説明

弾性表面波フィルタ

【課題】通過帯域よりも低周波数側及び高周波数側に各々減衰域を設けたバンドパス型の弾性表面波フィルタにおいて、前記減衰域において良好な減衰量を得ること。
【解決手段】2つのSAW共振子11、12を入力ポート5と出力ポート6との間に互いに並列に接続する。そして、周波数と減衰量との関係を示す特性図において、これらSAW共振子11、12の各々の減衰域に形成されるサイドローブの位置を互いに位置ずれさせるために、第1のSAW共振子11の本数Nと、第2のSAW共振子12の本数Nと、を互いに異なる本数に設定する。更に、このように本数Nを互いに異なる数量に設定したことに伴うインピーダンスの不整合を解消するために、これらSAW共振子11、12の互いの交差長Wを異なった寸法にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過帯域よりも低周波数側及び高周波数側に各々減衰域を設けたバンドパス型の弾性表面波(SAW:surface acoustic wave)フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
SAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)を利用したフィルタの一つとして、ある周波数帯域に通過帯域を設けると共に、この通過帯域よりも低周波数側及び高周波数側に各々減衰域(阻止域)を設けたバンドパスフィルタが知られている。このようなフィルタは、IDT(Inter Digital Transducer)電極と、このIDT電極を弾性表面波(以下「弾性波」と言う)の伝搬方向における一方側及び他方側から挟むように配置された一対の反射器と、を圧電基板上に配置した共振器(LCMR:Longitudinal Couple Mode Resonator)型のSAWフィルタにより構成される。
【0003】
このフィルタは、例えば携帯電話にて受信される電波が当該携帯電話の内部に到達する前にこの電波からノイズを除去するためのRFフィルタや、携帯電話の内部にて前記電波の変換を行うIFフィルタなどとして用いられる。携帯電話用のRFフィルタの場合には、比帯域(通過帯域÷(通過帯域の中心周波数)×100)が1%以上もの広帯域となるように、IDT電極の電極指の本数が例えば数十本程度に設定される。一方、特許文献1、2のフィルタは、一般に共振を合成させて通過帯域を広げることが前提の技術であり、特許文献2に記載されているように、GSMのIFフィルタ等は、狭帯域なフィルタ特性を持つ特徴がある。そして、比帯域が1%より小さい狭帯域のフィルタとなるように、電極指の本数を例えば数百本以上に設定している。
【0004】
以上説明した電気的に並列接続された2種類のLCMR型の構成では、電極指の本数に互いに大きな差異があることから、通過帯域の広さ(比帯域の大きさ)が互いに異なっていることに加えて、減衰域でも互いの周波数特性が異なっている。具体的には、広帯域であるRFフィルタの減衰域では、図9に模式的に示すように、各々の電極指にて励振される弾性波に対応する減衰極(ポール)とサイドローブとが形成される。一方、狭帯域であるIFフィルタの減衰域では、図10に模式的に示すように、電極指の本数が多いために前記サイドローブが互いに干渉し合い、概略フラットな特性となる。従って、RFフィルタでは、減衰域における減衰量がある値よりも大きくなるように規格(例えば図9中の一点鎖線)が定められている場合において、前記サイドローブによって減衰域における特性が規格を外れてしまうことがある。尚、図9及び図10は、夫々電極指の重み付けや間引きを行わない状態での特性を模式的に示している。
特許文献1、2には、通過帯域が各々狭帯域となるように構成されたSAW共振器を2つ並列に接続し、これらSAW共振器の各々の通過帯域同士を接続していわば一つの大きな通過帯域を形成する技術について記載されているが、既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−334476
