説明

弛み止めボルト及びその製造方法

【課題】 繰返し振動が作用しても弛むことがなく、きわめて強固に部材等を締め付け固定することができると共に、製造が極めて容易な、弛み止めボルトを提供することを課題とする。
【解決手段】 外周にねじを有する軸部1と、軸部1の一端に設けられた頭部2と、からなり、頭部2は、六角横断面形状をなす本体部201と、本体部201に連設され、本体部201からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部202と、からなっており、スカート部202の外面の下側端面203が本体部201の軸線X−Xと平行となっていると共に、スカート部202の内面が、底部周縁204に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弛み止めボルト及びその製造方法に関し、詳しくは部材等を締め付け固定するに際し、繰返し振動が作用しても弛むことがなく、強固に部材等を締め付け固定することができる弛み止めボルトと、そのような弛み止めボルトを、切削加工など手間のかかる方法によることなく、ヘッダーを用いて効率よく製造しうる方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
部材等を締め付け固定するに際し、ボルトやナットが広く用いられている。
しかしながら、締め付け固定した部分に繰返し振動が作用すると、ボルトやナットが弛むという問題があった。
【0003】
このため、従来から様々な工夫がなされてきた。
例えば、ヘッド部とテーパ部とを備え、テーパ部の内面が円錐曲面に形成され、テーパ部の外面が凹面状の曲面に形成されていることを特徴とする締結部材が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この締結部材によれば、強固に被締結体を締め付けて固定することができ、テーパ部の作用によって、振動および衝撃を吸収して好適な弛み止め作用を備えたものが得られる。
【0005】
しかしながら、この締結部材のような特殊な形状の場合、旋盤などを用いた切削加工でないと製造することが困難であり、しかも切削加工は、製造に特別の技量を必要とし、このためコスト的に高いものとなってしまうという問題があった。
また、近年、より一層の弛み止め作用を備えたボルトが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3860200号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、繰返し振動が作用しても弛むことがなく、きわめて強固に部材等を締め付け固定することができる弛み止めボルトと、そのような弛み止めボルトを、切削加工など手間のかかる方法によることなく、ヘッダーを用いて効率よく製造しうる方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、請求項1に係る本発明は、
外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを提供するものである。

請求項2に係る本発明は、前記スカート部の内面と軸部との交点をR状に構成し、丸みを持たせてなる請求項1記載の弛み止めボルトを提供するものである。

請求項3に係る本発明は、外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを提供するものである。

請求項4に係る本発明は、前記スカート部の内面と軸部との交点をR状に構成し、丸みを持たせてなる請求項3記載の弛み止めボルトを提供するものである。

請求項5に係る本発明は、外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを製造する方法であって、
切断用ナイフを具備し、かつ、パンチを有する上金型と、スカート部の内面を逆懸垂曲面状にくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマを取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するヘッダーを用い、
鍛造可能な線材を切断用ナイフにより所定長さに切断し、次いで、切断された線材に、前記上金型と前記下金型とにより頭部圧造加工及びザグリ加工を施して、前記線材の一端に、本体部とスカート部とからなる頭部を形成すると共に、前記スカート部を、前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面(の一部)を用いた凹面を描いて拡開状に形成され、スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有するものとなし、
次に、トリーミング自動機を用いて、前記頭部のうちの本体部の横断面形状を六角となし、
次いで、転造加工により、前記頭部を除く線材の外周にねじを形成して軸部となし、
次に、前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となるように、余肉をカットする、
ことを特徴とする、弛み止めボルトの製造方法を提供するものである。

請求項6に係る本発明は、ザグリ金型コマが、ザグリ加工を行うザグリ肩状部を上下端に有する、上下対称の形状を有するものであって、一方のザグリ肩状部が摩耗したときにこれを反転させて用いる、請求項5記載の方法を提供するものである。

請求項7に係る本発明は、線材及び/又は金型に超音波振動を加えながら頭部圧造加工及びザグリ加工を施す、請求項5又は6に記載の方法を提供するものである。

請求項8に係る本発明は、前記上金型と、前記下金型との間に、頭部圧造加工及びザグリ加工の際のスカート部下側における線材の逃げ場所となる隙間を生じさせた状態で、頭部圧造加工及びザグリ加工を施す、請求項5〜7のいずれかに記載の方法を提供するものである。

請求項9に係る本発明は、さらに熱処理工程を行う、請求項5〜8のいずれかに記載の方法を提供するものである。

請求項10に係る本発明は、さらに表面処理工程を行う、請求項5〜9のいずれかに記載の方法を提供するものである。

請求項11に係る本発明は、外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを製造する方法であって、
切断用ナイフを具備し、かつ、パンチを有する上金型と、スカート部の内面を全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマを取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するヘッダーを用い、
鍛造可能な線材を切断用ナイフにより所定長さに切断し、次いで、切断された線材に、前記上金型と前記下金型とにより頭部圧造加工及びザグリ加工を施して、前記線材の一端に、本体部とスカート部とからなる頭部を形成すると共に、前記スカート部を、前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面(の一部)を用いた凹面を描いて拡開状に形成され、スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有するものとなし、
次に、トリーミング自動機を用いて、前記頭部のうちの本体部の横断面形状を六角となし、
次いで、転造加工により、前記頭部を除く線材の外周にねじを形成して軸部となし、
次に、前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となるように、余肉をカットする、
ことを特徴とする、弛み止めボルトの製造方法を提供するものである。

請求項12に係る本発明は、ザグリ金型コマが、ザグリ加工を行うザグリ肩状部を上下端に有する、上下対称の形状を有するものであって、一方のザグリ肩状部が摩耗したときにこれを反転させて用いる、請求項11記載の方法を提供するものである。

請求項13に係る本発明は、線材及び/又は金型に超音波振動を加えながら頭部圧造加工及びザグリ加工を施す、請求項11又は12に記載の方法を提供するものである。

請求項14に係る本発明は、前記上金型と、前記下金型との間に、頭部圧造加工及びザグリ加工の際のスカート部下側における線材の逃げ場所となる隙間を生じさせた状態で、頭部圧造加工及びザグリ加工を施す、請求項11〜13のいずれかに記載の方法を提供するものである。

