説明

弾性振動体の励振方法および振動型駆動装置

【課題】設計を容易化するとともに設計の自由度を確保でき、さらに、低コスト化を図る上で有利な振動型駆動装置を提供する。
【解決手段】振動型駆動装置10は、ベース12と、2つの支持体14と、弾性振動体16と、駆動回路18とを備えている。2つの支持体14は断面が矩形状を呈し、断面の縦横よりも大きい寸法の高さを有する柱状に形成されている。支持体14は、入力される駆動信号に応じて高さ方向に伸縮する電気−機械エネルギー変換素子から形成されている。弾性振動体16は、本体板部20と突起部22とを備えている。突起部22の上端22Aは、この突起部22の振動によって動かされる被振動体に当て付けられる。駆動回路18は、第1、第2の支持体14A、14Bにそれぞれ第1の駆動信号SA、第2の駆動信号SBを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性振動体の励振方法および振動型駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直線もしくは回転用の振動型駆動装置における弾性振動体の励振方法が提案されている。
例えば、第1の従来技術として、弾性振動体と、少なくとも2つの電極を有し、この2つの電極に同一周波数の2相の駆動電圧が印加されることで弾性体に振動を励起する電気−機械エネルギー変換素子とを備えた振動体と、弾性体と接触する被振動体とを有し、振動体は、同位相となる2相の駆動電圧の入力を受けて第1の曲げ振動モードを形成するとともに、逆位相となる2相の駆動電圧の入力を受けて第2の曲げ振動モードを形成し、2つの曲げ振動モードの組み合わせによって円または楕円運動を生じさせるものが提案されている(特許文献1参照)。
また、第2の従来技術として、角棒状の弾性体でなる基体と、この基体の一側面所定位置に一体に突設された複数個の駆動子と、前記基体に接合され交番電圧が加えられて前記基体に屈曲共振振動と長さ方向共振振動とを同時に発生させ、これら屈曲と長手振動モードの組み合わせによって円または楕円運動を生じさせるものが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−320846号公報
【特許文献2】特公平6−106028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、第1の従来技術では、円または楕円運動を弾性振動体に励振するために、2つの曲げ振動モードを組み合わせている。
通常、2つの曲げ振動モードの共振周波数は一致しない。また組み合わせる2つの曲げ振動モードも、周波数帯に対し隣接して発生する保証はない。これら2つの曲げ振動モードの共振周波数を一致させるためには弾性振動体の寸法形状、厚さ等の調整(縮退)が必要となり、弾性振動体の形状制約ならびに設計難易度が高いという不利がある。
また、第2の従来技術では、組み合わせる2つの振動モードが屈曲と長手振動モードであり、組み合わせる一方のモードを長手振動モード(縦振動)を使用しているため上記問題点に加え、概して共振周波数が高くなり実用的でない。また小型化という点でも弾性振動体の長手方向の小型化(短縮)は更なる共振周波数の増加を招き好ましくない。
さらに、第1、第2の従来技術の何れにおいても、2つの振動モードを組合せ、つまり2つの振動モードが励振されて初めて、駆動力となる円または楕円運動を生じさせることが可能となるため、駆動周波数の精密制御および周波数の制約、2つの振動モードを近傍周波数にて共振させるための弾性振動体の形状寸法制約ならびに加工寸法精度が必要となり、コストを低減する上で不利がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、設計を容易化するとともに設計の自由度を確保でき、さらに、低コスト化を図る上で有利な振動型駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するため、本発明の弾性振動体の励振方法は、電気−機械エネルギー変換素子からなる支持体を2つ並べ、前記2つの支持体の先部で弾性振動体を支持し、前記2つの支持体に同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を与えることで前記弾性振動体に円または楕円振動を行なわせるようにしたことを特徴とする。
また、本発明の振動型駆動装置は、ベースと、電気−機械エネルギー変換素子からなり前記ベースで支持された2つの支持体と、前記2つの支持体の先部で支持された弾性振動体と、前記2つの支持体に、同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を入力する制御手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明の振動型駆動装置は、ベースと、電気−機械エネルギー変換素子からなり前記ベースで支持され互いに平行して延在する2つの支持体と、前記2つの支持体の先部で支持された弾性振動体と、前記2つの支持体に、同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を入力する制御手段とを備え、前記2つの支持体の先部で支持された前記弾性振動体の箇所の間に前記2つの支持体の先部が位置する方向とは反対の方向に突出する突起部が設けられ、前記突起部に臨ませて前記支持体の延在方向と直交する面内で運動可能に支持された被振動体が設けられ、前記被振動体と前記突起部を加圧接触させる加圧手段が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の振動型駆動装置は、互いに平行に延在する被振動体と与圧レールとの間で自走するものであって、前記振動型駆動装置は、前記与圧レールに摺動可能に接触するベースと、電気−機械エネルギー変換素子からなり前記ベースで支持され互いに平行し前記被振動体および与圧レールの延在方向と直交する方向に延在する2つの支持体と、前記2つの支持体の先部で支持された弾性振動体と、前記2つの支持体に、同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を入力する制御手段とを備え、前記2つの支持体の先部で支持された前記弾性振動体の箇所の間に前記被振動体方向に突出する突起部が設けられ、前記被振動体と前記突起部を加圧接触させる加圧手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法および装置によれば、2つの支持体に同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を供給して弾性振動体を励振することにより、弾性振動体を確実に円または楕円振動させることができる。
