弾性表面波デバイス
【課題】SAWデバイスの圧電基板上に設けたヒータ電極による熱応力の影響を解消して周波数安定性を向上させる。
【解決手段】
SAWデバイスは、圧電基板12の主面にIDT13及び反射器14,15を有しかつその裏面にヒータ電極16を有するSAW素子11を、SAW伝搬方向の一方の端部12aで接着剤17により片持ちに支持する。ヒータ電極16は、SAW素子の平面においてIDTの位置よりもSAW伝搬方向の端部12a側に配置される。SAW伝搬方向の端部12a側の反射器15を、接着剤で浮かせたSAW素子の部分に配置することにより、IDTからより離すようにヒータ電極を配置することができる。
【解決手段】
SAWデバイスは、圧電基板12の主面にIDT13及び反射器14,15を有しかつその裏面にヒータ電極16を有するSAW素子11を、SAW伝搬方向の一方の端部12aで接着剤17により片持ちに支持する。ヒータ電極16は、SAW素子の平面においてIDTの位置よりもSAW伝搬方向の端部12a側に配置される。SAW伝搬方向の端部12a側の反射器15を、接着剤で浮かせたSAW素子の部分に配置することにより、IDTからより離すようにヒータ電極を配置することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電基板上に弾性表面波(SAW)を励振するIDT(すだれ状トランスデューサ)とその両側に配置した反射器とを形成した弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SAWデバイスは、携帯電話等の情報通信機器、その他様々な電子機器に広く使用されている。特に通信機器の分野では、優れた周波数特性を発揮するSAWデバイスが要求されている。ところが、SAWデバイスの周波数温度特性が負の2次曲線や3次曲線となるような場合、周波数は中心温度付近では安定しているが、中心温度から離れるほど大きく変化する特徴がある。
【0003】
そこで、環境温度の変化による周波数の変動を抑制するために、圧電基板の主面に励振電極とヒータ用の抵抗体とを形成し、該抵抗体への印加電流を調整して圧電基板の温度を調整可能にしたSAW素子が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。ヒータ用の抵抗体は、圧電基板の裏面に形成することができ、それによりSAW素子の小型化が図られる(例えば、特許文献2,3を参照)。ヒータ用の抵抗体は、電極パターンと同様に、圧電基板上に成膜した電極材料の薄膜をエッチングすることにより形成される。
【0004】
また、圧電基板の裏面に熱電素子としてペルチェ素子を接合し、表面上のSAWに影響を与えることなく、圧電基板の表面温度を適切に制御するSAW共振器等のSAW装置が知られている(例えば、特許文献4を参照)。特許文献4によれば、圧電基板をその裏面の一部のみで支持することにより、圧電基板の周囲から受ける応力を低減させることができる。更に特許文献3によれば、圧電基板の裏面に複数の熱電素子を分散配置することにより、熱電素子間の応力伝達を分断して圧電基板への更に低減できるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−218794号公報
【特許文献2】特開平1−261013号公報
【特許文献3】実開平4−132738号公報
【特許文献4】特開平8−79002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなヒータ付きのSAWデバイスは実用化されていないのが現状である。その理由は、圧電基板を該基板上に設けた抵抗体からなるヒータ電極で直接加熱したとき、基板内部にヒータ電極付近から離れる向きに温度勾配が生じ、その不均一な温度分布による熱応力が基板を変形させ、その内部応力が周波数を変動させるためと考えられる。この結果、ヒータの熱により圧電基板の温度を調節して周波数を安定させるという本来の目的を達成することができない。
【0007】
SAWデバイスをヒータ電極で加熱しない場合の周波数温度特性を、図7に示すように例えば65°の使用温度を頂点温度とする2次曲線と仮定する。この場合、圧電基板の温度を65°±10°に制御すれば、SAWデバイスの周波数は数ppm程度の変動範囲に安定させることができる。しかしながら、SAWデバイスの周波数変動量は、図8に示すように、圧電基板の温度を環境温度よりも上昇させたとき、温度上昇幅Δtに関して直線状に変化することを本願出願人は見出した。これは、温度上昇により圧電基板内部に生じた熱応力の影響であると考えられる。
【0008】
このため、例えば環境温度が25℃の状態で圧電基板の温度を65℃まで上昇させたとき、SAWデバイスの周波数温度特性は、図9に実線で示すようになる。即ち、図7の2次曲線Aから図8の変動量Bを25℃の位置で交差させて差し引いた2次曲線Cとなる。その結果、温度変化に対する周波数変動量が大きくなり、周波数を安定させることが困難になるという問題が生じる。
【0009】
また、上記特許文献4に記載のSAW装置は、圧電基板をその裏面の一部のみで支持したとき、熱電素子から発生した熱の一部が支持部から直接支持台に逃げるため、圧電基板の裏面全体に熱電素子を接合しても、その温度分布は不均一になり易い。仮に圧電基板の裏面に分散配置した複数の熱電素子が個別に制御可能であるとしても、圧電基板の温度分布を均一にすることは比較的困難である。
【0010】
本願発明者は、上記特許文献2,3に記載されるように圧電基板の裏面にヒータ電極を設けたSAW素子をSAW伝搬方向の一端で片持ちに支持し、圧電基板の主面に発生する温度分布及び熱応力による内部応力を解析した。この解析には、図10(A)(B)に示すSAW素子1を備えるSAWデバイスを考えた。SAW素子1は、水晶からなる圧電基板2の主面にIDT3が略中央に、その両側に反射器4,5が配置されている。圧電基板2の裏面には、細幅の配線からなるヒータ電極6が略中央に形成されている。SAW素子1は、図10(C)に示すように、SAW伝搬方向の一方の端部2aを接着剤7で支持部8に固定して片持ちに支持されている。
