説明

弾性表面波デバイス

【課題】本発明は、弾性表面波デバイスの温度特性の向上を目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明は、ベース基板3上に圧電基板2をフリップチップ実装してその励振領域6を樹脂フィルム5で封止する弾性表面波デバイスにおいて、櫛形電極1の伝播路12の延長領域で且つ圧電基板2の外周端近傍のベース基板3上に突起堤部13を設けた。この構成により、弾性表面波デバイスにおける温度特性を改善できるのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等に用いられる弾性表面波デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の弾性表面波デバイスは、図5に示すごとく、櫛形電極1を有する圧電基板2をベース基板3にバンプ4を用いてフリップチップ実装し、この圧電基板2を樹脂フィルム5で覆い櫛形電極1の励振領域6を封止するとともに、圧電基板2の外周端部分のベース基板3の間にも樹脂フィルム5aを介在させて、弾性表面波デバイスを樹脂モールドするようなモジュール化に伴うモールド圧力に対して耐圧補強を行っていた。
【0003】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】国際公開第2006/093078号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような弾性表面波デバイスにおいては、樹脂フィルム5の熱膨張特性により弾性表面波デバイスの温度変化に応じて特に樹脂フィルム5aの膨張応力が圧電基板2の両端部分を上方に押し上げるように加わり、その応力が櫛形電極1の伝播路の延長上に加わった場合、櫛形電極1の電極指ピッチ7が変動し、弾性表面波デバイスの周波数特性が変化してしまうという温度特性の問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題を解決し弾性表面波デバイスにおける温度特性の改善を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために本発明は、弾性表面波デバイスにおいて櫛形電極の伝播路の延長領域で且つ圧電基板の外周端近傍のベース基板上に突起堤部を設けたのである。
【発明の効果】
【0007】
この構成により、弾性表面波デバイスにおける温度特性を改善できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態における弾性表面波デバイスについて図面を用いて説明する。なお、上述した従来の技術と同様の構成については同じ符号を付して説明する。
【0009】
図1は弾性表面波デバイスの断面を模式的に示したものであり、その基本構造はベース基板3上に圧電基板2をバンプ4を介してフリップチップ実装し、この圧電基板2を樹脂フィルム5で覆い弾性表面波デバイスの励振領域6を封止した構造となっている。
【0010】
また、圧電基板2のベース基板3と対峙する表面には、図2に示すように弾性表面波を励振させる3つの櫛形電極1が伝播方向に並設され、さらにその両外側に反射器8を設けて縦モード結合型フィルタを形成する構成となっている。
【0011】
なお、櫛形電極1は一対の櫛電極1a、1bにより構成されており、中央の櫛形電極1は一方の櫛電極1aが入力パッド9に接続されるとともに他方の櫛電極1bが接地パッド10に接続され、両外側の櫛形電極1は一方の櫛電極1bが出力パッド11に接続されるとともに他方の櫛電極1aが接地パッド10に接続されている。また、各入力パッド9、出力パッド11、接地パッド10は図1に示されるようにバンプ4を介してベース基板3に実装した構成となっている。
【0012】
また、圧電基板2はタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどが用いられ、ベース基板3はアルミナなどの高温焼成セラミックスやセラミックスにガラスを配合した低温焼成セラミックスが用いられる。
【0013】
ここで、このようなベース基板3に圧電基板2をフリップチップ実装しその励振領域6を樹脂フィルム5で封止するタイプの弾性表面波デバイスは、その用途として他の周辺回路と共に樹脂モールドし一体化するモジュール品の一部として使用されることから、弾性表面波デバイスとしてモールド圧力に耐えなければならず、その耐圧補強構成として図5に示したように圧電基板2の外周端部分のベース基板3間にも樹脂フィルム5aを介在させていたのであるが、この樹脂フィルム5の熱膨張特性により弾性表面波デバイスの温度変化に応じて応力が圧電基板2に加わり、その応力が櫛形電極1の伝播路の延長上に加わった場合、櫛形電極1の電極指ピッチ7が変動し、これに合わせて弾性表面波デバイスの周波数特性が変化してしまうという温度特性の問題があった。
【0014】
そこで、この弾性表面波デバイスにおいては図3に示すごとく櫛形電極1の伝播路12の延長領域で且つ圧電基板2の外周端近傍に位置するベース基板3の上面部分に圧電基板2側に突出した突起堤部13を設けることでこの弾性表面波デバイスの温度特性を向上させたのである。なお、この図3はベース基板3の上面を示したもので、破線はこのベース基板3に実装される圧電基板2の外形及び櫛形電極1や反射器8等の電極パターンを示したものである。
【0015】
すなわち、櫛形電極1の伝播路12の延長領域で且つ圧電基板2の外周端近傍のベース基板3の表面に突起堤部13を設けたことにより、弾性表面波デバイスにおける周波数特性に影響を及ぼす櫛形電極1の伝播路12の延長領域に存在する樹脂量が低減され、これに伴い熱膨張が抑制されて電極指ピッチ7の変化を低減させ、結果として弾性表面波デバイスの温度特性を向上させることが出来るのである。
