説明

弾性波フィルタ装置

【課題】高周波数側の通過帯域外の減衰特性が高い弾性波フィルタ装置を提供する。
【解決手段】弾性波フィルタ装置1は、入力側信号端子15と出力側信号端子16との間に接続されている縦結合共振子型弾性波フィルタ部30と、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30に対して並列となるように、入力側信号端子15と出力側信号端子16との間で直列に接続されている第1及び第2のリアクタンス素子50,60とを備えている。縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の複数のIDT電極31〜35のうちの一端が出力側信号端子16に接続されたIDT電極32,34の他端が第1のアース電極81に接続されている。複数のIDT電極31〜35のうちの一端が入力側信号端子15に接続されたIDT電極31,33,35の他端と、第1及び第2のリアクタンス素子50,60間の接続点54とが第2のアース電極82に共通に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性境界波フィルタ装置や弾性表面波フィルタ装置などの弾性波フィルタ装置に関し、特に、縦結合共振子型弾性波フィルタ部と、縦結合共振子型弾性波フィルタ部に並列に接続されている第1及び第2のリアクタンス素子を有する弾性波フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦結合共振子型弾性波フィルタ部を有する弾性波フィルタ装置は、小型・軽量でフィルタ特性が優れているため、近年、携帯通信端末のRF段やIF段のフィルタとして多用されている。例えば、下記の特許文献1には、縦結合共振子型弾性波フィルタ部を有する弾性波フィルタ装置の一例が開示されている。
【0003】
図22は、特許文献1に開示された弾性波フィルタ装置の電極パターンを表す平面図である。図22に示すように、弾性波フィルタ装置100では、入力側信号端子101と出力信号端子102との間において2つの3IDT型の共振子型弾性波フィルタ部110,120が縦続接続されている。
【0004】
共振子型弾性波フィルタ部110は、弾性波伝搬方向に沿って配列されている第1〜第3のIDT電極111〜113と、第1〜第3のIDT電極111〜113が設けられた領域の弾性波伝搬方向の両側に配置されている第1及び第2の反射器114,115とを備えている。一方、共振子型弾性波フィルタ部120は、弾性波伝搬方向に沿って配列されている第4〜第6のIDT電極121〜123と、第4〜第6のIDT電極121〜123が設けられた領域の弾性波伝搬方向の両側に配置されている第3及び第4の反射器124,125とを備えている。
【0005】
第2のIDT電極112の一端は入力側信号端子101に接続されており、他端がグラウンド電位に接続されている。第1及び第3のIDT電極111,113の各一端はグラウンド電位に接続されており、各他端が第4及び第6のIDT電極121,123の各一端に接続されている。第4及び第6のIDT電極121,123の各他端は、グラウンド電位に接続されている。第5のIDT電極122の一端は出力信号端子102に接続されており、他端がグラウンド電位に接続されている。
【特許文献1】特開平8−65096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に開示された弾性波フィルタ装置100では、一端が入力側のホット電位に接続されているIDT電極112,121,123の各他端と、一端が出力側のホット電位に接続されているIDT電極111,113,122の各他端とが共通のアース電位に接続されている。すなわち、一端が入力側のホット電位に接続されているIDT電極の他端が接続される入力対向アースと、一端が出力側のホット電位に接続されているIDT電極の他端が接続される出力対向アースとが共通化されている。このように、入力対向アースと出力対向アースとを共通化することにより、パターン電極の構成を簡単にすることができる。
【0007】
しかしながら、入力対向アースと出力対向アースとを共通化した場合、高い周波数領域における減衰量が小さくなるため、高周波数側の通過帯域外の減衰特性を高めることが困難となるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、高周波数側の通過帯域外の減衰特性が高い弾性波フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る弾性波フィルタ装置は、入力側信号端子と、出力側信号端子と、縦結合共振子型弾性波フィルタ部と、第1及び第2のリアクタンス素子と、第1及び第2のアース電極とを備えている。縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、弾性波伝搬方向に沿って配列されている複数のIDT電極と、複数のIDT電極が形成されている領域の弾性波伝搬方向の両側に配置されている第1及び第2の反射器とを有している。縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、入力側信号端子と出力側信号端子との間に接続されている。第1及び第2のリアクタンス素子は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部に対して並列となるように、入力側信号端子と出力側信号端子との間で直列に接続されている。第1及び第2のアース電極のそれぞれは、アース電位に接続されている。複数のIDT電極のうちの一端が出力側信号端子に接続されているIDT電極の他端が第1のアース電極に接続されている。複数のIDT電極のうちの一端が入力側信号端子に接続されているIDT電極の他端と、第1及び第2のリアクタンス素子間の接続点とが第2のアース電極に共通に接続されている。
