説明

弾性波装置及び弾性波装置の製造方法

【課題】電極パッドの腐食が生じにくく、信頼性に優れた弾性波装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】圧電基板3と、圧電基板3の主面3aに配置された励振電極5と、圧電基板3の主面3aに配置され、励振電極5と電気的に接続される電極パッド13と、励振電極5を取り囲むとともに電極パッド13を覆うようにして圧電基板上に配置される枠部19と枠部19の開口部を塞ぐ蓋部21とからなる保護カバー9と、電極パッド13に立てられ、保護カバー9を厚み方向に貫く貫通導体15と、保護カバー上に配置されるとともに貫通導体15の電極パッド側と反対側の面に接続され、平面視したときの外周縁が貫通導体15の外周縁よりも外側に位置する端子4と、保護カバー内に配置されるとともに、貫通導体15を取り囲んだ状態で端子4に接続された環状導体2と、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(SAW:surface acoustic wave)装置や圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)等の弾性波装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化等を目的とした、いわゆるウェハレベルパッケージの弾性波装置が知られている。この弾性波装置では、素子基板の主面上に配置された励振電極が、振動空間内に収容されている。振動空間は保護カバーに設けた中空部によって形成されている。また、励振電極に接続される電極パッド上に保護カバーを貫く貫通導体が立てられ、保護カバー上には貫通導体に接続される端子が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−208665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した構造からなる弾性波装置では、保護カバーと貫通導体の線膨張係数の違い等に起因して保護カバーと貫通導体との間に剥離が生じることがある。このように保護カバーと貫通導体との間に剥離が生じると、そこを起点として剥離が貫通導体と電極パッドとの接続部分まで到達しやすくなる。通常、電極パッドは水分により腐食されやすいアルミニウム等で形成されているため、剥離が貫通導体と電極パッドとの接続部分まで到達すると、その剥離部分から浸入してきた水分によって電極パッドの腐食が発生してしまうことがある。
【0005】
電極パッドが腐食すると、弾性波装置の電気特性の劣化や、貫通導体と電極パッドとの導通不良が起こり弾性波装置の信頼性低下を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上記問題に対応すべく発明されたものであり、電極パッドの腐食が生じにくく、信頼性に優れた弾性波装置および弾性波装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弾性波装置は、圧電基板と、前記圧電基板の主面に配置された励振電極と、前記圧電基板の主面に配置され、前記励振電極と電気的に接続される電極パッドと、前記励振電極を取り囲むとともに前記電極パッドを覆うようにして前記圧電基板上に配置される枠部と前記枠部の開口部を塞ぐように前記枠部上に配置された蓋部とからなる保護カバーと、前記電極パッドに立てられ、前記保護カバーを厚み方向に貫く貫通導体と、前記保護カバー上に配置されるとともに前記貫通導体の前記電極パッド側と反対側の面に接続され、平面視したときの外周縁が前記貫通導体の外周縁よりも外側に位置する端子と、前記保護カバー内に配置されるとともに、前記貫通導体を取り囲んだ状態で前記端子に接続された環状導体と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極パッドに水分が到達しにくくなり電極パッドに腐食が発生するのを少なくすることができる。これにより信頼性に優れた弾性波装置及び弾性波装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る弾性表面波装置を示す平面図であり、(b)は図1(a)に示す弾性表面波装置の保護カバーを外した状態の平面図である。
【図2】(a)は図1(a)のIa−Ia線における断面図、(b)は図1(a)のIb−Ib線における断面図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係る弾性表面波装置の一部を拡大した断面図であり、(b)は比較例としての弾性表面波装置の一部を拡大した断面図である。
