説明

弾性表面波素子、液位検出装置

【課題】複数の共振周波数を有する弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を用いて液体の量を液位として検出する液位検出装置を提供する。
【解決手段】液位検出装置は、圧電基板21上に複数の所定共振周波数にて励振されるIDT電極30を備え、IDT電極30が、異なる所定の共振周波数f1,f2,f3を有する複数の電極指群40,41,42から構成される。これら複数の電極指群40,41,42が、圧電基板21上に位置をずらして配設され、弾性表面波素子20は液体2の中に配設される。液体2が複数の電極指群40,41,42のいずれかに接触する状態によって生じる共振周波数f1,f2,f3の帯域における挿入損失の差異を検出し、この挿入損失の変化から液体2の液位を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波素子と液位検出装置に関する。詳しくは、複数の共振周波数を有する弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を用いた液位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電基板上に共振周波数の異なるIDT電極を形成している弾性表面波素子というものがある。この弾性表面波素子は、所定の共振周波数を有する第1の弾性表面波共振器を並列腕に、第1の弾性表面波共振器の反共振周波数に略一致する共振周波数を有する第2の弾性表面波共振器を直列腕にそれぞれ複数個配列される。そして、上述の第1及び第2の弾性表面波共振器のうち、少なくとも1つの弾性表面波共振器の電極指が、2つ以上の異なる周期を持つように形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、弾性表面波素子を用いる物理量の検出センサとして、弾性表面波の伝播面上のずり変位の垂直方向に凹凸のあるすべり弾性表面波センサと、凹凸のない平坦なすべり弾性表面波センサとを、同一の弾性表面波素子に設置し、両センサにより液体の密度と粘度を分離測定する液体の密度と粘度の分離測定方法というものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−88112号公報(第6頁、図11,12)
【特許文献2】特開平11−211705号公報(第4頁、図2,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1によれば、この弾性表面波素子はフィルタとして用いられるものであって、電極指を2つ以上の異なる周期を持つように形成し、通過帯域外の周波数帯域において所望の抑圧度を得るように構成されている。このような構成の場合、異なる周期の設定領域幅が小さく、例えば、物理量を測定するセンサとしては不適当である。
【0006】
また、この弾性表面波素子は、直列共振器または並列共振器を複数備えて構成されているが、そのうちの1つに外的な負荷、例えば、電極指が液体等に浸漬されるような場合には、周波数応答性が著しく低下し、あるいは出力が得られないことが推測される。
【0007】
また、前述した特許文献2では、凹凸がある弾性表面波センサと凹凸のない弾性表面波センサにて、標準液体と被測定液体とを負荷し、弾性表面波センサの質量負荷による弾性表面波の速度変化により液体の密度と粘度の分離測定を行っている。
しかしながら、このような方法では、微量な液体を被検出液体として用いており、容器等に収容された液体の量を測定することはできない。
【0008】
本発明の目的は、前述した課題を解決することを要旨とし、複数の共振周波数を有する弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を用いて液体の量を液位として検出することができる液位検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の弾性表面波素子は、圧電基板上に複数の所定共振周波数にて励振するIDT電極を備える弾性表面波素子であって、前記IDT電極が、異なる所定の共振周波数を有する複数の電極指群から構成され、前記複数の電極指群が、前記圧電基板上に位置をずらして配設され、前記複数の電極指群のいずれかに外部負荷が付加された際に、当該電極指群の周波数特性の変化を検出することを特徴とする。
ここで、電極指群とは、例えば、所定の共振周波数を形成するための電極幅とピッチとを有する電極指のユニットを意味する。また、外部負荷としては、例えば、電極指群が液体に浸漬された場合等の負荷を含む。さらに、周波数特性としては、検出しやすい挿入損失が代表される。