【0011】
このSAWデバイスを約25℃の室温に置いて、ヒータ電極6により圧電基板2を約65℃の使用温度まで昇温するように加熱した。その結果、圧電基板2の主面には、図11(A)(B)に示す温度分布及び応力が発生した。圧電基板2全体の温度を65°±10°程度に制御できれば、SAWデバイスの周波数は数ppm程度の変動範囲に安定させることができる。ところが、図11(A)に示す圧電基板2表面の温度は、端部2aから反対側の端部に向けて約65℃から約125℃以上まで不均一に分布している。図11(B)において、圧電基板2表面の内部応力は正値が引張応力を、負値が圧縮応力を示し、特にIDT3を設けた中央領域に圧縮応力と引張応力とが、−2MPaから+2MPa以上の広い範囲で作用している。この内部応力のため、SAW素子1は周波数が変動し易く、ヒータ電極6による周波数の安定化を実現することが困難である。
【0012】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電基板上にその温度を調整するためのヒータ電極を設けたSAWデバイスにおいて、ヒータ電極の発熱による熱応力の影響を解消して、使用する環境温度の高低や昇温幅の大小によらず、常に圧電基板の温度分布を均一にし、周波数の安定化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者は、圧電基板上にIDTを形成したSAW素子片を長手方向又は幅方向の一方の端部で片持ちに支持したSAWデバイスにおいて、圧電基板の裏面にヒータ電極を設けてその温度を調整したときに圧電基板に生じる温度分布や内部応力を解析した。本発明は、この解析結果に基づいてなされたものである。
【0014】
本発明によれば、上記目的を達成するために、例えば水晶からなる矩形板状の圧電基板の主面に、SAWを励振するIDTと該IDTの両側に配置した反射器とを有し、かつ圧電基板の裏面にヒータ電極を有するSAW素子を、そのSAW伝搬方向の一方の端部で固定手段により支持部に、SAW素子の他の部分を浮かせた状態で片持ちに支持し、ヒータ電極が、圧電基板の平面においてIDTよりも前記一方のSAW伝搬方向端部側に配置されたSAWデバイスが提供される。
【0015】
このようにヒータ電極及びIDTを配置することにより、SAW素子をヒータ電極で加熱したときに、その開始温度即ち環境温度の高低やそれから所望の使用温度までの昇温幅の大小によらず、圧電基板主面のIDTを形成した部分の温度分布を概ね均一化し、その熱応力による圧電基板の内部応力を小さくすることができる。その結果、熱応力によるSAWデバイスの周波数の変動を解消又は抑制して、周波数の安定化を実現できる。
【0016】
或る実施例では、圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の反射器が固定手段と重なるように配置され、かつヒータ電極がSAW素子の浮かせた部分と重なるように配置されることにより、圧電基板の平面寸法を最小にして、SAWデバイスの小型化を図ることができる。
【0017】
別の実施例では、圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の反射器及びヒータ電極が、SAW素子の浮かせた部分と重なるように配置されることにより、ヒータ電極をIDTからより離すことができるので、圧電基板主面の、特にIDTを設けた中央領域の温度分布をより均一にし、熱応力による内部応力をより小さくして、周波数をより安定化させることができる。
【0018】
また別の実施例では、圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の反射器がSAW素子の浮かせた部分に、固定手段からSAW伝搬方向に離隔して配置され、かつヒータ電極が一方のSAW伝搬方向端部側の反射器よりも前記一方のSAW伝搬方向端部側に配置されることにより、ヒータ電極をIDTから更に離すことができるので、圧電基板主面の、特にIDTを設けた中央領域の温度分布をより一層均一にし、熱応力による内部応力を更に小さくして、周波数をより一層安定化させることができる。
【0019】
或る実施例では、前記固定手段として、例えば接着剤やバンプを用いることができる。バンプを用いた場合には、SAW素子を機械的に固定すると共に、それを介してヒータ電極を電源に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1(A)〜(C)は、本発明を適用したSAWデバイスの第1実施例を示している。本実施例のSAWデバイスは、共振子として使用されるSAW素子11を備える。SAW素子11は、図1(A)に示すように、水晶からなる矩形平板の圧電基板12を有する。圧電基板12の主面には、その略中央に交差指電極対からなるSAW励振用のIDT13が形成されている。IDT13のSAW伝搬方向の両側には、それぞれ各1個の反射器14,15が配置されている。圧電基板12の裏面には、図1(B)に示すように、ヒータ電極16が形成されている。
【0021】
SAW素子11は、図1(C)に示すように、SAW伝搬方向の一方の端部12aの裏面で接着剤17により前記SAWデバイスの支持部18上に固定され、片持ちに支持されている。接着剤17には、前記SAW素子の固定手段として公知の様々な接着剤を使用することができ、例えばシリコーン系の接着剤は断熱性が高いので、好都合である。
【0022】