請求項15に係る本発明は、さらに熱処理工程を行う、請求項11〜14のいずれかに記載の方法を提供するものである。

請求項16に係る本発明は、さらに表面処理工程を行う、請求項11〜15のいずれかに記載の方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繰返し振動が作用しても弛むことがなく、きわめて強固に部材等を締め付け固定することのできる弛み止めボルトが得られる。
また、本発明の方法によれば、繰返し振動が作用しても弛むことがなく、きわめて強固に部材等を締め付け固定することのできる弛み止めボルトを、ヘッダーを用いて効率よく製造することができる。
しかも、本発明の方法は、高度な技量が要求される切削加工などによるものではなく、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明により得られる弛み止めボルトの一態様(以下、「本発明の第1により得られる弛み止めボルト」ということがある。)を示す正面図である。
【図2】本発明により得られる弛み止めボルトの一態様を示す断面説明図である。
【図3】本発明により得られる弛み止めボルトの一態様について、図1のS−S線より見上げたときの形状を示す説明図である。
【図4】本発明により得られる弛み止めボルトの一態様について、くり抜かれたスカート部の内面の形状(逆懸垂曲面状)を示す説明図である。
【図5】本発明により得られる弛み止めボルトの他の態様(以下、「本発明の第2により得られる弛み止めボルト」ということがある。)を示す正面図である。
【図6】本発明により得られる弛み止めボルトの他の態様を示す断面説明図である。
【図7】本発明により得られる弛み止めボルトの他の態様について、図5のT−T線より見上げたときの形状を示す説明図である。
【図8】本発明により得られる弛み止めボルトの他の態様について、くり抜かれたスカート部の内面の形状(全体として逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状)を示す説明図である。
【図9】本発明の方法に用いる線材の一態様を示す正面図である。
【図10】本発明の方法における切断工程並びにこれに用いるヘッダーの一例を示す説明図である。
【図11】本発明の方法において、ヘッダーを用いて、頭部圧造加工及びザグリ加工を行ったときの模様を示す説明図である。
【図12】本発明の方法において、ヘッダーを用いて、頭部圧造加工及びザグリ加工を行う直前の模様を示す説明図である。
【図13】本発明の方法において、頭部鍛造加工及びザグリ加工を行うときの上金型を下側から見たときの概略説明図である。
【図14】本発明の方法において、頭部鍛造加工及びザグリ加工を行うときの下金型を上側から見たときの概略説明図である。
【図15】本発明の第1の方法において用いるザグリ金型コマの一例を示す断面説明図である。
【図16】本発明の第1の方法において用いるザグリ金型コマの一例を示す平面図である。
【図17】図12における流路の中央線付近の横断面図である。
【図18】本発明の第2の方法において用いるザグリ金型コマの一例を示す断面説明図である。
【図19】本発明の第2の方法において用いるザグリ金型コマの一例を示す平面図である。
【図20】ツイスト加工によるスパイラル3重構造パイプ(スパイラル3重構造管)の断面構造を示す説明図である。
【図21】金型の上下、及び、スパイラル多重構造パイプからなる液体送出用パイプの外周に、超音波振動発生装置を配置した状態の一例を示す説明図である。
【図22】弛み試験方法の実施状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1は、弛み止めボルトに関し、
外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを提供するものである。
【0012】
以下、本発明の第1を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明により得られる弛み止めボルトの一態様(即ち、「本発明の第1により得られる弛み止めボルト」)を示す正面図であり、図2は、その断面説明図である。
図3は、本発明の第1により得られる弛み止めボルトについて、図1のS−S線より見上げたときの形状を示す説明図である。
また、図4は、本発明の第1により得られる弛み止めボルトについて、くり抜かれたスカート部の内面の形状(逆懸垂曲面状)を示す説明図である。
【0013】
本発明の第1により得られる弛み止めボルトAは、外周にねじを有する軸部1と、軸部1の一端に設けられた頭部2と、からなり、頭部2は、六角横断面形状をなす本体部201と、本体部201に連設され、本体部201からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部202とからなっており、スカート部202の外面の下側端面203が本体部201の軸線と平行となっていると共に、スカート部202の内面が、底部周縁204に平坦部を残しつつ逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有するものである。
【0014】
[本発明の第1により得られる弛み止めボルトの構造]
本発明の第1により得られる弛み止めボルトAは、外周にねじを有する軸部1と、軸部1の一端に設けられた頭部2と、からなっており、軸部と頭部とからなる点では、通常のボルトと同様であるが、弛み止め効果を得るために、頭部2の構造が特殊なものとなっている。
すなわち、本発明により製造される弛み止めボルトAの頭部2は、六角横断面形状をなす本体部201と、本体部201に連設され、本体部201からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部202とからなっている。
【0015】
ここで本体部201は、通常のボルト頭部と同様に六角横断面形状をなすものである。
一方、スカート部202は、この本体部201に連設され、本体部201からその半径方向外方へ遠去かるように形成された、略スカートの如き形状を有する筒状のものである。
しかも、このスカート部202は、懸垂曲面を用いた凹面を描いて、拡開状に(つまり、断面説明図である図2で見て、相対する面が対称的に傾斜して、斜面状に開く形になるように)形成されている。
より正確には、スカート部202(その外面)は、懸垂曲面(懸垂面;カテノイド)の全部ではなくて懸垂曲面を含み、その一部を用いた凹面を描いて、拡開状に形成されている。断面でいうと、懸垂曲線(懸垂線;カテナリー曲線)を描いて、拡開状に形成されている。
なお、鎖やロープなどの両端を、固定して吊り下げた(持って垂らした)ときにできる形を懸垂曲線と呼び(懸垂線或いはカテナリー曲線とも呼び)、この懸垂曲線(懸垂線;カテナリー曲線)を回転させてできる曲面を懸垂曲面と呼んでいる(懸垂面或いはカテノイドとも呼んでいる)。
このようにスカート部202の外面は、懸垂曲面を用いた凹面を描いて、拡開状に形成されている。スカート部202の外面をこのように形成することにより、この部分に弾性を与え、部材等を締め付け固定するに際し、充分な締め付け力をもって固定することができると共に、締め付け後は弛みのない状態とすることができる。
なお、スカート部202の外面は、懸垂曲面を用いたものとする他、スプライン曲線状とすることもできる。
【0016】
但し、スカート部202の外面の下側端面203は、本体部201の軸線X−X方向と平行となっている。これにより、この弛み止めボルトについて、鉄系材料を用いて焼き入れ処理しても、拡開状のスカート部202の先端部分に割れ(亀裂)が発生することがない。
