説明

弾性波デバイスの製造方法

【課題】 複数の弾性波フィルタを含む弾性波デバイスの製造において、製造工程の簡略化及び製造コストの抑制を図ること
【解決手段】 特性の異なる弾性波デバイスが形成されたウェハ(11、21)を短冊状に分割し、それぞれの一部を選択的に他の粘着シート(60、70)に移動させる。そして、性質の異なる弾性波デバイスを含むウェハが選択的に貼り付けられた粘着シートを互いに合わせることで、短冊状のウェハを一の粘着シート(60、70)上に互い違いに整列させる。そして、この状態で全体の樹脂封止、貫通孔の形成、貫通電極の形成、及び半田ボールの形成を一括して行い、最後に全体をダイシングすることで弾性波デバイスを個片化する。これにより、予めウェハレベルパッケージの形成された圧電基板(チップ)を並べて一体化させる場合に比べ、製造工程を簡略化し、製造コストを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波デバイスは、移動体通信端末におけるフィルタ・デュプレクサ等に用いられる。弾性波デバイスには、弾性表面波を利用する弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)共振子、弾性境界波を用いた弾性境界波共振子、圧電薄膜を用いた圧電薄膜共振子(Film Bulk Acoustic Wave Resonator:FBAR)等がある。弾性波デバイスを保護するために、弾性波デバイスの形成された圧電基板を、樹脂等からなる封止部により封止する技術が知られている。また、弾性波デバイスにおける機能領域(弾性波を励振するための領域)を確保するための中空構造を有するウェハレベルパッケージ構造が知られている。
【0003】
複数の弾性波フィルタで構成されるデュプレクサやデュアルフィルタ等では、フィルタ特性の異なる弾性波デバイスが形成された圧電基板(チップ)を、同一の封止樹脂により封止して一体化する。異なるチップを一体化するためには、例えば、最初にウェハをダイシングし、得られたチップを個片化して並べ、次に並べられたチップをインターポーザ等により一体化する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−2455026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の弾性波フィルタを含む弾性波デバイスを製造するにあたり、従来のように異なるチップを個片化してから並べて一体化させる方法では、デバイスの微細化が進んだ場合に、製造コストが高くなってしまうという課題がある。また、インターポーザにより圧電基板上に中空空間が形成できるため、中空空間を有するウェハレベルパッケージ構造を予め形成するメリットがなくなってしまう。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、複数の弾性波フィルタを含む弾性波デバイスの製造において、製造工程の簡略化及び製造コストの抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1弾性波デバイスが形成されたウェハ状の第1圧電基板を、第1粘着シートの表面に貼り付け短冊状に分割する第1分割工程と、第2弾性波デバイスが形成されたウェハ状の第2圧電基板を、第2粘着シートの表面に貼り付け短冊状に分割する第2分割工程と、前記第1圧電基板に対し、前記第1粘着シートと反対側から第3粘着シートを貼り付け、分割された複数の前記第1圧電基板の一部を選択的に前記第3粘着シートに移動させる第1移動工程と、前記第2圧電基板に対し、前記第2粘着シートと反対側から第4粘着シートを貼り付け、分割された複数の前記第2圧電基板の一部を選択的に前記第4粘着シートに移動させる第2移動工程と、前記第1粘着シート上の前記第1圧電基板の表面に、前記第2圧電基板が選択的に貼り付けられた前記第4粘着シートを貼り付けることにより、前記第1粘着シート上の前記第1圧電基板を前記第4粘着シート上へと移動させる第3移動工程と、前記第2粘着シート上の前記第2弾性波デバイスの表面に、前記第1圧電基板が選択的に貼り付けられた前記第3粘着シートを貼り付けることにより、前記第2粘着シート上の前記第2圧電基板を前記第3粘着シート上へと移動させる第4移動工程と、を備えることを特徴とする弾性波デバイスの製造方法である。
【0008】
