弾性表面波共振子
【課題】小型化が容易で、周波数精度が良好な弾性表面波共振子を提供する。
【解決手段】水晶基板10上にSH型弾性表面波が励振されるすだれ状電極11と、すだれ状電極11の一方の側に配置された1つの反射器13と、を備え、電極指11a,11bの幅寸法をLTとし、電極指の存在しない領域の寸法をSTとして、IDT配列周期長であるPTがPT=LT+STであり、反射器13は金属導体13aからなり、金属導体13aの幅寸法をLRとし、金属導体の存在しない領域の寸法をSRとして、反射器配列周期長であるPRがPR=LR+SRであり、反射器配列周期長PRとIDT配列周期長PTとの比PR/PTが1.01以上1.02以下の範囲であって、すだれ状電極11の他方の側にIDT配列周期長PTに満たない寸法PSTの電極が存在しない領域を有して水晶基板10が垂直に切断された切断面を有する。
【解決手段】水晶基板10上にSH型弾性表面波が励振されるすだれ状電極11と、すだれ状電極11の一方の側に配置された1つの反射器13と、を備え、電極指11a,11bの幅寸法をLTとし、電極指の存在しない領域の寸法をSTとして、IDT配列周期長であるPTがPT=LT+STであり、反射器13は金属導体13aからなり、金属導体13aの幅寸法をLRとし、金属導体の存在しない領域の寸法をSRとして、反射器配列周期長であるPRがPR=LR+SRであり、反射器配列周期長PRとIDT配列周期長PTとの比PR/PTが1.01以上1.02以下の範囲であって、すだれ状電極11の他方の側にIDT配列周期長PTに満たない寸法PSTの電極が存在しない領域を有して水晶基板10が垂直に切断された切断面を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SH波を利用する弾性表面波共振子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からASK送信装置などに、水晶STカット基板(圧電体平板の一例)を用いて構成した弾性表面波共振子が利用されている。この弾性表面波共振子は、周波数温度特性が零温度係数を持ち精度が良くかつ、所望の周波数を直接発振が可能であるために、各種無線系の圧電発振器に使用されている。また近年、弾性表面波共振子はジッタが無く位相ノイズに優れた信号を得ることができることから、乗用車のドアの開閉に微弱電波を用いるキーレスエントリー装置に多数使用されている。
さらに最近になって、各種センサーの情報を中央処理装置に伝送して処理するセンサネットワークが注目されている。このセンサネットワークでは屋内等で使用される比較的近距離間の微弱無線通信が必要であり、送受信装置の小形化かつ低コスト化が急務となっている。
弾性表面波共振子としては、特許文献1に開示されたようなSH波を利用する弾性表面波共振子が知られている。このSH波を利用する弾性表面波共振子は、水晶基板を用い周波数温度特性が水晶STカットに対して優れた周波数精度が得られている。水晶基板の切断方位は、水晶結晶の基本軸において、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で、Z軸(光軸)の回りに反時計方向にφが0°±1°の範囲であり、次にX軸(電気軸)の回りに反時計方向にθが29.2°以上40.7°以下の範囲であり、次に新たに生成したZ’の軸回りに圧電体平板内において、X軸を起点として反時計方向に面内回転して、ψが90°±2°範囲である方向が弾性表面波の位相伝搬方位としている。このSH波を利用した前記方位の圧電体平板の場合にも、従来の水晶STカット基板を用いた弾性表面波共振子と同様な構成で弾性表面波共振子を形成できる。例えばアルミニウム膜からなる多数の平行導体の電極指を周期的に配置したすだれ状電極(以下、IDT(Interdigital Transducer)と称す)を形成し、さらにその両側に一対の反射器を多数のストリップ形状からなる金属導体を平行にかつ周期的に配置して構成し、1ポート型の弾性表面波共振子を形成できる。
また、SH波を使用する弾性表面波共振子として、反射器を設けず素子基板の端面をカットして小型化を実現したものが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2005/099089号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5953433号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の弾性表面波共振子においては、基本波動作する弾性表面波共振子であるため、IDTの電極指および反射器の金属導体の繰り返しである配列周期長Pと動作周波数との関係は、Vを弾性表面波の速度とし、fを動作周波数とすれば、f=V/(2P)の関係にある。このように、動作周波数fは速度Vと配列周期長Pに制約されている。
市場でよく使用される周波数315MHzを例にとれば、弾性表面波の速度V=3200m/sのとき、IDTの配列周期長P=5×10-6mとなり、通常に使用される反射係数γ=0.05から0.06範囲において、IDTの電極指対数Mが100から120対かつ反射器の金属導体の本数N=60から40本で使用されることになる。
上記のように設計された素子は、その長手寸法XLが1.6mm程度となり、良好な特性を維持する場合には、これ以上の小型化は困難である。
また一方、特許文献2の構成では、前述の周波数315MHzのとき、IDTの電極指対数M=30、反射器の金属導体の本数N=0として、素子の長手寸法XL=0.3mm程度の小型化が実現できるが、素子の長手寸法XLの変化に対する素子周波数の変化(素子周波数感度)が大きい。このため、長手寸法XLの寸法加工精度が厳しく、周波数精度として±50ppmの実現が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例は、上記課題を解決することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる弾性表面波共振子は、圧電体平板上に位相伝搬方向X’であるSH型の弾性表面波が励振される少なくとも1つのすだれ状電極と、前記すだれ状電極の一方の側に配置された1つの反射器と、を備え、前記のすだれ状電極は前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に直交して配置されたM対の電極指からなり、前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に沿って前記電極指の幅寸法をLTとし、前記電極指の存在しない領域の寸法をSTとして、IDT配列周期長であるPTがPT=LT+STであり、前記反射器は前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に直交して配置されたN本の金属導体からなり、前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に沿って前記金属導体の幅寸法をLRとし、前記金属導体の存在しない領域の寸法をSRとして、反射器配列周期長であるPRがPR=LR+SRであり、前記反射器配列周期長PRと前記IDT配列周期長PTとの比PR/PTが1.01以上1.02以下の範囲であって、前記すだれ状電極の他方の側に前記IDT配列周期長PTに満たない寸法PSTの電極が存在しない領域を有して前記圧電体平板が垂直に切断された切断面を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、すだれ状電極(IDT)で励振されたSH波は、IDTの一方の側に伝搬して、そこに配置された反射器にて反射される。また、IDTの他方の側に伝搬するSH波は圧電体平板の端面にて反射される。そして、これらの反射されたSH波がIDTを形成した部分の中央部において振動エネルギが閉じ込められる。このように、適用例1では、IDTの両側に反射器を有する通常のSH波を利用する弾性表面波共振子を、その中央部で切断した形態となっている。以上のように、弾性表面波共振子の共振周波数がIDTの電極配列のみに依存することから、周波数精度が良好で小型な弾性表面波共振子を実現できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記すだれ状電極が有する前記電極指の対数Mが20対以上80対以下の範囲であることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗値R1を25Ω以下に設定することができる。