説明

弾性波デバイス及びその製造方法

【課題】配線パターンの立体交差部分で発生する寄生容量を小さくすることができ、製造が容易である弾性波デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】弾性波デバイスは、(a)圧電基板12と、(b)圧電基板12の主面12aに形成されたIDTと、(c)IDTに接続された配線パターンとを備える。配線パターンは、(i)圧電基板12の主面12aに形成された主要部14a,16cと、(ii)主要部16cに接続され、かつ主要部の一部分である被交差部分14aとの間に空間15を設けて被交差部分14aを跨ぐ交差部16a,16bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波デバイス及びその製造方法に関し、詳しくは、圧電基板を伝搬する弾性表面波又は弾性境界波を利用する弾性波デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電性を有する圧電基板上に、弾性表面波又は弾性境界波を励振する櫛形電極(IDT;Interdigital Transducer)や、IDTに接続された配線パターンが形成されている弾性波デバイスにおいて、配線パターンを圧電基板上で立体交差させる場合がある。
【0003】
例えば特許文献1には、SAW(弾性表面波)フィルタにおいて、引き回し配線部分を、絶縁性を有する樹脂を介して立体交差させた、いわゆる立体配線構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、基板上のポスト土台電極にポストを形成し、ポスト上に橋渡しされるようにエアブリッジ配線の本体が形成されたスパイラルインダクタが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、エアブリッジ支持用レジストを、外周部が流れて半球形状になるように、高温でベーク処理し、次いで、半球形状のエアブリッジ支持用レジストの上に金属線をパターニングし、リフトオフすることによって、図10の断面図に示すように、基体120に形成された下部金属線122を跨ぐアーチ型のエアブリッジ型配線136を集積回路上に形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4222197号公報
【特許文献2】特許第3267049号公報
【特許文献3】特開平10−65006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配線パターンの立体交差部分で発生する寄生容量が、帯域外減衰特性などに悪影響を及ぼすことがある。このような場合に、特許文献1のように樹脂を介する立体配線構造では、樹脂の誘電率によって比較的大きな寄生容量が発生する。また、寄生容量を小さくするには樹脂を厚くすればよいが、工法上の難易度が上がる。
【0008】
特許文献2のような方法でエアブリッジ配線を形成する場合、フォトリソ/成膜/エッチング/めっきを複数回行う必要があるため、工程が複雑になる。
【0009】
特許文献3のような方法でエアブリッジ配線を形成する場合、エアブリッジ支持用レジストを高温でベーク処理するので、レジスト剥離が難しくなる。例えば、アミン系有機溶剤を用いることでレジスト剥離性は向上するが、SAWフィルタなどの場合、電極に用いているAlがこの溶剤でダメージを受けるので、特性劣化につながる。さらに、エアブリッジ支持用レジストを高温でベーク処理する際、レジスト形状(寸法)が変化することになるので、工程設計や電極/配線設計が難しくなる。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑み、配線パターンの立体交差部分で発生する寄生容量を小さくすることができ、製造が容易である弾性波デバイス及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した弾性波デバイスを提供する。
【0012】
弾性波デバイスは、(a)圧電基板と、(b)前記圧電基板の主面に形成されたIDTと、(c)前記IDTに接続された配線パターンとを備える。前記配線パターンは、(i)前記圧電基板の前記主面に形成された主要部と、(ii)前記主要部に接続され、かつ前記主要部の一部分である被交差部分との間に空間を設けて前記被交差部分を跨ぐ交差部とを有する。
【0013】
上記構成において、交差部は、空間を介して主要部の被交差部分と立体交差する。空気やガスを含み、あるいは真空である空間を介して配線パターンが立体交差するため、樹脂を介して立体交差する場合よりも、配線パターンの立体交差部分で発生する寄生容量を小さくすることができる。
【0014】
好ましくは、弾性波デバイスは、前記圧電基板の主面に形成された入力パッドと、出力パッドと、接地パッドとを備える。前記配線パターンの前記被交差部分は、前記IDTと同じ1層目配線からなる。前記配線パターンの前記交差部は、前記入力パッド、前記出力パッド及び前記接地パッドと同じ2層目配線からなる。
【0015】
好ましくは、弾性波デバイスは、前記IDTにより励振され、前記圧電基板の前記主面に沿って伝搬する弾性表面波を利用する弾性表面波デバイスである。
【0016】
上記構成の弾性波デバイスは、以下の方法によって、容易に製造することができる。
【0017】
すなわち、上記構成の弾性波デバイスを製造する弾性波デバイスの製造方法において、前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を含む部分を形成した後、前記配線パターンのうち前記交差部を含む部分をリフトオフ工法により形成する。
