説明

形状可動断熱装置とこれを用いた炊飯器

【課題】家電製品等で断熱性能が必要な完成品に関し、断熱性能を確保すると放熱や吸熱が必要になった場合に対応できないという課題を解決し、必要に応じて放熱や吸熱を行ない、温度や湿度の制御して完成品の性能を向上させる。
【解決手段】少なくとも1個以上の熱により形状を変える可動装置1と、可動装置1によって移動し熱の断熱を行なう平板状の断熱装置2とを備え、周囲温度により可動装置1が伸縮して断熱装置2を移動させるようにしたので、完成品の断熱必要箇所での基本断熱効果に加え、熱移動による温度や湿度の制御ができ、更なる性能向上が行なえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電製品、住宅および車両等の断熱材として使用可能な形状可動断熱装置、および炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の視点から省エネルギーや省資源に対して、様々な取り組みがなされている。省エネルギーの観点では、高性能の真空断熱材が開発され、省エネルギー向け断熱材として寄与している。特に、加熱や冷却を伴う家電製品では、その消費電力を大幅に削減できるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−317897公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の構成では、断熱材は適用される完成品に固定された状態であり、熱移動を抑えることはできるが、完成品の性能面から放熱や吸熱を積極的に行ないたい場合には対応できないという課題を有していた。
【0004】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、断熱効果を基本機能とし、必要に応じ放熱や吸熱を行なうことで、完成品を性能向上させる形状可動断熱装置を提供することを目的とする。
【0005】
更には、本発明によって考案された可動断熱装置を用い、炊飯性能を向上させる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために、本発明の形状可動断熱装置は、熱により形状を変える可動装置と、前記可動装置により移動し断熱を行なう断熱装置とを備え、周囲温度により可動装置が伸縮して、断熱装置を移動させるようにしたので、性能向上させる温度になった時に放熱や吸熱を行なうことができるものである。
【0007】
また、本発明の炊飯器は、外容器と、外蓋体と、内蓋と、内釜と、内釜を収容する内枠によって本体を構成し、内枠の外方に少なくとも電磁誘導加熱手段と、本発明によって考案された形状可動断熱装置とを備え、炊飯温度や保温温度によって断熱装置が移動するので、急激な温度変化が必要な時の放熱を行なうことができるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の形状可動断熱装置は、完成品の温度保持が必要な時には、断熱装置で密着や密閉の構造を取ることができ、放熱や吸熱が必要な時には隙間を空けることで、熱や湿度の調整が行え性能を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の炊飯器は、炊飯温度から保温温度への急峻な温度変化を行なうことができ、ご飯の旨み成分の流出を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
請求項1に記載の発明は、少なくとも1個以上の熱により形状を変える可動装置と、前記可動装置により移動し熱の断熱を行なう平板状の断熱装置とを備えたことにより、周囲温度により可動装置が伸縮して、完成品断熱箇所と断熱装置との間隔を調整するので、最適な温度や湿度の制御を行なうことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の形状可動断熱装置において、前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、前記断熱装置を前記可動装置で接続して閉空間を形成したことにより、周囲温度により可動装置が伸縮して、閉空間の大きさを調整するので、最適な温度や湿度の制御を行なうことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明の形状可動断熱装置において、前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、応力伸縮可能なシート材で前記断熱装置を接続して閉空間を形成し、前記断熱装置のそれぞれには外周側に少なくとも1個以上の前記可動装置を配設したことにより、周囲温度により可動装置が伸縮して、外周側からの作用で断熱装置を移動させて閉空間の大きさを調整するので、最適な温度や湿度の制御を行なうことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明の形状可動断熱装置において、前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、応力伸縮可能なシート材で前記断熱装置を接続して閉空間を形成し、前記断熱装置のそれぞれには内周側に少なくとも1個以上の前記可動装置を配設したことにより、周囲温度により可動装置が伸縮して、内周側からの作用で断熱装置を移動させて閉空間の大きさを調整するので、最適な温度や湿度の制御を行なうことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明の形状可動断熱装置において、前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、応力伸縮可能なシート材で前記断熱装置を接続して閉空間を形成し、前記断熱装置のそれぞれには、外周側に少なくとも1個以上の第一の可動装置と、内周側に少なくとも1個以上の第二の可動装置とを配設したことにより、周囲温度により可動装置が伸縮して、第一の可動装置により外周側から、第二の可動装置により内周側からのそれぞれの作用で、断熱装置を移動させて閉空問の大きさを調整するので、更にきめ細かな温度や湿度の制御を行なうことができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明の形状可動断熱装置において、前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、前記断熱装置を第三の可動装置で接続して閉空間を形成し、前記断熱装置のそれぞれには外周側に少なくとも1個以上の第四の可動装置を配設したことにより、周囲温度により可動装置が伸縮して、第三の可動装置により断熱装置接続問隔を伸縮させ、第四の可動装置により外周側からの作用で、断熱装置を移動させて閉空間の大きさを調整するので、更にきめ細かな温度や湿度の制御を行なうことができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、外容器と、外蓋体と、内蓋と、内釜と、内釜を収容する内枠によって本体を構成し、前記内枠の外方に少なくとも電磁誘導加熱手段と、請求項5または6に記載の形状可動断熱装置を少なくとも1個以上備えたことにより、外容器内の温度により可動装置が伸縮して、断熱装置と内枠との間隔を調整するので、炊飯温度から保温温度への急峻な温度変化が行なえ、美味しいご飯が保温できる炊飯器を提供することができる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明の形状可動断熱装置において、前記可動装置を形状記憶樹脂により形成したことにより、コストも安く、形状加工も容易に行なうことができる。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明の形状可動断熱装置において、前記可動装置を形状記憶金属により形成したことにより、コストも安く、優れた耐久性を持たせることができる。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の発明の形状可動断熱装置において、前記断熱装置を真空断熱材により構成したことにより、断熱性能が必要な場合に優れた断熱性能を発揮し、省エネルギーを図ることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における形状可動断熱装置の第一例の構成断面図、図2は第二例の構成断面図である。
【0022】
図1において、熱の温度により形状を変える可動装置1は、一端を板状の断熱装置2の片面に固定させ、他端を完成品の取付面3と密着させている。断熱装置2の他面には完成品断熱箇所4の開口部が配置されている。
【0023】
以上のように構成された形状可動断熱装置について、以下その動作を説明する。
【0024】
まず、予め決定した基準温度Toよりも温度が高い場合は、可動装置1の全長L1が伸び、逆に温度が低い場合にはL1が縮むような可動装置1を選定する。
【0025】
ここで、周囲温度がTo以上となると可動装置1の全長L1が伸びて、断熱装置2が完成品断熱箇所4の開口部に近づいてその隙間を狭める。また逆に、周囲温度がTo以下となると可動装置1の全長L1が縮んで、断熱装置2が完成品断熱箇所4の開口部から遠ざかってその隙間を広げる。
【0026】
以上のように、本実施の形態においては、可動装置1を断熱装置2に固定して、周囲温度の状態によって断熱装置2を移動させることにしたので、完成品断熱箇所4の温度保持だけでなく、開口部と断熱装置2に隙間を空けることで放熱や吸熱が行なえ、温度や湿度を最適に制御することができる。
