説明

弾性ローラ、その再生方法、電子写真用プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】再利用する弾性層や被覆層の表面状態や機能、形状を変化させることなく任意の被覆層を除去することが可能な弾性ローラ、及びその再生方法を提供する。
【解決手段】軸芯体と、前記軸芯体の表面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周に設けられた少なくとも1層の被覆層とを有する弾性ローラにおいて、前記被覆層の少なくとも1層に、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基を有するポリマーが3次元架橋した高吸水性ポリマーが配合されている。再生する際は、弾性ローラに水を吸収させて高吸水性ポリマーを水で膨潤させることで高吸水性ポリマーが配合された被覆層とその一層内側の層との間に空隙が生まれ、容易にその被覆層とそれより外側にある被覆層を剥がすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置の如き電子写真用画像形成装置において使用する弾性ローラ、その再生方法、電子写真用プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。特に、表面にトナーの薄層を形成した状態で画像形成体に接触させて前記画像形成体表面にトナーを供給することにより前記画像形成体表面に可視画像を形成させる現像ローラとして使用可能な、容易に再生が可能な弾性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスで使われているレーザービームプリンタにおいては、現像プロセスの中心部を一体化したプロセスカートリッジが用いられる場合が多い。しかしながら、レーザービームプリンタが普及するにつれて、使用済みのプロセスカートリッジに対する対応が求められるようになってきた。すなわち、近年、エコロジーの考えが世界的に広がっていることもあって、大量の使用済みプロセスカートリッジの廃棄は好ましくなく、環境保護を目的にプロセスカートリッジを構成する部材や材料の再生が必要とされている。
【0003】
レーザービームプリンタ等の画像形成装置に用いられる弾性ローラは、連続的な使用に伴って紙粉やトナーの原料である結着樹脂が弾性ローラの表面に付着、堆積する場合がある。さらに、他部材との圧接や摩擦によって弾性ローラ表面全体を被覆するように強固に固着する場合がある。このように紙粉やトナーが固着した弾性ローラをそのまま再利用すると、弾性ローラの表面状態や抵抗が変化しているために帯電性や現像性が低下し、製品として満足できる画像が得られない場合がある。そこで、紙粉やトナーが固着して本来の機能を果たせなくなった弾性ローラの被覆層を剥がした後、再び被覆層を被覆して再利用する再生方法が提案されている。
【0004】
そのような再生方法としては、導電性部材の表面を研磨した後、弾性層又は導電層を被覆することによって使用済みの導電性部材をリサイクルする方法が知られている(特許文献1参照)。また、被覆層に熱膨張粒子を含有させ、加熱により熱膨張粒子を膨張させて被覆層を剥がし、再び被覆層を形成する再生方法も知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平09−311518号公報
【特許文献2】特開2006−010755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電性部材の表面を研磨する方法では、表面の導電層だけを研磨するのは難しく、機能が低下していない下層の弾性層の一部も研磨されてしまうことがあった。また、研磨した後の表面に研磨跡が残るため、たとえ導電層を再被覆しても初期と全く同じ導電性部材に再生することはできなかった。一方、熱膨張粒子を膨張させて被覆層を剥離する方法では、熱膨張粒子を膨張させるために弾性ローラを高温に加熱する必要があるため、再利用する弾性層や被覆層が熱的に弱い場合は熱によって硬度や抵抗、形状が変化してしまう。したがって、応用できる範囲に限界があった。
【0006】
本発明は、これら従来技術の課題に鑑みなされたものであり、再利用する弾性層や被覆層の表面状態や機能、形状を変化させることなく、任意の被覆層を除去することが可能な弾性ローラ、及びその再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、軸芯体と、前記軸芯体の表面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周に設けられた少なくとも1層の被覆層とを有する弾性ローラにおいて、前記被覆層の少なくとも1層に、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基を有するポリマーが3次元架橋した高吸水性ポリマーが配合されていることを特徴とする弾性ローラである。
【0008】
本出願に係る第2の発明は、前記高吸水性ポリマーは、数平均粒子径が10μm以上30μm以下、吸水量が400g/g以上1000g/gであり、かつ前記高吸水性ポリマーが配合されている被覆層における前記高吸水性ポリマーの含有量が、樹脂固形分100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であることを特徴とする前記の弾性ローラである。
【0009】
本出願に係る第3の発明は、前記高吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウムの架橋体であることを特徴とする前記の弾性ローラである。