ヒータ電極16は、SAW素子11の平面において、図中想像線19で示す圧電基板12主面のIDT13の位置よりも、接着剤17で支持部18に固定される端部12a側に配置されている。ヒータ電極16を接着剤17と重ならないように配置すると、その発熱による接着剤の劣化を防止できるので、好ましい。ヒータ電極16は、圧電基板12をより均一に加熱するように、圧電基板12のSAW伝搬方向に直交する交差長方向即ち幅方向の略全長に亘って、IDT13の交差長よりも長くかつその全範囲を含むように配置することが好ましい。前記ヒータ電極は比較的細幅の配線パターンからなり、前記IDT及び反射器のパターニングと同様に、前記圧電基板裏面に成膜した電極膜をフォトエッチングすることにより形成される。
【0023】
SAW伝搬方向端部12a側の反射器15は、SAW素子11の平面において、前記接着剤を塗布した領域と重なるように配置されている。これにより、圧電基板12のSAW伝搬方向の寸法をできる限り小さくして、SAW素子11の小型化を図ることができる。更に本実施例では、反射器15が部分的に接着剤17の領域に重なることにより、ヒータ電極16を前記接着剤の領域に重ならないように設けるためのスペースを確保できる。他方、IDT13及び他方の反射器14は、前記接着剤で浮かせたSAW素子11の部分に配置されている。
【0024】
図1のSAWデバイスについて、ヒータ電極16に電流を印加して圧電基板12の温度を調整し、該圧電基板の主面の温度分布及び内部応力を解析した。本実施例では、IDT13を形成した圧電基板12の中央領域を、室温(25℃)から所定の使用温度である約65℃まで昇温させるように加熱した。その解析結果を図2(A)の温度分布図及び図2(B)の応力分布図に示す。
【0025】
図2(A)に示すように、圧電基板2の浮かせた部分は、ヒータ電極16により直接加熱されて75℃以上の高温となった接着剤17近傍の狭い領域を除いて、概ね全体が約65〜75℃の均一な温度分布を示している。これに対し、接着剤17で固定した圧電基板の端部12aは、SAW伝搬方向の端縁に向けて約65℃から35℃以下まで急激に低下する不均一な温度分布を示している。これは、圧電基板12の浮かせた部分は熱の閉じ込め効果が高いのに対し、端部12aは熱が接着剤17を介して支持部18に逃げるためである。
【0026】
図2(B)において、正値は引張応力を、負値は圧縮応力を示す。圧電基板12の浮かせた部分は、図2(A)の温度分布に対応して、ヒータ電極16を配置した前記接着剤近傍の狭い領域を除いて、内部応力が全体的に約−2MPa〜約+2MPaの比較的小さい値で概ね一様に分布している。
【0027】
このように本実施例によれば、ヒータ電極16により圧電基板12の温度を調節したとき、その開始温度即ち環境温度の高低やそれから所望の使用温度までの昇温幅の大小によらず、端部12aを除く圧電基板12主面の大部分を略均一な温度分布にすることができる。従って、圧電基板12主面の特にIDT13を形成した中央領域において、熱応力による内部応力を小さくし、それが周波数に及ぼす影響を解消又は緩和して、周波数の安定化を実現することができる。
【0028】
図3(A)〜(C)は、本発明によるSAWデバイスの第2実施例を示している。本実施例のSAWデバイスは、第1実施例と同様に、共振子として使用されるSAW素子21が水晶からなる矩形平板の圧電基板22を有する。圧電基板22には、図3(A)に示すように、その主面の略中央に交差指電極対からなるIDT23が、該IDTのSAW伝搬方向の両側に各1個の反射器24,25がそれぞれ形成されている。図3(B)に示すように、圧電基板22の裏面にヒータ電極26が形成されている。SAW素子21は、図3(C)に示すように、SAW伝搬方向の一方の端部22aの裏面で公知の適当な接着剤27により支持部28上に固定され、片持ちに支持されている。
【0029】
本実施例では、SAW素子21の平面において、SAW伝搬方向端部22a側の反射器25が、接着剤27を塗布した領域に隣接するがそれと重ならないように、前記接着剤で浮かせたSAW素子21の部分に配置されている。ヒータ電極26は、図中想像線29で示すIDT23の位置よりも端部22a側に、第1実施例の場合よりも前記IDTから離して前記接着剤を塗布した領域に隣接して配置されている。これにより、圧電基板22主面の、特にIDT23を設けた中央領域の温度分布をより均一にし、熱応力による内部応力をより小さくして、周波数をより安定化させることができる。
【0030】
また、本実施例では、IDT23の位置と接着剤27を塗布した領域との間に第1実施例の場合よりも広いスペースを確保することができる。その結果、ヒータ電極26の設計の自由度が増し、接着剤27と重ならないように配置し、また配線をより長くして発熱量をより高くすることができる。尚、本実施例の他の構成は、第1実施例と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0031】
図4(A)〜(C)は、本発明によるSAWデバイスの第3実施例を示している。本実施例のSAWデバイスは、上記各実施例と同様に、共振子として使用されるSAW素子31が水晶からなる矩形平板の圧電基板32を有する。圧電基板22には、図4(A)に示すように、その主面の略中央に交差指電極対からなるIDT33が、該IDTのSAW伝搬方向の両側に各1個の反射器34,35がそれぞれ形成されている。図4(B)に示すように、圧電基板32の裏面にヒータ電極36が形成されている。SAW素子31は、図4(C)に示すように、SAW伝搬方向の一方の端部32aの裏面で公知の適当な接着剤37により支持部38上に固定され、片持ちに支持されている。
【0032】
本実施例では、SAW素子31の平面において、SAW伝搬方向端部32a側の反射器35が、接着剤37を塗布した領域から或る程度の距離離して、前記接着剤で浮かせたSAW素子31の部分に配置されている。ヒータ電極36は、図中想像線39で示すIDT33の位置から更に離して、想像線40で示す反射器35の位置よりも端部32a側に、前記接着剤を塗布した領域に隣接して配置されている。これにより、第2実施例の場合よりも、圧電基板32主面の、特にIDT23を設けた中央領域の温度分布を均一にし、熱応力による内部応力を小さくして、周波数をより一層安定化させることができる。
