弾性波デバイス
【課題】少ない工程で簡単に弾性波デバイスの周波数特性を調整する。
【解決手段】、弾性波デバイスは、圧電性を有する圧電基板2と、圧電基板2に設けられた複数の電極指を有するくし型電極3と、くし型電極3の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質5とを備える。この弾性波デバイスは、電極指および電極指間のスペースが圧電基板2上で占める励起領域において、調整媒質5により他の部分より厚みが大きくなる領域の面積Tにより、周波数特性が調整されて形成される。
【解決手段】、弾性波デバイスは、圧電性を有する圧電基板2と、圧電基板2に設けられた複数の電極指を有するくし型電極3と、くし型電極3の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質5とを備える。この弾性波デバイスは、電極指および電極指間のスペースが圧電基板2上で占める励起領域において、調整媒質5により他の部分より厚みが大きくなる領域の面積Tにより、周波数特性が調整されて形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、弾性表面波デバイスや弾性境界波デバイス等の弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波を応用した装置の一つとして、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave )デバイスが知られている。このSAWデバイスは、例えば携帯電話に代表される45MHz〜2GHzの周波数帯における無線信号を処理する各種回路に用いられる。各種回路の例として、送信バンドパスフィルタ、受信バンドパスフィルタ、局発フィルタ、アンテナ共用器、IFフィルタ、FM変調器等が挙げられる。
【0003】
近年、携帯電話の高性能化、小型化に伴い、帯域外での高抑圧化、温度安定性の向上など諸特性の改善やデバイスサイズの小型化が求められている。温度安定性の向上には、圧電性基板上においてくし型電極上にSiO2等などの誘電体を形成する手法が開発されている。また、前記誘電体上に音速の速い別の誘電体を形成することにより、前記誘電体の境界と圧電基板の表面との間にエネルギーが閉じこめる境界波デバイス等が開発されている。これにより、デバイスの小型化が図られている。
【0004】
これらすべての弾性波デバイスにおいて、製造ばらつきによる周波数ばらつきが共通の問題となる場合がある。この対策として、様々な周波数調整を行う方法が開示されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
一例として、くし型電極、反射器及び圧電基板の上にSiNの膜をプラズマCVD等の方法で成膜することにより周波数調整を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、SiO2層上にSiN層を成膜し、物理的なエッチングなどによりSiN層の膜厚を薄くしたり、スパッタリングで成膜してSiN層の膜厚を厚くしたりすることにより、周波数調整を行うことが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、第1の媒質と第2の媒質の境界にIDT電極が設けられた境界波デバイスにおいて、第2の媒質の厚さを変えることで周波数を調整することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平2−301210
【特許文献2】国際公開第2005/083881号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/093949号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、周波数調整方法として、電極を覆う媒質を深さ方向にエッチングして媒質の膜厚を調整することで、周波数特性を調整する方法がある。この方法を用いて、例えば、1つのウエハ上に形成された複数の弾性波デバイス間の周波数特性のばらつきを所望の範囲内に収めるには、ウエハ上の弾性波デバイスの一部を選択し、選択した部分の媒質の膜厚を調整する必要がある。例えば、ウエハ上の一部をマスクすることで、媒質の上部面内の一部分を深さ方向にエッチングし、媒質の膜厚を調整する必要がある。このようにして、例えば、チップ毎に異なる量のエッチングが行われる。この場合、ウエハ面内の周波数分布を所望の範囲内に収めるために、チップ毎にマスクを行い、場合によっては数回成膜、エッチングを繰り返す必要がある。その結果、プロセス工程が多くなる等の弊害が生じる。
【0008】
ゆえに、本発明は、少ない工程で簡単に弾性波デバイスの周波数特性を調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願開示の弾性波デバイスは、圧電性を有する圧電基板と、圧電基板に設けられた複数の電極指を有するくし型電極と、前記くし型電極の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質とを備え、前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において、前記調整媒質により他の部分より厚みが大きくなる領域の面積Tにより、周波数特性が調整されて形成される。
【0010】
上記構成において、圧電基板上に形成される弾性波デバイスの周波数特性は、電極指の励起領域において調整媒質によって厚みが大きくなっている領域の面積Tにより、調整される。これにより、調整媒質における弾性波エネルギーの分布量および分布する体積を、調整媒質の膜厚を変えずに(同一膜厚で)面積を変えることで調整できる。そのため、調整媒質の厚みを調整する必要がないので、少ない工程で周波数特性が調整された弾性波デバイスの提供が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本願明細書の開示によれば、少ない工程で簡単に弾性波デバイスの周波数特性を調整することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一つの実施形態は、前記圧電基板上に形成された複数の弾性波デバイスであって、前記複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整されている態様とすることができる。
【0013】
例えば、同一の圧電基板上に複数のくし型電極を形成することにより、所望の周波数(共振周波数および/または反共振周波数)の弾性波デバイスを複数作成する際に、圧電基板上の場所によって、弾性波デバイスの周波数特性にばらつきが生じることがある。この場合、圧電基板上の各弾性波デバイスの周波数分布に対応して、弾性波デバイスそれぞれに合った面積Tの調整媒質を形成することで、各弾性波デバイスの周波数特性を調整できる。この場合、調整媒質のパターニング(一回の成膜)で圧電基板上のすべての弾性波デバイスの調整が可能である。そのため、調整媒質の膜厚を変化させて調整する場合に比べて、成膜工程が少なくなる。すなわち、圧電基板上の弾性波デバイス間で、前記面積Tが異なるように調整媒質を形成することで、少ない工程での周波数特性の調整が可能になる。
【0014】
本発明の一実施形態は、前記圧電基板はウエハであり、ウエハにおける複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスの前記面積Tが調整されている態様であってもよい。これにより、ウエハ内で周波数のばらつきが少ない弾性波デバイスが得られる。
【0015】
本発明の一実施形態は、前記圧電基板上に設けられる複数の前記くし型電極により形成される複数の共振器を含むフィルタを構成する前記弾性波デバイスであって、前記フィルタを構成する前記複数の共振器のうち一部の共振器に、前記調整媒質が設けられる態様とすることができる。フィルタを構成する共振器の一部に調整媒質を設けることにより、フィルタ特性を細かく調整することが可能になる。
【0016】
本発明の実施形態における弾性波デバイスの製造方法は、圧電基板上に、複数の電極指を有するくし型電極を形成する工程と、前記くし型電極により形成される弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数を測定する工程と、前記測定された共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近づくように、少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質を設ける工程とを有し、前記調整媒質は、前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において前記調整媒質により弾性波デバイスの厚みが他の部分より大きくなる領域の面積Tが調整されることにより、前記弾性波デバイスの周波数特性が調整されて形成されることを特徴とする。
【0017】
(第1の実施形態)
[弾性波デバイスの構成]
図1Aは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図1Bは、図1Aのa−a´線断面図である。
【0018】
図1Aおよび図1Bに示す弾性波デバイスでは、圧電基板2上に複数の電極指を有するくし型電極3が設けられている。くし型電極3の両側には反射器3a、3bが設けられている。圧電基板2は、例えば、回転Y板のLN(LiNbO3)基板である。くし型電極3は、弾性波を励起する電極である。入力用および出力用の2つのくし型電極3が向きあって、それぞれの電極指が互い違いに並ぶように配置される。くし型電極3の電極指と、電極指間のスペースとが圧電基板2上で占める領域が励起領域となる。くし型電極3は、IDT電極またはすだれ電極とも呼ばれる。くし型電極3および反射器3a、3bは、例えば、Al、Ti、Cu、Au、Ni、Cr、TaまたはW等の金属で形成される。
【0019】
くし型電極3を覆うようにSiO2膜4が設けられ、SiO2膜4上には、周波数調整膜(調整媒質)5が設けられている。SiO2膜4の音速は、圧電基板2より遅い。そのため、弾性波は、圧電基板2とSiO2膜4との界面に集中して伝播する。これにより、弾性波デバイスは、共振器として動作する。
【0020】
周波数調整膜(調整媒質)5は、圧電基板2上の媒質、すなわちSiO2膜4とは、音速(音響特性)の異なる物質で構成される。例えば、周波数調整膜5として、Al2O3、またはSiN、SiC、DLC等を用いることができる。あるいは、SiO2膜4とは密度または硬さ(弾性係数)が異なるSiO2で周波数調整膜5を形成することもできる。
【0021】
周波数調整膜5とSiO2膜4とが接する面積を調整することにより、弾性波デバイスの共振周波数が調整される。すなわち、くし型電極3による励起領域において厚みが他の部分よりも大きくなっている面積により共振周波数が調整される。これは、弾性波のエネルギーが分布している部分に音速の異なった媒質を形成することで、弾性波の音速を変化させ、調整を行うものである。ここでは、周波数調整膜5の面積により弾性波エネルギーが分布する領域の体積が決まり、弾性波デバイスの周波数特性の調整量が決まる。
【0022】