したがって、従来のように、2つの振動モードを組み合わせる必要がなく、単一の振動モードである伸縮モードのみを用いるため、設計を容易化できるとともに設計の自由度を確保でき、弾性振動体の形状寸法や材料選定の自由度を確保する上で有利となる。
また、弾性振動体の形状や加工寸法の制約が少ないため、低コスト化を図る上でも有利となる。
また、加圧手段によって、突起部と被振動体とを加圧接触しているので、突起部の円または楕円振動による被振動体の運動を確実に行う上でより有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本実施の形態の振動型駆動装置10の斜視図である。
図1に示すように、振動型駆動装置10は、ベース12と、2つの支持体14と、弾性振動体16と、駆動回路18(特許請求の範囲の制御手段に相当)とを備えている。
ベース12は細長い矩形板状を呈し、2つの支持体14の基部が載置されて連結されるに足る面積を有している。
ベース12は例えば真鍮などの金属材料から形成されている。
【0007】
2つの支持体14は断面が矩形状を呈し、断面の縦横よりも大きい寸法の高さを有する柱状に延在して形成されている。なお、支持体14の断面形状は丸断面などでもよく矩形に限定されない。また、支持体14の高さは断面の縦横よりも大きい寸法で形成される必要はないが、断面の縦横よりも大きい寸法の高さを有する柱状に延在形成すると、振動振幅を稼ぐ上で有利となる。
2つの支持体14の基部は、ベース12の上面の延在方向の両端に接着剤で接着されて固定され、2つの支持体14がベース12に対して直交する方向にかつ平行して延在している。
支持体14は、入力される駆動信号に応じて高さ方向に伸縮する電気−機械エネルギー変換素子から形成されている。このような電気−機械エネルギー変換素子として、例えば、積層型圧電素子が使用可能である。
本実施の形態では、各支持体14は同形同大に形成され、断面の縦横の寸法は共に1.65mmであり、高さは5mmである。
以下では、説明の便宜上、2つの支持体14のうち一方を第1の支持体14A、他方を第2の支持体14Bという。
【0008】
弾性振動体16は、本体板部20と突起部22とを備えている。
本体板部20は、厚さと、厚さよりも大きい寸法の幅と、幅よりも大きい寸法の長さを有し、板状を呈している。
本体板部20は、その長さ方向に順に厚肉部、薄肉部、厚肉部、薄肉部、厚肉部が並べられて構成されている。
すなわち、本体板部20の下面には、本体板部20の長さ方向の中央部の両側箇所に凹部が形成され、この凹部により薄肉部24が形成され、薄肉部24の剛性が他の部分よりも弱くなるように図られている。
また、凹部が形成されることにより、本体板部20の下面で本体板部20の下面の長さ方向の両端に第1の凸部26が形成されている。
さらに、2つの凹部の間に、第1の凸部26よりも大きな突出高さの第2の凸部28が形成されている。
突起部22は、本体板部20の上面で長さ方向の中央から上方に突設されている。
突起部22の上端22Aは、この突起部22の振動によって動かされる被振動体に当て付けられる。
突起部22は、本実施の形態では第2の凸部28と同一の断面形状で形成され第2の凸部28と同軸上に設けられている。
【0009】
弾性振動体16は次のように2つの支持体14に取り付けられている。
第2の凸部28が2つの支持体14の上端間に挿入され、これにより、第2の凸部28の両側面と、2つの支持体14の上端寄りの側面とが当て付けられ、ベース12の長さ方向における2つの支持体14および弾性振動体16の位置決めがなされる。
また、第1の凸部26の下面が2つの支持体14の上端面に接着剤で接着されている。
本実施の形態では、弾性振動体16は真鍮で形成され、本体板部20の幅が1.7mm、第2の凸部28の下面から突起部22の先端までの高さが2mm、本体板部20の長さが4.8mm、となっている。
【0010】
駆動回路18は、第1、第2の支持体14A、14Bにそれぞれ第1の駆動信号SA、第2の駆動信号SBを供給するものであり特許請求の範囲の制御手段を構成している。
本実施の形態では、第1、第2の駆動信号SA、SBとして交流電圧が用いられる。
【0011】
上述のように構成された振動型駆動装置10の動作原理について説明する。
振動型駆動装置10を有限要素法を用いてコンピュータ解析すると、第1、第2の支持体14A、14Bを伸縮モードで振動させた場合、70kHz〜74kHz程度の周波数で励振することができる。
突起部22は、伸縮モードの振動で腹となる位置の近傍に位置しており、そのため、突起部22を伸縮方向で最も大きく変位させることができる。
ここで、第1の支持部14Aに伸縮モードの共振周波数付近の周波数の駆動信号SAを印加し、第2の支持部14Bに同一周波数でかつ同一位相の駆動信号SBを印加すると、第1、第2の支持部14A、14Bは同時に伸縮モードで励振される。
この場合、突起部22は単に上下方向に振動するのみである。
【0012】
次に、第1、第2の支持体14A、14Bに印加する駆動信号に位相角(位相差)を持たせた場合について説明する。
図2は第1、第2の駆動信号SA、SBの説明図、図3、図4は突起部22の楕円運動の軌跡の説明図である。
図2に示すように、駆動回路18により、第1の支持体14Aに供給する第1の駆動信号SAに対し、同一周波数かつ同一振幅で位相角π/2(90度)付近、または-π/2(−90度)付近となるように第2の支持体14Bに第2の駆動信号SAを供給した場合には、図3に示すように、第1、第2の支持体14A、14Bの伸縮変位によって弾性振動体16の先端部22に円または楕円振動が生じる。