【0017】
スカート部202の内面は、くり抜いた部分の形状が逆懸垂曲面状となるようにくり抜くことにより、底部周縁204に平坦部(座面となる)を残しつつ「逆懸垂曲面状」にくり抜かれている構造を有している。
ここで「逆」懸垂曲面状としたのは、くり抜かれている構造は、「懸垂曲面」(懸垂面;カテノイド)とは上下反対の形状をなしているからであり、また、逆懸垂曲面「状」としたのは、図1〜4から明らかなように、逆懸垂曲面そのものではなく、これに近い形状のものであるからである。
なお、スカート部202の内面としては、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有しているものの他、スプライン曲線(スプライン曲面)状にくり抜かれている構造を有しているものとすることもできる。
軸部1の直径は、必要に応じた適宜の寸法に設定することができる。例えば、小さいものは3mmから、大きなものは36mmといった程度となるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の第1により得られる弛み止めボルトAは、スカート部202の内面が逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有していることに加えて、スカート部202の軸の付け根部、すなわちスカート部202の内面と軸部1との交点(溝部)205は、できるだけ丸味を持たせない(尖っている)ことよりも、幾分か丸みを持たせたほうがよい。すなわち、スカート部202の内面と軸部1との交点となる最先端は、丸みを持ったR状(R形状)とすることがよい。当該部分の半径(R)が1mmを超え、1.5mm以下くらいまでが丁度よい。ここでスカート部202の軸の付け根部、すなわちスカート部202の内面と軸部1との交点(溝部)205が尖っていて、最先端がクサビ形状になっていると、弾性の吸収が大きいものの、最先端に圧縮応力が集中し、次いで座面の内円側の縁に集中することから、このような状態に耐え切れずに、トルクをかけても、座面での完全固定が出来ず、時間の経過と共に弛んでしまう。
【0019】
次に、本発明の第2を図面により詳細に説明する。
図5は、本発明により得られる弛み止めボルトの他の態様(即ち、「本発明の第2により得られる弛み止めボルト」)を示す正面図である。
図6は、本発明の第2により得られる弛み止めボルトを示す断面説明図である。
図7は、本発明の第2により得られる弛み止めボルトについて、図5のT−T線より見上げたときの形状を示す説明図である。
図8は、本発明の第2により得られる弛み止めボルトについて、くり抜かれたスカート部の内面の形状(全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状)を示す説明図である。
【0020】
本発明の第2により得られる弛み止めボルトBは、外周にねじを有する軸部1と、軸部1の一端に設けられた頭部2と、からなり、頭部2は、六角横断面形状をなす本体部201と、本体部201に連設され、本体部201からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部202とからなっており、スカート部202の外面の下側端面203が本体部201の軸線と平行となっていると共に、スカート部202の内面が、底部周縁204に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有するものである。
【0021】
本発明の第2により得られる弛み止めボルトBは、スカート部202の内面のくり抜かれている形状が異なること以外は、先に述べた本発明の第1により得られる弛み止めボルトAと同様である。
即ち、前記した本発明の第1により得られる弛み止めボルトAは、スカート部202の内面は、底部周縁204に平坦部を残しつつ逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有しているが、本発明の第2により得られる弛み止めボルトBは、スカート部202の内面が、底部周縁204に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状に(短冊形の集合体のように)くり抜かれている構造を有するものとなっている。
ここで「全体として略逆懸垂曲面状」としたのは、本発明の第2により得られる弛み止めボルトBでは、スカート部202の内面は、「全体として略逆懸垂曲面状」に見えるが、正確に言うと、軸線X−X方向から見ると逆懸垂曲面状であるものの、周方向から見ると必ずしも曲面状ではなく、図8に示すように、周方向にわたって6角以上(好ましくは16〜20角であり、図8では16角)の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有するものであるからである。ここで「周方向」とは、軸線方向ではなく、軸線とはおよそ垂直の方向を指している。
【0022】
なお、本発明の第1により得られる弛み止めボルトAについて述べたと同様に、本発明の第2により得られる弛み止めボルトBについても、スカート部202の外面は、懸垂曲面を用いたものとする他、スプライン曲線状とすることもできる。
また、本発明の第1により得られる弛み止めボルトAについて述べたと同様に、本発明の第2により得られる弛み止めボルトBについても、スカート部202の内面としては、全体として略スプライン曲線状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有するものとすることもできる。
【0023】
本発明の第2により得られる弛み止めボルトBについても、スカート部202の軸の付け根部、すなわちスカート部202の内面と軸部1との交点(溝部)205は、予想外にも、できるだけ丸味を持たせない(尖っている)ことよりも、幾分か丸みを持たせたほうがよい。すなわち、スカート部202の内面と軸部1との交点となる最先端は、丸みを持ったR状(R形状)とすることがよい。当該部分の半径(R)が1mm以上、2mm以下(1R〜2R)くらいまでが丁度よい。
【0024】
このような構造の本発明の第1の弛み止めボルト及び第2の弛み止めボルトを、それぞれヘッダーを用いて製造する方法を提供するのが、本発明の第1の方法及び本発明の第2の方法である。
なお、ヘッダーを用いて製造する代わりに、ザグリ金型コマの形状を変えることで、冷間鍛造又は熱間鍛造により製造することも可能である。
【0025】
以下、本発明の第1の弛み止めボルトを製造する方法(本発明の第1の方法)と、本発明の第2の弛み止めボルトを製造する方法(本発明の第2の方法)とを、図面に基いて説明する。
ここで本発明の第1の方法と本発明の第2の方法とは、用いるザグリ金型コマの形状が異なり、その結果、得られる弛み止めボルトのスカート部の内面のくり抜かれている部分の形状が異なっているものとなっている以外は、基本的には、同様の方法で行われるので、以下、共通する部分はまとめて説明することとする。
【0026】
即ち、本発明の第1の方法は、弛み止めボルトの製造方法に関し、
外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを製造する方法であって、
切断用ナイフを具備し、かつ、パンチを有する上金型と、スカート部の内面を逆懸垂曲面状にくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマを取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するヘッダーを用い、