図1Aおよび図1Bに示す例では、周波数調整膜5(Al2O3)とSiO2膜とが接する面積は全体の17%であり、周波数調整膜5の厚みは50nmである。図2Aおよび2Bは、周波数調整膜5とSiO2膜との接する面積が全体の50%である場合の構成を示す平面図(図2A)および断面図(図2B)である。図3Aおよび3Bは、周波数調整膜5とSiO2膜との接する面積が全体の75%である場合の構成を示す平面図(図3A)および断面図(図3B)である。ここでも、周波数調整膜5の厚みは50nmである。
【0023】
図4は、Al2O3で形成される周波数調整膜5とSiO2膜とが接する面積(0%、17%、50%および75%)とアドミッタンス特性との関係を示すグラフである(周波数調整膜5の厚みは50nm)。図5は、Al2O3で形成される周波数調整膜5とSiO2膜との接する面積と、反共振周波数の遷移との関係を示すグラフである。図4および図5より、周波数調整膜5とSiO2膜の接する面積が大きくなるほど共振周波数および反共振周波数が高周波側に遷移することがわかる。このことからも、弾性波エネルギーの分布量、分布する体積が大きくなるほど周波数の遷移量が大きくなっていることが理解できる。
【0024】
なお、図1から3に示した例では、周波数調整膜5は、板状の膜が規則的に(例えば、くし型電極3の電極指間距離の2.3倍程度の間隔で規則的に)配置される構成であるが、必ずしもこのように規則的に配置されなくてもよい。
【0025】
[ウエハ面における弾性波デバイス周波数特性分布改善の例]
このように、周波数調整膜5のパターニングによって、弾性波デバイスの周波数特性の調整が可能になる。そこで、本実施形態では、1枚のウエハ(圧電基板2)上に形成される複数の弾性波デバイスの周波数調整を周波数調整膜5のパターニングによって行う例について説明する。ここでは、ウエハ上の各弾性波デバイスにおける周波数調整膜5の面積をウエハ内の周波数分布に応じて調整することにより、一度の成膜でウエハにおける弾性波デバイスの周波数調整する例を説明する。
【0026】
図6は、ウエハを上から見た場合のウエハ面内の弾性波デバイスの周波数分布を表す上面図である。図6に示すウエハは、例えば、LN(LiNbO3)基板等の圧電基板であり、この圧電基板上に複数のくし型電極およびSiO2膜が形成される。これにより、ウエハ(圧電基板)を共有する弾性波デバイスが複数形成される。最終的には、ウエハは、弾性波デバイスごとに切断される。各弾性波デバイスは、例えば、図1、2または3に示した構造を有する。なお、ここでは、説明を簡単にするため弾性波デバイスが1台の共振器である場合を示しているが、例えば、各弾性波デバイスは、複数の共振器を備えるフィルタ等のチップを構成する場合もある。
【0027】
ウエハに形成された複数の弾性波デバイスの周波数特性(例えば、共振周波数)はすべて同じであることが好ましいが、実際は、ウエハ面内で各弾性波デバイスの共振周波数にはばらつきが生じることが多い。
【0028】
図6は、そのようなウエハ面内における周波数分布の一例を示している。図6に示す例では、弾性波デバイスの共振周波数が所定の中心周波数に対して+1MHz、+2MHz+3MHz、・・・、+10MHzの領域T1〜T10が示されている。ここで、中心周波数は、予め設定された所望の周波数である。なお、図6は、周波数調整膜5が成膜される前における周波数分布を示すものである。
【0029】
なお、ここでは、周波数特性の一例として共振周波数を挙げて説明しているが、周波数特性はこれに限られない。例えば、周波数特性には、反共振周波数、比帯域幅等が含まれる。
【0030】
図6に示す周波数分布に応じて、ウエハの各弾性波デバイスに対して成膜される周波数調整膜の面積が調整される。具体的には、各弾性波デバイスの周波数調整膜は、厚さは一定であり、くし型電極部を覆う面積が周波数の面内分布に合わせて分布するように設けられる。これにより、周波数調整膜の体積、つまりは周波数の調整量を面内分布に対応させて調整することができる。例えば、周波数調整膜の厚さはウエハ全面に渡って同一とし、周波数調整量が少ない箇所は周波数調整膜の面積を小さくし、周波数調整量が多いところは面積を大きくすることができる。これにより、周波数調整膜における、弾性波エネルギーの分布量、分布する体積を同一膜厚で調整することができる。
【0031】
図7Aは、図6に示すウエハの領域T1に形成される弾性波デバイスの平面図である。図7B〜図7Kは、図6に示す領域T1〜T10それぞれにおける弾性波デバイスの断面図である。なお、図7Bに示す断面図は、図7Aにおけるa−a´線の断面図である。図7Aおよび図7Bに示すように、領域T1では、周波数調整膜5が励起領域において占める面積が5%になるようにパターニングされている。領域T1では、弾性波デバイスの共振周波数が中心周波数から+1HMzずれている。そのため、周波数調整膜5が励起領域において占める面積を5%とすることで、領域T1における弾性波デバイスの共振周波数を中心周波数に近づけることができる。なお、ここで、励起領域は、くし型電極3の電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板2上で占める領域である。
【0032】
図7Cに示すように、領域T2では、周波数調整膜5が励起領域において占める面積が10%になるようにパターニングされている。さらに、図7D〜図7Kに示すように、領域T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9およびT10では、それぞれ、周波数調整膜5が励起領域において占める面積が15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%となっている。なお、図7A〜図7Kに示す周波数調整膜5の厚みはいずれも50nmである。
【0033】
このように、周波数調整膜5の厚みはウエハ内で一定である。一方、励起領域において周波数調整膜5が占める面積の割合は、周波数調整膜5の成膜前の中心周波数からのずれの量に応じた値になるように調整されている。特に、本例では、周波数調整膜5が占める面積の割合が、中心周波数からのずれの量に比例して大きくなっている。このように周波数調整膜5の厚みを調整しなくても、ウエハ内の弾性波デバイスの周波数特性の調整が可能である。なお、周波数調整膜5が占める面積と中心周波数とのずれの量との関係は、このような比例関係に限られない。
【0034】
また、周波数調整膜5が覆っている面積は、同一ウエハ内の共振器間で異なっていてもよいし、ウエハのチップ間で異なっていてもよい。すなわち、前記面積は、共振器単位、チップ単位あるいはその他目的に応じた単位で調整されてもよい。
【0035】
[製造方法]
次に、図6および図7で示した弾性波デバイスの製造方法を説明する。図8A〜図8Bは、ウエハ上に形成される弾性波デバイスの製造工程を示す図である。図8A〜図8Bでは、説明を簡単にするため、ウエハの一部のみ示している。
【0036】
図8Aにおいて、まず、ウエハである圧電基板2上に、くし型電極3および反射器3a、3bが形成される。例えば、くし型電極3および反射器3a、3bは、蒸着、スパッタリング法等で成膜される。次に、くし型電極3および反射器3a、3bを覆うように、ウエハ全面に渡って、SiO2膜4がCVD、スパッタリング法等により形成される。これにより、領域T10およびT20にそれぞれ1台ずつ弾性波デバイス(共振器)が形成される。その後、くし型電極3上の一部(図示せず)のSiO2膜4を除去することによって、くし型電極3の入力用および出力用の電極を露出させる。
【0037】
次に、露出された電極にウエハプローブの検査端子を接触し、各共振器の共振周波数を測定する。例えば、各共振器の共振周波数と所望の中心周波数とのずれ量が測定される。これにより、ウエハ上の共振器の周波数分布が得られる。ここでは、一例として、領域T10におけるずれ量は+3MHzで、領域T20におけるずれ量は+10MHzとする。
【0038】
次に、図8Bに示すように、この周波数分布に対応するパターンの周波数調整膜5が成膜される。領域T10では、周波数調整膜5の面積が全体の15%、領域T20では50%になるように周波数調整膜5はパターニングされる。周波数調整膜5は、例えば、スパッタリング法で成膜して、リフトオフまたはエッチングを用いてパターンを作成することにより形成することができる。パターニングにおいては、リフトオフを用いることにより、膜厚制御に優れた膜を作成することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態では、周波数調整膜5の厚さを一定にし、くし型電極3を覆う面積を周波数の面内分布に合わせて分布させることで周波数調整膜5の体積、つまりは周波数の調整量を面内分布に対応させて調整する。したがって、周波数調整膜5は、一度の成膜、エッチングで形成される。すなわち、1回の成膜、エッチングで面内分布を改善することができる。その結果、少ない工程で、周波数の面内ばらつきを低減した弾性波デバイスを作成することができる。
【0040】
(変形例1)
図9Aは、本実施形態の変形例にかかる弾性波デバイスの平面図である。図9Bは、図9Aのa−a´線断面図である。図9Aおよび図9Bに示す例では、周波数調整膜5は、SiO2膜4の上部全体に100%成膜され、さらにその上に、ウエハの周波数分布に合わせたパターンが形成される。この構成では、周波数調整膜5を100%成膜してウエハ面内の弾性波デバイスの周波数特性を中心周波数に合わせた後に、ウエハ面内の周波数分布を調整することが可能である。すなわち、同一圧電基板2(ウエハ)上において、周波数のウエハ面内分布に合わせた面積分布を持つように周波数調整膜5のパターンを作成することで、面内の周波数分布を調整できる。
【0041】
なお、面積分布を持つ周波数調整膜5は、スパッタリング法で成膜し、リフトオフを用いてパターンを作成することによりエッチングを用いる方法に比べて、膜厚制御に優れた膜を作成することができる。
【0042】
(変形例2)
上述の実施形態においては、周波数調整膜5には、下に形成される膜(SiO2膜4)より音速が速い材料が用いられていた。この場合、周波数調整膜5がSiO2膜4と接する面積が広くなる程、弾性波デバイスの共振周波数(または反共振周波数)が高周波側に遷移する。これに対して、下の膜(SiO2膜4)よりも音速の遅い材料を、周波数調整膜5に用いてもよい。この場合、周波数調整膜5が下のSiO2膜4に接する面積が広くなる程、弾性波デバイスの共振周波数(または反共振周波数)は低周波側に遷移することになる。
【0043】
なお、SiO2膜4より音速の遅い材料には、例えば、Au、Cu、Ti、Ag、Pt、Ta、W等のSiO2と異なる物質を用いてもよいし、あるいは、密度や硬さ(弾性係数)が、下のSiO2膜4とは異なるSiO2を用いてもよい。また、表面に金属膜を成膜すれば弾性波デバイスの放熱性を改善することもできる。
【0044】
(変形例3)
上記実施形態では、1つのウエハにおいて周波数調整膜5は同じ材料で形成されているが、周波数調整膜5は、2種類以上の材料で構成されてもよい。すなわち、同一の圧電基板(ウエハ)2上においてSiO2膜4に接する周波数調整膜5が2種類あり、それぞれの音速が異なるように形成することができる。例えば、ウエハ上の共振器のうち共振周波数が中心周波数より高い共振器には、SiO2膜4より音速の速い材料で周波数調整膜5を形成し、共振周波数が中心周波数より低い共振器には、SiO2膜4より音速の遅い材料で周波数調整膜5を形成することもできる。