【0018】
この場合、立体交差する配線パターンを簡単な工程で形成することができる。
【0019】
また、上記構成の弾性波デバイスは、以下の方法によって、容易に製造することができる。
【0020】
すなわち、上記構成の弾性波デバイスを製造する弾性波デバイスの製造方法において、前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を含む1層目配線を形成した後、前記配線パターンのうち前記交差部を含む2層目配線を形成する。
【0021】
この場合、立体交差する配線パターンを簡単な工程で形成することができる。
【0022】
好ましくは、前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を形成した後、かつ前記配線パターンのうち前記交差部を形成する前に、前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンの前記主要部の前記被交差部分を覆うエアブリッジ支持用レジストを、デフォーカス露光により順テーパー形状に形成する。
【0023】
この場合、配線パターンの交差部は、配線パターンの主要部分の被交差部分を覆うエアブリッジ支持用レジストに沿って形成し、圧電基板の主面に形成された配線パターンの主要部に接続することができる。順テーパー形状のエアブリッジ支持用レジストを用いると、配線パターンの交差部と主要部との接続部分において角度変化が小さくなるため、交差部と主要部との接続部分での配線パターンの断線を防止できる。
【0024】
好ましくは、前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を形成した後、かつ前記配線パターンの前記交差部を形成する前に、前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンの前記主要部の前記被交差部分を覆うエアブリッジ支持用レジストを形成した後、該エアブリッジ支持用レジストについて、UVキュアと、ポストベーク処理を行う。
【0025】
この場合、エアブリッジ支持用レジストと、2層目配線を形成するためのレジストとのミキシングを防止できる。
【0026】
好ましくは、前記エアブリッジ支持用レジストについて、100℃以上、130℃以下で、前記ポストベーク処理を行う。
【0027】
この場合、一般的なレジストを用いて、エアブリッジ支持用レジストを形成し、ポストベーク処理を行い、2層目配線を形成するためのレジストとのミキシングを防止できる。この温度条件であれば、エアブリッジ支持用レジストの形状を維持でき、エアブリッジ支持用レジストの剥離にも支障が出ない。
【0028】
好ましくは、前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を形成した後、かつ前記配線パターンの前記交差部を形成する前に、前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンの前記主要部の前記被交差部分を覆うエアブリッジ支持用レジストを形成した後、前記エアブリッジ支持用レジストの少なくとも1辺と重なるように、2層目配線を形成するための2層目配線形成用レジストを形成する。
【0029】
エアブリッジ支持用レジストには、配線パターンの交差部を含む部分を形成するための2層目配線用レジストが重なっているため、2層目配線用レジストとエアブリッジ支持用レジストとを同時に剥離できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、配線パターンの立体交差部分で発生する寄生容量を小さくすることができ、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】弾性波デバイスの平面図である。(実施例1)
【図2】弾性波デバイスの製造工程を示す要部平面図である。(実施例1)
【図3】弾性波デバイスの製造工程を示す要部平面図である。(実施例1)
【図4】弾性波デバイスの製造工程を示す要部断面図である。(実施例1)
【図5】弾性波デバイスの製造工程を示す要部断面図である。(実施例1)
【図6】弾性波デバイスの製造工程を示す要部断面図である。(実施例1)
【図7】弾性波デバイスの製造工程を示す要部断面図である。(実施例1)
【図8】弾性波デバイスの製造工程を示す要部断面図である。(実施例1)
【図9】弾性波デバイスの製造工程を示す要部断面図である。(説明例)
【図10】エアブリッジを示す断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
<実施例1> 実施例1の弾性波デバイス10について、図1〜図9を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、実施例1の弾性波デバイス10の構成を模式的に示す平面図である。図1に示すように、弾性波デバイス10は、圧電基板12の主面12aに、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ42,44と、配線パターン60,62,64,66,68,69と、入力パッド50と、出力パッド52,54と、接地パッド56とが形成されている。
