形状記憶材料を含む医療器具
形状記憶材料を含むカテーテルなどの医療器具、ならびにこの医療器具を製造および使用するための関連する方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶材料を含むカテーテルなどの医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガイドワイヤ、カテーテルおよび医療用チューブなどの血管内医療器具は、医師が脈管形成術およびステントの送出などの医学的処置を行うことを可能にする。場合によっては、器具は、患者の都合のよい部位の血管系に挿入され、その後、例えば押し込まれるなどして血管系を通って標的部位まで送られる。血管系を経由する標的部位までの器具が通る経路は比較的蛇行している場合があり、例えば、頻繁に方向を変えるための器具が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ある種の状況においては、器具が比較的良好な追従性を有し、器具が蛇行経路に沿って移動できることが望ましい。同時に、器具が良好な押し込み性を有し、近位側から器具に加えられる力を器具を送出するために遠位側に伝えることができることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1態様では、形状記憶ポリマーを含む1つまたは複数の区間を有する医療器具が用意される。形状記憶ポリマーは、その一部分において導電層を有する。上に導電層を有する形状記憶ポリマーのこの部分は、導電層を付勢する(例えば、電流または熱を加える)ことによって活性化されてよく、このとき、これらの部分は形状変化することができ、一方、形状記憶ポリマーの残りの部分は活性化されずに元の形状のままである。
【0005】
形状記憶ポリマーの一部を選択的に活性化させる機能は、多くの目的に使用されてよい。例えば、形状記憶ポリマーの固定スリーブを2つの部材からなるカテーテルの内側部材と外側部材との間に配置することができる。活性化されていない状態において、固定スリーブはこれらの部材の一方のみと接触することができ、上に導電層を有する部分が活性化されると、これらの部分は他方の部材に接触するように形状変化することができ、その結果、外側部材および内側部材が互いに対して固定され、カテーテルの剛性が増す。
【0006】
別の実施例では、カテーテルはその遠位端に形状記憶ポリマーを有することができる。この形状記憶ポリマーは、部材の周囲周りを延在してしない部分の上に導電層を有してよく、その結果、活性化されると、活性化された部分が形状変化し(例えば、伸長する)、カテーテルが伸長部分の反対方向へ向くようになる。
【0007】
別の実施例では、管腔フィルターシステムが、管状部材を囲む形状記憶ポリマースリーブを有することができる。この形状記憶ポリマースリーブは穴(例えば、メッシュ状であってよい)を有することができ、遠位部分上に導電層を有することができる。活性化されていない場合、形状記憶ポリマースリーブは管状部材に接触して位置する。活性化された場合、遠位部分は伸長する(例えば、その結果、管腔壁を押圧するあるいはその中に押し入る)ことができるが、形状記憶ポリマースリーブの近位端は管状部材に接触するように位置したままである。したがって、形状記憶ポリマースリーブは管腔を通る流体を濾過するように機能することができ、そこを通るデブリを捕捉する。所望の場合、導電層に供給されるエネルギーは、形状記憶ポリマーの遠位部分の活性化を停止するために止められてよく、そうすることにより、形状記憶ポリマーの遠位部分が元の位置に戻ることができ、管状部材と接触するように位置される。このことにより、濾過された物質を効果的に封じ
込めることができ、これらの物質は管状部材に接触した状態で保持され、管状部材と共に管腔から除去することが可能となる。
【0008】
別の態様では、少なくともその一部分に形状記憶材料ではない導電層を有する形状記憶ポリマーを含む医療器具が用意される。
別の態様では、形状記憶ポリマーを含む遠位部分を有するカテーテルが用意される。この形状記憶ポリマーの表面の少なくとも一部分上に導電層がある。
【0009】
別の態様では、カテーテルが用意される。このカテーテルは、外側部材、内側部材、および、外側部材と内側部材との間に配置される構造体を含む。この構造体は、形状記憶ポリマーと、この形状記憶ポリマー上にある導電性材料とを含む。
【0010】
実施形態は、1つまたは複数の以下の特徴を含んでよい。
導電性材料は、形状記憶ポリマーの100%より少ない(例えば、50%より少ない)部分を活性化させるように構成されてよい。導電性材料は、形状記憶ポリマーの全長より少ない部分に跨って延在してよい。導電性材料は、形状記憶ポリマーの全周より少ない部分に跨って延在してよい。
【0011】
形状記憶ポリマーは、上に導電層を有する複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、または、それ以上)の区間を有してよい。導電層の複数の区間は、同じエネルギー供給源により各々が活性化することができるように接続(例えば、電気的接続)されてよい。複数の区間は接続されてなくてよく、各々の区間がエネルギー供給源と個別に接続されており、例えば、1つまたは複数の区間が、別の1つまたは複数の区間とは別個に付勢されてよい。
【0012】
形状記憶ポリマーは、活性化されたときに形状、サイズおよび/または寸法を変化させるように構成されてよい。形状記憶ポリマーは、活性化されたときにより大きな径へと膨張するように構成されてよい。形状記憶ポリマーは、活性化されたときに概略波形形状から概略非波形形状(またはその逆)へと変化するように構成されてよい。形状記憶ポリマーは、活性化されていないときに内側部材および外側部材のうちの1つと接触するように、さらには、活性化されたときに内側部材および外側部材のうちの残りの1つと接触するように構成される。
【0013】
実施形態は、1つまたは複数の以下の利点を有することができる。装置は、カテーテルにより高い剛性および押し込み性をもたせて固定するかあるいはカテーテルにより高い柔軟性をもたせて緩めるかの医師による選択を可能にする。装置は、カテーテルの先端を交互に曲げたり、湾曲させたり、あるいは真っ直ぐに伸ばしたりすることができることから、カテーテルの方向を変えることができる。実施形態は、単一のワイヤを使用する形状記憶ポリマーの複数の位置または領域を活性化させることを可能にし、システムの複雑さを低減しさらに/あるいはサイズを縮小する。所定の部分に導電層を付けることにより、スリーブ内で種々の異なる構成を作ることが可能となり、様々な目的を実現することができるようになる。有利には、スリーブは、例えば、実質的に純粋な形状記憶ポリマーから形成されることにより、安価かつ迅速に製造されてよく、さらに、導電層を用いて精密に活性化する構成を実現するために、安価で、正確かつ迅速な手法が使用されてよい。
【0014】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付図面および以下の説明に記載されている。他の態様、特徴および利点は、説明、図面、および、特許請求の範囲より明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、形状記憶材料を含む1つまたは複数の部分を有する構造体を特徴とし、この構造体は、1つまたは複数の所定の形状になるように選択的に活性化されてよい。
図1Aおよび1Bを参照すると、形状記憶ポリマー(「SMP」)構造体(図1にスリーブ1として示す)が、管状部材9と、管状部材の外側の第1の部分3に付けられる導電層または被覆物4(例えば、金)とを含む。管状部材9は、熱などのある刺激を受けたときに第1の形状から第2の所定形状へ移行することができる形状記憶ポリマー(例えば、ポリシクロオクテン)を含む(例えば、この形状記憶ポリマーで形成される)。管状部材9は、第2の部分2と、導電層4が上に付けられていない第3の部分6とをさらに含む。導電層4は、ワイヤ8により、導電層にエネルギーを送ることができるエネルギー供給源5(定電流源など)に接続される。エネルギーは導電層4を加熱することができ、それにより、管状部材9の第1の部分3が加熱され、形状記憶ポリマーを第1の形状(図1A)から第2の形状(図1B)へと変化させることができる。導電層4を含まない第2の部分2および第3の部分6は、実質的に形状を変化させない。したがって、管状部材9は、選択的に形状を変化させるように構成される選択部分(すなわち、以下で説明する部分)と、形状を変化させない1つまたは複数の部分とを含む。所定の部分に導電層4を付けることにより、様々の構成を作ることが可能となり、様々な目的を実現することができるようになる。以下で説明するように、スリーブ1などの構造体は、医療器具の性能を向上させるために医療器具に付け加えられてよい。例えば、形状記憶ポリマー構造体は、蛇行する血管構造を通るカテーテルの方向を変えるためのステアリング機構において、ならびに、身体管腔内で流体を濾過するためのフィルターにおいて、カテーテル用の固定装置として使用されてよい。
【0016】
固定装置
図2A、2Bおよび2Cに、バルーンカテーテルの剛性を選択的に変化させる機構として機能するスリーブ1を含むバルーンカテーテル50を示す。バルーンカテーテル50は、外側部材60と、外側部材を少なくとも部分的に囲む内側部材62と、外側および内側部材60、62によって運ばれる膨張可能なバルーン63とを含む。示すように、スリーブ1は、バルーン63の近位側において外側部材60と内側部材62との間で外側部材60に固定される(例えば、レーザ接合または接着剤接合により)。いくつかの実施形態では、スリーブ1は、外側部材60内で締りばめを形成するのに十分な大きさの直径を有しており、外側部材60との接合を必要としなくてもよい。スリーブ1の導電層4は、ワイヤ(図示せず)により、エネルギー供給源5(図示せず)と電気的に接続される。ワイヤは、外側部材60と内側部材62との間で近位側に延在していてよく、ならびに/あるいは、外側および内側部材60、62の1つまたは両方に埋め込まれていてよい。
【0017】
スリーブ1は、バルーンカテーテル50の剛性を変化させるために、第1の形状から第2の形状へ形状変化することができる。より具体的には、図2Bを参照すると、第1の緩められた形状では、スリーブ1の外側表面58が外側部材60の内側表面61に当接しており、スリーブは内側部材62には接触しない。外側および内側部材60、62は結合されておらず、バルーンカテーテル50は、蛇行経路を辿ることができるように比較的柔軟性がある。図2Cを参照すると、導電層4にエネルギーを加えることにより、第1の部分3の形状記憶ポリマーが第2の所定形状へと変化するが、この形状では、第1の部分3の内側表面53が内側カテーテル62の外側表面63にしっかりと接触するまでポリマーの直径が縮小する。その結果、スリーブ1が外側部材60を内側部材62に結合させるあるいは固定し、外側部材に対する外側部材の動きを縮小させる。外側および内側部材60、62を一体に固定することにより、外側および内側部材60、62が強化され、さらには、バルーンカテーテル50がより剛性になり、さらには、例えばバルーンカテーテルが狭い開口部を通って押し込まれるときに有効であるバルーンカテーテルの押し込み性が向上する。したがって、スリーブ1により、バルーンカテーテル50の剛性を選択的に変化させることが可能となる。
【0018】
いくつかの実施形態では、外側部材60と内側部材62との間での結合または固定を強化するために、管状部材9および/または内側部材62用の材料は、管状部材9と内側部材62との間の摩擦を強めるように選択される。高摩擦材料の例には、硬度の低いナイロン、ウレタンおよびポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標)(ペバックス)ポリマー)が含まれる。管状部材9および/または内側部材62は高摩擦材料で形成されてよく、さらに/あるいは、高摩擦材料は、管状部材9および/または内側部材62の1つまたは複数の接触表面上を覆ってよい。
【0019】
別の実施形態では、SMP構造体は、2つの以上の部分に付けられる導電層を有するように構成され、その結果、2つ以上の部分が選択的に形状変化できるようになる。例えば、図3Aおよび3Bに、カテーテル50に類似したバルーンカテーテル51内のスリーブ70を示す。スリーブ70は、第1の部分72と、第2の部分74と、第3の部分76とを有するSMP管状部材71を含む。第2の部分74は外側部材60に固定される。スリーブ70は、第1および第3の部分72、76の内側表面79上に導電層75を有する。第1の緩められた位置では、スリーブ70の外側表面78が外側部材60の内側表面61に当接しており、スリーブは内側部材62に接触しない。導電層75を介して活性化されると、第1および第3の部分72、76の形状記憶ポリマーが形状変化し、さらに、導電層75が内側部材62の外側表面63に接触するまで直径が縮小され、それにより、外側および内側部材60、62が固定され、バルーンカテーテル51の剛性が向上する。
【0020】