【図4】本発明の実施形態の変形例に係る弾性表面波装置の一部を拡大した断面図である。
【図5】比較例としての弾性表面波装置の一部を拡大した断面図である。
【図6】本発明の実施形態のさらに別の変形例に係る弾性表面波装置の一部を拡大した断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る弾性表面波装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る弾性表面波装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る弾性表面波装置の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る弾性表面波装置1を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)に示す弾性表面波装置1の保護カバー9を外した状態の平面図である。また、図2(a)は、図1(a)のIa−Ia線における断面図であり、図2(b)は、図1(a)のIb−Ib線における断面図である。なお、図1、図2は、弾性表面波装置1の理解を容易にするために弾性表面波装置1を模式的に示したものであり、実施にあたっては、弾性表面波装置1の各部の大きさ、数、形状等は適宜に設定されてよい。
【0011】
弾性表面波装置1は、圧電基板3、圧電基板3上に配置された励振電極5、励振電極5を保護するための保護カバー9、励振電極5と接続配線11を介して接続された電極パッド13、電極パッド13に立てられた貫通導体15、貫通導体15と接続される端子4、及び貫通導体15を取り囲むようにして端子4に接続される環状導体2を有している。図1(a)では、端子4の下に位置している環状導体2を点線で、貫通導体15を一点鎖線でそれぞれ示している。
【0012】
圧電基板3は、例えばタンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する直方体状の単結晶基板である。圧電基板3の長手方向の幅は、例えば0.5mm〜2.0mm、短手方向の幅は、例えば0.3mm〜1.6mm、厚みは、例えば0.1mm〜0.5mmである。
【0013】
圧電基板3は、第1主面3aと、その背面側の第2主面3bとを有している。本実施形態では、第2主面3b側には何も形成されていないが、圧電基板3を保護するための樹脂層などを形成してもよい。
【0014】
励振電極5は、圧電基板3の第1主面3aに形成され、複数対の櫛歯状電極を有している。櫛歯状電極は、圧電基板3における弾性表面波の伝搬方向(図1の紙面上下方向)と直交する方向に伸びる複数の電極指を有している。一対の櫛歯状電極は、それぞれの電極指が互いに噛み合うように形成されている。本実施形態において、図1(b)の右側に示す励振電極5は、2重モード型弾性表面波フィルタとして機能し、左側に示す励振電極5は、2重モード型弾性表面波フィルタの特性を調整する共振子として機能する。なお、図1は模式図であり、実際には図示したよりも多数の電極指を有する櫛歯状電極が複数対設けられている。また、複数の励振電極5が直列接続や並列接続等の方式で接続され、ラダー型弾性表面波フィルタ等が構成されてもよい。励振電極5の両端には、櫛歯状電極を有する反射器(励振電極5の一部と捉えられてもよい。)が設けられている。励振電極5は、例えばAl−Cu合金等のAl合金によって形成され、その厚みは、例えば0.1μm〜1.0μmである。
【0015】
圧電基板3の第1主面3aには、励振電極5の他にも電極パッド13と接続配線11が形成されている。接続配線11は、励振電極5と所定の電極パッド13とを接続するためのものである。接続配線11は、図1(b)に示すように第1主面3a上において適宜なパターンで形成され、励振電極5に接続されている。また、図1(b)において複数の電極パッド13のうち、圧電基板3の上辺側の中央に位置する電極パッド13に接続されている接続配線11は、他の接続配線11と絶縁部材8を介して交差している。このように絶縁部材8を用いて接続配線11同士を立体的に交差させることによって電極パッド13の配置場所の自由度が向上し、弾性表面波装置の小型化に寄与することができる。絶縁部材8は例えばポリイミド樹脂などからなる。
【0016】