【0010】
本発明のある特定の局面では、縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、弾性波伝搬方向に沿って配列されている第1〜第5のIDT電極を有しており、第1、第3及び第5のIDT電極の各一端が入力側信号端子に共通に接続されており、各他端が、前記第1及び第2のリアクタンス素子間の接続点と共に、第2のアース電極に共通に接続されており、第2及び第4のIDT電極の各一端が出力側信号端子に共通に接続されており、各他端が第1のアースに共通に接続されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る弾性波フィルタ装置では、第1及び第2のリアクタンス素子が縦結合共振子型弾性波フィルタ部に対して並列に接続されており、複数のIDT電極のうちの一端が出力側信号端子に接続されているIDT電極の他端が第1のアース電極に接続されており、かつ複数のIDT電極のうちの一端が入力側信号端子に接続されているIDT電極の他端と、第1及び第2のリアクタンス素子間の接続点とが第2のアース電極に共通に接続されている。このため、高周波数量域における減衰量を大きくすることができる。従って、高周波数側の通過帯域外の減衰特性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0013】
図1は、本実施形態の弾性波フィルタ装置の略図的平面図であり、図2は、本実施形態の弾性波フィルタ装置の要部を示す部分切欠正面断面図である。また、図3は、本実施形態の弾性波フィルタ装置の略図的平面図である。本実施形態の弾性波フィルタ装置1は、例えば携帯電話のRF段の受信用フィルタ装置として用いられる。
【0014】
図1に示すように、弾性波フィルタ装置1は、矩形の平面形状を有し、上面に複数の金属バンプ2〜7を有する。金属バンプ2〜7を用いて、弾性波フィルタ装置1は、実装基板に表面実装することができる。すなわち、弾性波フィルタ装置1が上下逆転され、金属バンプ2〜7側から、実装基板上の電極に接合される。
【0015】
図2に示すように、弾性波フィルタ装置1は、圧電基板11と、圧電基板11上に形成されている第1の絶縁膜12と、第1の絶縁膜12上に形成されている第2の絶縁膜13とを有する。本実施形態では、圧電基板11と、第1の絶縁膜12との界面を伝搬する弾性境界波を利用して弾性境界波装置が構成されている。
【0016】
圧電基板11は、例えば、LiTaO、LiNbO等の圧電材料からなる圧電セラミックスにより形成されていてもよい。また、圧電基板11は、水晶などの圧電単結晶により形成されていてもよい。
【0017】
第1の絶縁膜12は、例えば、SiOやSiNなどの絶縁性材料により形成されている。なお、第1の絶縁膜12は、複数の絶縁膜を積層することにより形成されてもよい。例えば、第1の絶縁膜12は、SiO膜とSiN膜との積層膜により構成されていてもよい。
【0018】
第2の絶縁膜13は、本実施形態では、上方に伝搬してきた波を吸収する吸音膜として設けられている。第2の絶縁膜13は、吸音作用を有する適宜の絶縁性材料からなる。具体的には、第2の絶縁膜13は、例えば、ポリイミドやエポキシ樹脂などにより形成することができる。
【0019】
圧電基板11の上面には、電極構造14と、第1の配線71とが形成されている。図1及び図5に示すように、この電極構造14により、圧電基板11上に、後述の弾性波共振子20、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30並びに第1及び第2のリアクタンス素子50,60が形成されている。
【0020】
なお、電極構造14と第1の配線71とは、図1においては、一点鎖線で示されている。図1において破線で示されている部分は、後述するように、第1の絶縁膜12の上面に形成されている第2の配線72に相当する。また、図5は、電極構造14の上方に位置する第1の絶縁膜12及び第2の絶縁膜13が取り除かれた状態を示している。図5において、IDT電極及びグレーティング反射器が構成されている部分は、矩形や台形の外形形状の中にXを付与した記号で略図的に示されている。
【0021】
電極構造14は、例えばPt,Au,W,Ta,Cu,Ag,Ni,Fe,Cr,Pd,Alまたはこれらのうちの1種以上の金属を含む合金により構成される。電極構造14は、複数の金属膜または合金膜を積層した積層膜により構成されていてもよい。
【0022】
第1の配線71は、例えばAl,Cu,Auまたはこれらのうちの1種以上の金属を含む合金により構成される。第1の配線71は、電極構造14と同じ材料で形成されていてもよく、その場合には、第1の配線71と電極構造14とを同じ工程により形成することができる。