図3は、伸縮モードの共振周波数付近から外れた周波数での駆動した場合について示しており、突起部22は垂直方向(Z方向)と直交しかつ第1、第2の支持体14A、14Bが並ぶ方向と平行方向(X方向)に沿って平たい楕円を描くように振動する。
この場合、突起部22を被振動体に対してめり込む垂直方向(Z方向)の振動成分が十分に得られず駆動力が確保できない。
そこで支持体14A、14Bに印加する駆動信号の周波数を上記伸縮モードの共振周波数付近に一致させると、図4に示すように弾性振動体16には伸縮モードが励振され被振動体に対してめり込む垂直方向(Z方向)の振動成分が増大することになり、安定した駆動力を発生させることができる。
更に第2の支持体14Bに印加する駆動信号の位相角をπ/2付近、または-π/2付近に設定することにより、発生する円または楕円振動の回転方向は右回りまたは左回りになる。
この時、被振動体を弾性振動体16の先端部22に加圧手段を介して加圧接触させれば、被振動体の進行方向を反転させることが可能である。
したがって、1つの振動モード(伸縮モード)を用いて駆動ならびに反転動作が可能である。
なお、使用形態によっては、第1、第2の支持体14A、14Bに印加する駆動信号の振幅は必ずしも等しくする必要はない。
【0013】
次に支持体14に励振される伸縮モードの共振周波数について述べる。
弾性振動体16の突起部22と支持体14との間に形成された薄肉部24の厚さが0.3mmである場合、コンピュータ解析によれば、伸縮モードの共振周波数は71.7kHzとなる。
薄肉部24の厚さを例えば0.2mmに変更すると、コンピュータ解析によれば、同じく伸縮モードで共振周波数を54.8kHzに下げることが可能である。
また、弾性振動体16の材料を真鋳からステンレスに変更し、薄肉部24の厚さを0.195mmにすると、コンピュータ解析によれば、伸縮モードの共振周波数をほぼ71.7kHzに一致させることも可能である。
このように、弾性振動体16の形状、材料を変更することにより、伸縮モードの共振周波数を調整することが可能となる。
なお、弾性振動体16の薄肉部24は必ずしも必要はないが、薄肉部24を形成すると薄肉部24の剛性を低くでき、したがって、弾性振動体16を励振しやすくする上で有利となる。
【0014】
本実施の形態によれば、従来と異なり、2つの支持体14に駆動信号を供給して伸縮モードで振動させて弾性振動体16を励振することにより、弾性振動体16を確実に円または楕円振動させることができる。
したがって、従来のように、2つの振動モードを組み合わせる必要がなく、単一の振動モードである伸縮モードのみを用いるため、設計を容易化できるとともに設計の自由度を確保でき、弾性振動体16の形状寸法や材料選定の自由度を確保する上で有利となる。
単一の振動モードである伸縮モードのみを用いるため、共振周波数の設定の自由度を確保できることから、共振周波数を低減することにより、支持体14に供給する駆動信号の周波数を低減させることで電力消費量を削減する上でも有利となる。
また、弾性振動体の形状や加工寸法の制約が少ないため、低コスト化を図る上でも有利となる。
また、1つの振動モード(伸縮モード)のみを用いているにも拘わらず、2つの支持体14に供給する2つの駆動信号の位相差の極性を切り換える(2つの駆動信号における位相の進み遅れを反転する)ことにより円または楕円振動の回転方向を反転できるため、設計の自由度を確保する上でより有利となる。
【0015】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は振動型駆動装置10によって被振動体を往復直線運動させる機構を構成した場合を示す。
図5は第2の実施の形態の振動型駆動装置10を示す説明図であり、以下の実施の形態では第1の実施の形態と同様の部分、部材には同一の符号を付して説明する。
図5に示すように、被振動体30は平坦な板状を呈し、長さ方向に往復直線運動可能に支持されている。
被振動体30の上面には摩擦係数の低い、例えば、樹脂材料からなる摺動面31が形成されている。
被振動体30の近傍には保持ステー32が設けられている。
保持ステー32は、被振動体30の下方に位置する底壁3202と、底壁3202から立設された縦壁3204と、縦壁3204に突設され被振動体30の上方に位置する上壁3206とを有している。
振動式駆動装置10は、第1、第2の支持体14A、14Bの高さ方向(延在方向)を被振動体30に直交する方向に向け、かつ、第1、第2の支持体14A、14Bが並べられた方向を被振動体30の長さ方向(被振動体30が往復直線運動される方向)に向けた状態で、突起部22の上端22Aが被振動体30の下面3002に当接するように、ベース12が底壁3202の上面に取着されている。
【0016】
突起部22の上方に位置する上壁3206の下面箇所には、筒状の雄ねじ部3207が突設され、貫通孔3208が上壁3206から雄ねじ部3207にわたって貫通している。
雄ねじ部3207には与圧ナット34が螺合されている。
貫通孔3208には与圧軸36が挿通され、与圧軸36の下端には、与圧軸36の軸部の外径よりも大径の円板部3602が形成されている。
与圧ナット34の下方に位置する与圧軸36の箇所にコイルばね38が巻装され、コイルばね38は、円板部3602と与圧ナット34によって挟まれている。
そして、円板部3602がコイルばね38の付勢力により突起部22方向に付勢され、円板部3602の下面の接触面3604が摺動面31に弾接し、これにより突起部22の上端22Aと被振動体30とを加圧接触させている。
与圧ナット34を回転することにより、コイルばね38による円板部3602への押圧力が調整され、被振動体30の突起部22に対する与圧が調整可能となっている。
第2の実施の形態では、コイルばね38と与圧軸36によって、被振動体30と突起部22とを加圧接触させる加圧手段が構成されている。
したがって、振動型駆動装置10の各支持部14A、14Bに第1の実施の形態と同様に駆動信号SA、SBを供給することにより、突起部22を円または楕円振動させることにより、被振動体30を往復直線運動させることができる。
【0017】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することは無論のこと、加圧手段によって、突起部22と被振動体30とを加圧接触しているので、突起部22の円または楕円振動による被振動体30の運動を確実に行う上でより有利となる。