スリーブ1、70が、スリーブの周囲を完全に囲むように延在する導電層を有する一方で、別の実施形態では、導電層はスリーブの周囲を完全に囲むようには延在していない。図4Aおよび4Bに、カテーテル49に類似したバルーンカテーテル内のスリーブ85を示す。スリーブ85は、SMP管状部材81と、管状部材の選択された第1の部分86上を長手方向に延在する複数の導電層88とを有する。導電層88はスリーブ85の周囲に沿って互いに間隔があいており、管状部材81が、上に導電層を有していない、長手方向に延在する第2の部分87を有する。第2の部分87は内側部材62に固定されている。第1の緩んだ位置では、スリーブ85は内側部材62に接触して隣接している(図4A)。導電層88にエネルギーが加えられると、第1の部分86の形状記憶ポリマーが活性化されて外側部材60の内側表面61に接触するように膨張し(図4B)、それにより、外側および内側部材60、62が互いに固定されるが、一方で、外側部材60と内側部材62との間の管腔98を通って長手方向に通過する流体のためのチャネル95、96はそのままである。
【0021】
SMP構造体は別の形状に変化することができる。例えば、図5Aおよび5Bに、第1の位置にあるスリーブおよび導電層188の周りを円周方向に延在する第1の部分186を有するSMPスリーブ185を示す。SMPスリーブ185は、活性化されたときに断面が多角形形状(示すように、断面が正方形形状)になるように構成され、角189が外側カテーテル60の内側表面61に接触する。上に導電層を有していないスリーブ185の他の部分は内側カテーテル62に接触したままである。その結果、スリーブ185が、外側および内側部材60、62を一体に固定することができ、一方で、外側部材60と内側部材62との間の管腔198を長手方向に通過する流体のためのチャネル195はそのままである。
【0022】
別の実施形態では、内側部材および/または外側部材が、形状記憶ポリマーと、別個のスリーブを必要することなく内側部材と外側部材とを互いに固定することを可能にする導電性被膜物とを有する区間を含む。図6Aおよび6Bに、外側部材102および内側部材104を含むカテーテルシステム100を示す。内側部材104は、形状記憶ポリマーを含む固定区間106を有する。固定区間106は、第1の部分110と、第2の部分11
2と、第3の部分114とを有する。第2の部分112はその上に導電層120を有する。活性化されていないとき、内側部材104は標準的な管状であり、外側部材102には接触しない。導電層120にエネルギーが加えられたとき、第2の部分112の形状記憶ポリマーが活性化されて膨張して外側部材102の内側表面103に接触し、それにより、上述した方式と類似の方式で内側部材102と外側部材104とが互いに固定される。別法としてあるいは加えて、外側部材102は、内側に動いて内側部材104に接触することができる導電層を有するSMP部分を含むことができる。
【0023】
さらに別の実施形態を作ることもできる。例えば、SMPスリーブは2つの部分を有することができ、これらのうちの1つが、活性化されたときに外側部材の内側表面に接触することができ、これらのうちの他方が、活性化されたときに内側部材の外側表面に接触することができる。いくつかの実施形態では、SMPスリーブが、複数の部分(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10個、あるいはそれ以上の部分)を有することができ、1つのおきの部分がそれら自体に付けられる導電層を有し、その結果、活性化されたときに、それぞれの部材が複数の点で接触して、カテーテルの径方向の剛性が向上し、さらに、カテーテルが内側に向かう径方向の圧力に対してつぶされない形状に維持される。
【0024】
形状記憶ポリマースリーブは一定範囲のサイズを有してよい。例えば、つぶれた位置(例えば、第1の形状)にあるスリーブは、例えば、約3mmから約75mmまでの長さL1と、約0.1mmから約20mmまでの外径OD1と、約0.002mから約1.0mmまでの肉厚W1とを有してよい。用途に応じて、膨張位置(例えば、第2の形状)にある形状記憶ポリマースリーブの活性化された部分は、例えば、OD1の約1.2倍からOD1の約3倍までの外径OD2と、W1の約0.5倍からW1の約0.9倍までの肉厚W2とを有してよい。以下で説明するように、いくつかの実施形態では、さらなる膨張後において、第2の膨張位置(例えば、第3の形状)にある形状記憶ポリマースリーブの一区間は、OD2の約1.2倍からOD2の約3倍までの外径OD3と、W2の約0.5倍からW2の約0.9倍までの肉厚W3とを有してよい。
【0025】
ステアリングスリーブ
形状記憶ポリマーの選択された部分(複数可)を活性化させることができる導電層を有する形状記憶ポリマーを含む構造体は、操縦可能カテーテルを形成するのに使用されてもよい。図7Aおよび7Bに、遠位部分204を有する部材202を含む操縦可能カテーテルを示す。形状記憶ポリマースリーブ208が部材202の遠位部分204を囲む。示すように、導電層210が、実質的に形状意記憶ポリマースリーブ208の長さだけ長手方向に延在しさらに形状記憶ポリマースリーブ28の一部分の周りだけ円周方向に延在する形状記憶ポリマー208の区間212上に重ねられる(例えば、区間212を覆う)。導電層210は、近位側においてエネルギー供給源まで延在するワイヤ(図示せず)に接続される。導電層210にエネルギーが加えられると、導電層210が重ね合わされている区間212が活性化されて、記憶された湾曲形状に変化する。この活性化は、図7Cに示すように部材202の遠位部分204の方向を上記区間が活性化された方向の反対方向へ変えるのに十分な力を有する。いくつかの実施形態では、この区間は、この区間が位置する方向に結果としてカテーテルを向けることができるような記憶内の形状を有することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、導電層210は、形状記憶ポリマースリーブ208の周囲周り(例えば、スリーブ208が円筒管の形態の場合は円周)の約90%以下だけ延在し(例えば、形状記憶ポリマースリーブの周囲周りの約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下または約40%以下)、さらに/あるいは、形状記憶ポリマースリーブの周囲周りの約30%以上だけ延在する(例えば、形状記憶ポリマースリーブの周囲周
りの約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上または約80%以上)。別の実施形態では、導電層210は、形状記憶ポリマースリーブ208の周囲周りを約100%延在してよい。形状記憶ポリマースリーブ208の記憶形状を湾曲させるまたはそれに角度をつけることよって、あるいはその他には、カテーテルの方向を変化させるように上記記憶形状を構成することによって、方向付けが可能となる。
【0027】
操縦可能なカテーテルの別の実施形態を形成することができる。例えば、図8Aおよび8Bに、遠位部分229を有する部材227の含む操縦可能カテーテル225を示す。形状記憶ポリマースリーブ230は、部材227の遠位部分229を囲む。形状記憶ポリマースリーブ230は、ペーパーランタンによく似た波形である。導電層240が、実質的に形状記憶ポリマースリーブ230の長さだけ長手方向に延在しさらに形状記憶ポリマースリーブ230の一部分のみの周りを円周方向に延在する、形状記憶ポリマースリーブ230の区間232上に重ねられる(例えば、区間232を覆う)。導電層にエネルギーが加えられると、導電層240が重ね合わされている区間232が活性化されて、記憶された概略直線形状に変化し、その結果、波形がある程度まで真っ直ぐあるいは平坦になる。この活性化は、図8Bに示すように部材227の遠位部分229の方向を区間232が活性化された方向の反対方向へ変えるのに十分な力を有する。形状記憶ポリマースリーブ230の反対側の波形性質は、いくつかの実施形態においては、スリーブ230自体をさらに波形にする、折り曲げる、あるいは渦巻き状にしてその全長を効果的に短くするのに十分な柔軟性を有しており、これは、部材227を湾曲させるときに助けとなる。いくつかの実施形態では、区間232は、区間232が位置する方向に結果としてカテーテルを向けることができる記憶内の形状を有することができる。
【0028】
形状記憶ポリマースリーブ230は、いくつかの実施形態では、例えば長手方向長さの増加および/または縮小を可能にするあるいは促進することによりスリーブの湾曲化を促進または可能にするように構成されてよい。例えば、スリーブは、膨張可能および/または収縮可能な構成に切断されてよい(例えば、スリーブの円周の一部分またはすべての周りを延在するリリーフオープニング(relief opening)を有する)。スリーブは、屈曲することを可能にする一連の隆起部を有してよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、カテーテルの遠位先端部に位置するあるいはその近傍に位置するステアリング区間を有しており、このステアリング区間は、長手方向に延在するステアリング区間の一部分に沿って延在するがステアリング区間の円周の周りには延在しない導電層を有する形状記憶ポリマーを含む。形状記憶ポリマーは活性化されたとき伸長し、その結果、活性化により円周の一部分が長くなり、カテーテルがその長くなった部分の反対方向に押し込まれる。例えば、図9Aおよび9Bに、形状記憶ポリマーを含む遠位部分254を有する操縦可能カテーテル250を示す。導電層260が、実質的に遠位部分254の長さだけ長手方向に延在しさらに遠位部分254の全周より少ない部分の周りを延在する、遠位部分254の形状記憶ポリマーの区間256上に重ねられる(例えば、区間232を覆う)。導電層にエネルギーが加えられると、導電層が重ね合わされている区間256が活性化されて、記憶された湾曲形状に変化する。この活性化は、図9Bに示すようにカテーテル250の遠位部分254の方向を上記区間が活性化された方向の反対方向へ変えるのに十分な力を有する。いくつかの実施形態では、この区間は、この区間が位置する方向に結果としてカテーテルを向けることができるような記憶内の形状を有することができる。
【0030】
導電層は、いくつかの実施形態では、遠位部分の周囲周りの約90%以下だけ延在し(例えば、遠位部分の周囲周りの約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下または約40%以下)、さらに/あるいは、遠位部分の周囲周りの約30%以上だけ延在する(例えば、遠位部分の周囲周りの約40%以上、約50%以上、約60%以上、約
70%以上または約80%以上)。別の実施形態では、導電層210は、形状記憶ポリマーを含む遠位部分254の周囲周りを約100%延在してよい。遠位部分254内の形状記憶ポリマーの記憶形状を湾曲させるまたはそれに角度をつけることよって、あるいはその他には、カテーテルの方向を変化させるように上記記憶形状を構成することによって、方向付けが可能となる。
【0031】
図10Aおよび10Bに、形状記憶ポリマーを含む遠位部分274を有する操縦可能カテーテル270の別の実施形態を示す。導電層280が、実質的に遠位部分274の長さだけ長手方向に延在しさらに遠位部分274の全周より少ない部分の周りを延在する、遠位部分274の区間276上に重ねられる(例えば、区間256を覆う)。導電層にエネルギーが加えられると、導電層280が重ね合わされている区間276が活性化されて、記憶された形状に変化し、カテーテル先端部を区間276に向かって効果的に引っ張るような波形になる。
【0032】
管腔フィルター
形状記憶ポリマーの選択された部分(複数可)を活性化させることができる導電層を有する形状記憶ポリマーを含む構造体は、管腔フィルターを形成するのにも使用されてよい。例えば、図11A〜Cに示すように、管腔フィルターシステム300は、自体の外側表面313上に導電層320を備える第1の部分312と、外側表面315上にある、導電層を有していない第2の部分314とを有する形状記憶ポリマーフィルターチューブ310を含む。少なくとも形状記憶ポリマーフィルターチューブ310の第1の部分312は、粒子状物質を保持しながら流体を通過させることを可能にするように構成される。例えば、形状記憶ポリマーフィルターチューブ310の第1の部分312は、流体を通すことができる複数の開口部を有するスクリーン、メッシュ、またはその他の構成になるように形成されてよい。開口部は、いくつかの実施形態では、約60μm以下(例えば、幅が、約50μm以下、約40μm以下、または、30μm以下)であってよく、さらに/あるいは、幅が約20μm以上(例えば、幅が、約30μm以上、40μm以上、または、50μm以上)であってよい。形状記憶ポリマーフィルターチューブは、血管治療器具(図示せず)を通過させることができる管腔332を有するカテーテル330の周りに配置される。
【0033】
使用中、管腔フィルターシステムが血管342の血管管腔340に挿入されて、所望の位置、例えば、血液の流れ方向において血管342内の閉塞物350の下流に配置される(図11A)。このように配置することにより、形状記憶ポリマーフィルターチューブ310の第1の部分312を活性化させるために導電層320エネルギーを供給することが可能となり(例えば、ワイヤ(図示せず)によって)、それにより、図11Bに示すように、第1の部分312が概略円錐形状になるように外側に向かって開き、一方で、第2の部分314はカテーテル330に隣接したままである。血液は、形状記憶ポリマーフィルターチューブ310の第1の部分312内の穴を通って流れることができる。任意選択で、遠位先端部362(例えば、閉塞物350に穴をあけることができるように構成される)を有するワイヤ360がカテーテル330の管腔332に挿入されてよく、これは、カテーテル330の遠位端334から離れるように延在するために遠位方向へ延在してよい。その後、ワイヤ360は閉塞物350に穴をあけるのに使用されてよく、一方で、活性化された形状記憶ポリマーフィルターチューブは、大きすぎて形状記憶ポリマーフィルターチューブの穴を通過することができない閉塞物の粒子354を捕集する。