【0027】
また、図2に示す様に、図1の第一例に示した可動装置1の他端を、断熱箇所凸部5に固定することでも可動装置1の全長L2が伸縮して、第一例と同様の効果を得ることができる。
【0028】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における形状可動断熱装置の構成上面図である。図4は本発明の実施の形態2における形状可動断熱装置の構成側面図である。
【0029】
図3および図4において、実施の形態1と同一構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0030】
断熱装置2の一端面に可動装置1の一端が固定され、可動装置1の他端は別の断熱装置2の一端面に固定される。この構成で可動装置1と断熱装置2を順番に接続固定し、閉空間を有する六面体を形成する。なお、本実施の形態においては六面体としたが、適用する完成品の形状に応じて、可動装置1と断熱装置2の数量を変更し、最も性能が向上できる多面体としてもよい。
【0031】
以上のように構成された形状可動断熱装置について、以下その動作を説明する。
【0032】
まず、予め決定した基準温度Toよりも温度が高い場合は、可動装置1の全長L3が伸び、逆に温度が低い場合にはL3が縮むような可動装置1を選定する。
【0033】
ここで、周囲温度がTo以上となると可動装置1の全長L3が伸びて、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D1が広がる。また逆に、周囲温度がTo以下となると可動装置1の全長L3が縮んで、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D1が狭まる。
【0034】
以上のように、本実施の形態においては、可動装置1と断熱装置2を順番に接続して、閉空間を形成する多面体構造として、周囲温度の状態によって可動装置1の全長が伸縮して、断熱装置2を移動させることにしたので、この閉空間の中を完成品の断熱箇所とすることで、温度保持だけでなく、完成品断熱箇所と断熱装置2に隙問を空けることで放熱や吸熱が行なえ、温度や湿度を最適に制御することができる。
【0035】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における形状可動断熱装置の構成上面図である。
【0036】
図5において、実施の形態1から2と同一構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0037】
断熱装置2の一端面に応力伸縮可能なシート材6の一端が固定され、シート材6の他端は別の断熱装置2の一端面に固定される。この構成でシート材6と断熱装置2を順番に接続固定し、閉空間を有する六面体を形成する。断熱装置2の外周面にはそれぞれ少なくとも1個以上の可動装置1の一端が固定され、他端は完成品の外周取付面7と密着させる。
【0038】
なお、本実施の形態においては六面体としたが、適用する完成品の形状に応じて、シート材6と断熱装置2の数量を変更し、最も性能が向上できる多面体としてもよい。
【0039】
以上のように構成された形状可動断熱装置について、以下その動作を説明する。
【0040】
まず、予め決定した基準温度Toよりも温度が高い場合は、可動装置1の全長が伸び、逆に温度が低い場合には全長が縮むような可動装置1を選定する。
【0041】
ここで、周囲温度がTo以上となると可動装置1の全長が伸びて、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D2が狭まる。また逆に、周囲温度がTo以下となると可動装置1の全長が縮んで、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D1が広がる。
【0042】
以上のように、本実施の形態においては、シート材6と断熱装置2を順番に接続して、閉空間を形成する多面体構造として、周囲温度の状態によって可動装置1の全長を伸縮させて、閉空間の外側から断熱装置2を移動させることにしたので、この閉空間の中を完成品の断熱箇所とすることで、温度保持だけでなく、完成品断熱箇所と断熱装置2に隙間を空けることで放熱や吸熱が行なえ、温度や湿度を最適に制御することができる。
【0043】
(実施の形態4)
図6は本発明の実施の形態4における形状可動断熱装置の第一例の構成上面図である。
【0044】
図6において、実施の形態1から3と同一構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0045】