また、支持体14に対して駆動信号を供給しない状態であっても、加圧手段によって、突起部22と被振動体30とを加圧接触しているので、被振動体30の位置が保持されるため、消費電力の低減を図る上で有利となる。
また、加圧手段によって、突起部22と被振動体30とを加圧接触しているので、突起部22が円または楕円振動を開始すると同時に被振動体30の運動も開始され、いわゆるバックラッシュがなく、被振動体30の運動の応答性を高める上で有利となる。
また、与圧軸36の接触面3604が摺動面31を介して被振動体30を突起部22向きに押圧しているので、接触面3604に生じる摩擦力を摺動面31によって軽減でき、被振動体30の運動の効率化を図る上で有利となる。
なお、第2の実施の形態では、加圧手段としてコイルばね38を用いたが、板ばね、磁気ばね、弾性体等を用いてもよいことは無論である。
また、接触面3604と摺動面31との摩擦負荷の更なる低減のため摺動潤滑剤を塗布してもよい。
あるいは、摺動面31を設ける代わりに、与圧軸36の先端にクロスローラーガイド(直動転がり軸受)等を配置すれば、加圧に伴う摩擦抵抗をさらに削減することができ、有利となる。
【0018】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は被振動体30が直線運動するのではなく、回転運動する点が第2の実施の形態と異なっている。
図6は第3の実施の形態の振動式駆動装置10の説明図である。
図6に示すように、被振動体30は扁平な円環状を呈しその厚さ方向の一方の面に端面3010が位置し、軸心L1を中心に回転可能に支持されている。
振動式駆動装置10は、第1、第2の支持体14A、14Bの高さ方向(延在方向)を端面3010に直交する方向に向け、かつ、第1、第2の支持体14A、14Bが並べられた方向を被振動体30の外周の接線方向に向けた状態で、突起部22の上端22Aが端面3010の外周近傍の箇所に当接されるように設けられている。
また、第2の実施の形態と同様の加圧手段が設けられるが、構成は第2の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
したがって、振動型駆動装置10の各支持部14A、14Bに第1の実施の形態と同様に駆動信号SA、SBを供給することにより、突起部22を円または楕円振動させることにより、被振動体30を回転運動させることができる。
第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果が奏される。
なお、振動型駆動装置10により回転駆動する被振動体30の適用例としては、
例えば、撮像装置の鏡筒において可動レンズ枠を直進案内筒とともに光軸方向に直進駆動させるために回転されるカム筒、あるいは、虹彩絞りに用いられる矢車などが考えられる。
【0019】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態は第3の実施の形態の変形例である。
図7は第4の実施の形態の振動式駆動装置10の説明図である。
図7に示すように、第4の実施の形態は、被振動体30の外周面3012に、軸心L1を通る半径方向において振動式駆動装置10の突起部22を当接させている点が第3の実施の形態と異なり、他は第3の実施の形態と同様である。
すなわち、振動式駆動装置10は、第1、第2の支持体14A、14Bの高さ方向(延在方向)を外周面3012に直交する方向に向け、かつ、第1、第2の支持体14A、14Bが並べられた方向を被振動体30の外周面3012の接線方向に向けた状態で、突起部22の上端22Aが外周面3012に当接されるように設けられている。
また、第2の実施の形態と同様の加圧手段が設けられるが、構成は第2の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
したがって、振動型駆動装置10の各支持部14A、14Bに第1の実施の形態と同様に駆動信号SA、SBを供給することにより、突起部22を円または楕円振動させることにより、被振動体30を回転運動させることができる。
第4の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果が奏される。
なお、被振動体30の外周面3012の代わりに内周面3014に振動式駆動装置10の突起部22を当接させてもよいことは無論である。
【0020】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態は、振動式駆動装置10によって被振動体40を運動させるのではなく、振動式駆動装置10自体が運動する自走式である点が第2乃至第4の実施の形態と異なっている。
図8は第5の実施の形態の振動式駆動装置10の説明図である。
図8に示すように、被振動体40および与圧レール42は平坦な板状に形成され、互いに間隔をおいて平行に延在し、被振動体40は与圧レール42に対向する内面4002を有している。
被振動体40および与圧レール42の両端には、それら被振動体40および与圧レール42を互いに近接する方向に付勢するコイルばね46が張設されている。
振動式駆動装置10のベース12の下面には、摩擦係数の低い、例えば、樹脂材料からなる摺動面44が形成されている。
振動式駆動装置10は、第1、第2の支持体14A、14Bの高さ方向(延在方向)を被振動体40および与圧レール42に直交する方向に向け、かつ、第1、第2の支持体14A、14Bが並べられた方向を被振動体40および与圧レール42の延在方向に向けた状態で被振動体40と与圧レール42の間に配置され、突起部22の上端22Aが被振動体40の内面4002に当接し、摺動面44が与圧レール42に当接している。
したがって、振動型駆動装置10の各支持部14A、14Bに第1の実施の形態と同様に駆動信号SA、SBを供給することにより、突起部22を円または楕円振動させることにより、振動型駆動装置10を被振動体40と与圧レール42との間で被振動体40に沿って運動させることができる。
第5の実施の形態では、コイルばね46と与圧レール42によって、被振動体40と突起部22とを加圧接触させる加圧手段が構成されている。
