説明

弾性波素子とこれを用いた通信機器、及び弾性波素子の製造方法

【課題】弾性波素子上の導体間の接続信頼性を向上させること。
【解決手段】本発明の弾性波素子は、圧電基板21と、この圧電基板21の上に配置された櫛歯電極22及び第1、第2、第3の導体23〜25と、この圧電基板21の上に第3導体25を覆うように配置されたレジスト層40と、このレジスト層40の上に配置されて第1の導体と前記第2の導体とを電気的に接続する第4の導体26とを備える構成である。上記構成の如く、本発明は、第3の導体25と第4の導体26との絶縁を取る手段として製造工程で用いるレジスト層40を用いる。即ち、レジスト層40は、製造工程において下方に広がるテーパ形状を形成するので、レジスト層40において、ほぼ直角な角部がなくなる、若しくは、この角部が鈍角となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波素子とこれを用いた通信機器、及び弾性波素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波素子は、携帯電話などの通信機器の高周波フィルタとして用いられている。その弾性波素子の一例を図4に示す。図4(a)は弾性波素子の上面図で、図4(b)は図4(a)のA−Bにおける断面図である。図4(a)において、従来の弾性波素子は、圧電基板1と、この圧電基板1の上に配置された櫛歯電極2、第1の導体3、第2の導体4、及び第3の導体5と、圧電基板1の上に配置されて第1の導体3と第2の導体4とを電気的に接続する第4の導体6とを備える。尚、第3の導体5と第4の導体6とは電気的に絶縁されている。
【0003】
尚、図4(a)に示す様に、圧電基板1の上には第1〜第4の導体3〜6以外にも導体が配置されている。即ち、従来の弾性波素子は、信号が入力される入力端子として導体10、11、12と、櫛歯電極2においてフィルタリングされた信号が出力される出力端子として導体5、7と、グランド電位を作るグランド端子として導体13、14、15、16、3、4、8と、これら導体13、14、15、16、3、4、8同士を電気的に接続する導体17、18、19、6、9を圧電基板1上に備える。また、図4(b)において、従来の弾性波素子は、圧電基板1の上に第3の導体5を覆うように配置されたSiO2層20を有し、このSiO2層20を覆うように上記第4の導体6を配置することによって、第3の導体5と第4の導体6とは絶縁された状態となっている。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、2が知られている。
【特許文献1】特開平5−167387号公報
【特許文献2】特開平5−235684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の弾性波素子においては、第4の導体6の接続信頼性が低下する可能性がある。この理由を以下に説明する。
【0006】
第3の導体5は、圧電基板1の主面に対してほぼ垂直な面と水平な面とを有し、これら垂直な面と水平な面とにより形成されるほぼ直角な角部を有する。この第3の導体5を覆うSiO2膜20を形成する為に、圧電基板1の上方から圧電基板1の上面に対し、SiO2を蒸着させた場合、SiO2膜20は、第3の導体5の表面に沿って形成され、SiO2膜20もまた、ほぼ直角な角部を有することとなる。その為、このSiO2膜20を覆うように第4の導体6を形成した場合、上記角部によって、第4の導体6の接続信頼性が低下するという問題が生じるのである。
【0007】
そこで、本発明は、弾性波素子における圧電基板上の導体間の接続信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に、本発明の弾性波素子は、圧電基板と、この圧電基板の上に配置された櫛歯電極及び第1、第2、第3の導体と、この圧電基板の上に第3導体を覆うように配置されたレジスト層と、このレジスト層の上に配置されて第1の導体と第2の導体とを電気的に接続する第4の導体とを備える構成である。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の如く、本発明は、第3の導体と第4の導体との絶縁を取る手段として製造工程で用いるレジストを用いる。即ち、レジストは製造工程において下方に広がるテーパ形状を形成するので、上記ほぼ直角な角部がなくなる、若しくは、この角部が鈍角となる。その結果、レジスト層の上に形成する第4の導体の接続信頼性を向上させることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施形態について図1(a)(b)を用いて説明する。図1(a)は本実施の形態1の弾性波素子の上面模式図で、図1(b)は図1(a)のA−Bにおける断面模式図である。
【0011】
図1(a)において、弾性波素子は、圧電基板21と、この圧電基板21の上に配置された櫛歯電極22、第1の導体23、第2の導体24、及び第3の導体25と、圧電基板21の上に配置されて第1の導体23と第2の導体24とを電気的に接続する第4の導体26とを備える。また、第3の導体25と第4の導体26とは電気的に絶縁されている。
【0012】