【0010】
本発明によれば、異なる共振周波数を有する複数の電極指群を備え、これらの電極指群それぞれが位置をずらして配設されているために、仮に電極指の1つに液体等が負荷された際に、液体が付着した電極指群の挿入損失は大きくなり、付着しない電極指群の挿入損失には変化がないため、そのような負荷状態を検出するセンサとして用いることができる。
【0011】
また、前記IDT電極が、前記複数の電極指群それぞれを弾性表面波が伝播する方向に直列に接続して形成されていることが好ましい。
【0012】
このように電極指群を構成すれば、簡単な構成により複数の共振周波数を有する弾性表面波素子を実現できる。
【0013】
また、前記複数の電極指群が、共振周波数の異なる複数のIDT電極を形成し、前記複数のIDT電極それぞれが、平行に配設されると共に、弾性表面波が伝播する方向に位置をずらして配設され、前記複数のIDT電極が並列接続されていることが好ましい。
【0014】
このように複数の電極指群をレイアウトすることにより、上述したような液体等の負荷を複数のIDT電極に対して的確に個別付加することができる。
【0015】
また、前記IDT電極が、複数の所定共振周波数を有する電極指群を直列に接続してなる入力側電極と、前記入力側電極の所定共振周波数に対応する所定周波数を有する電極指群を直列に接続してなる出力側電極とから構成され、且つ、弾性表面波が伝播する方向に配設されていることが好ましい。
【0016】
このように入力側電極と出力側電極とを備えることで、優れた周波数特性を有する弾性表面波素子を実現するとともに、簡単な構成の電極指群により複数の共振周波数を有する弾性表面波素子を実現することができる。
【0017】
また、前記IDT電極が、弾性表面波が伝播する方向に配列される入力側電極と出力側電極とから形成され、前記出力側電極が、異なる所定の共振周波数を有する複数の電極指群を備え、前記複数の電極指群が並列接続されるとともに、弾性表面波が伝播する方向に位置をずらして配設されていることが望ましい。
【0018】
このように出力電極側の電極指群を構成することにより、各共振周波数の切り分けを明確に行うことができ、段階的な挿入損失の検出を行うことができる。
【0019】
さらに、前記複数の電極指群が、共振周波数の異なる複数のIDT電極を形成し、前記複数のIDT電極それぞれが、弾性表面波が伝播する方向に対して平行に、且つ、独立して配設されていることが望ましい。
【0020】
このように共振周波数が異なるIDT電極それぞれが独立して形成されているため、仮に、1つのIDT電極に負荷された状態において、他のIDT電極は負荷の影響を受けないので、周波数特性(挿入損失)の差異が明確に生じ、検出力を高めることができる。
【0021】
また、本発明では、前記IDT電極それぞれが、一方向性電極から構成されていることを特徴とする。
【0022】
液体内に浸漬した後、液体の接触から離脱した場合、IDT電極に液体が付着していることが考えられ、このような状態では、弾性表面波素子の駆動が不安定になることが知られている。従って、一方向性電極を採用することによって、液体を一方向に移動させたり飛散させたりすることによりIDT電極の形成領域の外部に除去し、安定駆動を持続することができる。
【0023】
また、本発明の液位検出装置は、液体中に配設され、圧電基板上に複数の所定共振周波数にて励振するIDT電極を備え、前記IDT電極が、異なる所定の共振周波数を有する複数の電極指群から構成され、前記複数の電極指群が、前記圧電基板上に位置をずらして配設される弾性表面波素子と、液体外部に配設され前記弾性表面波素子を励振する励振回路部と周波数特性を検出する検出回路部とを有する制御部と、を備え、前記複数の電極指群のいずれかに液体が接触する状態によって生じる周波数特性の変化を検出し、周波数特性の変化から液体の液位を検出することを特徴とする。
【0024】
IDT電極、つまり電極指群の表面に液体が接触する状態の差により、弾性表面波素子の周波数特性が変化する。仮に、複数の共振周波数を有する電極指群のうちの1つが液体中に浸漬しており、他が液体に接触しない状態において、浸漬している電極指群の周波数特性が他とは異なることを検出することで、電極指群のどの位置まで液体があるのかを判定することができる。従って、弾性表面波素子を適切な高さ位置に配設することにより、液体の液位を検出することができる。
【0025】
このことから、液体が容器等に収容されている場合、容器の底面積と液位の積から液体の収容容積、収容容積と液体の密度の積から液体の重量等の液量を測定することが可能となる。
【0026】
