張力付与装置
【課題】糸に対して一定の張力を付与できると共に、糸に対して張力を付与しない状態へと切替可能な張力付与装置を提供する。
【解決手段】固定ディスク24と、該固定ディスク24に対して近設される可動ディスク25と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク24と可動ディスク25との間で摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与する張力付与部15・16を複数備える。複数の張力付与部15・16のうち少なくとも何れか一の張力付与部16は、可動ディスク25側に圧縮コイルバネ34を備え、この圧縮コイルバネ34の自己弾性復元力により可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢されるように構成されると共に、この張力付与部16を、上記糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、上記糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構60を備える。
【解決手段】固定ディスク24と、該固定ディスク24に対して近設される可動ディスク25と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク24と可動ディスク25との間で摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与する張力付与部15・16を複数備える。複数の張力付与部15・16のうち少なくとも何れか一の張力付与部16は、可動ディスク25側に圧縮コイルバネ34を備え、この圧縮コイルバネ34の自己弾性復元力により可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢されるように構成されると共に、この張力付与部16を、上記糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、上記糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構60を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する糸に対して所定の張力を付与する張力付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動ワインダの巻取ユニットにおいては、給糸パッケージから解舒された糸は、ディスクテンサーにおいて所望のテンションが付与された後、巻取パッケージとして巻き取られるようになっている。このディスクテンサーは対向する一対のディスクを複数対で備えるものであり、糸に付与するテンションに応じて、糸に接触させるディスクの対数を増減するようにしている。このディスクの対数の増減は、例えば、ディスク自体の取付け/取外しや、対向する一対のディスクが弾性体の作用により近接するように構成されている場合は該弾性体の取付け/取外し、対向する一対のディスクがエアシリンダーの作用により近接するように構成されている場合はエアシリンダーの制御によるディスクの進退動などにより行われている。この種のディスクテンサーは、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1に係るディスクテンサーは、テンサーモータMにより回転動作するディスク右側部(5a,6a)と、このディスク右側部(5a,6a)に対して接触して従動的に回転動作するディスク左側部(5b,6b)と、を備える。ディスク右側部(5a,6a)はテンサーモータMの稼動によりディスク左側部(5b,6b)方向(図2中C方向)へ揺動可能とされ、ディスク左側部(5b,6b)は軸(16)周りに回動自在とされる。
【0004】
特許文献2に係るディスクテンサーは、一方のディスクt2を流体シリンダー9で作動させて、他方のディスクt2’とにより単糸yを挟持して張力を付与するようになっている。そして、この流体シリンダー9を適宜に作動させることにより、単糸yに張力を付与する作動位置と、単糸yに張力を付与しない待機位置と、を選択可能である点が記載されている。
【0005】
【特許文献1】実開平7-33982号公報(段落番号0010、0011)
【特許文献2】特開平10-297825号公報(段落番号0005、0011)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1では、テンサーモータMのC方向への揺動により糸に付与されるテンションを制御する構成であるから、テンションを高精度に制御することは難しかった。また、上記特許文献2では、流体シリンダーを有する構成は、コンプレッサの振動を糸に伝えてしまうので、一定の張力を安定して糸に付与することは難しい。また、ディスク自体の取付け/取外しや弾性体の取付け/取外しは、手間がかかるし、部品損失の恐れがある。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、糸に対して一定の張力を付与できると共に、糸に対して張力を付与しない状態へと切替可能な張力付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第一の観点によれば、以下のように構成される張力付与装置が提供される。即ち、固定部と、該固定部に対して近設される可動部と、を有し、走行する糸を、前記の固定部と可動部との間で摺動させることで該糸に対して張力を付与する張力付与部を複数備える。前記複数の張力付与部のうち少なくとも何れか一の張力付与部は、前記可動部側に弾性体を備え、この弾性体の作用により前記可動部が前記固定部に対して付勢されるように構成されると共に、この張力付与部を、上記糸に対して張力を付与する状態としての作動状態と、上記糸に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替手段を備える。以上の構成によれば、前記弾性体の作用により糸に対して一定の張力を付与できると共に、前記の非作動状態へと切替可能な張力付与部を含む張力付与装置が提供される。
【0010】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記切替手段を備える前記の張力付与部は、前記固定部としての固定ディスクと、前記可動部としての可動ディスクと、を有し、走行する前記糸を、前記の固定ディスクと可動ディスクとの合わせ面で摺動させることで該糸に対して張力を付与するものである。前記切替手段は、前記固定ディスクに対して前記可動ディスクを上記の合わせ面の法線方向に沿って進退させるものである。以上の構成によれば、前記の切替に要する前記可動ディスクの移動距離を短くできるので、前記張力付与装置をコンパクトとできる。
【0011】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記切替手段は、前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢を許容又は規制する。
【0012】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記切替手段は、以下のようにして構成される。前記可動ディスクから前記固定ディスク側と反対側に突起付ロッドが突設される。軸方向の移動が規制される筒内に該突起付ロッドが挿通される。この筒の前記固定ディスク側から遠い側の端から前記固定ディスク側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて形成される。これら付勢許容溝又は付勢規制溝に嵌合する突部が前記突起付ロッドの外周面上に形成される。前記突部が前記付勢許容溝内に収容されるときは前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して当接可能とし、一方、前記突部が前記付勢規制溝内に収容されるときは該突部と該付勢規制溝の前記固定ディスク側の縁との係合により前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して当接不能とする。以上の構成によれば、前記可動ディスクを前記弾性体に抗するように前記固定ディスクから離れる方向へ移動させると共に回転させるだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わると共に、前記非作動状態において上記糸に対する張力の付与が確実に回避される。
【0013】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記切替手段は、以下のようにして構成される。前記可動ディスクから前記固定ディスク側と反対側に歯付ロッドが突設される。この歯付ロッドと前記弾性体との間に付勢伝達ロッドが介設される。軸方向の移動が規制される筒内に前記歯付ロッドが相対回転不能に挿通される。この筒の前記固定ディスク側から遠い側の端から前記固定ディスク側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて形成される。これら付勢許容溝又は付勢規制溝に嵌合する突部が前記付勢伝達ロッドに形成される。前記突部が前記付勢許容溝内に収容されるときは前記付勢伝達ロッドが前記弾性体から受ける付勢力が前記歯付ロッドに伝達されるので前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢が許容され、一方、前記突部が前記付勢規制溝内に収容されるときは該突部と該付勢規制溝の前記固定ディスク側の縁との係合により前記付勢伝達ロッドが前記弾性体から受ける付勢力が前記歯付ロッドに伝達されないので前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢が規制される。更に、前記歯付ロッドの前記固定ディスク側から遠い側の端には、前記付勢伝達ロッドの突部と係合することにより該付勢伝達ロッドを所定方向へ回転する傾斜面が形成される。以上の構成によれば、前記可動ディスクを前記弾性体に抗するように前記固定ディスクから離れる方向へ移動させるだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わる。
【0014】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記弾性体は圧縮コイルバネであり、この圧縮コイルバネの自己弾性復元力により前記可動ディスクが前記固定ディスクに対して付勢されるように構成される。前記切替手段は、以下のようにして構成される。上記の圧縮コイルバネと、前記張力付与装置の筐体に穿設される挿通孔に挿通されると共に前記圧縮コイルバネの内周側に挿入されるバネロッドと、このバネロッドの固定ディスク側一端に固着され、前記筐体との協動によって前記圧縮コイルバネを挟持する、バネ受けと、このバネロッドの他端に固着され、前記筐体から前記バネロッドが前記固定ディスク側へ抜けるのを防止する抜け防止部材と、前記の筐体と抜け防止部材との間に挿入可能な介在部材と、を含んで構成される。前記の筐体と抜け防止部材との間に前記介在部材が挿入されていないときは前記圧縮コイルバネの自由な伸長が許容され、一方、前記の筐体と抜け防止部材との間に前記介在部材が挿入されているときは前記圧縮コイルバネの自由な伸長が規制される。以上の構成によれば、前記可動ディスクを前記弾性体に抗するように前記固定ディスクから離れる方向へ移動させると共に前記介在部材を前記の筐体と抜け防止部材との間に挿入するだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わる。
【0015】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記非作動状態において前記可動ディスクが前記固定ディスクから常に所定距離以上離隔される。以上の構成によれば、前記非作動状態において上記糸に対する張力の付与が確実に回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダの巻取ユニットの概略図である。
【0017】
本実施形態において自動ワインダは、図1に示される巻取ユニット1・1・・・を複数列設して構成される。各巻取ユニット1は、給糸ボビンBから解舒される紡績糸Yをトラバースさせながら巻取ボビンBf上に巻き付けて所定形状のパッケージPとするものである。
【0018】
この巻取ユニット1は、巻取ボビンBfを把持するクレードル2と、紡績糸Yをトラバースさせる綾振ドラム3と、を備える。クレードル2は、綾振ドラム3に対して近接又は離間する方向に揺動自在であり、それによって、巻取ボビンBfに紡績糸Yを巻いて形成したパッケージPが綾振ドラム3に対して接触又は離間される。また、クレードル2には、糸切れ時にクレードル2を上げて、パッケージPを綾振ドラム3から離反させるリフトアップ機構2aと、クレードル2を上げると同時に、クレードル2に把持されたパッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキ機構2bが取り付けられる。
【0019】
綾振ドラム3の周面には螺旋状の綾振溝3aが形成されており、この綾振溝3aによって紡績糸Yはトラバースされる。また、巻取ユニット1は、給糸ボビンBと綾振ドラム3との間の糸走行経路中に、給糸ボビンB側から順に、解舒補助装置4、ヤーンフィーラ5、ディスクテンサー6(張力付与装置)、ディスクスプライサ7(糸継装置)、ヤーンクリアラ8を配する。
【0020】
解舒補助装置4は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸の解舒を補助するものである。ヤーンフィーラ5は、解舒補助装置4とディスクテンサー6との間における紡績糸Yの有無を検出するものである。ディスクテンサー6は、走行する紡績糸Yに所定のテンションを付与するものである。
【0021】
ディスクスプライサ7は、糸欠点を検出して行う糸切断時、または解舒中の糸切れ時などに、給糸ボビンB側紡績糸としての下糸Y1と、パッケージP側紡績糸としての上糸Y2と、を糸継するものである。ヤーンクリアラ8は、紡績糸Yの欠陥を検出するためのものであって、クリアラ8からの紡績糸Yの太さに応じた信号が適宜のアナライザで処理されることで、スラブ等の糸欠点を検出する。また、このクリアラ8には、糸欠点を検出した時の糸切断用のカッター8aが付設される。
【0022】
