説明

形状測定装置

【課題】凹状のゲージを用いた形状測定装置の校正の精度の低下を防止する。
【解決手段】形状測定装置のステージの上面に設けられているゲージは、形状測定装置の校正に用いる凹球面状の凹部と、凹部の底から垂直に突出するように設けられている送風部材52により構成される。送風部材52の送風部52Aの下面には、下面の外周に沿って、送風口61−1乃至61−nが所定の間隔で配置されている。形状測定装置の電源が投入されている間、常にこの送風口61−1乃至61−nから凹部の表面に向かって風が吹き出され、凹部の表面の埃などの異物が吹き飛ばされる。本発明は、例えば、被検物の3次元形状を測定する形状測定装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関し、特に、凹状のゲージを用いて校正を行う形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接触式または非接触式のプローブを用いて被検物の形状を測定する三次元形状測定装置では、高い測定精度を実現するために、所定の形状のゲージをステージ上の所定の位置に設けておき、そのゲージの形状および位置を測定した結果に基づいて、装置の校正が行われている。すなわち、既知のゲージの形状および位置と測定値との関係を求め、例えば、測定値の補正を行うための補正値を設定したり、ゲージに対する測定誤差が所定の範囲内になるように三次元形状測定装置の各部の調整を行ったりすることが行われている。
【0003】
ところで、校正用のゲージとしては、ゲージの中心の位置を求めるのが容易などの理由により、球体のゲージがよく用いられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、回転や傾斜が可能なステージに球体のゲージを設けた場合、ステージを回転したり傾けたりしたときに、プローブに接触するなどの要因により、ゲージが測定の妨げになる場合がある。
【0004】
そこで、凹球面状の凹部を校正用のゲージとして用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3005681号公報
【特許文献2】特開2006−349410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、凹球面など凹状のゲージを校正に用いる場合、ゲージに埃などの異物が溜まり、校正の精度を低下させる場合がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、凹状のゲージを用いた形状測定装置の校正の精度の低下を防止できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面の形状測定装置は、被検物の形状を測定する形状測定装置であって、前記被検物を設置するステージに設けられている、前記形状測定装置の校正に用いる凹部と、前記凹部の表面の異物を除去する除去部とを備える。
【0009】
本発明の一側面の形状測定装置においては、形状測定装置の校正に用いる凹部の表面の異物が除去される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、凹状のゲージを用いた形状測定装置の校正の精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した形状測定装置の一実施の形態を模式的に示す外観図である。
【図2】形状測定装置のゲージの第1の実施の形態を拡大した図である。
【図3】形状測定装置のゲージの送風部材を拡大した図である。
【図4】形状測定装置のゲージの第2の実施の形態を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明を適用した形状測定装置の一実施の形態を模式的に示す外観図である。なお、以下、形状測定装置1の横方向をx軸方向と称し、奥行き方向をy軸方向と称し、高さ方向をz軸方向と称する。
【0014】
図1の形状測定装置1は、俯瞰カメラ14、光切断プローブ15、および、接触式プローブ16を用いて、円筒状のステージ12の上面12Aに設置された被検物(不図示)の形状を測定する三次元形状測定装置である。
【0015】
ステージ12は、x軸回りの回転、および、z軸回りの回転が可能となるように、基台11の上に設けられている。なお、以下、ステージ12のx軸回りの回転角を回転角φと称し、ステージ12のz軸回りの回転角を回転角θと称する。
【0016】
基台11上のステージ12の奥には、柱13Aおよびガイド部材13Bからなる逆L字型の支持部材13が設けられている。柱13Aは、基台11に対して垂直に立設され、柱13Aの上端に、長手方向がy軸方向に延び、基台11の上面に対して水平なガイド部材13Bが設けられている。ガイド部材13Bの下面には、俯瞰カメラ14、光切断プローブ15、および、接触式プローブ16が、x軸方向に並ぶように設けられている。
【0017】
俯瞰カメラ14、光切断プローブ15、および、接触式プローブ16は一体となって、図示せぬ駆動機構により、ガイド部材13Bの長手方向に沿ってy軸方向に平行移動できるとともに、z軸方向に平行移動できる。また、支持部材13は、図示せぬ駆動機構により、基台11の上をx軸方向に平行移動でき、その結果、俯瞰カメラ14、光切断プローブ15、および、接触式プローブ16が、x軸方向に平行移動する。
【0018】
俯瞰カメラ14は、ステージ12に設置されている被検物を撮影し、その結果得られた画像(以下、俯瞰画像と称する)のデータ(以下、俯瞰画像データと称する)を、形状測定装置1の図示せぬ演算装置に供給する。そして、図示せぬ演算装置は、俯瞰画像に基づいて、被検物の形状を測定する。