また、前記弾性表面波素子が、弾性表面波の伝播方向を液体の液面に対して略垂直となるように配設されていることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、簡単な電極指構成で、液位を検出することができる。
【0028】
さらに、前記複数のIDT電極それぞれが、弾性表面波の伝播方向を液体の液面に対して略水平となるように配設され、且つ、液面に対する高さ位置をずらして配設されていることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、共振周波数が異なるIDT電極それぞれが、液面に対して高さ位置をずらし、また,それぞれが独立して形成されているため、液体に浸漬されるIDT電極の周波数特性は、浸漬されないときとは大きく変化し、浸漬されていない他のIDT電極は、液体負荷の影響を全く受けない。従って、周波数特性(挿入損失)の差異が明確に生じ、検出力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図5は実施形態1に係る液位検出装置、弾性表面波素子、及び液位検出方法を示し、図6は実施形態2、図7は実施形態3、図8は実施形態4、図9は実施形態5に係る弾性表面素子を示している。
(実施形態1)
【0031】
図1は、本発明の実施形態1に係る液位検出装置の概略構成を示す斜視図である。図1において、液位検出装置1は、液体2が収容される容器10の内部側壁11に取り付けられる液位検出センサとしての弾性表面波素子20と、容器10の外部に備えられる制御部80とから構成されている。
【0032】
容器10は、本実施形態では立方体の容器を例示しているが、その形状は立方体に限らず任意に選択することが可能である。また、弾性表面波素子20は、弾性表面波の伝播方向(矢印にて図示)を液面3に対して垂直となるように配設されている。
【0033】
弾性表面波素子20には、圧電基板21の主面(表面と表すことがある)にIDT電極30が形成されている。IDT電極30を構成するすだれ状の電極指(図2、参照)は弾性表面波の伝播方向Wに垂直に形成されることから、電極指は液面3に対して平行となる。
【0034】
制御部80と弾性表面波素子20とは、容器10の内部側壁11を挟んで図示しないリードで接続される。このリードは、電気的に絶縁されると共に、容器10との間において防水処置が施されている。この制御部80には、図示を省略するが、弾性表面波素子20を励振させるための励振回路部、弾性表面波素子20の周波数応答性出力を検出するための検出回路部、電源、検出結果を表示する表示部等を含んでいる。
【0035】
次に、本実施形態にて用いられる弾性表面波素子20の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る弾性表面波素子20の1例を模式的に表す正面図である。図2において、弾性表面波素子20には、圧電基板21の表面に入出力電極31とGND電極32とから構成されるIDT電極30が形成されている。
【0036】
入出力電極31とGND電極32は、図示するような複数の電極指がそれぞれ入り組んで構成されている。各電極指の構成を図示したように配列した電極を一方向性電極と呼び、励振された弾性表面波は図中矢印W方向のみに移動する。このような一方向性電極によれば、IDT電極30(入出力電極31とGND電極32)上に液滴が付着している場合、矢印W方向に液滴を移動させるか、または飛散させる特性を有し、液滴をIDT電極30の上面から除去する。
【0037】
ここで、IDT電極30は、図示するように3つの異なる共振周波数を有する電極指群40,41,42を直列に連続的に接続して構成されている。電極指群40の共振周波数をf1、電極指群41の共振周波数をf2、電極指群42の共振周波数をf3とする。
【0038】
これら電極指群40〜42は、所定の共振周波数に対応して、それぞれの電極指の幅、間隔、ピッチを設定し形成されている。本実施形態では、具体例として、中心となる共振周波数f2を210MHzとして、共振周波数f1をf2+10MHz、共振周波数f3をf2−10MHzに設定して例示する(図3〜図5、参照)。
【0039】
続いて、上述した弾性表面波素子20を液位検出センサとして用いる場合の作用について図面を参照して説明する。ここでは、容器10に取り付けられた弾性表面波素子20に対する3水準の液位検出を例示して説明する。
図3(a)は、液位の3水準のうちの第1水準を例示するIDT電極30との関係を示す説明図である。図3(a)では、液体2の液面3aがIDT電極30の最上部にある状態を示している。すなわち、電極指群40〜42の総てが液体中に浸漬された状態である。
【0040】
ここで、IDT電極30を励振させたときの周波数特性の1例をあげ説明する。