鍛造可能な線材を切断用ナイフにより所定長さに切断し、次いで、切断された線材に、前記上金型と前記下金型とにより頭部圧造加工及びザグリ加工を施して、前記線材の一端に、本体部とスカート部とからなる頭部を形成すると共に、前記スカート部を、前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成され、スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有するものとなし、
次に、トリーミング自動機を用いて、前記頭部のうちの本体部の横断面形状を六角となし、
次いで、転造加工により、前記頭部を除く線材の外周にねじを形成して軸部となし、
次に、前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となるように、余肉をカットする、
ことを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の第2の方法は、弛み止めボルトの製造方法に関し、
外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを製造する方法であって、
切断用ナイフを具備し、かつ、パンチを有する上金型と、スカート部の内面を全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマを取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するヘッダーを用い、
鍛造可能な線材を切断用ナイフにより所定長さに切断し、次いで、切断された線材に、前記上金型と前記下金型とにより頭部圧造加工及びザグリ加工を施して、前記線材の一端に、本体部とスカート部とからなる頭部を形成すると共に、前記スカート部を、前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成され、スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有するものとなし、
次に、トリーミング自動機を用いて、前記頭部のうちの本体部の横断面形状を六角となし、
次いで、転造加工により、前記頭部を除く線材の外周にねじを形成して軸部となし、
次に、前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となるように、余肉をカットする、
ことを特徴とするものである。
【0028】
本発明の方法(第1の方法と第2の方法)においては、切断用ナイフを具備し、かつ、押圧用パンチを有する上金型と、スカート部の内面をくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマを取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するヘッダーを用いて、頭部圧造加工及びザグリ加工を施す。
ここでヘッダー(コールド・ヘッダーともいう)とは、冷間加工により、ねじの頭を作る機械を指す。ヘッダーには、加工する段数により、1段(シングル・ヘッダー)から多段式のものまである。通常は、2段式、或いは3段式のものが用いられる。
なお、このヘッダーについては、製造方法の工程についての記載箇所でも適宜述べることとする。
【0029】
本発明の方法(第1の方法と第2の方法)においては、鍛造可能な「線材」、換言すると金属材料からなる中実丸棒素材を用い、好ましくは断面が円形の鋼材を用いる。図9は、そのような線材Sの一態様を示す正面図である。線材は、生材を用いることができる。
鋼材としては、鋼鉄の他、用途に応じて、ニッケル、クロム、モリブデン、コバルト、タングステンなどの金属との合金、例えばステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、クロムモリブデン鋼などを用いることができる。その他、非鉄金属材料も用途に応じて用いることができる。
以下、本発明の方法(第1の方法と第2の方法)を工程順に説明する。
【0030】
[切断工程]
最初の工程は、切断工程である。
切断工程は、長尺の線材を、シャーナイフなどと呼ばれる切断用ナイフにより所定長さに切断する工程である。
ヘッダーは、通常、このような切断用ナイフを具備しているが、本発明においてもこれを用いることができる。ヘッダーにて、この切断工程と、次の頭部圧造加工及びザグリ加工と、を行う。
【0031】
この切断工程並びにこれに用いるヘッダーの一例を図10に示す。
なお、ヘッダーとしては、横型のものや縦型のものがあるが、いずれも適用可能である。図では、縦型のものを示した。
図中、符号3は、切断用ナイフであり、符号4はクイル、符号5はストッパーである。ここでクイルは、線材を支持しつつ軸方向に移動させる円筒状送り台である。
この切断工程では、具体的には例えば、クイル4に支持された線材Sは,送りローラー(図示していない)によりヘッダーHの中に送られる。ストッパー5まで長尺の線材Sが送られると、切断用ナイフ3により、所定長さに切断(剪断)される。
本発明の方法(第1の方法と第2の方法)で用いるヘッダーHは、このような切断用ナイフ3を具備し、かつ、押圧用パンチを有する上金型と、スカート部の内面をくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマを取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するものである。
ヘッダーHに装備される前記上金型と前記下金型とにより、次の頭部圧造加工及びザグリ加工を行う。
【0032】
[頭部圧造加工及びザグリ加工を行う工程]
次の工程は、頭部圧造加工及びザグリ加工を行う工程である。
即ち、上記のように切断工程にて切断された線材Sは、ヘッダーHの中心へ搬送され、ここで切断された線材Sに、前記上金型と前記下金型とにより、頭部圧造加工及びザグリ加工を施して、前記線材の一端に、本体部とスカート部とからなる頭部を形成すると共に、前記スカート部を、前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成され、スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、ザグリ金型コマにより、くり抜かれている構造を有するものとなす。
【0033】
ここで本発明の第1の方法では、ザグリ金型コマにより、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有するものとなし、一方、本発明の第2の方法では、ザグリ金型コマにより、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有するものとなしている。
本発明の第1の方法と本発明の第2の方法とにおけるザグリ金型コマの形状については、後記する。
【0034】
図11は、ヘッダーHを用いて、頭部圧造加工及びザグリ加工を行ったときの模様を示す説明図である。
また、図12は、ヘッダーHを用いて、頭部圧造加工及びザグリ加工を行う直前の模様を示す説明図である。このとき線材及び/又は金型に超音波振動を加えながら頭部圧造加工及びザグリ加工が行われる。
また、図13は、このときの上金型を下側から見たとき(図12のZ−Z線位置あたりから見上げたとき)の概略説明図であり、図14は、このときの下金型を上側から見たとき(図12のZ−Z線位置あたりから見下ろしたとき)の概略説明図である。
【0035】