【0045】
例えば、ウエハ上の周波数調整膜5形成前の共振器において中心周波数が合っている場合は、周波数のウエハ面内分布として、中心周波数より高い領域と低い領域が混在することが考えられる。このような場合は、同一ウエハ上においてSiO2より音速の高い周波数調整膜と音速の低い周波数調整膜膜を混在させることにより面内分布を改善することができる。
【0046】
このように、周波数調整膜5の音速の分布は、同一基板(ウエハ)上における弾性波の周波数分布に対応したものとすることできる。これにより、周波数の面内ばらつきを低減した弾性波デバイスを作成することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
図10Aおよび図10Bは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの断面図である。本実施形態では、圧電基板2上にくし型電極3および反射器3a、3bを覆うように形成されるSiO2膜4の一部に、他の部分より厚さが大きくなる部分が形成されている。これにより、SiO2膜4は、周波数調整膜の機能も兼ね備える。図10Aおよび図10Bに示す構成は、同一圧電基板2上においてSiO2表面の一部をエッチングすることにより形成することができる。図10BにおけるSiO2膜4の方が、図10AにおけるSiO2膜4よりもエッチングする面積が広い。図10Aおよび図10Bに示す例では、エッチングする面積が広いほど、弾性波の周波数は高周波側へ遷移することになる。このように、同一圧電基板2上においてエッチングする面積を変えることで周波数の面内ばらつきを低減した弾性表面波デバイスを作成することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
図11Aは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図であり、図11Bは、図11Aのa―a´線断面図である。図11Aおよび図11Bに示す構成においては、圧電基板2上にCu等の導電性材料からなるくし型電極3および反射器3a、3bが形成されている。くし型電極3および反射器3a、3bを覆うようにSiO2膜4が形成され、SiO2膜4上に周波数調整膜として金属膜(または絶縁膜)5aが形成されている。さらに、この金属膜5aを覆うように金属膜(または絶縁膜)5aと音速の異なる絶縁膜5bが形成されている。絶縁膜5bの表面には、金属膜5aのパターンが反映されている。これらの周波数調整膜(5aおよび5b)により、厚みが他の部分より大きくなる部分が励起領域に存在することになる。すなわち、金属膜5a(または絶縁膜)がSiO2膜4と接する部分の厚みが他の部分より大きくなっている。
【0049】
金属膜5aがSiO2膜4と接する面積は、全体の50%となっている。この金属膜5aがSiO2膜4と接する面積は、圧電基板2上における各弾性波デバイスの周波数分布に対応して調整される。例えば、絶縁膜5bより音速の遅い金属膜(または絶縁膜)5aのSiO2膜4に占める面積の割合が大きくなるほど周波数が低周波側に遷移する。逆に、絶縁膜5bより音速の早い金属膜(絶縁膜)5aの割合が大きくなるほど周波数が高周波側に遷移する。なお、絶縁膜5a、5bには、SiN,Al2O3,SiC、DLCなどが用いられ、金属膜5aには、例えば、Au、Al、Cu、Ti、Ag、Pt、Ta、W等の導電性材料が用いられる。
【0050】
また、図12Aおよび図12Bに示すように、金属膜5aは、SiO2膜4全体を覆い、さらにその上に周波数調整のためのパターンが形成される形態であってもよい。このように、金属膜5aをSiO2膜4全体に(100%)成膜して、各共振器の共振周波数を中心周波数に近づけた後、共振器の共振周波数の面内分布に合わせた面積分布を持つパターンを形成することができる。これにより、圧電基板2面内の共振器ごと(またはチップごと)の周波数分布を調整することが可能になる。
【0051】
また、図13Aおよび13Bに示すようにAl2O3膜5bの外側に金属膜5aが露出するように成膜することで、弾性波デバイスの放熱性を改善することもできる。
【0052】
金属膜の上に設けられる膜は、圧電基板2上の周波数分布に対応して、音速が場所によって異なるように形成されてもよい。例えば、周波数の圧電基板面内の分布として、中心周波数より高い領域と低い領域が混在することが考えられる。この時は、周波数調整膜に、SiO2膜4より音速の高い膜と低い膜を混在させることにより面内分布を改善することができる。
【0053】
(第4の実施形態)
図14Aおよび図14Bは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの断面図である。図14Aおよび図14Bに示す構成においては、圧電基板2上にくし型電極3および反射器3a、3bを覆うように形成されるSiO2膜4の一部に、他の部分より厚さが大きくなる部分が形成されている。さらに、このSiO2膜4を覆うようにAl2O3膜5bが形成されている。Al2O3膜5bの表面には、SiO2膜4のパターンが反映される。図14Aの方が、図14Bよりも、SiO2表面において厚みが大きくなる部分の面積の全体に対する割合が広い。この面積の割合により、弾性波デバイスの周波数が調整される。これら図14Aおよび図14Bに示す構成において、SiO2膜4は、周波数調整膜の機能も兼ね備えている。
【0054】
SiO2表面において厚みが大きくなる部分の面積は、例えば、SiO2膜4のエッチングする面積により調整することができる。このように、同一圧電基板2上においてSiO2膜4のエッチングする面積を変えることで、周波数の面内ばらつきを低減した弾性境界波デバイスを作成することができる。
【0055】
(第5の実施形態)
図15Aおよび図15Bは、本実施形態にかかる弾性表面波デバイスの断面図である。これらの弾性表面波デバイスは、圧電基板2上にAl等の導電性材料からなるくし型電極3および反射器3a、3bが形成され、その上に周波数調整膜5が形成される。周波数調整膜5が形成される面積の全体における割合により、弾性表面波デバイスの周波数が調整される。図15Bの方が、図15Aよりも、周波数調整膜5が形成される面積の全体に対する割合が広い。周波数調整膜5の材料には、例えば、SiO2が用いられる。この場合、励起領域における周波数調整膜5の面積の割合が大きい程、周波数は低周波側へ遷移する。このように、同一の圧電基板2上で周波数調整膜5の面積を変えることで周波数の面内ばらつきを低減した弾性表面波デバイスを作成することができる。
【0056】
また、図16Aおよび図16Bに示すように、周波数調整膜5は、圧電基板2全体を覆い、さらにその上に周波数調整のためのパターンが形成される形態であってもよい。このように、SiO2膜を、圧電基板2全体に(100%)成膜して、各共振器の共振周波数を中心周波数に近づけた後、その上に、共振器の共振周波数の面内分布に合わせた面積分布を持つパターンを形成することができる。これにより、圧電基板2面内の共振器ごと(またはチップごと)の周波数分布を調整することが可能になる。
【0057】
(第6の実施形態)
図17Aは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図17Bは、図17Aのa―a´線断面図である。図17Aおよび図17Bに示す例では、周波数調整膜5がSiO2膜4上の全体の左半分の部分に接するように設けられている。この場合、周波数調整膜5がSiO2膜4上で占める面積の割合は50%である。そのため、励起領域における周波数調整膜5が占める面積の割合も50%である。なお、周波数調整膜5は、例えば、厚さ50nmで形成される。
【0058】
上記実施形態1〜5では、周波数調整膜5は、厚みが他より多くなる部分が励起領域において均等に分布するようにパターニングされていたが、図17Aおよび図17Bに示すように、周波数調整膜5を一箇所に集中して設けてもよい。この場合も、同様に、周波数調整膜5の面積の調整により、弾性波デバイスの周波数が調整される。
【0059】
なお、周波数調整膜5の膜厚が厚い場合は、図17Aおよび図17Bに示すように一箇所に集中して周波数調整膜5が設けられると、共振周波数付近に不要波が発生してしまい、特性が劣化する場合もある。この場合は、上記実施形態1〜5に示したように、周波数調整膜5を、励起領域において分散させて設けることにより、特性の劣化を防ぐことができる。また、周波数調整膜5の配置は、規則的(周期的)であってもよいし、不規則(ランダム)であってもよい。
【0060】
(第7の実施形態)
図18は、本実施形態にかかるラダー型のフィルタを構成する弾性波デバイスの平面図である。このフィルタは、圧電基板上2に設けられた直列共振器S1〜S3、並列共振器P1、P2およびこれらを接続する配線パターンにより構成される。各共振器は、圧電基板2上に、くし型電極3および反射器3a、3bが設けられ、さらにこれらを覆うようにSiO2膜4が設けられて構成されている。
【0061】
図18に示す例では、フィルタを構成する複数の共振器S1〜S3、P1、P2のうち直列共振器S3に、周波数調整膜5が、SiO2膜4上に接するように設けられている。このように、フィルタを構成する共振器の一部の共振器に周波数調整膜5を設けることで、当該一部の共振器の周波数のみを調整するができる。このように、一部の共振器の周波数のみを調整することにより、フィルタの比帯域幅を調整することができる。これを用いれば、面内における比帯域幅のずれを低減することができる。
【0062】
例えば、ラダー型フィルタの場合は、共振器ごとに周波数が異なる場合がある。例えば直列共振器の反共振周波数が一番高い共振器がフィルタの右肩特性を担っている場合は、この共振器の周波数のみを調整することにより比帯域幅を大きくしたり、小さくしたりすることが可能となる。
【0063】
なお、周波数調整膜5を設ける共振器の数は、図18に示す例に限られず、共振器S1〜S3、P1、P2のうち複数の共振器に設けてもよい。その場合、さらに、周波数調整膜5の面積を共振器ごとに異なる構成にして、フィルタ特性を調整することもできる。
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0064】
(付記1)
圧電性を有する圧電基板と、
圧電基板に設けられた複数の電極指を有するくし型電極と、
前記くし型電極の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質とを備え、
前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において、前記調整媒質により他の部分より厚みが大きくなる領域の面積Tにより、周波数特性が調整されて形成される、弾性波デバイス。
【0065】
(付記2)
前記圧電基板上に形成された複数の弾性波デバイスであって、
前記複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整されていることを特徴とする、付記1に記載の弾性波デバイス。
【0066】
(付記3)
前記圧電基板はウエハであり、ウエハにおける複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスの前記面積Tが調整されている、付記2に記載の弾性波デバイス。