尚、図1(a)に示す様に、圧電基板21の上には第1〜第4の導体23〜26以外にも導体が配置されている。即ち、弾性波素子は、信号が入力される入力端子として導体30、31、32と、櫛歯電極22においてフィルタリングされた信号が出力される出力端子として導体25、27と、グランド電位を作るグランド端子として導体33、34、35、36、23、24、28と、これら導体33、34、35、36、23、24、28同士を電気的に接続する導体37、38、39、26、29を圧電基板21上に有する。
【0013】
尚、この弾性波素子を搭載した通信機器(図示せず)は、この弾性波素子と、出力端子の導体25、27に接続された無線回路とを備える。
【0014】
また、図1(b)において、弾性波素子は、圧電基板21の上に第3の導体25を覆うように配置されたレジスト層40を有し、このレジスト層40を覆うように上記第4の導体26を配置することによって、第3の導体25と第4の導体26とは絶縁された状態となっている。このレジスト層40は、櫛歯電極22のパターニング用のレジストであり、フエノ−ル,クレゾ−ル,キシレノ−ル,レゾルシノ−ル,ビスフエノ−ル等のアルカリ可溶性樹脂を含む。
【0015】
このように、本発明の弾性波素子は、導体25、26間の絶縁を取る手段として製造工程で用いるレジスト層40が用いられる。即ち、レジスト層40は製造工程において下方に広がるテーパ形状を形成するので、レジスト層40において、ほぼ直角な角部がなくなる、若しくは、この角部が鈍角となる。その結果、レジスト層40の上に形成する第4の導体の接続信頼性を向上させることができるのである。
【0016】
尚、弾性波素子は、レジスト層40と第4の導体26との間に配置された密着導体層(図示せず)とを備えていることが望ましい。この密着導体層は、例えば、Ti、Crである。これにより、第4の導体26の剥離を抑制することができる。
【0017】
次に、本実施の形態1の弾性波素子の製造方法を、図2(a)〜(g)、図3(a)〜(f)を用いて説明する。尚、図2は、本実施の形態1における弾性波素子の製造工程を示す断面模式図であり、図2の断面は、完成後、図1(a)のA−Bにおける断面となる。図3の断面は、完成後、図1(a)のC−Dにおける断面となる。
【0018】
まず、図2(a)に示す様に、圧電基板21の上に第1の導体23、第2の導体24及び第3の導体25を形成し、圧電基板21の上と第1の導体23、第2の導体24及び第3の導体25の上に現像液に対して不溶性のイメージリバーサル型レジスト41を塗布し、第3の導体25の上方にマスキングを行い、圧電基板21の上方からイメージリバーサル型レジスト41に対しパターニング露光を行う。尚、このイメージリバーサル型レジスト41は、ベーキング処理及び露光により、現像液に対して可溶性から不溶性に変換する性質を有するレジストである。このイメージリバーサル型レジスト41は、完成後、図1(b)に示す弾性波素子におけるレジスト層40となる。
【0019】
即ち、上記処理により、図2(b)に示す様に、第3の導体25を覆う部分以外のイメージリバーサル型レジスト41が現像液に対して可溶性になる。
【0020】
次に、図2(c)に示す様に、弾性波素子の全体に対しベーキング処理を施し、第1の導体23及び第2の導体24上の一部を露出させるようにマスキングを行い、圧電基板21の上方からイメージリバーサル型レジスト41に対し第2のパターニング露光を行う。
【0021】
これにより、図2(d)に示す様に、第2のパターニング露光において、マスクから露出していた部分のイメージリバーサル型レジスト41が現像液に対して不溶性となる。
【0022】
次に、図2(e)に示す様に、イメージリバーサル型レジスト41に対して現像を行い、レジストパターンを形成させる。即ち、第1の導体23の一部の上と第2の導体24の一部の上とに下方から上方に向けて広がる逆テーパ形状のレジストパターンが形成され、第3の導体25を覆うように上方から下方に向けて広がる順テーパ形状のレジストパターンが形成される。
【0023】
その後、図2(f)に示すように、圧電基板21の上とレジストパターンの上に導体膜42を蒸着させ、次に、図2(g)に示すように、レジスト剥離液を用いてリフトオフを行い、第1の導体23の一部の上と第2の導体24の一部の上のレジストパターン及びこの上の導体膜42を除去する。その結果、第4の導体26は、第3の導体25を覆うイメージリバーサル型レジスト41と第1の導体23の端と第2の導体24の端とを覆うように形成され、第1の導体23と第2の導体24とを電気的に接続することとなる。
【0024】
尚、イメージリバーサル型レジスト41でなく、一般的なポジ型レジストを用いた場合でも、図2(e)に示すようなレジストパターンを作製することができる。ただ、その場合、第1の導体23及び第2の導体24の上方のレジストパターンが順テーパを有することとなる。その結果、図2(f)に示す導体膜形成工程において、第1の導体23の一部の上と第2の導体24の一部の上のレジストパターンの側壁に導体膜42が付着してしまい、図2(g)に示すリフトオフ工程において、その付着によって、第1の導体23の一部の上と第2の導体24の一部の上のレジストパターンに対するレジスト剥離液の浸透が不十分になり、そのリフトオフが困難となる。したがって、イメージリバーサル型レジスト41を用いることにより、図2(g)に示すリフトオフ工程を容易に実現することが可能となるのである。