ディスクスプライサ7の上下には、給糸ボビンB側の下糸Y1を捕捉して案内する下糸捕捉案内手段11と、パッケージP側の上糸Y2を捕捉して案内する上糸捕捉案内手段12が設けられる。この構成で、糸切断時または糸切れ時においては、下糸捕捉案内手段11のサクションマウス11aが図示の位置で下糸Y1を捕捉し、軸11b周りに下から上へと旋回してディスクスプライサ7に下糸Y1を案内する。同時に、上糸捕捉案内手段12のサクションマウス12aが図示の位置から軸12b周りに下から上へと旋回し、逆転するパッケージPから上糸Y2を捕捉し、更に軸12b周りに上から下へと旋回し、ディスクスプライサ7に上糸Y2を案内する。
【0023】
次に、上記のディスクテンサー6の構成について詳細に説明する。図2は、本発明の第一実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図である。
【0024】
本図に示されるようにディスクテンサー6は、走行する糸Y1に対して張力を付与する張力付与部15・16を備える。この張力付与部15と張力付与部16は、太線矢印で示す糸Y1の走行方向に沿ってこの順となるようにディスクテンサー6の筐体に回転自在に水平状態で支持され、これらの回転軸は互いに平行とされる。この筐体は、張力付与部15・16の延在方向に沿って(本図左から)順に配される第一箱体18及び第二箱体19から成り、これらの第一箱体18及び第二箱体19の間には糸Y1が走行する空間としての糸走行空間20が形成される。この糸走行空間20の上方(糸Y1の下流側)を区画する筐体の一部としての上フランジ20aには糸Y1の挿通孔20bが穿設され、同様に糸走行空間20の下方(糸Y1の上流側)を区画する筐体の一部としての下フランジ20cにも糸Y1の挿通孔20dが穿設される。
【0025】
上述した張力付与部15・16のうち糸Y1の上流側に配される張力付与部15の構造を説明する。この張力付与部15は、固定ディスク21(固定部)と、この固定ディスク21に対して近設される可動ディスク22(可動部)と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク21と可動ディスク22との間で摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与するものである。上記の固定ディスク21は第一箱体18に対して軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持され、他方、可動ディスク22は第二箱体19に対して軸方向の移動が許容された状態で回転自在に支持される。後者の可動ディスク22は本図において二点鎖線で略示されるソレノイド23に接続され、このソレノイド23の作動により可動ディスク22が軸方向へ移動することで、固定ディスク21と可動ディスク22との間のギャップG1が調整される。張力付与部15が糸Y1に対して付与する張力は、このギャップG1の大小により定められる。
【0026】
次に、上述した張力付与部15・16のうち糸Y1の下流側に配される張力付与部16の構造を説明する。この張力付与部16は、固定ディスク24(固定部)と、この固定ディスク24に対して近設される可動ディスク25(可動部)と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク24と可動ディスク25との間で摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与するものである。上記の固定ディスク24は第二箱体19に対して軸方向の移動は規制された状態で回転自在に支持され、他方、可動ディスク25は第一箱体18に対して軸方向の移動が許容された状態で(即ち、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sの法線方向に沿って進退可能に)回転自在に支持される。
【0027】
以下、張力付与部16の可動ディスク25側の構造を具体的に説明する。
【0028】
即ち、可動ディスク25には、固定ディスク24側と反対側に、第一箱体18内部へ至るまで延在する突起付ロッド26が突設され、この突起付ロッド26は、第一箱体18のディスク側壁18aに穿設されるロッド支持孔18bと、軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持されるロッド駆動筒27(筒)と、に挿通されて支持される。このロッド駆動筒27は、略示の電気モータ28により回転駆動される第一動力伝達歯車29の動力を突起付ロッド26に伝達するためのものであって、その外周面には該第一動力伝達歯車29と噛合する第二動力伝達歯車30が形成されると共に、固定ディスク24側から遠い側の端27bから固定ディスク24側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝32と付勢規制溝33とが周方向においてズレて刻設される。付勢許容溝32又は付勢規制溝33に嵌合する突部31が突起付ロッド26の外周面上に形成される。付勢許容溝32及び付勢規制溝33は、ロッド駆動筒27の基端(固定ディスク24側から遠い側の端。以下、同様。)を起点として先端(可動ディスク25側に近い側の端。以下、同様。)へ向かって延び、付勢許容溝32の延在長さは付勢規制溝33の延在長さよりも大とされる。本実施形態においては、ロッド駆動筒27の軸方向でみたときに、付勢許容溝32と付勢規制溝33とは概ね90度ズレ、更には、これら付勢許容溝32と付勢規制溝33とに挟まれるロッド駆動筒27の部分としての基端部27aは周方向に一様に切除される。端的に言えば、ロッド駆動筒27の基端部27aは、径方向でみて略コ字状に切除される。そして、突部31が付勢許容溝32又は付勢規制溝33に対して周方向に相対移動不能に嵌合することで、ロッド駆動筒27と突起付ロッド26との間の相対回転が規制される。上記の突部31が付勢許容溝32内に収容されるときは可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接可能とされ、一方、突部31が付勢規制溝33内に収容されるときは該突部31と該付勢規制溝33の固定ディスク24側の縁33aとの係合により可動ディスク25は固定ディスク24に対して当接不能とされる。
【0029】
ところで、このロッド駆動筒27の内周側に挿通される突起付ロッド26と、第一箱体18の外壁18cと、の間には圧縮コイルバネ34(弾性体)を含む弾性部35が介設される。この弾性部35は、上記の圧縮コイルバネ34と、外壁18c(ディスクテンサー6の筐体)に穿設される図略の挿通孔に挿通されると共に圧縮コイルバネ34の内周側に挿入されるバネロッド36と、このバネロッド36の固定ディスク24側一端に固着され、外壁18cとの協動によって圧縮コイルバネ34を挟持する、バネ受け37と、このバネロッド36の他端に固着され、外壁18cからバネロッド36が固定ディスク24側へ抜けるのを防止する抜け防止部材38と、から成る。図2に示される状態(ディスクテンサー6の張力付与部16が糸Y1に対して張力を付与する状態)において圧縮コイルバネ34は、基端側の外壁18cと先端側のバネ受け37とに挟まれて軸方向に圧縮した状態とされる。バネロッド36は、第一箱体18の外壁18cを貫通して第一箱体18の外側へ延出し、この外部へ延出した部分に上記の抜け防止部材38が固着されることで、弾性部35の先端方向への抜け止めが為される。バネ受け37は、突起付ロッド26の基端に対して摺動可能に当接する。以上の構成で、張力付与部16は可動ディスク25側に圧縮コイルバネ34を備え、この圧縮コイルバネ34の自己弾性復元力(作用)により可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢されるように構成される。即ち、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34がバネ受け37を介して突起付ロッド26を固定ディスク24側へ付勢することで、この突起付ロッド26の先端に形成される可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢され、この可動ディスク25と固定ディスク24との間で摺動する糸Y1に対して張力が付与される。
【0030】
次に、この張力付与部16を、糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構60(切替手段)について説明する。図3及び図4を参照されたい。図3は、図2に類似する図であって、張力付与部が作動状態から非作動状態へと切り替わる途中の状態を示す図である。図4は、図2に類似する図であって、張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態を示す図である。上記の切替機構60は、主として、前述した、突起付ロッド26・ロッド駆動筒27・突部31・付勢許容溝32・付勢規制溝33から構成される。
【0031】
図2には、張力付与部16の作動状態が示される。この作動状態では、前記の突部31は軸方向において長尺に形成される付勢許容溝32内に収容され、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから突部31までの距離は、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから付勢許容溝32の固定ディスク24側の縁32aまでの距離よりも大とされる。従って、可動ディスク25は固定ディスク24に対して当接可能とされると共に、突部31が付勢許容溝32の固定ディスク24の縁32aに当接することがなく、この結果、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34から突起付ロッド26に対して作用する付勢力は固定ディスク24に至るまで伝達される。即ち、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢力は許容され、もって、可動ディスク25と固定ディスク24との間で摺動する糸Y1に対して張力が付与されることとなる。
【0032】
図2に示される作動状態から図4に示される非作動状態へと切り替えるには、図3に示されるように、第一に、可動ディスク25を把持し、圧縮コイルバネ34の弾性力に抗するように該可動ディスク25を固定ディスク24から離れる方向へ所定量、押し込む。すると、基端側に開口する付勢許容溝32から突部31が基端方向へ抜脱し、突起付ロッド26とロッド駆動筒27との相対回転が許容される状態となる(図中、このときの突部31を破線で示す。)。第二に、把持している可動ディスク25を図中太線で示す方向へ回転させて、付勢規制溝33の刻設方向の延長線上に突部31が位置するようにする。このとき、前述の基端部27aが周方向に一様に切除される構成により、ロッド駆動筒27に対する可動ディスク25(突起付ロッド26)の上記回転はスムーズとされると共に、突部31と付勢規制溝33の縁とのアタリの感触が得られ易い。第三に、固定ディスク24から離れる方向への可動ディスク25の押し込みを解除する。すると、図4に示されるように、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34の作用により突起付ロッド26は固定ディスク24側へ移動し、これに伴って突部31は付勢規制溝33内に進入し、突部31は、可動ディスク25が固定ディスク24に当接する前に(即ち、可動ディスク25と固定ディスク24との間のギャップG2が消失する前に)付勢規制溝33の固定ディスク24側の縁33aと係合する。この突部31と付勢規制溝33の固定ディスク24側の縁33aとの軸方向における係合により、可動ディスク25の固定ディスク24に対する付勢は規制され、可動ディスク25に対する把持を解除した状態でも、固定ディスク24と可動ディスク25との間のギャップG2が確保され、もって、張力付与部16は、糸Y1に対して張力を付与しない(付与できない)状態としての非作動状態とされる。
【0033】
以上に、図2〜4を参照しつつ、張力付与部16を作動状態から非作動状態へと切り替えるための切替機構60の構造と作動について説明した。上記の張力付与部16を非作動状態から作動状態へと切り替えるには、図4において可動ディスク25を把持して固定ディスク24から離れる方向へ押し込み、図3において太線矢印が示す方向と反対方向へ可動ディスク25を回転させ、その後、可動ディスク25に対する把持を解除すればよい。
【0034】
なお、本実施形態において可動ディスク25と固定ディスク24は、図示しない機構により同一の方向へ同一の回転数で回転し、同様に、可動ディスク22と固定ディスク21も、図示しない機構により同一の方向へ同一の回転数で回転する。そして、電気モータ28により回転駆動される第一動力伝達歯車29の動力は、第二動力伝達歯車30を介して可動ディスク25へ伝達されると共に、固定ディスク21の外周に形成される第三動力伝達歯車39を介して固定ディスク21へ伝達される。なおまた、突起付ロッド26(可動ディスク25)が回転する際は、突起付ロッド26の基端面とバネ受け37とが摺動する。
【0035】
以上説明したように上記第一実施形態においてディスクテンサー6は、以下のように構成される。即ち、固定ディスク24(21)と、該固定ディスク24(21)に対して近設される可動ディスク25(22)と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク24(21)と可動ディスク25(22)との間で摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与する張力付与部15・16を複数備える。複数の張力付与部15・16のうち少なくとも何れか一の張力付与部16は、可動ディスク25側に圧縮コイルバネ34を備え、この圧縮コイルバネ34の自己弾性復元力により可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢されるように構成されると共に、この張力付与部16を、上記糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、上記糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構60を備える。以上の構成によれば、圧縮コイルバネ34の作用により糸Y1に対して一定の張力を付与できると共に、非作動状態へと切替可能な張力付与部16を含むディスクテンサー6が提供される。
【0036】