【0067】
(付記4)
前記調整媒質は、前記圧電基板上に前記くし型電極を覆うように設けられる第1媒質と、前記第1媒質上に設けられる第2媒質とを含み、
前記第2媒質が第1媒質上で占める面積を面積Tとして、前記周波数特性が調整される、付記1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0068】
(付記5)
前記調整媒質は、前記第2媒質を覆うように設けられる第3媒質をさらに含む、付記1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0069】
(付記6)
前記圧電基板上に複数の弾性波デバイスが形成され、
前記調整媒質は、複数の弾性波デバイスの前記くし型電極を覆うように設けられる第1媒質と、前記第1媒質上であって、前記複数の弾性波デバイスのうち一部の弾性波デバイスに設けられる第2媒質と、前記一部の弾性波デバイス以外の他の弾性波デバイスに設けられる第3媒質を含み、
前記第2媒質または前記第3媒質それぞれが前記第1媒質上で占める面積を前記面積Tとして、各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整され、
前記第2媒質と前記第3媒質は、音速が互いに異なる媒質である、付記1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0070】
(付記7)
前記調整媒質は、前記第2媒質および前記第3媒質の上に設けられる第4媒質をさらに含む、付記6に記載の弾性波デバイス。
【0071】
(付記8)
前記第2媒質の音速は、前記第1媒質より速く、前記第3媒質の音速は前記第1媒質より遅い、付記6または7に記載の弾性波デバイス。
【0072】
(付記9)
前記調整媒質は、他の部分と厚みが異なる部分を有するパターン層を含み、前記厚みが異なる部分の面積を前記面積Tとして、前記周波数特性が調整される、付記1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0073】
(付記10)
前記調整媒質は、前記励起領域全体に渡って前記くし型電極を覆う第1媒質と、前記第1媒質上に設けられる前記パターン層とを含む、付記9に記載の弾性波デバイス。
【0074】
(付記11)
前記パターン層は、前記励起領域全体に渡って前記くし型電極を覆うように設けられる、付記9に記載の弾性波デバイス。
【0075】
(付記12)
前記調整媒質は、前記パターン層を覆うように設けられる媒質をさらに備える、付記9〜11のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0076】
(付記13)
前記くし型電極の電極材料にAl、Ti、Cu、Au、Ni、Cr、Ta、Wのうちいずれかを含むことを特徴とする、付記1〜12のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0077】
(付記14)
前記調整媒質は、SiO2を主成分とすることを特徴とする、付記1〜13のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0078】
(付記15)
前記圧電基板は、LiTaO3基板もしくはLiNbO3基板を用いることを特徴とする付記1〜14のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0079】
(付記16)
前記圧電基板上に設けられる複数の前記くし型電極により形成される複数の共振器を含むフィルタを構成する前記弾性波デバイスであって、
前記フィルタを構成する前記複数の共振器のうち一部の共振器に、前記調整媒質が設けられる、付記1に記載の弾性波デバイス。
【0080】
(付記17)
付記1〜16のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを用いた、通信装置。
【0081】
(付記18)
圧電基板上に、複数の電極指を有するくし型電極を形成する工程と、
前記くし型電極により形成される弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数を測定する工程と、
前記測定された共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近づくように、少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質を設ける工程とを有し、
前記調整媒質は、前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において前記調整媒質により弾性波デバイスの厚みが他の部分より大きくなる領域の面積Tが調整されることにより、前記弾性波デバイスの周波数特性が調整されて形成されることを特徴とする、弾性波デバイスの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1Aは、第1の実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図1Bは、図1Aのa−a´線断面図である。
【図2】図2Aは、周波数調整膜の面積が全体の50%である構成を示す平面図である。図2Bは、図2Aのa−a´線断面図である。
【図3】図3Aは、周波数調整膜の面積が全体の75%である構成を示す平面図である。図2Bは、図2Aのa−a´線断面図である。
【図4】図4は、周波数調整膜の面積とアドミッタンス特性との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、周波数調整膜の面積と反共振周波数の遷移との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、ウエハ面内の弾性波デバイスの周波数分布を表す上面図である。
【図7】図7Aは、図6に示すウエハの領域T1に形成される弾性波デバイスの平面図である。図7B〜図7Kは、図6に示す領域T1〜T10それぞれにおける弾性波デバイスの断面図である。
【図8】図8B及び図8Cは、ウエハ上に形成される弾性波デバイスの製造工程を示す図である。
【図9】図9Aは、変形例1にかかる弾性波デバイスの平面図である。図9Bは、図9Aのa−a´線断面図である。
【図10】図10Aおよび図10Bは、第2の実施形態にかかる弾性波デバイスの断面図である。
【図11】図11Aは、第3の実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図11Bは、図11Aのa―a´線断面図である。
【図12】図12Aおよび図12Bは第3の実施形態の変形例にかかる弾性波デバイスの平面図である。図12Bは、図12Aのa―a´線断面図である。
【図13】図13Aおよび図13Bは第3の実施形態の他の変形例にかかる弾性波デバイスの平面図である。図13Bは、図13Aのa―a´線断面図である。
【図14】図14Aおよび図14Bは、第4の実施形態にかかる弾性波デバイスの断面図
【図15】図15Aおよび図15Bは、第5の実施形態にかかる弾性表面波デバイスの断面図
【図16】図16Aおよび図16Bは第5の実施形態の変形例にかかる弾性波デバイスの断面図である。
【図17】図17Aは、第6の実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図17Bは、図17Aのa―a´線断面図である。
【図18】図18は、第7の実施形態にかかるラダー型のフィルタを構成する弾性波デバイスの平面図である。
【符号の説明】
【0083】
2 圧電基板
3 くし型電極
3a、b 反射器
4 SiO2膜
5 周波数調整膜
5a 絶縁膜または金属膜
5b 絶縁膜
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、弾性表面波デバイスや弾性境界波デバイス等の弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波を応用した装置の一つとして、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave )デバイスが知られている。このSAWデバイスは、例えば携帯電話に代表される45MHz〜2GHzの周波数帯における無線信号を処理する各種回路に用いられる。各種回路の例として、送信バンドパスフィルタ、受信バンドパスフィルタ、局発フィルタ、アンテナ共用器、IFフィルタ、FM変調器等が挙げられる。
【0003】
近年、携帯電話の高性能化、小型化に伴い、帯域外での高抑圧化、温度安定性の向上など諸特性の改善やデバイスサイズの小型化が求められている。温度安定性の向上には、圧電性基板上においてくし型電極上にSiO2等などの誘電体を形成する手法が開発されている。また、前記誘電体上に音速の速い別の誘電体を形成することにより、前記誘電体の境界と圧電基板の表面との間にエネルギーが閉じこめる境界波デバイス等が開発されている。これにより、デバイスの小型化が図られている。
【0004】
これらすべての弾性波デバイスにおいて、製造ばらつきによる周波数ばらつきが共通の問題となる場合がある。この対策として、様々な周波数調整を行う方法が開示されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
一例として、くし型電極、反射器及び圧電基板の上にSiNの膜をプラズマCVD等の方法で成膜することにより周波数調整を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、SiO2層上にSiN層を成膜し、物理的なエッチングなどによりSiN層の膜厚を薄くしたり、スパッタリングで成膜してSiN層の膜厚を厚くしたりすることにより、周波数調整を行うことが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、第1の媒質と第2の媒質の境界にIDT電極が設けられた境界波デバイスにおいて、第2の媒質の厚さを変えることで周波数を調整することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平2−301210
【特許文献2】国際公開第2005/083881号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/093949号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、周波数調整方法として、電極を覆う媒質を深さ方向にエッチングして媒質の膜厚を調整することで、周波数特性を調整する方法がある。この方法を用いて、例えば、1つのウエハ上に形成された複数の弾性波デバイス間の周波数特性のばらつきを所望の範囲内に収めるには、ウエハ上の弾性波デバイスの一部を選択し、選択した部分の媒質の膜厚を調整する必要がある。例えば、ウエハ上の一部をマスクすることで、媒質の上部面内の一部分を深さ方向にエッチングし、媒質の膜厚を調整する必要がある。このようにして、例えば、チップ毎に異なる量のエッチングが行われる。この場合、ウエハ面内の周波数分布を所望の範囲内に収めるために、チップ毎にマスクを行い、場合によっては数回成膜、エッチングを繰り返す必要がある。その結果、プロセス工程が多くなる等の弊害が生じる。