【特許文献2】特開平10−294644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通過帯域よりも低周波数側及び高周波数側に各々減衰域を設けたバンドパス型の弾性表面波フィルタにおいて、前記減衰域において良好な減衰量を得ることのできる弾性表面波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弾性表面波フィルタは、
通過帯域よりも低周波数側及び高周波数側に各々減衰域を設けたバンドパス型の弾性表面波フィルタにおいて、
IDT電極と前記IDT電極を弾性表面波の伝搬方向における一方側及び他方側から挟むように配置された一対の反射器とを圧電基板上に各々形成すると共に、互いの通過帯域が揃うように構成された第1のSAW共振子及び第2のSAW共振子と、
これら第1のSAW共振子及び第2のSAW共振子に共通に設けられた入力ポートと、
前記第1のSAW共振子及び前記第2のSAW共振子に共通に設けられた出力ポートと、を備え、
前記IDT電極は、弾性表面波の伝搬方向に沿うように各々配置されると共に互いに平行となるように形成された一対のバスバーと、これらバスバーの一方側及び他方側から互いに交互に櫛歯状に伸び出すように配置された複数本の電極指と、を備え、
前記第1のSAW共振子及び前記第2のSAW共振子は、周波数と減衰量との関係を示す特性図において、各々の減衰域に形成されるポールの位置を互いに位置ずれさせるために、各々のIDT電極における電極指が互いに異なる本数に設定され、
一対のバスバー間において互いに隣接する電極指同士が交差する長さ寸法を交差長とすると、前記第1のSAW共振子及び前記第2のSAW共振子は、各々のインピーダンスの整合を取るために、互いに異なる交差長に設定されていることを特徴とする。前記通過帯域の比帯域は、1%以上であっても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、入力ポートと出力ポートとの間に第1のSAW共振子及び第2のSAW共振子を互いに並列に配置すると共に、これらSAW共振子の各々において周波数と減衰量との関係を示す特性図における減衰域に形成されるサイドローブの位置を互いに位置ずれさせるために、第1のSAW共振子のIDT電極の電極指と、第2のSAW共振子のIDT電極の電極指と、を互いに異なる本数に設定している。そして、これらSAW共振子同士の間におけるインピーダンスの整合を取るために、一対のバスバー間において互いに隣接する電極指同士が交差する長さ寸法である交差長について、各々のSAW共振子において互いに異なる長さ寸法に設定している。そのため、通過帯域における挿入損失の劣化を抑えつつ、減衰域において良好な(大きな)減衰量のバンドパスフィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のフィルタの一例を示す平面図である。
【図2】従来のフィルタにおいて得られる特性を示す模式図である。
【図3】前記従来のフィルタを示す平面図である。
【図4】前記本発明のフィルタの特性を示す模式図である。
【図5】前記本発明のフィルタの特性を示す特性図である。
【図6】前記従来のフィルタの特性を示す特性図である。
【図7】本発明のフィルタの他の例を示す平面図である。
【図8】本発明のフィルタの更に別の例を示す平面図である。
【図9】従来のフィルタの特性を示す模式図である。
【図10】従来のフィルタの特性を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態の一例である弾性表面波フィルタについて、図1を参照して説明する。このフィルタは、通過帯域よりも低周波数側及び高周波数側に各々減衰域が設けられると共に、通過帯域の比帯域が1%以上もの広帯域となるように設定されたバンドパスフィルタであり、入力ポート5と出力ポート6との間に第1のSAW共振子11と第2のSAW共振子12とを互いに並列に接続して構成されている。具体的には、弾性波の伝搬方向における一方側及び他方側を夫々右方向及び左方向と呼ぶと、例えば水晶などの圧電基板10上には、左側に第1のSAW共振子11が配置され、右側に第2のSAW共振子12が配置されている。従って、入力ポート5は、これらSAW共振子11、12に対して共通に設けられ、出力ポート6は、SAW共振子11、12に対して共通に設けられている。