【0023】
図2に示すように、電極構造14及び第1の配線71を覆うように形成されている第1の絶縁膜12には、第1の配線71の一部が露出するように貫通孔12aが形成されている。第1の絶縁膜12の上には、貫通孔12a内に至るように第2の配線72が形成されている。これにより、第1の配線71と第2の配線72とが電気的に接続されている。第2の配線72の平面形状を図1及び図4に示す。なお、図1では、第2の配線72を破線で示している。
【0024】
第2の配線72は、例えばAl,Cu,Auまたはこれらのうちの1種以上の金属を含む合金により構成される。第2の配線72は、第1の配線71と同じ材料により形成されていてもよいし、異なる材料により形成されていてもよい。第2の配線72は、複数の金属膜または合金膜が積層された積層膜により構成されていてもよい。第2の配線72は、例えば、Ti膜とAl膜との積層膜により構成されていてもよい。
【0025】
本実施形態のように、電極構造14とは異なる層に設けられた第2の配線72を用いることにより、弾性波共振子20、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30並びに第1及び第2のリアクタンス素子50,60等を高密度に配置することができる。
【0026】
図2に示すように、第2の配線72を覆うように形成されている第2の絶縁膜13には、金属バンプ2〜7に対応する位置に貫通孔13aが形成されている。この貫通孔13aにより、第2の配線72の一部が露出している。
【0027】
貫通孔12a、13a内には、アンダーバンプメタル層73が形成されている。アンダーバンプメタル層73は、例えば、NiやCuなどを電解メッキすることにより形成することができる。アンダーバンプメタル層73を形成する材料は、特に限定されないが、後述する金属バンプ2〜7を形成している材料との接合性に優れた材料であることが好ましい。
【0028】
アンダーバンプメタル層73の上には、金属バンプ2〜7が形成されている。本実施形態では、金属バンプ2〜7は、半田からなるが、例えばAuやAg等の他の金属や合金により構成されていてもよい。
【0029】
次に、図6を参照しつつ、弾性波フィルタ装置1の回路構成について詳細に説明する。
【0030】
図6に示すように、弾性波フィルタ装置1は、入力側信号端子15と出力側信号端子16とを備えている。入力側信号端子15は、図1に示す金属バンプ2に接続されている。また、出力側信号端子16は、図1に示す金属バンプ7に接続されている。
【0031】
入力側信号端子15と出力側信号端子16との間には、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30が接続されている。縦結合共振子型弾性波フィルタ部30は、弾性波伝搬方向Dに沿って配列されている第1〜第5のIDT電極31〜35を有している。第1〜第5のIDT電極31〜35が設けられた領域の弾性波伝搬方向Dの両側には、第1及び第2のグレーティング反射器36,37が配置されている。第1,第3及び第5のIDT電極31,33,35の各一端は入力側信号端子15に共通に接続されている。一方、第1,第3及び第5のIDT電極31,33,35の各他端は、図1に示す金属バンプ4〜6により構成される第2のアース電極82に共通に接続されている。第2及び第4のIDT電極32,34の各一端は、出力側信号端子16に共通に接続されている。一方、第2及び第4のIDT電極32,34の各他端は、図1に示す金属バンプ3により構成される第1のアース電極81に共通に接続されている。
【0032】
具体的には、第1〜第5のIDT電極31〜35のそれぞれは、互いに間挿し合う第1及び第2のくし歯電極31a〜35a、31b〜35bにより構成されている。第1,第3及び第5のIDT電極31,33,35の第1のくし歯電極31a、33a、35aが入力側信号端子15に共通に接続されている。第1,第3及び第5のIDT電極31,33,35の第2のくし歯電極31b、33b、35bが第2のアース電極82に共通に接続されている。第2及び第4のIDT電極32,34の第2のくし歯電極32b、34bが出力側信号端子16に共通に接続されている。第2及び第4のIDT電極32,34の第1のくし歯電極32a、34aが第1のアース電極81に共通に接続されている。
【0033】
入力側信号端子15と縦結合共振子型弾性波フィルタ部30との間には、弾性波共振子20が接続されている。IDT電極21は、互いに間挿し合う第1及び第2のくし歯電極21a、21bを有している。第1のくし歯電極21aは、入力側信号端子15に接続されている。第2のくし歯電極21bは、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30に接続されている。
【0034】
入力側信号端子15と出力側信号端子16との間には、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30に対して並列となるように、第1及び第2のリアクタンス素子50,60が直列に接続されている。
【0035】
本実施形態では、具体的には、第1のリアクタンス素子50は、互いに間挿し合う一対の第1及び第2のくし歯電極51,52間の容量により構成されている。第1のくし歯電極51は、弾性波共振子20と縦結合共振子型弾性波フィルタ部30との間の接続点53に接続されている。第2のくし歯電極52は、第2のリアクタンス素子60に接続されている。