【0008】
ゆえに、本発明は、少ない工程で簡単に弾性波デバイスの周波数特性を調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願開示の弾性波デバイスは、圧電性を有する圧電基板と、圧電基板に設けられた複数の電極指を有するくし型電極と、前記くし型電極の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質とを備え、前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において、前記調整媒質により他の部分より厚みが大きくなる領域の面積Tにより、周波数特性が調整されて形成される。
【0010】
上記構成において、圧電基板上に形成される弾性波デバイスの周波数特性は、電極指の励起領域において調整媒質によって厚みが大きくなっている領域の面積Tにより、調整される。これにより、調整媒質における弾性波エネルギーの分布量および分布する体積を、調整媒質の膜厚を変えずに(同一膜厚で)面積を変えることで調整できる。そのため、調整媒質の厚みを調整する必要がないので、少ない工程で周波数特性が調整された弾性波デバイスの提供が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本願明細書の開示によれば、少ない工程で簡単に弾性波デバイスの周波数特性を調整することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一つの実施形態は、前記圧電基板上に形成された複数の弾性波デバイスであって、前記複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整されている態様とすることができる。
【0013】
例えば、同一の圧電基板上に複数のくし型電極を形成することにより、所望の周波数(共振周波数および/または反共振周波数)の弾性波デバイスを複数作成する際に、圧電基板上の場所によって、弾性波デバイスの周波数特性にばらつきが生じることがある。この場合、圧電基板上の各弾性波デバイスの周波数分布に対応して、弾性波デバイスそれぞれに合った面積Tの調整媒質を形成することで、各弾性波デバイスの周波数特性を調整できる。この場合、調整媒質のパターニング(一回の成膜)で圧電基板上のすべての弾性波デバイスの調整が可能である。そのため、調整媒質の膜厚を変化させて調整する場合に比べて、成膜工程が少なくなる。すなわち、圧電基板上の弾性波デバイス間で、前記面積Tが異なるように調整媒質を形成することで、少ない工程での周波数特性の調整が可能になる。
【0014】
本発明の一実施形態は、前記圧電基板はウエハであり、ウエハにおける複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスの前記面積Tが調整されている態様であってもよい。これにより、ウエハ内で周波数のばらつきが少ない弾性波デバイスが得られる。
【0015】
本発明の一実施形態は、前記圧電基板上に設けられる複数の前記くし型電極により形成される複数の共振器を含むフィルタを構成する前記弾性波デバイスであって、前記フィルタを構成する前記複数の共振器のうち一部の共振器に、前記調整媒質が設けられる態様とすることができる。フィルタを構成する共振器の一部に調整媒質を設けることにより、フィルタ特性を細かく調整することが可能になる。
【0016】
本発明の実施形態における弾性波デバイスの製造方法は、圧電基板上に、複数の電極指を有するくし型電極を形成する工程と、前記くし型電極により形成される弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数を測定する工程と、前記測定された共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近づくように、少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質を設ける工程とを有し、前記調整媒質は、前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において前記調整媒質により弾性波デバイスの厚みが他の部分より大きくなる領域の面積Tが調整されることにより、前記弾性波デバイスの周波数特性が調整されて形成されることを特徴とする。
【0017】
(第1の実施形態)
[弾性波デバイスの構成]
図1Aは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図1Bは、図1Aのa−a´線断面図である。
【0018】
図1Aおよび図1Bに示す弾性波デバイスでは、圧電基板2上に複数の電極指を有するくし型電極3が設けられている。くし型電極3の両側には反射器3a、3bが設けられている。圧電基板2は、例えば、回転Y板のLN(LiNbO3)基板である。くし型電極3は、弾性波を励起する電極である。入力用および出力用の2つのくし型電極3が向きあって、それぞれの電極指が互い違いに並ぶように配置される。くし型電極3の電極指と、電極指間のスペースとが圧電基板2上で占める領域が励起領域となる。くし型電極3は、IDT電極またはすだれ電極とも呼ばれる。くし型電極3および反射器3a、3bは、例えば、Al、Ti、Cu、Au、Ni、Cr、TaまたはW等の金属で形成される。
【0019】
くし型電極3を覆うようにSiO2膜4が設けられ、SiO2膜4上には、周波数調整膜(調整媒質)5が設けられている。SiO2膜4の音速は、圧電基板2より遅い。そのため、弾性波は、圧電基板2とSiO2膜4との界面に集中して伝播する。これにより、弾性波デバイスは、共振器として動作する。
【0020】
周波数調整膜(調整媒質)5は、圧電基板2上の媒質、すなわちSiO2膜4とは、音速(音響特性)の異なる物質で構成される。例えば、周波数調整膜5として、Al2O3、またはSiN、SiC、DLC等を用いることができる。あるいは、SiO2膜4とは密度または硬さ(弾性係数)が異なるSiO2で周波数調整膜5を形成することもできる。
【0021】
周波数調整膜5とSiO2膜4とが接する面積を調整することにより、弾性波デバイスの共振周波数が調整される。すなわち、くし型電極3による励起領域において厚みが他の部分よりも大きくなっている面積により共振周波数が調整される。これは、弾性波のエネルギーが分布している部分に音速の異なった媒質を形成することで、弾性波の音速を変化させ、調整を行うものである。ここでは、周波数調整膜5の面積により弾性波エネルギーが分布する領域の体積が決まり、弾性波デバイスの周波数特性の調整量が決まる。
【0022】
図1Aおよび図1Bに示す例では、周波数調整膜5(Al2O3)とSiO2膜とが接する面積は全体の17%であり、周波数調整膜5の厚みは50nmである。図2Aおよび2Bは、周波数調整膜5とSiO2膜との接する面積が全体の50%である場合の構成を示す平面図(図2A)および断面図(図2B)である。図3Aおよび3Bは、周波数調整膜5とSiO2膜との接する面積が全体の75%である場合の構成を示す平面図(図3A)および断面図(図3B)である。ここでも、周波数調整膜5の厚みは50nmである。
【0023】
図4は、Al2O3で形成される周波数調整膜5とSiO2膜とが接する面積(0%、17%、50%および75%)とアドミッタンス特性との関係を示すグラフである(周波数調整膜5の厚みは50nm)。図5は、Al2O3で形成される周波数調整膜5とSiO2膜との接する面積と、反共振周波数の遷移との関係を示すグラフである。図4および図5より、周波数調整膜5とSiO2膜の接する面積が大きくなるほど共振周波数および反共振周波数が高周波側に遷移することがわかる。このことからも、弾性波エネルギーの分布量、分布する体積が大きくなるほど周波数の遷移量が大きくなっていることが理解できる。
【0024】
なお、図1から3に示した例では、周波数調整膜5は、板状の膜が規則的に(例えば、くし型電極3の電極指間距離の2.3倍程度の間隔で規則的に)配置される構成であるが、必ずしもこのように規則的に配置されなくてもよい。
【0025】
[ウエハ面における弾性波デバイス周波数特性分布改善の例]
このように、周波数調整膜5のパターニングによって、弾性波デバイスの周波数特性の調整が可能になる。そこで、本実施形態では、1枚のウエハ(圧電基板2)上に形成される複数の弾性波デバイスの周波数調整を周波数調整膜5のパターニングによって行う例について説明する。ここでは、ウエハ上の各弾性波デバイスにおける周波数調整膜5の面積をウエハ内の周波数分布に応じて調整することにより、一度の成膜でウエハにおける弾性波デバイスの周波数調整する例を説明する。
【0026】
図6は、ウエハを上から見た場合のウエハ面内の弾性波デバイスの周波数分布を表す上面図である。図6に示すウエハは、例えば、LN(LiNbO3)基板等の圧電基板であり、この圧電基板上に複数のくし型電極およびSiO2膜が形成される。これにより、ウエハ(圧電基板)を共有する弾性波デバイスが複数形成される。最終的には、ウエハは、弾性波デバイスごとに切断される。各弾性波デバイスは、例えば、図1、2または3に示した構造を有する。なお、ここでは、説明を簡単にするため弾性波デバイスが1台の共振器である場合を示しているが、例えば、各弾性波デバイスは、複数の共振器を備えるフィルタ等のチップを構成する場合もある。
【0027】
ウエハに形成された複数の弾性波デバイスの周波数特性(例えば、共振周波数)はすべて同じであることが好ましいが、実際は、ウエハ面内で各弾性波デバイスの共振周波数にはばらつきが生じることが多い。
【0028】
図6は、そのようなウエハ面内における周波数分布の一例を示している。図6に示す例では、弾性波デバイスの共振周波数が所定の中心周波数に対して+1MHz、+2MHz+3MHz、・・・、+10MHzの領域T1〜T10が示されている。ここで、中心周波数は、予め設定された所望の周波数である。なお、図6は、周波数調整膜5が成膜される前における周波数分布を示すものである。
【0029】
なお、ここでは、周波数特性の一例として共振周波数を挙げて説明しているが、周波数特性はこれに限られない。例えば、周波数特性には、反共振周波数、比帯域幅等が含まれる。
【0030】
図6に示す周波数分布に応じて、ウエハの各弾性波デバイスに対して成膜される周波数調整膜の面積が調整される。具体的には、各弾性波デバイスの周波数調整膜は、厚さは一定であり、くし型電極部を覆う面積が周波数の面内分布に合わせて分布するように設けられる。これにより、周波数調整膜の体積、つまりは周波数の調整量を面内分布に対応させて調整することができる。例えば、周波数調整膜の厚さはウエハ全面に渡って同一とし、周波数調整量が少ない箇所は周波数調整膜の面積を小さくし、周波数調整量が多いところは面積を大きくすることができる。これにより、周波数調整膜における、弾性波エネルギーの分布量、分布する体積を同一膜厚で調整することができる。
【0031】