上金型について説明すると、図11、図12中、符号6は押圧用パンチである。符号7は押圧用上パンチガイドであり、符号8は押圧用中パンチガイドであり、符号9は押圧用下パンチガイドである。この押圧用下パンチガイド9は超硬金属で作成されている。これらは、ラム側(図では上部側)について移動するようにされている。なお、成形状態によって、押圧用パンチを多段押圧方式とすることもできる。
【0036】
次に、下金型について説明すると、まず符号10はザグリ金型コマである。符号11は下側パンチガイドであり、符号12はコマガイドであり、符号13はコマ受けガイドであり、符号14は内側型ガイドである。また、符号15は、成形加工時に脱型剤や冷却液の流路となる、流体流路である。符号16は、上金型と下金型との間に設けられている空隙である。
さらに、符号17は、この頭部鍛造加工及びザグリ加工を行う工程終了後に成形物を押し出す押出しピンであり、符号18は押出しピン用ガイドである。
なお、符号Pは、パーティングライン(型合わせ面、金型の分割線)である。
金型の表面は、摺動により摩耗する部分は、予め必要に応じて耐摩耗性の表面処理を施されている。また、部分的に超硬材質(超硬金属)を用いている部分もある。
【0037】
本発明の第1の方法において、この頭部鍛造加工及びザグリ加工を行う工程では、押圧用パンチ6を有する上金型と、スカート部の内面を逆懸垂曲面状にくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマ10を取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するヘッダーを用い、頭部鍛造加工及びザグリ加工を施す。この工程を行うことによって、弛み止めボルトの外形が概ね固まる。
【0038】
本発明の第1の方法において、ザグリ金型コマ10は、図15、16に示すように、全体としては略円盤状をなすも、中央部に空洞101を有する中空構造のものである。しかも、この空洞101の周囲には、一段高いザグリ肩状部102が形成されている。
このザグリ肩状部102は、逆懸垂曲面状をなしている。
即ち、このザグリ金型コマ10は、中央部の空洞101の周囲に、ザグリ加工を行うザグリ肩状部102を上下端に有する、上下対称の形状を有するものであって、一方のザグリ肩状部102が摩耗したり欠けたりしたときにはこれを反転させて用いる。反転させて用いた後に、他方のザグリ肩状部102も欠けたり摩耗したりしてしまったときには、これを新しいものと交換する。
ここでザグリ加工とは、スカート部202の内面をくり抜く加工(本発明の第1では、逆懸垂曲面状にくり抜く加工)をいい、ザグリ金型コマ10(特にそのザグリ肩状部102)を用いて行われる。
ザグリ金型コマ10の表面は、摺動面として、予め耐摩耗性の表面処理を施していることは勿論のこと、割れ、クラック等を防止するため、通常の摺動面とは異なった表面処理を施すと共に、異なった材質のものとし、熱処理を施している。
ザグリ金型コマ10については、その寿命をできるだけ長くしたいことはもとよりであるが、その表面の損傷がない状態で(割れ、クラック等がない状態で)ザグリ加工を行うことが、正確なザグリ加工を行う見地からより必要なことから、摩耗のしにくい超硬質材料というよりはむしろ、割れ、クラック等が発生しにくい靭性のある材料で作成されており、使用中に亀裂が発生しにくく、かつ、亀裂が伝播しにくい性質のものが用いられている。その代わりに、ザグリ金型コマ10が摩耗してしまった場合には、これを反転して用いることができるようにしたり、交換できるようにして対処している。
なお、図16は、ザグリ金型コマ10の一例を示す平面図である。また、図17は、図12における流路の中央線付近の横断面図である。なお、図17に示すように、流路15には、スリット15Cが数箇所(図では2箇所)に設けられている。これにより、キャビティ内に冷却液や脱型剤(離型剤)をよく流し込むことができる。
【0039】
本発明の第2の方法においては、ザグリ金型コマ10は、図18、19に示すように、全体としては略円盤状をなすも、中央部に空洞101を有する中空構造のものである。しかも、この空洞101の周囲には、一段高いザグリ肩状部102が形成されている。このザグリ肩状部102は、全体として、逆懸垂曲面状をなしており、しかも周方向にわたって6角以上(図18、図19では16角)の角のある多角面体状(短冊形の集合体のように)になっていて、スカート部の内面を、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜くことのできる構造を有するものとなっている。
【0040】
なお、金型を用いて数万個成型すると、どうしても摩耗が発生することは避けられない。そこで、本発明においては、摩耗したときに速やかに新しいものに変えられるように(例えば、0.1mm程度の摩耗等が生じた場合に)、ザグリ金型コマ10を反転させて用いられるようにしてある。
なお、反転させたときに、摩耗等によりガタが生じるような場合には、摩耗等した箇所の表面を摩耗等した分だけコーティングしておくと、ガタの発生が抑えられる。ここでコーティング材としては、例えば亜鉛類のように、厚くコーティングできるものであれば、いずれも用いることができる。
【0041】
本発明においては、上記したザグリ金型コマ10を、下金型に、より具体的にはコマ受けガイド13に、取付け取外し可能に嵌合させている。即ち、コマ受けガイド13は、ザグリ金型コマ10を嵌合支持するものである。
コマ受けガイド13としては、ザグリ金型コマ10を嵌合支持しうるものであれば特に形状などに制限はない。図11、図12に示すように、左右に位置するコマ受けガイド13は、ザグリ金型コマ10に形成されているザグリ肩状部102に対応する切欠き部を上部にそれぞれ有している。
【0042】
ザグリ金型コマ10のザグリ肩状部102がスカート部202の内面に当接するように、コマ受けガイド13(下金型)に嵌合させた状態で、押圧用パンチ6を作動させることによって、頭部鍛造加工と共にザグリ加工が行われ、スカート部202の内面が、底部周縁に平坦部204を残しつつ、逆懸垂曲面状に(本発明の第1の方法)、或いは全体として、逆懸垂曲面状をなしており、しかも周方向にわたって6角以上(図18、図19では16角)の角のある多角面体状に(本発明の第2の方法)、それぞれくり抜かれることになる。
同時に、このときはまだ六角横断面形状とはされていないが次工程で六角横断面形状とされる、本体部201と、この本体部201に連設され、本体部201からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部202とからなる頭部2が形成される。
この筒状のスカート部202の外面に形成される懸垂曲面を用いた凹面は、図11に示されるように、押圧用下パンチガイド9の下側内側部の形状(懸垂曲面を用いた凹面となっている)を転写したものである。
【0043】
頭部鍛造加工及びザグリ加工を行うにあたっては、上金型と、下金型との間に、頭部鍛造加工及びザグリ加工の際のスカート部下側における線材の逃げ場所となる空隙16を生じさせた状態で、頭部鍛造加工及びザグリ加工を施すとよい。このような空隙16の存在は、金型の破損防止に効果的である。従来のように空隙16を存在させない場合、線材の余肉分(成形残余寄り分)の逃げ場所がないため、金型がもたなかったが、空隙16を存在させることにより、金型の寿命を、5000〜10000ショットと大幅に延ばすことができた。
【0044】