【0036】
第2のリアクタンス素子60は、2つの弾性波共振子60a、60bによって構成されている。弾性波共振子60a、60bは、第1のリアクタンス素子50と出力側信号端子16との間に直列に接続されている。弾性波共振子60a、60bのそれぞれは、IDT電極61と、グレーティング反射器62,63とを備えている。グレーティング反射器62,63は、IDT電極61の弾性波伝搬方向Dの両側に配置されている。IDT電極61は、互いに間挿し合う第1及び第2のくし歯電極61a、61bを備えている。弾性波共振子60a、60bのそれぞれの第1のくし歯電極61aは、第1のリアクタンス素子50に接続されている。弾性波共振子60a、60bのそれぞれの第2のくし歯電極61bは、出力側信号端子16に接続されている。
【0037】
第1のリアクタンス素子50と第2のリアクタンス素子60との間の接続点54は、上述の第1,第3及び第5のIDT電極31,33,35の各他端と共に第2のアース電極82に共通に接続されている。
【0038】
このように、本実施形態では、第1及び第2のリアクタンス素子50,60が縦結合共振子型弾性波フィルタ部30に対して並列に接続されている。そして、一端が出力側信号端子16に接続されている第2及び第4のIDT電極32,34の他端と、一端が入力側信号端子15に接続されている第1,第3及び第5のIDT電極31,33,35の他端とが異なるアース電極に接続されている。かつ、第1及び第2のリアクタンス素子50,60間の接続点54が第1,第3及び第5のIDT電極31,33,35の他端が接続されている第2のアース電極82に接続されている。すなわち、一端が出力側のホット電位に接続されている第2及び第4のIDT電極32,34の他端が接続されている出力対向アースと、一端が入力側のホット電位に接続されている第1,第3及び第5のIDT電極31,33,35の他端が接続されている入力対向アースとが分離されており、かつ、入力対向アースと第1及び第2のリアクタンス素子50,60が接続されているアースとが共通化されている。従って、本実施形態の弾性波フィルタ装置1によれば、高い周波数領域における減衰量を大きくすることができる。従って、高周波数側の通過帯域外の高い減衰特性を実現することができる。
【0039】
これを具体的な実施例に基づいて説明する。
【0040】
第1の実施例として、図1〜図6に示す弾性波フィルタ装置1を以下の条件で作製し、挿入損失を測定した。
圧電基板11の材質:15°YカットX伝搬LiNbO
第1の絶縁膜12の材質:SiO
第1の絶縁膜12の厚さ:6600nm
電極構造14:NiCr/Au=25/136nm
弾性波共振子20:IDT電極21の電極指の対数:77対、IDT電極21の電極指ピッチ:1.696μm(電極指ピッチで定まる波長λ=3.391μm)、IDT電極21のデューティー比:0.60、IDT電極21の交叉幅:99μm
縦結合共振子型弾性波フィルタ部30:IDT電極31の電極指の対数:16対、IDT電極31の交叉幅:109μm、IDT電極32の電極指の対数:8対、IDT電極32の交叉幅:109μm、IDT電極33の電極指の対数:6対、IDT電極33の交叉幅:109μm、IDT電極34の電極指の対数:8対、IDT電極34の交叉幅:109μm、IDT電極35の電極指の対数:16対、IDT電極35の交叉幅:109μm、IDT電極31,35の電極指ピッチ:1.740μm(電極指ピッチで定まる波長λ=3.481μm)、IDT電極32,34の電極指ピッチ:1.681μm(電極指ピッチで定まる波長λ=3.362μm)、IDT33電極の電極指ピッチ:1.666μm(電極指ピッチで定まる波長λ=3.371μm)、IDT電極31〜35のデューティー比:0.60、反射器36,37の電極指の対数:11対、反射器36,37のデューティー比:0.60
第1のリアクタンス素子50:電極指の対数:37.5対、電極指ピッチ:1.250μm、デューティー比:0.60、交叉幅:115μm
弾性波共振子60a:IDT電極の電極指の対数:40対、IDT電極の電極指ピッチ:1.752μm(電極指ピッチで定まる波長λ=3.504)、IDT電極のデューティー比:0.60、IDT電極の交叉幅:60μm、反射器の電極指の対数:10対、反射器のデューティー比:0.60
弾性波共振子60b:IDT電極の電極指の対数:40対、IDT電極の電極指ピッチ:1.752μm(電極指ピッチで定まる波長λ=3.504)、IDT電極のデューティー比:0.60、IDT電極の交叉幅:60μm、反射器の電極指の対数:10対、反射器のデューティー比:0.60
【0041】
比較のために、アースの接続態様並びに第1及び第2のリアクタンス素子50,60の接続態様のみが異なる以下の第1〜第5の比較例に係る弾性波フィルタ装置を上記実施例と同じ設計パラメータで作製し、挿入損失を測定した。なお、第1〜第5の比較例の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0042】