【0010】
本出願に係る第4の発明は、弾性ローラが現像ローラであることを特徴とする前記の弾性ローラである。
【0011】
本出願に係る第5の発明は、軸芯体と、前記軸芯体の表面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周に設けられた少なくとも1層の被覆層とを有し、前記被覆層の少なくとも1層にカルボキシル基および/またはカルボキシレート基を有するポリマーが3次元架橋した高吸水性ポリマーが配合されている弾性ローラの再生方法において、前記弾性ローラに水を吸収させて前記高吸水性ポリマーを膨潤させることで前記高吸水性ポリマーが配合されている前記被覆層を剥離した後、再び被覆層を設けることを特徴とする弾性ローラの再生方法である。すなわち、吸水することで膨潤する高吸水性ポリマーを任意の被覆層に配合されており、再生する際には弾性ローラに水を吸収させることで高吸水性ポリマーを膨潤させる。その結果、高吸水性ポリマーが配合された被覆層とその一層内側の層の間に空隙が生まれ、容易に高吸水性ポリマーが配合された被覆層とさらにその外側の被覆層を剥がすことができる。二層の界面で自然と剥離するため、研磨したときのように表面状態が変わることもなく、また高吸水性ポリマーを膨潤させるのに水を使うため、再利用する弾性ローラの機能が熱で損なわれることもない。
【0012】
本出願に係る第6の発明は、前記水は、温度が30℃以上50℃以下であることを特徴とする前記の弾性ローラの再生方法である。すなわち、水の温度を上記の範囲にあるとき、高吸水性ポリマー粒子の吸水速度が上がり、弾性層や他の被覆層の特性に影響を与えずにより早く被覆層を剥離することができる。
【0013】
本出願に係る第7の発明は、前記高吸水性ポリマーは、数平均粒子径が10μm以上30μm以下、吸水量が400g/g以上1000g/gであり、かつ前記高吸水性ポリマーが配合されている被覆層における前記高吸水性ポリマーの含有量が、樹脂固形分100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であることを特徴とする前記の弾性ローラの再生方法である。すなわち、高吸水性ポリマー粒子が上記の範囲を満たすとき、弾性ローラに吸水させることで高吸水性ポリマー粒子が配合された被覆層が剥がれるようになる。
【0014】
本出願に係る第8の発明は、前記高吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウムの架橋体であることを特徴とする前記の弾性ローラの再生方法である。これにより、高吸水性ポリマー粒子が配合された被覆層を熱硬化で形成するときでも高吸水性ポリマー粒子が破壊されることなく弾性ローラを作製することができる。
【0015】
本出願に係る第9の発明は、押圧ローラを前記高吸水性ポリマーが膨潤した前記弾性ローラに押し当てて、前記押圧ローラおよび前記弾性ローラを回転させることで、前記被覆層を剥離することを特徴とする前記の弾性ローラの再生方法である。押圧ローラを使うことで、簡便に被覆層を剥がすことができるようになる。
【0016】
本出願に係る第10の発明は、表面にトナーの薄層を形成した状態で感光ドラムに接触させて感光ドラム表面にトナーを供給することにより感光ドラム表面に可視画像を形成させるための現像ローラを有する電子写真プロセスカートリッジにおいて、現像ローラが本発明の現像ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジである。
【0017】
本出願に係る第11の発明は、現像ローラの表面にトナーの薄層を形成し、現像ローラを感光ドラムに接触させて感光ドラム表面にトナーを供給することにより感光ドラム表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、現像ローラが本発明の現像ローラであることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、再利用する弾性層や被覆層の機能が破壊されることなく、また形状が変化することなく任意の被覆層を剥がすことが可能な弾性ローラ、及びその再生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明の弾性ローラ1は、例えば図1(a)または(b)に示すような断面構造を有している。すなわち、図1(a)の弾性ローラの斜視図を図2に示すように、軸芯体2と、軸芯体2の表面に同芯円状に形成された弾性層3を有する。また、形成された弾性層3の外周上に被覆層4が単層(図1(a))または複層(図1(b))で形成されている。被覆層4のうち、少なくとも1層の被覆層5には、吸水することで膨潤する高吸水性ポリマー6が配合されている。
【0021】
軸芯体2を構成する材料としては以下の材料が挙げられる。鉄、鋼、アルミニウム、チタン、銅及びニッケルの合金やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅の合金、さらにカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料の剛直で導電性を示す公知の材料。また、形状としては円柱状でも中心部分を空洞とした円筒状でもよい。
【0022】
弾性層3を形成する原料主成分のゴムとしては、特に制限はなく、従来公知の材料を用いることができる。ゴムとして以下のものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ノルボーネンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム。