そして、弾性表面波共振子を発振回路に組み込んだ際に、低消費電力にて弾性表面波共振子を発振させることが可能となる。また、この構成では容量比γを1000以下とすることができ、容量を付加した場合に周波数の可変量を大きくとることができ、回路基板などに弾性表面波共振子を搭載した際に可変容量を用いて周波数の合わせこみが容易となる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記圧電体平板が水晶単結晶からなり、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で、まず光軸であるZ軸の回りに反時計方向にφが0°±1°の範囲であり、次に電気軸であるX軸の回りに反時計方向にθが29.2°以上40.7°以下の範囲であり、次に新たに生成したZ’軸の回りに圧電体平板内において、X軸を起点として反時計方向に面内回転して、ψが90°±2°の範囲である方向が弾性表面波の位相伝搬方位であることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、周波数温度特性に優れたオイラー角表示で(0°±1°,29.2°≦θ≦40.7°,90°±2°)の水晶基板(SHカット基板)を使用することにより、小型で高精度な弾性表面波共振子が実現できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記すだれ状電極の前記電極指および前記反射器の前記金属導体はアルミニウム膜からなり、前記すだれ状電極の膜厚Hと前記SH型弾性表面波の波長λとの比H/λが0.05以上0.06以下であることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、弾性表面波共振子のQ値を最大に維持した上で、電極1本が有する反射係数γを最大の0.06程度に大きくでき、結果としてすだれ状電極が有する電極指の対数Mと反射器の金属導体数Nとの総和を少なくできるため、小型な弾性表面波共振子が実現できる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記すだれ状電極の他方の側に設けられた前記IDT配列周期長PTに満たない寸法PSTと、前記IDT配列周期長PTとの比PST/PTが、0.4以上0.9以下の範囲であることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、励振されるSH波の基本波と端部で反射される反射波のエッジモード(EDM)とが結合しないため、周波数ジャンプ現象または周波数温度特性のゆがみが発生せず、良好な信号源を出力する弾性表面波共振子が実現できる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記圧電体平板上の前記反射器が形成された部分の裏面にて基板に接着固定されることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、弾性表面波共振子の支持構造として片持ち支持構造を採用でき、さらにIDTから離れた反射器が形成された部分の裏面で基板に接着固定されていることから、周波数経時変化に優れ周波数温度特性のばらつきが少ない、弾性表面波共振子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態)
【0019】
図1は本実施形態の弾性表面波共振子の構成を示し、図1(a)は平面図、図1(b)は同図(a)のA−A断線に沿う断面図である。
弾性表面波共振子(以下略して本素子と称すことがある)1は、圧電体平板としての水晶基板10表面にすだれ状電極11(以下、「IDT11」と書く)と、IDT11の一方の側に配置された1つの反射器13とを備えている。
IDT11は正極側の電極指11aと負極側の電極指11bとが交互に間挿されて構成されている。そして、この電極指11aと電極指11bの極性は時間と共に交互の逆相となるように構成されている。隣接する1つの電極指11aと1つの電極指11bとで1対の電極指と呼ぶ。そして、この1対の電極指の数を対数と呼び、20から80対の電極指が形成されている。正極側の電極指11aは給電導体12aに接続され、負極側の電極指11bは給電導体12bに接続されている。反射器13は多数の金属導体13aが等ピッチに連続して構成されている。そして、この金属導体13aの本数は40から60本に設定されている。
このように、弾性表面波共振子1は、図中右側にIDT11、図中左側に反射器13が配置された構成である。
【0020】
なお、IDT11の電極指11a,11bおよび反射器13の金属導体13aはSH型弾性表面波の位相伝搬方向X’に対して、ほぼ直交して形成されている。
また、反射器13が形成された側の本素子の隅部には接続パッド15a,15bが形成され、それぞれ給電導体12a,12bに接続されている。
弾性表面波共振子1の水晶基板10表面に設けられたIDT11、反射器13、給電導体12a,12b、接続パッド15a,15bはアルミニウム膜をフォトリソ加工により形成された金属パターンである。
【0021】
次に、IDT11および反射器13において、SH型弾性表面波の位相伝搬方向X’に沿った各寸法について説明する。
IDT11において、寸法LTは電極指11aまたは電極指11bの幅寸法であり、寸法STは電極指11aと電極指11bとの間(電極指が存在しない領域)の寸法である。また、寸法PTはLTとSTの和(PT=LT+ST)からなるIDT配列周期長である。さらに、寸法PSTはIDT11における他方の側の端部から水晶基板10の端部までの寸法である。このPSTの寸法はIDT配列周期長PTに満たない寸法に設定されている。なお、本実施形態では、公称共振周波数f0はf0=V/(2PT)であり、VはSH型の弾性表面波の速度でV=3200m/sである。
【0022】
反射器13において、寸法LRは金属導体13aの幅寸法であり、寸法SRは金属導体13aと金属導体13aの間(金属導体が存在しない領域)の寸法である。また、寸法PRはLRとSRの和(PR=LR+SR)からなる反射器配列周期長である。
なお、反射器配列周期長PRとIDT配列周期長PTとの比PR/PTは反射効果を発揮する1.01以上1.02以下に設定されている。
このように、IDT11の他方の側には反射器が設けられておらず、電極指の端部から水晶基板端部までの寸法がPSTで切断されている。この水晶基板端部はダイシング装置、ワイヤーソーなどで切断され、その切断面は研磨加工された状態にある。
【0023】
次に、本実施形態に用いる圧電体平板としての水晶基板のカット面について説明する。図2は本実施形態における水晶基板のカット面を説明する模式図である。
水晶単結晶からなる水晶基板10は、水晶結晶の基本軸において、X軸(電気軸)とY軸(機械軸)、Z軸(光軸)を備え、右手系の直交座標系を構成している。
水晶基板10は、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で、まずZ軸の回りに反時計方向にφが0°±1°の範囲であり、次にX軸の回りに反時計方向にθが29.2°から40.7°の範囲であり、X軸と新たに生成したY’軸とで形成される面を主面とする水晶基板である。そして、新たに生成したZ’軸の回りに水晶基板10内において、X軸を起点として反時計方向(X軸からY’軸方向に)に面内回転して、ψが90°±2°範囲である方向X’が弾性表面波の位相伝搬方位である。このような水晶基板10をSHカットと呼ぶことにする。このSHカットの水晶基板10を用いSH波を励振させた場合、周波数温度特性に優れた弾性表面波共振子を構成できることが知られている。
【0024】
次に、上記のような弾性表面波共振子について、特性図を用いてその特性について説明する。ここで、IDT11の端部から水晶基板端部までの寸法PSTとIDT配列周期長PTとの比をETAS(=PST/PT)と定義する。
図3は弾性表面波共振子のQ値とETASの関係を示す特性図であり、図4は弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗R1とETASの関係を示す特性図である。そして、図5は弾性表面波共振子の容量比γとETASの関係を示す特性図である。