図7Aは、図6に示すウエハの領域T1に形成される弾性波デバイスの平面図である。図7B〜図7Kは、図6に示す領域T1〜T10それぞれにおける弾性波デバイスの断面図である。なお、図7Bに示す断面図は、図7Aにおけるa−a´線の断面図である。図7Aおよび図7Bに示すように、領域T1では、周波数調整膜5が励起領域において占める面積が5%になるようにパターニングされている。領域T1では、弾性波デバイスの共振周波数が中心周波数から+1HMzずれている。そのため、周波数調整膜5が励起領域において占める面積を5%とすることで、領域T1における弾性波デバイスの共振周波数を中心周波数に近づけることができる。なお、ここで、励起領域は、くし型電極3の電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板2上で占める領域である。
【0032】
図7Cに示すように、領域T2では、周波数調整膜5が励起領域において占める面積が10%になるようにパターニングされている。さらに、図7D〜図7Kに示すように、領域T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9およびT10では、それぞれ、周波数調整膜5が励起領域において占める面積が15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%となっている。なお、図7A〜図7Kに示す周波数調整膜5の厚みはいずれも50nmである。
【0033】
このように、周波数調整膜5の厚みはウエハ内で一定である。一方、励起領域において周波数調整膜5が占める面積の割合は、周波数調整膜5の成膜前の中心周波数からのずれの量に応じた値になるように調整されている。特に、本例では、周波数調整膜5が占める面積の割合が、中心周波数からのずれの量に比例して大きくなっている。このように周波数調整膜5の厚みを調整しなくても、ウエハ内の弾性波デバイスの周波数特性の調整が可能である。なお、周波数調整膜5が占める面積と中心周波数とのずれの量との関係は、このような比例関係に限られない。
【0034】
また、周波数調整膜5が覆っている面積は、同一ウエハ内の共振器間で異なっていてもよいし、ウエハのチップ間で異なっていてもよい。すなわち、前記面積は、共振器単位、チップ単位あるいはその他目的に応じた単位で調整されてもよい。
【0035】
[製造方法]
次に、図6および図7で示した弾性波デバイスの製造方法を説明する。図8A〜図8Bは、ウエハ上に形成される弾性波デバイスの製造工程を示す図である。図8A〜図8Bでは、説明を簡単にするため、ウエハの一部のみ示している。
【0036】
図8Aにおいて、まず、ウエハである圧電基板2上に、くし型電極3および反射器3a、3bが形成される。例えば、くし型電極3および反射器3a、3bは、蒸着、スパッタリング法等で成膜される。次に、くし型電極3および反射器3a、3bを覆うように、ウエハ全面に渡って、SiO2膜4がCVD、スパッタリング法等により形成される。これにより、領域T10およびT20にそれぞれ1台ずつ弾性波デバイス(共振器)が形成される。その後、くし型電極3上の一部(図示せず)のSiO2膜4を除去することによって、くし型電極3の入力用および出力用の電極を露出させる。
【0037】
次に、露出された電極にウエハプローブの検査端子を接触し、各共振器の共振周波数を測定する。例えば、各共振器の共振周波数と所望の中心周波数とのずれ量が測定される。これにより、ウエハ上の共振器の周波数分布が得られる。ここでは、一例として、領域T10におけるずれ量は+3MHzで、領域T20におけるずれ量は+10MHzとする。
【0038】
次に、図8Bに示すように、この周波数分布に対応するパターンの周波数調整膜5が成膜される。領域T10では、周波数調整膜5の面積が全体の15%、領域T20では50%になるように周波数調整膜5はパターニングされる。周波数調整膜5は、例えば、スパッタリング法で成膜して、リフトオフまたはエッチングを用いてパターンを作成することにより形成することができる。パターニングにおいては、リフトオフを用いることにより、膜厚制御に優れた膜を作成することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態では、周波数調整膜5の厚さを一定にし、くし型電極3を覆う面積を周波数の面内分布に合わせて分布させることで周波数調整膜5の体積、つまりは周波数の調整量を面内分布に対応させて調整する。したがって、周波数調整膜5は、一度の成膜、エッチングで形成される。すなわち、1回の成膜、エッチングで面内分布を改善することができる。その結果、少ない工程で、周波数の面内ばらつきを低減した弾性波デバイスを作成することができる。
【0040】
(変形例1)
図9Aは、本実施形態の変形例にかかる弾性波デバイスの平面図である。図9Bは、図9Aのa−a´線断面図である。図9Aおよび図9Bに示す例では、周波数調整膜5は、SiO2膜4の上部全体に100%成膜され、さらにその上に、ウエハの周波数分布に合わせたパターンが形成される。この構成では、周波数調整膜5を100%成膜してウエハ面内の弾性波デバイスの周波数特性を中心周波数に合わせた後に、ウエハ面内の周波数分布を調整することが可能である。すなわち、同一圧電基板2(ウエハ)上において、周波数のウエハ面内分布に合わせた面積分布を持つように周波数調整膜5のパターンを作成することで、面内の周波数分布を調整できる。
【0041】
なお、面積分布を持つ周波数調整膜5は、スパッタリング法で成膜し、リフトオフを用いてパターンを作成することによりエッチングを用いる方法に比べて、膜厚制御に優れた膜を作成することができる。
【0042】
(変形例2)
上述の実施形態においては、周波数調整膜5には、下に形成される膜(SiO2膜4)より音速が速い材料が用いられていた。この場合、周波数調整膜5がSiO2膜4と接する面積が広くなる程、弾性波デバイスの共振周波数(または反共振周波数)が高周波側に遷移する。これに対して、下の膜(SiO2膜4)よりも音速の遅い材料を、周波数調整膜5に用いてもよい。この場合、周波数調整膜5が下のSiO2膜4に接する面積が広くなる程、弾性波デバイスの共振周波数(または反共振周波数)は低周波側に遷移することになる。
【0043】
なお、SiO2膜4より音速の遅い材料には、例えば、Au、Cu、Ti、Ag、Pt、Ta、W等のSiO2と異なる物質を用いてもよいし、あるいは、密度や硬さ(弾性係数)が、下のSiO2膜4とは異なるSiO2を用いてもよい。また、表面に金属膜を成膜すれば弾性波デバイスの放熱性を改善することもできる。
【0044】
(変形例3)
上記実施形態では、1つのウエハにおいて周波数調整膜5は同じ材料で形成されているが、周波数調整膜5は、2種類以上の材料で構成されてもよい。すなわち、同一の圧電基板(ウエハ)2上においてSiO2膜4に接する周波数調整膜5が2種類あり、それぞれの音速が異なるように形成することができる。例えば、ウエハ上の共振器のうち共振周波数が中心周波数より高い共振器には、SiO2膜4より音速の速い材料で周波数調整膜5を形成し、共振周波数が中心周波数より低い共振器には、SiO2膜4より音速の遅い材料で周波数調整膜5を形成することもできる。
【0045】
例えば、ウエハ上の周波数調整膜5形成前の共振器において中心周波数が合っている場合は、周波数のウエハ面内分布として、中心周波数より高い領域と低い領域が混在することが考えられる。このような場合は、同一ウエハ上においてSiO2より音速の高い周波数調整膜と音速の低い周波数調整膜膜を混在させることにより面内分布を改善することができる。
【0046】
このように、周波数調整膜5の音速の分布は、同一基板(ウエハ)上における弾性波の周波数分布に対応したものとすることできる。これにより、周波数の面内ばらつきを低減した弾性波デバイスを作成することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
図10Aおよび図10Bは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの断面図である。本実施形態では、圧電基板2上にくし型電極3および反射器3a、3bを覆うように形成されるSiO2膜4の一部に、他の部分より厚さが大きくなる部分が形成されている。これにより、SiO2膜4は、周波数調整膜の機能も兼ね備える。図10Aおよび図10Bに示す構成は、同一圧電基板2上においてSiO2表面の一部をエッチングすることにより形成することができる。図10BにおけるSiO2膜4の方が、図10AにおけるSiO2膜4よりもエッチングする面積が広い。図10Aおよび図10Bに示す例では、エッチングする面積が広いほど、弾性波の周波数は高周波側へ遷移することになる。このように、同一圧電基板2上においてエッチングする面積を変えることで周波数の面内ばらつきを低減した弾性表面波デバイスを作成することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
図11Aは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図であり、図11Bは、図11Aのa―a´線断面図である。図11Aおよび図11Bに示す構成においては、圧電基板2上にCu等の導電性材料からなるくし型電極3および反射器3a、3bが形成されている。くし型電極3および反射器3a、3bを覆うようにSiO2膜4が形成され、SiO2膜4上に周波数調整膜として金属膜(または絶縁膜)5aが形成されている。さらに、この金属膜5aを覆うように金属膜(または絶縁膜)5aと音速の異なる絶縁膜5bが形成されている。絶縁膜5bの表面には、金属膜5aのパターンが反映されている。これらの周波数調整膜(5aおよび5b)により、厚みが他の部分より大きくなる部分が励起領域に存在することになる。すなわち、金属膜5a(または絶縁膜)がSiO2膜4と接する部分の厚みが他の部分より大きくなっている。
【0049】
金属膜5aがSiO2膜4と接する面積は、全体の50%となっている。この金属膜5aがSiO2膜4と接する面積は、圧電基板2上における各弾性波デバイスの周波数分布に対応して調整される。例えば、絶縁膜5bより音速の遅い金属膜(または絶縁膜)5aのSiO2膜4に占める面積の割合が大きくなるほど周波数が低周波側に遷移する。逆に、絶縁膜5bより音速の早い金属膜(絶縁膜)5aの割合が大きくなるほど周波数が高周波側に遷移する。なお、絶縁膜5a、5bには、SiN,Al2O3,SiC、DLCなどが用いられ、金属膜5aには、例えば、Au、Al、Cu、Ti、Ag、Pt、Ta、W等の導電性材料が用いられる。
【0050】
また、図12Aおよび図12Bに示すように、金属膜5aは、SiO2膜4全体を覆い、さらにその上に周波数調整のためのパターンが形成される形態であってもよい。このように、金属膜5aをSiO2膜4全体に(100%)成膜して、各共振器の共振周波数を中心周波数に近づけた後、共振器の共振周波数の面内分布に合わせた面積分布を持つパターンを形成することができる。これにより、圧電基板2面内の共振器ごと(またはチップごと)の周波数分布を調整することが可能になる。
【0051】
また、図13Aおよび13Bに示すようにAl2O3膜5bの外側に金属膜5aが露出するように成膜することで、弾性波デバイスの放熱性を改善することもできる。
【0052】
金属膜の上に設けられる膜は、圧電基板2上の周波数分布に対応して、音速が場所によって異なるように形成されてもよい。例えば、周波数の圧電基板面内の分布として、中心周波数より高い領域と低い領域が混在することが考えられる。この時は、周波数調整膜に、SiO2膜4より音速の高い膜と低い膜を混在させることにより面内分布を改善することができる。
【0053】
(第4の実施形態)