図3(b)は、図3(a)に示す状態の周波数特性を示すグラフである。横軸に共振周波数(単位:MHz)、縦軸に挿入損失(単位:dB)を表している。図3(b)に表されるように、IDT電極30が総て液体中に浸漬される状態では、出力はほとんど発生せず、上述した各共振周波数域において、高い挿入損失の値を示している。すなわち、共振周波数f1〜f3がこのように表されている状態は、液位が液面3aにある(全浸漬している)ことを検出できる。
【0041】
次に、液位が第2水準のときを例示して周波数特性の変化について説明する。
図4(a)は、液体2の液面3bが、IDT電極30に全く接触しない位置、つまり液体2がほとんど無い状態を表している。
【0042】
ここで、IDT電極30を励振させたときの周波数特性について説明する。
図4(b)は、図4(a)に示す液位の状態の周波数特性を示すグラフである。横軸に共振周波数(単位:MHz)、縦軸に挿入損失(単位:dB)を表している。図4(b)に表されるように、このような液位の状態では、周波数特性は液体の負荷による影響を全く受けないため所望の周波数特性を示し、挿入損失は、共振周波数f1,f2,f3の領域においてほぼ同等な低レベルをしめしている。
【0043】
このような状態では、全浸漬のときの図3(b)にて表される共振周波数f1,f2,f3の領域における挿入損失とは全く異なるレベルであり、液体2がほとんど無い状態であることを示している。
【0044】
次に、液位が第3水準のときを例示して周波数特性の変化について説明する。
図5(a)は、液体2の液面3cが、電極指群41の中央付近にある場合を表している。すなわち、電極指群40の総てと電極指群41の約半分が液体中に浸漬され、電極指群42は浸漬されていない状態である。
【0045】
ここで、IDT電極30を励振させたときの周波数特性の1例をあげ説明する。
図5(b)は、図5(a)に示す状態の周波数特性を示すグラフである。横軸に共振周波数(単位:MHz)、縦軸に挿入損失(単位:dB)を表している。図5(b)に表されるように、浸漬された電極指群41(共振周波数f1領域)では出力が低下し挿入損失が増大する。
【0046】
液体2に浸漬されていない電極指群42(共振周波数f3領域)では、液体2による負荷がないため出力レベルは影響されず、図4(b)に示す共振周波数f3帯域のレベルと同じ挿入損失を示している。
【0047】
液体2に約半分の範囲で浸漬されている電極指群41(共振周波数f2領域)では、電極指群42に比べ挿入損失が低下しており、挿入損失がf3>f2>f1の関係に表されている。このことにより、液位が電極指群41の形成範囲にあることを検出することができる。
【0048】
また、図示は省略するが、液位が上述した3水準以外の場合についても説明を加える。
まず、液位が電極指群40の範囲にある状態では、共振周波数f2,f3の帯域の挿入損失は図4(b)に示すレベルであり、共振周波数f1の帯域の挿入損失は図5(b)に示すf2に近似した値を示す。つまり、挿入損失が概ねf3=f2>f1の関係となる。このような状態のとき、液位が電極指群40の形成範囲にあることを検出することができる。
【0049】
また、液位が電極指群42の範囲にある状態では、共振周波数f1,f2の帯域の挿入損失は図5(b)に示す共振周波数f1帯域と近似した値を示し、共振周波数f3の帯域の挿入損失は図5(b)に示す共振周波数f2帯域と近似した値を示す。つまり、挿入損失が概ねf1=f2<f3の関係となる。挿入損失がこのよう状態を示すとき、液位が電極指群42の領域にあることを検出することができる。
【0050】
なお、上述した実施形態1では、電極指群が3つある状態を例示して説明したが、電極指群は3つに限らず、液位検出の範囲、分解能の要求にあわせて任意に設定することができる。また、各電極指群の電極指の構成も1例を示したものであり、共振周波数の帯域、要求出力レベルにあわせて任意に設定することが可能である。
【0051】
従って、上述した実施形態1によれば、弾性表面波素子20が、異なる共振周波数f1,f2,f3を有する電極指群40,41,42を備え、これらの電極指群それぞれが直列に配設されている。従って、簡単な構成により複数の共振周波数を有し、小型の弾性表面波素子20を実現することができる。
【0052】
また、電極指群40〜42のいずれかの範囲が液体2に浸漬され負荷された際に、液体2に浸漬された電極指群の挿入損失は大きくなり、浸漬されない電極指群の挿入損失には変化がないので、共振周波数f1〜f3の各帯域において、挿入損失の差異を検出することによって、電極指群のどの位置に液体があるのかを判定することができることから、弾性表面波素子20を適切な高さ位置に配設することにより、液体2の液位を検出することができる。