図3によれば、弾性表面波共振子はETASによらず、Q値は一定の値を有している。
また、図4において、等価直列共振抵抗R1はETASの値により変動し、ETASが0.4以上0.9以下の範囲で等価直列共振抵抗R1が25Ω以下となることがわかる。等価直列共振抵抗R1が25Ω以下であれば、発振回路に弾性表面波共振子を組み込んだ場合に低消費電力にて発振させることが可能である。
図5において、ETASが0.4以上0.9以下の範囲であれば、容量比γは約950以下となる。この容量比γが小さいということは、容量を付加した場合に周波数の可変量を大きくとることができ、回路基板などに弾性表面波共振子を搭載した際に可変容量を用いて周波数の合わせこみが容易となる。
【0025】
また、図6はQ値と規格化電極厚みH/λの関係を示す特性図である。ここで、IDT11におけるアルミニウム膜の膜厚がH、弾性表面波の波長がλのとき、H/λを規格化電極厚みとする。
この特性図より、規格化電極厚みH/λの値によりQ値は変動し、規格化電極厚みH/λが0.05以上0.06以下のとき、Q値が15000以上となり、弾性表面波を励振するのに良好な値にある。
【0026】
次に、IDTにおける電極の対数と各特性との関係について説明する。
図7は、弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗R1とIDTの電極対数Mの関係を示す特性図であり、図8は、弾性表面波共振子のQ値とIDTの電極対数Mの関係を示す特性図である。図9は、弾性表面波共振子の容量比γとIDTの電極対数Mの関係を示す特性図である。なお、図7,図8,図9はETAS=0.8における、弾性表面波共振子の特性を示している。
【0027】
図7において、等価直列共振抵抗R1はIDTの電極対数Mが多くなるに従って小さくなる傾向にある。また、図8において、IDTの電極対数Mが20対のときQ値は約19000であり、IDTの電極対数Mが40対以上の場合のQ値は約16000で、ほぼ一定の値である。さらに、図9によれば、容量比γはIDTの電極対数Mが多くなるに従って大きくなる傾向にあることがわかる。
以上説明したように、等価直列共振抵抗R1が25Ω以下、Q値が15000以上、容量比γが1000以下を良好な弾性表面波素子の特性であるとすると、IDTの電極対数Mが20対以上80対以下の範囲で、良好な弾性表面波素子の特性を得ることができる。
【0028】
続いて、上記の構成のような弾性表面波共振子における振動変位振幅状態について説明する。
図10は本実施形態における弾性表面波共振子の振動変位振幅状態を示す模式図である。この模式図では縦軸に振動の変位をとり、横軸に弾性表面波共振子における弾性波の伝搬方向の長さをとって、弾性表面波共振子の位置と対応するように表している。また、この振動変位振幅状態はETAS=0.8のときの一例を示している。
IDTの一方の側に配置された反射器ではIDTで励振された弾性表面波が反射され、振動の変位が反射器の終端では十分に減衰していることがわかる。また、IDTの他方の側では水晶基板の端部で弾性表面波の反射が生じ、振動の変位が小さくなっている。そして、IDTのほぼ中央部で振動の変位が最大となり、振動エネルギが閉じ込められているのがわかる。
このように、本実施形態の弾性表面波共振子はIDTの一方の側では反射器で弾性表面波が反射され、IDTの他方の側では水晶基板の端面で弾性表面波が反射されている。
【0029】
以上のように、本実施形態の弾性表面波共振子1において、共振周波数が電極配列のみに依存することから、周波数精度が良好で小型な弾性表面波共振子を実現できる。
また、すだれ状電極が有する前記電極指の対数Mが20対以上80対以下の範囲とすることで、弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗値R1を25Ω以下に設定することができる。そして、弾性表面波共振子を発振回路に組み込んだ際に、低消費電力にて弾性表面波共振子を発振させることが可能となる。また、この構成では容量比γを1000以下とすることができ、容量を付加した場合に周波数の可変量を大きくとることができ、回路基板などに弾性表面波共振子を搭載した際に可変容量を用いて周波数の合わせこみが容易となる。
さらに、周波数温度特性に優れた水晶基板としてSHカットの基板を用いることにより、小型で高精度な弾性表面波共振子が実現できる。
また、すだれ状電極の電極指および反射器の金属導体はアルミニウム膜からなり、すだれ状電極の膜厚HとSH型弾性表面波の波長λとの比H/λが0.05以上0.06以下とすることで、弾性表面波共振子のQ値を最大に維持した上で、電極1本が有する反射係数γを最大の0.06程度に大きくできる。結果としてすだれ状電極が有する電極指の対数Mと反射器の金属導体数Nとの総和を少なくできるため、小型な弾性表面波共振子が実現できる。
さらに、寸法PSTと、前記IDT配列周期長PTとの比PST/PTが、0.4以上0.9以下の範囲とすることで、励振されるSH波の基本波と端部で反射される反射波のエッジモード(EDM)とが結合しないため、周波数ジャンプ現象または周波数温度特性のゆがみが発生せず、良好な信号源を出力する弾性表面波共振子が実現できる。
【0030】
次に、本実施形態の弾性表面波共振子をパッケージした状態について説明する。
図11は弾性表面波共振子をパッケージした状態を示す模式図であり、図11(a)は平面図、図11(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図である。
弾性表面波共振子1はセラミックパッケージ50内に収容され、蓋体58によりセラミックパッケージ50内を気密に封止されている。
弾性表面波共振子1は図1で説明した実施形態の素子であり、図1と同符号を付し詳細な説明は省略する。
セラミックパッケージ50は、セラミックシートを積層して凹部が形成された積層セラミック基板51を有している。積層セラミック基板51の凹部には端子53が形成され、積層セラミック基板51の外周部に形成された外部接続端子54に接続されている。また、積層セラミック基板51の上方にはコバールなどの金属からなるシームリング52が固着されている。
【0031】
弾性表面波共振子1はセラミックパッケージ50の凹部の底面に接着剤55にて片持ち状態に固定されている。この接着部は水晶基板10の反射器13が形成された部分の裏面にて接着剤55が塗布されて固定されている。さらに、弾性表面波共振子1の接続パッド15a,15bとセラミックパッケージ50の端子53とがAu線などの金属ワイヤ56により接続されている。
そして、シームリング52とコバールなどの金属からなる蓋体58とがシーム溶接されて、セラミックパッケージ50内を乾燥窒素雰囲気にて気密に封止されている。
【0032】
このように、本実施形態の弾性表面波共振子1によれば、弾性表面波共振子1の支持構造として片持ち支持構造を採用できることから、水晶基板10に支持による応力がかからず周波数が安定する効果がある。さらに、IDT11から離れた反射器13が形成された部分の裏面でセラミックパッケージ50の凹部の底面に接着固定されることから、接着剤の経時変化、温度変化による収縮などの影響をIDT11が受けることなく、周波数経時変化に優れ周波数温度特性のばらつきが少ない、弾性表面波共振子1を得ることができる。
【0033】
また、上記の実施形態の他に、次のような実施をすることも可能である。
図12は、他の実施における弾性表面波共振子の構成を示し、図12(a)は平面図、図12(b)は同図(a)のC−C断線に沿う断面図である。
弾性表面波共振子3は、水晶基板80表面にすだれ状電極81(以下、「IDT81」と書く)と、IDT81の両側に配置された2つの反射器83とを備えている。
水晶基板80は、図2で説明したSHカット基板を用いている。IDT81は正極側の電極指81aと負極側の電極指81bとが交互に間挿されて構成されている。そして、この電極指81aと電極指81bの極性は時間と共に交互の逆相となるように構成されている。隣接する1つの電極指81aと1つの電極指81bとで1対の電極指と呼ぶ。そして、この1対の電極指の数を対数と呼び、40から80対の電極指が形成されている。正極側の電極指81aは給電導体82aに接続され、負極側の電極指81bは給電導体82bに接続されている。反射器83は多数の金属導体83aが等ピッチに連続して構成されている。そして、この金属導体83aの本数は1から8本に設定されている。