電極パッド13は、複数設けられており、本実施形態ではその数は6個である。図1(b)において、圧電基板3の上辺側中央、下辺側中央、および左下に配された3個の電極パッド13はグランド用の電極パッドである。また図1(b)において、圧電基板3の左上、右上および右下に配された電極パッド13は、入出力信号用の電極パッドである。電極パッド13は、その上に貫通導体15を設けるためにある程度広い面積を有するように形成されており、例えば、直径20μm〜100μmの円状となっている。なお、電極パッド13の形状は円に限られず、楕円、四角形などでもよい。電極パッド13及び接続配線11は、励振電極5と同じ材料を用いて励振電極5と同じプロセスにより形成することもできるし、別の材料を用いて別のプロセスにより形成することもできる。本実施形態では、電極パッド13及び接続配線11は、励振電極5と同じAl合金かなら成り、それらの厚みは、例えば、0.1μm〜1.0μmである。
【0017】
図2に示すように励振電極5及び接続配線11を覆うようにして圧電基板3の第1主面3aのほぼ全面にわたって保護膜7が設けられている。このように励振電極5及び接続配線11を保護膜7で覆うことによって、励振電極5及び接続配線11が酸化するのを抑制することできる。保護膜7は、例えば、絶縁性を有するとともに、弾性表面波の伝搬に影響を与えない程度に質量の軽い材料により形成され、例えば、酸化珪素、窒化珪素、シリコンなどが好適に用いられる。
【0018】
また保護膜7は電極パッド13の一部を覆うように形成されている。具体的には、電極パッド13の中央部を露出させる開口部7oを有するように形成されており、電極パッド13の開口部7oから露出する部分には貫通導体15が接続されるようになっている。換言すれば、電極パッド13のうち、貫通導体15と接続されない部分が保護膜7で覆われている。このように電極パッド13のうち貫通導体15と接続されない部分を保護膜7で覆うことによって、電極パッド13と保護カバー9との間に保護膜7が介在された状態となる。すなわち電極パッド13と保護カバー9とが直接接触する部分が殆どない状態とすることができる。電極パッド13と保護カバー9との接着力に比べ、保護膜7と保護カバー9との接着力は非常に強い。したがって、本実施形態のように電極パッド13と保護カバー9との間に保護膜7を介在させることによって、電極パッド13と保護カバー9とが直接接している場合よりも、その部分で保護カバー9が剥離するのを抑制することができる。
【0019】
励振電極5、電極パッド13、保護膜7などが形成された圧電基板3の第1主面3a側には保護カバー9が設けられている。保護カバー9は、励振電極5上に、弾性表面波を伝播しやすくするための振動空間6を構成するものである。換言すれば、保護カバー9は、振動空間6の内壁19aを構成する枠部19と、振動空間6の天井21aを構成する蓋部21とを有している。
【0020】
枠部19を構成する層の厚さや蓋部21の厚さは、適宜に設定されてよい。例えば、当該厚さは、数μm〜30μmである。枠部19及び蓋部21は、概ね同等の厚さに形成されている。
【0021】
枠部19と蓋部21とは、異なる材料によって形成することもできるが、枠部19と蓋部21との接着強度を高めるために同一材料で形成することが好ましい。枠部19及び蓋部21は、例えば、紫外線や可視光線等の光が照射されることによって硬化する光硬化性材料、例えば、ネガ型のフォトレジストにより形成されている。光硬化性材料は、アクリル基やメタクリル基などのラジカル重合により硬化する樹脂を用いることができ、より具体的には、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系の樹脂を用いることができる。なお、図では説明の便宜上、枠部19と蓋部21とが別部材として両者の境界線を明示しているが、枠部19と蓋部21とは一体的に形成されていてもよい。
【0022】
このように樹脂からなる保護カバー9を用いて圧電基板上に振動空間6を確保する構造とすることにより、全体の平面サイズが圧電基板3の平面サイズと同じサイズまで小型化された弾性表面波装置とすることができる。
【0023】
振動空間6は、図2に示すように、断面が概ね矩形状に形成され、蓋部21側の角部が丸みを帯びるように形成されている。換言すれば、振動空間6を構成する内壁19a及び天井21aは、アーチ状に形成されている。これにより蓋部21が撓むのを抑制することができる。その結果、例えば、振動空間6の高さを小さくして弾性波表面波装置1の小型化を図ることができる。振動空間6の平面形状(第1主面3a側から見たときの形状)は、適宜に設定されてよい。図1(b)に振動空間6の外周に相当する内壁19aを点線で示す。
【0024】
この保護カバー9を貫くようにして貫通導体15が設けられている。貫通導体15は、各電極パッド15の上に立てられている。この貫通導体15を介して励振電極5を外部の電気回路またはグランドと電気的に接続することができる。電極パッド13と貫通導体15との間には、電極パッド13と貫通導体15との接続を強化するために、クロム、ニッケル、金からなる接続強化層を介在させてもよい。