【0021】
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することは無論のこと、振動式駆動装置10自体を運動させるので、振動式駆動装置10および被振動体40のレイアウトの自由度を確保する上で有利となる。
また、加圧手段によって、突起部22と被振動体40とを加圧接触しているので、突起部22の円または楕円振動による振動型駆動装置10の運動を確実に行う上でより有利となる。
また、支持体14に対して駆動信号を供給しない状態であっても、加圧手段によって、突起部22と被振動体40とを加圧接触しているので、振動型駆動装置10の位置が保持されるため、消費電力の低減を図る上で有利となる。
また、加圧手段によって、突起部22と被振動体40とを加圧接触しているので、突起部22が円または楕円振動を開始すると同時に振動型駆動装置10の運動も開始され、いわゆるバックラッシュがなく、振動型駆動装置10の運動の応答性を高める上で有利となる。
また、与圧レール42が摺動面44を介して振動型駆動装置10を突起部22向きに押圧しているので、与圧レール42に生じる摩擦力を摺動面44によって軽減でき、振動型駆動装置10の運動の効率化を図る上で有利となる。
なお、第5の実施の形態では、加圧手段としてコイルばね46を用いたが、板ばね、磁気ばね、弾性体等を用いてもよいことは無論である。
また、摺動面44を設ける代わりに、ベース12と与圧レール42との間にクロスローラーガイド(直動転がり軸受)等を配置すれば、加圧に伴う摩擦抵抗をさらに削減することができ、有利となる。
【0022】
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。
第6の実施の形態は、振動式駆動装置10を撮像装置などの鏡筒内において可動レンズを移動させるレンズ移動機構に適用したものである。
図9は振動式駆動装置10をレンズ移動機構に適用した第6の実施の形態を示す説明図、図10は図9の拡大斜視図である。
図9に示すように、鏡筒内には、可動レンズ枠50、メインガイド軸54A、サブガイド軸54B、振動型駆動装置10が設けられている。
可動レンズ枠50はレンズ52を保持している。
可動レンズ枠50は、メインガイド軸54Aが挿通される軸受部56と、サブガイド軸54Bに係合することで可動レンズ枠50がガイド軸54Aを中心に回転することを防止する係合部58とを有している。
可動レンズ枠50は、軸受部56、係合部58がメインガイド軸54A、サブガイド軸54Bに沿って案内されることでレンズ52の光軸方向に移動可能に支持されている。
図10に示すように、軸受部56には、被振動体60が板ばね62を介して設けられている。
被振動体60は厚さと厚さより大きな寸法の幅と幅よりも大きな寸法の長さを有する矩形板状を呈している。
板ばね62は、2つの第1の係止爪6202と、第1の係止爪6202と直交する方向に延在する2つの第2の係止爪6204とを有している。
2つの第1の係止爪6202は軸受部56に係止され、被振動体60はその長手方向の両端が第2の係止爪6204で保持され、被振動体60はその長さ方向がメインガイド軸54Aの延在方向と平行している。
被振動体60は軸受部56に臨む面と反対側に位置する面が当接面6002として形成されている。
【0023】
振動式駆動装置10は、第1、第2の支持体14A、14Bの高さ方向(延在方向)を被振動体60の当接面6002に直交する方向に向け、かつ、第1、第2の支持体14A、14Bが並べられた方向を被振動体60の長さ方向(メインガイド軸54Aの延在方向)に向けた状態で、突起部22の上端22Aが当接面6002に当接されるように設けられている。
そして、被振動体60が板ばね62の付勢力により突起部22方向に付勢され、当接面6002が突起部22の上端22Aに弾接し、これにより突起部22の上端22Aと被振動体60とを加圧接触させている。
第6の実施の形態では、板ばね62によって、被振動体60と突起部22とを加圧接触させる加圧手段が構成されている。
したがって、振動型駆動装置10の各支持部14A、14Bに第1の実施の形態と同様に駆動信号SA、SBを供給することにより、突起部22を円または楕円振動させることにより、被振動体60を往復直線運動させ、可動レンズ枠50およびレンズ52を光軸方向に移動させることができる。
【0024】
第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することは無論のこと、加圧手段によって、突起部22と被振動体60とを加圧接触しているので、突起部22の円または楕円振動による被振動体60の運動を確実に行う上でより有利となる。
また、支持体14に対して駆動信号を供給しない状態であっても、加圧手段によって、突起部22と被振動体60とを加圧接触しているので、可動レンズ枠50の位置が保持されるため、消費電力の低減を図る上で有利となる。
また、加圧手段によって、突起部22と被振動体60とを加圧接触しているので、突起部22が円または楕円振動を開始すると同時に被振動体60の運動も開始され、いわゆるバックラッシュがなく、可動レンズ枠50の運動の応答性を高める上で有利となる。
なお、第6の実施の形態では、加圧手段が被振動体60を突起部22向きに付勢する場合について説明したが、加圧手段が突起部22を被振動体60向きに付勢するようにしてもよいことは無論である。
また、第6の実施の形態では、加圧手段として板ばね62を用いたが、コイルばね、磁気ばね、弾性体等を用いてもよいことは無論である。
【0025】
(第7の実施の形態)
次に、第7の実施の形態について説明する。
第7の実施の形態は第6の実施の形態の変形例である。
図11は振動式駆動装置10をレンズ移動機構に適用した第7の実施の形態を示す説明図である。
図11に示すように、第7の実施の形態では、振動型駆動装置10、被振動体60、板ばね62を、メインガイド軸54Aの軸心回りに適宜回転した位置に(本実施の形態では90度回転した位置に)配置した点が第6の実施の形態と相違しており、その他の構成は第6の実施の形態と同様である。
このような第7の実施の形態においても第6の実施の形態と同様の効果が奏される。
【0026】
(第8の実施の形態)