上記構成において、前記第1分割工程及び前記第2分割工程の前に、前記第1弾性波デバイス及び前記第2弾性波デバイスの上方に中空空間が形成された封止部により、前記第1圧電基板及び前記第2圧電基板を封止する工程をさらに備える構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1移動工程は、選択された複数の前記第1弾性波デバイスを、前記第1粘着シート上におけるピッチとは異なるピッチで前記第3粘着シートに貼り付ける工程を含む構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1移動工程は、前記第1粘着シートが巻き付けられた第1ローラと、前記第3粘着シートが巻き付けられた第2ローラとを、前記第1圧電基板の厚みに対応する間隔を隔てて異なる速度で回転させることにより、前記第1圧電基板の前記第3粘着シートへの貼り付けを行う構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1粘着シート、前記第2粘着シート、前記第3粘着シート、及び前記第4粘着シートには、紫外線照射により粘着力が低下する粘着シートを用い、前記第1移動工程及び前記第3移動工程は、前記第1粘着シートの裏面から紫外線を照射することにより、前記第1圧電基板を前記第1粘着シートから剥がれやすくする工程を含み、前記第2移動工程及び前記第4移動工程は、前記第2粘着シートの裏面から紫外線を照射することにより、前記第2圧電基板を前記第2粘着シートから剥がれやすくする工程を含む構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1弾性波デバイス及び前記第2弾性波デバイスの一方は送信フィルタであり、他方は受信フィルタである構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第3移動工程及び前記第4移動工程の後、前記第1圧電基板及び前記第2圧電基板に対し、前記第3粘着シート及び前記第4粘着シートと反対側から樹脂シートを裏打ちする工程と、前記樹脂シートを裏打ちする工程の後、前記第3粘着シート及び前記第4粘着シートをそれぞれ剥離する工程と、前記樹脂シートを硬化させる工程と、前記第1圧電基板及び前記第2圧電基板の両方が含まれるように、前記樹脂シートを切断して個片化する工程と、をさらに備える構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1分割工程及び前記第2分割工程の少なくとも一方は、前記第1圧電基板及び/または前記第2圧電基板のうち前記封止部が形成された側を前記第1粘着シート及び/または前記第2粘着シートに貼り付ける工程と、前記第1圧電基板及び/または前記第2圧電基板の基板側から前記第1圧電基板及び前記第2圧電基板をダイシングする工程と、を含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の弾性波フィルタを含む弾性波デバイスの製造において、製造工程の簡略化及び製造コストの抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面模式図である。
【図2】図2は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その1)である。
【図3】図3は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その2)である。
【図4】図4は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その3)である。
【図5】図5は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その4)である。
【図6】図6は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その5)である。
【図7】図7は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その6)である。
【図8】図8は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その7)である。
【図9】図9は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その8)である。
【図10】図10は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その9)である。
【図11】図11は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その10)である。
【図12】図12は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その11)である。
【図13】図13は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その1)である。
【図14】図14は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの製造方法を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面模式図である。弾性波デバイス100は、上面に第1弾性波デバイス10が形成された第1圧電基板11と、上面に第2弾性波デバイス20が形成された第2圧電基板21とが、封止部(13、23)、及び封止樹脂30により封止された構成を有する。第1圧電基板11及び第2圧電基板21の材料としては、例えばLaTiO等を用いることができる。