上記ディスクテンサー6は、更に、以下のように構成される。即ち、切替機構60を備える張力付与部16は、固定ディスク24と、可動ディスク25と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sで摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与するものである。切替機構60は、固定ディスク24に対して可動ディスク25を上記の合わせ面Sの法線方向に沿って進退させるものである。以上の構成によれば、前記の切替に要する可動ディスク25の移動距離を短くできるので、ディスクテンサー6をコンパクトとできる。
【0037】
上記ディスクテンサー6は、更に、以下のように構成される。即ち、切替機構60は、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢を許容又は規制する。
【0038】
上記ディスクテンサー6は、更に、以下のように構成される。即ち、切替機構60は、以下のようにして構成される。可動ディスク25から固定ディスク24側と反対側に突起付ロッド26が突設される。軸方向の移動が規制されるロッド駆動筒27内に該突起付ロッド26が挿通される。このロッド駆動筒27の固定ディスク24側から遠い側の端27bから固定ディスク24-側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝32と付勢規制溝33とが周方向においてズレて形成される。これら付勢許容溝32又は付勢規制溝33に嵌合する突部31が突起付ロッド26の外周面上に形成される。突部31が付勢許容溝32内に収容されるときは可動ディスク25を固定ディスク24に対して当接可能とし、一方、突部31が付勢規制溝33内に収容されるときは該突部31と該付勢規制溝33の固定ディスク24側の縁33aとの係合により可動ディスク25を固定ディスク24に対して当接不能とする。以上の構成によれば、可動ディスク25を圧縮コイルバネ34に抗するように固定ディスク24から離れる方向へ移動させると共に回転させるだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わると共に、前記非作動状態において上記糸Y1に対する張力の付与が確実に回避される。
【0039】
以上に本発明の第一実施形態を説明したが、上記第一実施形態は以下のように変更できる。
【0040】
◆ 即ち、上記第一実施形態においてバネ受け37は突起付ロッド26の基端に対して摺動可能に当接することとしたが、これに限らず、バネ受け37が突起付ロッド26の基端に対して接着される構成でもよいし、バネ受け37が突起付ロッド26と一体成形される構成でもよい。
【0041】
次に、本発明の第二実施形態を説明する。図5は、図2に類似する図であって、本発明の第二実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図である。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0042】
本実施形態では、可動ディスク25から固定ディスク24側と反対側に歯付ロッド40が突設され、この歯付ロッド40と圧縮コイルバネ34との間に付勢伝達ロッド41が介設され、軸方向の移動が規制されるロッド駆動筒42(筒)内に歯付ロッド40が相対回転不能に挿通される。このロッド駆動筒42と歯付ロッド40との相対回転不能な状態は、ロッド駆動筒42の内周面に刻設され軸方向に延びる図略の直線溝と、歯付ロッド40の外周面に突設され上記直線溝内に収容される突起と、によって実現される。このロッド駆動筒42の外周面には、図2に示されるロッド駆動筒27と同様、第二動力伝達歯車30が形成される。また、上記第一実施形態と同様、バネ受け37は付勢伝達ロッド41の基端に対して摺動可能に当接する。
【0043】
本図には表れないが、このロッド駆動筒42の固定ディスク24側から遠い側の端42bから固定ディスク24側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて交互に形成される。本実施形態において、これら付勢許容溝及び付勢規制溝は、ロッド駆動筒42の内周面に刻設される。以下、付勢許容溝及び付勢規制溝を図6に基づいて説明する。図6は、歯付ロッドと付勢伝達ロッドとロッド駆動筒との協動関係を示す展開図である。
【0044】
本図に示されるように、ロッド駆動筒42の内周面には、固定ディスク24側から遠い側の端42bから固定ディスク24側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝43・43・・・と付勢規制溝44・44・・・とが周方向においてズレて交互に形成される。付勢許容溝43・43・・・は、付勢規制溝44・44・・・と比較して軸方向長さが倍以上であり、軸方向に対して平行な平行溝として形成される。付勢規制溝44・44・・・は、略直角三角形状の溝として、一側面が軸方向に対して平行に、かつ、他側面44a・44a・・・が軸方向に対して45度周方向へ開くように、形成される。
【0045】
付勢伝達ロッド41には、これら付勢許容溝43・43・・・又は付勢規制溝44・44・・・に嵌合する突部45・45・・・が形成される。これら突部45・45・・・は、付勢伝達ロッド41の固定ディスク24側端41bから固定ディスク24側へ軸方向に対して平行に延在する。本図には、突部45・45・・・が付勢許容溝43・43・・・内に収容されている状態が示される。なお、突部45・45・・・の先端には、前記の他側面44a・44a・・・に平行な傾斜面45a・45a・・・が形成される。
【0046】
歯付ロッド40の固定ディスク24側から遠い側の端は、周方向に沿ってジグザグとなるように形成され、前記の傾斜面45a・45a・・・に平行な傾斜面40a・40a・・・を含む。
【0047】
そして、付勢伝達ロッド41の突部45・45・・・が付勢許容溝43・43・・・内に収容されるときは付勢伝達ロッド41が圧縮コイルバネ34から受ける付勢力が傾斜面45a・45a・・・と傾斜面40a・40a・・・とを介して歯付ロッド40に伝達されるので、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢が許容される(図6(a)参照)。一方、付勢伝達ロッド41の突部45・45・・・が付勢規制溝44・44・・・内に収容されるときは該突部45・45・・・と付勢規制溝44・44・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・(縁)との係合により付勢伝達ロッド41が圧縮コイルバネ34から受ける付勢力が歯付ロッド40に伝達されないので、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢が規制される(図7(b)参照)。
【0048】
次に、この張力付与部16を、糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構61(切替手段)について説明する。図6及び図7を参照されたい。図7は、図6に類似する図である。図6(a)には作動状態とされる張力付与部が示され、図6(b)及び図7(a)には張力付与部が作動状態から非作動状態へと切り替わる途中の状態が示される。図7(b)には張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態が示される。
【0049】
図6(a)には、張力付与部16の作動状態が示される。この作動状態では、突部45・45・・・は軸方向において長尺に形成される付勢許容溝43・43・・・内に収容され、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから突部45・45・・・までの距離は、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから付勢許容溝43・43・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・までの距離よりも大とされる。従って、可動ディスク25は固定ディスク24に対して当接可能とされると共に、突部45・45・・・が付勢許容溝43・43・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・に当接することがなく、この結果、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34から付勢伝達ロッド41に対して作用する付勢力は傾斜面45a・45a・・・と傾斜面40a・40a・・・とを介して歯付ロッド40に至るまで伝達される。即ち、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢力は許容され、もって、可動ディスク25と固定ディスク24との間で摺動する糸Y1に対して張力が付与されることとなる。
【0050】
図6(a)に示される作動状態から図7(b)に示される非作動状態へと切り替えるには、図6(b)に示されるように、第一に、可動ディスク25を把持し、圧縮コイルバネ34の弾性力に抗するように該可動ディスク25を固定ディスク24から離れる方向(破線矢印)へ所定量、押し込む。すると、基端側に開口する付勢許容溝43・43・・・から突部45・45・・・が基端方向へ抜脱し(太線矢印)、付勢伝達ロッド41とロッド駆動筒42との相対回転が許容される状態となる。第二に、図7(a)に示されるように、把持している可動ディスク25を更に固定ディスク24から離れる方向(破線矢印)へ所定量、押し込む。すると、付勢伝達ロッド41の突部45・45・・・の傾斜面45a・45a・・・と、歯付ロッド40の傾斜面40a・40a・・・と、の係合により傾斜面45a・45a・・・は傾斜面40a・40a・・・に沿って摺動すると共に、付勢伝達ロッド41が所定回転角度だけ回転する(太線矢印)。このとき、軸方向でみたときに、傾斜面45a・45a・・・と他側面44a・44a・・・とが一部、重複するようになっている。第三に、図7(b)に示されるように、固定ディスク24から離れる方向への可動ディスク25の押し込みを解除する。すると、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34の作用により歯付ロッド40は固定ディスク24側へ弾かれると共に、付勢伝達ロッド41が固定ディスク24側へ移動して傾斜面45a・45a・・・が他側面44a・44a・・・に対して当接し、傾斜面45a・45a・・・が他側面44a・44a・・・に対して摺動することで付勢伝達ロッド41が更に所定回転角度だけ回転する(太線矢印)。即ち、突部45・45・・・が付勢規制溝44・44・・・内に進入し、可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接するか否かに関わらず、突部45・45・・・は付勢規制溝44・44・・・と係合する。この突部45・45・・・と付勢規制溝44・44・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・(縁)との軸方向における係合により、可動ディスク25の固定ディスク24に対する付勢は規制され、もって、張力付与部16は、糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態とされる。
【0051】
以上に、図6及び図7を参照しつつ、張力付与部16を作動状態から非作動状態へと切り替えるための切替機構61の構成と作動について説明した。上記の張力付与部16を非作動状態から作動状態へと切り替えるためには、図7(b)において可動ディスク25を把持して固定ディスク24から離れる方向へ押し込み、その後、可動ディスク25に対する把持を解除すればよい。
【0052】
以上説明したように上記第二実施形態においてディスクテンサー6は、以下のように構成される。即ち、切替機構61は、以下のようにして構成される。可動ディスク25から固定ディスク24側と反対側に歯付ロッド40が突設される。この歯付ロッド40と圧縮コイルバネ34との間に付勢伝達ロッド41が介設される。軸方向の移動が規制されるロッド駆動筒42内に歯付ロッド40が相対回転不能に挿通される。このロッド駆動筒42の固定ディスク24側から遠い側の端42bから固定ディスク24側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝43・43・・・と付勢規制溝44・44・・・とが周方向においてズレて形成される。これら付勢許容溝43・43・・・又は付勢規制溝44・44・・・に嵌合する突部45・45・・・が付勢伝達ロッド41に形成される。突部45・45・・・が付勢許容溝43・43・・・内に収容されるときは付勢伝達ロッド41が圧縮コイルバネ34から受ける付勢力が歯付ロッド40に伝達されるので固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢が許容され、一方、突部45・45・・・が付勢規制溝44・44・・・内に収容されるときは該突部45・45・・・と該付勢規制溝44・44・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・との係合により付勢伝達ロッド41が圧縮コイルバネ34から受ける付勢力が歯付ロッド40に伝達されないので固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢が規制される。更に、歯付ロッド40の固定ディスク24側から遠い側の端には、付勢伝達ロッド41の突部45・45・・・と係合することにより該付勢伝達ロッド41を所定方向へ回転する傾斜面40a・40a・・・が形成される。以上の構成によれば、可動ディスク25を圧縮コイルバネ34に抗するように固定ディスク24から離れる方向へ移動させるだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わる。
【0053】
以上に本発明の第二実施形態を説明したが、上記第二実施形態は以下のように変更できる。
【0054】
◆ 即ち、上記第二実施形態においてバネ受け37は付勢伝達ロッド41の基端に対して摺動可能に当接することとしたが、これに限らず、バネ受け37が付勢伝達ロッド41の基端に対して接着される構成でもよいし、バネ受け37が付勢伝達ロッド41と一体成形される構成でもよい。
【0055】
