説明

弦楽器用コンタクトマイクロホン

【課題】弦を支持する駒の脚部間に着脱自在な弦楽器用コンタクトマイクロホンにおいて、駒に変形や傷を与えることがなく、長時間にわたって使用してもゆるみやずれが生じないようにする。
【解決手段】弦楽器の弦を支承する駒1の脚部2,3内に取り付けられ、弦の振動を電気信号に変換して出力する弦楽器用コンタクトマイクロホンにおいて、筐体12の内部に圧電素子を有するマイクロホン本体11と、筐体12の対向する両側面にほぼ同軸として突設された一対の支持アーム20と、各支持アーム20の先端に設けられ脚部の内面2a,3aに所定の圧力をもって当接する押圧子24と、押圧子24に圧力を付与する圧力付与手段(アジャストナット)23とを含み、各押圧子24は、少なくとも脚部の内面2a,3aに接する部分に円弧面を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器の駒に着脱自在に取り付けられる弦楽器用振動コンタクトマイクロホンに関し、さらに詳しく言えば、演奏中に弦の振動などによって緩んだりしない特にコントラバスに好適な弦楽器用コンタクトマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コントラバス等の弦楽器の振動を収音するコンタクトマイクロホン(振動ピックアップ)には、多くの場合、電子回路が不要である圧電素子が用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
加速度型ピックアップは高域に共振を持つことから、例えばコントラバス用のコンタクトマイクロホンでは、楽器の一部に挟みこんで圧縮力の変化を圧電素子で電圧に変換するようにしている。
【0004】
この種のコンタクトマイクロホンは、特許文献1,2に記載されているように、通常、楽器の一部に固定的に組み込まれて使用されるが、図3に楽器に対して着脱自在としたコンタクトマイクロホンの一例を示し、これについて説明する。
【0005】
このコンタクトマイクロホン10は、例えばコントラバスの駒(ブリッジ)1に二股状に形成されている脚部2,3の内部に配置されて使用されるもので、箱形の筐体12内に図示しない圧電素子を収納したマイクロホン本体11を備えている。
【0006】
筐体12の対向する両側面に、支持アーム13,14が一対としてほぼ同軸的に突設されている。この例において、一方の支持アーム13は固定された長さを有し、その先端には脚部2側の内面2aに当接する押圧子13aを備えている。
【0007】
これに対して、他方の支持アーム14は、雄ねじ軸14aと、その先端側に螺合され脚部3側の内面3aに当接する押圧子14bとから構成されている。すなわち、他方の支持アーム14は、押圧子14bを回すことによりその長さを調節することができるアジャストアームである。
【0008】
これによれば、支持アーム14を縮めた状態で、コンタクトマイクロホン10を脚部2,3内に配置したのち、押圧子14bを所定方向に回わして支持アーム14の長さを長くして各押圧子13a,14bを対応する脚部の内面2a,3aに押しつけることにより、コンタクトマイクロホン10が脚部2,3内に突っ張った状態で装着される。
【0009】
この装着状態で、図示しない弦がはじかれると、その振動が駒1から支持アーム13,14を介してマイクロホン本体11内の圧電素子に伝えられ、圧電素子にて発電された電圧が出力ケーブル15を介して図示しない再生機器等に与えられる。
【0010】
押圧子14bを反対方向に回して支持アーム14の長さを短くすることにより、コンタクトマイクロホン10を駒1から取り外すことができる。
【0011】
このようにして、コンタクトマイクロホン10を駒1に対して簡単に着脱することができるが、駒1の形状は様々であるため、多少形状が異なっても、確実に固定することができるように、この従来例では、押圧子13a,14bを円錐形状として、脚部の内面2a,3aに食い込ませるようにしている。
【0012】
これによれば、点接触に近い機械振動結合状態が得られるが、他方において、次のような問題が生ずる。
【0013】
すなわち、単位面積あたりの押圧力が高いことから、木材で作製されている駒1が塑性変形して取り付けがゆるみ、これが原因で音質が変化してしまうことがある。
【0014】
そこで、押圧子13a,14bに対してさらに強い押圧力をかけることになるが、そうすると、脚部の内面2a,3aのくい込み傷が深くなるばかりでなく、やはり楽器の演奏中に加えられる振動によってゆるむ。これが繰り返されることになる。
【0015】