【0023】
弾性層3を形成する際、個別的な用途に合わせて、弾性層自体に要求される機能に必要な成分、ゴム成型体とする際に利用される各種添加剤成分、及び各種の添加剤を主成分の弾性層に適宜配合することもできる。
【0024】
弾性層3に導電性を付与する目的に添加する導電剤としては、以下のものが挙げられる。カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、パラジウム、銀、鉄、銅、錫、ステンレス鋼の各種導電性金属または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体の各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質の微粉末。さらにイオン導電剤として、過塩素酸塩、または4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの内、カーボンブラックは、比較的容易に入手でき、また、主成分のゴム材料の種類に依らず、良好な帯電性が得られるため、好適に利用できる。
【0025】
この他にも非導電性充填剤として、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、珪酸アルミニウム、タルク、アルミナ、または酸化鉄を配合することができる。
【0026】
軸芯体2の表面に弾性層3を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の各種ローラの成形方法を用いることができる。押出成形、プレス成形、射出成形、液状射出成形、注型成形の如き各種成形法により成形し、適切な温度および時間で加熱硬化させて軸芯体の表面に弾性層を成形する方法が挙げられる。特に、未硬化材料を円筒形金型内に注入した後、加熱加硫することにより弾性層を軸芯体の周りに形成する方法が好ましい。この方法においては、ローラ形状は使用する円筒形金型の形状をある一定の収縮量のもとに再現するため、十分満足できる形状精度を有するものを得ることができる。
【0027】
弾性層3の外周には少なくとも1層の被覆層4が設けられている。被覆層4を形成する材料としては、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、またはオレフィン樹脂が挙げられる。
【0028】
被覆層4には、個別的な用途に合わせて体積平均粒子径が1〜20μmの微粒子を分散させることもできる。このような微粒子としては、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、またはフェノール樹脂微粒子が挙げられる。
【0029】
被覆層4は、弾性ローラ全体の電気抵抗を調整するために導電剤を配合することができる。導電剤としては、各種電子伝導機構を有する導電剤であるカーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、またはイオン導電剤であるアルカリ金属塩、およびアンモニウム塩の微粒子を用いることができる。
【0030】
本発明では、被覆層4のうち、少なくとも1層の被覆層5に高吸水性ポリマー6が配合されている。
【0031】
高吸水性ポリマー6は、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基が置換したポリマーが3次元架橋したものであり、吸水することで膨潤する。この高吸水性ポリマー6は、水に接したときに親水基を持つポリマー鎖が水に溶けようと広がるとともに、浸透圧によってポリマー内に水を取り込んで膨潤する仕組みになっている。したがって、ポリマーにはカルボキシル基やカルボキシレート基のような親水基が置換している必要がある。高吸水性ポリマーにカルボキシル基やカルボキシレート基が置換していることは、赤外線分析計で容易に分析することができる。また、高吸水性ポリマー6は、吸収した水を保持するために3次元架橋して網目構造を有していることが必須である。3次元架橋していない高吸水性ポリマーは、水に接したときにポリマー間の絡みが解けて水中に拡散または溶解してしまうので本発明に使うことができない。すなわち、3次元架橋していることは、水中に拡散も溶解もしないことで判断できる。
【0032】
本発明の弾性ローラ1は、少なくとも1層の被覆層5に高吸水性ポリマー6を配合することで弾性ローラ1の再生が容易となる。すなわち、弾性ローラ1の表面に付着、堆積した紙粉やトナーが他部材との圧接や摩擦によって弾性ローラ表面に強固に固着して弾性ローラの機能が損なわれたときには、弾性ローラ1に水を吸収させて高吸水性ポリマー6を膨潤させる。そうすることで、高吸水性ポリマー6が配合された被覆層5とその一層内側の層との間に空隙が生まれ、容易に被覆層5とそれより外側にある被覆層を剥離することができる。
【0033】
そして、被覆層を剥離した後は、再び被覆層を設けることで弾性ローラ1を再生することができる。すなわち、本発明の再生方法によると、剥離させたい被覆層に高吸水性ポリマー6を配合するだけでよく、任意の被覆層を選ぶことができる。すなわち、高吸水性ポリマーを配合する被覆層は、最外層でも内層でもよく、1層でも2層以上でもよい。また被覆層を剥離するときに加熱する必要がないので再利用する弾性層や被覆層の機能が破壊されず、形状も変わらないため、新たに被覆層を設けるだけで弾性ローラを再生することができる。
【0034】