弾性表面波共振子3の水晶基板80表面に設けられたIDT81、反射器83、給電導体82a,82bはアルミニウム膜をフォトリソ加工により形成された金属パターンである。
【0034】
IDT81において、寸法LTは電極指81aまたは電極指81bの幅寸法であり、寸法STは電極指81aと電極指81bとの間(電極指が存在しない領域)の寸法である。また、寸法PTはLTとSTの和(PT=LT+ST)からなるIDT配列周期長である。
【0035】
反射器83において、寸法LRは金属導体83aの幅寸法であり、寸法SRは金属導体83aと金属導体83aの間(金属導体が存在しない領域)の寸法である。また、寸法PRはLRとSRの和(PR=LR+SR)からなる反射器配列周期長である。さらに、寸法PSRは反射器83における金属導体83a端部から水晶基板80の端部までの寸法である。このPSRの寸法は反射器配列周期長PRに満たない寸法に設定されている。この水晶基板端部はダイシング装置、ワイヤーソーなどで切断され、さらには研磨加工された状態にある。このように、両側の反射器83は、通常、反射器83で弾性表面波を反射するには40から60本の金属導体83aが形成されるが、本実施では反射器を途中で切断した形態である。
なお、反射器配列周期長PRとIDT配列周期長PTとの比PR/PTは1.01以上1.02以下に設定されている。
【0036】
また、良好な弾性表面波共振子が得られる値である等価直列共振抵抗R1が25Ω以下、Q値が15000以上、容量比γが1000以下とすると、IDT81が有する電極指の対数Mは40対以上80対以下、IDT81の膜厚HとSH型弾性表面波の波長λとの比H/λが0.05以上0.06以下の値に設定するのが好ましい。
さらに、励振されるSH波の基本波と端部で反射される反射波のエッジモード(EDM)とが結合しないように、PSRと反射器のPRとの比PSR/PRにして、0から0.2の範囲、および0.3から0.6の範囲、および0.7から1.0の範囲に設定するのが好ましい。
【0037】
図13は本実施における弾性表面波共振子の振動変位振幅状態を示す模式図である。この模式図では縦軸に振動の変位をとり、横軸に弾性表面波共振子における弾性波の伝搬方向の長さをとって、弾性表面波共振子の位置と対応するように表している。
IDTの両側に配置された反射器ではIDTで励振された弾性表面波が反射され、水晶基板の端部に行くに従い振動の変位が小さくなっている。そして、水晶基板の端部では弾性表面波の反射が生じ、IDTのほぼ中央部で振動の変位が最大となり、振動エネルギが閉じ込められているのがわかる。また、水晶基板の両方の端部では振動している状態にあり、この端部の変位に比べてIDT中央部の変位は2倍以上の変位となっている。
このように、本実の弾性表面波共振子は水晶基板の両方の端面で弾性表面波が反射されるように構成されている。
上記のように、弾性表面波共振子において、反射器の金属導体を1本以上8本以下に形成して、弾性表面波を水晶基板の両端面で反射させ、弾性表面波共振子を小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態の弾性表面波共振子の構成を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)のA−A断線に沿う断面図。
【図2】本実施形態における水晶基板のカット面を説明する模式図。
【図3】弾性表面波共振子のQ値とETASの関係を示す特性図。
【図4】弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗R1とETASの関係を示す特性図。
【図5】弾性表面波共振子の容量比γとETASの関係を示す特性図。
【図6】Q値と規格化電極厚みH/λの関係を示す特性図。
【図7】弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗R1とIDTの電極対数Mの関係を示す特性図。
【図8】弾性表面波共振子のQ値とIDTの電極対数Mの関係を示す特性図。
【図9】弾性表面波共振子の容量比γとIDTの電極対数Mの関係を示す特性図。
【図10】本実施形態における弾性表面波共振子の振動変位振幅状態を示す模式図。
【図11】弾性表面波共振子をパッケージした状態を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図。
【図12】他の実施における弾性表面波共振子の構成を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)のC−C断線に沿う断面図。
【図13】他の実施における弾性表面波共振子の振動変位振幅状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0039】
1…弾性表面波共振子、10…水晶基板、11…すだれ状電極(IDT)、11a,11b…電極指、12a,12b…給電導体、13…反射器、13a…金属導体、15a,15b…接続パッド、50…セラミックパッケージ、51…積層セラミック基板、52…シームリング、53…端子、55…接着剤、56…金属ワイヤ、58…蓋体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、SH波を利用する弾性表面波共振子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からASK送信装置などに、水晶STカット基板(圧電体平板の一例)を用いて構成した弾性表面波共振子が利用されている。この弾性表面波共振子は、周波数温度特性が零温度係数を持ち精度が良くかつ、所望の周波数を直接発振が可能であるために、各種無線系の圧電発振器に使用されている。また近年、弾性表面波共振子はジッタが無く位相ノイズに優れた信号を得ることができることから、乗用車のドアの開閉に微弱電波を用いるキーレスエントリー装置に多数使用されている。
さらに最近になって、各種センサーの情報を中央処理装置に伝送して処理するセンサネットワークが注目されている。このセンサネットワークでは屋内等で使用される比較的近距離間の微弱無線通信が必要であり、送受信装置の小形化かつ低コスト化が急務となっている。
弾性表面波共振子としては、特許文献1に開示されたようなSH波を利用する弾性表面波共振子が知られている。このSH波を利用する弾性表面波共振子は、水晶基板を用い周波数温度特性が水晶STカットに対して優れた周波数精度が得られている。水晶基板の切断方位は、水晶結晶の基本軸において、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で、Z軸(光軸)の回りに反時計方向にφが0°±1°の範囲であり、次にX軸(電気軸)の回りに反時計方向にθが29.2°以上40.7°以下の範囲であり、次に新たに生成したZ’の軸回りに圧電体平板内において、X軸を起点として反時計方向に面内回転して、ψが90°±2°範囲である方向が弾性表面波の位相伝搬方位としている。このSH波を利用した前記方位の圧電体平板の場合にも、従来の水晶STカット基板を用いた弾性表面波共振子と同様な構成で弾性表面波共振子を形成できる。例えばアルミニウム膜からなる多数の平行導体の電極指を周期的に配置したすだれ状電極(以下、IDT(Interdigital Transducer)と称す)を形成し、さらにその両側に一対の反射器を多数のストリップ形状からなる金属導体を平行にかつ周期的に配置して構成し、1ポート型の弾性表面波共振子を形成できる。
また、SH波を使用する弾性表面波共振子として、反射器を設けず素子基板の端面をカットして小型化を実現したものが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2005/099089号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5953433号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の弾性表面波共振子においては、基本波動作する弾性表面波共振子であるため、IDTの電極指および反射器の金属導体の繰り返しである配列周期長Pと動作周波数との関係は、Vを弾性表面波の速度とし、fを動作周波数とすれば、f=V/(2P)の関係にある。このように、動作周波数fは速度Vと配列周期長Pに制約されている。