【0011】
これら第1のSAW共振子11及び第2のSAW共振子12のうち、始めに第1のSAW共振子11について説明する。この第1のSAW共振子11は、3つのIDT電極21を弾性波の伝搬方向に配置すると共に、これらIDT電極21を弾性波の伝搬方向における一方側及び他方側から挟むように、一対の反射器31、31を設けて構成されている。IDT電極21は、弾性波の伝搬方向に沿うように各々配置されると共に互いに平行となるように形成された一対のバスバー22、22と、これらバスバー22、22のうち一方側のバスバー22から他方側のバスバー22に向かって交互に櫛歯状に伸び出す複数本の電極指23と、を各々備えている。各々の電極指23は、電極指23の幅寸法及び互いに隣接する電極指23、23間の離間寸法からなる周期長(周期単位)λが弾性波の伝搬方向に沿って周期的に繰り返されるように配置されている。従って、前記周期長λに対応する波長の弾性波が圧電基板10上を伝搬する。図1中32は反射器電極指、33は反射器バスバーである。尚、図1では電極指23の本数について簡略化して描画している。
【0012】
これらIDT電極21の各々の電極指23の本数Nは、既述のように比帯域が1%以上となるように、例えば数十本程度に各々設定されている。即ち、これら3つのIDT電極21について、左側から右側に向かって夫々第1のIDT電極21、第2のIDT電極21及び第3のIDT電極21と呼ぶと、本数Nは、第1のIDT電極21では18〜35本、第2のIDT電極21では30〜54本、第3のIDT電極21では18〜35本となっている。具体的には、本数Nは、第1のIDT電極21、第2のIDT電極21及び第3のIDT電極21では、夫々23本、41本及び23本となっている。また、互いに隣接して交差するように一方側のバスバー22及び他方側のバスバー22から夫々伸びる電極指23、23同士の交差する長さ寸法を交差長Wと呼ぶと、第1のSAW共振子11では、交差長Wは3つのIDT電極21の各々において例えば8×λ〜30×λとなっている。
【0013】
第1のIDT電極21において、奥側のバスバー22は接地され、手前側のバスバー22は出力ポート6に接続されている。第2のIDT電極21では、奥側のバスバー22が入力ポート5に接続され、手前側のバスバー22が接地されている。第3のIDT電極21では、奥側のバスバー22が接地され、手前側のバスバー22が出力ポート6に接続されている。
【0014】
続いて、第2のSAW共振子12について説明する。この第2のSAW共振子12についても、弾性波の伝搬方向に沿って3つのIDT電極21が配置されると共に、これら3つのIDT電極21の左側及び右側に各々反射器31が配置されている。従って、第1のSAW共振子11と第2のSAW共振子12とでは、IDT電極21の数量は揃っている。この第2のSAW共振子12についても、3つのIDT電極21について左側から右側に向かって夫々第1のIDT電極21、第2のIDT電極21及び第3のIDT電極21と呼ぶと、第1のIDT電極21において、奥側のバスバー22は接地され、手前側のバスバー22は出力ポート6に接続されている。第2のIDT電極21の奥側のバスバー22には入力ポート5が接続され、手前側のバスバー22は接地されている。第3のIDT電極21では、奥側のバスバー22が接地され、手前側のバスバー22が出力ポート6に接続されている。
【0015】
第2のSAW共振子12において、電極指23の本数Nは、第1のIDT電極21、第2のIDT電極21及び第3のIDT電極21では、夫々18〜35本、30〜54本及び18〜35本となっている。具体的には、前記本数Nは、第1のIDT電極21、第2のIDT電極21及び第3のIDT電極21では、夫々21本、39本及び21本となっている。また、第2のSAW共振子12における交差長Wは、3つのIDT電極21の各々において例えば8×λ〜30×λ(第1のSAW共振子11の交差長W≠第2のSAW共振子12の交差長W)となっている。従って、これら本数N及び交差長Wは、第1のSAW共振子11と第2のSAW共振子12とにおいて夫々互いに異なる数量(寸法)に設定されている。本数Nについては、第1のIDT電極21同士、第2のIDT電極21同士及び第3のIDT電極21同士で互いに異なる数量に夫々設定されている。また、3つのIDT電極21の電極指23の本数Nの合計についても、第1のSAW共振子11と第2のSAW共振子12とでは異なる数量となっている。このように本数N及び交差長Wを設定した理由について、以下に詳述する。