【0018】
第1圧電基板11の上面には、第1弾性波デバイス10と、それに接続された配線層12a及び12bが形成されている。第1圧電基板11の上面は封止部13により覆われている。封止部13は、金属層14と樹脂層15を含む。金属層14は、第1弾性波デバイス10の上方に中空空間が形成されるように、第1弾性波デバイス10の上部を覆っている。金属層14は、弾性波デバイス10のグランド電極として機能し、その一端はグランド側の配線層12aに接続されているが、信号入力側の配線層12bとは絶縁膜16により隔てられている。樹脂層15は、金属層14の全体を覆うように形成されている。樹脂層15及び金属層14を含む封止部13により、第1圧電基板11には、中空空間を有するウェハレベルパッケージ構造が形成されている。
【0019】
第2圧電基板21においても、第1圧電基板11と同様に、第2弾性波デバイス20及び配線層(22a、22b)が形成され、その上が金属層24及び樹脂層25を含む封止部23により覆われており、中空空間を有するウェハレベルパッケージ構造が形成されている。
【0020】
第1圧電基板11及び第2圧電基板21は、封止樹脂30により一体に封止されている。これにより、異なるフィルタ特性を有する第1弾性波デバイス10及び第2弾性波デバイス20を、1つのチップ内に配置することができる。例えば、第1弾性波デバイス10及び第2弾性波デバイス20のうち、一方を送信フィルタとして機能させ、他方を受信フィルタとして機能させることで、複数の弾性波フィルタから構成されるデュプレクサを実現することができる。
【0021】
封止部(13、23)の樹脂部(15、25)及び封止樹脂30には、貫通孔(17、27)が形成されており、貫通孔(17、27)の内部には貫通電極(18、28)が形成されている。貫通電極(18、28)のうち、一方はグランドとして機能する封止部(13、23)の金属層(14、24)に接続され、他方は信号入力側の配線層(12b、22b)に接続されている。貫通電極(18、28)の上部には、実装用の半田ボール(19、29)が形成されている。
【0022】
ここで、図1に示すように、第1圧電基板11(第1弾性波デバイス10)に隣接して第2圧電基板21(第2弾性波デバイス20)を配置するために、例えば複数のチップを個片化して並べ、インターポーザにより一体化する方法が考えられる。しかし、チップを個片化してから並べる方法では、デバイスの微細化が進んだ場合に、製造コストが高くなってしまうという課題がある。また、インターポーザにより圧電基板上に中空空間が形成できるため、中空空間を有するウェハレベルパッケージ構造を予め形成するメリットがなくなってしまう。以下、上記の課題を解決するための弾性波デバイスの製造方法について説明する。
【0023】
図2〜図12は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を説明するための図である。図2〜図12のうち図4及び図12は、製造工程におけるウェハの切断(ダイシング)工程の斜視図であり、それ以外の図は製造工程の断面模式図である。また、図2、図3、図6、図9については、断面模式図に対応する上面図を併せて図示している。なお、製造工程の図においては、主に圧電基板(11、21)及び封止部(13、23)を中心に図示し、その他の詳細な構成の表示は省略している。
【0024】
最初に、図2(a)及び図2(b)に示すように、上面が封止部13により封止されたウェハ状の第1圧電基板11を、ダイシングテープとして機能する第1粘着シート40の表面に貼り付ける。第1粘着シート40は、紫外線により粘着力が低下する性質を有する粘着シートであり、例えば、株式会社トーヨー・アドテックのダイシングテープ(UVシリーズ)等を用いることができる。次に、図3(a)及び図3(b)に示すように、封止部13の側から第1圧電基板11を短冊状に切断(ダイシング)する。図4に示すように、ダイシング工程は、固定用リング50の上に第1粘着シート40を配置し、上方から回転ブレード52を押し当てることにより行うことができる。図示するように、ダイシングはウェハに対し1方向から行い、切断後の第1圧電基板11が平行の短冊状になるようにする。これにより、第1圧電基板11は、複数の短冊状の圧電基板へと分割される。
【0025】
次に、図5に示すように、第1粘着シート40の裏側(第1圧電基板11の反対側)から、紫外線(UV)を照射する。第1粘着シート40は、紫外線により粘着力が低下する性質を有するため、図のように紫外線遮光マスク54を介して選択的に紫外線を照射することにより、第1粘着シート40における任意の箇所の粘着力を低下させることができる。粘着力が低下した領域を符号42で示す。
【0026】
次に、第1圧電基板11とは異なる第2圧電基板21を用いて、図2〜図5と同様の工程を実施する。第2圧電基板21は、上面に第2弾性波デバイス20(図1参照)が形成されており、その上が封止部13により覆われた構成となっている。図2〜図5と同様に、第2圧電基板21を第2粘着シート(不図示)へと貼り付けた後にダイシングを行い、第2粘着シートの裏面から紫外線を選択的に照射する。
