定の位置にセットすべく、作業者が操作レバー124を掴んで、これを奥方向Bに押圧し、規制部材120と共に、引出体102を奥方向Bに押し込み始めると、第1及び第2のリンク128,129と、規制部材120と、引出体102は、図8に示した相対位置関係を保ちながら、奥方向Bに移動する。このときの引出体102に作用する抵抗は、スライドレール108,109に作用する抵抗だけであるため、小さな力で引出体102を押し込むことができる。
【0042】
ところが、引出体102が最終位置に近づき、各位置決め孔112,113,151と各位置決めピン114乃至117とが互いに嵌合し始めると、引出体102には大きな抵抗が作用するので、この時点で引出体102は停止する。この状態で、さらに規制部材120を奥方向に押し込むと、規制部材120はさらに奥方向Bに移動して、規制部材120に支持された一対のローラ125が装置本体101の奥側板131に形成された孔132を通過して、図8に二点鎖線で示した位置を占める。このとき、規制部材120は図示していないストッパにより規制されて、引出体102に対して奥方向Bに移動することが禁止される。
【0043】
引出体102を装置本体101内にセットすべく、作業者が操作レバー124を掴んで、これを奥方向Bに押圧したとき、先ずその操作レバー124と規制部材120が、引出体102に対して奥方向に移動し、次いで図示していないストッパにより、規制部材120が引出体102に対して停止し、この状態で操作レバー124を更に奥方向Bに押し込むことにより、操作レバー124、規制部材120及び引出体102が一体的に奥方向Bに移動するように構成してもよい。この場合も、一対のローラ125が奥側板131に形成された孔132を通過して、図8に二点鎖線で示した位置を占めたとき、引出体102は最終位置に近づいた位置を占めている。
【0044】
一方、図8の矢印IX方向に見た図9に示すように、奥側板131に形成された孔132は円形孔134と、これに連通した一対の切欠部135より成り、上述のように一対のローラ125を奥側板131の孔132に通過させるとき、その各ローラ125は、孔132の各切欠部135を通過する。また、孔132の円形孔134のまわりの奥側板部分には、図10にも示すように、始点部136から終点部137へと漸次カム面138の高さの高くなったカム152が形成されている。
【0045】
規制部材120を奥方向に移動させ、ローラ125が図8に二点鎖線で示した位置に至ったとき、作業者は操作レバー124を掴んだまま、これを図3における矢印F方向にほぼ90°だけ回転させる。操作レバー124を図3に示した位置に戻すのである。これにより、規制部材120も同じ方向に回転し、各ローラ125も、規制部材120の中心軸線のまわりを図9に矢印Fで示した方向に回転する。このため、各ローラ125は、各カム面138をその始点部136から終点部137へと転動し、図9に二点鎖線で示した位置を占め、ストッパ153に当って停止する。これにより、カム面138の高さHの分だけ、規制部材120が引出体102と共に奥方向Bに移動する。このとき、各位置決め孔112,113,151と各位置決めピン114乃至117が互いに嵌合し、各ローラ125が各カム面138の終点部137の部分に達したとき、図6の(b)に示したように、奥側の位置決めピン116,117の段差部150が装置本体101の奥側板131に圧接し、引出体102が装置本体101内で前後方向に位置決めされてロックされる。各ローラ125が傾斜した各カム面138を転動しながら、各位置決め孔112,113,151と各位置決めピン114乃至117を嵌合させるので、このときも小さな操作力で位置決め孔と位置決めピンを嵌合させることができる。
【0046】
引出体102が上述のように位置決めされるとき、図8に示した第2のリンク129の他端129Bが装置本体101の奥側板131によって加圧され、その第2のリンク129と第1のリンク128が図7に示した初期位置に戻される。
【0047】
引出体102を引き出すときは、前述のように、規制部材120を矢印E(図3)方向に回転させ、各ローラ125を孔132の各切欠部135に整合させるので、各ローラ125が奥側板131に干渉することなく、規制部材120を手前方向Aに移動させることができる。
【0048】
上述のように、本例の引出体を有する装置は、その装置本体101の奥側部分に形成された孔132のまわりに設けられたカム152を有し、引出体102を奥方向に押し込んで、規制部材120に設けられた位置決めロック部材を、装置本体101の奥側部分に形成された孔132を通過させた後、規制部材120をその中心軸線まわりに回転させたとき、位置決めロック部材がカム152のカム面138に案内されて、位置決めロック部材と規制部材120が、引出体102と共に奥方向に移動するように、当該カム152のカム面138が形成されている。この構成により、引出体102を小さな力で楽に装置本体101内の所定の位置に位置決めすることができる。
【0049】
また、本例の装置においては、ローラ125より成る位置決めロック部材が複数個(図の例では2個)設けられ、これらの位置決めロック部材が規制部材120の中心軸線に対して対称に配置されているので、規制部材を楽に回転させ、位置決めロック部材をスムーズにカム面138に沿って移動させることができる。
【0050】