高吸水性ポリマー6としては、ポリアクリル酸塩系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、酢酸ビニル−アクリル酸塩系ポリマー、でんぷん−アクリル酸グラフト系ポリマー、イソブチレン−マレイン酸系ポリマー、の架橋体が例示される。特にポリアクリル酸ナトリウムの架橋体は、熱的に安定で簡単に入手できることから、被覆層を熱硬化させて形成するときに好適に用いられる。このような高吸水性ポリマー6としては、スミカゲル(住友化学製商品名)、アクアキープ(住友精化製商品名)、サンフレッシュ(三洋化成製商品名)が挙げられる。
【0035】
高吸水性ポリマー6の形状は特に限定されず、粉末状、顆粒状、繊維状のものを使用することができるが、粉末状で数平均粒子径が10μm以上30μm以下であることが好ましい。数平均粒子径が10μm未満であると被覆層5に均一に分散しないことがあるため、高吸水性ポリマー6を膨潤させても空隙の割合が少なくなり、被覆層5を剥がしにくくなることがある。また、数平均粒子径が30μmを超えると被覆層5の機械的強度が低下することがある。この数平均粒子径は、10μm以上20μm以下であることがより好ましい。ここでの数平均粒子径は、次のように測定したものを言う。まず、採取した高吸水性ポリマー6をキーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−200(商品名)を使って1000倍で撮影する。次いで、無作為で選んだ高吸水性ポリマー1個の長径と短径との平均からその高吸水性ポリマーの平均粒子径を求める。さらに同様に無作為で選択した高吸水性ポリマー100個の平均粒子径を求める。そして、得られた平均粒子径を加算平均する。
【0036】
高吸水性ポリマー6の被覆層5における含有量は、被覆層5の樹脂固形分100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であることが好ましい。含有量が10質量部未満であると、吸水して膨潤したときの被覆層5とその一層内側の層との間にできる空隙が少なくなり、被覆層5が剥がしにくくなることがある。一方、含有量が50質量部を超えると、被覆層5の機械的強度が低下することがある。この含有量は、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
【0037】
また、高吸水性ポリマー6の吸水量は、400g/g以上1000g/g以下であることが好ましい。吸水量が400g/g未満では、高吸水性ポリマーの膨潤後の体積があまり大きくならず、被覆層5がきれいに剥がれないことがある。また、吸水量が1000g/gを超えても、被覆層6の剥離性に対する効果に差が出なくなる。この吸水量は、600g/g以上1000g/g以下であることがより好ましい。ここでの吸水量は、JIS K7223の「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」に基づいて測定した値のことである。
【0038】
これらの被覆層を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、またはパールミルのビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して分散させることができる。得られた分散液は、スプレー塗工法、ディッピング法により弾性層3の表面に塗工される。
【0039】
弾性ローラ1を再生する際に、弾性ローラ1に水を吸収させる方法としては特に限定はされないが、水を張った容器に弾性ローラ1を浸漬させる方法が簡便なことから好ましく用いられる。高湿度の雰囲気下で吸水させる方法もあるが、高吸水性ポリマー6の吸水速度が非常に遅くなるためにあまり実用的ではない。
【0040】
水の温度は、30℃以上50℃以下であることが好ましい。すなわち、水の温度が30°以上にあると高吸水性ポリマー6の吸水速度が上がり、より早く被覆層を剥離することができる。また、水の温度が50以下である場合は弾性層や他の被覆層の特性に与える影響が少なくて済む。
【0041】
高吸水性ポリマー6を膨潤させた後、被覆層5を剥離する方法は特に限定されず、手で剥がしても良いが、押圧ローラを高吸水性ポリマー6が膨潤した弾性ローラに押し当てて、両ローラを回転させることで被覆層5を簡便に剥離することができる。図3は押圧ローラ7を用いて被覆層5を剥離している状態の一例を示す構成図である。このように押圧ローラ7を弾性ローラ1に対して一定の圧力で押し当て、弾性ローラ1および押圧ローラ7を回転駆動させることで、高吸水性ポリマー6の膨潤によって浮いた被覆層5が破壊され、剥離していく。それぞれのローラの回転方向は一致させても良いし、逆方向にしても良いが、回転方向が逆の場合は押圧ローラ7の回転速度を弾性ローラ1の1.1〜1.5倍にすることが好ましい。一方、回転方向が同じ場合は、押圧ローラ7の回転速度を弾性ローラ1の1.0〜1.2倍にすることが好ましい。上記の範囲にすることで弾性ローラ1を傷付けずに被覆層5だけを効率良く剥がすことができる。
【0042】
押圧ローラ7の硬度は、弾性ローラ1にあまり負荷を掛けないように柔軟な硬度が良く、Asker−C硬度で40°以下のものが好ましい。また、押圧ローラ7を弾性ローラ1に押し当てる圧力は、弾性ローラ1を損傷しない範囲で大きくすることが好ましく、引抜き圧で10〜300N/mが好ましい。ここで引抜き圧とは、当接する押圧ローラ7と弾性ローラ1の間に厚さ30μmのSUS板を3枚挟み、中間のSUS板を引き抜くときの力をSUS板の長さ1mあたりに換算した線圧のことである。
【0043】