◆ また、図7(b)に示される非作動状態において歯付ロッド40は自由に進退可能とされ、可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接することも形式的には許容される。このとき、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢は規制されるので糸Y1に対する張力の付与は実質的に為されないが、上記第二実施形態は更に以下のように構成してもよい。即ち、切替機構61は、図7(b)で示される非作動状態において可動ディスク25が固定ディスク24から常に所定以上離隔される構成である。この構成によれば、非作動状態において糸Y1に対する張力の付与が確実に回避される。なお、この構成として、例えば図11に示されるものが挙げられる。図11は、歯付ロッドと付勢伝達ロッドとの連結構造を示す部分断面図である。即ち、付勢伝達ロッド41の先端面の軸心に、固定ディスク24側と反対側に延び、奥へ向かって拡径する、係止孔70が穿設される。歯付ロッド40の基端面の軸心に、固定ディスク24側と反対側に延び、先に拡径部71aを有する、係止突起71が突設される。そして、係止突起71の拡径部71aは係止孔70内に収容される。この構成によれば、図7(b)に示される非作動状態において歯付ロッド40が先端方向へ進出すると、可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接する前に、係止孔70と係止突起71の拡径部71aとが係合して当該進出が停止されることもできるから、可動ディスク25が固定ディスク24から常に所定以上離隔される構成が実現され得る。
【0056】
次に、本発明の第三実施形態を説明する。図8は、図2に類似する図であって、本発明の第三実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図である。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0057】
上記第一実施形態においてロッド駆動筒27には付勢許容溝32及び付勢規制溝33が刻設されるとしたが、本実施形態では、ロッド駆動筒27には付勢許容溝32のみが刻設される。そして、突起付ロッド26の外周面に突設される突部31は、常に、付勢許容溝32内に収容される。
【0058】
次に、この張力付与部16を、糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構62(切替手段)について説明する。図8及び図9、図10を参照されたい。図9は、図8に類似する図であって、張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態を示す図である。図10は、図8のA矢視断面図である。上記の切替機構62は、主として、前述した、圧縮コイルバネ34・バネロッド36・バネ受け37・抜け防止部材38、加えて、介在部材50から構成される。
【0059】
この介在部材50は、外壁18c(筐体)と抜け防止部材38との間に挿入可能とされるものである。図10に示されるように、介在部材50は、軸50aから延びる直線部51と、この直線部51から円弧状に延びる円弧部52と、から成り、軸50a周りに回動自在となるように外壁18cに枢設される。
【0060】
そして、図8に示されるように外壁18cと抜け防止部材38との間に介在部材50が挿入されていないときは圧縮コイルバネ34の自由な伸長が許容され、一方、図9に示されるように外壁18cと抜け防止部材38との間に介在部材50が挿入されているときは圧縮コイルバネ34の自由な伸長が規制される。
【0061】
図8には、張力付与部16の作動状態が示される。この作動状態では、前記の突部31は軸方向において長尺に形成される付勢許容溝32内に収容され、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから突部31までの距離は、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから付勢許容溝32の固定ディスク24側の縁32aまでの距離よりも大とされる。従って、可動ディスク25は固定ディスク24に対して当接可能とされると共に、突部31が付勢許容溝32の固定ディスク24の縁32aに当接することがなく、この結果、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34から突起付ロッド26に対して作用する付勢力は固定ディスク24に至るまで伝達される。即ち、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢力は許容され、もって、可動ディスク25と固定ディスク24との間で摺動する糸Y1に対して張力が付与されることとなる。
【0062】
図8に示される作動状態から図9に示される非作動状態へと切り替えるには、第一に、可動ディスク25を把持し、圧縮コイルバネ34の弾性力に抗するように該可動ディスク25を固定ディスク24から離れる方向へ所定量、押し込む。すると、抜け防止部材38と外壁18cとの間に所定量の間隙が形成される。第二に、この状態で、図10に示されるように介在部材50を太線矢印で示す方向へ回動し、この介在部材50を外壁18cと抜け防止部材38との間に挿入する。このとき、好ましくは、円弧部52の円弧中心がバネロッド36の軸心と一致するようにする。第三に、固定ディスク24から離れる方向への可動ディスク25の押し込みを解除する。すると、図9に示されるように、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34の作用によりバネ受け37及びバネロッド36は固定ディスク24側へ進出し、バネロッド36と連結される抜け防止部材38が介在部材50に当接する。この抜け防止部材38と介在部材50との当接により、圧縮コイルバネ34のそれ以上の伸長は規制される。
【0063】
以上に、図8〜10を参照しつつ、張力付与部16を作動状態から非作動状態へと切り替えるための切替機構62の構造と作動について説明した。上記の張力付与部16を非作動状態から作動状態へと切り替えるには、図9において可動ディスク25を把持して固定ディスク24から離れる方向へ押し込み、図10において太線矢印で示す方向と反対方向へ介在部材50を回動させ、その後、可動ディスク25に対する把持を解除すればよい。これにより、圧縮コイルバネ34の自由な伸長が実質的に許容される。
【0064】
以上説明したように上記第三実施形態においてディスクテンサー6は、以下のように構成される。即ち、弾性体として圧縮コイルバネ34を用い、この圧縮コイルバネ34の自己弾性復元力により可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢されるように構成される。切替機構62は、以下のようにして構成される。上記の圧縮コイルバネ34と、外壁18cに穿設される挿通孔に挿通されると共に圧縮コイルバネ34の内周側に挿入されるバネロッド36と、このバネロッド36の固定ディスク24側一端に固着され、外壁18cとの協動によって圧縮コイルバネ34を挟持する、バネ受け37と、このバネロッド36の他端に固着され、外壁18cからバネロッド36が固定ディスク24側へ抜けるのを防止する抜け防止部材38と、外壁18cと抜け防止部材38との間に挿入可能な介在部材50と、を含んで構成される。外壁18cと抜け防止部材38との間に介在部材50が挿入されていないときは圧縮コイルバネ34の自由な伸長が許容され、一方、外壁18cと抜け防止部材38との間に介在部材50が挿入されているときは圧縮コイルバネ34の自由な伸長が規制される。以上の構成によれば、可動ディスク25を圧縮コイルバネ34に抗するように固定ディスク24から離れる方向へ移動させると共に介在部材50を外壁18cと抜け防止部材38との間に挿入するだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わる。
【0065】
以上に本発明の第三実施形態を説明したが、上記第三実施形態は以下のように変更できる。
【0066】
◆ 即ち、上記第三実施形態においてバネ受け37は突起付ロッド26の基端に対して摺動可能に当接することとしたが、これに限らず、バネ受け37が突起付ロッド26の基端に対して接着される構成でもよいし、バネ受け37が突起付ロッド26と一体成形される構成でもよい。
【0067】
◆ 図9に示される非作動状態において突起付ロッド26は自由に進退可能とされ、可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接することも形式的には許容される。このとき、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢は規制されるので糸Y1に対する張力の付与は実質的には為されないが、上記第三実施形態は更に以下のように構成してもよい。即ち、切替機構62は、図9に示される非作動状態において可動ディスク25が固定ディスク24から常に所定以上離隔される構成である。この構成によれば、非作動状態において糸Y1に対する張力の付与が確実に回避される。なお、この構成として、例えば、前述した図11に示されるものが挙げられる。即ち、前述の係止孔70を突起付ロッド26の基端面の軸心に穿設し、係止突起71をバネ受け37の先端面(固定ディスク24側の面)に突設する構成である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの巻取ユニットの概略図
【図2】本発明の第一実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図
【図3】図2に類似する図であって、張力付与部が作動状態から非作動状態へと切り替わる途中の状態を示す図
【図4】図2に類似する図であって、張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態を示す図
【図5】図2に類似する図であって、本発明の第二実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図
【図6】歯付ロッドと付勢伝達ロッドとロッド駆動筒との協動関係を示す展開図
【図7】図6に類似する図
【図8】図2に類似する図であって、本発明の第三実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図
【図9】図8に類似する図であって、張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態を示す図
【図10】図8のA矢視断面図
【図11】歯付ロッドと付勢伝達ロッドとの連結構造を示す部分断面図
【符号の説明】
【0069】
1 巻取ユニット
15 張力付与部
16 張力付与部
21 固定ディスク
22 可動ディスク
24 固定ディスク
25 可動ディスク
34 圧縮コイルバネ
60 切替機構
Y1 糸
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する糸に対して所定の張力を付与する張力付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動ワインダの巻取ユニットにおいては、給糸パッケージから解舒された糸は、ディスクテンサーにおいて所望のテンションが付与された後、巻取パッケージとして巻き取られるようになっている。このディスクテンサーは対向する一対のディスクを複数対で備えるものであり、糸に付与するテンションに応じて、糸に接触させるディスクの対数を増減するようにしている。このディスクの対数の増減は、例えば、ディスク自体の取付け/取外しや、対向する一対のディスクが弾性体の作用により近接するように構成されている場合は該弾性体の取付け/取外し、対向する一対のディスクがエアシリンダーの作用により近接するように構成されている場合はエアシリンダーの制御によるディスクの進退動などにより行われている。この種のディスクテンサーは、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1に係るディスクテンサーは、テンサーモータMにより回転動作するディスク右側部(5a,6a)と、このディスク右側部(5a,6a)に対して接触して従動的に回転動作するディスク左側部(5b,6b)と、を備える。ディスク右側部(5a,6a)はテンサーモータMの稼動によりディスク左側部(5b,6b)方向(図2中C方向)へ揺動可能とされ、ディスク左側部(5b,6b)は軸(16)周りに回動自在とされる。
【0004】
特許文献2に係るディスクテンサーは、一方のディスクt2を流体シリンダー9で作動させて、他方のディスクt2’とにより単糸yを挟持して張力を付与するようになっている。そして、この流体シリンダー9を適宜に作動させることにより、単糸yに張力を付与する作動位置と、単糸yに張力を付与しない待機位置と、を選択可能である点が記載されている。
【0005】
【特許文献1】実開平7-33982号公報(段落番号0010、0011)
【特許文献2】特開平10-297825号公報(段落番号0005、0011)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1では、テンサーモータMのC方向への揺動により糸に付与されるテンションを制御する構成であるから、テンションを高精度に制御することは難しかった。また、上記特許文献2では、流体シリンダーを有する構成は、コンプレッサの振動を糸に伝えてしまうので、一定の張力を安定して糸に付与することは難しい。また、ディスク自体の取付け/取外しや弾性体の取付け/取外しは、手間がかかるし、部品損失の恐れがある。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、糸に対して一定の張力を付与できると共に、糸に対して張力を付与しない状態へと切替可能な張力付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第一の観点によれば、以下のように構成される張力付与装置が提供される。即ち、固定部と、該固定部に対して近設される可動部と、を有し、走行する糸を、前記の固定部と可動部との間で摺動させることで該糸に対して張力を付与する張力付与部を複数備える。前記複数の張力付与部のうち少なくとも何れか一の張力付与部は、前記可動部側に弾性体を備え、この弾性体の作用により前記可動部が前記固定部に対して付勢されるように構成されると共に、この張力付与部を、上記糸に対して張力を付与する状態としての作動状態と、上記糸に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替手段を備える。以上の構成によれば、前記弾性体の作用により糸に対して一定の張力を付与できると共に、前記の非作動状態へと切替可能な張力付与部を含む張力付与装置が提供される。