【0034】
例えば、血管のさらなる治療のためにステント送出装置が閉塞物を通過することが可能であるような十分なサイズの通路が形成されるといった具合に、所望される程度まで閉塞物350が処理されると、導電層320へのエネルギーの供給は停止されてよく、さらに、図11Cに示すように、第2の形状記憶ポリマー構造体(図示せず)が活性化されて、
管腔フィルターシステムを元の形状に戻すように変形させることができるようになり、さらには、濾過された閉塞物の粒子354を捕集することができるようになる。管腔フィルターシステム300は、その後、封じ込められた閉塞物の粒子354と共に血管管腔340から除去されてよい。
【0035】
形状記憶ポリマー
本明細書に記載する装置は、第1の形状になることができさらにエネルギーを加えられることにより活性化されて第2の形状になることができるポリマー材料である形状記憶ポリマーを利用する。いくつかの実施形態では、活性化のためのエネルギーは熱エネルギーであり、この熱エネルギーにより、ポリマーは第1の温度において第1の形状になり、第2の温度まで加熱されると活性化されて異なる第2の形状になることができる。いつかの実施形態では、材料は、さらに、第2の温度より高い第3の温度まで加熱されることにより第3の形状になることができる。
【0036】
ポリマー材料は、天然ポリマー、合成ポリマー、または、天然ポリマーと合成ポリマーとの混合物であってよい。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、例えば、ゼイン、ガゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、コラーゲン、多糖、ポリヒヤルロン酸、ポリ(3−ハイドロキシアルカノアート)、アルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲン、または、これらのポリマーの混合物といった天然ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、例えば、コラーゲンの化学的誘導体、セルロースの化学的誘導体、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリアクリル酸塩、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタル酸塩、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、分解性ポリマー、ポリエステルアミド、ポリアンハイドライド、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタン、セルロース誘導体、または、これらのポリマーの混合物といった合成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は天然ポリマーと合成ポリマーとの混合物を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は架橋結合される。
【0037】
ポリマーは、例えば、ポリノルボルネン、ポリカプロラクトン、ポリエン、ナイロン、ポリシクロオクテン(polycyclooctene(PCO))、PCOとスチレン−ブタジエンゴムとの混合物、ポリビニルアセテート/ポリフッ化ビニリデン(polyvinyl acetate/polyvinylidinefluoride(PVAc/PVDF))、PVAc/PVDF/ポリメチルメタクリル樹脂(polymethylmethacrylate(PMMA))の混合物、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、トランスイソプレン、ポリカプロラクトンとn−ブチルアクリレートとの混合物、および、これらの混合物から選択されてよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の温度はほぼ室温(例えば、約15℃から約25℃、あるいは、約18℃から約21℃)であり、第2の温度は、約37℃から約55℃(例えば、約42℃から約50℃)である。
【0039】
いくつかのポリマーは、25℃(ASTM D638M)において、約4219kgf/cm2(60,000psi)または約4922kgf/cm2(70,000psi)以上、例えば約7031kgf/cm2(100,000psi)から約17580kgf/cm2(250,000psi)以上、例えば約17580kgf/cm2(250,000psi)から約35160kgf/cm2(500,000psi)以上、例えば約35160kgf/cm2(500,000psi)から約70310kgf/cm2(1,000,000psi)以上の弾性率を有してよい。
【0040】
多形状記憶ポリマー
いくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーは、その記憶内に、例えば3つ、4つ、5つ、6つあるいはそれ以上の異なる形状といった具合に複数の形状を記憶することができる。例えば、3つの形状を記憶することができる形状記憶ポリマーは、それぞれが異なる遷移温度を有する3つの別個の区間を有することができる。図12に示した実施形態などのいくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーのポリマー材料502は、ハードセグメント(H)および2つの別個のソフトセグメント(S1およびS2)を有することができ、それぞれのセグメントは異なる遷移温度を有する。第1のソフトセグメント(S1)はハードセグメント(H)のTtransより低く(少なくとも10℃低い)さらに第2のソフトセグメント(S2)のTtransより高い(少なくとも10℃高い)Ttransを有してよい。この合成物は、ステップ504でハードセグメント(H’)のTtransより高い温度まで加熱され(例えば、溶解され)、ステップ506で、例えば押し出されてあるいは成形されて第3の形状の形態に形づくられる。この形状は、ハードセグメント(H’)のTtransよりは低いが第1のソフトセグメント(S1)のTtransよりは高い第1の温度まで冷却されることによって記憶される。形状記憶ポリマー(ステップ508)スリーブを第1のソフトセグメント(S1)のTtransの温度よりは低いが第2のソフトセグメント(S2)の温度よりは高い第2の温度まで加熱して、例えば圧縮することにより、第2の形状の形態に形づくること(ステップ512)が可能となる。第2のソフトセグメント(S2)のTtransより高い第3の温度まで加熱する(ステップ512)ことにより、スリーブ(ステップ514)を第1の形状の形態に形づくることが可能となる。別の実施形態では、異なる遷移温度を有する形状記憶ポリマーの複数の層が使用されてもよい。
【0041】
使用中、導電層は、形状記憶ポリマースリーブの接触している部分のみを(さらには、接触点のすぐ近くに隣接している部分をより弱めに)加熱する。形状記憶ポリマーの覆われた部分を第2のソフトセグメント(S2)のTtransを超えるように加熱するために導電層にエネルギーが供給され、このTtransを超える時点で、覆われた部分は第1の形状から例えば固定された構成である第2の形状に変化する。導電層にさらにエネルギーを供給することにより、覆われた部分は第1のソフトセグメント(S1)のTtransを超えるように加熱され、それにより、形状記憶ポリマーが、第2の形状から、例えば長手方向の流体流れのためのチャネルを形成する固定された構成である第3の形状に移行する。
【0042】
別の実施形態では、第1のマルチブロック共重合体と第2のマルチブロック共重合体とのポリマー混合物を使用することができる。第1のマルチブロック共重合体は、例えばガラス遷移温度または融解温度といった比較的高い遷移温度(Ttrans)を有するハードセグメント(H1)と、比較的低いTtransを有するソフトセグメント(S’1)とを含む。第2のマルチブロック共重合体は、比較的低いTtransを有する別のハードセグメント(H2)と、第1のマルチブロック共重合体と同じソフトセグメント(S’1)とを含む。第1および第2のマルチブロック共重合体の両方のソフトセグメント(S’1)が同じであることから、これらのポリマーは互いに混和可能である。得られた混合物は3つの遷移温度を有しており、1つは第1のマルチブロック共重合体のハードセグメント(H1)に対するものであり、1つは第2のマルチブロック共重合体のハードセグメント(H2)に対するものであり、1つはソフトセグメント(S’1)に対するものである。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の温度は約40℃から約75℃(例えば、約55℃から約70℃)であり、第2の温度は約37℃から約55℃(例えば、約42℃から約50℃)であり、第3の温度はほぼ室温(例えば、約15℃から約25℃、あるいは、約18℃
から約21℃)である。
【0044】
ポリマーは、熱可塑性、熱硬化性、結晶質、あるいは非結晶質であってよい。例えばポリマーのセグメントまたはブロックといった、ポリマー、またはポリマーの部分は、分解性、天然、または、合成であってよい。
【0045】
天然ポリマーまたはポリマー部分には、例えば、ゼイン、ガゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、コラーゲン、多糖、ポリヒヤルロン酸、ポリ(3−ハイドロキシアルカノアート)、アルギン酸塩、デキストラン、セルロースおよびコラーゲンが含まれる。合成ポリマーまたはポリマー部分には、例えば、コラーゲンの化学的誘導体、セルロースの化学的誘導体、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリアクリル酸塩、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンテレフタル酸塩、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドンおよびポリエステルが含まれる。分解性ポリマーまたはポリマー部分には、例えば、ポリエステルアミド、ポリアンハイドライド、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびセルロース誘導体が含まれる。
【0046】
一般に、上記のポリマーのいずれも、重合中にあるいは重合後の副次的ステップにおいて架橋されてよい。ポリマーはe−ビーム、UV、ガンマ線、x線放射などの放射線を当てることによって、あるいは、アゾ化合物または例えば有機化酸化物、過酸化ベンゾイルといった過酸化物を使用した熱による化学的架橋手法によって架橋されてよい。放射線による手法は、ポリマーが、通常、架橋を実現するために実質的に加熱される必要がない、という利点を有する。e−ビーム放射の場合、通常、約200〜300キログレイ、例えば250キログレイの照射線量が十分な架橋を可能にする。
【0047】
例えばホモポリマー、ブロック共重合体、および、これらの混合物といったポリマー材料は、ランガー(Langer)による米国特許第6,388,043号明細書、第6,720,402号明細書、および、「植込み可能な医療器具、および同医療器具の送出方法(Implantable Medical Devices,and Methods of Delivering The Same)」と題されて、2004年10月10日に出願された、係争中の米国仮特許出願第11/010,129号にも記載されており、これらのそれぞれの内容は、これらの特許の全体を参照により本願明細書に援用する。
【0048】
導電層
導電層は、形状記憶ポリマースリーブの少なくとも1つの表面上に配置される導電性材料の膜または層である。導電層はエネルギーを受け取り、さらに、そのエネルギーを導電層が接触しているあるいは重ね合わされている形状記憶ポリマーに伝えて、その形状記憶ポリマーを活性化させる。いくつかの実施形態では、導電層は、導電層が受け取るエネルギーを、形状記憶ポリマー材料を活性化させる第2のタイプのエネルギーに変換する働きもする。例えば、いくつかの実施形態では、導電層は電気エネルギーを受け取ってそのエネルギーを熱に変換し、この熱は、形状記憶ポリマー材料に伝えられて、形状記憶ポリマー材料を活性化させる。
【0049】
導電性材料は、例えば電気伝導性および熱伝導性の、1つまたは複数の導電性材料を含む。いくつかの実施形態では、導電性材料は、形状記憶材料および/または超弾性ではない。代表的な材料には、例えば金、銀、白金、タングステンなどの金属、これらの金属の合金、セラミック、カーボン、および、導電性インクが含まれる。いくつかの実施形態では、導電層は薄い層(例えば、約2、1、0.5、0.2または0.1ミリ厚以下)であ
り、導電層が付けられた形状記憶ポリマーが形状変化するときに完全性を維持することができるように任意選択で柔軟性を有する。いくつかの実施形態では、導電層は、形状記憶ポリマーの100%より少ない部分を活性化させる(例えば、形状記憶ポリマースリーブの約50%、40%、33%、30%、20%または10%以下の部分を活性化させる)ために形状記憶ポリマーの選択された部分に付けられる。したがって、導電層は、形状記憶ポリマーの全体より少ない部分(例えば、約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%または10%以下)が活性化されて形状変化するように構成されてよい。
【0050】
製造方法
本明細書に記載する形状記憶ポリマー構造体は、種々の手法によって形成されてよい。例えば、SMP構造体は、押出し、同時押出し、例えば射出成形、共成形、圧縮成形といった成形、および/または、鋳造によって形成されてよい。開口部は、レーザーアブレーションによって、あるいは、構造体が鋳造されるときに構造体の壁に穴を形成することによって形成されてよい。構造体がカテーテルまたは他の器具と一体の部品である場合、器具は、上記の手法のいずれかによって形成されてよく、あるいは別法として、例えば接着剤または突合せ溶接などの溶接によりカテーテルなどの器具の一部分に形状記憶ポリマーを取り付けることによって形成されてもよい。
【0051】
導電層は、例えばスパッタコーティング、メッキ、電気メッキ、静電塗装、マスキング、パッド印刷、フォイルの取付け、箔押し、スリーブのリングまたは型打部分の据込みまたは圧縮、などの種々の手法によって、ならびに/あるいは、マイクロビードを塗布することによって、付けられる。導電層は、構造体の所望の活性化形状を実現するために形状記憶ポリマー構造体の選択された領域に付けられてよい。いくつかの実施形態では、導電層は、導電層の柔軟性および/または膨張性の向上を可能にするための開口部、スロット、または、他の切欠きを有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、電気接点は、電極を取り付けるための導電層の中またはその上に位置される。電極は、エネルギー供給源から導電層に電気を送る働きをする。いくつかの実施形態では、導電性被膜物は連続している。すなわち、被膜物の層全体が、単一の供給源からのエネルギーを導電層全体に伝えるために相互接続される。単一の電極は、形状記憶ポリマーの複数の区間を付勢および活性化させる働きをすることができる。別の実施形態では、接続されていない複数の導電層が使用されてよく、1つの電極が、それぞれの区間を別個に付勢するために各導電層に接続されている。導電層は、各層が選択的に付勢されるのを可能にするために絶縁されてもよい(例えば、非導電性ポリマーまたはセラミック層を用いて)。
【0053】
いくつかの実施形態では、導電性層は、程度の異なる導電性を有する異なる導電性材料を含んでよい。これらの異なる材料は、形状記憶ポリマーの異なる部分に適用されてよく、さらに、エネルギーが1つの材料から別の材料へと伝わることができるように相互接続されてよい。これらの材料は、例えば程度の異なる抵抗を有してよく、さらにそれにより加熱速度が異なっていてよく、その結果、形状記憶ポリマーを活性化させるのに十分な量の熱に到達するまでにより多くの時間を必要とする可能性がある、第2の導電性材料が重ね合わされている形状記憶ポリマーを活性化させずに、これらの異なる材料のうちの1つが重ね合わされている形状記憶ポリマーを活性化させるのに十分な時間だけ単一の電極によりエネルギーが供給されてよい。それにより、2段階の形状変化が実現される。さらに異なる導電性材料を使用することにより、3段階、4段階、5段階、またはそれ以上の段階の形状変化を可能にすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーは、例えば既存の医療器具に統合されると
いった具合に、医療器具に組み込まれる。例えば、形状記憶ポリマーの100%より少ない部分を覆っておりさらにそれにより形状記憶ポリマーの100%より少ない部分を活性化させることができる導電層を有する形状記憶ポリマーを含む一区間がカテーテル材料自体に組み込まれるように、カテーテルが構成されてよい。いくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーは、例えば同軸上の2つのカテーテルシステムの内側カテーテルと外側カテーテルとの間に配置されるといった具合に別のシステムのカテーテルに組み込まれる独立した器具である。
【0055】
多くの実施形態を説明してきたが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、上に導電層を備える2つ以上の個別のSMP部分を有する実施形態では、導電層はそれぞれが、上に導電層が存在する形状記憶ポリマーを活性化させるためのエネルギーを供給するために、これらの導電層に取り付けられた、独立しており個別にアドレス指定できるワイヤを有する。別法としてあるいは加えて、複数の導電層は、薄いストリップ状の導電層によって相互接続されてよく、その結果、単一セットのワイヤで複数の導電層を付勢することができるようになる。
【0056】
上述した固定機構のいずれも、固定機構が固定状態にある場合にスリーブの一方の側から他方の側へ流体が通過するのを可能にする穴、スロット、または他の開口部をその中に有することができる。別法としてあるいは加えて、スリーブは、流体を通過させるためのチャネルまたは他の場所をそのままの状態にしながらスリーブの全周より少ない部分に跨って外方向に膨張するように構成されてよい。
【0057】
別の実施例では、いくつかの実施形態においては形状記憶ポリマー構造体の活性化前の横方向断面が円形である一方、いくつかの実施形態ではその横方向断面は非円形である。例えば、SMP構造体は、楕円形、または、例えば正方形、五角形、六角形、八角形といった多角形であってよい。同様に、形状記憶ポリマー構造体の活性化される部分の活性化後の横方向断面も非円形(例えば、楕円形または多角形)であってよい。
【0058】
いくつかの実施形態においては形状記憶ポリマー構造体の壁は単層のみを有する一方で、いくつかの実施形態では壁は例えば2つ、3つ、5つまたは7つの層といった具合に2つ以上の層を有する。各層は同じ材料で作られていてよく、あるいは各層は異なる材料で作られていてもよい。
【0059】
示してきたいくつかの構造体は長手方向に一定の肉厚を有するが、一方で、いくつかの実施形態では、肉厚が長手方向において一定ではない。肉厚を変化させることにより横方向の柔軟性が向上し、これにより、構造体を例えばかなり湾曲した管腔および空洞を通して送出することが可能となる。
【0060】
示してきたいくつかの構造体は横方向に一定の肉厚を有するが、一方で、いくつかの実施形態では、肉厚が横方向において一定ではない。
上述した形状記憶ポリマーは熱エネルギーによって活性化されるが、いくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーを活性化させるのに例えば光エネルギーといった別の形態のエネルギーが使用されてよい。この場合、導電層は、その別の形態のエネルギーを伝達するか、あるいは、導電層に供給されるエネルギーをその別の形態のエネルギーへと変換する。
【0061】
複数の要素を含有する形状記憶ポリマーをスリーブとして説明してきたが、形状記憶ポリマーはスリーブの形態または形状である必要はなく、代わりに、例えばスリーブの一部分の形態であってもよい。
【0062】
形状記憶ポリマー構造体は、導電層に接触する複数の側面を有する1つまたは複数の部分を含んでよい。例えば、SMP構造体(上述したスリーブ、フィルター、および操縦可能カテーテルなど)は、第1の導電層で覆われた第1の側面と、第2の導電層で覆われた反対側の第2の側面とを有してよい。第1および第2の導電層は、SMP構造体を第1の形状から第2の形状へと変化させるためにあるいは第2の形状から第1の形状に戻るように変化させるために、選択的に活性化されてよい。
【0063】
さらなる別の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1A】第1の状態にある、形状記憶ポリマーを含むスリーブの1実施形態の斜視図。
【図1B】第2の状態にある図1の形状記憶ポリマーの斜視図。
【図2A】形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の断面図。
【図2B】形状記憶ポリマーが第1の状態にある、図2Aのバルーンカテーテルの詳細図。
【図2C】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図2Aのバルーンカテーテルの詳細図。
【図3A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図3B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図3Aのバルーンカテーテルの断面図。
【図4A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図4B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図4のバルーンカテーテルの断面図。
【図5A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図5B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図5Aのバルーンカテーテルの断面図。
【図6A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図6B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図6Aのバルーンカテーテルの断面図。
【図7A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図7B】線7B−7Bに沿った、図7Aのカテーテルの断面図。
【図7C】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図7Aのカテーテルの断面図。
【図8A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図8B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図8Aのカテーテルの断面図。
【図9A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図9B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図9Aのカテーテルの断面図。
【図10A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図10B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図10Aのカテーテルの断面図。
【図11A】身体血管内で使用中の管腔フィルターシステムの1実施形態の断面図。
【図11B】身体血管内で使用中の管腔フィルターシステムの1実施形態の断面図。
【図11C】身体血管内で使用中の管腔フィルターシステムの1実施形態の断面図。
【図12】形状記憶材料の形状記憶を可能にする方法の1実施形態のフローチャート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶材料を含むカテーテルなどの医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガイドワイヤ、カテーテルおよび医療用チューブなどの血管内医療器具は、医師が脈管形成術およびステントの送出などの医学的処置を行うことを可能にする。場合によっては、器具は、患者の都合のよい部位の血管系に挿入され、その後、例えば押し込まれるなどして血管系を通って標的部位まで送られる。血管系を経由する標的部位までの器具が通る経路は比較的蛇行している場合があり、例えば、頻繁に方向を変えるための器具が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ある種の状況においては、器具が比較的良好な追従性を有し、器具が蛇行経路に沿って移動できることが望ましい。同時に、器具が良好な押し込み性を有し、近位側から器具に加えられる力を器具を送出するために遠位側に伝えることができることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1態様では、形状記憶ポリマーを含む1つまたは複数の区間を有する医療器具が用意される。形状記憶ポリマーは、その一部分において導電層を有する。上に導電層を有する形状記憶ポリマーのこの部分は、導電層を付勢する(例えば、電流または熱を加える)ことによって活性化されてよく、このとき、これらの部分は形状変化することができ、一方、形状記憶ポリマーの残りの部分は活性化されずに元の形状のままである。
【0005】
形状記憶ポリマーの一部を選択的に活性化させる機能は、多くの目的に使用されてよい。例えば、形状記憶ポリマーの固定スリーブを2つの部材からなるカテーテルの内側部材と外側部材との間に配置することができる。活性化されていない状態において、固定スリーブはこれらの部材の一方のみと接触することができ、上に導電層を有する部分が活性化されると、これらの部分は他方の部材に接触するように形状変化することができ、その結果、外側部材および内側部材が互いに対して固定され、カテーテルの剛性が増す。