図7に第1の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図を示し、図8に等価回路図を示す。図7及び図8に示すように、第1の比較例は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アース、出力対向アース並びに第1及び第2のリアクタンス素子50,60の全てのアースが共通化されている例である。なお、第1の比較例における第1及び第2のリアクタンス素子50,60の接続態様は、上記実施例と同様である。
【0043】
図9に第1の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果を実施例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果と共に示す。図9に示すように、実施例の弾性波フィルタ装置の方が、第1の比較例の弾性波フィルタ装置よりも3.5GHz以上の高い周波数領域における挿入損失が大きいことがわかる。6GHzにおいては、実施例の弾性波フィルタ装置の挿入損失が58dBで、第1の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失が38dBであり、実施例の弾性波フィルタ装置の方が、挿入損失が20dB大きくなっている。
【0044】
この結果から、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アースと出力対向アースとを共通化せず、第1及び第2のリアクタンス素子50,60のアースを入力対向アースと共通化することにより、全てのアースを共通化する場合よりも高い周波数領域における減衰量を大きくすることができることがわかる。
【0045】
図10に第2の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図を示し、図11に等価回路図を示す。図10及び図11に示すように、第2の比較例は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アース及び出力対向アースと第2のリアクタンス素子60のアースとが共通化されておらず、第1のリアクタンス素子50のアースが出力対向アースと共通化されている例である。なお、第2の比較例では、第1のリアクタンス素子50と第2のリアクタンス素子60とは直列に接続されていない。
【0046】
図12に第2の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果を実施例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果と共に示す。図12に示すように、実施例の弾性波フィルタ装置の方が、第2の比較例の弾性波フィルタ装置よりも3GHz以上の周波数領域における挿入損失が大きいことがわかる。
【0047】
この結果から、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アースと出力対向アースとを共通化せず、第1及び第2のリアクタンス素子50,60のアースを入力対向アースと共通化することにより、入力対向アース及び出力対向アースと第2のリアクタンス素子60のアースとが共通化されておらず、第1のリアクタンス素子50のアースが出力対向アースと共通化されている場合よりも高い周波数領域における減衰量を大きくすることができることがわかる。
【0048】
図13に第3の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図を示し、図14に等価回路図を示す。図13及び図14に示すように、第3の比較例は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アース及び出力対向アースと第1のリアクタンス素子50のアースとが共通化されておらず、第2のリアクタンス素子60のアースが入力対向アースと共通化されている例である。なお、第3の比較例においても、第1のリアクタンス素子50と第2のリアクタンス素子60とは直列に接続されていない。
【0049】
図15に第3の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果を実施例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果と共に示す。図15に示すように、実施例の弾性波フィルタ装置の方が、第3の比較例の弾性波フィルタ装置よりも3.5GHz以上の周波数領域における挿入損失が大きいことがわかる。
【0050】
この結果から、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アースと出力対向アースとを共通化せず、第1及び第2のリアクタンス素子50,60のアースを入力対向アースと共通化することにより、入力対向アース及び出力対向アースと第1のリアクタンス素子50のアースとが共通化されておらず、第2のリアクタンス素子60のアースが入力対向アースと共通化されている場合よりも高い周波数領域における減衰量を大きくすることができることがわかる。
【0051】