本発明の弾性ローラは、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラとして用いることができる。
【0044】
次に、本発明の弾性ローラを現像ローラとして有する画像形成装置の一例を図4を用いて説明する。
【0045】
まず、矢印Aの方向に回転している感光ドラム9の表面が帯電ローラ8により帯電され、露光15により所望の静電潜像が形成される。一方、現像容器16内のトナー13が、撹拌羽根でトナー供給ローラ11に送られた後、現像ローラ10表面にコートされる。コートされたトナー13は、トナー層厚規制部材である現像ブレード12によってコート厚を均一に整えられ、現像ローラ10表面にトナーの薄層が形成される。接触現像方式の画像形成装置においては、現像ローラ10と感光ドラム9は接触している現像領域で感光ドラム9の表面に形成されている静電潜像が現像され、トナー画像が形成される。現像に使用されなかった現像ローラ10表面に残ったトナー13をトナー供給ローラ11が取り除くとともに、新しいトナー13が現像ローラ10の表面に供給される。新しく供給されたトナーは、再度現像ブレード12にてコート厚さを均一に整えられ、現像領域に搬送されていく。この繰り返しによって現像ローラ10には常に新しいトナー13を均一にコートされ、静電潜像を現像することができる。
【0046】
現像されたトナー画像は、感光ドラム9の回転によって転写領域に運ばれ、転写ローラ17で記録材14に転写される。その後、転写されたトナー画像は、定着ローラ18と加圧ローラ19の間を通り、圧力と熱で記録材14に定着される。転写されずに感光ドラム9上に残ったトナー13は、感光ドラム9の回転に伴い清掃用のクリーニングブレード20で感光ドラム9から取り除かれ、回収トナー容器21に貯留される。表面が清掃された感光ドラム9表面は、再び帯電ローラ8で帯電され、露光、現像、転写、クリーニングを繰り返す。
【0047】
本発明の電子写真プロセスカートリッジは、本発明の現像ローラを有しており、画像形成装置の中で一体的に交換可能となっている。例えば、帯電ローラ8と、感光ドラム9と、現像ローラ10と、トナー供給ローラ11と、トナー層厚規制部材である現像ブレード12と、撹拌羽根と、トナー13が入った現像容器16とが一つのカートリッジにまとめられている。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0049】
<実施例1>
[弾性層の調製]
直径8mm、長さ250mmの快削鋼製の軸芯体に、シリコーンゴムとの接着性を向上させる目的で、プライマー(東レ・ダウコーニング製、商品名:DY39−051)を塗付し、150℃で30分間焼付けを行った。
【0050】
両末端にビニル基が置換した、25℃における粘度100Pa・sのジメチルポリシロキサン100質量部に、充填剤として石英粉末7質量部、およびカーボンブラック8質量部を配合したものを、液状シリコーンゴムのベース材料とした。石英粉末としては、Pennsylvania Glass Sand製のMin−USil(商品名)を用いた。カーボンブラックとしては、電気化学工業製のデンカブラック(商品名)の粉状品を用いた。このベース材料に、硬化触媒として白金化合物を微量配合したものと、オルガノハイドロジェンポリシロキサン3質量部を配合したものを質量比1:1で混合し、液状シリコーンゴムとした。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基が置換したジメチルポリシロキサンに含有するビニル基1モルに対して、SiH基が1.1モルとなる量に相当する。
【0051】
円筒形金型中心部に上記軸芯体を配置し、この円筒形金型内の注入口から上記液状シリコーンゴムを注入し、120℃で5分間、加熱硬化させ、さらに200℃で4時間加熱して、軸芯体の表面に厚みが4mmの弾性層を形成した。
【0052】
[被覆層の調製]
ポリテトラメチレングリコール100質量部に、イソシアネート化合物23質量部をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて7時間反応させて、重量平均分子量11000、水酸基価20のポリエーテルポリオールを得た。ポリテトラメチレングリコールとしては、保土谷化学製のPTG1000SN(商品名)を用いた。イソシアネート化合物としては、日本ポリウレタン工業製のミリオネートMT(商品名)を用いた。なお、重量平均分子量は、GPCで測定した。すなわち、温度40℃のヒートチャンバー内で安定化させたカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、0.05〜0.6質量%に調整した試料溶液を50〜200μl注入した。そして、数種の単分散ポリスチレン標準試料で作成した検量線から試料の重量平均分子量を算出した。また、水酸基価はJIS K0070の「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準拠して求めた。
【0053】
得られたポリエーテルポリオール100質量部、ウレタン変性ポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業製、商品名:コロネート2520)42質量部、カーボンブラック(三菱化学製、商品名:MA−100)20質量部にMEKを添加した。ボールミルにて5時間分散回転させた後、高吸水性ポリマーとして、数平均粒子径20μm、吸水量400g/gのポリアクリル酸ナトリウム架橋体(三洋化成製、商品名:サンフレッシュ)を30質量部加えて、再度1時間分散回転させた。
【0054】