【0027】
次に、図6(a)に示すように、第1粘着シート40の表側(第1圧電基板11側)から第3粘着シート60を押し当てる。これにより、複数の第1圧電基板11a〜11fのうち、第1粘着シート40との粘着力が低下した第1圧電基板(11b、11d、11f)が、第3粘着シート60へと移動する。第1粘着シート40との粘着力が低下していない第1圧電基板(11a、11c、11e)は、第1粘着シート40に残る。図6(b)は、移動後における第3粘着シート60の上面図であり、図6(c)は、移動後における第1粘着シート40の上面図である。
【0028】
第1圧電基板(11b、11d、11f)の移動は、例えば図7のように行うことができる。図示するように、第1ローラ56に第1粘着シート40が、第2ローラ58に第3粘着シート60がそれぞれ巻き付けられている。第1ローラ56及び第2ローラ58は、封止部13を含む第1圧電基板11の厚みに対応する間隔を隔てて、互いに逆方向に回転する。第1ローラ56と第2ローラ58との間の領域59において、第1粘着シート40上の第1圧電基板11が第3粘着シート60へと接触する。このとき、第1粘着シート40の粘着力が低下している場合は、第1圧電基板11は第3粘着シート60の粘着力により第3粘着シート60へと移動する。一方、第1粘着シート40の粘着力が低下していない場合は、第1圧電基板11は移動せずに第1粘着シート40上に残る。第3粘着シート60の粘着力が強く、第1粘着シート40の粘着力が低下していなくても第1圧電基板11が第3粘着シート60に移動してしまう場合は、第1粘着シート40の粘着力が低下していない圧電基板11が領域59に到達する際に、第1ローラ56の回転軸を上方に移動させて領域59の間隙を広げることで第1圧電基板11を確実に移動させず第1粘着シート40上に残すことができる。
【0029】
次に、第2圧電基板21が貼り付けられた第2粘着シート(不図示)についても、図6〜図7と同様の工程を実施する。すなわち、第2粘着シートの表側(第2圧電基板21側)から第4粘着シート70(図9参照)を押し当て、第2粘着シートとの粘着力の低下した第2圧電基板21を、第4粘着シート70へと選択的に移動させる。
【0030】
次に、図8に示すように、一部の第1圧電基板11が取り除かれた第1粘着シート40に対し、裏側から紫外線を照射する。図5の場合と異なり、本工程では紫外線遮光マスク54を用いずに、第1粘着シート40の全面に紫外線を照射する。その結果、第1粘着シート40の全面において粘着力の低下が生じる。一部の第2圧電基板21が取り除かれた第2粘着シート(不図示)に対しても、図8と同様の処理を行う。
【0031】
次に、図9(a)に示すように、第1粘着シート40の表側から第4粘着シート70を押し当て、第1粘着シート40上に残っていた第1圧電基板11を、第4粘着シート70へと移動させる。第1圧電基板11の移動は、図7と同様にローラを用いた方法により行うことができる。第4粘着シート70には、図6に示す工程により、予め第2圧電基板21が選択的に貼り付けられている。従って、上記移動により、図9(b)に示すように、短冊状の第1圧電基板11及び第2圧電基板21が、第4粘着シート70上に互い違いに配列される結果となる。
【0032】
第2粘着シート(不図示)に対しても、図9と同様の工程を実施する。すなわち、予め第1圧電基板11が選択的に貼り付けられた第3粘着シート60を、粘着力の低下した第2粘着シートの表側から押し当て、第2粘着シート上に残っている第2圧電基板21を第3粘着シート60へと移動させる。これにより、第3粘着シート60上においても、短冊状の第1圧電基板11及び第2圧電基板21が、図9(b)と同様に互い違いに配列される結果となる。
【0033】
次に、図10(a)に示すように、第4粘着シート70上の第1圧電基板11及び第2圧電基板21を、第5粘着シート80へと張り替える。上記張り替え工程では、最初に第4粘着シート70の裏面全面に紫外線を照射し、粘着力を低下させる。そして、第4粘着シート70の表側から、第5粘着シート80を第1圧電基板11及び第2圧電基板21に押し当てることにより、第1圧電基板11及び第2圧電基板21を第5粘着シート80へと移動させる。これにより、図10(b)に示すように、第1圧電基板11及び第2圧電基板21は、それぞれの基板側が第5粘着シート80に接触した状態となる。
【0034】
次に、図10(c)に示すように、第5粘着シート80の表側から、第1圧電基板11及び第2圧電基板21に対し、樹脂シート30を裏打ちする。これにより、第1圧電基板11及び第2圧電基板21を含む全体が樹脂封止される。次に、図10(d)に示すように、第5粘着シート80の裏側から紫外線を照射し、第5粘着シート80の粘着力を低下させて剥離する。次に、第10(e)に示すように、樹脂シート30を熱により硬化させ、封止樹脂30とする。その結果、第1圧電基板11及び第2圧電基板21は、封止樹脂30により一体化した状態となる。第3粘着シート60に対しても、上記と同様の工程を実施することで、図10(e)に示すように、封止樹脂30により一体化された第1圧電基板11及び第2圧電基板21を得ることができる。