さらに、本例の装置においては、図6の(b)に示したように、装置本体101の奥側部分に位置決め孔151が形成され、引出体102の奥側部に位置決めピン116,117が設けられ、位置決めロック部材が、カム152のカム面138に案内され、そのカム面138の終点部137に至って、最も奥方向の位置を占めたとき、該位置決めピン116,117の段差部150が装置本体101の奥側部分に圧接して、引出体が前後方向に位置決めされるように構成されている。その際、カム152が設けられた装置本体101の奥側部分と、位置決め孔151が形成された装置本体の奥側部分とが同一部材、図の例では奥側板131より成る。この構成により、カム152と位置決め孔151との間に介在する部品点数を最少にすることができ、装置本体101に対する引出体102の位置精度を一層高めることができる。
【0051】
また前述のように、引出体の方に位置決め孔を形成し、装置本体に位置決めピンを設けることもできる。この場合には、引出体の奥側部に位置決め孔が形成され、装置本体の奥側部分に位置決めピンが設けられ、位置決めロック部材がカムのカム面に案内されて最も奥方向の位置を占めたとき、該位置決めピンの段差部が引出体の奥側部に圧接して、引出体が前後方向に位置決めされるように構成される。この場合も、カムが設けられた装置本体の奥側部分と、位置決めピンが形成された装置本体の奥側部分とを同一部材で構成することにより、装置本体に対する引出体の位置精度を高めることができる。
【0052】
また、本例の引出体を有する装置においては、位置決めロック部材がローラ125より成るので、そのローラ125がカム面138を円滑に転動することができるが、この位置決めロック部材をローラ以外の部材により構成することもできる。例えば、図12に示すように、規制部材に対して固定された摺動部材125Aによって位置決めロック部材を構成し、その摺動部材125Aがカム面138を摺動するように構成することもできる。
【0053】
また図示した例では、装置本体101の奥側部分、すなわち奥側板131を押圧する倍力装置126の部分は、第2のリンク129の他端129Bであるが、この他端129Bが引出体102の幅方向(図3における左右方向)のほぼ中央部に位置しているので、他端129Bが奥側板131を押圧したとき、その奥側板131からの反力が引出体102の幅方向におけるほぼ中央部に加えられる。これにより、引出体102に対して、反力に起因した回転モーメントが加えられることがないので、引出体102は図3に示した姿勢を保ちながら、正しく手前方向Aに移動することができる。
【0054】
また、規制部材120は、その中心軸線のまわりに回転可能に引出体102に組み付けられており、しかも規制部材120の加圧部123は円板122によって構成されているので、規制部材120の加圧部123は、その規制部材120がいかなる角度位置にあるときも、倍力装置126の第1のリンク128を加圧することが可能である。これにより、操作ミスを防止することができる。
【0055】
引出体102と装置本体101の一方に位置決めピンを設け、その他方に位置決め孔を形成し、引出体102が装置本体101内の所定の位置に位置決めされたとき、図6に示したように、その位置決めピンの先細先端部以外の部分119が位置決め孔に嵌合している。その際、引出体102を手前方向Aに引き出すとき、位置決め孔と位置決めピンの嵌合が外れてしまえば、それ以降、小さな力で引出体102を手前方向Aに引き出すことができるので、少なくとも、位置決めピンの先細先端部以外の部分119と位置決め孔との嵌合が外れるまで、倍力装置126による引出体102の手前方向Aへの移動動作が行われるように構成すれば、引出体102を小さな力で引き出すことができる。
【0056】
図示した例では、第2のリンク129を装置本体101の奥側板131に対して押圧するように構成したが、この第2のリンク129を省略し、第1のリンク128が直に奥側板131を押圧するように構成することもできる。
【0057】
また、引出体を有する装置として画像形成装置を示したが、本発明は他の適宜な装置に対しても採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】画像形成装置の一例を示す概略垂直断面図である。
【図2】外装カバーを外した状態の画像形成装置の斜視図である。
【図3】引出体の斜視図である。
【図4】引出体が画像形成装置本体内に装填されているときの様子を示す斜視図である。
【図5】引出体が画像形成装置本体内に装填されているときの様子を示す斜視図である。
【図6】位置決めピンと位置決め孔の相対位置関係を示す図である。
【図7】引出体が装置本体内に位置決めされているときの規制部材と倍力装置と引出体の相対位置関係を示す平面図である。
【図8】規制部材を手前方向に引き出したときの規制部材と倍力装置と引出体の相対位置関係を示す平面図である。
【図9】図8の矢印IX方向に見た拡大図である。
【図10】奥側板に形成された孔のまわりに設けられたカム面を示す斜視図である。
【図11】ローラとして構成された位置決めロック部材の斜視図である。
【図12】摺動部材として構成された位置決めロック部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
101 装置本体
102 引出体
112,113,151 位置決め孔