この溶液に、軸芯体の表面に弾性層を形成したものを浸漬させて表面に塗膜を形成し、風乾後、温度140℃で4時間の熱処理をすることで、弾性層の外周に厚みが30μmの被覆層が形成された弾性ローラを得た。なお、被覆層の厚さは弾性ローラの一部を切り取り、キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−200(商品名)で撮影し、高吸水性ポリマーが存在しない部分の厚みを被覆層の厚みとした。
【0055】
[被覆層の機械的強度]
得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込んだ。そして、温度23℃、湿度50%RHの環境下、Hewlett−Packard製のColor Laser Jet 4700dn(商品名)で印字率が2%の画像を30,000枚出力した。その後、被覆層の剥がれを目視で観察したところ、全く剥がれはなかった。なお、実施例及び比較例において、以下のように評価した。
A:全く剥がれがない場合
B:非画像領域の端部の一部で剥がれた場合
C:被覆層が剥がれ画像に弊害が出た場合
その結果を表1に示す。
【0056】
[弾性ローラの再生の簡便性]
画像を出力した後の弾性ローラをカートリッジから取り出し、40℃に加温した水に浸漬させた。浸漬させてから1分後、高吸水性ポリマーの膨潤が飽和して被覆層が浮いていることを確認し、弾性ローラを剥離装置に設置した。Asker−C硬度が30°で直径が12mmの押圧ローラを弾性ローラに引抜き圧100N/mで押し当て、弾性ローラを40rpm、押圧ローラを45rpmでそれぞれ逆回転方向に全ての被覆層が剥がれるまで回転させた。被覆層を全て剥がすのに20秒間かかった。なお、実施例及び比較例において、水に浸漬していた時間と全ての被覆層を剥がすのに要した時間の合計により、以下のように評価した。
AA:2分間未満
A :2分間以上3分間未満
B :3分間以上4分間未満
C :4分間経過しても高吸水性ポリマーの膨潤が飽和しなかった、または被覆層が全て剥がれなかった
その結果を表1に示す。
【0057】
[再生した弾性ローラの特性と画像]
被覆層を剥がした後、再び上記の手順で被覆層を設けて弾性ローラを再生した。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。なお、実施例及び比較例において、以下のように評価した。
A:再生後でも初期の弾性ローラと同じ特性であり、かつ画像が良好な場合
B:再生後の弾性ローラの特性が初期の弾性ローラと変わっていたが実用上問題なく、画像も良好であった場合
C:再生後の弾性ローラの特性が変わっており、濃度ムラやかぶりの画像弊害もあった場合
その結果を表1に示す。
【0058】
<実施例2>
高吸水性ポリマーとして、数平均粒子径10μm、吸水量400g/gのポリアクリル酸ナトリウム架橋体を用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は1.5分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0059】
<実施例3>
高吸水性ポリマーとして、数平均粒子径30μm、吸水量400g/gのポリアクリル酸ナトリウム架橋体を用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は1.1分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0060】
<実施例4>
高吸水性ポリマーとして、数平均粒子径20μm、吸水量1000g/gのでんぷん−アクリル酸ナトリウムグラフト共重合体(三洋化成製、商品名:サンウェット)10質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は1.1分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0061】
<実施例5>
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体の添加量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は1.7分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0062】
<実施例6>
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体の添加量を50質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は1.0分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0063】
<実施例7>
実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、弾性ローラの再生に使用した水の温度を30℃に変更した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は1.9分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0064】
<実施例8>
実施例1と同様に弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、弾性ローラの再生に使用した水の温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は0.9分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0065】