【0035】
次に、図11(a)に示すように、第1圧電基板11及び第2圧電基板21の封止部(13、23)側から、封止樹脂30に貫通孔(17、27)を形成する。次に、図11(b)に示すように、貫通孔(17、27)の内部に貫通電極(18、28)を形成した後、図11(c)に示すように、貫通電極(18、28)の上部に実装用の半田ボール(19、29)を形成する。その後、図11(d)に示すように、封止樹脂30をダイシングして個片化する。
【0036】
図12に示すように、ダイシング工程は、封止樹脂30により一体化された第1圧電基板11及び第2圧電基板21を、ダイシングテープ90に貼り付けた上で、上方から回転ブレード52を押し当てることにより行うことができる。図4と異なり、ダイシングはウェハに対し直交する2方向から行い、封止樹脂30をデバイス単位に分割(個片化)する。個片化された封止樹脂30には、第1圧電基板11及び第2圧電基板21がそれぞれ1つずつ含まれる。以上の工程により、図1に示す弾性波デバイス100を得ることができる。
【0037】
実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法によれば、特性の異なる弾性波デバイスが形成されたウェハを短冊状に分割し、それぞれの一部を選択的に他の粘着シートに移動させる。そして、性質の異なる弾性波デバイスを含むウェハが選択的に貼り付けられた粘着シートを互いに合わせることで、短冊状のウェハを一の粘着シート上に互い違いに整列させる。そして、この状態で全体の樹脂封止、貫通孔の形成、貫通電極の形成、及び半田ボールの形成を一括して行い、最後に全体をダイシングすることで弾性波デバイスを個片化する。これにより、予めウェハレベルパッケージの形成された圧電基板(チップ)を並べて一体化させる場合に比べ、製造工程を簡略化し、製造コストを抑制することができる。
【0038】
実施例1では、図6に示すように、第1粘着シート40における圧電基板11同士のピッチ(間隔)と、第3粘着シート60における圧電基板11同士のピッチとが同じであった。しかし、図13に示すように、移動後の圧電基板11同士のピッチを、移動前のピッチと異ならせるようにしてもよい。例えば、図7のようにローラを用いて圧電基板11の移動(貼り替え)を行う場合、2つのローラの回転速度を異なるものとすることで、ピッチの変更を容易に行うことができる。第1圧電基板11を含むデバイスは、第2圧電基板21を含むデバイスとサイズ(幅)が異なる場合がある。このような場合に、ピッチの変更が可能であれば、一の圧電基板のピッチに合わせて、他の圧電基板のピッチを調節することにより、サイズの異なる2つの圧電基板を隣接して配置することが容易となる。
【0039】
実施例1では、図3に示すように、封止部13の側からダイシングを行った。この場合、ダイシング時に樹脂起因のバリが発生し、発生したバリが静電気により弾性波デバイスの表面に付着してしまう場合がある。このような場合には、図14(a)に示すように、封止部13側をダイシングテープ(第1粘着シート40)に貼り付け、図14(b)に示すように圧電基板11の側からダイシングを行うことが好ましい。これにより、バリが発生した場合でも、発生したバリはダイシングテープ40に付着するため、弾性波デバイスの表面にバリが付着することを抑制することができる。また、図10に示した第4粘着シート70から第5粘着シート80への張り替えもしなくて工程数を削減することができる。
【0040】
実施例1では、中空空間が形成されたウェハレベルパッケージ構造を有する弾性波デバイスを例に説明を行ったが、本実施例に係る製造方法は、上記構造を有する弾性波デバイスに限定されるものではない。ただし、中空空間が形成されたウェハレベルパッケージは、デバイス全体の厚みが大きくなる傾向にあるため、本実施例のように2種類の弾性波デバイスを横に並べて一体化させる場合に適している。
【0041】
実施例1では、短冊状に分割された圧電基板の選択的な移動を実現するために、紫外線により粘着力の低下する粘着シート(第1粘着シート40〜第5粘着シート80)を用いる例について説明したが、圧電基板の移動方法はこれに限定されるものではなく、種々の方法により行うことができる。ただし、上記方法によれば、圧電基板の移動をより容易に行うことができる。
【0042】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 第1弾性波デバイス
11 第1圧電基板
12、22 配線層
13、23 封止部
14、24 金属層
15、25 樹脂層
16、26 絶縁膜
17、27 貫通孔
18、28 貫通電極
19、29 半田ボール
20 第2弾性波デバイス
21 第2圧電基板