次に、第8の実施の形態について説明する。
第8の実施の形態は、振動式駆動装置10を撮像装置などの鏡筒内においてレンズを光軸と直交する方向に移動させるブレ補正機構に適用したものである。
図12は振動式駆動装置10をブレ補正機構に適用した第8の実施の形態を示す説明図である。
図12に示すように、鏡筒内には、固定ベース70と、可動ベース72と、レンズ74を保持するレンズ枠76と、2本の第1ガイド軸78A、78Bと、2本の第2ガイド軸80A、80Bと、第1、第2の振動型駆動装置10A、10Bとが設けられている。
説明の便宜上、レンズ74の光軸と直交する面内で互いに直交する2つの仮想軸をX軸、Y軸とする。
固定ベース70は鏡筒に固定され、可動ベース72は2本の第1ガイド軸78A、78Bを介して固定ベース70に対してX軸方向に往復直線運動可能に連結されている。
レンズ枠76は2本の第2ガイド軸80A、80Bを介して可動ベース72に対してY軸方向に往復直線移動可能に連結されている。
したがって、レンズ74はXY平面に沿って移動可能に設けられていることになる。
【0027】
可動ベース72には、X軸方向に延在する矩形板状の被振動体82Aが板ばね84Aを介して設けられている。板ばね84Aに臨む面と反対側に位置する被振動体82Aの面が当接面8202として形成されている。
第1の振動式駆動装置10Aは固定ベース70に取着され、第1の振動式駆動装置10は、第1、第2の支持体14A、14Bの高さ方向(延在方向)を被振動体82Aの当接面8202に直交する方向に向け、かつ、第1、第2の支持体14A、14Bが並べられた方向を被振動体82Aの長さ方向(X軸方向)に向けた状態で、突起部22の上端22Aが当接面8202に当接されるように設けられている。
そして、被振動体82Aが板ばね84Aの付勢力により突起部22方向に付勢され、当接面8202が突起部22の上端22Aに弾接し、これにより突起部22の上端22Aと被振動体82Aとを加圧接触させている。
【0028】
レンズ枠76には、Y軸方向に延在する矩形板状の被振動体82Bが板ばね84Bを介して設けられている。板ばね84Bに臨む面と反対側に位置する被振動体82Bの面が当接面8202として形成されている。
第2の振動式駆動装置10Bは可動ベース72に取着され、第2の振動式駆動装置10Bは、第1、第2の支持体14A、14Bの高さ方向(延在方向)を被振動体82Bの当接面8202に直交する方向に向け、かつ、第1、第2の支持体14A、14Bが並べられた方向を被振動体82Bの長さ方向(Y軸方向)に向けた状態で、突起部22の上端22Aが当接面8202に当接されるように設けられている。
そして、被振動体82Bが板ばね84Bの付勢力により突起部22方向に付勢され、当接面8202が突起部22の上端22Aに弾接し、これにより突起部22の上端22Aと被振動体82Bとを加圧接触させている。
第8の実施の形態では、板ばね84A、84Bによって、被振動体82A、82Bと突起部22とを加圧接触させる加圧手段が構成されている。
したがって、第1、第2の振動型駆動装置10A、10Bの各支持部14A、14Bに第1の実施の形態と同様に駆動信号SA、SBを供給することにより、突起部22を円または楕円振動させることにより、被振動体82A、82Bを往復直線運動させ、レンズ枠76およびレンズ74を光軸と直交する平面内に沿って移動させることができる。
【0029】
第8の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することは無論のこと、加圧手段によって、突起部22と被振動体82A、82Bとを加圧接触しているので、突起部22の円または楕円振動による被振動体82A、82Bの運動を確実に行う上でより有利となる。
また、支持体14に対して駆動信号を供給しない状態であっても、加圧手段によって、突起部22と被振動体82A、82Bとを加圧接触しているので、レンズ枠76の位置が保持されるため、消費電力の低減を図る上で有利となる。
また、加圧手段によって、突起部22と被振動体82A、82Bとを加圧接触しているので、突起部22が円または楕円振動を開始すると同時に被振動体82A、82Bの運動も開始され、いわゆるバックラッシュがなく、レンズ枠76の運動の応答性を高める上で有利となる。
なお、第8の実施の形態では、加圧手段が被振動体82A、82Bを突起部22向きに付勢する場合について説明したが、加圧手段が突起部22を被振動体82A、82B向きに付勢するようにしてもよいことは無論である。
また、第8の実施の形態では、加圧手段として板ばね84A、84Bを用いたが、コイルばね、磁気ばね、弾性体等を用いてもよいことは無論である。
また、第1、第2の振動型駆動装置10A、10B、被振動体82A、82B、板ばね84A、84Bを、それぞれガイド軸78A、80Aの軸心回りに適宜回転した位置に配置してもよい。
また、第8の実施の形態では、レンズ枠76をX軸、Y軸方向に移動させる場合について説明したが、上述と同様の構成を用いて撮像素子をX軸、Y軸方向に移動させるようにしてもよく、その場合にも、第8の実施の形態と同様の効果が奏される。
【0030】
(第9の実施の形態)
次に、第9の実施の形態について説明する。
第9の実施の形態は、振動式駆動装置10を撮像装置などの鏡筒内において光量を制限する絞り機構に適用したものである。
図13は振動式駆動装置10を絞り機構に適用した第9の実施の形態を示す説明図である。
図13に示すように、絞り機構90は、板状のベース92と、第1、第2の絞り羽根94A、94Bと、第1、第2の板ばね96A、96Bと、第1、第2の振動式駆動装置10A、10Bを備えている。
ベース92は前記鏡筒内において光軸と直交する方向に延在して設けられ、ベース92には開口9202が形成され、ベース92の表面には複数のガイド軸9204が突設され、第1、第2の絞り羽根94A、94Bに設けられたガイド溝9402がガイド軸9204に案内されることで、第1、第2の絞り羽根94A、94Bはベース92の表面上において前記光軸と直交する方向に沿って往復直線運動可能に支持されている。
開口9202上に位置する第1、第2の絞り羽根94A、94Bの箇所には、互いに向かい合うように凹状の縁部9404が形成されている。