市場でよく使用される周波数315MHzを例にとれば、弾性表面波の速度V=3200m/sのとき、IDTの配列周期長P=5×10-6mとなり、通常に使用される反射係数γ=0.05から0.06範囲において、IDTの電極指対数Mが100から120対かつ反射器の金属導体の本数N=60から40本で使用されることになる。
上記のように設計された素子は、その長手寸法XLが1.6mm程度となり、良好な特性を維持する場合には、これ以上の小型化は困難である。
また一方、特許文献2の構成では、前述の周波数315MHzのとき、IDTの電極指対数M=30、反射器の金属導体の本数N=0として、素子の長手寸法XL=0.3mm程度の小型化が実現できるが、素子の長手寸法XLの変化に対する素子周波数の変化(素子周波数感度)が大きい。このため、長手寸法XLの寸法加工精度が厳しく、周波数精度として±50ppmの実現が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例は、上記課題を解決することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる弾性表面波共振子は、圧電体平板上に位相伝搬方向X’であるSH型の弾性表面波が励振される少なくとも1つのすだれ状電極と、前記すだれ状電極の一方の側に配置された1つの反射器と、を備え、前記のすだれ状電極は前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に直交して配置されたM対の電極指からなり、前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に沿って前記電極指の幅寸法をLTとし、前記電極指の存在しない領域の寸法をSTとして、IDT配列周期長であるPTがPT=LT+STであり、前記反射器は前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に直交して配置されたN本の金属導体からなり、前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に沿って前記金属導体の幅寸法をLRとし、前記金属導体の存在しない領域の寸法をSRとして、反射器配列周期長であるPRがPR=LR+SRであり、前記反射器配列周期長PRと前記IDT配列周期長PTとの比PR/PTが1.01以上1.02以下の範囲であって、前記すだれ状電極の他方の側に前記IDT配列周期長PTに満たない寸法PSTの電極が存在しない領域を有して前記圧電体平板が垂直に切断された切断面を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、すだれ状電極(IDT)で励振されたSH波は、IDTの一方の側に伝搬して、そこに配置された反射器にて反射される。また、IDTの他方の側に伝搬するSH波は圧電体平板の端面にて反射される。そして、これらの反射されたSH波がIDTを形成した部分の中央部において振動エネルギが閉じ込められる。このように、適用例1では、IDTの両側に反射器を有する通常のSH波を利用する弾性表面波共振子を、その中央部で切断した形態となっている。以上のように、弾性表面波共振子の共振周波数がIDTの電極配列のみに依存することから、周波数精度が良好で小型な弾性表面波共振子を実現できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記すだれ状電極が有する前記電極指の対数Mが20対以上80対以下の範囲であることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗値R1を25Ω以下に設定することができる。そして、弾性表面波共振子を発振回路に組み込んだ際に、低消費電力にて弾性表面波共振子を発振させることが可能となる。また、この構成では容量比γを1000以下とすることができ、容量を付加した場合に周波数の可変量を大きくとることができ、回路基板などに弾性表面波共振子を搭載した際に可変容量を用いて周波数の合わせこみが容易となる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記圧電体平板が水晶単結晶からなり、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で、まず光軸であるZ軸の回りに反時計方向にφが0°±1°の範囲であり、次に電気軸であるX軸の回りに反時計方向にθが29.2°以上40.7°以下の範囲であり、次に新たに生成したZ’軸の回りに圧電体平板内において、X軸を起点として反時計方向に面内回転して、ψが90°±2°の範囲である方向が弾性表面波の位相伝搬方位であることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、周波数温度特性に優れたオイラー角表示で(0°±1°,29.2°≦θ≦40.7°,90°±2°)の水晶基板(SHカット基板)を使用することにより、小型で高精度な弾性表面波共振子が実現できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記すだれ状電極の前記電極指および前記反射器の前記金属導体はアルミニウム膜からなり、前記すだれ状電極の膜厚Hと前記SH型弾性表面波の波長λとの比H/λが0.05以上0.06以下であることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、弾性表面波共振子のQ値を最大に維持した上で、電極1本が有する反射係数γを最大の0.06程度に大きくでき、結果としてすだれ状電極が有する電極指の対数Mと反射器の金属導体数Nとの総和を少なくできるため、小型な弾性表面波共振子が実現できる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記すだれ状電極の他方の側に設けられた前記IDT配列周期長PTに満たない寸法PSTと、前記IDT配列周期長PTとの比PST/PTが、0.4以上0.9以下の範囲であることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、励振されるSH波の基本波と端部で反射される反射波のエッジモード(EDM)とが結合しないため、周波数ジャンプ現象または周波数温度特性のゆがみが発生せず、良好な信号源を出力する弾性表面波共振子が実現できる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる弾性表面波共振子において、前記圧電体平板上の前記反射器が形成された部分の裏面にて基板に接着固定されることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、弾性表面波共振子の支持構造として片持ち支持構造を採用でき、さらにIDTから離れた反射器が形成された部分の裏面で基板に接着固定されていることから、周波数経時変化に優れ周波数温度特性のばらつきが少ない、弾性表面波共振子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態)
【0019】
図1は本実施形態の弾性表面波共振子の構成を示し、図1(a)は平面図、図1(b)は同図(a)のA−A断線に沿う断面図である。
弾性表面波共振子(以下略して本素子と称すことがある)1は、圧電体平板としての水晶基板10表面にすだれ状電極11(以下、「IDT11」と書く)と、IDT11の一方の側に配置された1つの反射器13とを備えている。
IDT11は正極側の電極指11aと負極側の電極指11bとが交互に間挿されて構成されている。そして、この電極指11aと電極指11bの極性は時間と共に交互の逆相となるように構成されている。隣接する1つの電極指11aと1つの電極指11bとで1対の電極指と呼ぶ。そして、この1対の電極指の数を対数と呼び、20から80対の電極指が形成されている。正極側の電極指11aは給電導体12aに接続され、負極側の電極指11bは給電導体12bに接続されている。反射器13は多数の金属導体13aが等ピッチに連続して構成されている。そして、この金属導体13aの本数は40から60本に設定されている。
このように、弾性表面波共振子1は、図中右側にIDT11、図中左側に反射器13が配置された構成である。
【0020】