【0019】
光切断プローブ15は、例えば、y軸方向に延びるスリット光を、投光部15Aからステージ12に設置された被検物に照射する。なお、以下、投光部15Aが照射するスリット光(照射光)の進行方向を、適宜投光部15Aの光軸もしくはスリット光の光軸と称する。そして、光切断プローブ15は、スリット光の照射位置を所定の間隔で少しずつx軸方向に移動させながら、スリット光の光軸と異なる方向から、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどの2次元撮像素子を有するカメラ15Bによりスリット光が投影された被検物を撮影する。すなわち、光切断プローブ15は、スリット光をx軸方向に走査させながら、スリット光の反射光を含む被検物の画像(以下、スリット画像と称する)を複数撮影する。光切断プローブ15は、撮影した複数のスリット画像のデータ(以下、スリット画像データと称する)を、形状測定装置1の図示せぬ演算装置に供給する。そして、図示せぬ演算装置は、各スリット画像におけるスリット光の結像位置に基づいて、被検物の形状を測定する。
【0020】
接触式プローブ16は、その先端を被検物に接触させ、そのときの接触式プローブ16の位置から、接触した被検物の表面の各位置を検出する。例えば、接触式プローブ16は、その先端を被検物に接触させたときの、接触式プローブ16のx軸、y軸およびz軸方向の位置、並びに、ステージ12のx軸およびz軸回りの回転位置から、所定の基準位置に対する接触した被検物の位置の相対位置を検出し、検出した位置情報を形状測定装置1の図示せぬ演算装置に供給する。そして、図示せぬ演算装置は、接触式プローブ16により検出された被検物の複数の点の位置情報に基づいて、被検物の形状を測定する。
【0021】
なお、形状測定装置1では、被検物の形状や材質などに応じて、これらの3種類の測定部(俯瞰カメラ14、光切断プローブ15、および、接触プローブ16)を使い分けながら、被検物の形状を測定することが可能である。
【0022】
また、ステージ12の上面12Aの外周付近には、校正用のゲージ21−1乃至21−4が、ほぼ90度間隔で設けられている。ゲージ21−1乃至21−4の形状および位置は予め分かっており、形状測定装置1は、各プローブを用いてゲージ21−1乃至21−4の形状および位置を測定した結果に基づいて校正を行う。例えば、既知のゲージ21−1乃至21−4の凹部51(図2)の形状および位置と、各プローブよる測定値との関係を求め、測定値の補正を行うための補正値がプローブ毎に設定されたり、ゲージ21−1乃至21−4の凹部51(図2)に対する測定誤差が所定の範囲内になるように形状測定装置1の各部の調整が行われたりする。
【0023】
なお、以下、ゲージ21−1乃至21−4を個々に区別する必要がない場合、単に、ゲージ21と称する。
【0024】
図2は、ゲージ21を拡大した図である。ゲージ21は、ステージ12の上面12Aに設けられた凹球面状の凹部51、および、送風部材52により構成される。
【0025】
凹部51の表面は、凹部51の表面で正反射する正反射光の強度が弱くなるように、拡散反射面により構成される。また、凹部51の表面は、凹部51の底を中心とする同心円により複数の領域R1乃至R6に区分されている。領域R1乃至R6は、それぞれ異なる模様または色などが施され、視覚的にそれぞれ個別に識別することが可能である。なお、凹部51の底とは、凹部51の縁の外周円Cから最も遠い部分であって、上面12Aが水平になるようにステージ12を設置した場合に、最も下になる部分である。
【0026】
なお、以下、領域R1乃至R6を個々に区別する必要がない場合、単に、領域Rと称する。
【0027】
図3に示されるように、送風部材52は、円柱状の送風部52Aおよび棒状の支持部52Bにより構成される。支持部52Bは、凹部51の底から垂直に突出するように凹部51を構成する凹球面の中心(以下、単に凹球面の中心と称する)に向かって(すなわち、凹球面の径方向に)設けられ、送風部52Aを支持している。送風部52Aは、凹球面の中心を含む位置に設置され、凹球面の中心と送風部52Aの中心とがほぼ一致する。そして、送風部52Aは、透過率の低い材質からなり、凹球面の中心を含む所定の範囲に入射する光が、送風部52Aにより遮光される。また、支持部52Bも透過率の低い材質からなり、支持部52Bに入射する光を遮光する。
【0028】
従って、形状測定装置1の校正時に、光切断プローブ15の投光部15Aからスリット光をゲージ21に照射した場合に、凹部51の表面で光切断プローブ15のカメラ15Bの方向に反射される反射光のうち、凹部51の表面で正反射される正反射光のほとんどが、送風部材52により遮光され、カメラ15Bのレンズに入射することが防止される。従って、凹部51からの非常に強い正反射光によりカメラ15Bのレンズにフレアが発生したり、イメージセンサが飽和したりして、凹部51に投影されたスリット光の結像位置の検出が困難になったり、結像位置が誤検出されたりして、校正が正確に行われなくなることが防止される。
【0029】
なお、送風部52Aの大きさ(半径)、すなわち、送風部52Aにより遮光される範囲は、例えば、投光部15Aの光軸方向とカメラ15Bの光軸方向との間の角度、凹部51を構成する凹球面の半径などにより決定される。例えば、投光部15Aの光軸方向とカメラ15Bの光軸方向との間の角度が小さいほど、凹部51の表面でカメラ15Bの方向に正反射される正反射光は、凹球面の中心により近い位置を通過するため、送風部52Aを小さくすることができる。一方、投光部15Aの光軸方向とカメラ15Bの光軸方向との間の角度が大きいほど、凹部51の表面でカメラ15Bの方向に正反射される正反射光は、凹球面の中心からより遠い位置を通過するため、送風部52Aを大きくする必要がある。