【0025】
以下、この後の工程を、図3(a)〜(f)を用いて説明する。尚、図3は、本実施の形態1における弾性波素子の製造工程を示す断面模式図であり、図3の断面は、完成後、図1(a)のC−Dにおける断面となる。
【0026】
図3(a)に示す工程は、図2(g)に示す工程と同じ工程であり、リフトオフ工程終了時の状態である。この状態では、第3の導体25と第4の導体26が電気的に接続されている状態であるので、これらを分断する工程を以下に説明する。
【0027】
まず、図3(b)に示すように、圧電基板21の上面にレジスト43を塗布する。そして、図3(c)に示すように、第3の導体25と第4の導体26との間を露出するように圧電基板21の上面にマスキングを行い、圧電基板21の上方からレジスト43に対しパターニング露光を行う。
【0028】
次に、図3(d)に示すように、レジスト43に対して現像を行い、第3の導体25と第4の導体26との間を接続している導体をレジスト43から露出させる。
【0029】
次に、図3(e)に示すように、圧電基板21の上面からのドライエッチング等のエッチングにより、第3の導体25と第4の導体26とを電気的に分断させる。
【0030】
次に、図3(f)に示すように、図3(c)の工程においてマスキングされたレジストを、レジスト剥離液を用いて除去する。
【0031】
上記のように、実施の形態1の弾性波素子は、第3の導体25と第4の導体26との絶縁を取る手段として製造工程で用いるレジスト層40を用いる。即ち、レジスト層40は、製造工程において下方に広がる順テーパ形状を形成するので、レジスト層40において、ほぼ直角な角部がなくなる、若しくは、この角部が鈍角となる。その結果、レジスト層40の上に形成する第4の導体26の接続信頼性を向上させることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明にかかる弾性波素子は、この弾性波素子上の導体間の接続信頼性を向上させることができ、通信機器等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態1における弾性波素子の上面模式図、(b)は、同弾性波素子の断面模式図
【図2】(a)〜(g)は、同弾性波素子の製造工程を示す断面模式図
【図3】(a)〜(f)は、同弾性波素子の製造工程を示す断面模式図
【図4】(a)は、従来の弾性波素子の上面模式図、(b)は、同弾性波素子の断面模式図
【符号の説明】
【0034】
21 圧電基板
22 櫛歯電極
23 第1の導体
24 第2の導体
25 第3の導体
26 第4の導体
40 レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の上に配置された櫛歯電極及び第1、第2、第3の導体と、
前記圧電基板の上に前記第3導体を覆うように配置されたレジスト層と、
前記レジスト層の上に配置されて前記第1の導体と前記第2の導体とを電気的に接続する第4の導体とを備えた弾性波素子。
【請求項2】
前記レジスト層と前記第4の導体との間に配置された密着導体層とを備えた請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項3】
前記レジスト層は、上方から下方にむけて広がる順テーパ形状である請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項4】
前記レジスト層は、イメージリバーサル型レジストである請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項5】
請求項1に記載の弾性波素子と、前記弾性波素子に接続された無線回路とを備えた通信機器。
【請求項6】
前記レジスト層は、前記櫛歯電極のパターニング用のレジストである請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項7】
圧電基板の上と前記圧電基板の上に配置された第1、第2、第3の導体の上にレジストを形成する工程と、
少なくとも前記第3の導体にマスキングを行い前記レジストに対し露光する工程と、
前記レジストに対して現像を行い、前記第3の導体を覆うように上方から下方にむけて広がる順テーパ形状のレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンと前記第1導体の一部と第2導体の一部とを覆うように前記第4の導体を蒸着させる工程とを有する弾性波素子の製造方法。
【請求項8】
前記レジスト層は、前記櫛歯電極のパターニング用のレジストである請求項7に記載の弾性波素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−28701(P2010−28701A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190562(P2008−190562)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】