図16に第4の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図を示し、図17に等価回路図を示す。図16及び図17に示すように、第4の比較例は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アース及び出力対向アースと第2のリアクタンス素子60のアースとが共通化されておらず、第1のリアクタンス素子50のアースが入力対向アースと共通化されている例である。なお、第4の比較例においても、第1のリアクタンス素子50と第2のリアクタンス素子60とは直列に接続されていない。
【0052】
図18に第4の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果を実施例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果と共に示す。図18に示すように、実施例の弾性波フィルタ装置の方が、第4の比較例の弾性波フィルタ装置よりも1.5GHz以上の周波数領域における挿入損失が大きいことがわかる。
【0053】
この結果から、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アースと出力対向アースとを共通化せず、第1及び第2のリアクタンス素子50,60のアースを入力対向アースと共通化することにより、入力対向アース及び出力対向アースと第2のリアクタンス素子60のアースとが共通化されておらず、第1のリアクタンス素子50のアースが入力対向アースと共通化されている場合よりも高い周波数領域における減衰量を大きくすることができることがわかる。
【0054】
図19に第5の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図を示し、図20に等価回路図を示す。図19及び図20に示すように、第5の比較例は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アース及び出力対向アースと、第1のリアクタンス素子50のアースと、弾性波共振子60aのアースとが共通化されておらず、弾性波共振子60bのアースが入力対向アースと共通化されている例である。なお、第5の比較例においても、第1のリアクタンス素子50と第2のリアクタンス素子60とは直列に接続されていない。
【0055】
図21に第5の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果を実施例の弾性波フィルタ装置の挿入損失の測定結果と共に示す。図21に示すように、実施例の弾性波フィルタ装置の方が、第5の比較例の弾性波フィルタ装置よりも4GHz以上の周波数領域における減衰量が大きいことがわかる。
【0056】
この結果から、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アースと出力対向アースとを共通化せず、第1及び第2のリアクタンス素子50,60のアースを入力対向アースと共通化することにより、入力対向アース及び出力対向アースと、第1のリアクタンス素子50のアースと、弾性波共振子60aのアースとが共通化されておらず、弾性波共振子60bのアースが入力対向アースと共通化されている場合よりも高い周波数領域における減衰量を大きくすることができることがわかる。
【0057】
以上の結果からわかるように、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30に対して並列となるように、第1及び第2のリアクタンス素子50,60を直列に接続し、縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の入力対向アースと出力対向アースとを共通化せず、第1及び第2のリアクタンス素子50,60のアースを入力対向アースと共通化することにより、減衰極の位置を高周波側にシフトさせ、かつ減衰極における減衰レベルを深くすることができる。従って、高い周波数領域における減衰量を大きくすることができ、よって高周波数側の通過帯域外の減衰特性を高めることができる。
【0058】
上記実施形態では、縦結合共振子型弾性波フィルタ部が5IDT型の共振子型弾性波フィルタ部により構成される例について説明したが、本発明において、縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、3IDT型の共振子型弾性波フィルタ部であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、弾性境界波を利用した弾性波フィルタ装置の例について説明したが、本発明の弾性波フィルタ装置は、弾性表面波を利用した弾性波フィルタ装置であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、第2のリアクタンス素子が2つの弾性波共振子により構成される例について説明したが、第2のリアクタンス素子は、例えばひとつの弾性波共振子により構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態の弾性波フィルタ装置の略図的平面図である。
【図2】実施形態の弾性波フィルタ装置の要部を示す部分切欠正面断面図である。
【図3】実施形態の弾性波フィルタ装置の略図的平面図である。
【図4】第2の配線を示す略図的平面図である。
【図5】電極構造及び第1の配線を示す略図的平面図である。
【図6】実施形態の弾性波フィルタ装置の等価回路図である。