<実施例9>
高吸水性ポリマーとして、数平均粒子径5μm、吸水量400g/gのポリアクリル酸ナトリウム架橋体を用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は3.2分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0066】
<実施例10>
高吸水性ポリマーとして、数平均粒子径200μm、吸水量1300g/gのポリアクリル酸ナトリウム架橋体(中村理科工業製、諸品名:N100)5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したところ、非画像領域である端部の一部で剥がれが見られた。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は2.2分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0067】
<実施例11>
高吸水性ポリマーとして、数平均粒子径200μm、吸水量250g/gのポリアクリル酸ナトリウム架橋体(三洋化成製、商品名:アクアパール)30質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したところ、非画像領域である端部の一部で剥がれが見られた。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は3.3分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0068】
<実施例12>
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体の添加量を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は3.5分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0069】
<実施例13>
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体の添加量を60質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したところ、非画像領域である端部の一部で剥がれが見られた。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は0.8分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0070】
<実施例14>
実施例1と同様に弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、弾性ローラの再生に使用した水の温度を20℃に変更した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は3.8分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0071】
<実施例15>
実施例1と同様に弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、弾性ローラの再生に使用した水の温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は0.8分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラの80%に低下していた。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0072】
<実施例16>
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体の添加量を5質量部に変更した以外は、実施例9と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを帯電ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は3.8分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0073】
<実施例17>
実施例1と同様に弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、温度40℃に加温した水に浸漬させてから1分後に手で被覆層を剥がした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを再生したところ、水に浸漬していた時間と被覆層を全て剥がすのに要した時間の合計は3.8分間であった。再生された弾性ローラの電流を測定したところ、初期の弾性ローラと同等であった。また、再生された弾性ローラをカートリッジに組み込んで画像を出力したところ、画像は良好であった。その結果を表1に示す。
【0074】
<比較例1>