【0025】
貫通導体15は、例えば、Cu,Au,Ni,はんだにより形成されている。貫通導体15は例えば円柱状に形成され、平面視における直径は、20μm〜120μmである。
【0026】
本実施形態では、貫通導体15はメッキ法により形成されており、貫通導体15と保護カバー9との間にはメッキ下地層16が形成されている。
【0027】
保護カバー9から露出する貫通導体15の先端部には端子4が接続されている。端子4は、例えば円板状に形成され、平面視したときの外周縁が貫通導体15の外周縁よりも外側に位置している。端子4の直径は、貫通導体15の直径よりも5μm〜100μm程度大きくなるように形成される。また端子4と貫通導体15とは、両者の中心軸がほぼ一致する配置関係となっている。本実施形態において、端子4は、例えばCuからなり、メッキ法により貫通導体15と一体的に形成されている。この端子4と外部の回路基板とをはんだ等の導電性接着剤で接続することにより、弾性表面波装置1が、外部の回路基板と電気的、機械的に接続されることとなる。
【0028】
端子4には環状導体2が接続されている。環状導体2は、貫通導体15を取り囲むように環状に形成されており、保護カバー9内に配置され、環状導体2と貫通導体15との隙間には保護カバー9を構成する樹脂が充填されている。環状導体2を設けることに電極パッド13に水分が到達しにくくなる。これを図3を用いて説明する。図3は、貫通導体15及びその周辺部の拡大断面図であり、(a)は環状導体2を設けた場合の図、(b)は環状導体2を設けていない場合の図であり、図中の白抜き矢印は貫通導体15と保護カバー9との間に剥離が生じた場合の水分の浸入経路を示している。環状導体2を設けていない場合、水分は図3(b)に示すように貫通導体15の側面に沿ってほぼ直線的に電極パッド13まで到達する。これに対し環状導体2を設けた場合の水分の浸入経路は、図3(a)に示すように環状導体2の側面および貫通導体15の側面に沿ったものとなる。すなわち、環状導体2を設けることによって環状導体2の側面を迂回する分だけ水分の浸入経路を長くすることができ、水分が電極パッド13まで到達しにくくなる。その結果、電極パッド13の腐食が抑制され信頼性の高い弾性表面波装置とすることができる。電極パッド13までの水分の浸入経路を十分長くするためには、保護カバー9を厚み方向に貫くようにして環状導体2を形成するとよい。ただしこの場合は、環状導体2が電極パッド13に接しないように電極パッド13と環状導体2の下端との間に保護膜7を介在させておく。
【0029】
またこのような環状導体2を貫通導体15の周囲に設けることによってアンカー効果が発揮され、貫通導体15と保護カバー6との間の剥離が生じにくくなるとともに、貫通導体15の機械的強度を向上させることができるという利点もある。
【0030】
環状導体2による上記の効果を得るためには、環状導体2と貫通導体15との間隔を10μm〜45μm程度にしておくことが好ましい。
【0031】
本実施形態では、環状導体2はCuを用いてメッキ法により形成されており、環状導体2と保護カバー9との間にはメッキ下地層16が形成されている。環状導体2を貫通導体15及び端子4と同様にメッキ法により形成することによって、環状導体2、貫通導体15、及び端子4を一体的に形成することができ生産効率がよい。なお、これらは必ずしも一体的に形成されている必要はなく、それぞれ別の材料を用いて別の方法によって形成することも可能である。
【0032】
図4は弾性表面波装置1の変形例を示すものであり、貫通導体15及びその周辺部の拡大断面図である。図4に示す変形例は、環状導体2の形状が上述した実施形態にかかる弾性表面波装置1と異なっており、それ以外の構成は同じである。具体的には、上述した実施形態にかかる弾性表面波装置1の環状導体2は、その下端が保護膜7まで到達していたのに対し、図4に示す変形例では、環状導体2の下端は、保護カバー9内に位置している。このように環状導体2の下端を、保護カバー9内に位置するようにしておくことで、環状導体2を設けていない場合に比し、電極パッド13の腐食を抑制しつつ振動空間6の気密性を良好な状態に保持することができる。
【0033】
環状導体2を設けていない場合、貫通導体15と保護カバー9との間に生じた剥離が貫通導体15の下端まで到達すると、図5の白抜き矢印で示すようにそこを起点として保護カバー9の圧電基板3の主面側に接している部分(図5では、保護カバー9と保護膜7との間)にも剥離が生じることがある。その剥離が振動空間6まで到達した場合、振動空間6の気密性が保持されなくなり、振動空間6の雰囲気が変化する結果、弾性表面波装置の特性が劣化してしまう。