なお、IDT11の電極指11a,11bおよび反射器13の金属導体13aはSH型弾性表面波の位相伝搬方向X’に対して、ほぼ直交して形成されている。
また、反射器13が形成された側の本素子の隅部には接続パッド15a,15bが形成され、それぞれ給電導体12a,12bに接続されている。
弾性表面波共振子1の水晶基板10表面に設けられたIDT11、反射器13、給電導体12a,12b、接続パッド15a,15bはアルミニウム膜をフォトリソ加工により形成された金属パターンである。
【0021】
次に、IDT11および反射器13において、SH型弾性表面波の位相伝搬方向X’に沿った各寸法について説明する。
IDT11において、寸法LTは電極指11aまたは電極指11bの幅寸法であり、寸法STは電極指11aと電極指11bとの間(電極指が存在しない領域)の寸法である。また、寸法PTはLTとSTの和(PT=LT+ST)からなるIDT配列周期長である。さらに、寸法PSTはIDT11における他方の側の端部から水晶基板10の端部までの寸法である。このPSTの寸法はIDT配列周期長PTに満たない寸法に設定されている。なお、本実施形態では、公称共振周波数f0はf0=V/(2PT)であり、VはSH型の弾性表面波の速度でV=3200m/sである。
【0022】
反射器13において、寸法LRは金属導体13aの幅寸法であり、寸法SRは金属導体13aと金属導体13aの間(金属導体が存在しない領域)の寸法である。また、寸法PRはLRとSRの和(PR=LR+SR)からなる反射器配列周期長である。
なお、反射器配列周期長PRとIDT配列周期長PTとの比PR/PTは反射効果を発揮する1.01以上1.02以下に設定されている。
このように、IDT11の他方の側には反射器が設けられておらず、電極指の端部から水晶基板端部までの寸法がPSTで切断されている。この水晶基板端部はダイシング装置、ワイヤーソーなどで切断され、その切断面は研磨加工された状態にある。
【0023】
次に、本実施形態に用いる圧電体平板としての水晶基板のカット面について説明する。図2は本実施形態における水晶基板のカット面を説明する模式図である。
水晶単結晶からなる水晶基板10は、水晶結晶の基本軸において、X軸(電気軸)とY軸(機械軸)、Z軸(光軸)を備え、右手系の直交座標系を構成している。
水晶基板10は、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で、まずZ軸の回りに反時計方向にφが0°±1°の範囲であり、次にX軸の回りに反時計方向にθが29.2°から40.7°の範囲であり、X軸と新たに生成したY’軸とで形成される面を主面とする水晶基板である。そして、新たに生成したZ’軸の回りに水晶基板10内において、X軸を起点として反時計方向(X軸からY’軸方向に)に面内回転して、ψが90°±2°範囲である方向X’が弾性表面波の位相伝搬方位である。このような水晶基板10をSHカットと呼ぶことにする。このSHカットの水晶基板10を用いSH波を励振させた場合、周波数温度特性に優れた弾性表面波共振子を構成できることが知られている。
【0024】
次に、上記のような弾性表面波共振子について、特性図を用いてその特性について説明する。ここで、IDT11の端部から水晶基板端部までの寸法PSTとIDT配列周期長PTとの比をETAS(=PST/PT)と定義する。
図3は弾性表面波共振子のQ値とETASの関係を示す特性図であり、図4は弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗R1とETASの関係を示す特性図である。そして、図5は弾性表面波共振子の容量比γとETASの関係を示す特性図である。
図3によれば、弾性表面波共振子はETASによらず、Q値は一定の値を有している。
また、図4において、等価直列共振抵抗R1はETASの値により変動し、ETASが0.4以上0.9以下の範囲で等価直列共振抵抗R1が25Ω以下となることがわかる。等価直列共振抵抗R1が25Ω以下であれば、発振回路に弾性表面波共振子を組み込んだ場合に低消費電力にて発振させることが可能である。
図5において、ETASが0.4以上0.9以下の範囲であれば、容量比γは約950以下となる。この容量比γが小さいということは、容量を付加した場合に周波数の可変量を大きくとることができ、回路基板などに弾性表面波共振子を搭載した際に可変容量を用いて周波数の合わせこみが容易となる。
【0025】
また、図6はQ値と規格化電極厚みH/λの関係を示す特性図である。ここで、IDT11におけるアルミニウム膜の膜厚がH、弾性表面波の波長がλのとき、H/λを規格化電極厚みとする。
この特性図より、規格化電極厚みH/λの値によりQ値は変動し、規格化電極厚みH/λが0.05以上0.06以下のとき、Q値が15000以上となり、弾性表面波を励振するのに良好な値にある。
【0026】
次に、IDTにおける電極の対数と各特性との関係について説明する。
図7は、弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗R1とIDTの電極対数Mの関係を示す特性図であり、図8は、弾性表面波共振子のQ値とIDTの電極対数Mの関係を示す特性図である。図9は、弾性表面波共振子の容量比γとIDTの電極対数Mの関係を示す特性図である。なお、図7,図8,図9はETAS=0.8における、弾性表面波共振子の特性を示している。
【0027】
図7において、等価直列共振抵抗R1はIDTの電極対数Mが多くなるに従って小さくなる傾向にある。また、図8において、IDTの電極対数Mが20対のときQ値は約19000であり、IDTの電極対数Mが40対以上の場合のQ値は約16000で、ほぼ一定の値である。さらに、図9によれば、容量比γはIDTの電極対数Mが多くなるに従って大きくなる傾向にあることがわかる。
以上説明したように、等価直列共振抵抗R1が25Ω以下、Q値が15000以上、容量比γが1000以下を良好な弾性表面波素子の特性であるとすると、IDTの電極対数Mが20対以上80対以下の範囲で、良好な弾性表面波素子の特性を得ることができる。
【0028】
続いて、上記の構成のような弾性表面波共振子における振動変位振幅状態について説明する。
図10は本実施形態における弾性表面波共振子の振動変位振幅状態を示す模式図である。この模式図では縦軸に振動の変位をとり、横軸に弾性表面波共振子における弾性波の伝搬方向の長さをとって、弾性表面波共振子の位置と対応するように表している。また、この振動変位振幅状態はETAS=0.8のときの一例を示している。
IDTの一方の側に配置された反射器ではIDTで励振された弾性表面波が反射され、振動の変位が反射器の終端では十分に減衰していることがわかる。また、IDTの他方の側では水晶基板の端部で弾性表面波の反射が生じ、振動の変位が小さくなっている。そして、IDTのほぼ中央部で振動の変位が最大となり、振動エネルギが閉じ込められているのがわかる。
このように、本実施形態の弾性表面波共振子はIDTの一方の側では反射器で弾性表面波が反射され、IDTの他方の側では水晶基板の端面で弾性表面波が反射されている。
【0029】
以上のように、本実施形態の弾性表面波共振子1において、共振周波数が電極配列のみに依存することから、周波数精度が良好で小型な弾性表面波共振子を実現できる。
また、すだれ状電極が有する前記電極指の対数Mが20対以上80対以下の範囲とすることで、弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗値R1を25Ω以下に設定することができる。そして、弾性表面波共振子を発振回路に組み込んだ際に、低消費電力にて弾性表面波共振子を発振させることが可能となる。また、この構成では容量比γを1000以下とすることができ、容量を付加した場合に周波数の可変量を大きくとることができ、回路基板などに弾性表面波共振子を搭載した際に可変容量を用いて周波数の合わせこみが容易となる。
さらに、周波数温度特性に優れた水晶基板としてSHカットの基板を用いることにより、小型で高精度な弾性表面波共振子が実現できる。
また、すだれ状電極の電極指および反射器の金属導体はアルミニウム膜からなり、すだれ状電極の膜厚HとSH型弾性表面波の波長λとの比H/λが0.05以上0.06以下とすることで、弾性表面波共振子のQ値を最大に維持した上で、電極1本が有する反射係数γを最大の0.06程度に大きくできる。結果としてすだれ状電極が有する電極指の対数Mと反射器の金属導体数Nとの総和を少なくできるため、小型な弾性表面波共振子が実現できる。