そして、第1、第2の絞り羽根94A、94Bを互いに離間、接近する方向に運動させることで、各縁部9404の内側に形成される絞りの面積が増減するように構成されている。
【0031】
第9の実施の形態では、第1、第2の絞り羽根94A、94Bがそれぞれ第1、第2の被振動体98A、98Bを構成し、第1、第2の絞り羽根94A、94Bがベース92の表面に臨む面が第1、第2の被振動体98A、98Bの当接面9802を構成している。
第1の振動型駆動装置10Aは、ベース92に設けられた凹部9202に配設されている。
第1の振動型駆動装置10Aは、第1、第2の支持体14A、14Bの高さ方向(延在方向)を当接面9802に直交する方向に向け、かつ、第1、第2の支持体14A、14Bが並べられた方向を第1の被振動体98Aが往復直線運動する方向に向けた状態で、突起部22の上端22Aが当接面9802に当接されるように凹部9202の底壁に取着されている。第9の実施の形態では、凹部9202の底壁によって第1の振動型駆動装置10Aのベース12が兼用されている。
第1の板ばね96Aは、突起部22に臨む第1の被振動体98A箇所を突起部22に向けて付勢するようにベース92に取着され、第1の被振動体98Aが第1の板ばね96Aの付勢力により突起部22方向に付勢され、当接面9802が突起部22の上端22Aに弾接し、これにより突起部22の上端22Aと第1の被振動体98Aとを加圧接触させている。
【0032】
第2の振動型駆動装置10Bは、第1の振動型駆動装置10Aと同様に、第2の絞り羽根94Bに臨ませて設けられている。
第9の実施の形態では、第1、第2の板ばね96A、96Bによって、第1、第2の被振動体98A、98Bと突起部22とを加圧接触させる加圧手段が構成されている。
したがって、第1、第2の振動型駆動装置10A、10Bの各支持部14A、14Bに第1の実施の形態と同様に駆動信号SA、SBを供給することにより、突起部22を円または楕円振動させることにより、第1、第2の被振動体98A、98Bを往復直線運動させ、第1、第2の絞り羽根94A、94Bを離間、接近させることで、絞りの面積を増減させることができる。
【0033】
第9の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することは無論のこと、加圧手段によって、突起部22と第1、第2の被振動体98A、98Bとを加圧接触しているので、突起部22の円または楕円振動による第1、第2の被振動体98A、98Bの運動を確実に行う上でより有利となる。
また、支持体14に対して駆動信号を供給しない状態であっても、加圧手段によって、突起部22と第1、第2の被振動体98A、98Bとを加圧接触しているので、第1、第2の絞り羽根94A、94Bの位置が保持されるため、消費電力の低減を図る上で有利となる。
また、加圧手段によって、突起部22と第1、第2の被振動体98A、98Bとを加圧接触しているので、突起部22が円または楕円振動を開始すると同時に第1、第2の被振動体98A、98Bの運動も開始され、いわゆるバックラッシュがなく、第1、第2の絞り羽根94A、94Bの運動の応答性を高める上で有利となる。
なお、第9の実施の形態では、加圧手段が第1、第2の被振動体98A、98Bを突起部22向きに付勢する場合について説明したが、加圧手段が突起部22を第1、第2の被振動体98A、98B向きに付勢するようにしてもよいことは無論である。
また、第9の実施の形態では、加圧手段として第1、第2の板ばね96A、96Bを用いたが、コイルばね、磁気ばね、弾性体等を用いてもよいことは無論である。
また、第9の実施の形態では、第1、第2の絞り羽根94A、94Bを往復直線運動させることにより絞りの開閉を行なう場合について説明したが、光学フィルタが取着された被振動体を、第1、第2の絞り羽根94A、94Bと同様に、光軸と直交する方向に往復直線運動させることにより光学フィルタの出し入れ機構を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態の振動型駆動装置10の斜視図である。
【図2】第1、第2の駆動信号SA、SBの説明図である。
【図3】突起部22の楕円運動の軌跡の説明図である。
【図4】突起部22の楕円運動の軌跡の説明図である。
【図5】第2の実施の形態の振動型駆動装置10を示す説明図である。
【図6】第3の実施の形態の振動式駆動装置10の説明図である。
【図7】第4の実施の形態の振動式駆動装置10の説明図である。
【図8】第5の実施の形態の振動式駆動装置10の説明図である。
【図9】振動式駆動装置10をレンズ移動機構に適用した第6の実施の形態を示す説明図である。
【図10】図9の拡大斜視図である。
【図11】振動式駆動装置10をレンズ移動機構に適用した第7の実施の形態を示す説明図である。
【図12】振動式駆動装置10をブレ補正機構に適用した第8の実施の形態を示す説明図である。
【図13】振動式駆動装置10を絞り機構に適用した第9の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10……振動式駆動装置、12……ベース、14……支持体、16……弾性振動体、18……駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子からなる支持体を2つ並べ、
前記2つの支持体の先部で弾性振動体を支持し、
前記2つの支持体に同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を与えることで前記弾性振動体に円または楕円振動を行なわせるようにした、
ことを特徴とする弾性振動体の励振方法。
【請求項2】
前記2つの支持体は、それぞれ柱状に延在して形成され、前記2つの支持体は、それらの延在方向を平行させて前記延在方向の一方の端部がベースで支持され、前記弾性振動体はその両側部が前記2つの支持体の延在方向の他方の端部で支持されていることを特徴とする請求項1記載の弾性振動体の励振方法。
【請求項3】
前記2つの支持体は、それぞれ柱状に延在して形成され、前記支持体は前記駆動信号の入力により前記延在方向に伸縮する伸縮モードで励振されることを特徴とする請求項1記載の弾性振動体の励振方法。
【請求項4】