【0006】
別の実施例では、カテーテルはその遠位端に形状記憶ポリマーを有することができる。この形状記憶ポリマーは、部材の周囲周りを延在してしない部分の上に導電層を有してよく、その結果、活性化されると、活性化された部分が形状変化し(例えば、伸長する)、カテーテルが伸長部分の反対方向へ向くようになる。
【0007】
別の実施例では、管腔フィルターシステムが、管状部材を囲む形状記憶ポリマースリーブを有することができる。この形状記憶ポリマースリーブは穴(例えば、メッシュ状であってよい)を有することができ、遠位部分上に導電層を有することができる。活性化されていない場合、形状記憶ポリマースリーブは管状部材に接触して位置する。活性化された場合、遠位部分は伸長する(例えば、その結果、管腔壁を押圧するあるいはその中に押し入る)ことができるが、形状記憶ポリマースリーブの近位端は管状部材に接触するように位置したままである。したがって、形状記憶ポリマースリーブは管腔を通る流体を濾過するように機能することができ、そこを通るデブリを捕捉する。所望の場合、導電層に供給されるエネルギーは、形状記憶ポリマーの遠位部分の活性化を停止するために止められてよく、そうすることにより、形状記憶ポリマーの遠位部分が元の位置に戻ることができ、管状部材と接触するように位置される。このことにより、濾過された物質を効果的に封じ
込めることができ、これらの物質は管状部材に接触した状態で保持され、管状部材と共に管腔から除去することが可能となる。
【0008】
別の態様では、少なくともその一部分に形状記憶材料ではない導電層を有する形状記憶ポリマーを含む医療器具が用意される。
別の態様では、形状記憶ポリマーを含む遠位部分を有するカテーテルが用意される。この形状記憶ポリマーの表面の少なくとも一部分上に導電層がある。
【0009】
別の態様では、カテーテルが用意される。このカテーテルは、外側部材、内側部材、および、外側部材と内側部材との間に配置される構造体を含む。この構造体は、形状記憶ポリマーと、この形状記憶ポリマー上にある導電性材料とを含む。
【0010】
実施形態は、1つまたは複数の以下の特徴を含んでよい。
導電性材料は、形状記憶ポリマーの100%より少ない(例えば、50%より少ない)部分を活性化させるように構成されてよい。導電性材料は、形状記憶ポリマーの全長より少ない部分に跨って延在してよい。導電性材料は、形状記憶ポリマーの全周より少ない部分に跨って延在してよい。
【0011】
形状記憶ポリマーは、上に導電層を有する複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、または、それ以上)の区間を有してよい。導電層の複数の区間は、同じエネルギー供給源により各々が活性化することができるように接続(例えば、電気的接続)されてよい。複数の区間は接続されてなくてよく、各々の区間がエネルギー供給源と個別に接続されており、例えば、1つまたは複数の区間が、別の1つまたは複数の区間とは別個に付勢されてよい。
【0012】
形状記憶ポリマーは、活性化されたときに形状、サイズおよび/または寸法を変化させるように構成されてよい。形状記憶ポリマーは、活性化されたときにより大きな径へと膨張するように構成されてよい。形状記憶ポリマーは、活性化されたときに概略波形形状から概略非波形形状(またはその逆)へと変化するように構成されてよい。形状記憶ポリマーは、活性化されていないときに内側部材および外側部材のうちの1つと接触するように、さらには、活性化されたときに内側部材および外側部材のうちの残りの1つと接触するように構成される。
【0013】
実施形態は、1つまたは複数の以下の利点を有することができる。装置は、カテーテルにより高い剛性および押し込み性をもたせて固定するかあるいはカテーテルにより高い柔軟性をもたせて緩めるかの医師による選択を可能にする。装置は、カテーテルの先端を交互に曲げたり、湾曲させたり、あるいは真っ直ぐに伸ばしたりすることができることから、カテーテルの方向を変えることができる。実施形態は、単一のワイヤを使用する形状記憶ポリマーの複数の位置または領域を活性化させることを可能にし、システムの複雑さを低減しさらに/あるいはサイズを縮小する。所定の部分に導電層を付けることにより、スリーブ内で種々の異なる構成を作ることが可能となり、様々な目的を実現することができるようになる。有利には、スリーブは、例えば、実質的に純粋な形状記憶ポリマーから形成されることにより、安価かつ迅速に製造されてよく、さらに、導電層を用いて精密に活性化する構成を実現するために、安価で、正確かつ迅速な手法が使用されてよい。
【0014】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付図面および以下の説明に記載されている。他の態様、特徴および利点は、説明、図面、および、特許請求の範囲より明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、形状記憶材料を含む1つまたは複数の部分を有する構造体を特徴とし、この構造体は、1つまたは複数の所定の形状になるように選択的に活性化されてよい。
図1Aおよび1Bを参照すると、形状記憶ポリマー(「SMP」)構造体(図1にスリーブ1として示す)が、管状部材9と、管状部材の外側の第1の部分3に付けられる導電層または被覆物4(例えば、金)とを含む。管状部材9は、熱などのある刺激を受けたときに第1の形状から第2の所定形状へ移行することができる形状記憶ポリマー(例えば、ポリシクロオクテン)を含む(例えば、この形状記憶ポリマーで形成される)。管状部材9は、第2の部分2と、導電層4が上に付けられていない第3の部分6とをさらに含む。導電層4は、ワイヤ8により、導電層にエネルギーを送ることができるエネルギー供給源5(定電流源など)に接続される。エネルギーは導電層4を加熱することができ、それにより、管状部材9の第1の部分3が加熱され、形状記憶ポリマーを第1の形状(図1A)から第2の形状(図1B)へと変化させることができる。導電層4を含まない第2の部分2および第3の部分6は、実質的に形状を変化させない。したがって、管状部材9は、選択的に形状を変化させるように構成される選択部分(すなわち、以下で説明する部分)と、形状を変化させない1つまたは複数の部分とを含む。所定の部分に導電層4を付けることにより、様々の構成を作ることが可能となり、様々な目的を実現することができるようになる。以下で説明するように、スリーブ1などの構造体は、医療器具の性能を向上させるために医療器具に付け加えられてよい。例えば、形状記憶ポリマー構造体は、蛇行する血管構造を通るカテーテルの方向を変えるためのステアリング機構において、ならびに、身体管腔内で流体を濾過するためのフィルターにおいて、カテーテル用の固定装置として使用されてよい。
【0016】
固定装置
図2A、2Bおよび2Cに、バルーンカテーテルの剛性を選択的に変化させる機構として機能するスリーブ1を含むバルーンカテーテル50を示す。バルーンカテーテル50は、外側部材60と、外側部材を少なくとも部分的に囲む内側部材62と、外側および内側部材60、62によって運ばれる膨張可能なバルーン63とを含む。示すように、スリーブ1は、バルーン63の近位側において外側部材60と内側部材62との間で外側部材60に固定される(例えば、レーザ接合または接着剤接合により)。いくつかの実施形態では、スリーブ1は、外側部材60内で締りばめを形成するのに十分な大きさの直径を有しており、外側部材60との接合を必要としなくてもよい。スリーブ1の導電層4は、ワイヤ(図示せず)により、エネルギー供給源5(図示せず)と電気的に接続される。ワイヤは、外側部材60と内側部材62との間で近位側に延在していてよく、ならびに/あるいは、外側および内側部材60、62の1つまたは両方に埋め込まれていてよい。
【0017】
スリーブ1は、バルーンカテーテル50の剛性を変化させるために、第1の形状から第2の形状へ形状変化することができる。より具体的には、図2Bを参照すると、第1の緩められた形状では、スリーブ1の外側表面58が外側部材60の内側表面61に当接しており、スリーブは内側部材62には接触しない。外側および内側部材60、62は結合されておらず、バルーンカテーテル50は、蛇行経路を辿ることができるように比較的柔軟性がある。図2Cを参照すると、導電層4にエネルギーを加えることにより、第1の部分3の形状記憶ポリマーが第2の所定形状へと変化するが、この形状では、第1の部分3の内側表面53が内側カテーテル62の外側表面63にしっかりと接触するまでポリマーの直径が縮小する。その結果、スリーブ1が外側部材60を内側部材62に結合させるあるいは固定し、外側部材に対する外側部材の動きを縮小させる。外側および内側部材60、62を一体に固定することにより、外側および内側部材60、62が強化され、さらには、バルーンカテーテル50がより剛性になり、さらには、例えばバルーンカテーテルが狭い開口部を通って押し込まれるときに有効であるバルーンカテーテルの押し込み性が向上する。したがって、スリーブ1により、バルーンカテーテル50の剛性を選択的に変化させることが可能となる。
【0018】
いくつかの実施形態では、外側部材60と内側部材62との間での結合または固定を強化するために、管状部材9および/または内側部材62用の材料は、管状部材9と内側部材62との間の摩擦を強めるように選択される。高摩擦材料の例には、硬度の低いナイロン、ウレタンおよびポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標)(ペバックス)ポリマー)が含まれる。管状部材9および/または内側部材62は高摩擦材料で形成されてよく、さらに/あるいは、高摩擦材料は、管状部材9および/または内側部材62の1つまたは複数の接触表面上を覆ってよい。
【0019】
別の実施形態では、SMP構造体は、2つの以上の部分に付けられる導電層を有するように構成され、その結果、2つ以上の部分が選択的に形状変化できるようになる。例えば、図3Aおよび3Bに、カテーテル50に類似したバルーンカテーテル51内のスリーブ70を示す。スリーブ70は、第1の部分72と、第2の部分74と、第3の部分76とを有するSMP管状部材71を含む。第2の部分74は外側部材60に固定される。スリーブ70は、第1および第3の部分72、76の内側表面79上に導電層75を有する。第1の緩められた位置では、スリーブ70の外側表面78が外側部材60の内側表面61に当接しており、スリーブは内側部材62に接触しない。導電層75を介して活性化されると、第1および第3の部分72、76の形状記憶ポリマーが形状変化し、さらに、導電層75が内側部材62の外側表面63に接触するまで直径が縮小され、それにより、外側および内側部材60、62が固定され、バルーンカテーテル51の剛性が向上する。
【0020】
スリーブ1、70が、スリーブの周囲を完全に囲むように延在する導電層を有する一方で、別の実施形態では、導電層はスリーブの周囲を完全に囲むようには延在していない。図4Aおよび4Bに、カテーテル49に類似したバルーンカテーテル内のスリーブ85を示す。スリーブ85は、SMP管状部材81と、管状部材の選択された第1の部分86上を長手方向に延在する複数の導電層88とを有する。導電層88はスリーブ85の周囲に沿って互いに間隔があいており、管状部材81が、上に導電層を有していない、長手方向に延在する第2の部分87を有する。第2の部分87は内側部材62に固定されている。第1の緩んだ位置では、スリーブ85は内側部材62に接触して隣接している(図4A)。導電層88にエネルギーが加えられると、第1の部分86の形状記憶ポリマーが活性化されて外側部材60の内側表面61に接触するように膨張し(図4B)、それにより、外側および内側部材60、62が互いに固定されるが、一方で、外側部材60と内側部材62との間の管腔98を通って長手方向に通過する流体のためのチャネル95、96はそのままである。
【0021】
SMP構造体は別の形状に変化することができる。例えば、図5Aおよび5Bに、第1の位置にあるスリーブおよび導電層188の周りを円周方向に延在する第1の部分186を有するSMPスリーブ185を示す。SMPスリーブ185は、活性化されたときに断面が多角形形状(示すように、断面が正方形形状)になるように構成され、角189が外側カテーテル60の内側表面61に接触する。上に導電層を有していないスリーブ185の他の部分は内側カテーテル62に接触したままである。その結果、スリーブ185が、外側および内側部材60、62を一体に固定することができ、一方で、外側部材60と内側部材62との間の管腔198を長手方向に通過する流体のためのチャネル195はそのままである。
【0022】
別の実施形態では、内側部材および/または外側部材が、形状記憶ポリマーと、別個のスリーブを必要することなく内側部材と外側部材とを互いに固定することを可能にする導電性被膜物とを有する区間を含む。図6Aおよび6Bに、外側部材102および内側部材104を含むカテーテルシステム100を示す。内側部材104は、形状記憶ポリマーを含む固定区間106を有する。固定区間106は、第1の部分110と、第2の部分11
2と、第3の部分114とを有する。第2の部分112はその上に導電層120を有する。活性化されていないとき、内側部材104は標準的な管状であり、外側部材102には接触しない。導電層120にエネルギーが加えられたとき、第2の部分112の形状記憶ポリマーが活性化されて膨張して外側部材102の内側表面103に接触し、それにより、上述した方式と類似の方式で内側部材102と外側部材104とが互いに固定される。別法としてあるいは加えて、外側部材102は、内側に動いて内側部材104に接触することができる導電層を有するSMP部分を含むことができる。