【0033】
また、本実施例では、IDT33の位置と接着剤37を塗布した領域との間に第2実施例の場合よりも広いスペースを確保することができる。その結果、ヒータ電極36の設計の自由度をより高めることができる。尚、本実施例の他の構成は、上記各実施例と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0034】
次に、図5及び図6を用いて、前記圧電基板の裏面に形成したヒータ電極を電源に接続するための好適な構成を説明する。図5(A)に示すように、圧電基板12のSAW伝搬方向の端部12aの裏面は、その両側辺に沿って入出力電極16a,16bが形成されている。入出力電極16a,16bは、その幅をヒータ電極16よりも十分に太くして、前記入出力電極からの発熱量を小さくする。前記SAWデバイスの支持部18には、前記入出力電極に対応する位置に、外部の電源に接続されるリード41a,41bが配線されている。
【0035】
図5(B)(C)に示すように、接着剤17を端部12a裏面の入出力電極16a,16b間の領域に塗布して、SAW素子11を支持部18に固定する。入出力電極16a,16bとリード41a,41bとは、それぞれ導電性接着剤42a,42bにより電気的に接続する。
【0036】
図6(A)〜(C)に示す実施例は、接着剤17を省略し、かつ入出力電極16a,16bとリード41a,41bとをバンプ42a,42bで電気的にかつ機械的に接続した点において、図5の実施例と異なる。別の実施例では、SAW素子11を支持部18に機械的に固定するために、バンプ42a,42b以外の固定手段として、例えば導電性接着剤を用いることができる。
【0037】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、圧電基板は、水晶以外に、リチウムタンタレート、リチウムナイオベート、四硼酸リチウムなどの様々な公知の圧電材料で形成することができ、その場合にも本発明を同様に適用することができる。また、本発明は、上記各実施例の共振器以外のSAWデバイスについて、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(A)図は本発明によるSAWデバイスの第1実施例の平面図、(B)図はSAW素子の底面図、(C)図はSAWデバイスの側面図。
【図2】(A)図及び(B)図は、ヒータ電極で加熱した図1のSAWデバイスにおける圧電基板表面の温度分布図及び応力分布図。
【図3】(A)図は本発明によるSAWデバイスの第2実施例の平面図、(B)図はSAW素子の底面図、(C)図はSAWデバイスの側面図。
【図4】(A)図は本発明によるSAWデバイスの第3実施例の平面図、(B)図はSAW素子の底面図、(C)図はSAWデバイスの側面図。
【図5】(A)図はヒータ電極の接続電極を示すSAW素子の部分底面図、(B)図はマウントしたSAW素子の部分平面図、(C)図はその端面図。
【図6】(A)図はヒータ電極の接続電極を示すSAW素子の部分底面図、(B)図は別の方法でマウントしたSAW素子の部分平面図、(C)図はその端面図。
【図7】ヒータ電極で加熱しないSAWデバイスの周波数温度特性を示す線図。
【図8】ヒータ電極で加熱したSAWデバイスの温度上昇に対する周波数変動量を示す線図。
【図9】ヒータ電極で加熱したSAWデバイスの周波数温度特性を示す線図。
【図10】(A)図は従来のSAW素子を片持ちに支持したSAWデバイスの平面図、(B)図はSAW素子の底面図、(C)図はSAWデバイスの側面図。
【図11】(A)図及び(B)図は、ヒータ電極で加熱した図10のSAWデバイスにおける圧電基板表面の温度分布図及び応力分布図。
【符号の説明】
【0039】
1,11,21,31…SAW素子、2,12,22,32…圧電基板、2a,12a,22a,32a…端部、3,13,23,33…IDT、4,5,14,15,24,25,34,35…反射器、6,16,26,36…ヒータ電極、7,17,27,37…接着剤、8,18,28,38…支持部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電基板上に弾性表面波(SAW)を励振するIDT(すだれ状トランスデューサ)とその両側に配置した反射器とを形成した弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SAWデバイスは、携帯電話等の情報通信機器、その他様々な電子機器に広く使用されている。特に通信機器の分野では、優れた周波数特性を発揮するSAWデバイスが要求されている。ところが、SAWデバイスの周波数温度特性が負の2次曲線や3次曲線となるような場合、周波数は中心温度付近では安定しているが、中心温度から離れるほど大きく変化する特徴がある。
【0003】
そこで、環境温度の変化による周波数の変動を抑制するために、圧電基板の主面に励振電極とヒータ用の抵抗体とを形成し、該抵抗体への印加電流を調整して圧電基板の温度を調整可能にしたSAW素子が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。ヒータ用の抵抗体は、圧電基板の裏面に形成することができ、それによりSAW素子の小型化が図られる(例えば、特許文献2,3を参照)。ヒータ用の抵抗体は、電極パターンと同様に、圧電基板上に成膜した電極材料の薄膜をエッチングすることにより形成される。
【0004】
また、圧電基板の裏面に熱電素子としてペルチェ素子を接合し、表面上のSAWに影響を与えることなく、圧電基板の表面温度を適切に制御するSAW共振器等のSAW装置が知られている(例えば、特許文献4を参照)。特許文献4によれば、圧電基板をその裏面の一部のみで支持することにより、圧電基板の周囲から受ける応力を低減させることができる。更に特許文献3によれば、圧電基板の裏面に複数の熱電素子を分散配置することにより、熱電素子間の応力伝達を分断して圧電基板への更に低減できるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−218794号公報