また、1箇所の傷を深くしないように、押圧子13a,14bの当接位置を変えるならば、脚部の内面2a,3aのくい込み傷が増えてしまい、コンタクトマイクロホン10の着脱を繰り返すうちに、前回のくい込み傷内に押圧子13a,14bを再度くい込ませることになりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−167583号公報
【特許文献2】特開2007−333786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の課題は、弦を支持する駒の脚部間に着脱自在な弦楽器用コンタクトマイクロホンにおいて、駒に変形や傷を与えることがなく、長時間にわたって使用してもゆるみやずれが生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は、弦楽器の弦を支承する駒の脚部内に取り付けられ、上記弦の振動を電気信号に変換して出力する弦楽器用コンタクトマイクロホンにおいて、筐体の内部に圧電素子を有するマイクロホン本体と、上記筐体の対向する両側面にほぼ同軸として突設された一対の支持アームと、上記各支持アームの先端に設けられ上記脚部の内面に所定の圧力をもって当接する押圧子と、上記押圧子に圧力を付与する圧力付与手段とを含み、上記各押圧子は、少なくとも上記脚部の内面に接する部分に円弧面を備えていることを特徴としている。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、上記各押圧子は、軸線が上記脚部の板厚方向と平行に配向される円柱体からなる。
【0020】
また、上記各押圧子を上記脚部に所定の圧力を付与して当接させるうえで、上記支持アームの少なくとも一方が雄ねじ軸からなり、上記圧力付与手段が上記雄ねじ軸に螺合する雌ねじを有するアジャストナットで、上記押圧子が上記アジャストナットに支持されている態様が好ましく採用される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、各押圧子は、駒の脚部の内面に接する部分に円弧面を備えていることにより、駒の脚部の内面に対して線状に接触し、単位面積あたりの圧力が低くなる。したがって、駒に変形や傷を与えることがなく、長時間にわたって使用し、楽器の演奏による振動を受けても、ほとんどゆるみやずれが生じなく、楽器の演奏中に音質が変化してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る弦楽器用コクタクトマイクロホンを一部断面として示す正面図。
【図2】上記弦楽器用コクタクトマイクロホンの取付状態を示す正面図。
【図3】従来の弦楽器用コクタクトマイクロホンの取付状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図1および図2により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、先の図3で説明した従来例と変更を要しない構成要素には同じ参照符号を付している。
【0024】
図1に示すように、この実施態に係る弦楽器用コクタクトマイクロホン10Aは、箱形の筐体12内に圧電素子12aが収納されているマイクロホン本体11を備えている。マイクロホン本体11には、圧電素子12aの出力ケーブル15が接続されている。
【0025】
筐体12の対向する両側面には、支持アーム20,20が左右一対として同軸的に突設されている。この実施形態において、支持アーム20,20は、ともに雄ねじ軸21,21からなり、その基端部21a,21aは筐体12内において平板状として圧電素子12aと接触している。
【0026】
雄ねじ軸21,21の先端部21b,21b側には、圧力付与手段22,22を介して押圧子24,24が支持されている。図1において、右側の圧力付与手段22と押圧子24が断面で示されているが、左側の圧力付与手段22と押圧子24も同様の構造である。
【0027】
圧力付与手段22は、図2に示すように、弦楽器用コクタクトマイクロホン10Aを駒1の脚部2,3間に取り付ける際、押圧子24に所定の圧力を付与して脚部2,3の内面2a,3aに押し付けるためのものである。
【0028】
この実施形態において、圧力付与手段22には、雄ねじ軸21に螺合する雌ねじを有する円筒状のアジャストナット23が用いられている。
【0029】
また、この実施形態において、押圧子24,24は円柱体からなり、図2に示すように、それらの各軸線を脚部2,3の板厚方向(紙面と直交する方向)と平行として、脚部2,3の内面2a,3aに当接する。以下の説明において、この当接状態での押圧子24の向きを「特定方向」と言うことがある。