断熱装置2の一端面にシート材6の一端が固定され、シート材6の他端は別の断熱装置2の一端面に固定される。この構成でシート材6と断熱装置2を順番に接続固定し、閉空間を有する六面体を形成する。断熱装置2の内周面にはそれぞれ少なくとも1個以上の可動装置1の一端が固定され、他端は完成品の内周取付面8と密着させる。なお、本実施の形態においては六面体としたが、適用する完成品の形状に応じて、シート材6と断熱装置2の数量を変更し、最も性能が向上できる多面体としてもよい。
【0046】
以上のように構成された形状可動断熱装置について、以下その動作を説明する。
【0047】
まず、予め決定した基準温度Toよりも温度が高い場合は、可動装置1の全長が伸び、逆に温度が低い場合には全長が縮むような可動装置1を選定する。
【0048】
ここで、周囲温度がTo以上となると可動装置1の全長が伸びて、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D3が広がる。また逆に、周囲温度がTo以下となると可動装置1の全長が縮んで、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D3が狭まる。
【0049】
以上のように、本実施の形態においては、シート材6と断熱装置2を順番に接続して、閉空間を形成する多面体構造として、周囲温度の状態によって可動装置1の全長を伸縮させて、閉空間の内側から断熱装置2を移動させることにしたので、この閉空間の中の内周取付面8内を完成品の断熱箇所とすることで、温度保持だけでなく、完成品断熱箇所と断熱装置2に隙間を空けることで放熱や吸熱が行なえ、温度や湿度を最適に制御することができる。
【0050】
(実施の形態5)
図7は本発明の実施の形態5における形状可動断熱装置の構成上面図である。
【0051】
図7において、実施の形態1から4と同一構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0052】
断熱装置2の一端面にシート材6の一端が固定され、シート材6の他端は別の断熱装置2の一端面に固定される。この構成でシート材6と断熱装置2を順番に接続固定し、閉空間を有する六面体を形成する。断熱装置2の外周面にはそれぞれ少なくとも1個以上の第一の可動装置9の一端が固定され、他端は完成品の外周取付面7と密着させる。
【0053】
また、断熱装置2の内周面にはそれぞれ少なくとも1個以上の第二の可動装置10の一端が固定され、他端は完成品の内周取付面8と密着させる。なお、本実施の形態においては六面体としたが、適用する完成品の形状に応じて、シート材6と断熱装置2の数量を変更し、最も性能が向上できる多面体としてもよい。
【0054】
以上のように構成された形状可動断熱装置について、以下その動作を説明する。
【0055】
まず、予め決定した基準温度T1よりも温度が高い場合は、応力σ1(伸び率k1)で全長が伸びる第一の可動装置9を選定する。次に、予め決定した基準温度T2よりも温度が高い場合は、応力σ2(伸び率k2)で全長が伸びる第二の可動装置10を選定する。なお、各定数は、T1<T2、σ1<σ2(k1<k2)を満足する値とする。
【0056】
ここで、周囲温度がT1以上となると第一の可動装置9の全長が伸びて、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D4が狭まる。さらに、周囲温度が上昇し、T2以上になると第二の可動装置10の全長が伸びる。このときσ1<σ2(k1<k2)の関係より、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D4が広がる。また逆に、この状態から周囲温度が下がると、断熱装置2は逆の動きとなり、閉空間の直径D4を調節することになる。
【0057】
以上のように、本実施の形態においては、シート材6と断熱装置2を順番に接続して、閉空問を形成する多面体構造として、周囲温度の状態によって第一の可動装置9と第二の可動装置10の全長を伸縮させて、閉空間の外側及び内側からの力により断熱装置2を移動させることにしたので、この閉空間の中の内周取付面8内を完成品の断熱箇所とすることで、温度保持だけでなく、完成品断熱箇所と断熱装置2に隙間を空けることで放熱や吸熱が行なえ、更にきめ細かく温度や湿度を最適に制御することができる。
【0058】
尚、第一の可動装置9と第二の可動装置10のどちらか一方を、温度影響を受けないバネ材に置換えることも可能である。
【0059】
(実施の形態6)
図8は本発明の実施の形態6における形状可動断熱装置の構成上面図である。
【0060】
図8において、実施の形態1から5と同一構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0061】
断熱装置2の一端面に第三の可動装置11の一端が固定され、第三の可動装置11の他端は別の断熱装置2の一端面に固定される。この構成で第三の可動装置11と断熱装置2を順番に接続固定し、閉空間を有する六面体を形成する。断熱装置2の外周面にはそれぞれ少なくとも1個以上の第四の可動装置12の一端が固定され、他端は完成品の外周取付面7と密着させる。