【0010】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記切替手段を備える前記の張力付与部は、前記固定部としての固定ディスクと、前記可動部としての可動ディスクと、を有し、走行する前記糸を、前記の固定ディスクと可動ディスクとの合わせ面で摺動させることで該糸に対して張力を付与するものである。前記切替手段は、前記固定ディスクに対して前記可動ディスクを上記の合わせ面の法線方向に沿って進退させるものである。以上の構成によれば、前記の切替に要する前記可動ディスクの移動距離を短くできるので、前記張力付与装置をコンパクトとできる。
【0011】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記切替手段は、前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢を許容又は規制する。
【0012】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記切替手段は、以下のようにして構成される。前記可動ディスクから前記固定ディスク側と反対側に突起付ロッドが突設される。軸方向の移動が規制される筒内に該突起付ロッドが挿通される。この筒の前記固定ディスク側から遠い側の端から前記固定ディスク側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて形成される。これら付勢許容溝又は付勢規制溝に嵌合する突部が前記突起付ロッドの外周面上に形成される。前記突部が前記付勢許容溝内に収容されるときは前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して当接可能とし、一方、前記突部が前記付勢規制溝内に収容されるときは該突部と該付勢規制溝の前記固定ディスク側の縁との係合により前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して当接不能とする。以上の構成によれば、前記可動ディスクを前記弾性体に抗するように前記固定ディスクから離れる方向へ移動させると共に回転させるだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わると共に、前記非作動状態において上記糸に対する張力の付与が確実に回避される。
【0013】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記切替手段は、以下のようにして構成される。前記可動ディスクから前記固定ディスク側と反対側に歯付ロッドが突設される。この歯付ロッドと前記弾性体との間に付勢伝達ロッドが介設される。軸方向の移動が規制される筒内に前記歯付ロッドが相対回転不能に挿通される。この筒の前記固定ディスク側から遠い側の端から前記固定ディスク側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて形成される。これら付勢許容溝又は付勢規制溝に嵌合する突部が前記付勢伝達ロッドに形成される。前記突部が前記付勢許容溝内に収容されるときは前記付勢伝達ロッドが前記弾性体から受ける付勢力が前記歯付ロッドに伝達されるので前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢が許容され、一方、前記突部が前記付勢規制溝内に収容されるときは該突部と該付勢規制溝の前記固定ディスク側の縁との係合により前記付勢伝達ロッドが前記弾性体から受ける付勢力が前記歯付ロッドに伝達されないので前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢が規制される。更に、前記歯付ロッドの前記固定ディスク側から遠い側の端には、前記付勢伝達ロッドの突部と係合することにより該付勢伝達ロッドを所定方向へ回転する傾斜面が形成される。以上の構成によれば、前記可動ディスクを前記弾性体に抗するように前記固定ディスクから離れる方向へ移動させるだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わる。
【0014】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記弾性体は圧縮コイルバネであり、この圧縮コイルバネの自己弾性復元力により前記可動ディスクが前記固定ディスクに対して付勢されるように構成される。前記切替手段は、以下のようにして構成される。上記の圧縮コイルバネと、前記張力付与装置の筐体に穿設される挿通孔に挿通されると共に前記圧縮コイルバネの内周側に挿入されるバネロッドと、このバネロッドの固定ディスク側一端に固着され、前記筐体との協動によって前記圧縮コイルバネを挟持する、バネ受けと、このバネロッドの他端に固着され、前記筐体から前記バネロッドが前記固定ディスク側へ抜けるのを防止する抜け防止部材と、前記の筐体と抜け防止部材との間に挿入可能な介在部材と、を含んで構成される。前記の筐体と抜け防止部材との間に前記介在部材が挿入されていないときは前記圧縮コイルバネの自由な伸長が許容され、一方、前記の筐体と抜け防止部材との間に前記介在部材が挿入されているときは前記圧縮コイルバネの自由な伸長が規制される。以上の構成によれば、前記可動ディスクを前記弾性体に抗するように前記固定ディスクから離れる方向へ移動させると共に前記介在部材を前記の筐体と抜け防止部材との間に挿入するだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わる。
【0015】
上記の張力付与装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記非作動状態において前記可動ディスクが前記固定ディスクから常に所定距離以上離隔される。以上の構成によれば、前記非作動状態において上記糸に対する張力の付与が確実に回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダの巻取ユニットの概略図である。
【0017】
本実施形態において自動ワインダは、図1に示される巻取ユニット1・1・・・を複数列設して構成される。各巻取ユニット1は、給糸ボビンBから解舒される紡績糸Yをトラバースさせながら巻取ボビンBf上に巻き付けて所定形状のパッケージPとするものである。
【0018】
この巻取ユニット1は、巻取ボビンBfを把持するクレードル2と、紡績糸Yをトラバースさせる綾振ドラム3と、を備える。クレードル2は、綾振ドラム3に対して近接又は離間する方向に揺動自在であり、それによって、巻取ボビンBfに紡績糸Yを巻いて形成したパッケージPが綾振ドラム3に対して接触又は離間される。また、クレードル2には、糸切れ時にクレードル2を上げて、パッケージPを綾振ドラム3から離反させるリフトアップ機構2aと、クレードル2を上げると同時に、クレードル2に把持されたパッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキ機構2bが取り付けられる。
【0019】
綾振ドラム3の周面には螺旋状の綾振溝3aが形成されており、この綾振溝3aによって紡績糸Yはトラバースされる。また、巻取ユニット1は、給糸ボビンBと綾振ドラム3との間の糸走行経路中に、給糸ボビンB側から順に、解舒補助装置4、ヤーンフィーラ5、ディスクテンサー6(張力付与装置)、ディスクスプライサ7(糸継装置)、ヤーンクリアラ8を配する。
【0020】
解舒補助装置4は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸の解舒を補助するものである。ヤーンフィーラ5は、解舒補助装置4とディスクテンサー6との間における紡績糸Yの有無を検出するものである。ディスクテンサー6は、走行する紡績糸Yに所定のテンションを付与するものである。
【0021】
ディスクスプライサ7は、糸欠点を検出して行う糸切断時、または解舒中の糸切れ時などに、給糸ボビンB側紡績糸としての下糸Y1と、パッケージP側紡績糸としての上糸Y2と、を糸継するものである。ヤーンクリアラ8は、紡績糸Yの欠陥を検出するためのものであって、クリアラ8からの紡績糸Yの太さに応じた信号が適宜のアナライザで処理されることで、スラブ等の糸欠点を検出する。また、このクリアラ8には、糸欠点を検出した時の糸切断用のカッター8aが付設される。
【0022】
ディスクスプライサ7の上下には、給糸ボビンB側の下糸Y1を捕捉して案内する下糸捕捉案内手段11と、パッケージP側の上糸Y2を捕捉して案内する上糸捕捉案内手段12が設けられる。この構成で、糸切断時または糸切れ時においては、下糸捕捉案内手段11のサクションマウス11aが図示の位置で下糸Y1を捕捉し、軸11b周りに下から上へと旋回してディスクスプライサ7に下糸Y1を案内する。同時に、上糸捕捉案内手段12のサクションマウス12aが図示の位置から軸12b周りに下から上へと旋回し、逆転するパッケージPから上糸Y2を捕捉し、更に軸12b周りに上から下へと旋回し、ディスクスプライサ7に上糸Y2を案内する。
【0023】
次に、上記のディスクテンサー6の構成について詳細に説明する。図2は、本発明の第一実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図である。
【0024】
本図に示されるようにディスクテンサー6は、走行する糸Y1に対して張力を付与する張力付与部15・16を備える。この張力付与部15と張力付与部16は、太線矢印で示す糸Y1の走行方向に沿ってこの順となるようにディスクテンサー6の筐体に回転自在に水平状態で支持され、これらの回転軸は互いに平行とされる。この筐体は、張力付与部15・16の延在方向に沿って(本図左から)順に配される第一箱体18及び第二箱体19から成り、これらの第一箱体18及び第二箱体19の間には糸Y1が走行する空間としての糸走行空間20が形成される。この糸走行空間20の上方(糸Y1の下流側)を区画する筐体の一部としての上フランジ20aには糸Y1の挿通孔20bが穿設され、同様に糸走行空間20の下方(糸Y1の上流側)を区画する筐体の一部としての下フランジ20cにも糸Y1の挿通孔20dが穿設される。
【0025】
上述した張力付与部15・16のうち糸Y1の上流側に配される張力付与部15の構造を説明する。この張力付与部15は、固定ディスク21(固定部)と、この固定ディスク21に対して近設される可動ディスク22(可動部)と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク21と可動ディスク22との間で摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与するものである。上記の固定ディスク21は第一箱体18に対して軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持され、他方、可動ディスク22は第二箱体19に対して軸方向の移動が許容された状態で回転自在に支持される。後者の可動ディスク22は本図において二点鎖線で略示されるソレノイド23に接続され、このソレノイド23の作動により可動ディスク22が軸方向へ移動することで、固定ディスク21と可動ディスク22との間のギャップG1が調整される。張力付与部15が糸Y1に対して付与する張力は、このギャップG1の大小により定められる。
【0026】
次に、上述した張力付与部15・16のうち糸Y1の下流側に配される張力付与部16の構造を説明する。この張力付与部16は、固定ディスク24(固定部)と、この固定ディスク24に対して近設される可動ディスク25(可動部)と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク24と可動ディスク25との間で摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与するものである。上記の固定ディスク24は第二箱体19に対して軸方向の移動は規制された状態で回転自在に支持され、他方、可動ディスク25は第一箱体18に対して軸方向の移動が許容された状態で(即ち、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sの法線方向に沿って進退可能に)回転自在に支持される。
【0027】
以下、張力付与部16の可動ディスク25側の構造を具体的に説明する。
【0028】
即ち、可動ディスク25には、固定ディスク24側と反対側に、第一箱体18内部へ至るまで延在する突起付ロッド26が突設され、この突起付ロッド26は、第一箱体18のディスク側壁18aに穿設されるロッド支持孔18bと、軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持されるロッド駆動筒27(筒)と、に挿通されて支持される。このロッド駆動筒27は、略示の電気モータ28により回転駆動される第一動力伝達歯車29の動力を突起付ロッド26に伝達するためのものであって、その外周面には該第一動力伝達歯車29と噛合する第二動力伝達歯車30が形成されると共に、固定ディスク24側から遠い側の端27bから固定ディスク24側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝32と付勢規制溝33とが周方向においてズレて刻設される。付勢許容溝32又は付勢規制溝33に嵌合する突部31が突起付ロッド26の外周面上に形成される。付勢許容溝32及び付勢規制溝33は、ロッド駆動筒27の基端(固定ディスク24側から遠い側の端。以下、同様。)を起点として先端(可動ディスク25側に近い側の端。以下、同様。)へ向かって延び、付勢許容溝32の延在長さは付勢規制溝33の延在長さよりも大とされる。本実施形態においては、ロッド駆動筒27の軸方向でみたときに、付勢許容溝32と付勢規制溝33とは概ね90度ズレ、更には、これら付勢許容溝32と付勢規制溝33とに挟まれるロッド駆動筒27の部分としての基端部27aは周方向に一様に切除される。端的に言えば、ロッド駆動筒27の基端部27aは、径方向でみて略コ字状に切除される。そして、突部31が付勢許容溝32又は付勢規制溝33に対して周方向に相対移動不能に嵌合することで、ロッド駆動筒27と突起付ロッド26との間の相対回転が規制される。上記の突部31が付勢許容溝32内に収容されるときは可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接可能とされ、一方、突部31が付勢規制溝33内に収容されるときは該突部31と該付勢規制溝33の固定ディスク24側の縁33aとの係合により可動ディスク25は固定ディスク24に対して当接不能とされる。
【0029】