なお、ザグリ金型コマ10の一方のザグリ肩状部102が摩耗したときにはこれを反転させ、他方の摩耗していないザグリ肩状部102を上となるようにした状態でコマ受けガイド13(下金型)に嵌合させ、頭部鍛造加工及びザグリ加工を行うことができる。両方のザグリ肩状部102が摩耗してしまったときには、新しいザグリ金型コマ10と交換する。
このようにしてザグリ肩状部102が摩耗したときには、ザグリ金型コマ10を反転させたり、或いはコマ受けガイド13はそのままにザグリ金型コマ10だけを交換すればよく、効率的な製造を行うことができる。
【0045】
この頭部鍛造加工及びザグリ加工を行うときには、流路15に冷却液を流しつつ、超音波振動を加えることができる。また、脱型するときには、流路15に脱型剤(離型剤)を流しつつ、超音波振動を加えることができる。冷却液や脱型剤(離型剤)は、通常用いられているものを用いることができる。なお、流路15への流体の供給は、通常、成形材料である線材を据え込む前後の工程において、いずれも行うことができる。
【0046】
この流路15、ひいてはこれに接続している、後述の液体送出用パイプ151を通して、或いは、後述するように金型の上下から、線材及び/又は金型に超音波振動を加えながら、頭部鍛造加工及びザグリ加工を施すことができる。
【0047】
ここで流路15は、その一端がキャビティ面に開口部15Aとして開口すると共に、他端15Bが外部に開口している。
流路15の一端15Aを、キャビティ面に開口部15Aとして開口させることにより、金型の冷却と潤滑等を兼ねさせることができる。
また、流路15の他端15Bは、外部に開口しており、ここには液体送出用パイプ151が接続される。
このような液体送出用パイプ151としては、スパイラル多重構造パイプを用いることが好ましい。
【0048】
このスパイラル多重構造パイプ(スパイラル多重構造管)は、例えば鋼管、ステンレス管(耐熱性SUSなど)、チタン管などからなる、平滑な金属製円管を、ツイスト加工等により、多重構造式のスパイラル状に成形した金属製管(金属製チューブ)である。ツイスト加工を3重、4重に施すことにより、多重構造のスパイラルパイプが得られる。
図20は、このスパイラル多重構造パイプ(スパイラル多重構造管)の1例の断面形状を示す説明図である。即ち、上記ツイスト加工によるスパイラル3重構造パイプ(スパイラル3重構造管)の断面構造を示す説明図が図20に示されている。
【0049】
このようなスパイラル多重構造パイプ、特にスパイラル3重構造パイプを用いることにより、同じ径のものであれば流量を約3倍に増やすことができることから、より小径のものを用いることができ、鍛造装置内での配管の取り回し等が容易となる。そればかりか、流路15を通して金型のキャビティ内に送り込む冷却及び潤滑油は、複数の液体を用いることから、これらに見合う液体送出用パイプを用いて、パイプ内に送り込むも、液体送出用パイプとしてこのようなスパイラル3重構造パイプを用いていると、液体はスパイラル3重構造パイプの中を、スパイラル状(螺旋状)に回転しながら移動し、自然と混合撹拌の役割を果たしていることとなることから、これら複数の液体の混合撹拌を必要としないというメリットがあることが分かった。
なお、スパイラル3重構造パイプの直径は、通常、6〜8mmであり、これを8〜10巻くらいしたものが用いられる。
【0050】
本発明においては、上記したようなスパイラル多重構造パイプからなる液体送出用パイプ151の外周に、超音波振動発生装置152を配置することができる。図21に、スパイラル多重構造パイプからなる液体送出用パイプ151の外周に、超音波振動発生装置152を配置した状態の一例を示す。図中、符号153は、液体槽(図では、A槽、B槽、C槽の3槽)であり、符号154は液体圧送ポンプである。
また、図21に示すように、金型Dの上下・左右にも、超音波振動発生装置152を配置することができる。なお、必要に応じて、金型Dの上下のみ、或いは、金型Dの左右のみに、超音波振動発生装置152を配置することもできる。超音波振動発生装置152は、できるだけ均等になるような位置に、3乃至6箇所程度配置するとよい。
このように、スパイラル多重構造パイプからなる液体送出用パイプ151の外周、並びに、金型Dの上下・左右に、超音波振動発生装置152を配置することができる。
超音波振動発生装置152の基本的構成は、超音波電力を発生する超音波発信器と、その電気的振動を機械的振動に変換する超音波振動子(例えば、セラミック系の圧動振動子など)とからなっており、既知のものを用いることができる。
超音波振動は、製造速度等に合わせて、連続又は間欠的に発生させるよう調整することができる。また、製造速度等に合わせて、発振強弱をコントロールさせることができる。
【0051】
本発明では、このようにスパイラル多重構造パイプからなる液体送出用パイプ151の外周に、超音波振動発生装置152を配置し、パイプ内を通過する液体に超音波振動を与えている。液体の入っている液体槽に超音波振動を発生する装置を取り付け、槽内の液体に超音波振動を与え、その液体を圧送するものではない。このため前記液体槽が不要となる。
【0052】
なお、本発明で用いる超音波は、スパイラル多重構造パイプからなる液体送出用パイプ151の外周に設ける超音波振動発生装置と、金型Dの上下・左右に設ける超音波振動発生装置とで、周波数が異なるも、必要に応じ使い分けができる。
金型Dの上下・左右に設ける超音波振動発生装置で用いる超音波は、一般に10〜50kHz、好ましくは15〜50kHzである。15〜50kHzの範囲で、必要に応じて調整し用いる。
一方、スパイラル多重構造パイプからなる液体送出用パイプ151の外周に設ける超音波振動発生装置で用いる超音波は、これより低くてよくて一般に5〜15kHzである。5〜15kHzの範囲で、必要に応じて調整し用いる。
このような5〜15kHzの範囲の超音波を用い、スパイラル多重構造パイプからなる液体送出用パイプ151の外周に、超音波振動発生装置152を配置し、パイプを通してパイプ内を通過する液体に超音波振動を与えると、超音波振動は液体や固体でよく伝播することから、液体送出用パイプ151と接続している流路15内の液体(冷却液や脱型剤など)に超音波振動が加わることになる。
さらに、金型Dの上下・左右に、超音波振動発生装置152を配置し、上述のように15〜50kHzの範囲の超音波振動を与える。
そうすると、線材及び/又は金型にも超音波振動が加わり、線材及び/又は金型に超音波振動を与えながら、頭部鍛造加工及びザグリ加工を施すことができる。その結果、摩擦を低減することができ、摩耗防止を図り、金型とワーク(線材)との焼き付きを防止し、脱型(離型)を容易にしたりすることができる。また、脱型剤(離型剤)の使用量を抑えることができる。ひいては、成型性(圧造性)を改善し、金型寿命を延ばしたりすることができる。
このように、本発明においては、線材及び/又は金型に超音波振動を与えながら頭部鍛造加工及びザグリ加工を施すことができる。
なお、超音波振動装置の制御に関しては、以下のとおりである。
(1)金型Dの上下・左右に配置する超音波振動発生装置の制御方法は、手動又は自動のいずれも可であり、素材の成形サイクルに合わせて手動又は自動のどちらかで操作することができるようにしている。
(2)液体送出用パイプの外周に配置する超音波振動装置と、金型Dの上下・左右に配置する超音波振動発生装置とは、基本的にはこれを併用・連動させているが、必要に応じて、それぞれ単独操作ができるようにしている。
【0053】
そのような超音波を用い、線材及び/又は金型に超音波振動を加えながら頭部鍛造加工及びザグリ加工を施したり、さらには線材及び/又は金型に超音波振動を加えながら脱型することにより、摩擦を低減することができ、摩耗防止を図り、脱型を容易にしたりすることができる。