【0035】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ42,44は、弾性表面波の伝搬方向に沿って配置された3つのIDT42a,42b,42c;44a,44b,44cと、IDT42a,42b,42c;44a,44b,44cの両側を挟み込むように配置された反射器42s,42t;44s,44tとを含む。IDT42a,42b,42c;44a,44b,44cは、それぞれ互いに間挿し合う複数本の電極指を有する一対の櫛形電極である。
【0036】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ42,44は、両側のIDT42a,42c;44a,44cの一方の電極同士が、それぞれ、配線パターン64,66によって、縦続接続されている。
【0037】
一方の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ42の中央のIDT42bの一方の電極は、配線パターン62を介して、入力パッド50に接続されている。他方の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ44の中央のIDT44bの両方の電極は、それぞれ、配線パターン68,69を介して、出力パッド52,54に接続されている。
【0038】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ42,44の両側のIDT42a,42c;44a,44cは極性が反転するように構成されており、入力パッド50に不平衡信号が入力されると、出力パッド52,54に平衡信号が出力される。
【0039】
一方の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ42のIDT42a,42b,42cの他方の電極と、他方の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ44の両側のIDT44a,44cの他方の電極とは、配線パターン60を介して、接地パッド56に接続され、接地される。
【0040】
接地パッド56に接続される配線パターン60は、被交差部分60a,60b,60cにおいて、配線パターン62,64,69と交差している。配線パターン62,64,69は、接地パッド56に接続される配線パターン60の被交差部分60a,60b,60cとの間に空間を設けて被交差部分60a,60b,60cを跨ぐ交差部を含む。
【0041】
接地パッド56に接続される配線パターン60と交差する配線パターン62,64,69以外の配線パターン60,66,68、すなわち、配線パターンのうち主要部の被交差部分を含む部分と、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ42,44は、1層目配線によって形成される。接地パッド56に接続される配線パターン60と交差する配線パターン62,64,64、すなわち、配線パターンのうち交差部を含む部分と、パッド50,52,54,56は、2層目配線によって形成される。
【0042】
次に、弾性波デバイス10の製造工程について、配線パターンの立体交差の形成を中心に、図2〜図8を参照しながら説明する。図2及び図3は、弾性波デバイス10の製造工程を示す要部平面図である。図4〜図8は、弾性波デバイス10の製造工程を示す要部断面図である。図4は、図2(b)の線X−Xに沿って切断した断面図である。図5は、図2(c)の線Y−Yに沿って切断した断面図である。図6は、図3(d)の線Y−Yに沿って切断した断面図である。図7は、図3(e)の線X−Xに沿って切断した断面図である。図8は、図3(e)の線Y−Yに沿って切断した断面図である。
【0043】
まず、図2(a)に示すように、圧電基板12の主面12aに、1層目配線14を、リフトオフ工法で形成する。1層目配線14によって、IDTと、パッドと、配線パターンのうち主要部の被交差部分を含む部分とが形成される。
【0044】
例えば、LiTaOの圧電基板12の主面12aにレジストを塗布、露光、現像してマスクパターンを形成し、Al、Cuの順に成膜した後、マスクパターンとマスクパターン上のAl/Cu膜を除去することにより、Al/Cuの1層目配線14を形成する。
【0045】
次いで、図2(b)及び図4に示すように、1層目配線14のうち、2層目配線が立体配線で跨ぐ被交差部分14aの上に、エアブリッジ支持用レジスト20を形成する。エアブリッジ支持用レジスト20は、1層目配線14の被交差部分14aの外側にはみ出るように、被交差部分14aよりも大きく形成する。エアブリッジ支持用レジスト20は、デフォーカス露光により、平らな上面20aと斜面20bとを有する順テーパー形状に形成する。
【0046】
例えば、レジストにはポジレジストを用い、レジストの厚みは10μmとする。縮小投影露光装置を用いて、露光波長は365nm、露光量は800mJ/cmフォーカスは10μmの条件で、デフォーカス露光する。
【0047】
エアブリッジ支持用レジスト20は、形成後に、UVキュアと、ポストベーク処理を行う。これにより、後の工程でエアブリッジ支持用レジスト20の上に形成する2層目配線用レジスト22とのミキシングを防止できる。
【0048】
一般的なレジストを用いて、エアブリッジ支持用レジスト20を形成する場合、100℃以上、130℃以下でポストベーク処理を行うと、後の工程でエアブリッジ支持用レジスト20の上に形成するレジストとのミキシングを防止できる。この温度条件であれば、エアブリッジ支持用レジストの形状を維持でき、エアブリッジ支持用レジストの剥離にも支障が出ない。
【0049】