【0023】
さらに別の実施形態を作ることもできる。例えば、SMPスリーブは2つの部分を有することができ、これらのうちの1つが、活性化されたときに外側部材の内側表面に接触することができ、これらのうちの他方が、活性化されたときに内側部材の外側表面に接触することができる。いくつかの実施形態では、SMPスリーブが、複数の部分(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10個、あるいはそれ以上の部分)を有することができ、1つのおきの部分がそれら自体に付けられる導電層を有し、その結果、活性化されたときに、それぞれの部材が複数の点で接触して、カテーテルの径方向の剛性が向上し、さらに、カテーテルが内側に向かう径方向の圧力に対してつぶされない形状に維持される。
【0024】
形状記憶ポリマースリーブは一定範囲のサイズを有してよい。例えば、つぶれた位置(例えば、第1の形状)にあるスリーブは、例えば、約3mmから約75mmまでの長さL1と、約0.1mmから約20mmまでの外径OD1と、約0.002mから約1.0mmまでの肉厚W1とを有してよい。用途に応じて、膨張位置(例えば、第2の形状)にある形状記憶ポリマースリーブの活性化された部分は、例えば、OD1の約1.2倍からOD1の約3倍までの外径OD2と、W1の約0.5倍からW1の約0.9倍までの肉厚W2とを有してよい。以下で説明するように、いくつかの実施形態では、さらなる膨張後において、第2の膨張位置(例えば、第3の形状)にある形状記憶ポリマースリーブの一区間は、OD2の約1.2倍からOD2の約3倍までの外径OD3と、W2の約0.5倍からW2の約0.9倍までの肉厚W3とを有してよい。
【0025】
ステアリングスリーブ
形状記憶ポリマーの選択された部分(複数可)を活性化させることができる導電層を有する形状記憶ポリマーを含む構造体は、操縦可能カテーテルを形成するのに使用されてもよい。図7Aおよび7Bに、遠位部分204を有する部材202を含む操縦可能カテーテルを示す。形状記憶ポリマースリーブ208が部材202の遠位部分204を囲む。示すように、導電層210が、実質的に形状意記憶ポリマースリーブ208の長さだけ長手方向に延在しさらに形状記憶ポリマースリーブ28の一部分の周りだけ円周方向に延在する形状記憶ポリマー208の区間212上に重ねられる(例えば、区間212を覆う)。導電層210は、近位側においてエネルギー供給源まで延在するワイヤ(図示せず)に接続される。導電層210にエネルギーが加えられると、導電層210が重ね合わされている区間212が活性化されて、記憶された湾曲形状に変化する。この活性化は、図7Cに示すように部材202の遠位部分204の方向を上記区間が活性化された方向の反対方向へ変えるのに十分な力を有する。いくつかの実施形態では、この区間は、この区間が位置する方向に結果としてカテーテルを向けることができるような記憶内の形状を有することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、導電層210は、形状記憶ポリマースリーブ208の周囲周り(例えば、スリーブ208が円筒管の形態の場合は円周)の約90%以下だけ延在し(例えば、形状記憶ポリマースリーブの周囲周りの約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下または約40%以下)、さらに/あるいは、形状記憶ポリマースリーブの周囲周りの約30%以上だけ延在する(例えば、形状記憶ポリマースリーブの周囲周
りの約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上または約80%以上)。別の実施形態では、導電層210は、形状記憶ポリマースリーブ208の周囲周りを約100%延在してよい。形状記憶ポリマースリーブ208の記憶形状を湾曲させるまたはそれに角度をつけることよって、あるいはその他には、カテーテルの方向を変化させるように上記記憶形状を構成することによって、方向付けが可能となる。
【0027】
操縦可能なカテーテルの別の実施形態を形成することができる。例えば、図8Aおよび8Bに、遠位部分229を有する部材227の含む操縦可能カテーテル225を示す。形状記憶ポリマースリーブ230は、部材227の遠位部分229を囲む。形状記憶ポリマースリーブ230は、ペーパーランタンによく似た波形である。導電層240が、実質的に形状記憶ポリマースリーブ230の長さだけ長手方向に延在しさらに形状記憶ポリマースリーブ230の一部分のみの周りを円周方向に延在する、形状記憶ポリマースリーブ230の区間232上に重ねられる(例えば、区間232を覆う)。導電層にエネルギーが加えられると、導電層240が重ね合わされている区間232が活性化されて、記憶された概略直線形状に変化し、その結果、波形がある程度まで真っ直ぐあるいは平坦になる。この活性化は、図8Bに示すように部材227の遠位部分229の方向を区間232が活性化された方向の反対方向へ変えるのに十分な力を有する。形状記憶ポリマースリーブ230の反対側の波形性質は、いくつかの実施形態においては、スリーブ230自体をさらに波形にする、折り曲げる、あるいは渦巻き状にしてその全長を効果的に短くするのに十分な柔軟性を有しており、これは、部材227を湾曲させるときに助けとなる。いくつかの実施形態では、区間232は、区間232が位置する方向に結果としてカテーテルを向けることができる記憶内の形状を有することができる。
【0028】
形状記憶ポリマースリーブ230は、いくつかの実施形態では、例えば長手方向長さの増加および/または縮小を可能にするあるいは促進することによりスリーブの湾曲化を促進または可能にするように構成されてよい。例えば、スリーブは、膨張可能および/または収縮可能な構成に切断されてよい(例えば、スリーブの円周の一部分またはすべての周りを延在するリリーフオープニング(relief opening)を有する)。スリーブは、屈曲することを可能にする一連の隆起部を有してよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、カテーテルの遠位先端部に位置するあるいはその近傍に位置するステアリング区間を有しており、このステアリング区間は、長手方向に延在するステアリング区間の一部分に沿って延在するがステアリング区間の円周の周りには延在しない導電層を有する形状記憶ポリマーを含む。形状記憶ポリマーは活性化されたとき伸長し、その結果、活性化により円周の一部分が長くなり、カテーテルがその長くなった部分の反対方向に押し込まれる。例えば、図9Aおよび9Bに、形状記憶ポリマーを含む遠位部分254を有する操縦可能カテーテル250を示す。導電層260が、実質的に遠位部分254の長さだけ長手方向に延在しさらに遠位部分254の全周より少ない部分の周りを延在する、遠位部分254の形状記憶ポリマーの区間256上に重ねられる(例えば、区間232を覆う)。導電層にエネルギーが加えられると、導電層が重ね合わされている区間256が活性化されて、記憶された湾曲形状に変化する。この活性化は、図9Bに示すようにカテーテル250の遠位部分254の方向を上記区間が活性化された方向の反対方向へ変えるのに十分な力を有する。いくつかの実施形態では、この区間は、この区間が位置する方向に結果としてカテーテルを向けることができるような記憶内の形状を有することができる。
【0030】
導電層は、いくつかの実施形態では、遠位部分の周囲周りの約90%以下だけ延在し(例えば、遠位部分の周囲周りの約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下または約40%以下)、さらに/あるいは、遠位部分の周囲周りの約30%以上だけ延在する(例えば、遠位部分の周囲周りの約40%以上、約50%以上、約60%以上、約
70%以上または約80%以上)。別の実施形態では、導電層210は、形状記憶ポリマーを含む遠位部分254の周囲周りを約100%延在してよい。遠位部分254内の形状記憶ポリマーの記憶形状を湾曲させるまたはそれに角度をつけることよって、あるいはその他には、カテーテルの方向を変化させるように上記記憶形状を構成することによって、方向付けが可能となる。
【0031】
図10Aおよび10Bに、形状記憶ポリマーを含む遠位部分274を有する操縦可能カテーテル270の別の実施形態を示す。導電層280が、実質的に遠位部分274の長さだけ長手方向に延在しさらに遠位部分274の全周より少ない部分の周りを延在する、遠位部分274の区間276上に重ねられる(例えば、区間256を覆う)。導電層にエネルギーが加えられると、導電層280が重ね合わされている区間276が活性化されて、記憶された形状に変化し、カテーテル先端部を区間276に向かって効果的に引っ張るような波形になる。
【0032】
管腔フィルター
形状記憶ポリマーの選択された部分(複数可)を活性化させることができる導電層を有する形状記憶ポリマーを含む構造体は、管腔フィルターを形成するのにも使用されてよい。例えば、図11A〜Cに示すように、管腔フィルターシステム300は、自体の外側表面313上に導電層320を備える第1の部分312と、外側表面315上にある、導電層を有していない第2の部分314とを有する形状記憶ポリマーフィルターチューブ310を含む。少なくとも形状記憶ポリマーフィルターチューブ310の第1の部分312は、粒子状物質を保持しながら流体を通過させることを可能にするように構成される。例えば、形状記憶ポリマーフィルターチューブ310の第1の部分312は、流体を通すことができる複数の開口部を有するスクリーン、メッシュ、またはその他の構成になるように形成されてよい。開口部は、いくつかの実施形態では、約60μm以下(例えば、幅が、約50μm以下、約40μm以下、または、30μm以下)であってよく、さらに/あるいは、幅が約20μm以上(例えば、幅が、約30μm以上、40μm以上、または、50μm以上)であってよい。形状記憶ポリマーフィルターチューブは、血管治療器具(図示せず)を通過させることができる管腔332を有するカテーテル330の周りに配置される。
【0033】
使用中、管腔フィルターシステムが血管342の血管管腔340に挿入されて、所望の位置、例えば、血液の流れ方向において血管342内の閉塞物350の下流に配置される(図11A)。このように配置することにより、形状記憶ポリマーフィルターチューブ310の第1の部分312を活性化させるために導電層320エネルギーを供給することが可能となり(例えば、ワイヤ(図示せず)によって)、それにより、図11Bに示すように、第1の部分312が概略円錐形状になるように外側に向かって開き、一方で、第2の部分314はカテーテル330に隣接したままである。血液は、形状記憶ポリマーフィルターチューブ310の第1の部分312内の穴を通って流れることができる。任意選択で、遠位先端部362(例えば、閉塞物350に穴をあけることができるように構成される)を有するワイヤ360がカテーテル330の管腔332に挿入されてよく、これは、カテーテル330の遠位端334から離れるように延在するために遠位方向へ延在してよい。その後、ワイヤ360は閉塞物350に穴をあけるのに使用されてよく、一方で、活性化された形状記憶ポリマーフィルターチューブは、大きすぎて形状記憶ポリマーフィルターチューブの穴を通過することができない閉塞物の粒子354を捕集する。
【0034】
例えば、血管のさらなる治療のためにステント送出装置が閉塞物を通過することが可能であるような十分なサイズの通路が形成されるといった具合に、所望される程度まで閉塞物350が処理されると、導電層320へのエネルギーの供給は停止されてよく、さらに、図11Cに示すように、第2の形状記憶ポリマー構造体(図示せず)が活性化されて、
管腔フィルターシステムを元の形状に戻すように変形させることができるようになり、さらには、濾過された閉塞物の粒子354を捕集することができるようになる。管腔フィルターシステム300は、その後、封じ込められた閉塞物の粒子354と共に血管管腔340から除去されてよい。
【0035】
形状記憶ポリマー
本明細書に記載する装置は、第1の形状になることができさらにエネルギーを加えられることにより活性化されて第2の形状になることができるポリマー材料である形状記憶ポリマーを利用する。いくつかの実施形態では、活性化のためのエネルギーは熱エネルギーであり、この熱エネルギーにより、ポリマーは第1の温度において第1の形状になり、第2の温度まで加熱されると活性化されて異なる第2の形状になることができる。いつかの実施形態では、材料は、さらに、第2の温度より高い第3の温度まで加熱されることにより第3の形状になることができる。
【0036】