【0054】
以上述べた工程は、パンチやガイドを交換しながら行われ、多段プレス機などを用いて行うことができる。
【0055】
上記した如き頭部鍛造加工及びザグリ加工を行う工程終了後に、押出しピン17により成形物が押し出され、次の頭部六角抜き加工を行う工程へと回される。
【0056】
なお、上記工程において、流路への液体の供給制御に関しては、以下のとおりである。
(1)成形素材又は半成形品が、金型の所定の位置にセットされた時点において、自動的にキャビティ内に流路を通って液体が供給される。
(2)次に、キャビティ内(空間)の約85%程度に液体が溜まる時点(瞬時)で、自動制御によって液体の圧送が停止し、成形に入る。
(3)キャビティ内の液体は、この時点で流路より吐出され、金型外部の液体送出用パイプ151を通り、戻り用液体槽153に入る。
(4)戻り用液体槽153に入り冷却された液体は、再び、戻り用液体槽153から、液体送出用パイプ151(スパイラル多重構造パイプなど)を通してキャビティ内へ自動制御により供給される。
(5)液体の量が少なくなった場合には、新規の液体が追加補充される仕組みとなっており、一連の自動制御によってコントロールされる。
【0057】
[頭部六角抜き加工を行う工程]
次の工程は、頭部六角抜き加工を行う工程である。
この工程は、前記頭部のうちの本体部の横断面形状を六角となす工程であって、トリーミング自動機(トリーマー自動機ともいう)(図示していない)を用いて行われる。
なお、必要に応じて、四角や小判型などとすること(ポリゴン加工)も可能である。
このトリーミング自動機としては、通常用いられているものを使用することができる。
この工程を行うと、弛み止めボルトの頭部のうちの本体部の横断面形状が六角とされ、ほぼ弛み止めボルトの外形が固まる。
なお、このように頭部が六角横断面形状をなす、通常の六角ボルトではなく、必要に応じて、治工具の入れ替えによって、キャップスクリューと呼ばれる、丸頭ボルトの頭に六角穴が開いている、六角穴付きボルトとしてもよい。
【0058】
[転造加工及び加工仕上げを行う工程]
次の工程は、転造加工及び加工仕上げを行う工程である。
転造加工により、軸部1の外周にねじ(ねじ山)を形成する。
また、加工仕上げにより、スカート部202の外面の下側端面203が本体部201の軸線と平行となるように、余肉をカットする。
この結果、図1、2に示すような、目的とする弛み止めボルトを製造することができる。
この転造加工を行うにあたっては、予めポインティング(先取り加工)が行われる。
なお、必要に応じて、転造加工ではなく、切削・研削加工によりねじの形成を行うことも可能である。
【0059】
転造加工と加工仕上げとは、どちらを先に行ってもよい。
転造加工は、ローリングマシンなどを用いて行われる。
また、加工仕上げは、切削及び/又は研削により行われる。
【0060】
[熱処理工程(調質工程)]
さらに、強度を要求されるボルトに対しては、焼き入れ焼き戻しによる、熱処理工程(調質工程)が行われる。熱処理は、常法に則り、要求される強度レベルに応じて行えばよい。
【0061】
[表面処理工程]
さらにまた、必要に応じて、メッキなどの表面処理工程(表面処理加工)が行われる。
その後、最終検査を行い、製品とする。最終検査工程では、製品形状が規格内に収まっているか、割れがないか、などを検査する。
【0062】
このように本発明の方法(本発明の第1の方法と本発明の第2の方法)においては、弛み止めボルトを、基本的にはヘッダーを用いて製造することができ、高度な技量が要求される切削加工を必要としない。
従って、本発明の方法(本発明の第1の方法と本発明の第2の方法)によれば、繰返し振動が作用しても弛むことがなく、きわめて強固に部材等を締め付け固定することができる弛み止めボルトを効率よく製造することができる。
【0063】
本発明の方法(本発明の第1の方法と本発明の第2の方法)により並びに本発明(本発明の第1と本発明の第2)により得られた弛み止めボルトは、所定のねじ弛み試験機を用いた、ランダム抽出による弛み試験において、所定の17分間をいずれもクリアーしている。
【0064】
本発明の方法(本発明の第1の方法と本発明の第2の方法)により並びに本発明(本発明の第1と本発明の第2)により得られた製造された弛み止めボルトが、弛み試験において、所定の17分間を常時クリアーし、維持できている理由の一つ目は、スカート部の外面が、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成されており、スカート部の外面の下側端面が本体部の軸線と平行となっていると共に、スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状に(本発明の第1)、或いは、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状に(本発明の第2)、それぞれくり抜かれている構造を有しているからである。
【0065】
また、本発明の方法(本発明の第1の方法と本発明の第2の方法)により並びに本発明(本発明の第1と本発明の第2)により得られた製造された弛み止めボルトが、弛み試験において、所定の17分間を常時クリアーし、維持できている理由の二つ目は、スカート部202の軸の付け根部、すなわちスカート部202の内面と軸部1との交点(溝部)205、をR状(R形状)に構成し、丸みを持たせているからである。このようにスカート部202の内面と軸部1との交点(溝部)205、をR状(R形状)に構成し、丸みを持たせていると、応力が均一にかかり、必要以上のトルクをかけることがないので、容易に固定することができ、また接地圧力が大きくなるので、弛まない。
ここでスカート部202の軸の付け根部、すなわちスカート部202の内面と軸部1との交点(溝部)205、を丸みを持たせず、直線と直線とが交わる、角のある形状(クサビ状)とした場合には、最先端がクサビ形状になっていることから、応力がこの最先端(クサビ)の部分に集中し、接地圧力が小さく、このため弛み易く、上記弛み試験において、所定の17分間をクリアーすることはできない。
【0066】
このようにして得られた弛み止めボルトについて、図22に示す方法に準じて、高速ねじ弛み試験機を用いた弛み試験(米国NAS3550規格試験機によるゆるみ試験)を行った。結果を表1に示す。なお、この試験において、17分間緩まなかったことで、弛み止めボルト・ナットとして、維持し、クリアできていることになる。
図22中、符号30は供試ボルト、符号31は供試ナット、符号32はワッシャー(座金)、符号33は振動バーレル、符号34は加振台、符号35は加振ストローク、符号36はインパクトストローク、をそれぞれ示している。
【0067】
[弛み試験方法]
供試ボルト(図に示す如く本発明の第1の方法により製造された図1、2に示す如き形状の本発明の第1の弛み止めボルト弛み止めボルト、及び図に示す如く本発明の第2の方法により製造された図5、6に示す如き形状の本発明の第2の弛み止めボルト;M16×80−4.8)を、それぞれこれに見合う大きさのナット(供試ナット)と共に試験機に取り付け、次の条件で試験を実施した。17分間弛まなかったときは、戻しトルクを測定した。
【0068】
・試験機:高速ねじ弛み試験機
・振動条件:振動数:1780rpm
加振台ストローク:11mm
インパクトストローク:19mm
振動方向:ボルト軸直角方向
【0069】
・弛みの判定:供試ボルト、供試ナット及びワッシャー(座金)の合マークがずれ、ワッシャーが手で回せるようになったときを「弛んだ」と判定した。
【0070】
【表1】