(実施形態2)
【0053】
続いて、本発明の実施形態2について図面を参照して説明する。実施形態2は、弾性表面波素子に形成される共振周波数が異なる複数のIDT電極が、並列に配設されていることに特徴を有している。
図6は、実施形態2に係る弾性表面波素子120のIDT電極の構成の1例を模式的に示す説明図である。図6において、本実施形態のIDT電極は、異なる共振周波数を有するIDT電極130,230,330が、それぞれ弾性表面波の伝播方向に対して平行に離間して配設され構成されている。
【0054】
IDT電極130は、入力側電極131と出力側電極132とから構成されている。そして、入力側電極131はIN電極131aとGND電極131bとから構成され、出力側電極132はOUT電極132aとGND電極132bとから構成されている。入力側電極131と出力側電極132とは、所定の間隔を有して弾性表面波の伝播方向に配設されており、共振周波数f3となるように電極指の電極幅、電極間隔、ピッチ等が設定されている。
【0055】
IDT電極230は、入力側電極231と出力側電極232とから構成されている。そして、入力側電極231はIN電極231aとGND電極231bとから構成され、出力側電極232はOUT電極232aとGND電極232bとから構成されている。入力側電極231と出力側電極232とは、所定の間隔を有して弾性表面波の伝播方向に配設されており、共振周波数f2となるように電極指の電極幅、電極間隔、ピッチ等が設定されている。
【0056】
また、IDT電極330は、入力側電極331と出力側電極332とから構成されている。そして、入力側電極331はIN電極331aとGND電極331bとから構成され、出力側電極332はOUT電極332aとGND電極332bとから構成されている。入力側電極331と出力側電極332とは、所定の間隔を有して弾性表面波の伝播方向に配設されており、共振周波数f1となるように電極指の電極幅、電極間隔、ピッチ等が設定されている。
【0057】
各IDT電極における共振周波数f1,f2,f3は、それぞれ異なり、前述した実施形態1と同様な共振周波数帯域に設定される。
【0058】
それぞれのIDT電極は、図6に示すように接続される。つまり、各IDT電極の入力側電極131,231,331は並列接続され、IN端子70及びGND端子71に接続される。また、出力側電極132,232,332も同様に並列接続され、OUT端子73、GND端子72に接続される。
なお、図示する結線は、各端子の配置の説明を分かりやすくするために模式化して表している。
【0059】
これらIDT電極130,230,330は、弾性表面波の伝播方向に相互に出力側電極の長手方向範囲分だけ、位置をずらして配設される。
【0060】
上述したように構成される弾性表面波素子120を液位検出装置(図1に示す)に取り付けて液位を検出する方法について説明する。図6に表すように液面A〜Dの場合を例示して説明する。まず、液面Aの状態のとき、各IDT電極130,230,330は、液体に接触していないので、液体負荷の影響を受けずに、出力側電極132,232,332の出力の挿入損失は図4(b)にて示す各共振周波数f1〜f3における状態とほぼ同じとなる。
【0061】
液面Bのときは、出力側電極332のみが液体2中に浸漬されている状態である。各共振周波数における挿入損失は、f2=f3>f1の関係となり、図5(b)にて示す挿入損失と類似な特性を示す。このことから、液位が液面Bの位置にあることを検出することができる。
【0062】
また、液面Cのときは、出力側電極332,232が液体2に浸漬されている状態である。従って、各共振周波数における挿入損失は、f1=f2<f3の関係となり、液位が液面Cの位置にあることを検出できる。
【0063】
さらに、液面Dの状態は、出力側電極332,232,132とが総て液体2に浸漬されている状態である。従って、各共振周波数における挿入損失は、図3(b)にて示す各共振周波数f1〜f3と同様な特性を示し、液位が液面Dの位置にあることを検出することができる。
【0064】
なお、本実施形態においても、共振周波数が異なるIDT電極が3つある状態を例示して説明したが、IDT電極は3つに限らず、液位検出の範囲、分解能の要求にあわせて任意に設定することができる。また、各IDT電極の電極指の構成も1例を示したものであり、共振周波数の帯域、要求出力レベルにあわせて任意に設定することが可能である。
【0065】
従って、上述した実施形態2によれば、各IDT電極が入力側電極と出力側電極とを備えることで、優れた周波数特性を有する弾性表面波素子120を実現するとともに、共振周波数が異なるIDT電極を独立して設けていることから、各共振周波数における挿入損失の差異がより鮮明に出現しやすいという効果がある。