図14Aおよび図14Bは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの断面図である。図14Aおよび図14Bに示す構成においては、圧電基板2上にくし型電極3および反射器3a、3bを覆うように形成されるSiO2膜4の一部に、他の部分より厚さが大きくなる部分が形成されている。さらに、このSiO2膜4を覆うようにAl2O3膜5bが形成されている。Al2O3膜5bの表面には、SiO2膜4のパターンが反映される。図14Aの方が、図14Bよりも、SiO2表面において厚みが大きくなる部分の面積の全体に対する割合が広い。この面積の割合により、弾性波デバイスの周波数が調整される。これら図14Aおよび図14Bに示す構成において、SiO2膜4は、周波数調整膜の機能も兼ね備えている。
【0054】
SiO2表面において厚みが大きくなる部分の面積は、例えば、SiO2膜4のエッチングする面積により調整することができる。このように、同一圧電基板2上においてSiO2膜4のエッチングする面積を変えることで、周波数の面内ばらつきを低減した弾性境界波デバイスを作成することができる。
【0055】
(第5の実施形態)
図15Aおよび図15Bは、本実施形態にかかる弾性表面波デバイスの断面図である。これらの弾性表面波デバイスは、圧電基板2上にAl等の導電性材料からなるくし型電極3および反射器3a、3bが形成され、その上に周波数調整膜5が形成される。周波数調整膜5が形成される面積の全体における割合により、弾性表面波デバイスの周波数が調整される。図15Bの方が、図15Aよりも、周波数調整膜5が形成される面積の全体に対する割合が広い。周波数調整膜5の材料には、例えば、SiO2が用いられる。この場合、励起領域における周波数調整膜5の面積の割合が大きい程、周波数は低周波側へ遷移する。このように、同一の圧電基板2上で周波数調整膜5の面積を変えることで周波数の面内ばらつきを低減した弾性表面波デバイスを作成することができる。
【0056】
また、図16Aおよび図16Bに示すように、周波数調整膜5は、圧電基板2全体を覆い、さらにその上に周波数調整のためのパターンが形成される形態であってもよい。このように、SiO2膜を、圧電基板2全体に(100%)成膜して、各共振器の共振周波数を中心周波数に近づけた後、その上に、共振器の共振周波数の面内分布に合わせた面積分布を持つパターンを形成することができる。これにより、圧電基板2面内の共振器ごと(またはチップごと)の周波数分布を調整することが可能になる。
【0057】
(第6の実施形態)
図17Aは、本実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図17Bは、図17Aのa―a´線断面図である。図17Aおよび図17Bに示す例では、周波数調整膜5がSiO2膜4上の全体の左半分の部分に接するように設けられている。この場合、周波数調整膜5がSiO2膜4上で占める面積の割合は50%である。そのため、励起領域における周波数調整膜5が占める面積の割合も50%である。なお、周波数調整膜5は、例えば、厚さ50nmで形成される。
【0058】
上記実施形態1〜5では、周波数調整膜5は、厚みが他より多くなる部分が励起領域において均等に分布するようにパターニングされていたが、図17Aおよび図17Bに示すように、周波数調整膜5を一箇所に集中して設けてもよい。この場合も、同様に、周波数調整膜5の面積の調整により、弾性波デバイスの周波数が調整される。
【0059】
なお、周波数調整膜5の膜厚が厚い場合は、図17Aおよび図17Bに示すように一箇所に集中して周波数調整膜5が設けられると、共振周波数付近に不要波が発生してしまい、特性が劣化する場合もある。この場合は、上記実施形態1〜5に示したように、周波数調整膜5を、励起領域において分散させて設けることにより、特性の劣化を防ぐことができる。また、周波数調整膜5の配置は、規則的(周期的)であってもよいし、不規則(ランダム)であってもよい。
【0060】
(第7の実施形態)
図18は、本実施形態にかかるラダー型のフィルタを構成する弾性波デバイスの平面図である。このフィルタは、圧電基板上2に設けられた直列共振器S1〜S3、並列共振器P1、P2およびこれらを接続する配線パターンにより構成される。各共振器は、圧電基板2上に、くし型電極3および反射器3a、3bが設けられ、さらにこれらを覆うようにSiO2膜4が設けられて構成されている。
【0061】
図18に示す例では、フィルタを構成する複数の共振器S1〜S3、P1、P2のうち直列共振器S3に、周波数調整膜5が、SiO2膜4上に接するように設けられている。このように、フィルタを構成する共振器の一部の共振器に周波数調整膜5を設けることで、当該一部の共振器の周波数のみを調整するができる。このように、一部の共振器の周波数のみを調整することにより、フィルタの比帯域幅を調整することができる。これを用いれば、面内における比帯域幅のずれを低減することができる。
【0062】
例えば、ラダー型フィルタの場合は、共振器ごとに周波数が異なる場合がある。例えば直列共振器の反共振周波数が一番高い共振器がフィルタの右肩特性を担っている場合は、この共振器の周波数のみを調整することにより比帯域幅を大きくしたり、小さくしたりすることが可能となる。
【0063】
なお、周波数調整膜5を設ける共振器の数は、図18に示す例に限られず、共振器S1〜S3、P1、P2のうち複数の共振器に設けてもよい。その場合、さらに、周波数調整膜5の面積を共振器ごとに異なる構成にして、フィルタ特性を調整することもできる。
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0064】
(付記1)
圧電性を有する圧電基板と、
圧電基板に設けられた複数の電極指を有するくし型電極と、
前記くし型電極の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質とを備え、
前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において、前記調整媒質により他の部分より厚みが大きくなる領域の面積Tにより、周波数特性が調整されて形成される、弾性波デバイス。
【0065】
(付記2)
前記圧電基板上に形成された複数の弾性波デバイスであって、
前記複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整されていることを特徴とする、付記1に記載の弾性波デバイス。
【0066】
(付記3)
前記圧電基板はウエハであり、ウエハにおける複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスの前記面積Tが調整されている、付記2に記載の弾性波デバイス。
【0067】
(付記4)
前記調整媒質は、前記圧電基板上に前記くし型電極を覆うように設けられる第1媒質と、前記第1媒質上に設けられる第2媒質とを含み、
前記第2媒質が第1媒質上で占める面積を面積Tとして、前記周波数特性が調整される、付記1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0068】
(付記5)
前記調整媒質は、前記第2媒質を覆うように設けられる第3媒質をさらに含む、付記1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0069】
(付記6)
前記圧電基板上に複数の弾性波デバイスが形成され、
前記調整媒質は、複数の弾性波デバイスの前記くし型電極を覆うように設けられる第1媒質と、前記第1媒質上であって、前記複数の弾性波デバイスのうち一部の弾性波デバイスに設けられる第2媒質と、前記一部の弾性波デバイス以外の他の弾性波デバイスに設けられる第3媒質を含み、
前記第2媒質または前記第3媒質それぞれが前記第1媒質上で占める面積を前記面積Tとして、各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整され、
前記第2媒質と前記第3媒質は、音速が互いに異なる媒質である、付記1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0070】
(付記7)
前記調整媒質は、前記第2媒質および前記第3媒質の上に設けられる第4媒質をさらに含む、付記6に記載の弾性波デバイス。
【0071】
(付記8)
前記第2媒質の音速は、前記第1媒質より速く、前記第3媒質の音速は前記第1媒質より遅い、付記6または7に記載の弾性波デバイス。
【0072】
(付記9)
前記調整媒質は、他の部分と厚みが異なる部分を有するパターン層を含み、前記厚みが異なる部分の面積を前記面積Tとして、前記周波数特性が調整される、付記1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0073】
(付記10)
前記調整媒質は、前記励起領域全体に渡って前記くし型電極を覆う第1媒質と、前記第1媒質上に設けられる前記パターン層とを含む、付記9に記載の弾性波デバイス。
【0074】
(付記11)
前記パターン層は、前記励起領域全体に渡って前記くし型電極を覆うように設けられる、付記9に記載の弾性波デバイス。
【0075】
(付記12)
前記調整媒質は、前記パターン層を覆うように設けられる媒質をさらに備える、付記9〜11のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0076】
(付記13)
前記くし型電極の電極材料にAl、Ti、Cu、Au、Ni、Cr、Ta、Wのうちいずれかを含むことを特徴とする、付記1〜12のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0077】
(付記14)
前記調整媒質は、SiO2を主成分とすることを特徴とする、付記1〜13のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0078】
(付記15)
前記圧電基板は、LiTaO3基板もしくはLiNbO3基板を用いることを特徴とする付記1〜14のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【0079】
(付記16)
前記圧電基板上に設けられる複数の前記くし型電極により形成される複数の共振器を含むフィルタを構成する前記弾性波デバイスであって、
前記フィルタを構成する前記複数の共振器のうち一部の共振器に、前記調整媒質が設けられる、付記1に記載の弾性波デバイス。
【0080】
(付記17)
付記1〜16のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを用いた、通信装置。
【0081】
(付記18)
圧電基板上に、複数の電極指を有するくし型電極を形成する工程と、
前記くし型電極により形成される弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数を測定する工程と、
前記測定された共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近づくように、少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質を設ける工程とを有し、