ポリマー材料は、天然ポリマー、合成ポリマー、または、天然ポリマーと合成ポリマーとの混合物であってよい。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、例えば、ゼイン、ガゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、コラーゲン、多糖、ポリヒヤルロン酸、ポリ(3−ハイドロキシアルカノアート)、アルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲン、または、これらのポリマーの混合物といった天然ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、例えば、コラーゲンの化学的誘導体、セルロースの化学的誘導体、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリアクリル酸塩、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタル酸塩、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、分解性ポリマー、ポリエステルアミド、ポリアンハイドライド、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタン、セルロース誘導体、または、これらのポリマーの混合物といった合成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は天然ポリマーと合成ポリマーとの混合物を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は架橋結合される。
【0037】
ポリマーは、例えば、ポリノルボルネン、ポリカプロラクトン、ポリエン、ナイロン、ポリシクロオクテン(polycyclooctene(PCO))、PCOとスチレン−ブタジエンゴムとの混合物、ポリビニルアセテート/ポリフッ化ビニリデン(polyvinyl acetate/polyvinylidinefluoride(PVAc/PVDF))、PVAc/PVDF/ポリメチルメタクリル樹脂(polymethylmethacrylate(PMMA))の混合物、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、トランスイソプレン、ポリカプロラクトンとn−ブチルアクリレートとの混合物、および、これらの混合物から選択されてよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の温度はほぼ室温(例えば、約15℃から約25℃、あるいは、約18℃から約21℃)であり、第2の温度は、約37℃から約55℃(例えば、約42℃から約50℃)である。
【0039】
いくつかのポリマーは、25℃(ASTM D638M)において、約4219kgf/cm2(60,000psi)または約4922kgf/cm2(70,000psi)以上、例えば約7031kgf/cm2(100,000psi)から約17580kgf/cm2(250,000psi)以上、例えば約17580kgf/cm2(250,000psi)から約35160kgf/cm2(500,000psi)以上、例えば約35160kgf/cm2(500,000psi)から約70310kgf/cm2(1,000,000psi)以上の弾性率を有してよい。
【0040】
多形状記憶ポリマー
いくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーは、その記憶内に、例えば3つ、4つ、5つ、6つあるいはそれ以上の異なる形状といった具合に複数の形状を記憶することができる。例えば、3つの形状を記憶することができる形状記憶ポリマーは、それぞれが異なる遷移温度を有する3つの別個の区間を有することができる。図12に示した実施形態などのいくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーのポリマー材料502は、ハードセグメント(H)および2つの別個のソフトセグメント(S1およびS2)を有することができ、それぞれのセグメントは異なる遷移温度を有する。第1のソフトセグメント(S1)はハードセグメント(H)のTtransより低く(少なくとも10℃低い)さらに第2のソフトセグメント(S2)のTtransより高い(少なくとも10℃高い)Ttransを有してよい。この合成物は、ステップ504でハードセグメント(H’)のTtransより高い温度まで加熱され(例えば、溶解され)、ステップ506で、例えば押し出されてあるいは成形されて第3の形状の形態に形づくられる。この形状は、ハードセグメント(H’)のTtransよりは低いが第1のソフトセグメント(S1)のTtransよりは高い第1の温度まで冷却されることによって記憶される。形状記憶ポリマー(ステップ508)スリーブを第1のソフトセグメント(S1)のTtransの温度よりは低いが第2のソフトセグメント(S2)の温度よりは高い第2の温度まで加熱して、例えば圧縮することにより、第2の形状の形態に形づくること(ステップ512)が可能となる。第2のソフトセグメント(S2)のTtransより高い第3の温度まで加熱する(ステップ512)ことにより、スリーブ(ステップ514)を第1の形状の形態に形づくることが可能となる。別の実施形態では、異なる遷移温度を有する形状記憶ポリマーの複数の層が使用されてもよい。
【0041】
使用中、導電層は、形状記憶ポリマースリーブの接触している部分のみを(さらには、接触点のすぐ近くに隣接している部分をより弱めに)加熱する。形状記憶ポリマーの覆われた部分を第2のソフトセグメント(S2)のTtransを超えるように加熱するために導電層にエネルギーが供給され、このTtransを超える時点で、覆われた部分は第1の形状から例えば固定された構成である第2の形状に変化する。導電層にさらにエネルギーを供給することにより、覆われた部分は第1のソフトセグメント(S1)のTtransを超えるように加熱され、それにより、形状記憶ポリマーが、第2の形状から、例えば長手方向の流体流れのためのチャネルを形成する固定された構成である第3の形状に移行する。
【0042】
別の実施形態では、第1のマルチブロック共重合体と第2のマルチブロック共重合体とのポリマー混合物を使用することができる。第1のマルチブロック共重合体は、例えばガラス遷移温度または融解温度といった比較的高い遷移温度(Ttrans)を有するハードセグメント(H1)と、比較的低いTtransを有するソフトセグメント(S’1)とを含む。第2のマルチブロック共重合体は、比較的低いTtransを有する別のハードセグメント(H2)と、第1のマルチブロック共重合体と同じソフトセグメント(S’1)とを含む。第1および第2のマルチブロック共重合体の両方のソフトセグメント(S’1)が同じであることから、これらのポリマーは互いに混和可能である。得られた混合物は3つの遷移温度を有しており、1つは第1のマルチブロック共重合体のハードセグメント(H1)に対するものであり、1つは第2のマルチブロック共重合体のハードセグメント(H2)に対するものであり、1つはソフトセグメント(S’1)に対するものである。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の温度は約40℃から約75℃(例えば、約55℃から約70℃)であり、第2の温度は約37℃から約55℃(例えば、約42℃から約50℃)であり、第3の温度はほぼ室温(例えば、約15℃から約25℃、あるいは、約18℃
から約21℃)である。
【0044】
ポリマーは、熱可塑性、熱硬化性、結晶質、あるいは非結晶質であってよい。例えばポリマーのセグメントまたはブロックといった、ポリマー、またはポリマーの部分は、分解性、天然、または、合成であってよい。
【0045】
天然ポリマーまたはポリマー部分には、例えば、ゼイン、ガゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、コラーゲン、多糖、ポリヒヤルロン酸、ポリ(3−ハイドロキシアルカノアート)、アルギン酸塩、デキストラン、セルロースおよびコラーゲンが含まれる。合成ポリマーまたはポリマー部分には、例えば、コラーゲンの化学的誘導体、セルロースの化学的誘導体、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリアクリル酸塩、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンテレフタル酸塩、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドンおよびポリエステルが含まれる。分解性ポリマーまたはポリマー部分には、例えば、ポリエステルアミド、ポリアンハイドライド、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびセルロース誘導体が含まれる。
【0046】
一般に、上記のポリマーのいずれも、重合中にあるいは重合後の副次的ステップにおいて架橋されてよい。ポリマーはe−ビーム、UV、ガンマ線、x線放射などの放射線を当てることによって、あるいは、アゾ化合物または例えば有機化酸化物、過酸化ベンゾイルといった過酸化物を使用した熱による化学的架橋手法によって架橋されてよい。放射線による手法は、ポリマーが、通常、架橋を実現するために実質的に加熱される必要がない、という利点を有する。e−ビーム放射の場合、通常、約200〜300キログレイ、例えば250キログレイの照射線量が十分な架橋を可能にする。
【0047】
例えばホモポリマー、ブロック共重合体、および、これらの混合物といったポリマー材料は、ランガー(Langer)による米国特許第6,388,043号明細書、第6,720,402号明細書、および、「植込み可能な医療器具、および同医療器具の送出方法(Implantable Medical Devices,and Methods of Delivering The Same)」と題されて、2004年10月10日に出願された、係争中の米国仮特許出願第11/010,129号にも記載されており、これらのそれぞれの内容は、これらの特許の全体を参照により本願明細書に援用する。
【0048】
導電層
導電層は、形状記憶ポリマースリーブの少なくとも1つの表面上に配置される導電性材料の膜または層である。導電層はエネルギーを受け取り、さらに、そのエネルギーを導電層が接触しているあるいは重ね合わされている形状記憶ポリマーに伝えて、その形状記憶ポリマーを活性化させる。いくつかの実施形態では、導電層は、導電層が受け取るエネルギーを、形状記憶ポリマー材料を活性化させる第2のタイプのエネルギーに変換する働きもする。例えば、いくつかの実施形態では、導電層は電気エネルギーを受け取ってそのエネルギーを熱に変換し、この熱は、形状記憶ポリマー材料に伝えられて、形状記憶ポリマー材料を活性化させる。
【0049】
導電性材料は、例えば電気伝導性および熱伝導性の、1つまたは複数の導電性材料を含む。いくつかの実施形態では、導電性材料は、形状記憶材料および/または超弾性ではない。代表的な材料には、例えば金、銀、白金、タングステンなどの金属、これらの金属の合金、セラミック、カーボン、および、導電性インクが含まれる。いくつかの実施形態では、導電層は薄い層(例えば、約2、1、0.5、0.2または0.1ミリ厚以下)であ
り、導電層が付けられた形状記憶ポリマーが形状変化するときに完全性を維持することができるように任意選択で柔軟性を有する。いくつかの実施形態では、導電層は、形状記憶ポリマーの100%より少ない部分を活性化させる(例えば、形状記憶ポリマースリーブの約50%、40%、33%、30%、20%または10%以下の部分を活性化させる)ために形状記憶ポリマーの選択された部分に付けられる。したがって、導電層は、形状記憶ポリマーの全体より少ない部分(例えば、約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%または10%以下)が活性化されて形状変化するように構成されてよい。
【0050】
製造方法
本明細書に記載する形状記憶ポリマー構造体は、種々の手法によって形成されてよい。例えば、SMP構造体は、押出し、同時押出し、例えば射出成形、共成形、圧縮成形といった成形、および/または、鋳造によって形成されてよい。開口部は、レーザーアブレーションによって、あるいは、構造体が鋳造されるときに構造体の壁に穴を形成することによって形成されてよい。構造体がカテーテルまたは他の器具と一体の部品である場合、器具は、上記の手法のいずれかによって形成されてよく、あるいは別法として、例えば接着剤または突合せ溶接などの溶接によりカテーテルなどの器具の一部分に形状記憶ポリマーを取り付けることによって形成されてもよい。
【0051】
導電層は、例えばスパッタコーティング、メッキ、電気メッキ、静電塗装、マスキング、パッド印刷、フォイルの取付け、箔押し、スリーブのリングまたは型打部分の据込みまたは圧縮、などの種々の手法によって、ならびに/あるいは、マイクロビードを塗布することによって、付けられる。導電層は、構造体の所望の活性化形状を実現するために形状記憶ポリマー構造体の選択された領域に付けられてよい。いくつかの実施形態では、導電層は、導電層の柔軟性および/または膨張性の向上を可能にするための開口部、スロット、または、他の切欠きを有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、電気接点は、電極を取り付けるための導電層の中またはその上に位置される。電極は、エネルギー供給源から導電層に電気を送る働きをする。いくつかの実施形態では、導電性被膜物は連続している。すなわち、被膜物の層全体が、単一の供給源からのエネルギーを導電層全体に伝えるために相互接続される。単一の電極は、形状記憶ポリマーの複数の区間を付勢および活性化させる働きをすることができる。別の実施形態では、接続されていない複数の導電層が使用されてよく、1つの電極が、それぞれの区間を別個に付勢するために各導電層に接続されている。導電層は、各層が選択的に付勢されるのを可能にするために絶縁されてもよい(例えば、非導電性ポリマーまたはセラミック層を用いて)。