ところで、このロッド駆動筒27の内周側に挿通される突起付ロッド26と、第一箱体18の外壁18cと、の間には圧縮コイルバネ34(弾性体)を含む弾性部35が介設される。この弾性部35は、上記の圧縮コイルバネ34と、外壁18c(ディスクテンサー6の筐体)に穿設される図略の挿通孔に挿通されると共に圧縮コイルバネ34の内周側に挿入されるバネロッド36と、このバネロッド36の固定ディスク24側一端に固着され、外壁18cとの協動によって圧縮コイルバネ34を挟持する、バネ受け37と、このバネロッド36の他端に固着され、外壁18cからバネロッド36が固定ディスク24側へ抜けるのを防止する抜け防止部材38と、から成る。図2に示される状態(ディスクテンサー6の張力付与部16が糸Y1に対して張力を付与する状態)において圧縮コイルバネ34は、基端側の外壁18cと先端側のバネ受け37とに挟まれて軸方向に圧縮した状態とされる。バネロッド36は、第一箱体18の外壁18cを貫通して第一箱体18の外側へ延出し、この外部へ延出した部分に上記の抜け防止部材38が固着されることで、弾性部35の先端方向への抜け止めが為される。バネ受け37は、突起付ロッド26の基端に対して摺動可能に当接する。以上の構成で、張力付与部16は可動ディスク25側に圧縮コイルバネ34を備え、この圧縮コイルバネ34の自己弾性復元力(作用)により可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢されるように構成される。即ち、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34がバネ受け37を介して突起付ロッド26を固定ディスク24側へ付勢することで、この突起付ロッド26の先端に形成される可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢され、この可動ディスク25と固定ディスク24との間で摺動する糸Y1に対して張力が付与される。
【0030】
次に、この張力付与部16を、糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構60(切替手段)について説明する。図3及び図4を参照されたい。図3は、図2に類似する図であって、張力付与部が作動状態から非作動状態へと切り替わる途中の状態を示す図である。図4は、図2に類似する図であって、張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態を示す図である。上記の切替機構60は、主として、前述した、突起付ロッド26・ロッド駆動筒27・突部31・付勢許容溝32・付勢規制溝33から構成される。
【0031】
図2には、張力付与部16の作動状態が示される。この作動状態では、前記の突部31は軸方向において長尺に形成される付勢許容溝32内に収容され、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから突部31までの距離は、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから付勢許容溝32の固定ディスク24側の縁32aまでの距離よりも大とされる。従って、可動ディスク25は固定ディスク24に対して当接可能とされると共に、突部31が付勢許容溝32の固定ディスク24の縁32aに当接することがなく、この結果、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34から突起付ロッド26に対して作用する付勢力は固定ディスク24に至るまで伝達される。即ち、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢力は許容され、もって、可動ディスク25と固定ディスク24との間で摺動する糸Y1に対して張力が付与されることとなる。
【0032】
図2に示される作動状態から図4に示される非作動状態へと切り替えるには、図3に示されるように、第一に、可動ディスク25を把持し、圧縮コイルバネ34の弾性力に抗するように該可動ディスク25を固定ディスク24から離れる方向へ所定量、押し込む。すると、基端側に開口する付勢許容溝32から突部31が基端方向へ抜脱し、突起付ロッド26とロッド駆動筒27との相対回転が許容される状態となる(図中、このときの突部31を破線で示す。)。第二に、把持している可動ディスク25を図中太線で示す方向へ回転させて、付勢規制溝33の刻設方向の延長線上に突部31が位置するようにする。このとき、前述の基端部27aが周方向に一様に切除される構成により、ロッド駆動筒27に対する可動ディスク25(突起付ロッド26)の上記回転はスムーズとされると共に、突部31と付勢規制溝33の縁とのアタリの感触が得られ易い。第三に、固定ディスク24から離れる方向への可動ディスク25の押し込みを解除する。すると、図4に示されるように、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34の作用により突起付ロッド26は固定ディスク24側へ移動し、これに伴って突部31は付勢規制溝33内に進入し、突部31は、可動ディスク25が固定ディスク24に当接する前に(即ち、可動ディスク25と固定ディスク24との間のギャップG2が消失する前に)付勢規制溝33の固定ディスク24側の縁33aと係合する。この突部31と付勢規制溝33の固定ディスク24側の縁33aとの軸方向における係合により、可動ディスク25の固定ディスク24に対する付勢は規制され、可動ディスク25に対する把持を解除した状態でも、固定ディスク24と可動ディスク25との間のギャップG2が確保され、もって、張力付与部16は、糸Y1に対して張力を付与しない(付与できない)状態としての非作動状態とされる。
【0033】
以上に、図2〜4を参照しつつ、張力付与部16を作動状態から非作動状態へと切り替えるための切替機構60の構造と作動について説明した。上記の張力付与部16を非作動状態から作動状態へと切り替えるには、図4において可動ディスク25を把持して固定ディスク24から離れる方向へ押し込み、図3において太線矢印が示す方向と反対方向へ可動ディスク25を回転させ、その後、可動ディスク25に対する把持を解除すればよい。
【0034】
なお、本実施形態において可動ディスク25と固定ディスク24は、図示しない機構により同一の方向へ同一の回転数で回転し、同様に、可動ディスク22と固定ディスク21も、図示しない機構により同一の方向へ同一の回転数で回転する。そして、電気モータ28により回転駆動される第一動力伝達歯車29の動力は、第二動力伝達歯車30を介して可動ディスク25へ伝達されると共に、固定ディスク21の外周に形成される第三動力伝達歯車39を介して固定ディスク21へ伝達される。なおまた、突起付ロッド26(可動ディスク25)が回転する際は、突起付ロッド26の基端面とバネ受け37とが摺動する。
【0035】
以上説明したように上記第一実施形態においてディスクテンサー6は、以下のように構成される。即ち、固定ディスク24(21)と、該固定ディスク24(21)に対して近設される可動ディスク25(22)と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク24(21)と可動ディスク25(22)との間で摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与する張力付与部15・16を複数備える。複数の張力付与部15・16のうち少なくとも何れか一の張力付与部16は、可動ディスク25側に圧縮コイルバネ34を備え、この圧縮コイルバネ34の自己弾性復元力により可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢されるように構成されると共に、この張力付与部16を、上記糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、上記糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構60を備える。以上の構成によれば、圧縮コイルバネ34の作用により糸Y1に対して一定の張力を付与できると共に、非作動状態へと切替可能な張力付与部16を含むディスクテンサー6が提供される。
【0036】
上記ディスクテンサー6は、更に、以下のように構成される。即ち、切替機構60を備える張力付与部16は、固定ディスク24と、可動ディスク25と、を有し、走行する糸Y1を、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sで摺動させることで該糸Y1に対して張力を付与するものである。切替機構60は、固定ディスク24に対して可動ディスク25を上記の合わせ面Sの法線方向に沿って進退させるものである。以上の構成によれば、前記の切替に要する可動ディスク25の移動距離を短くできるので、ディスクテンサー6をコンパクトとできる。
【0037】
上記ディスクテンサー6は、更に、以下のように構成される。即ち、切替機構60は、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢を許容又は規制する。
【0038】
上記ディスクテンサー6は、更に、以下のように構成される。即ち、切替機構60は、以下のようにして構成される。可動ディスク25から固定ディスク24側と反対側に突起付ロッド26が突設される。軸方向の移動が規制されるロッド駆動筒27内に該突起付ロッド26が挿通される。このロッド駆動筒27の固定ディスク24側から遠い側の端27bから固定ディスク24-側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝32と付勢規制溝33とが周方向においてズレて形成される。これら付勢許容溝32又は付勢規制溝33に嵌合する突部31が突起付ロッド26の外周面上に形成される。突部31が付勢許容溝32内に収容されるときは可動ディスク25を固定ディスク24に対して当接可能とし、一方、突部31が付勢規制溝33内に収容されるときは該突部31と該付勢規制溝33の固定ディスク24側の縁33aとの係合により可動ディスク25を固定ディスク24に対して当接不能とする。以上の構成によれば、可動ディスク25を圧縮コイルバネ34に抗するように固定ディスク24から離れる方向へ移動させると共に回転させるだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わると共に、前記非作動状態において上記糸Y1に対する張力の付与が確実に回避される。
【0039】
以上に本発明の第一実施形態を説明したが、上記第一実施形態は以下のように変更できる。
【0040】
◆ 即ち、上記第一実施形態においてバネ受け37は突起付ロッド26の基端に対して摺動可能に当接することとしたが、これに限らず、バネ受け37が突起付ロッド26の基端に対して接着される構成でもよいし、バネ受け37が突起付ロッド26と一体成形される構成でもよい。
【0041】
次に、本発明の第二実施形態を説明する。図5は、図2に類似する図であって、本発明の第二実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図である。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0042】
本実施形態では、可動ディスク25から固定ディスク24側と反対側に歯付ロッド40が突設され、この歯付ロッド40と圧縮コイルバネ34との間に付勢伝達ロッド41が介設され、軸方向の移動が規制されるロッド駆動筒42(筒)内に歯付ロッド40が相対回転不能に挿通される。このロッド駆動筒42と歯付ロッド40との相対回転不能な状態は、ロッド駆動筒42の内周面に刻設され軸方向に延びる図略の直線溝と、歯付ロッド40の外周面に突設され上記直線溝内に収容される突起と、によって実現される。このロッド駆動筒42の外周面には、図2に示されるロッド駆動筒27と同様、第二動力伝達歯車30が形成される。また、上記第一実施形態と同様、バネ受け37は付勢伝達ロッド41の基端に対して摺動可能に当接する。
【0043】
本図には表れないが、このロッド駆動筒42の固定ディスク24側から遠い側の端42bから固定ディスク24側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて交互に形成される。本実施形態において、これら付勢許容溝及び付勢規制溝は、ロッド駆動筒42の内周面に刻設される。以下、付勢許容溝及び付勢規制溝を図6に基づいて説明する。図6は、歯付ロッドと付勢伝達ロッドとロッド駆動筒との協動関係を示す展開図である。
【0044】
本図に示されるように、ロッド駆動筒42の内周面には、固定ディスク24側から遠い側の端42bから固定ディスク24側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝43・43・・・と付勢規制溝44・44・・・とが周方向においてズレて交互に形成される。付勢許容溝43・43・・・は、付勢規制溝44・44・・・と比較して軸方向長さが倍以上であり、軸方向に対して平行な平行溝として形成される。付勢規制溝44・44・・・は、略直角三角形状の溝として、一側面が軸方向に対して平行に、かつ、他側面44a・44a・・・が軸方向に対して45度周方向へ開くように、形成される。
【0045】
付勢伝達ロッド41には、これら付勢許容溝43・43・・・又は付勢規制溝44・44・・・に嵌合する突部45・45・・・が形成される。これら突部45・45・・・は、付勢伝達ロッド41の固定ディスク24側端41bから固定ディスク24側へ軸方向に対して平行に延在する。本図には、突部45・45・・・が付勢許容溝43・43・・・内に収容されている状態が示される。なお、突部45・45・・・の先端には、前記の他側面44a・44a・・・に平行な傾斜面45a・45a・・・が形成される。
【0046】
歯付ロッド40の固定ディスク24側から遠い側の端は、周方向に沿ってジグザグとなるように形成され、前記の傾斜面45a・45a・・・に平行な傾斜面40a・40a・・・を含む。
【0047】
そして、付勢伝達ロッド41の突部45・45・・・が付勢許容溝43・43・・・内に収容されるときは付勢伝達ロッド41が圧縮コイルバネ34から受ける付勢力が傾斜面45a・45a・・・と傾斜面40a・40a・・・とを介して歯付ロッド40に伝達されるので、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢が許容される(図6(a)参照)。一方、付勢伝達ロッド41の突部45・45・・・が付勢規制溝44・44・・・内に収容されるときは該突部45・45・・・と付勢規制溝44・44・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・(縁)との係合により付勢伝達ロッド41が圧縮コイルバネ34から受ける付勢力が歯付ロッド40に伝達されないので、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢が規制される(図7(b)参照)。