高吸水性ポリマーの代わりに、数平均粒子径12μm、吸水量0g/gのカルボキシル基、カルボキシレート基を有しないウレタン微粒子16質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。得られた弾性ローラを現像ローラとしてカートリッジに組み込み、実施例1と同様にして画像を30,000枚出力したが、被覆層の剥がれは全くなかった。画像を出力した後、実施例1と同様にして弾性ローラを再生しようとしたが、水に浸漬してもウレタン微粒子が膨潤せず、被覆層を剥がすことができなかった。その結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る弾性ローラの概念的断面図であり、(a)は被覆層が単層の弾性ローラ、(b)は被覆層が複層の弾性ローラである。
【図2】図1(a)の弾性ローラの概念的斜視図である。
【図3】押圧ローラを用いて被覆層を剥離している状態の模式的な構成図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0077】
1:弾性ローラ
2:軸芯体
3:弾性層
4:被覆層
5:高吸水性ポリマーが配合された被覆層
6:高吸水性ポリマー
7:押圧ローラ
8:帯電ローラ
9:感光ドラム
10:現像ローラ
11:トナー供給ローラ
12:現像ブレード
13:トナー
14:記録材
15:露光
16:現像容器
17:転写ローラ
18:定着ローラ
19:加圧ローラ
20:クリーニングブレード
21:回収トナー容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、前記軸芯体の表面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周に設けられた少なくとも1層の被覆層とを有する弾性ローラにおいて、前記被覆層の少なくとも1層に、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基を有するポリマーが3次元架橋した高吸水性ポリマーが配合されていることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項2】
前記高吸水性ポリマーは、数平均粒子径が10μm以上30μm以下、吸水量が400g/g以上1000g/gであり、かつ前記高吸水性ポリマーが配合されている被覆層における前記高吸水性ポリマーの含有量が、樹脂固形分100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記高吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウムの架橋体であることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
前記弾性ローラは、現像ローラであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性ローラ。
【請求項5】
軸芯体と、前記軸芯体の表面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周に設けられた少なくとも1層の被覆層とを有し、前記被覆層の少なくとも1層にカルボキシル基および/またはカルボキシレート基を有するポリマーが3次元架橋した高吸水性ポリマーが配合されている弾性ローラの再生方法において、前記弾性ローラに水を吸収させて前記高吸水性ポリマーを膨潤させることで前記高吸水性ポリマーが配合されている前記被覆層を剥離した後、再び被覆層を設けることを特徴とする弾性ローラの再生方法。
【請求項6】
前記水は、温度が30℃以上50℃以下であることを特徴とする請求項5に記載の弾性ローラの再生方法。
【請求項7】
前記高吸水性ポリマーは、数平均粒子径が10μm以上30μm以下、吸水量が400g/g以上1000g/gであり、かつ前記高吸水性ポリマーが配合されている被覆層における前記高吸水性ポリマーの含有量が、樹脂固形分100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の弾性ローラの再生方法。
【請求項8】
前記高吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウムの架橋体であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の弾性ローラの再生方法。
【請求項9】
押圧ローラを前記高吸水性ポリマーが膨潤した前記弾性ローラに押し当てて、前記押圧ローラおよび前記弾性ローラを回転させることで、前記被覆層を剥離することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の弾性ローラの再生方法。
【請求項10】
表面にトナーの薄層を形成した状態で感光ドラムに接触させて前記感光ドラムの表面に前記トナーを供給することにより前記感光ドラムの表面にトナー画像を形成させるための現像ローラを有する電子写真用プロセスカートリッジにおいて、前記現像ローラが請求項4に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真用プロセスカートリッジ。
【請求項11】
現像ローラの表面にトナーの薄層を形成し、前記現像ローラを感光ドラムに接触させて前記感光ドラムの表面に前記トナーを供給することにより前記感光ドラムの表面にトナー画像を形成させる画像形成装置において、前記現像ローラが請求項4に記載の弾性ローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−286979(P2008−286979A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131429(P2007−131429)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】