【0071】
表1の結果によれば、本発明の方法によりそれぞれ製造された、本発明の第1の弛み止めボルト及び本発明の第2の弛み止めボルトは、いずれも17分間の試験中にも弛むことがなかったことが分かる。
【0072】
このようにして得られた弛み止めボルトは、各種部材等の締め付け固定に有効に用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1:軸部
2:頭部
2A:線材の据え込み部
201:本体部
202:スカート部
203:スカート部202の外面の下側端面
204:スカート部202の内面の底部周縁
205:スカート部202の軸の付け根部(スカート部202の内面と軸部との交点)
3:ナイフ
4:クイル
5:ストッパー
6:押圧用パンチ
7:押圧用上パンチガイド
8:押圧用中パンチガイド
9:押圧用下パンチガイド
10:ザグリ金型コマ
101:空洞
102:ザグリ肩状部
11:下側パンチガイド
12:コマガイド
13:コマ受けガイド
14:内側型ガイド
15:流体流路
15A:開口部
15B:流路の他端
15C:スリット
151:液体送出用パイプ
152:超音波振動発生装置
153:液体槽
154:液体圧送ポンプ
16:空隙
17:押出しピン
18:押出しピン用ガイド
30:供試ボルト
31:供試ナット
32:ワッシャー
33:振動バーレル
34:加振台
35:加振ストローク
36:インパクトストローク
A:本発明の第1により得られる弛み止めボルト
B:本発明の第2により得られる弛み止めボルト
P:パーティングライン
S:線材
D:金型全体
H:ヘッダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルト。
【請求項2】
前記スカート部の内面と軸部との交点をR状に構成し、丸みを持たせてなる請求項1記載の弛み止めボルト。
【請求項3】
外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルト。
【請求項4】
前記スカート部の内面と軸部との交点をR状に構成し、丸みを持たせてなる請求項3記載の弛み止めボルト。
【請求項5】
外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを製造する方法であって、
切断用ナイフを具備し、かつ、パンチを有する上金型と、スカート部の内面を逆懸垂曲面状にくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマを取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するヘッダーを用い、
鍛造可能な線材を切断用ナイフにより所定長さに切断し、次いで、切断された線材に、前記上金型と前記下金型とにより頭部圧造加工及びザグリ加工を施して、前記線材の一端に、本体部とスカート部とからなる頭部を形成すると共に、前記スカート部を、前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成され、スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、逆懸垂曲面状にくり抜かれている構造を有するものとなし、
次に、トリーミング自動機を用いて、前記頭部のうちの本体部の横断面形状を六角となし、
次いで、転造加工により、前記頭部を除く線材の外周にねじを形成して軸部となし、
次に、前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となるように、余肉をカットする、
ことを特徴とする、弛み止めボルトの製造方法。
【請求項6】
ザグリ金型コマが、ザグリ加工を行うザグリ肩状部を上下端に有する、上下対称の形状を有するものであって、一方のザグリ肩状部が摩耗したときにこれを反転させて用いる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
線材及び/又は金型に超音波振動を加えながら頭部圧造加工及びザグリ加工を施す、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記上金型と、前記下金型との間に、頭部圧造加工及びザグリ加工の際のスカート部下側における線材の逃げ場所となる隙間を生じさせた状態で、頭部圧造加工及びザグリ加工を施す、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
さらに熱処理工程を行う、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
さらに表面処理工程を行う、請求項5〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
外周にねじを有する軸部と、
前記軸部の一端に設けられた頭部と、からなり、
前記頭部は、六角横断面形状をなす本体部と、
前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成された筒状のスカート部と、からなっており、
前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となっていると共に、
前記スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有する弛み止めボルトを製造する方法であって、
切断用ナイフを具備し、かつ、パンチを有する上金型と、スカート部の内面を全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜くザグリ加工を行うザグリ金型コマを取付け取外し可能に嵌合させた下金型と、を具備するヘッダーを用い、
鍛造可能な線材を切断用ナイフにより所定長さに切断し、次いで、切断された線材に、前記上金型と前記下金型とにより頭部圧造加工及びザグリ加工を施して、前記線材の一端に、本体部とスカート部とからなる頭部を形成すると共に、前記スカート部を、前記本体部に連設され、前記本体部からその半径方向外方へ遠去かるように、かつ、懸垂曲面を用いた凹面を描いて拡開状に形成され、スカート部の内面が、底部周縁に平坦部を残しつつ、全体として略逆懸垂曲面状に、かつ、周方向にわたって6角以上の角のある多角面体状にくり抜かれている構造を有するものとなし、
次に、トリーミング自動機を用いて、前記頭部のうちの本体部の横断面形状を六角となし、
次いで、転造加工により、前記頭部を除く線材の外周にねじを形成して軸部となし、
次に、前記スカート部の外面の下側端面が前記本体部の軸線と平行となるように、余肉をカットする、
ことを特徴とする、弛み止めボルトの製造方法。
【請求項12】
ザグリ金型コマが、ザグリ加工を行うザグリ肩状部を上下端に有する、上下対称の形状を有するものであって、一方のザグリ肩状部が摩耗したときにこれを反転させて用いる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
線材及び/又は金型に超音波振動を加えながら頭部圧造加工及びザグリ加工を施す、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記上金型と、前記下金型との間に、頭部圧造加工及びザグリ加工の際のスカート部下側における線材の逃げ場所となる隙間を生じさせた状態で、頭部圧造加工及びザグリ加工を施す、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
さらに熱処理工程を行う、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
さらに表面処理工程を行う、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−24253(P2013−24253A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156277(P2011−156277)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【特許番号】特許第4975879号(P4975879)
【特許公報発行日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(510173708)株式会社ヤマザキアクティブ (4)
【Fターム(参考)】