【0066】
また、IDT電極130,230,330を独立して構成しても、それぞれの入力側電極と出力側電極を並列接続しているため、結線の簡素化と入出力端子、GND端子の数を最低数で構成することができる。
(実施形態3)
【0067】
続いて、本発明の実施形態3について図面を参照して説明する。実施形態3は、弾性表面波素子に形成されるIDT電極が、共振周波数が異なる電極指群からなる入力側電極と出力側電極とから構成されていることに特徴を有している。
図7は、実施形態3に係る弾性表面波素子220のIDT電極300の構成の1例を模式的に示す説明図である。図7において、本実施形態のIDT電極300は、複数の異なる共振周波数を有する入力側電極310と出力側電極320とが、弾性表面波の伝播方向に直列に配列されて構成されている。
【0068】
入力側電極310は、すだれ状のIN電極311とGND電極312とが入り組んで形成され、図示するように3つの異なる共振周波数を有する電極指群315,316,317を直列に連続的に接続して構成されている。電極指群315の共振周波数をf1、電極指群316の共振周波数をf2、電極指群317の共振周波数をf3とする。
【0069】
出力側電極320は、入力側電極310と同じ構成とし、OUT電極322とGND電極321とが入り組んで形成され、図示するように3つの異なる共振周波数を有する電極指群325,326,327を直列に連続的に接続して構成されている。電極指群325の共振周波数をf1、電極指群326の共振周波数をf2、電極指群327の共振周波数をf3とする。
【0070】
本実施形態では、入力側電極310と出力側電極320は、それぞれ前述した実施形態1(図2、参照)にて説明したIDT電極30と同じ構成を例示している。従って、出力側電極320を図2に示すIDT電極30に置き換えて液位の検出を行うことができる。
【0071】
つまり、実施形態3における電極指群325,326,327それぞれの範囲に液位が存在するとき、各共振周波数f1,f2,f3の帯域における挿入損失の出現は、図3(b)、図4(b)、図5(b)に表される各共振周波数における挿入損失に準じ、このことから、液位を検出することができる。
【0072】
従って、上述した実施形態3では、前述した実施形態1と実施形態2による効果を奏する。つまり、簡単な構成により複数の共振周波数を有し、小型化を可能にし、IDT電極300が入力側電極310と出力側電極320とを備えることで、優れた周波数特性を有する弾性表面波素子220を実現し、正確な液位検出装置を提供できる。
(実施形態4)
【0073】
続いて、本発明の実施形態4について図面を参照して説明する。実施形態4は、弾性表面波素子に形成されるIDT電極が、入力側電極と、異なる複数の共振周波数を有する出力側電極と、から構成されていることに特徴を有している。
図8は、実施形態4に係る弾性表面波素子220のIDT電極300の構成の1例を模式的に示す説明図である。図8において、本実施形態のIDT電極300は、入力側電極310と、異なる複数の共振周波数を有する出力側電極320とが、弾性表面波の伝播方向に直列に配列されて構成される。
【0074】
入力側電極310は、すだれ状のIN電極311とGND電極312とが入り組んで形成されている。この入力側電極310は、単一の共振周波数帯域を有し、本実施形態では、中心となる共振周波数f2に設定している。
【0075】
出力側電極320は、共振周波数f1を有する電極指群325と、共振周波数f2を有する電極指群326と、共振周波数f3を有する電極指群327とから構成さている。これら電極指群325〜327はそれぞれ、OUT電極322とGND電極321とから構成されている。そして、各電極指群325,326,327は、所定の共振周波数f1,f2,f3を有するように、入力側電極310からの距離、それぞれの電極幅、電極間隔、ピッチ等が設定される。
【0076】
そして、電極指群325,326,327は、それぞれが弾性表面波の伝播方向に対しての垂直方向に位置をずらして形成される。
【0077】
このように構成された弾性表面波素子220による液位の検出は、前述した実施形態3(図7、参照)と同様に行うことができる。つまり、実施形態4における電極指群325、電極指群326、電極指群327それぞれの範囲に液位が存在するとき、各共振周波数f1,f2,f3の帯域における挿入損失の出現は、図3(b)、図4(b)、図5(b)に表される挿入損失に準じ、このことから、液位を検出することができる。
【0078】