30 封止樹脂(樹脂シート)
40 第1粘着シート
50 固定リング
52 回転ブレード
54 紫外線遮光マスク
60 第3粘着シート
70 第4粘着シート
80 第5粘着シート
100 弾性波デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1弾性波デバイスが形成されたウェハ状の第1圧電基板を、第1粘着シートの表面に貼り付け短冊状に分割する第1分割工程と、
第2弾性波デバイスが形成されたウェハ状の第2圧電基板を、第2粘着シートの表面に貼り付け短冊状に分割する第2分割工程と、
前記第1圧電基板に対し、前記第1粘着シートと反対側から第3粘着シートを貼り付け、分割された複数の前記第1圧電基板の一部を選択的に前記第3粘着シートに移動させる第1移動工程と、
前記第2圧電基板に対し、前記第2粘着シートと反対側から第4粘着シートを貼り付け、分割された複数の前記第2圧電基板の一部を選択的に前記第4粘着シートに移動させる第2移動工程と、
前記第1粘着シート上の前記第1圧電基板の表面に、前記第2圧電基板が選択的に貼り付けられた前記第4粘着シートを貼り付けることにより、前記第1粘着シート上の前記第1圧電基板を前記第4粘着シート上へと移動させる第3移動工程と、
前記第2粘着シート上の前記第2弾性波デバイスの表面に、前記第1圧電基板が選択的に貼り付けられた前記第3粘着シートを貼り付けることにより、前記第2粘着シート上の前記第2圧電基板を前記第3粘着シート上へと移動させる第4移動工程と、
を備えることを特徴とする弾性波デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1分割工程及び前記第2分割工程の前に、前記第1弾性波デバイス及び前記第2弾性波デバイスの上方に中空空間が形成された封止部により、前記第1圧電基板及び前記第2圧電基板を封止する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1移動工程は、選択された複数の前記第1弾性波デバイスを、前記第1粘着シート上におけるピッチとは異なるピッチで前記第3粘着シートに貼り付ける工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1移動工程は、前記第1粘着シートが巻き付けられた第1ローラと、前記第3粘着シートが巻き付けられた第2ローラとを、前記第1圧電基板の厚みに対応する間隔を隔てて異なる速度で回転させることにより、前記第1圧電基板の前記第3粘着シートへの貼り付けを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1粘着シート、前記第2粘着シート、前記第3粘着シート、及び前記第4粘着シートには、紫外線照射により粘着力が低下する粘着シートを用い、
前記第1移動工程及び前記第3移動工程は、前記第1粘着シートの裏面から紫外線を照射することにより、前記第1圧電基板を前記第1粘着シートから剥がれやすくする工程を含み、
前記第2移動工程及び前記第4移動工程は、前記第2粘着シートの裏面から紫外線を照射することにより、前記第2圧電基板を前記第2粘着シートから剥がれやすくする工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第1弾性波デバイス及び前記第2弾性波デバイスの一方は送信フィルタであり、他方は受信フィルタであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第3移動工程及び前記第4移動工程の後、前記第1圧電基板及び前記第2圧電基板に対し、前記第3粘着シート及び前記第4粘着シートと反対側から樹脂シートを裏打ちする工程と、
前記樹脂シートを裏打ちする工程の後、前記第3粘着シート及び前記第4粘着シートをそれぞれ剥離する工程と、
前記樹脂シートを硬化させる工程と、
前記第1圧電基板及び前記第2圧電基板の両方が含まれるように、前記樹脂シートを切断して個片化する工程と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1分割工程及び前記第2分割工程の少なくとも一方は、前記第1圧電基板及び/または前記第2圧電基板のうち前記封止部が形成された側を前記第1粘着シート及び/または前記第2粘着シートに貼り付ける工程と、前記第1圧電基板及び/または前記第2圧電基板の基板側から前記第1圧電基板及び前記第2圧電基板をダイシングする工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の弾性波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−248916(P2012−248916A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116552(P2011−116552)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】