【0016】
なお、圧電基板2の外周端近傍にバンプ4が配置されている場合、バンプ4と突起堤部13や樹脂との接触が高周波特性的に好ましくなく、これを回避するためにバンプ4と突起堤部13の間隔を大きくすれば製品が大型化してしまうという問題が生じるが、バンプ4自体が圧電基板2の支柱構造であることから、このバンプ4の近傍を突起堤部13の非形成領域と突起堤部13を圧電基板2の外周に沿って断続的に配置することが好ましい。なお、バンプ4がハンダ素材により形成されている場合には、突起堤部13を圧電基板2の外周端に沿って断続的に配置することでフリップチップ実装工程においてハンダバンプ4に含まれていたフラックスの洗浄における突起堤部13で囲まれる励振領域6にも十分に洗浄液を循環させることが可能となり、フラックスの洗浄効率が高められるのである。
【0017】
また、突起堤部13が圧電基板2の外周端近傍における外側にのみ存在する場合、樹脂を介する突起堤部13と圧電基板2の支持構造がベース基板3に対して傾斜してしまいモールド樹脂に対する耐圧性が弱まってしまい、突起堤部13が圧電基板2の外周端近傍における内側にのみ存在する場合、突起堤部13の外側におけるベース基板3と圧電基板2との間に樹脂が形成されるので、上述した従来技術と同様に樹脂の熱膨張特性の影響を受けやすくなるので、突起堤部13は圧電基板2の外周端を境にその内外領域にわたって形成することが好ましい。
【0018】
なお、突起堤部13の高さは、ベース基板3と圧電基板2の間隔より小さくすることにより、ベース基板3上に圧電基板2をフリップチップ実装する際に圧電基板2が突起堤部13に接触し損傷することが防止できるとともに、ベース基板3上にバンプ4を形成する際に複数のバンプ4の高さを板状の治具を用いて簡単に合わせることもでき高い組立精度が確立できるとともに、突起堤部13と圧電基板2の間に樹脂フィルム5が介在することにより弾性表面波デバイスをモジュール化する際に加わるモールド圧力に対しても緩衝効果を得ることが出来る。
【0019】
また、突起堤部13と圧電基板2との隙間には樹脂フィルム5が介在するのであるが、先にも述べたように弾性表面波デバイスにおいて櫛形電極1が反射器といった高周波回路を形成する電極と樹脂との接触は高周波特性的に好ましくないことから、図4に示すように突起堤部13と圧電基板2との間隔を圧電基板2の外周端部分14より内側部分15を広く設定することで、樹脂フィルム5が間隔の狭い圧電基板2の外周端側から内側に向けて圧入されることになり、圧入された樹脂の分散速度が内側に侵入するにつれ遅くなるので、結果として組立における制御がより簡易なものと出来るのである。
【0020】
なお、突起堤部13およびバンプ4をハンダで形成することで、ベース基板3にバンプ4を形成する工程、つまり、ベース基板3におけるバンプ4の形成位置にクリームハンダを塗布しリフロー処理する工程において突起堤部13の形成位置にもクリームハンダを塗布しておくことにより一括形成することが出来るのである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の弾性表面波デバイスは、温度特性を改善できるという効果を有し、特に小型の電子機器に対応する弾性表面波デバイスにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の弾性表面波デバイスの断面図
【図2】同弾性表面波デバイスを構成する圧電基板の電極パターン図
【図3】同弾性表面波デバイスを構成するベース基板の構造を示す模式図
【図4】同弾性表面波デバイスのベース基板と圧電基板の支持構造を示す模式図
【図5】従来の弾性表面波デバイスの断面図
【符号の説明】
【0023】
1 櫛形電極
2 圧電基板
3 ベース基板
5 樹脂フィルム
12 伝播路
13 突起堤部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、この圧電基板をバンプ接続するベース基板と、前記圧電基板の前記ベース基板と対峙する主面に設けられた櫛形電極と、前記ベース基板上にて前記圧電基板を覆い前記櫛形電極の励振領域を封止する樹脂フィルムとを備え、前記ベース基板上において前記櫛形電極の伝播路の延長領域で且つ前記圧電基板の外周端近傍に突起堤部を設けたことを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
突起堤部を圧電基板の外周端を境にその内外領域にわたって設けたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
突起堤部の高さをベース基板と圧電基板の間隔より小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
突起堤部と圧電基板との間隔を前記圧電基板の外周端より内側部分を広く設定したことを特徴とする請求項3に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
突起堤部およびバンプをハンダで形成したことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−177291(P2009−177291A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11255(P2008−11255)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】