前記調整媒質は、前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において前記調整媒質により弾性波デバイスの厚みが他の部分より大きくなる領域の面積Tが調整されることにより、前記弾性波デバイスの周波数特性が調整されて形成されることを特徴とする、弾性波デバイスの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1Aは、第1の実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図1Bは、図1Aのa−a´線断面図である。
【図2】図2Aは、周波数調整膜の面積が全体の50%である構成を示す平面図である。図2Bは、図2Aのa−a´線断面図である。
【図3】図3Aは、周波数調整膜の面積が全体の75%である構成を示す平面図である。図2Bは、図2Aのa−a´線断面図である。
【図4】図4は、周波数調整膜の面積とアドミッタンス特性との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、周波数調整膜の面積と反共振周波数の遷移との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、ウエハ面内の弾性波デバイスの周波数分布を表す上面図である。
【図7】図7Aは、図6に示すウエハの領域T1に形成される弾性波デバイスの平面図である。図7B〜図7Kは、図6に示す領域T1〜T10それぞれにおける弾性波デバイスの断面図である。
【図8】図8B及び図8Cは、ウエハ上に形成される弾性波デバイスの製造工程を示す図である。
【図9】図9Aは、変形例1にかかる弾性波デバイスの平面図である。図9Bは、図9Aのa−a´線断面図である。
【図10】図10Aおよび図10Bは、第2の実施形態にかかる弾性波デバイスの断面図である。
【図11】図11Aは、第3の実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図11Bは、図11Aのa―a´線断面図である。
【図12】図12Aおよび図12Bは第3の実施形態の変形例にかかる弾性波デバイスの平面図である。図12Bは、図12Aのa―a´線断面図である。
【図13】図13Aおよび図13Bは第3の実施形態の他の変形例にかかる弾性波デバイスの平面図である。図13Bは、図13Aのa―a´線断面図である。
【図14】図14Aおよび図14Bは、第4の実施形態にかかる弾性波デバイスの断面図
【図15】図15Aおよび図15Bは、第5の実施形態にかかる弾性表面波デバイスの断面図
【図16】図16Aおよび図16Bは第5の実施形態の変形例にかかる弾性波デバイスの断面図である。
【図17】図17Aは、第6の実施形態にかかる弾性波デバイスの平面図である。図17Bは、図17Aのa―a´線断面図である。
【図18】図18は、第7の実施形態にかかるラダー型のフィルタを構成する弾性波デバイスの平面図である。
【符号の説明】
【0083】
2 圧電基板
3 くし型電極
3a、b 反射器
4 SiO2膜
5 周波数調整膜
5a 絶縁膜または金属膜
5b 絶縁膜
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性を有する圧電基板と、
圧電基板に設けられた複数の電極指を有するくし型電極と、
前記くし型電極の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質とを備え、
前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において、前記調整媒質により他の部分より厚みが大きくなる領域の面積Tにより、周波数特性が調整されて形成される、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記圧電基板上に形成された複数の弾性波デバイスであって、
前記複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整されていることを特徴とする、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記調整媒質は、前記圧電基板上に前記くし型電極を覆うように設けられる第1媒質と、前記第1媒質上に設けられる第2媒質とを含み、
前記第2媒質が第1媒質上で占める面積を面積Tとして、前記周波数特性が調整される、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記圧電基板上に複数の弾性波デバイスが形成され、
前記調整媒質は、複数の弾性波デバイスの前記くし型電極を覆うように設けられる第1媒質と、前記第1媒質上であって、前記複数の弾性波デバイスのうち一部の弾性波デバイスに設けられる第2媒質と、前記一部の弾性波デバイス以外の他の弾性波デバイスに設けられる第3媒質を含み、
前記第2媒質または前記第3媒質それぞれが前記第1媒質上で占める面積を前記面積Tとして、各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整され、
前記第2媒質と前記第3媒質は、音速が互いに異なる媒質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記調整媒質は、他の部分と厚みが異なる部分を有するパターン層を含み、前記厚みが異なる部分の面積を前記面積Tとして、前記周波数特性が調整される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記圧電基板上に設けられる複数の前記くし型電極により形成される複数の共振器を含むフィルタを構成する前記弾性波デバイスであって、
前記フィルタを構成する前記複数の共振器のうち一部の共振器に、前記調整媒質が設けられる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを用いた、通信装置。
【請求項8】
圧電基板上に、複数の電極指を有するくし型電極を形成する工程と、
前記くし型電極により形成される弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数を測定する工程と、
前記測定された共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近づくように、少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質を設ける工程とを有し、
前記調整媒質は、前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において前記調整媒質により弾性波デバイスの厚みが他の部分より大きくなる領域の面積Tが調整されることにより、前記弾性波デバイスの周波数特性が調整されて形成されることを特徴とする、弾性波デバイスの製造方法。
【請求項1】
圧電性を有する圧電基板と、
圧電基板に設けられた複数の電極指を有するくし型電極と、
前記くし型電極の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質とを備え、
前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において、前記調整媒質により他の部分より厚みが大きくなる領域の面積Tにより、周波数特性が調整されて形成される、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記圧電基板上に形成された複数の弾性波デバイスであって、
前記複数の弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近くなるように各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整されていることを特徴とする、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記調整媒質は、前記圧電基板上に前記くし型電極を覆うように設けられる第1媒質と、前記第1媒質上に設けられる第2媒質とを含み、
前記第2媒質が第1媒質上で占める面積を面積Tとして、前記周波数特性が調整される、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記圧電基板上に複数の弾性波デバイスが形成され、
前記調整媒質は、複数の弾性波デバイスの前記くし型電極を覆うように設けられる第1媒質と、前記第1媒質上であって、前記複数の弾性波デバイスのうち一部の弾性波デバイスに設けられる第2媒質と、前記一部の弾性波デバイス以外の他の弾性波デバイスに設けられる第3媒質を含み、
前記第2媒質または前記第3媒質それぞれが前記第1媒質上で占める面積を前記面積Tとして、各弾性波デバイスにおける前記面積Tが調整され、
前記第2媒質と前記第3媒質は、音速が互いに異なる媒質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記調整媒質は、他の部分と厚みが異なる部分を有するパターン層を含み、前記厚みが異なる部分の面積を前記面積Tとして、前記周波数特性が調整される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記圧電基板上に設けられる複数の前記くし型電極により形成される複数の共振器を含むフィルタを構成する前記弾性波デバイスであって、
前記フィルタを構成する前記複数の共振器のうち一部の共振器に、前記調整媒質が設けられる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを用いた、通信装置。
【請求項8】
圧電基板上に、複数の電極指を有するくし型電極を形成する工程と、
前記くし型電極により形成される弾性波デバイスの共振周波数および/または反共振周波数を測定する工程と、
前記測定された共振周波数および/または反共振周波数が所定の周波数に近づくように、少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも1層の調整媒質を設ける工程とを有し、
前記調整媒質は、前記電極指および電極指間のスペースが前記圧電基板上で占める励起領域において前記調整媒質により弾性波デバイスの厚みが他の部分より大きくなる領域の面積Tが調整されることにより、前記弾性波デバイスの周波数特性が調整されて形成されることを特徴とする、弾性波デバイスの製造方法。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図7I】
【図7J】
【図7K】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図7I】
【図7J】
【図7K】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【公開番号】特開2010−41096(P2010−41096A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198431(P2008−198431)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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