【特許文献2】特開平1−261013号公報
【特許文献3】実開平4−132738号公報
【特許文献4】特開平8−79002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなヒータ付きのSAWデバイスは実用化されていないのが現状である。その理由は、圧電基板を該基板上に設けた抵抗体からなるヒータ電極で直接加熱したとき、基板内部にヒータ電極付近から離れる向きに温度勾配が生じ、その不均一な温度分布による熱応力が基板を変形させ、その内部応力が周波数を変動させるためと考えられる。この結果、ヒータの熱により圧電基板の温度を調節して周波数を安定させるという本来の目的を達成することができない。
【0007】
SAWデバイスをヒータ電極で加熱しない場合の周波数温度特性を、図7に示すように例えば65°の使用温度を頂点温度とする2次曲線と仮定する。この場合、圧電基板の温度を65°±10°に制御すれば、SAWデバイスの周波数は数ppm程度の変動範囲に安定させることができる。しかしながら、SAWデバイスの周波数変動量は、図8に示すように、圧電基板の温度を環境温度よりも上昇させたとき、温度上昇幅Δtに関して直線状に変化することを本願出願人は見出した。これは、温度上昇により圧電基板内部に生じた熱応力の影響であると考えられる。
【0008】
このため、例えば環境温度が25℃の状態で圧電基板の温度を65℃まで上昇させたとき、SAWデバイスの周波数温度特性は、図9に実線で示すようになる。即ち、図7の2次曲線Aから図8の変動量Bを25℃の位置で交差させて差し引いた2次曲線Cとなる。その結果、温度変化に対する周波数変動量が大きくなり、周波数を安定させることが困難になるという問題が生じる。
【0009】
また、上記特許文献4に記載のSAW装置は、圧電基板をその裏面の一部のみで支持したとき、熱電素子から発生した熱の一部が支持部から直接支持台に逃げるため、圧電基板の裏面全体に熱電素子を接合しても、その温度分布は不均一になり易い。仮に圧電基板の裏面に分散配置した複数の熱電素子が個別に制御可能であるとしても、圧電基板の温度分布を均一にすることは比較的困難である。
【0010】
本願発明者は、上記特許文献2,3に記載されるように圧電基板の裏面にヒータ電極を設けたSAW素子をSAW伝搬方向の一端で片持ちに支持し、圧電基板の主面に発生する温度分布及び熱応力による内部応力を解析した。この解析には、図10(A)(B)に示すSAW素子1を備えるSAWデバイスを考えた。SAW素子1は、水晶からなる圧電基板2の主面にIDT3が略中央に、その両側に反射器4,5が配置されている。圧電基板2の裏面には、細幅の配線からなるヒータ電極6が略中央に形成されている。SAW素子1は、図10(C)に示すように、SAW伝搬方向の一方の端部2aを接着剤7で支持部8に固定して片持ちに支持されている。
【0011】
このSAWデバイスを約25℃の室温に置いて、ヒータ電極6により圧電基板2を約65℃の使用温度まで昇温するように加熱した。その結果、圧電基板2の主面には、図11(A)(B)に示す温度分布及び応力が発生した。圧電基板2全体の温度を65°±10°程度に制御できれば、SAWデバイスの周波数は数ppm程度の変動範囲に安定させることができる。ところが、図11(A)に示す圧電基板2表面の温度は、端部2aから反対側の端部に向けて約65℃から約125℃以上まで不均一に分布している。図11(B)において、圧電基板2表面の内部応力は正値が引張応力を、負値が圧縮応力を示し、特にIDT3を設けた中央領域に圧縮応力と引張応力とが、−2MPaから+2MPa以上の広い範囲で作用している。この内部応力のため、SAW素子1は周波数が変動し易く、ヒータ電極6による周波数の安定化を実現することが困難である。
【0012】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電基板上にその温度を調整するためのヒータ電極を設けたSAWデバイスにおいて、ヒータ電極の発熱による熱応力の影響を解消して、使用する環境温度の高低や昇温幅の大小によらず、常に圧電基板の温度分布を均一にし、周波数の安定化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者は、圧電基板上にIDTを形成したSAW素子片を長手方向又は幅方向の一方の端部で片持ちに支持したSAWデバイスにおいて、圧電基板の裏面にヒータ電極を設けてその温度を調整したときに圧電基板に生じる温度分布や内部応力を解析した。本発明は、この解析結果に基づいてなされたものである。
【0014】
本発明によれば、上記目的を達成するために、例えば水晶からなる矩形板状の圧電基板の主面に、SAWを励振するIDTと該IDTの両側に配置した反射器とを有し、かつ圧電基板の裏面にヒータ電極を有するSAW素子を、そのSAW伝搬方向の一方の端部で固定手段により支持部に、SAW素子の他の部分を浮かせた状態で片持ちに支持し、ヒータ電極が、圧電基板の平面においてIDTよりも前記一方のSAW伝搬方向端部側に配置されたSAWデバイスが提供される。
【0015】
このようにヒータ電極及びIDTを配置することにより、SAW素子をヒータ電極で加熱したときに、その開始温度即ち環境温度の高低やそれから所望の使用温度までの昇温幅の大小によらず、圧電基板主面のIDTを形成した部分の温度分布を概ね均一化し、その熱応力による圧電基板の内部応力を小さくすることができる。その結果、熱応力によるSAWデバイスの周波数の変動を解消又は抑制して、周波数の安定化を実現できる。
【0016】