また、電極指群325,326,327は、それぞれが弾性表面波の伝播方向に対して垂直方向に位置をずらして形成することにより、各共振周波数の切り分けを明確に行うことができるという効果を奏する。
(実施形態5)
【0079】
続いて、本発明の実施形態5について図面を参照して説明する。実施形態5は、異なる共振周波数を有する複数のIDT電極を弾性表面波の伝播方向に対して垂直方向に、それぞれ位置を離間し、独立して設けていることを特徴とする。
図9は、実施形態5に係る弾性表面波素子におけるIDT電極の構成の1例を模式的に示す説明図である。図9において、本実施形態の弾性表面波素子200は、圧電基板21の表面にIDT電極330,340,350を形成して構成される。
【0080】
IDT電極340,350,360は同様な構成とされるが、IDT電極360は共振周波数f1、IDT電極350は共振周波数f2、IDT電極340は共振周波数f3を有するように、それぞれの電極指の電極幅、電極間隔、ピッチが設定されている。
なお、前述した実施形態1〜実施形態4にて説明したIDT電極を異なる所定の共振周波数を有する構成としてもよい。
【0081】
この弾性表面波素子200は、液位検出装置(図1、参照)において、各IDT電極が液面に対して弾性表面波の伝播方向が平行であり、液面に対して垂直方向にそれぞれを配設している。すなわち、この弾性表面波素子200は、液位検出装置において、液面に対してIDT電極360を下方向に配設される。
【0082】
従って、例えば、IDT電極360が液体中に浸漬されたときには、IDT電極360の出力はほとんどなく、IDT電極350,340による周波数特性が出現し、しかもIDT電極350は共振周波数f2、IDT電極340は共振周波数f3における挿入損失を検出する。
【0083】
このようにして、本実施形態では、IDT電極の数に応じた段階的な液位を検出することができる。また、液位によって、周波数特性の出現があるか、ある場合において挿入損失のピークが出現する共振周波数を検出することにより、より明確な分解能を有する液位検出装置を提供することができる。
【0084】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述した実施形態1〜5における電極指群、及び電極指の構成は1例であって、それらの構成は限定されるものではない。
【0085】
また、実施形態2、実施形態5では、複数のIDT電極を1つの圧電基板に形成しているが、それぞれのIDT電極を個別に有する独立した弾性表面波素子とし、図6あるいは図9に示すように液位検出装置に配設して取り付けても同様な効果を得ることができる。
【0086】
さらに、実施形態3の技術思想を基礎にして、実施形態3または実施形態4に示すIDT電極の構造を組み合わせることもできる。このような場合、各IDT電極それぞれに異なる共振周波数を有する電極指群を位置をずらして配設する。このようにすれば、液位の検出分解能をさらに高めることができる。
【0087】
従って、前述した実施形態1〜実施形態5によれば、複数の共振周波数を有する弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を用いて液体の量を液位として検出する液位検出装置を提供することができる。この液位検出装置は、例えば、燃料や薬品の残量検出、プリンターに用いられるインクカートリッジのインク残量計等に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態1に係る液位検出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子を模式的に表す正面図。
【図3】(a)は本発明の実施形態1に係る液位の第1水準を例示するIDT電極の説明図、(b)は(a)に示す液位の状態の周波数特性を示すグラフ。
【図4】(a)は本発明の実施形態1に係る液体の第2水準を例示するIDT電極の説明図、(b)は(a)に示す液位の状態の周波数特性を示すグラフ。
【図5】(a)は本発明の実施形態1に係る液体の第3水準を例示するIDT電極の説明図、(b)は(a)に示す液位の状態の周波数特性を示すグラフ。
【図6】本発明の実施形態2に係る弾性表面波素子のIDT電極の構成を模式的に示す説明図。
【図7】本発明の実施形態3に係る弾性表面波素子のIDT電極の構成を模式的に示す説明図。
【図8】本発明の実施形態4に係る弾性表面波素子のIDT電極の構成を模式的に示す説明図。
【図9】本発明の実施形態5に係る弾性表面波素子のIDT電極の構成を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0089】