さらに、寸法PSTと、前記IDT配列周期長PTとの比PST/PTが、0.4以上0.9以下の範囲とすることで、励振されるSH波の基本波と端部で反射される反射波のエッジモード(EDM)とが結合しないため、周波数ジャンプ現象または周波数温度特性のゆがみが発生せず、良好な信号源を出力する弾性表面波共振子が実現できる。
【0030】
次に、本実施形態の弾性表面波共振子をパッケージした状態について説明する。
図11は弾性表面波共振子をパッケージした状態を示す模式図であり、図11(a)は平面図、図11(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図である。
弾性表面波共振子1はセラミックパッケージ50内に収容され、蓋体58によりセラミックパッケージ50内を気密に封止されている。
弾性表面波共振子1は図1で説明した実施形態の素子であり、図1と同符号を付し詳細な説明は省略する。
セラミックパッケージ50は、セラミックシートを積層して凹部が形成された積層セラミック基板51を有している。積層セラミック基板51の凹部には端子53が形成され、積層セラミック基板51の外周部に形成された外部接続端子54に接続されている。また、積層セラミック基板51の上方にはコバールなどの金属からなるシームリング52が固着されている。
【0031】
弾性表面波共振子1はセラミックパッケージ50の凹部の底面に接着剤55にて片持ち状態に固定されている。この接着部は水晶基板10の反射器13が形成された部分の裏面にて接着剤55が塗布されて固定されている。さらに、弾性表面波共振子1の接続パッド15a,15bとセラミックパッケージ50の端子53とがAu線などの金属ワイヤ56により接続されている。
そして、シームリング52とコバールなどの金属からなる蓋体58とがシーム溶接されて、セラミックパッケージ50内を乾燥窒素雰囲気にて気密に封止されている。
【0032】
このように、本実施形態の弾性表面波共振子1によれば、弾性表面波共振子1の支持構造として片持ち支持構造を採用できることから、水晶基板10に支持による応力がかからず周波数が安定する効果がある。さらに、IDT11から離れた反射器13が形成された部分の裏面でセラミックパッケージ50の凹部の底面に接着固定されることから、接着剤の経時変化、温度変化による収縮などの影響をIDT11が受けることなく、周波数経時変化に優れ周波数温度特性のばらつきが少ない、弾性表面波共振子1を得ることができる。
【0033】
また、上記の実施形態の他に、次のような実施をすることも可能である。
図12は、他の実施における弾性表面波共振子の構成を示し、図12(a)は平面図、図12(b)は同図(a)のC−C断線に沿う断面図である。
弾性表面波共振子3は、水晶基板80表面にすだれ状電極81(以下、「IDT81」と書く)と、IDT81の両側に配置された2つの反射器83とを備えている。
水晶基板80は、図2で説明したSHカット基板を用いている。IDT81は正極側の電極指81aと負極側の電極指81bとが交互に間挿されて構成されている。そして、この電極指81aと電極指81bの極性は時間と共に交互の逆相となるように構成されている。隣接する1つの電極指81aと1つの電極指81bとで1対の電極指と呼ぶ。そして、この1対の電極指の数を対数と呼び、40から80対の電極指が形成されている。正極側の電極指81aは給電導体82aに接続され、負極側の電極指81bは給電導体82bに接続されている。反射器83は多数の金属導体83aが等ピッチに連続して構成されている。そして、この金属導体83aの本数は1から8本に設定されている。
弾性表面波共振子3の水晶基板80表面に設けられたIDT81、反射器83、給電導体82a,82bはアルミニウム膜をフォトリソ加工により形成された金属パターンである。
【0034】
IDT81において、寸法LTは電極指81aまたは電極指81bの幅寸法であり、寸法STは電極指81aと電極指81bとの間(電極指が存在しない領域)の寸法である。また、寸法PTはLTとSTの和(PT=LT+ST)からなるIDT配列周期長である。
【0035】
反射器83において、寸法LRは金属導体83aの幅寸法であり、寸法SRは金属導体83aと金属導体83aの間(金属導体が存在しない領域)の寸法である。また、寸法PRはLRとSRの和(PR=LR+SR)からなる反射器配列周期長である。さらに、寸法PSRは反射器83における金属導体83a端部から水晶基板80の端部までの寸法である。このPSRの寸法は反射器配列周期長PRに満たない寸法に設定されている。この水晶基板端部はダイシング装置、ワイヤーソーなどで切断され、さらには研磨加工された状態にある。このように、両側の反射器83は、通常、反射器83で弾性表面波を反射するには40から60本の金属導体83aが形成されるが、本実施では反射器を途中で切断した形態である。
なお、反射器配列周期長PRとIDT配列周期長PTとの比PR/PTは1.01以上1.02以下に設定されている。
【0036】
また、良好な弾性表面波共振子が得られる値である等価直列共振抵抗R1が25Ω以下、Q値が15000以上、容量比γが1000以下とすると、IDT81が有する電極指の対数Mは40対以上80対以下、IDT81の膜厚HとSH型弾性表面波の波長λとの比H/λが0.05以上0.06以下の値に設定するのが好ましい。
さらに、励振されるSH波の基本波と端部で反射される反射波のエッジモード(EDM)とが結合しないように、PSRと反射器のPRとの比PSR/PRにして、0から0.2の範囲、および0.3から0.6の範囲、および0.7から1.0の範囲に設定するのが好ましい。
【0037】
図13は本実施における弾性表面波共振子の振動変位振幅状態を示す模式図である。この模式図では縦軸に振動の変位をとり、横軸に弾性表面波共振子における弾性波の伝搬方向の長さをとって、弾性表面波共振子の位置と対応するように表している。
IDTの両側に配置された反射器ではIDTで励振された弾性表面波が反射され、水晶基板の端部に行くに従い振動の変位が小さくなっている。そして、水晶基板の端部では弾性表面波の反射が生じ、IDTのほぼ中央部で振動の変位が最大となり、振動エネルギが閉じ込められているのがわかる。また、水晶基板の両方の端部では振動している状態にあり、この端部の変位に比べてIDT中央部の変位は2倍以上の変位となっている。
このように、本実の弾性表面波共振子は水晶基板の両方の端面で弾性表面波が反射されるように構成されている。
上記のように、弾性表面波共振子において、反射器の金属導体を1本以上8本以下に形成して、弾性表面波を水晶基板の両端面で反射させ、弾性表面波共振子を小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態の弾性表面波共振子の構成を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)のA−A断線に沿う断面図。
【図2】本実施形態における水晶基板のカット面を説明する模式図。
【図3】弾性表面波共振子のQ値とETASの関係を示す特性図。
【図4】弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗R1とETASの関係を示す特性図。
【図5】弾性表面波共振子の容量比γとETASの関係を示す特性図。
【図6】Q値と規格化電極厚みH/λの関係を示す特性図。
【図7】弾性表面波共振子の等価直列共振抵抗R1とIDTの電極対数Mの関係を示す特性図。
【図8】弾性表面波共振子のQ値とIDTの電極対数Mの関係を示す特性図。
【図9】弾性表面波共振子の容量比γとIDTの電極対数Mの関係を示す特性図。
【図10】本実施形態における弾性表面波共振子の振動変位振幅状態を示す模式図。
【図11】弾性表面波共振子をパッケージした状態を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図。
【図12】他の実施における弾性表面波共振子の構成を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)のC−C断線に沿う断面図。
【図13】他の実施における弾性表面波共振子の振動変位振幅状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0039】