【0048】
次に、この張力付与部16を、糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構61(切替手段)について説明する。図6及び図7を参照されたい。図7は、図6に類似する図である。図6(a)には作動状態とされる張力付与部が示され、図6(b)及び図7(a)には張力付与部が作動状態から非作動状態へと切り替わる途中の状態が示される。図7(b)には張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態が示される。
【0049】
図6(a)には、張力付与部16の作動状態が示される。この作動状態では、突部45・45・・・は軸方向において長尺に形成される付勢許容溝43・43・・・内に収容され、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから突部45・45・・・までの距離は、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから付勢許容溝43・43・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・までの距離よりも大とされる。従って、可動ディスク25は固定ディスク24に対して当接可能とされると共に、突部45・45・・・が付勢許容溝43・43・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・に当接することがなく、この結果、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34から付勢伝達ロッド41に対して作用する付勢力は傾斜面45a・45a・・・と傾斜面40a・40a・・・とを介して歯付ロッド40に至るまで伝達される。即ち、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢力は許容され、もって、可動ディスク25と固定ディスク24との間で摺動する糸Y1に対して張力が付与されることとなる。
【0050】
図6(a)に示される作動状態から図7(b)に示される非作動状態へと切り替えるには、図6(b)に示されるように、第一に、可動ディスク25を把持し、圧縮コイルバネ34の弾性力に抗するように該可動ディスク25を固定ディスク24から離れる方向(破線矢印)へ所定量、押し込む。すると、基端側に開口する付勢許容溝43・43・・・から突部45・45・・・が基端方向へ抜脱し(太線矢印)、付勢伝達ロッド41とロッド駆動筒42との相対回転が許容される状態となる。第二に、図7(a)に示されるように、把持している可動ディスク25を更に固定ディスク24から離れる方向(破線矢印)へ所定量、押し込む。すると、付勢伝達ロッド41の突部45・45・・・の傾斜面45a・45a・・・と、歯付ロッド40の傾斜面40a・40a・・・と、の係合により傾斜面45a・45a・・・は傾斜面40a・40a・・・に沿って摺動すると共に、付勢伝達ロッド41が所定回転角度だけ回転する(太線矢印)。このとき、軸方向でみたときに、傾斜面45a・45a・・・と他側面44a・44a・・・とが一部、重複するようになっている。第三に、図7(b)に示されるように、固定ディスク24から離れる方向への可動ディスク25の押し込みを解除する。すると、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34の作用により歯付ロッド40は固定ディスク24側へ弾かれると共に、付勢伝達ロッド41が固定ディスク24側へ移動して傾斜面45a・45a・・・が他側面44a・44a・・・に対して当接し、傾斜面45a・45a・・・が他側面44a・44a・・・に対して摺動することで付勢伝達ロッド41が更に所定回転角度だけ回転する(太線矢印)。即ち、突部45・45・・・が付勢規制溝44・44・・・内に進入し、可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接するか否かに関わらず、突部45・45・・・は付勢規制溝44・44・・・と係合する。この突部45・45・・・と付勢規制溝44・44・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・(縁)との軸方向における係合により、可動ディスク25の固定ディスク24に対する付勢は規制され、もって、張力付与部16は、糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態とされる。
【0051】
以上に、図6及び図7を参照しつつ、張力付与部16を作動状態から非作動状態へと切り替えるための切替機構61の構成と作動について説明した。上記の張力付与部16を非作動状態から作動状態へと切り替えるためには、図7(b)において可動ディスク25を把持して固定ディスク24から離れる方向へ押し込み、その後、可動ディスク25に対する把持を解除すればよい。
【0052】
以上説明したように上記第二実施形態においてディスクテンサー6は、以下のように構成される。即ち、切替機構61は、以下のようにして構成される。可動ディスク25から固定ディスク24側と反対側に歯付ロッド40が突設される。この歯付ロッド40と圧縮コイルバネ34との間に付勢伝達ロッド41が介設される。軸方向の移動が規制されるロッド駆動筒42内に歯付ロッド40が相対回転不能に挿通される。このロッド駆動筒42の固定ディスク24側から遠い側の端42bから固定ディスク24側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝43・43・・・と付勢規制溝44・44・・・とが周方向においてズレて形成される。これら付勢許容溝43・43・・・又は付勢規制溝44・44・・・に嵌合する突部45・45・・・が付勢伝達ロッド41に形成される。突部45・45・・・が付勢許容溝43・43・・・内に収容されるときは付勢伝達ロッド41が圧縮コイルバネ34から受ける付勢力が歯付ロッド40に伝達されるので固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢が許容され、一方、突部45・45・・・が付勢規制溝44・44・・・内に収容されるときは該突部45・45・・・と該付勢規制溝44・44・・・の固定ディスク24側の他側面44a・44a・・・との係合により付勢伝達ロッド41が圧縮コイルバネ34から受ける付勢力が歯付ロッド40に伝達されないので固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢が規制される。更に、歯付ロッド40の固定ディスク24側から遠い側の端には、付勢伝達ロッド41の突部45・45・・・と係合することにより該付勢伝達ロッド41を所定方向へ回転する傾斜面40a・40a・・・が形成される。以上の構成によれば、可動ディスク25を圧縮コイルバネ34に抗するように固定ディスク24から離れる方向へ移動させるだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わる。
【0053】
以上に本発明の第二実施形態を説明したが、上記第二実施形態は以下のように変更できる。
【0054】
◆ 即ち、上記第二実施形態においてバネ受け37は付勢伝達ロッド41の基端に対して摺動可能に当接することとしたが、これに限らず、バネ受け37が付勢伝達ロッド41の基端に対して接着される構成でもよいし、バネ受け37が付勢伝達ロッド41と一体成形される構成でもよい。
【0055】
◆ また、図7(b)に示される非作動状態において歯付ロッド40は自由に進退可能とされ、可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接することも形式的には許容される。このとき、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢は規制されるので糸Y1に対する張力の付与は実質的に為されないが、上記第二実施形態は更に以下のように構成してもよい。即ち、切替機構61は、図7(b)で示される非作動状態において可動ディスク25が固定ディスク24から常に所定以上離隔される構成である。この構成によれば、非作動状態において糸Y1に対する張力の付与が確実に回避される。なお、この構成として、例えば図11に示されるものが挙げられる。図11は、歯付ロッドと付勢伝達ロッドとの連結構造を示す部分断面図である。即ち、付勢伝達ロッド41の先端面の軸心に、固定ディスク24側と反対側に延び、奥へ向かって拡径する、係止孔70が穿設される。歯付ロッド40の基端面の軸心に、固定ディスク24側と反対側に延び、先に拡径部71aを有する、係止突起71が突設される。そして、係止突起71の拡径部71aは係止孔70内に収容される。この構成によれば、図7(b)に示される非作動状態において歯付ロッド40が先端方向へ進出すると、可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接する前に、係止孔70と係止突起71の拡径部71aとが係合して当該進出が停止されることもできるから、可動ディスク25が固定ディスク24から常に所定以上離隔される構成が実現され得る。
【0056】
次に、本発明の第三実施形態を説明する。図8は、図2に類似する図であって、本発明の第三実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図である。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0057】
上記第一実施形態においてロッド駆動筒27には付勢許容溝32及び付勢規制溝33が刻設されるとしたが、本実施形態では、ロッド駆動筒27には付勢許容溝32のみが刻設される。そして、突起付ロッド26の外周面に突設される突部31は、常に、付勢許容溝32内に収容される。
【0058】
次に、この張力付与部16を、糸Y1に対して張力を付与する状態としての作動状態と、糸Y1に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替機構62(切替手段)について説明する。図8及び図9、図10を参照されたい。図9は、図8に類似する図であって、張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態を示す図である。図10は、図8のA矢視断面図である。上記の切替機構62は、主として、前述した、圧縮コイルバネ34・バネロッド36・バネ受け37・抜け防止部材38、加えて、介在部材50から構成される。
【0059】
この介在部材50は、外壁18c(筐体)と抜け防止部材38との間に挿入可能とされるものである。図10に示されるように、介在部材50は、軸50aから延びる直線部51と、この直線部51から円弧状に延びる円弧部52と、から成り、軸50a周りに回動自在となるように外壁18cに枢設される。
【0060】
そして、図8に示されるように外壁18cと抜け防止部材38との間に介在部材50が挿入されていないときは圧縮コイルバネ34の自由な伸長が許容され、一方、図9に示されるように外壁18cと抜け防止部材38との間に介在部材50が挿入されているときは圧縮コイルバネ34の自由な伸長が規制される。
【0061】
図8には、張力付与部16の作動状態が示される。この作動状態では、前記の突部31は軸方向において長尺に形成される付勢許容溝32内に収容され、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから突部31までの距離は、固定ディスク24と可動ディスク25との合わせ面Sから付勢許容溝32の固定ディスク24側の縁32aまでの距離よりも大とされる。従って、可動ディスク25は固定ディスク24に対して当接可能とされると共に、突部31が付勢許容溝32の固定ディスク24の縁32aに当接することがなく、この結果、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34から突起付ロッド26に対して作用する付勢力は固定ディスク24に至るまで伝達される。即ち、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢力は許容され、もって、可動ディスク25と固定ディスク24との間で摺動する糸Y1に対して張力が付与されることとなる。
【0062】
図8に示される作動状態から図9に示される非作動状態へと切り替えるには、第一に、可動ディスク25を把持し、圧縮コイルバネ34の弾性力に抗するように該可動ディスク25を固定ディスク24から離れる方向へ所定量、押し込む。すると、抜け防止部材38と外壁18cとの間に所定量の間隙が形成される。第二に、この状態で、図10に示されるように介在部材50を太線矢印で示す方向へ回動し、この介在部材50を外壁18cと抜け防止部材38との間に挿入する。このとき、好ましくは、円弧部52の円弧中心がバネロッド36の軸心と一致するようにする。第三に、固定ディスク24から離れる方向への可動ディスク25の押し込みを解除する。すると、図9に示されるように、圧縮状態とされる圧縮コイルバネ34の作用によりバネ受け37及びバネロッド36は固定ディスク24側へ進出し、バネロッド36と連結される抜け防止部材38が介在部材50に当接する。この抜け防止部材38と介在部材50との当接により、圧縮コイルバネ34のそれ以上の伸長は規制される。
【0063】
以上に、図8〜10を参照しつつ、張力付与部16を作動状態から非作動状態へと切り替えるための切替機構62の構造と作動について説明した。上記の張力付与部16を非作動状態から作動状態へと切り替えるには、図9において可動ディスク25を把持して固定ディスク24から離れる方向へ押し込み、図10において太線矢印で示す方向と反対方向へ介在部材50を回動させ、その後、可動ディスク25に対する把持を解除すればよい。これにより、圧縮コイルバネ34の自由な伸長が実質的に許容される。
【0064】