【0016】
即ち、例えばSAW共振子11(12)について、既述のように比帯域が1%以上もの広帯域となるように本数Nを数十本程度に設定した場合には、図2の上側に示すように、減衰域には、電極指23の各々(詳しくは互いに隣接する電極指23、23間の各々の領域)にて発生した弾性波に対応するポールとサイドローブとが生成する。そして、2つのSAW共振子11、12を図3のように互いに同じように(本数Nを互いに同じ数量に)構成した場合には、図2の上段及び中段に示すように、減衰域における前記ポール及びサイドローブは、これらSAW共振子11、12において互いに同じ位置(周波数)に生成することになる。
【0017】
従って、このように互いに同じように構成したSAW共振子11、12同士を入力ポート5と出力ポート6との間に互いに並列に接続したフィルタの特性は、図2の下段に示すように、各々のSAW共振子11、12における減衰域のポール及びサイドローブがそのままの形状で残るか、あるいはSAW共振子11、12の各々のポール同士及びサイドローブ同士が互いに重なり合って増幅されることになる。そのため、図2の下段に「L」の一点鎖線で示すように、減衰域における減衰量がある値よりも大きくなるように規格が設定されている時には、フィルタの特性がサイドローブによって前記規格を外れてしまう場合がある。尚、図2は、周波数と減衰量との関係を模式的に示した特性図である。以下の図4も同様である。
【0018】
そこで、本発明では、図4の上段及び中段に示すように、2つのSAW共振子11、12において互いに異なる本数Nに設定し、例えばSAW共振子11(図4の上段)の減衰域において互いに隣接するサイドローブ間の領域に、例えばSAW共振子12(図4の中段)のサイドローブが位置するようにしている。そのため、これらSAW共振子11、12を入力ポート5と出力ポート6との間に互いに並列に接続すると、SAW共振子11におけるサイドローブと、SAW共振子12におけるサイドローブと、が交互に配置され、いわばSAW共振子11の減衰域における山とSAW共振子12の減衰域における谷とが重なり合うので、図4の下段に示すように、所望の減衰域における減衰量を調整できる。
【0019】
この時、SAW共振子11、12間において互いの本数Nを変えると、これらSAW共振子11、12間におけるインピーダンスが互いに異なる状態(値)になってしまう。従って、このようなSAW共振子11、12を合成(並列に接続)すると、インピーダンスの整合が取れずに、例えば通過帯域において挿入損失が増加してしまう。
【0020】
そのため、本発明では、既述のようにSAW共振子11、12において互いの交差長Wを変えることにより、これらSAW共振子11、12間で互いに異なる本数Nに設定したことに起因するインピーダンスの不整合を解消している。即ち、SAW共振子11、12における交差長Wを互いに異なる値に設定することにより、SAW共振子11とSAW共振子12とのインピーダンスを互いに揃えている。具体的には、第2のSAW共振子12では、第1のSAW共振子11よりも本数Nを少なく設定したので、その分第1のSAW共振子11よりもインピーダンスが高くなっている。そのため、第2のSAW共振子12では、本数Nを少なくしてインピーダンスが高くなった分、交差長Wを広くして、インピーダンスを低くしている。
【0021】
従って、これらSAW共振子11、12を入力ポート5と出力ポート6との間に互いに並列に接続すると、既述の図4に示したように、減衰域における減衰量が良好となり(大きくなり)、更にSAW共振子11、12間のインピーダンスの整合が取られるので、通過帯域における挿入損失が小さく抑えられる。この時、SAW共振子11、12の各々の通過帯域同士が互いにほぼ重なり合う(揃う)。このようなSAW共振子11、12の各々の通過帯域について一例を挙げると、SAW共振子11の通過帯域における下端周波数及び上端周波数を夫々f1、f2とした場合には、SAW共振子12の通過帯域における下端周波数は0.997f1〜1.003f1となり、SAW共振子12の通過帯域における上端周波数は0.997f2〜1.003f2となる。