1…液位検出装置、2…液体、20…弾性表面波素子、21…圧電基板、30…IDT電極、40,41,42…電極指群、f1,f2,f3…共振周波数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に複数の所定共振周波数にて励振するIDT電極を備える弾性表面波素子であって、
前記IDT電極が、異なる所定の共振周波数を有する複数の電極指群から構成され、前記複数の電極指群が、前記圧電基板上に位置をずらして配設され、
前記複数の電極指群のいずれかに外部負荷が付加された際に、当該電極指群の周波数特性の変化を検出することを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記IDT電極が、前記複数の電極指群それぞれを弾性表面波が伝播する方向に直列に接続して形成されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項3】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記複数の電極指群が、共振周波数の異なる複数のIDT電極を形成し、
前記複数のIDT電極それぞれが、平行に配設されると共に、弾性表面波が伝播する方向に位置をずらして配設され、
前記複数のIDT電極が並列接続されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項4】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記IDT電極が、複数の所定共振周波数を有する電極指群を直列に接続してなる入力側電極と、前記入力側電極の所定共振周波数に対応する所定周波数を有する電極指群を直列に接続してなる出力側電極とから構成され、且つ、弾性表面波が伝播する方向に配設されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項5】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記IDT電極が、弾性表面波が伝播する方向に配列される入力側電極と出力側電極とから形成され、
前記出力側電極が、異なる所定の共振周波数を有する複数の電極指群を備え、前記複数の電極指群が並列接続されるとともに、弾性表面波が伝播する方向に位置をずらして配設されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項6】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記複数の電極指群が、共振周波数の異なる複数のIDT電極を形成し、
前記複数のIDT電極それぞれが、弾性表面波が伝播する方向に対して平行に、且つ、独立して配設されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の弾性表面波素子において、
前記IDT電極それぞれが、一方向性電極から構成されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項8】
液体中に配設され、圧電基板上に複数の所定共振周波数にて励振するIDT電極を備え、前記IDT電極が、異なる所定の共振周波数を有する複数の電極指群から構成され、前記複数の電極指群が、前記圧電基板上に位置をずらして配設される弾性表面波素子と、
液体外部に配設され前記弾性表面波素子を励振する励振回路部と周波数特性を検出する検出回路部とを有する制御部と、を備え、
前記複数の電極指群のいずれかに液体が接触する状態によって生じる周波数特性の変化を検出し、周波数特性の変化から液体の液位を検出することを特徴とする液位検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液位検出装置において、
前記弾性表面波素子が、弾性表面波の伝播方向を液体の液面に対して略垂直となるように配設されていることを特徴とする液位検出装置。
【請求項10】
請求項8に記載の液位検出装置において、
前記複数のIDT電極それぞれが、弾性表面波の伝播方向を液体の液面に対して略水平となるように配設され、且つ、液面に対する高さ位置をずらして配設されていることを特徴とする液位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−303977(P2007−303977A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133007(P2006−133007)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】