【0034】
これに対し図4に示した変形例にかかる弾性表面波装置では、貫通導体15と保護カバー9との間に剥離が生じても、環状導体2がある分だけ振動空間6までの外気の進入経路が長くなり、環状導体2がない場合に比し、振動空間6の気密性を長期にわたって良好な状態に保持することができる。
【0035】
環状導体2の下端を保護カバー9内に位置させる場合には、環状導体2の下端の位置と蓋部21の下面の位置とが同じ高さ位置にあることが生産効率の観点から好ましい。蓋部21に貫通導体15を形成するための孔をあける際に環状導体2を形成するための溝も同時に形成することができるからである。なお、高さ位置とは、圧電基板3の第1主面3aを基準としたときの位置をいう。
【0036】
図6は上述した実施形態にかかる弾性表面波装置1のさらに別の変形例を示す図であり、貫通導体15及びその周囲の拡大断面図である。同図に示すように環状導体2を二重に設けてもよい。これにより水分の浸入経路をさらに長くすることができる。環状導体2を二重に設けた場合は、外側の環状導体2を短くしておくことが好ましい。なお、環状導体2は三重以上にしても構わない。
【0037】
次に弾性表面波装置1の製造方法について説明する。図7〜図9は、弾性表面波装置1の製造方法の一例を説明する断面図であり、図1(a)のIa−Ia線における断面に相当する部分を示している。以下に説明する工程は、いわゆるウエハプロセスにおいて実現される。すなわち、分割されることによって圧電基板3となる母基板を対象に、薄膜形成やフォトリソグラフィー法などが行われ、その後、ダイシングされることにより、多数個分の弾性表面波装置1が並行して形成される。ただし、図7〜図9では、1つの弾性表面波装置1に対応する部分のみを図示する。
【0038】
弾性表面波装置1の製造方法は、概観すると、励振電極5の形成工程と、保護カバー9の形成工程と、貫通導体15の形成工程とを含んでいる。具体的には、以下のとおりである。
【0039】
まず、図7(a)に示すように、圧電基板3の第1主面3a上に、接続配線11、電極パッド13、および励振電極5(図には現れていない)を形成する。具体的には、まず、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法により、圧電基板3の第1主面3a上に金属層が形成される。次に、金属層に対して、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィー法等によりパターニングが行われる。これにより、接続配線11、電極パッド13、および励振電極5が形成される。
【0040】
次に、図7(b)に示すように保護膜7を形成する。まず、保護膜7となる薄膜が、励振電極5、接続配線11および電極パッド13の上を覆うように、CVD法または蒸着法等の薄膜形成法により形成される。次に、電極パッド13の上面中央部が露出するように、フォトリソグラフィー法によって薄膜の一部が除去され、開口部7oが形成される。なお、保護膜7を形成した後、または形成する前に、蒸着法等により電極パッド13の上にクロム、ニッケル、金を順に積層することにより電極パッド13の上面に接続強化層を形成してもよい。
【0041】
次に、図7(c)〜図8(b)に示すように、枠部19を形成する。具体的には、まず、図7(c)に示すように、保護膜7上に、枠部19となる第1の層31が形成される。第1の層31は、例えば、ネガ型のフォトレジストにより形成されたフィルムが貼り付けられることにより形成される。
【0042】
次に、図8(a)に示すように、フォトマスク33を介して紫外線等の光Lが第1の層31に照射されることにより露光処理が行われる。フォトマスク33は、例えば、透明基板35上に遮光層37が形成されることにより構成されている。遮光層37は、第1の層31を除去すべき位置に対応する位置に配されている。具体的には、振動空間6の形成位置、貫通導体15、および環状導体2の形成位置に対応する場所に遮光層37が配置されている。なお、露光は、投影露光であってもよいし、プロキシミティ露光であってもよいし、密着露光であってもよい。
【0043】
その後、図8(b)に示すように、現像処理を行い、第1の層31のうち、光が照射された部分を残し、光が照射されなかった部分を除去する。これにより、第1の層31には、振動空間6となる振動空間用孔部39と、貫通導体15が配置される第1の貫通導体用孔部41と、環状導体2が配置される第1の環状孔部42とが形成され、枠部19が完成する。
【0044】