【0022】
図5は、本発明のフィルタにおいて得られる周波数特性を示しており、減衰域における1350MHz付近では減衰量が42dBもの大きな値となっている。また、減衰域における通過帯域に近接する1680MHz付近では、12.0dB程度の減衰量が得られていた。一方、既述の図3に示すフィルタでは、図6に示すように、1350MHz及び1680MHzにおける夫々の減衰量は40dB及び10.5dB程度となっており、本発明の特性よりも減衰量が小さく(悪く)なっていた。
【0023】
上述の実施の形態によれば、2つのSAW共振子11、12を入力ポート5と出力ポート6との間に互いに並列に接続している。そして、周波数と減衰量との関係を示す特性図において、これらSAW共振子11、12の各々の減衰域に形成されるサイドローブの位置を互いに位置ずれさせるために、第1のSAW共振子11の本数Nと、第2のSAW共振子12の本数Nと、を互いに異なる本数に設定している。更に、このように本数NをSAW共振子11、12間で互いに異なる数量に設定したことに伴うインピーダンスの不整合を解消するために、これらSAW共振子11、12の互いの交差長Wを異なった寸法にしている。そのため、通過帯域における挿入損失の劣化を抑えつつ、減衰域において良好な減衰量を得ることができる。
【0024】
従って、比帯域が1%以上もの広い通過帯域となるように電極指23の本数Nを既述のように少なく設定した場合であっても、減衰域において良好な減衰量が得られる。言い換えると、比帯域が1%より小さな(狭帯域の)IFフィルタなどのように本数Nを例えば数百本程度まで増やすことなく、即ち通過帯域を狭帯域化することなく、広い通過帯域を保ったままで良好な特性を持つバンドパスフィルタを得ることができる。
【0025】
ここで、インピーダンスの整合を取るにあたり、既述の例ではSAW共振子12の交差長Wを調整したが、SAW共振子11の交差長Wを変えても良い。また、第2のSAW共振子12において、第1のSAW共振子11よりも本数Nを多く設定すると共に交差長Wを短く設定しても良い。即ち、減衰域において2つのSAW共振子11、12の互いのサイドローブ同士が互いに位置ずれし、そしてSAW共振子11、12において互いのインピーダンスの整合が取れるようにこれら本数N及び交差長Wを調整しても良い。
【0026】
また、SAW共振子11、12間において互いの本数Nを変えるにあたり、3つのIDT電極21のうち一つだけ本数Nを変えていても良いし、3つのIDT電極21の本数Nの合計をSAW共振子11、12において揃えると共に各々のIDT電極21の本数Nを変えていても良い。
【0027】
以上の例では、各々のSAW共振子11、12に3つのIDT電極21を設けたが、図7に示すように、IDT電極21を各々2つずつ配置しても良い。この例において、SAW共振子11、12の各々のIDT電極21について、図1と同様に左側から右側に向かって第1のIDT電極21及び第2のIDT電極21と呼ぶと、第1のSAW共振子11では、第1のIDT電極21の手前側のバスバー22が出力ポート6に接続され、第2のIDT電極21の奥側のバスバー22が入力ポート5に接続されている。第1のSAW共振子11において、第1のIDT電極21の奥側のバスバー22及び第2のIDT電極21の手前側のバスバー22は、各々接地されている。
【0028】
また、第2のSAW共振子12では、第1のIDT電極21の奥側のバスバー22が入力ポート5に接続され、第2のIDT電極21の手前側のバスバー22が出力ポート6に接続されている。そして、第2のSAW共振子12における第1のIDT電極21の手前側のバスバー22と、第2のIDT電極21の奥側のバスバー22と、は各々接地されている。この場合においても、第2のSAW共振子12では、減衰域において第1のSAW共振子11のサイドローブと当該第2のSAW共振子12のサイドローブとが互いに位置ずれするように、またインピーダンスの整合が取れるように、第1のSAW共振子11と比べて、本数Nが少なく且つ交差長Wが長く設定されている。