114,115,116,117 位置決めピン
118 先細先端部
119 部分
120 規制部材
123 加圧部
126 倍力装置
128 第1のリンク
129 第2のリンク
132 孔
133 被加圧部
138 カム面
152 カム
A 手前方向
B 奥方向
,O 回動中心
,L アーム長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して手前方向に引き出され、又は奥方向に押し込まれて装置本体内に位置決めされる引出体を有する装置において、前記引出体に回転可能に組み付けられた規制部材と、該規制部材の奥側部に設けられた位置決めロック部材と、装置本体の奥側部分に形成された孔のまわりに設けられたカムとを有し、前記引出体を奥方向に押し込んで、前記規制部材に設けられた位置決めロック部材を、前記装置本体の奥側部分に形成された孔を通過させた後、前記規制部材を回転させたとき、前記位置決めロック部材が前記カムのカム面に案内されて、該位置決めロック部材と規制部材が、前記引出体と共に奥方向に移動するように、当該カムのカム面が形成されていることを特徴とする引出体を有する装置。
【請求項2】
前記位置決めロック部材が複数個設けられ、これらの位置決めロック部材が前記規制部材の中心軸線に対して対称に配置されている請求項1に記載の引出体を有する装置。
【請求項3】
前記装置本体の奥側部分に位置決め孔が形成され、前記引出体の奥側部に位置決めピンが設けられ、前記位置決めロック部材が前記カムのカム面に案内されて最も奥方向の位置を占めたとき、前記位置決めピンの段差部が前記装置本体の奥側部分に圧接して、引出体が前後方向に位置決めされるように構成され、前記カムが設けられた装置本体の奥側部分と、前記位置決め孔が形成された装置本体の奥側部分とが同一部材である請求項1又は2に記載の引出体を有する装置。
【請求項4】
前記引出体の奥側部に位置決め孔が形成され、前記装置本体の奥側部分に位置決めピンが設けられ、前記位置決めロック部材が前記カムのカム面に案内されて最も奥方向の位置を占めたとき、前記位置決めピンの段差部が前記引出体の奥側部に圧接して、引出体が前後方向に位置決めされるように構成され、前記カムが設けられた装置本体の奥側部分と、前記位置決めピンが形成された装置本体の奥側部分とが同一部材である請求項1又は2に記載の引出体を有する装置。
【請求項5】
前記位置決めロック部材がローラより成る請求項1乃至4のいずれかに記載の引出体を有する装置。
【請求項6】
前記規制部材が前記引出体に対して所定のストロークを移動可能に組み付けられていると共に、前記引出体に倍力装置が設けられ、該倍力装置は、前記引出体を引き出すべく、前記規制部材を引出体に対して手前方向に移動させたとき、該規制部材の加圧部によって加圧され、かつその加圧力よりも大きな力で装置本体の奥側部分を押圧し、その反力によって引出体を手前方向に移動させるように構成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の引出体を有する装置。
【請求項7】
前記倍力装置は、引出体に回動可能に連結された第1のリンクと、一端側が前記第1のリンクに対して相対的に回動可能に連結された第2のリンクとを有し、前記引出体に対する前記第1のリンクの回動中心から前記規制部材の加圧部によって加圧される第1のリンクの被加圧部までのアーム長が、前記引出体に対する第1のリンクの回動中心から前記第2のリンクが第1のリンクに対して相対的に回動するときの回動中心までのアーム長よりも大きく設定され、前記第1のリンクが前記規制部材の加圧部によって加圧されて回動し、これに伴って前記第2のリンクが前記第1のリンクに対して相対的に回動したとき、該第2のリンクは前記引出体に対して奥方向へ移動して、該第2のリンクの他端が装置本体の奥側部分を押圧するように構成されている請求項6に記載の引出体を有する装置。
【請求項8】
前記装置本体の奥側部分を押圧する倍力装置の部分が、引出体の幅方向におけるほぼ中央部に位置している請求項6又は7に記載の引出体を有する装置。
【請求項9】
前記規制部材の加圧部は、その規制部材がいかなる角度位置にあるときも、前記倍力装置を加圧できるように構成されている請求項6乃至8のいずれかに記載の引出体を有する装置。
【請求項10】
前記引出体と装置本体の一方に位置決めピンが設けられ、その他方には位置決め孔が形成され、前記引出体が装置本体内の所定の位置に位置決めされたとき、前記位置決めピンの先細先端部以外の部分が前記位置決め孔に嵌合しており、少なくとも、前記位置決めピンの先細先端部以外の部分と位置決め孔との嵌合が外れるまで、前記倍力装置による引出体の手前方向への移動動作が行われる請求項6乃至9のいずれかに記載の引出体を有する装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の引出体を有していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−30810(P2006−30810A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212331(P2004−212331)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】