例えば、露光波長365nm、露光量2000mJ/cmの条件でUVキュアを施し、さらに循環式オーブンで120℃、30分の条件で、ポストベーク処理を行う。
【0050】
次いで、図2(c)及び図5に示すように、2層目配線を形成するための2層目配線用レジスト22を形成する。2層目配線用レジスト22は、逆テーパー形状に形成する。すなわち、2層目配線用レジスト22の上面22aに形成された開口22cから離れて深くなるほど、溝面22bの間隔が広がるように形成する。
【0051】
例えば、レジストにはネガレジストを用い、公知のイメージリバース法などにより、逆テーパー状にパターニングする。
【0052】
このとき、図5において鎖線30,32で示すように、2層目配線用レジスト22がエアブリッジ支持用レジスト20の上面20aに重なるように形成する。
【0053】
次いで、図3(d)及び図6に示すように、2層目配線16s,16tを蒸着する。2層目配線用レジスト22の上面22aには2層目配線16tが形成され、エアブリッジ支持用レジスト20の上面20aには、2層目配線用レジスト22の開口22cの幅に応じて2層目配線16sが形成される。2層目配線用レジスト22が逆テーパー状であるため、図6に示すように、エアブリッジ支持用レジスト20の上面20aのうち、2層目配線用レジスト22と2層目配線16sとの間の部分20xを露出させることができる。
【0054】
例えば、Ti、Alの順に蒸着することによって、2層目配線16s,16tを形成する。
【0055】
次いで、レジスト剥離液に浸漬し、リフトオフと、エアブリッジ用支持レジストの剥離を同時に行う。
【0056】
すなわち、2層目配線用レジスト22は、2層目配線が蒸着されていない溝面22bにレジスト剥離液が触れることにより、除去される。このとき、2層目配線用レジスト22の上面22aに蒸着された2層目配線16tも除去される。エアブリッジ支持用レジスト20の上面20aは、2層目配線用レジスト22と2層目配線16sとの間の露出部分20xにレジスト剥離液が触れることにより、除去される。
【0057】
これにより、図3(e)、図7及び図8に示すように、1層目配線14により形成された配線パターンの被交差部分14aと、2層目配線16sにより形成された配線パターンの交差部16とが、空間15を介して立体的に交差するエアブリッジの立体配線構造を形成することができる。
【0058】
交差部16は、エアブリッジ支持用レジスト20の上面20aに沿って平らに形成された対向部分16aと、エアブリッジ支持用レジスト20の斜面20bに沿って形成された両端部分16bとを含む。交差部16の両端部分16bは、2層目配線16sのうち圧電基板12の主面12a上に形成された部分16c、すなわち配線パターンの主要部と接続されている。
【0059】
交差部16には、基本的に外力が加わらないので、アーチ型にしなくても問題はない。
【0060】
エアブリッジ支持用レジスト20を順テーパー形状にすることで、交差部16の両端部分16bと2層目配線16sのうち圧電基板12の主面12a上に形成された部分16cとの接続部分において角度変化が小さくなるため、接続部分での配線パターンの断線を防止できる。
【0061】
エアブリッジ用支持レジスト20と2層目配線用レジスト22とを同時に剥離できるようにするためには、2層目配線用レジスト22がエアブリッジ支持用レジスト20の少なくとも1辺に重なっていればよい。
【0062】
例えば図9(a)の要部断面図に示すように、2層目配線用レジスト22xを、エアブリッジ支持用レジスト20から離して形成すると、図9(b)の要部断面図に示すように、2層目配線16p,16qを蒸着したとき、エアブリッジ支持用レジスト20の上面20a及び斜面20bが2層目配線16qで完全に覆われてしまう。この場合、エアブリッジ支持用レジスト20は剥離液と接触できないため、図9(c)の要部断面図に示すように、2層目配線用レジスト22についてはリフトオフできても、エアブリッジ支持用レジスト20は剥離できずに残る。
【0063】
2層目配線用レジスト22が、エアブリッジ支持用レジスト20の少なくとも1辺に重なっていれば、エアブリッジ支持用レジスト20を剥離して、エアブリッジを形成することができる。
【0064】
2層目配線用レジスト22は、エアブリッジ支持用レジスト20の斜面20bのみに重なっていてもよい。
【0065】
以上の工程により弾性波デバイス10を形成すると、エアブリッジの立体配線構造は、樹脂よりも誘電率が小さい空気やガスを含む空間15、あるいは真空の空間15を介して配線パターンが交差するため、樹脂を介して交差する場合よりも、配線パターンの立体交差部分で発生する寄生容量を小さくすることができる。
【0066】
配線パターンが樹脂を介して交差する場合には、300℃程度の高温処理が必要であるが、それに不要になるため、デバイス構造/材料の選択肢が増える。
【0067】
弾性波デバイス10のエアブリッジの立体配線構造は、リフトオフ工法で形成し、さらに2層目配線と同時に形成するため、製造工程が簡素である。
【0068】
エアブリッジ用支持レジスト20を高温処理しないので、その後のレジスト剥離が容易である。さらに、エアブリッジ用支持レジスト20は、基本的にフォトマスク形状がそのまま転写され、レジスト形状も変化しないので、電極及び配線の設計が複雑にならない。
【0069】
<まとめ> 以上に説明したように、エアブリッジ支持用レジスト20と2層目配線用レジスト22を用い、リフトオフ工法によって弾性波デバイス10を作製すると、配線パターンの立体交差部分で発生する寄生容量を小さくすることができ、製造が容易である。