次に蓋部21を形成する。具体的には、まず、図8(c)に示すように、枠部19上に蓋部21を構成する第2の層43が形成される。第2の層43は、例えば、ネガ型のフォトレジストにより形成されたフィルムが貼り付けられることにより形成される。第2の層43が形成されることにより、枠部19の開口部が塞がれて、振動空間6が形成される。第1の層31と第2の層43とは加熱されることによって接合される。
【0045】
次に、図9(a)に示すように、フォトマスク45を介して紫外線等の光Lが第2の層43に照射されることにより露光処理が行われる。フォトマスク45は、フォトマスク33と同様に、透明基板47上に遮光層49が形成されることにより構成されている。遮光層49は、第2の層43を除去すべき位置に対応する位置に配されている。すなわち、貫通導体15および環状導体2の形成位置に対応する場所に配されている。なお、露光は、投影露光であってもよいし、プロキシミティ露光であってもよいし、密着露光であってもよい。
【0046】
その後、図9(b)に示すように、現像処理を行い、第2の層43のうち、光が照射された部分を残し、光が照射されなかった部分を除去する。これにより、第1の貫通導体用孔部41の上には、第2の貫通導体用貫通孔部51が形成され、第1の貫通導体用孔部41と第2の貫通導体用孔部51とが連結される。また、第1の環状孔部42の上には第2の環状孔部52が形成され、第1の環状孔部42と第2の環状孔部52とが連結される。このようにして蓋部21が完成する。蓋部21が形成することにより、枠部19と蓋部21とからなる保護カバー9が完成する。
【0047】
保護カバー9を形成した後、貫通導体15、環状導体2、及び端子4を形成する。具体的には、まず、図9(c)に示すように、メッキ用下地層16及びメッキ用レジスト層57が形成される。
【0048】
メッキ用下地層16は、例えばフラッシュメッキ法により、Ti−Cu合金等で形成するのが好適な一例である。
【0049】
メッキ用レジスト層57は、メッキ用下地層16上に形成される。メッキ用レジスト層57は、例えば、スピンコート等の手法で基板に形成された後、パターニングされる。パターニングは、第1,第2の貫通導体用孔部41,51及び第1、第2の環状孔部42、52の直上領域に開口部57oが形成されるようにして行われる。開口部57oは、その内壁が第2の環状孔部52の外周縁の外側に位置するように形成される。次に開口部57oから露出するメッキ用下地層16に対してメッキを施す。これにより、第1、第2の貫通導体用孔部41,51、第1、第2の環状孔部42,52、並びに第2の環状孔部52の周辺部に金属が充填され、貫通導体15、環状導体2、及び端子4が完成する。最後にメッキ用レジスト層57及びメッキ用下地層の不要な部分を除去することにより弾性表面波装置1が完成する。
【0050】
なお上述したメッキ用レジスト層57、67は、例えば、アセトンやIPA等の有機溶剤やジメチルスルフォキシド等のアルカリ性有機溶剤により除去が可能である。またメッキ用下地層としてCuを用いた場合、例えば、塩化第2鉄や燐酸と過酸化水素水の混合液により除去が可能である。また、メッキ用下地層としてTiを用いた場合は、例えば、希フッ酸やアンモニアと過酸化水素水の混合液で除去が可能である。
【0051】
また上述した弾性表面波装置1の製造方法において、第1の環状孔部42を形成せずに、第2の環状孔部52のみ形成するようにすれば、環状導体2の下端の位置と蓋部21の下面の位置とが同じ高さ位置にある弾性表面波装置とすることができる。
【0052】
上述した弾性表面波装置の製造方法によれば、貫通導体15を形成するプロセスとともに環状導体2を形成することができる。すなわち、環状導体2を形成するプロセスを別途設ける必要がないため、弾性表面波装置1の生産性低下を招くことがない。
【0053】
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0054】
上述した実施形態では弾性波装置として、その一例である弾性表面波装置について説明したが、それ以外にも、例えば圧電薄膜共振器であってもよい。
【0055】
また弾性波装置の製造方法は、枠部と蓋部とを順次形成するものに限定されない。例えば、振動空間6となる領域に犠牲層を形成し、犠牲層の周囲に枠部及び蓋部となる樹脂を積層し、その後、枠部又は蓋部に形成された孔部を介して犠牲層を排除することにより振動空間6を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1・・・弾性表面波装置(弾性波装置)
2・・・環状導体
3・・・圧電基板
4・・・端子
5・・・励振電極
6・・・振動空間