この時、第1のSAW共振子11と第2のSAW共振子12とにおいて、互いのIDT電極21の数量を変えても良く、具体的には第1のSAW共振子11では3つのIDT電極21を配置すると共に、第2のSAW共振子12では2つのIDT電極21を設けても良い。
【0029】
以上の各例では、入力ポート5と出力ポート6との間に2つのSAW共振子11、12を互いに並列に接続した構成を採ったが、例えば3つのSAW共振子を互いに並列に接続しても良い。図8は、このような例を示しており、既述の図1における第1のSAW共振子11の左側に、第3のSAW共振子13を配置している。第3のSAW共振子13において、第2のIDT電極21の奥側のバスバー22が入力ポート5に接続され、第1のIDT電極21の手前側のバスバー22及び第3のIDT電極21の手前側のバスバー22は各々出力ポート6に接続されている。そして、第3のSAW共振子13では、第1のIDT電極21の奥側のバスバー22、第2のIDT電極21の手前側のバスバー22及び第3のIDT電極21の奥側のバスバー22は、各々接地されている。第3のSAW共振子13では、第1のSAW共振子11及び第2のSAW共振子12の各々の減衰域に形成されるポールPの位置と当該第3のSAW共振子13の減衰域に形成されるポールPの位置とが互いに位置ずれし、また3つのSAW共振子11、12、13においてインピーダンスの整合が取れるように、第1のSAW共振子11よりも本数Nが多く設定されると共に交差長Wが短く設定されている。
以上説明した本発明の弾性表面波フィルタは、例えば携帯電話用(携帯電話の内部に設けられる部品あるいは携帯電話の基地局に用いられる装置)のRFフィルタとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0030】
5 入力ポート
6 出力ポート
10 圧電基板
11、12 SAW共振子
21 IDT電極
22 バスバー
23 電極指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過帯域よりも低周波数側及び高周波数側に各々減衰域を設けたバンドパス型の弾性表面波フィルタにおいて、
IDT電極と前記IDT電極を弾性表面波の伝搬方向における一方側及び他方側から挟むように配置された一対の反射器とを圧電基板上に各々形成すると共に、互いの通過帯域が揃うように構成された第1のSAW共振子及び第2のSAW共振子と、
これら第1のSAW共振子及び第2のSAW共振子に共通に設けられた入力ポートと、
前記第1のSAW共振子及び前記第2のSAW共振子に共通に設けられた出力ポートと、を備え、
前記IDT電極は、弾性表面波の伝搬方向に沿うように各々配置されると共に互いに平行となるように形成された一対のバスバーと、これらバスバーの一方側及び他方側から互いに交互に櫛歯状に伸び出すように配置された複数本の電極指と、を備え、
前記第1のSAW共振子及び前記第2のSAW共振子は、周波数と減衰量との関係を示す特性図において、各々の減衰域に形成されるサイドローブの位置を互いに位置ずれさせるために、各々のIDT電極における電極指が互いに異なる本数に設定され、
一対のバスバー間において互いに隣接する電極指同士が交差する長さ寸法を交差長とすると、前記第1のSAW共振子及び前記第2のSAW共振子は、各々のインピーダンスの整合を取るために、互いに異なる交差長に設定されていることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
前記通過帯域の比帯域は、1%以上であることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−5048(P2013−5048A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131474(P2011−131474)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】