前記2つの支持体は、それぞれ柱状に延在して形成され、前記支持体は前記駆動信号の入力により前記延在方向に伸縮する伸縮モードで励振され、前記駆動信号の周波数は前記伸縮モードの共振周波数付近に一致することを特徴とする請求項1記載の弾性振動体の励振方法。
【請求項5】
前記位相のずれは90度であることを特徴とする請求項1記載の弾性振動体の励振方法。
【請求項6】
前記電気−機械エネルギー変換素子は積層型圧電素子であることを特徴とする請求項1記載の弾性振動体の励振方法。
【請求項7】
ベースと、
電気−機械エネルギー変換素子からなり前記ベースで支持された2つの支持体と、
前記2つの支持体の先部で支持された弾性振動体と、
前記2つの支持体に、同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を入力する制御手段と、
を備えることを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項8】
前記2つの支持体は互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項7記載の振動型駆動装置。
【請求項9】
前記位相のずれは90度であることを特徴とする請求項7記載の振動型駆動装置。
【請求項10】
前記2つの支持体は、それぞれ柱状に延在して形成され、前記2つの支持体は、それらの延在方向を平行させて前記延在方向の一方の端部が前記ベースで支持され、前記弾性振動体はその両側部が前記2つの支持体の延在方向の他方の端部で支持されていることを特徴とする請求項7記載の振動型駆動装置。
【請求項11】
前記2つの支持体は同一の断面形状でかつ同一の延在長さで形成されていることを特徴とする請求項10記載の振動型駆動装置。
【請求項12】
前記弾性振動体は、本体板部と突起部とを備え、前記本体板部は、厚さと、厚さよりも大きい寸法の幅と、幅よりも大きい寸法の長さを有して板状を呈し、前記突起部は前記本体板部の上面で前記本体板部の長さ方向の中央に設けられ、前記本体板部の裏面で前記本体板部の長さ方向の両端が前記2つの支持体で支持されていることを特徴とする請求項10記載の振動型駆動装置。
【請求項13】
前記2つの支持体で支持される前記本体板部の長さ方向の両端と前記突起部との間に位置する前記本体板部の箇所は、他の箇所によりも小さい寸法の厚さの薄肉部で構成されていることを特徴とする請求項12記載の振動型駆動装置。
【請求項14】
前記2つの支持体で支持される前記本体板部の長さ方向の両端と前記突起部との間に位置する前記本体板部の裏面箇所に凹部が設けられ、この凹部が設けられた前記本体板部の箇所に、他の箇所よりも小さい寸法の厚さの薄肉部が構成されていることを特徴とする請求項12記載の振動型駆動装置。
【請求項15】
前記本体板部の裏面で前記突起部に対応する箇所に前記突起部と反対の方向に突出する凸部が設けられ、前記凸部の先端は前記2つの支持体の間で挟持され前記2つの支持体を位置決めしていることを特徴とする請求項12記載の振動型駆動装置。
【請求項16】
前記電気−機械エネルギー変換素子は積層型圧電素子であることを特徴とする請求項7記載の振動型駆動装置。
【請求項17】
ベースと、
電気−機械エネルギー変換素子からなり前記ベースで支持され互いに平行して延在する2つの支持体と、
前記2つの支持体の先部で支持された弾性振動体と、
前記2つの支持体に、同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を入力する制御手段とを備え、
前記2つの支持体の先部で支持された前記弾性振動体の箇所の間に前記2つの支持体の先部が位置する方向とは反対の方向に突出する突起部が設けられ、
前記突起部に臨ませて前記支持体の延在方向と直交する面内で運動可能に支持された被振動体が設けられ、
前記被振動体と前記突起部を加圧接触させる加圧手段が設けられている、
ことを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項18】
前記被振動体は前記支持体の延在方向に沿った厚さを有し、
前記突起部は前記被振動体の厚さ方向の一方の面に当接し、
前記加圧手段は、前記被振動体の厚さ方向の他方の面で前記突起部が当接する箇所に対応した箇所に接触する接触面と、前記接触面を前記被振動体の厚さ方向の一方の面に加圧するばね手段とを備えることを特徴とする請求項17記載の振動型駆動装置。
【請求項19】
前記被振動体の厚さ方向の他方の面は摩擦係数の小さい材料で形成されていることを特徴とする請求項18記載の振動型駆動装置。
【請求項20】
前記電気−機械エネルギー変換素子は積層型圧電素子であることを特徴とする請求項17記載の振動型駆動装置。
【請求項21】
互いに平行に延在する被振動体と与圧レールとの間で自走する振動型駆動装置であって、
前記振動型駆動装置は、
前記与圧レールに摺動可能に接触するベースと、
電気−機械エネルギー変換素子からなり前記ベースで支持され互いに平行し前記被振動体および与圧レールの延在方向と直交する方向に延在する2つの支持体と、
前記2つの支持体の先部で支持された弾性振動体と、
前記2つの支持体に、同一の周波数で互いに位相がずれている駆動信号を入力する制御手段とを備え、
前記2つの支持体の先部で支持された前記弾性振動体の箇所の間に前記被振動体方向に突出する突起部が設けられ、
前記被振動体と前記突起部を加圧接触させる加圧手段が設けられている、
ことを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項22】
前記加圧手段は、前記被振動体および与圧レールの延在方向の両端に設けられたコイルばねで構成されていることを特徴とする請求項21記載の振動型駆動装置。
【請求項23】
前記電気−機械エネルギー変換素子は積層型圧電素子であることを特徴とする請求項21記載の振動型駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−185056(P2007−185056A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2111(P2006−2111)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】