【0062】
なお、本実施の形態においては六面体としたが、適用する完成品の形状に応じて、第三の可動装置12と断熱装置2の数量を変更し、最も性能が向上できる多面体としてもよい。
【0063】
以上のように構成された形状可動断熱装置について、以下その動作を説明する。
【0064】
まず、予め決定した基準温度T3よりも温度が高い場合は、応力σ3(伸び率k3)で全長が伸びる第三の可動装置11を選定する。次に、予め決定した基準温度T4よりも温度が高い場合は、応力σ4(伸び率k4)で全長が伸びる第四の可動装置12を選定する。なお、各定数は、T3<T4、σ3<σ4(k3<k4)を満足する値とする。
【0065】
ここで、周囲温度がT3以上となると第三の可動装置11の全長が伸びて、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D5が広がる。さらに、周囲温度が上昇し、T4以上になると第四の可動装置12の全長が伸びる。このときσ3<σ4(k3<k4)の関係より、断熱装置2で囲まれた閉空間の直径D5が狭まる。また逆に、この状態から周囲温度が下がると、断熱装置2は逆の動きとなり、閉空間の直径D5を調節することになる。
【0066】
以上のように、本実施の形態においては、第三の可動装置11と断熱装置2を順番に接続して、閉空間を形成する多面体構造として、周囲温度の状態によって第三の可動装置11と第四の可動装置12の全長を伸縮させて、閉空間の外側及び接続箇所からの力により断熱装置2を移動させることにしたので、この閉空間の中を完成品の断熱箇所とすることで、温度保持だけでなく、完成品断熱箇所と断熱装置2に隙間を空けることで放熱や吸熱が行なえ、更にきめ細かく温度や湿度を最適に制御することができる。
【0067】
尚、第一の可動装置9と第二の可動装置10のどちらか一方を、温度影響を受けないバネ材に置換えることも可能である。
【0068】
(実施の形態7)
図9は本発明の実施の形態7における炊飯器の縦断面図である。
【0069】
図9において、実施の形態1から6と同一構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0070】
外容器16と、外蓋体17と、内蓋18と、内釜19と、内釜19を収容する内枠20とにより炊飯器15の本体を構成し、内枠20の外側には加熱を行なうための電磁誘導加熱手段21を設置し、内枠20の形状に沿わすように電磁誘導加熱手段21を囲む形で、第一の形状可動断熱装置13と第二の形状可動断熱装置14を取付けている。
【0071】
尚、第一の形状可動断熱装置13は実施の形態6の図8に示したもの、第二の形状可動断熱装置14は実施の形態5の図7に示したものと、それぞれ同様の構成のものを用いている。
【0072】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作を説明する。
【0073】
まず、炊飯温度時には断熱装置2と内枠20に一定の隙間を空ける。次に炊飯が終了し、炊飯温度よりも低い保温温度(具体的には72℃)に移行させるために、電磁誘導加熱手段21を調節する。保温温度に達した時点で、断熱装置2と内枠20の隙間を狭めて、保温状態を継続する。尚、このような動きとなるように、第一の形状可動断熱装置13と第二の形状可動断熱装置14を構成する第一から第四の可動装置は、温度及び応力の特性面から予め選定しておく。
【0074】
以上のように、本実施の形態においては、第一の形状可動断熱装置13と第二の形状可動断熱装置14により、断熱装置2を移動させて内枠20との隙間を炊飯温度と保温温度とで調整することにしたので、従来の固定された断熱材を使用したものよりも、急峻に炊飯から保温への温度移行が行なえ、お米の旨み成分を流出させることなく、美味しいご飯が保温できる。
【0075】
また、実施の形態1から7の可動装置を形状記憶樹脂で形成することにより、材料費や加工費を安くすることができる。
【0076】
形状記憶樹脂のベース材料としては、イソプレン系、スチレン・ブタジエン共重合体、エチレン系、ウレタン系等の樹脂材料がある。
【0077】
また、実施の形態1から7の可動装置を形状記憶金属で形成することにより、材料費や加工費を安くでき、更に耐久性も向上させることができる。
【0078】
形状記憶金属としては、ニッケル・チタン系、鉄系等の合金材料がある。
【0079】
また、実施の形態1から7の断熱装置2を真空断熱材で構成することにより、保温性能が必要な場合に優れた断熱効果を発揮し、完成品の省エネルギー化が図れ、ランニングコストを低減させることができる。
【0080】