或る実施例では、圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の反射器が固定手段と重なるように配置され、かつヒータ電極がSAW素子の浮かせた部分と重なるように配置されることにより、圧電基板の平面寸法を最小にして、SAWデバイスの小型化を図ることができる。
【0017】
別の実施例では、圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の反射器及びヒータ電極が、SAW素子の浮かせた部分と重なるように配置されることにより、ヒータ電極をIDTからより離すことができるので、圧電基板主面の、特にIDTを設けた中央領域の温度分布をより均一にし、熱応力による内部応力をより小さくして、周波数をより安定化させることができる。
【0018】
また別の実施例では、圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の反射器がSAW素子の浮かせた部分に、固定手段からSAW伝搬方向に離隔して配置され、かつヒータ電極が一方のSAW伝搬方向端部側の反射器よりも前記一方のSAW伝搬方向端部側に配置されることにより、ヒータ電極をIDTから更に離すことができるので、圧電基板主面の、特にIDTを設けた中央領域の温度分布をより一層均一にし、熱応力による内部応力を更に小さくして、周波数をより一層安定化させることができる。
【0019】
或る実施例では、前記固定手段として、例えば接着剤やバンプを用いることができる。バンプを用いた場合には、SAW素子を機械的に固定すると共に、それを介してヒータ電極を電源に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1(A)〜(C)は、本発明を適用したSAWデバイスの第1実施例を示している。本実施例のSAWデバイスは、共振子として使用されるSAW素子11を備える。SAW素子11は、図1(A)に示すように、水晶からなる矩形平板の圧電基板12を有する。圧電基板12の主面には、その略中央に交差指電極対からなるSAW励振用のIDT13が形成されている。IDT13のSAW伝搬方向の両側には、それぞれ各1個の反射器14,15が配置されている。圧電基板12の裏面には、図1(B)に示すように、ヒータ電極16が形成されている。
【0021】
SAW素子11は、図1(C)に示すように、SAW伝搬方向の一方の端部12aの裏面で接着剤17により前記SAWデバイスの支持部18上に固定され、片持ちに支持されている。接着剤17には、前記SAW素子の固定手段として公知の様々な接着剤を使用することができ、例えばシリコーン系の接着剤は断熱性が高いので、好都合である。
【0022】
ヒータ電極16は、SAW素子11の平面において、図中想像線19で示す圧電基板12主面のIDT13の位置よりも、接着剤17で支持部18に固定される端部12a側に配置されている。ヒータ電極16を接着剤17と重ならないように配置すると、その発熱による接着剤の劣化を防止できるので、好ましい。ヒータ電極16は、圧電基板12をより均一に加熱するように、圧電基板12のSAW伝搬方向に直交する交差長方向即ち幅方向の略全長に亘って、IDT13の交差長よりも長くかつその全範囲を含むように配置することが好ましい。前記ヒータ電極は比較的細幅の配線パターンからなり、前記IDT及び反射器のパターニングと同様に、前記圧電基板裏面に成膜した電極膜をフォトエッチングすることにより形成される。
【0023】
SAW伝搬方向端部12a側の反射器15は、SAW素子11の平面において、前記接着剤を塗布した領域と重なるように配置されている。これにより、圧電基板12のSAW伝搬方向の寸法をできる限り小さくして、SAW素子11の小型化を図ることができる。更に本実施例では、反射器15が部分的に接着剤17の領域に重なることにより、ヒータ電極16を前記接着剤の領域に重ならないように設けるためのスペースを確保できる。他方、IDT13及び他方の反射器14は、前記接着剤で浮かせたSAW素子11の部分に配置されている。
【0024】
図1のSAWデバイスについて、ヒータ電極16に電流を印加して圧電基板12の温度を調整し、該圧電基板の主面の温度分布及び内部応力を解析した。本実施例では、IDT13を形成した圧電基板12の中央領域を、室温(25℃)から所定の使用温度である約65℃まで昇温させるように加熱した。その解析結果を図2(A)の温度分布図及び図2(B)の応力分布図に示す。
【0025】
図2(A)に示すように、圧電基板2の浮かせた部分は、ヒータ電極16により直接加熱されて75℃以上の高温となった接着剤17近傍の狭い領域を除いて、概ね全体が約65〜75℃の均一な温度分布を示している。これに対し、接着剤17で固定した圧電基板の端部12aは、SAW伝搬方向の端縁に向けて約65℃から35℃以下まで急激に低下する不均一な温度分布を示している。これは、圧電基板12の浮かせた部分は熱の閉じ込め効果が高いのに対し、端部12aは熱が接着剤17を介して支持部18に逃げるためである。
【0026】
図2(B)において、正値は引張応力を、負値は圧縮応力を示す。圧電基板12の浮かせた部分は、図2(A)の温度分布に対応して、ヒータ電極16を配置した前記接着剤近傍の狭い領域を除いて、内部応力が全体的に約−2MPa〜約+2MPaの比較的小さい値で概ね一様に分布している。
【0027】
このように本実施例によれば、ヒータ電極16により圧電基板12の温度を調節したとき、その開始温度即ち環境温度の高低やそれから所望の使用温度までの昇温幅の大小によらず、端部12aを除く圧電基板12主面の大部分を略均一な温度分布にすることができる。従って、圧電基板12主面の特にIDT13を形成した中央領域において、熱応力による内部応力を小さくし、それが周波数に及ぼす影響を解消又は緩和して、周波数の安定化を実現することができる。
【0028】