【0070】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0071】
例えば、本発明は、弾性表面波を利用する弾性波デバイスに限らず、弾性境界波を利用する弾性波デバイスについても適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 弾性波デバイス
12 圧電基板
12a 主面
14 1層目配線
14a 被交差部分
15 空間
16 交差部
16a 対向部分
16p,16q,16s,16t 2層目配線
20 エアブリッジ支持用レジスト
20a 上面
20b 斜面
20x 露出部分
22 2層目配線用レジスト
22a 上面
22b 溝面
22c 開口
42 縦結合共振子型弾性表面波フィルタ
42a,42b,42c IDT
42s,42t 反射器
44 縦結合共振子型弾性表面波フィルタ
44a,44b,44c IDT
44s,44t 反射器
50 入力パッド
52,54 出力パッド
56 接地パッド
60 配線パターン(主要部)
60a,60b,60c 被交差部分
62 配線パターン(交差部)
64 配線パターン(交差部)
66 配線パターン(主要部)
68 配線パターン(主要部)
69 配線パターン(交差部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の主面に形成されたIDTと、
前記IDTに接続された配線パターンと、
を備え、
前記配線パターンは、前記圧電基板の前記主面に形成された主要部と、前記主要部に接続され、かつ前記主要部の一部分である被交差部分との間に空間を設けて前記被交差部分を跨ぐ交差部とを有することを特徴とする、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記圧電基板の主面に形成された入力パッドと、出力パッドと、接地パッドとを備え、
前記配線パターンの前記被交差部分は前記IDTと同じ1層目配線からなり、
記配線パターンの前記交差部は前記入力パッド、前記出力パッド及び前記接地パッドと同じ2層目配線からなることを特徴とする、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記IDTにより励振され、前記圧電基板の前記主面に沿って伝搬する弾性表面波を利用する弾性表面波デバイスであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の弾性波デバイスを製造する弾性波デバイスの製造方法であって、
前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を含む部分を形成した後、前記配線パターンのうち前記交差部を含む部分をリフトオフ工法により形成することを特徴とする、弾性波デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の弾性波デバイスを製造する弾性波デバイスの製造方法であって、
前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を含む1層目配線を形成した後、前記配線パターンのうち前記交差部を含む2層目配線を形成することを特徴とする、弾性波デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を形成した後、かつ前記配線パターンのうち前記交差部を形成する前に、
前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンの前記主要部の前記被交差部分を覆うエアブリッジ支持用レジストを、デフォーカス露光により順テーパー形状に形成することを特徴とする、請求項4又は5に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を形成した後、かつ前記配線パターンの前記交差部を形成する前に、
前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンの前記主要部の前記被交差部分を覆うエアブリッジ支持用レジストを形成した後、該エアブリッジ支持用レジストについて、UVキュアと、ポストベーク処理を行うことを特徴とする、請求項4又は5に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記エアブリッジ支持用レジストについて、100℃以上、130℃以下で、前記ポストベーク処理を行うことを特徴とする、請求項7に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記配線パターンのうち前記主要部の前記被交差部分を形成した後、かつ前記配線パターンの前記交差部を形成する前に、
前記圧電基板の前記主面に、前記配線パターンの前記主要部の前記被交差部分を覆うエアブリッジ支持用レジストを形成した後、前記エアブリッジ支持用レジストの少なくとも1辺と重なるように、2層目配線を形成するための2層目配線形成用レジストを形成することを特徴とする、請求項4又は5に記載の弾性波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−9989(P2012−9989A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142391(P2010−142391)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】