真空断熱材としては、断熱性を有する無機繊維形成体を心材とし、金属シート等の外被材で心材を覆い、内部を減圧して熱溶着等により封止させたものがある。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明にかかる形状可動断熱装置とこれを用いた炊飯器は、断熱効果だけではなく、温度により機能的に断熱装置を動かして、熱や湿度の調整が行なえるので、保冷や保温が必要で、かつ急峻な温度や湿度の制御が必要な住宅建材、車両材料、炊飯器以外の家電製品等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1における形状可動断熱装置の第一例の構成を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1における形状可動断熱装置の第二例の構成を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態2における形状可動断熱装置の構成を示す上面図
【図4】本発明の実施の形態2における形状可動断熱装置の構成を示す側面図
【図5】本発明の実施の形態3における形状可動断熱装置の構成を示す上面図
【図6】本発明の実施の形態4における形状可動断熱装置の構成を示す上面図
【図7】本発明の実施の形態5における形状可動断熱装置の構成を示す上面図
【図8】本発明の実施の形態6における形状可動断熱装置の構成を示す上面図
【図9】本発明の実施の形態7における炊飯器の縦断面図
【符号の説明】
【0083】
1 可動装置
2 断熱装置
3 取付面
4 完成品断熱箇所
5 断熱箇所凸部
6 シート材
7 外周取付面
8 内周取付面
9 第一の可動装置
10 第二の可動装置
11 第三の可動装置
12 第四の可動装置
13 第一の形状可動断熱装置
14 第二の形状可動断熱装置
15 炊飯器
16 外容器
17 外蓋体
18 内蓋
19 内釜
20 内枠
21 電磁誘導加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱により形状を変える少なくとも1個以上の可動装置と、前記可動装置により移動し熱の断熱を行なう平板状の断熱装置とを備えた形状可動断熱装置。
【請求項2】
前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、前記断熱装置を前記可動装置で接続して閉空間を形成した請求項1に記載の形状可動断熱装置。
【請求項3】
前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、応力伸縮可能なシート材で前記断熱装置を接続して閉空間を形成し、前記断熱装置のそれぞれには外周側に少なくとも1個以上の前記可動装置を配設した請求項1に記載の形状可動断熱装置。
【請求項4】
前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、応力伸縮可能なシート材で前記断熱装置を接続して閉空間を形成し、前記断熱装置のそれぞれには内周側に少なくとも1個以上の前記可動装置を配設した請求項1に記載の形状可動断熱装置。
【請求項5】
前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、応力伸縮可能なシート材で前記断熱装置を接続して閉空間を形成し、前記断熱装置のそれぞれには、外周側に少なくとも1個以上の第一の可動装置と、内周側に少なくとも1個以上の第二の可動装置とを配設した請求項1に記載の形状可動断熱装置。
【請求項6】
前記断熱装置を少なくとも3個以上有し、前記断熱装置を第三の可動装置で接続して閉空間を形成し、前記断熱装置のそれぞれには外周側に少なくとも1個以上の第四の可動装置を配設した請求項1に記載の形状可動断熱装置。
【請求項7】
外容器と、外蓋体と、内蓋と、内釜と、内釜を収容する内枠によって本体を構成し、前記内枠の外方に少なくとも電磁誘導加熱手段と、請求項5または6に記載の形状可動断熱装置を少なくとも1個以上備えた炊飯器。
【請求項8】
前記可動装置を形状記憶樹脂により形成した請求項1から7のいずれか一項に記載の形状可動断熱装置。
【請求項9】
前記可動装置を形状記憶金属により形成した請求項1から7のいずれか一項に記載の形状可動断熱装置。
【請求項10】
前記断熱装置を真空断熱材により構成した請求項1から9のいずれか一項に記載の形状可動断熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−125598(P2006−125598A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317889(P2004−317889)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】