図3(A)〜(C)は、本発明によるSAWデバイスの第2実施例を示している。本実施例のSAWデバイスは、第1実施例と同様に、共振子として使用されるSAW素子21が水晶からなる矩形平板の圧電基板22を有する。圧電基板22には、図3(A)に示すように、その主面の略中央に交差指電極対からなるIDT23が、該IDTのSAW伝搬方向の両側に各1個の反射器24,25がそれぞれ形成されている。図3(B)に示すように、圧電基板22の裏面にヒータ電極26が形成されている。SAW素子21は、図3(C)に示すように、SAW伝搬方向の一方の端部22aの裏面で公知の適当な接着剤27により支持部28上に固定され、片持ちに支持されている。
【0029】
本実施例では、SAW素子21の平面において、SAW伝搬方向端部22a側の反射器25が、接着剤27を塗布した領域に隣接するがそれと重ならないように、前記接着剤で浮かせたSAW素子21の部分に配置されている。ヒータ電極26は、図中想像線29で示すIDT23の位置よりも端部22a側に、第1実施例の場合よりも前記IDTから離して前記接着剤を塗布した領域に隣接して配置されている。これにより、圧電基板22主面の、特にIDT23を設けた中央領域の温度分布をより均一にし、熱応力による内部応力をより小さくして、周波数をより安定化させることができる。
【0030】
また、本実施例では、IDT23の位置と接着剤27を塗布した領域との間に第1実施例の場合よりも広いスペースを確保することができる。その結果、ヒータ電極26の設計の自由度が増し、接着剤27と重ならないように配置し、また配線をより長くして発熱量をより高くすることができる。尚、本実施例の他の構成は、第1実施例と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0031】
図4(A)〜(C)は、本発明によるSAWデバイスの第3実施例を示している。本実施例のSAWデバイスは、上記各実施例と同様に、共振子として使用されるSAW素子31が水晶からなる矩形平板の圧電基板32を有する。圧電基板22には、図4(A)に示すように、その主面の略中央に交差指電極対からなるIDT33が、該IDTのSAW伝搬方向の両側に各1個の反射器34,35がそれぞれ形成されている。図4(B)に示すように、圧電基板32の裏面にヒータ電極36が形成されている。SAW素子31は、図4(C)に示すように、SAW伝搬方向の一方の端部32aの裏面で公知の適当な接着剤37により支持部38上に固定され、片持ちに支持されている。
【0032】
本実施例では、SAW素子31の平面において、SAW伝搬方向端部32a側の反射器35が、接着剤37を塗布した領域から或る程度の距離離して、前記接着剤で浮かせたSAW素子31の部分に配置されている。ヒータ電極36は、図中想像線39で示すIDT33の位置から更に離して、想像線40で示す反射器35の位置よりも端部32a側に、前記接着剤を塗布した領域に隣接して配置されている。これにより、第2実施例の場合よりも、圧電基板32主面の、特にIDT23を設けた中央領域の温度分布を均一にし、熱応力による内部応力を小さくして、周波数をより一層安定化させることができる。
【0033】
また、本実施例では、IDT33の位置と接着剤37を塗布した領域との間に第2実施例の場合よりも広いスペースを確保することができる。その結果、ヒータ電極36の設計の自由度をより高めることができる。尚、本実施例の他の構成は、上記各実施例と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0034】
次に、図5及び図6を用いて、前記圧電基板の裏面に形成したヒータ電極を電源に接続するための好適な構成を説明する。図5(A)に示すように、圧電基板12のSAW伝搬方向の端部12aの裏面は、その両側辺に沿って入出力電極16a,16bが形成されている。入出力電極16a,16bは、その幅をヒータ電極16よりも十分に太くして、前記入出力電極からの発熱量を小さくする。前記SAWデバイスの支持部18には、前記入出力電極に対応する位置に、外部の電源に接続されるリード41a,41bが配線されている。
【0035】
図5(B)(C)に示すように、接着剤17を端部12a裏面の入出力電極16a,16b間の領域に塗布して、SAW素子11を支持部18に固定する。入出力電極16a,16bとリード41a,41bとは、それぞれ導電性接着剤42a,42bにより電気的に接続する。
【0036】
図6(A)〜(C)に示す実施例は、接着剤17を省略し、かつ入出力電極16a,16bとリード41a,41bとをバンプ42a,42bで電気的にかつ機械的に接続した点において、図5の実施例と異なる。別の実施例では、SAW素子11を支持部18に機械的に固定するために、バンプ42a,42b以外の固定手段として、例えば導電性接着剤を用いることができる。
【0037】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、圧電基板は、水晶以外に、リチウムタンタレート、リチウムナイオベート、四硼酸リチウムなどの様々な公知の圧電材料で形成することができ、その場合にも本発明を同様に適用することができる。また、本発明は、上記各実施例の共振器以外のSAWデバイスについて、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(A)図は本発明によるSAWデバイスの第1実施例の平面図、(B)図はSAW素子の底面図、(C)図はSAWデバイスの側面図。
【図2】(A)図及び(B)図は、ヒータ電極で加熱した図1のSAWデバイスにおける圧電基板表面の温度分布図及び応力分布図。
【図3】(A)図は本発明によるSAWデバイスの第2実施例の平面図、(B)図はSAW素子の底面図、(C)図はSAWデバイスの側面図。
【図4】(A)図は本発明によるSAWデバイスの第3実施例の平面図、(B)図はSAW素子の底面図、(C)図はSAWデバイスの側面図。