【図7】第1の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図である。
【図8】第1の比較例の弾性波フィルタ装置の等価回路図である。
【図9】実施例の弾性波フィルタ装置と第1の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失を表すグラフである。
【図10】第2の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図である。
【図11】第2の比較例の弾性波フィルタ装置の等価回路図である。
【図12】実施例の弾性波フィルタ装置と第2の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失を表すグラフである。
【図13】第3の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図である。
【図14】第3の比較例の弾性波フィルタ装置の等価回路図である。
【図15】実施例の弾性波フィルタ装置と第3の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失を表すグラフである。
【図16】第4の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図である。
【図17】第4の比較例の弾性波フィルタ装置の等価回路図である。
【図18】実施例の弾性波フィルタ装置と第4の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失を表すグラフである。
【図19】第5の比較例の弾性波フィルタ装置の略図的平面図である。
【図20】第5の比較例の弾性波フィルタ装置の等価回路図である。
【図21】実施例の弾性波フィルタ装置と第5の比較例の弾性波フィルタ装置の挿入損失を表すグラフである。
【図22】特許文献1に開示された弾性波フィルタ装置の電極パターンを表す平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1…弾性波フィルタ装置
2〜7…金属バンプ
11…圧電基板
12…第1の絶縁膜
12a…貫通孔
13…第2の絶縁膜
13a…貫通孔
14…電極構造
15…入力側信号端子
16…出力側信号端子
20…弾性波共振子
21…IDT電極
21a,21b…くし歯電極
30…縦結合共振子型弾性波フィルタ部
31…第1のIDT電極
32…第2のIDT電極
33…第3のIDT電極
34…第4のIDT電極
35…第5のIDT電極
31a〜35a…第1の歯電極
31b〜35b…第2の歯電極
36,37…グレーティング反射器
50…第1のリアクタンス素子
51,52…くし歯電極
53,54…接続点
60…第2のリアクタンス素子
60a,60b…弾性波共振子
61…IDT電極
61a,61b…くし歯電極
62,63…グレーティング反射器
71…第1の配線
72…第2の配線
73…アンダーバンプメタル層
81…第1のアース電極
82…第2のアース電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側信号端子と、
出力側信号端子と、
弾性波伝搬方向に沿って配列されている複数のIDT電極と、前記複数のIDT電極が形成されている領域の弾性波伝搬方向の両側に配置されている第1及び第2の反射器とを有しており、前記入力側信号端子と前記出力側信号端子との間に接続されている縦結合共振子型弾性波フィルタ部と、
前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部に対して並列となるように、前記入力側信号端子と前記出力側信号端子との間で直列に接続されている第1及び第2のリアクタンス素子と、
それぞれアース電位に接続されている第1及び第2のアース電極とを備え、
前記複数のIDT電極のうちの一端が前記出力側信号端子に接続されているIDT電極の他端が前記第1のアース電極に接続されており、
前記複数のIDT電極のうちの一端が前記入力側信号端子に接続されているIDT電極の他端と、前記第1及び第2のリアクタンス素子間の接続点とが前記第2のアース電極に共通に接続されている、弾性波フィルタ装置。
【請求項2】
前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、弾性波伝搬方向に沿って配列されている第1〜第5のIDT電極を有しており、
前記第1、第3及び第5のIDT電極の各一端が前記入力側信号端子に共通に接続されており、各他端が、前記第1及び第2のリアクタンス素子間の接続点と共に、前記第2のアース電極に共通に接続されており、
前記第2及び第4のIDT電極の各一端が前記出力側信号端子に共通に接続されており、各他端が前記前記第1のアースに共通に接続されている、請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−62873(P2010−62873A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226436(P2008−226436)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】