7・・・保護層
8・・・絶縁部材
9・・・保護カバー
15・・・貫通導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の主面に配置された励振電極と、
前記圧電基板の主面に配置され、前記励振電極と電気的に接続される電極パッドと、
前記励振電極を取り囲むとともに前記電極パッドを覆うようにして前記圧電基板上に配置される枠部と前記枠部の開口部を塞ぐ蓋部とからなる保護カバーと、
前記電極パッドに立てられ、前記保護カバーを厚み方向に貫く貫通導体と、
前記保護カバー上に配置されるとともに前記貫通導体の前記電極パッド側と反対側の面に接続され、平面視したときの外周縁が前記貫通導体の外周縁よりも外側に位置する端子と、
前記保護カバー内に配置されるとともに、前記貫通導体を取り囲んだ状態で前記端子に接続された環状導体と、
を備えた弾性波装置。
【請求項2】
前記保護カバーが樹脂からなる請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
平面視したときの前記電極パッドの外周縁が前記貫通導体の外周縁よりも外側に位置しており、
前記電極パッドと前記保護カバーとの間には、酸化珪素または窒化珪素からなる保護膜が介在されている請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
平面視したときの前記電極パッドの外周縁が前記環状導体の外周縁よりも外側に位置しており、
前記環状導体が前記保護カバーを厚み方向に貫通するとともに、その下端が前記保護膜に接している請求項3に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記環状導体の下端は、前記保護カバー内に位置している請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記環状導体の下端の位置と前記蓋部の下面の位置とが同じ高さ位置にある請求項5に記載の弾性波装置。
【請求項7】
圧電基板の主面に、励振電極と、前記励振電極と電気的に接続される電極パッドと、を形成する工程と、
前記圧電基板の主面に、前記励振電極および前記電極パッドを覆うようにして第1の層を形成する工程と、
前記第1の層の前記励振電極上に振動空間用孔部を、前記第1の層の前記電極パッド上に前記電極パッドを露出させるようにして第1の貫通導体用孔部を、前記第1の層の前記第1の貫通導体用孔部の周囲に該第1の貫通導体用孔部を取り囲むようにして第1の環状孔部を、それぞれ形成する工程と、
前記振動空間用孔部、前記第1の貫通導体用孔部、及び前記第1の環状孔部を覆うようにして前記第1の層上に第2の層を形成する工程と、
前記第2の層の前記第1の貫通導体用孔部上に第2の貫通導体用孔部を、前記第2の層の前記第1の環状孔部上に前記第2の貫通導体用孔部を取り囲むようにして第2の環状孔部を、それぞれ形成する工程と、
前記第1、第2の貫通導体用孔部、及び前記第1、第2の環状孔部に導体材料を充填することにより、貫通導体及び前記貫通導体を取り囲む環状導体を形成するとともに、前記貫通導体及び前記環状導体と接続される端子を形成する工程と、
を含む弾性波装置の製造方法。
【請求項8】
圧電基板の主面に、励振電極と、前記励振電極と電気的に接続される電極パッドと、を形成する工程と、
前記圧電基板の主面に、前記励振電極および前記電極パッドを覆うようにして第1の層を形成する工程と、
前記第1の層の前記励振電極上に振動空間用孔部を、前記第1の層の前記電極パッド上に前記電極パッドを露出させるようにして第1の貫通導体用孔部を、それぞれ形成する工程と、
前記振動空間用孔部、及び前記第1の貫通導体用孔部を覆うようにして前記第1の層上に第2の層を形成する工程と、
前記第2の層の前記第1の貫通導体用孔部上に第2の貫通導体用孔部を形成するとともに、前記第2の層に前記第2の貫通導体用孔部を取り囲むようにして第2の環状孔部を形成する工程と、
前記第1、第2の貫通導体用孔部、及び前記第2の環状孔部に導体材料を充填することにより、貫通導体及び前記貫通導体を取り囲む環状導体を形成するとともに、前記貫通導体及び前記環状導体と接続される端子を形成する工程と、
を含む弾性波装置の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−77601(P2011−77601A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224035(P2009−224035)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】