1…弾性表面波共振子、10…水晶基板、11…すだれ状電極(IDT)、11a,11b…電極指、12a,12b…給電導体、13…反射器、13a…金属導体、15a,15b…接続パッド、50…セラミックパッケージ、51…積層セラミック基板、52…シームリング、53…端子、55…接着剤、56…金属ワイヤ、58…蓋体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体平板上に位相伝搬方向X’であるSH型の弾性表面波が励振される少なくとも1つのすだれ状電極と、
前記すだれ状電極の一方の側に配置された1つの反射器と、を備え、
前記のすだれ状電極は前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に直交して配置されたM対の電極指からなり、前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に沿って前記電極指の幅寸法をLTとし、前記電極指の存在しない領域の寸法をSTとして、IDT配列周期長であるPTがPT=LT+STであり、
前記反射器は前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に直交して配置されたN本の金属導体からなり、前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に沿って前記金属導体の幅寸法をLRとし、前記金属導体の存在しない領域の寸法をSRとして、反射器配列周期長であるPRがPR=LR+SRであり、前記反射器配列周期長PRと前記IDT配列周期長PTとの比PR/PTが1.01以上1.02以下の範囲であって、
前記すだれ状電極の他方の側に前記IDT配列周期長PTに満たない寸法PSTの電極が存在しない領域を有して前記圧電体平板が垂直に切断された切断面を有することを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記すだれ状電極が有する前記電極指の対数Mが20対以上80対以下の範囲であることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項3】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記圧電体平板が水晶単結晶からなり、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で、まず光軸であるZ軸の回りに反時計方向にφが0°±1°の範囲であり、次に電気軸であるX軸の回りに反時計方向にθが29.2°以上40.7°以下の範囲であり、次に新たに生成したZ’軸の回りに圧電体平板内において、X軸を起点として反時計方向に面内回転して、ψが90°±2°の範囲である方向が前記弾性表面波の位相伝搬方位であることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項4】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記すだれ状電極の前記電極指および前記反射器の前記金属導体はアルミニウム膜からなり、前記すだれ状電極の膜厚Hと前記SH型弾性表面波の波長λとの比H/λが0.05以上0.06以下であることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項5】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記すだれ状電極の他方の側に設けられた前記IDT配列周期長PTに満たない寸法PSTと、前記IDT配列周期長PTとの比PST/PTが、0.4以上0.9以下の範囲であることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項6】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記圧電体平板上の前記反射器が形成された部分の裏面にて基板に接着固定されることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項1】
圧電体平板上に位相伝搬方向X’であるSH型の弾性表面波が励振される少なくとも1つのすだれ状電極と、
前記すだれ状電極の一方の側に配置された1つの反射器と、を備え、
前記のすだれ状電極は前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に直交して配置されたM対の電極指からなり、前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に沿って前記電極指の幅寸法をLTとし、前記電極指の存在しない領域の寸法をSTとして、IDT配列周期長であるPTがPT=LT+STであり、
前記反射器は前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に直交して配置されたN本の金属導体からなり、前記弾性表面波の前記位相伝搬方向X’に沿って前記金属導体の幅寸法をLRとし、前記金属導体の存在しない領域の寸法をSRとして、反射器配列周期長であるPRがPR=LR+SRであり、前記反射器配列周期長PRと前記IDT配列周期長PTとの比PR/PTが1.01以上1.02以下の範囲であって、
前記すだれ状電極の他方の側に前記IDT配列周期長PTに満たない寸法PSTの電極が存在しない領域を有して前記圧電体平板が垂直に切断された切断面を有することを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記すだれ状電極が有する前記電極指の対数Mが20対以上80対以下の範囲であることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項3】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記圧電体平板が水晶単結晶からなり、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で、まず光軸であるZ軸の回りに反時計方向にφが0°±1°の範囲であり、次に電気軸であるX軸の回りに反時計方向にθが29.2°以上40.7°以下の範囲であり、次に新たに生成したZ’軸の回りに圧電体平板内において、X軸を起点として反時計方向に面内回転して、ψが90°±2°の範囲である方向が前記弾性表面波の位相伝搬方位であることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項4】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記すだれ状電極の前記電極指および前記反射器の前記金属導体はアルミニウム膜からなり、前記すだれ状電極の膜厚Hと前記SH型弾性表面波の波長λとの比H/λが0.05以上0.06以下であることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項5】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記すだれ状電極の他方の側に設けられた前記IDT配列周期長PTに満たない寸法PSTと、前記IDT配列周期長PTとの比PST/PTが、0.4以上0.9以下の範囲であることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項6】
請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記圧電体平板上の前記反射器が形成された部分の裏面にて基板に接着固定されることを特徴とする弾性表面波共振子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−306422(P2008−306422A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151226(P2007−151226)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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