【図5】(A)図はヒータ電極の接続電極を示すSAW素子の部分底面図、(B)図はマウントしたSAW素子の部分平面図、(C)図はその端面図。
【図6】(A)図はヒータ電極の接続電極を示すSAW素子の部分底面図、(B)図は別の方法でマウントしたSAW素子の部分平面図、(C)図はその端面図。
【図7】ヒータ電極で加熱しないSAWデバイスの周波数温度特性を示す線図。
【図8】ヒータ電極で加熱したSAWデバイスの温度上昇に対する周波数変動量を示す線図。
【図9】ヒータ電極で加熱したSAWデバイスの周波数温度特性を示す線図。
【図10】(A)図は従来のSAW素子を片持ちに支持したSAWデバイスの平面図、(B)図はSAW素子の底面図、(C)図はSAWデバイスの側面図。
【図11】(A)図及び(B)図は、ヒータ電極で加熱した図10のSAWデバイスにおける圧電基板表面の温度分布図及び応力分布図。
【符号の説明】
【0039】
1,11,21,31…SAW素子、2,12,22,32…圧電基板、2a,12a,22a,32a…端部、3,13,23,33…IDT、4,5,14,15,24,25,34,35…反射器、6,16,26,36…ヒータ電極、7,17,27,37…接着剤、8,18,28,38…支持部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状の圧電基板の主面に、弾性表面波(SAW)を励振するIDTと前記IDTの両側に配置した反射器とを有し、かつ前記圧電基板の裏面にヒータ電極を有するSAW素子を、そのSAW伝搬方向の一方の端部で固定手段により支持部に、前記SAW素子の他の部分を浮かせた状態で片持ちに支持する弾性表面波デバイスにおいて、前記ヒータ電極が、前記圧電基板の平面において前記IDTよりも前記一方のSAW伝搬方向端部側に配置されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の前記反射器が前記固定手段と重なるように配置され、かつ前記ヒータ電極が前記SAW素子の浮かせた前記他の部分と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の前記反射器及び前記ヒータ電極が、前記SAW素子の浮かせた前記他の部分と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の前記反射器が前記SAW素子の浮かせた前記他の部分に、前記固定手段からSAW伝搬方向に離隔して配置され、かつ前記ヒータ電極が前記一方のSAW伝搬方向端部側の前記反射器よりも前記一方のSAW伝搬方向端部側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記固定手段が接着剤であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記固定手段がバンプであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
前記ヒータ電極が前記バンプを介して電源に接続されることを特徴とする請求項6に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項8】
前記圧電基板が水晶基板であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項1】
矩形板状の圧電基板の主面に、弾性表面波(SAW)を励振するIDTと前記IDTの両側に配置した反射器とを有し、かつ前記圧電基板の裏面にヒータ電極を有するSAW素子を、そのSAW伝搬方向の一方の端部で固定手段により支持部に、前記SAW素子の他の部分を浮かせた状態で片持ちに支持する弾性表面波デバイスにおいて、前記ヒータ電極が、前記圧電基板の平面において前記IDTよりも前記一方のSAW伝搬方向端部側に配置されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の前記反射器が前記固定手段と重なるように配置され、かつ前記ヒータ電極が前記SAW素子の浮かせた前記他の部分と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の前記反射器及び前記ヒータ電極が、前記SAW素子の浮かせた前記他の部分と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記圧電基板の平面において、前記一方のSAW伝搬方向端部側の前記反射器が前記SAW素子の浮かせた前記他の部分に、前記固定手段からSAW伝搬方向に離隔して配置され、かつ前記ヒータ電極が前記一方のSAW伝搬方向端部側の前記反射器よりも前記一方のSAW伝搬方向端部側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記固定手段が接着剤であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記固定手段がバンプであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
前記ヒータ電極が前記バンプを介して電源に接続されることを特徴とする請求項6に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項8】
前記圧電基板が水晶基板であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−105513(P2009−105513A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273227(P2007−273227)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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