【0030】
また、俯瞰カメラ14からゲージ21を見た場合、ステージ12の回転角θおよび回転角φにより、送風部52Aが重なって見える凹部51の位置が異なる。従って、俯瞰画像において、送風部52Aが凹部51のどの領域Rと重なっているかを検出することにより、エンコーダやパルスメータなどの高価な部品を用いなくても、ステージ12の回転角θおよび回転角φを大まかに検出することができる。これは、例えば、設定可能な回転角θおよび回転角φが、0度、10度、20度・・・など、予め離散的に決められている場合に、特に有効である。
【0031】
なお、区分する領域Rの数は、この例に限定されるものではなく、任意の数に設定することができるが、領域Rの数を増やすほど、より正確にステージ12の回転角θおよび回転角φを検出することが可能になる。
【0032】
さらに、送風部52Aの下面には、下面の外周に沿って、送風口61−1乃至61−nが所定の間隔で配置されている。そして、形状測定装置1の電源が投入されている間、常にこの送風口61−1乃至61−nから凹部51の表面に向かって風が吹き出され、凹部51の表面の埃などの異物が吹き飛ばされ、凹部51に異物が滞留することが防止される。
【0033】
これにより、凹部51に溜まった異物により、形状測定装置1の校正の精度が低下することが防止される。
【0034】
なお、送風部材52の形状は、この例に限定されるものではなく、凹部51に溜まった異物を除去できる程度の風を凹部51の表面に吹き送ることができ、凹部51の形状および位置の測定の妨げにならない範囲で、任意の形状とすることができる。
【0035】
また、送風部材52により、凹部51の表面で正反射される正反射光を遮光する必要がない場合、必ずしも送風部材51を凹球面の中心を含むように設置する必要はない。
【0036】
さらに、送風部52Aは、必ずしも凹部51の底から支持する必要はなく、例えば、凹部51の底以外の部分から支持するようにしたり、凹部51以外の部分から吊り下げたりするようにしてもよい。
【0037】
図4は、本発明を適用したゲージの第2の実施の形態を示している。図4のゲージ101は、ゲージ21の代わりに形状測定装置1のステージ12に設けることが可能である。ゲージ101は、ゲージ21の凹部51と同様の凹球面状の凹部111、および、ホース112により構成される。
【0038】
凹部111は、図2の凹部51と同様に、表面が拡散反射面により構成されるとともに、凹部111の底を中心とする同心円により、視覚的にそれぞれ個別に識別することが可能な複数の領域R11乃至R16に区分されている。
【0039】
また、凹部111の底には、貫通穴111Aが設けられ、貫通穴111Aの下にホース112が接続されている。また、ホース112は、図示せぬ吸入器に接続されている。そして、形状測定装置1の電源が投入されている間、凹部111の表面の埃などの異物が、貫通穴111Aおよびホース112を介して吸入器に吸い込まれ、凹部111に異物が滞留することが防止される。
【0040】
なお、貫通穴111Aの位置は、必ずしも凹部111の底である必要はなく、凹部111に溜まった異物を吸い込める範囲で任意の位置に設定することが可能である。
【0041】
なお、形状測定装置1に設けるゲージの数は、4つに限定されるものではなく、ステージ12の自由度等に基づいて、校正に必要な数に設定するようにすればよい。
【0042】
また、ステージ12の移動および回転方向は、上述した例に限定されるものではなく、例えば、x軸、y軸またはz軸方向に平行移動できるようにしたり、y軸回りに回転できるようにしたりすることも可能である。
【0043】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 形状測定装置, 12 ステージ, 14 俯瞰カメラ, 15 光切断プローブ, 16 接触式プローブ, 21−1乃至21−4 ゲージ, 51 凹部, 52 送風部材, 52A 送風部, 52B 支持部, 61−1乃至61−n 送風口, 101 ゲージ, 111 凹部, 111A 貫通穴, 112 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の形状を測定する形状測定装置において、
前記被検物を設置するステージに設けられている、前記形状測定装置の校正に用いる凹部と、
前記凹部の表面の異物を除去する除去部と
を備える形状測定装置。
【請求項2】
前記除去部は、前記凹部の表面に送風することにより前記異物を除去する
請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記除去部は、
前記凹部の表面に送風する送風部と、
前記凹部の底から突出するように設けられ、前記送風部を支持する支持部と
を備える請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記除去部は、前記凹部に設けられた穴から前記異物を吸い込む
請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記凹部は、凹球面である
請求項1乃至4のいずれかに記載の形状測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−27606(P2011−27606A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174868(P2009−174868)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】