以上説明したように上記第三実施形態においてディスクテンサー6は、以下のように構成される。即ち、弾性体として圧縮コイルバネ34を用い、この圧縮コイルバネ34の自己弾性復元力により可動ディスク25が固定ディスク24に対して付勢されるように構成される。切替機構62は、以下のようにして構成される。上記の圧縮コイルバネ34と、外壁18cに穿設される挿通孔に挿通されると共に圧縮コイルバネ34の内周側に挿入されるバネロッド36と、このバネロッド36の固定ディスク24側一端に固着され、外壁18cとの協動によって圧縮コイルバネ34を挟持する、バネ受け37と、このバネロッド36の他端に固着され、外壁18cからバネロッド36が固定ディスク24側へ抜けるのを防止する抜け防止部材38と、外壁18cと抜け防止部材38との間に挿入可能な介在部材50と、を含んで構成される。外壁18cと抜け防止部材38との間に介在部材50が挿入されていないときは圧縮コイルバネ34の自由な伸長が許容され、一方、外壁18cと抜け防止部材38との間に介在部材50が挿入されているときは圧縮コイルバネ34の自由な伸長が規制される。以上の構成によれば、可動ディスク25を圧縮コイルバネ34に抗するように固定ディスク24から離れる方向へ移動させると共に介在部材50を外壁18cと抜け防止部材38との間に挿入するだけで前記の作動状態と非作動状態とが切り替わる。
【0065】
以上に本発明の第三実施形態を説明したが、上記第三実施形態は以下のように変更できる。
【0066】
◆ 即ち、上記第三実施形態においてバネ受け37は突起付ロッド26の基端に対して摺動可能に当接することとしたが、これに限らず、バネ受け37が突起付ロッド26の基端に対して接着される構成でもよいし、バネ受け37が突起付ロッド26と一体成形される構成でもよい。
【0067】
◆ 図9に示される非作動状態において突起付ロッド26は自由に進退可能とされ、可動ディスク25が固定ディスク24に対して当接することも形式的には許容される。このとき、固定ディスク24に対する可動ディスク25の付勢は規制されるので糸Y1に対する張力の付与は実質的には為されないが、上記第三実施形態は更に以下のように構成してもよい。即ち、切替機構62は、図9に示される非作動状態において可動ディスク25が固定ディスク24から常に所定以上離隔される構成である。この構成によれば、非作動状態において糸Y1に対する張力の付与が確実に回避される。なお、この構成として、例えば、前述した図11に示されるものが挙げられる。即ち、前述の係止孔70を突起付ロッド26の基端面の軸心に穿設し、係止突起71をバネ受け37の先端面(固定ディスク24側の面)に突設する構成である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの巻取ユニットの概略図
【図2】本発明の第一実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図
【図3】図2に類似する図であって、張力付与部が作動状態から非作動状態へと切り替わる途中の状態を示す図
【図4】図2に類似する図であって、張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態を示す図
【図5】図2に類似する図であって、本発明の第二実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図
【図6】歯付ロッドと付勢伝達ロッドとロッド駆動筒との協動関係を示す展開図
【図7】図6に類似する図
【図8】図2に類似する図であって、本発明の第三実施形態に係るディスクテンサーの立面視部分断面図
【図9】図8に類似する図であって、張力付与部が非作動状態へと切り替わった状態を示す図
【図10】図8のA矢視断面図
【図11】歯付ロッドと付勢伝達ロッドとの連結構造を示す部分断面図
【符号の説明】
【0069】
1 巻取ユニット
15 張力付与部
16 張力付与部
21 固定ディスク
22 可動ディスク
24 固定ディスク
25 可動ディスク
34 圧縮コイルバネ
60 切替機構
Y1 糸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、該固定部に対して近設される可動部と、を有し、走行する糸を、前記の固定部と可動部との間で摺動させることで該糸に対して張力を付与する張力付与部を複数備える張力付与装置において、
前記複数の張力付与部のうち少なくとも何れか一の張力付与部は、
前記可動部側に弾性体を備え、この弾性体の作用により前記可動部が前記固定部に対して付勢されるように構成されると共に、
この張力付与部を、上記糸に対して張力を付与する状態としての作動状態と、上記糸に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替手段を備える、
ことを特徴とする張力付与装置
【請求項2】
前記切替手段を備える前記の張力付与部は、前記固定部としての固定ディスクと、前記可動部としての可動ディスクと、を有し、走行する前記糸を、前記の固定ディスクと可動ディスクとの合わせ面で摺動させることで該糸に対して張力を付与するものであって、
前記切替手段は、前記固定ディスクに対して前記可動ディスクを上記の合わせ面の法線方向に沿って進退させるものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の張力付与装置
【請求項3】
前記切替手段は、前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢を許容又は規制する、
ことを特徴とする請求項2に記載の張力付与装置
【請求項4】
前記切替手段は、
前記可動ディスクから前記固定ディスク側と反対側に突起付ロッドが突設され、
軸方向の移動が規制される筒内に該突起付ロッドが挿通され、
この筒の前記固定ディスク側から遠い側の端から前記固定ディスク側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて形成され、
これら付勢許容溝又は付勢規制溝に嵌合する突部が前記突起付ロッドの外周面上に形成され、
前記突部が前記付勢許容溝内に収容されるときは前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して当接可能とし、一方、前記突部が前記付勢規制溝内に収容されるときは該突部と該付勢規制溝の前記固定ディスク側の縁との係合により前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して当接不能とする、
ようにして構成される、ことを特徴とする請求項3に記載の張力付与装置
【請求項5】
前記切替手段は、
前記可動ディスクから前記固定ディスク側と反対側に歯付ロッドが突設され、
この歯付ロッドと前記弾性体との間に付勢伝達ロッドが介設され、
軸方向の移動が規制される筒内に前記歯付ロッドが相対回転不能に挿通され、
この筒の前記固定ディスク側から遠い側の端から前記固定ディスク側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて形成され、
これら付勢許容溝又は付勢規制溝に嵌合する突部が前記付勢伝達ロッドに形成され、
前記突部が前記付勢許容溝内に収容されるときは前記付勢伝達ロッドが前記弾性体から受ける付勢力が前記歯付ロッドに伝達されるので前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢が許容され、一方、前記突部が前記付勢規制溝内に収容されるときは該突部と該付勢規制溝の前記固定ディスク側の縁との係合により前記付勢伝達ロッドが前記弾性体から受ける付勢力が前記歯付ロッドに伝達されないので前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢が規制され、
更に、前記歯付ロッドの前記固定ディスク側から遠い側の端には、前記付勢伝達ロッドの突部と係合することにより該付勢伝達ロッドを所定方向へ回転する傾斜面が形成される、
ようにして構成される、ことを特徴とする請求項3に記載の張力付与装置
【請求項6】
前記弾性体は圧縮コイルバネであり、この圧縮コイルバネの自己弾性復元力により前記可動ディスクが前記固定ディスクに対して付勢されるように構成され、
前記切替手段は、
上記の圧縮コイルバネと、
前記張力付与装置の筐体に穿設される挿通孔に挿通されると共に前記圧縮コイルバネの内周側に挿入されるバネロッドと、
このバネロッドの固定ディスク側一端に固着され、前記筐体との協動によって前記圧縮コイルバネを挟持する、バネ受けと、
このバネロッドの他端に固着され、前記筐体から前記バネロッドが前記固定ディスク側へ抜けるのを防止する抜け防止部材と、
前記の筐体と抜け防止部材との間に挿入可能な介在部材と、
を含んで構成され、
前記の筐体と抜け防止部材との間に前記介在部材が挿入されていないときは前記圧縮コイルバネの自由な伸長が許容され、一方、前記の筐体と抜け防止部材との間に前記介在部材が挿入されているときは前記圧縮コイルバネの自由な伸長が規制される、
ようにして構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の張力付与装置
【請求項7】
前記切替手段は、
前記非作動状態において前記可動ディスクが前記固定ディスクから常に所定距離以上離隔される、
ようにして構成される、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の張力付与装置
【請求項1】
固定部と、該固定部に対して近設される可動部と、を有し、走行する糸を、前記の固定部と可動部との間で摺動させることで該糸に対して張力を付与する張力付与部を複数備える張力付与装置において、
前記複数の張力付与部のうち少なくとも何れか一の張力付与部は、
前記可動部側に弾性体を備え、この弾性体の作用により前記可動部が前記固定部に対して付勢されるように構成されると共に、
この張力付与部を、上記糸に対して張力を付与する状態としての作動状態と、上記糸に対して張力を付与しない状態としての非作動状態と、の間で切替するための切替手段を備える、
ことを特徴とする張力付与装置
【請求項2】
前記切替手段を備える前記の張力付与部は、前記固定部としての固定ディスクと、前記可動部としての可動ディスクと、を有し、走行する前記糸を、前記の固定ディスクと可動ディスクとの合わせ面で摺動させることで該糸に対して張力を付与するものであって、
前記切替手段は、前記固定ディスクに対して前記可動ディスクを上記の合わせ面の法線方向に沿って進退させるものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の張力付与装置
【請求項3】
前記切替手段は、前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢を許容又は規制する、
ことを特徴とする請求項2に記載の張力付与装置
【請求項4】
前記切替手段は、
前記可動ディスクから前記固定ディスク側と反対側に突起付ロッドが突設され、
軸方向の移動が規制される筒内に該突起付ロッドが挿通され、
この筒の前記固定ディスク側から遠い側の端から前記固定ディスク側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて形成され、
これら付勢許容溝又は付勢規制溝に嵌合する突部が前記突起付ロッドの外周面上に形成され、
前記突部が前記付勢許容溝内に収容されるときは前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して当接可能とし、一方、前記突部が前記付勢規制溝内に収容されるときは該突部と該付勢規制溝の前記固定ディスク側の縁との係合により前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して当接不能とする、
ようにして構成される、ことを特徴とする請求項3に記載の張力付与装置
【請求項5】
前記切替手段は、
前記可動ディスクから前記固定ディスク側と反対側に歯付ロッドが突設され、
この歯付ロッドと前記弾性体との間に付勢伝達ロッドが介設され、
軸方向の移動が規制される筒内に前記歯付ロッドが相対回転不能に挿通され、
この筒の前記固定ディスク側から遠い側の端から前記固定ディスク側へ向かって延在する異なる長さの溝としての付勢許容溝と付勢規制溝とが周方向においてズレて形成され、
これら付勢許容溝又は付勢規制溝に嵌合する突部が前記付勢伝達ロッドに形成され、
前記突部が前記付勢許容溝内に収容されるときは前記付勢伝達ロッドが前記弾性体から受ける付勢力が前記歯付ロッドに伝達されるので前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢が許容され、一方、前記突部が前記付勢規制溝内に収容されるときは該突部と該付勢規制溝の前記固定ディスク側の縁との係合により前記付勢伝達ロッドが前記弾性体から受ける付勢力が前記歯付ロッドに伝達されないので前記固定ディスクに対する前記可動ディスクの付勢が規制され、
更に、前記歯付ロッドの前記固定ディスク側から遠い側の端には、前記付勢伝達ロッドの突部と係合することにより該付勢伝達ロッドを所定方向へ回転する傾斜面が形成される、
ようにして構成される、ことを特徴とする請求項3に記載の張力付与装置
【請求項6】
前記弾性体は圧縮コイルバネであり、この圧縮コイルバネの自己弾性復元力により前記可動ディスクが前記固定ディスクに対して付勢されるように構成され、
前記切替手段は、
上記の圧縮コイルバネと、
前記張力付与装置の筐体に穿設される挿通孔に挿通されると共に前記圧縮コイルバネの内周側に挿入されるバネロッドと、
このバネロッドの固定ディスク側一端に固着され、前記筐体との協動によって前記圧縮コイルバネを挟持する、バネ受けと、
このバネロッドの他端に固着され、前記筐体から前記バネロッドが前記固定ディスク側へ抜けるのを防止する抜け防止部材と、
前記の筐体と抜け防止部材との間に挿入可能な介在部材と、
を含んで構成され、
前記の筐体と抜け防止部材との間に前記介在部材が挿入されていないときは前記圧縮コイルバネの自由な伸長が許容され、一方、前記の筐体と抜け防止部材との間に前記介在部材が挿入されているときは前記圧縮コイルバネの自由な伸長が規制される、
ようにして構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の張力付与装置
【請求項7】
前記切替手段は、
前記非作動状態において前記可動ディスクが前記固定ディスクから常に所定距離以上離隔される、
ようにして構成される、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の張力付与装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−247560(P2008−247560A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91765(P2007−91765)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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