【0030】
図1における断面で示されているように、押圧子24には、アジャストナット23の先端が嵌合される凹部24aを備えている。
【0031】
この凹部24aは、アジャストナット23の円筒部分が回転可能に嵌合される円形の凹部であり、したがって、アジャストナット23を回しても押圧子24を上記特定方向に向けることができる。
【0032】
ここで、筐体12の側面と押圧子24との間の距離を便宜的に支持アーム20の長さとして、コクタクトマイクロホン10Aを駒1の脚部2,3間に取り付けるには、アジャストナット23を筐体12に近づく方向に回して支持アーム20の長さを短くしてから、図2に示すように、コクタクトマイクロホン10Aを駒1の脚部2,3間に配置する。
【0033】
そして、各押圧子24を上記特定方向の向きとして、今度は、アジャストナット23を筐体12から離れる方向に回して支持アーム20の長さを長くして、各押圧子24を脚部2,3の内面2a,3aに所定の圧力で当接させる。
【0034】
これにより、コクタクトマイクロホン10Aは、脚部2,3間に突っ張った状態で固定され、図示しない弦がはじかれると、その振動が駒1から支持アーム20,20を介してマイクロホン本体11内の圧電素子12aに伝えられ、圧電素子12aにて発電された電圧が出力ケーブル15を介して図示しない再生機器等に与えられる。
【0035】
各押圧子24は円柱体であるため、脚部2,3の内面2a,3aに対して線状に接触し、単位面積あたりの圧力が低くなる。したがって、駒1に変形や傷を与えることがなく、長時間にわたって使用し、楽器の演奏による振動を受けても、ほとんどゆるみやずれが生じなく、楽器の演奏中に音質が変化してしまうことがない。
【0036】
なお、コクタクトマイクロホン10Aを取り外すには、アジャストナット23を筐体12に近づく方向に回して支持アーム20の長さを短くすればよい。
【0037】
上記実施形態では、各押圧子24全体を円柱体としているが、少なくても駒1の脚部2,3の内面2a,3aに接する部分に円弧面を備えていればよい。
【0038】
また、上記従来例と同じく、一方の支持アームのみを可変長とし、他方の支持アームは固定長としてもよい。また、圧力付与手段の別の態様として、筐体11と押圧子24との間に圧縮コイルバネを介装してもよい。上記実施形態で説明したコクタクトマイクロホン10Aはコントラバスに好適であるが、それ以外の弦楽器に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10A 弦楽器用コクタクトマイクロホン
1 駒(ブリッジ)
2,3 脚部
2a,3a 脚部の内面
11 マイクロホン本体
12 筐体
12a 圧電素子
15 出力ケーブル
20 支持アーム
21 雄ねじ軸
22 圧力付与手段
23 アジャストナット
24 押圧子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器の弦を支承する駒の脚部内に取り付けられ、上記弦の振動を電気信号に変換して出力する弦楽器用コンタクトマイクロホンにおいて、
筐体の内部に圧電素子を有するマイクロホン本体と、上記筐体の対向する両側面にほぼ同軸として突設された一対の支持アームと、上記各支持アームの先端に設けられ上記脚部の内面に所定の圧力をもって当接する押圧子と、上記押圧子に圧力を付与する圧力付与手段とを含み、上記各押圧子は、少なくとも上記脚部の内面に接する部分に円弧面を備えていることを特徴とする弦楽器用コンタクトマイクロホン。
【請求項2】
上記各押圧子は、軸線が上記脚部の板厚方向と平行に配向される円柱体からなることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用コンタクトマイクロホン。
【請求項3】
上記支持アームの少なくとも一方が雄ねじ軸からなり、上記圧力付与手段が上記雄ねじ軸に螺合する雌ねじを有するアジャストナットで、上記押圧子が上記アジャストナットに支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弦楽器用コンタクトマイクロホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−288048(P2010−288048A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139975(P2009−139975)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】