【0053】
いくつかの実施形態では、導電性層は、程度の異なる導電性を有する異なる導電性材料を含んでよい。これらの異なる材料は、形状記憶ポリマーの異なる部分に適用されてよく、さらに、エネルギーが1つの材料から別の材料へと伝わることができるように相互接続されてよい。これらの材料は、例えば程度の異なる抵抗を有してよく、さらにそれにより加熱速度が異なっていてよく、その結果、形状記憶ポリマーを活性化させるのに十分な量の熱に到達するまでにより多くの時間を必要とする可能性がある、第2の導電性材料が重ね合わされている形状記憶ポリマーを活性化させずに、これらの異なる材料のうちの1つが重ね合わされている形状記憶ポリマーを活性化させるのに十分な時間だけ単一の電極によりエネルギーが供給されてよい。それにより、2段階の形状変化が実現される。さらに異なる導電性材料を使用することにより、3段階、4段階、5段階、またはそれ以上の段階の形状変化を可能にすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーは、例えば既存の医療器具に統合されると
いった具合に、医療器具に組み込まれる。例えば、形状記憶ポリマーの100%より少ない部分を覆っておりさらにそれにより形状記憶ポリマーの100%より少ない部分を活性化させることができる導電層を有する形状記憶ポリマーを含む一区間がカテーテル材料自体に組み込まれるように、カテーテルが構成されてよい。いくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーは、例えば同軸上の2つのカテーテルシステムの内側カテーテルと外側カテーテルとの間に配置されるといった具合に別のシステムのカテーテルに組み込まれる独立した器具である。
【0055】
多くの実施形態を説明してきたが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、上に導電層を備える2つ以上の個別のSMP部分を有する実施形態では、導電層はそれぞれが、上に導電層が存在する形状記憶ポリマーを活性化させるためのエネルギーを供給するために、これらの導電層に取り付けられた、独立しており個別にアドレス指定できるワイヤを有する。別法としてあるいは加えて、複数の導電層は、薄いストリップ状の導電層によって相互接続されてよく、その結果、単一セットのワイヤで複数の導電層を付勢することができるようになる。
【0056】
上述した固定機構のいずれも、固定機構が固定状態にある場合にスリーブの一方の側から他方の側へ流体が通過するのを可能にする穴、スロット、または他の開口部をその中に有することができる。別法としてあるいは加えて、スリーブは、流体を通過させるためのチャネルまたは他の場所をそのままの状態にしながらスリーブの全周より少ない部分に跨って外方向に膨張するように構成されてよい。
【0057】
別の実施例では、いくつかの実施形態においては形状記憶ポリマー構造体の活性化前の横方向断面が円形である一方、いくつかの実施形態ではその横方向断面は非円形である。例えば、SMP構造体は、楕円形、または、例えば正方形、五角形、六角形、八角形といった多角形であってよい。同様に、形状記憶ポリマー構造体の活性化される部分の活性化後の横方向断面も非円形(例えば、楕円形または多角形)であってよい。
【0058】
いくつかの実施形態においては形状記憶ポリマー構造体の壁は単層のみを有する一方で、いくつかの実施形態では壁は例えば2つ、3つ、5つまたは7つの層といった具合に2つ以上の層を有する。各層は同じ材料で作られていてよく、あるいは各層は異なる材料で作られていてもよい。
【0059】
示してきたいくつかの構造体は長手方向に一定の肉厚を有するが、一方で、いくつかの実施形態では、肉厚が長手方向において一定ではない。肉厚を変化させることにより横方向の柔軟性が向上し、これにより、構造体を例えばかなり湾曲した管腔および空洞を通して送出することが可能となる。
【0060】
示してきたいくつかの構造体は横方向に一定の肉厚を有するが、一方で、いくつかの実施形態では、肉厚が横方向において一定ではない。
上述した形状記憶ポリマーは熱エネルギーによって活性化されるが、いくつかの実施形態では、形状記憶ポリマーを活性化させるのに例えば光エネルギーといった別の形態のエネルギーが使用されてよい。この場合、導電層は、その別の形態のエネルギーを伝達するか、あるいは、導電層に供給されるエネルギーをその別の形態のエネルギーへと変換する。
【0061】
複数の要素を含有する形状記憶ポリマーをスリーブとして説明してきたが、形状記憶ポリマーはスリーブの形態または形状である必要はなく、代わりに、例えばスリーブの一部分の形態であってもよい。
【0062】
形状記憶ポリマー構造体は、導電層に接触する複数の側面を有する1つまたは複数の部分を含んでよい。例えば、SMP構造体(上述したスリーブ、フィルター、および操縦可能カテーテルなど)は、第1の導電層で覆われた第1の側面と、第2の導電層で覆われた反対側の第2の側面とを有してよい。第1および第2の導電層は、SMP構造体を第1の形状から第2の形状へと変化させるためにあるいは第2の形状から第1の形状に戻るように変化させるために、選択的に活性化されてよい。
【0063】
さらなる別の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1A】第1の状態にある、形状記憶ポリマーを含むスリーブの1実施形態の斜視図。
【図1B】第2の状態にある図1の形状記憶ポリマーの斜視図。
【図2A】形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の断面図。
【図2B】形状記憶ポリマーが第1の状態にある、図2Aのバルーンカテーテルの詳細図。
【図2C】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図2Aのバルーンカテーテルの詳細図。
【図3A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図3B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図3Aのバルーンカテーテルの断面図。
【図4A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図4B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図4のバルーンカテーテルの断面図。
【図5A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図5B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図5Aのバルーンカテーテルの断面図。
【図6A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むバルーンカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図6B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図6Aのバルーンカテーテルの断面図。
【図7A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図7B】線7B−7Bに沿った、図7Aのカテーテルの断面図。
【図7C】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図7Aのカテーテルの断面図。
【図8A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図8B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図8Aのカテーテルの断面図。
【図9A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図9B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図9Aのカテーテルの断面図。
【図10A】第1の状態にある形状記憶ポリマーを含むカテーテルの1実施形態の詳細な断面図。
【図10B】形状記憶ポリマーが第2の状態にある、図10Aのカテーテルの断面図。
【図11A】身体血管内で使用中の管腔フィルターシステムの1実施形態の断面図。
【図11B】身体血管内で使用中の管腔フィルターシステムの1実施形態の断面図。
【図11C】身体血管内で使用中の管腔フィルターシステムの1実施形態の断面図。
【図12】形状記憶材料の形状記憶を可能にする方法の1実施形態のフローチャート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶ポリマーと、
該形状記憶ポリマーの少なくとも一部分の上にある導電性材料と
からなり、
該導電性材料が形状記憶材料ではない、
医療器具。
【請求項2】
前記導電性材料が、前記形状記憶ポリマーの100%より少ない部分を活性化させるように構成される請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記導電性材料が、前記形状記憶ポリマーの50%より少ない部分を活性化させるように構成される請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記導電性材料が、前記形状記憶ポリマーの全長に沿って延在する請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記導電性材料が、前記形状記憶ポリマーからなる構造体の周囲周りを延在する請求項1に記載の器具。
【請求項6】
導電性材料が、金属、合金、セラミックおよびグラファイトからなる群から選択される請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記導電性材料が、金、銀、白金、タングステン、ステンレス鋼、金の合金、銀の合金、白金の合金、タングステンの合金、および、これらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記形状記憶ポリマーが、天然ポリマー、ゼイン、ガゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、コラーゲン、多糖、ポリヒヤルロン酸、ポリ(3−ハイドロキシアルカノアート)、アルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲン、合成ポリマー、コラーゲンの化学的誘導体、セルロースの化学的誘導体、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリアクリル酸塩、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタル酸塩、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、分解性ポリマー、ポリエステルアミド、ポリアンハイドライド、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタン、セルロース誘導体、および、これらのポリマーの混合物からなる群から選択されるポリマーからなる請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記形状記憶ポリマーが、ポリノルボルネン、ポリカプロラクトン、ポリエン、ナイロン、ポリシクロオクテン(polycyclooctene(PCO))、PCOとスチレン−ブタジエンゴムとの混合物、ポリビニルアセテート/ポリフッ化ビニリデン(polyvinyl acetate/polyvinylidinefluoride(PVAc/PVDF))、PVAc/PVDF/ポリメチルメタクリル樹脂(polymethylmethacrylate(PMMA))の混合物、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、トランスイソプレン、ポリカプロラクトンとn−ブチルアクリレートとの混合物、および、これらの混合物からなる群から選択されるポリマーからなる請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記形状記憶ポリマーがポリシクロオクテンからなる請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記形状記憶ポリマーが、100℃より低い第1のガラス遷移温度を有する請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記形状記憶ポリマーが、前記第1のガラス遷移温度より低い第2のガラス遷移温度を有する請求項11に記載の器具。
【請求項13】
前記第2のガラス遷移温度が、前記第1のガラス遷移温度より少なくとも約10℃低い請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記第1のガラス遷移温度が約37℃と約55℃との間にあり、前記第2のガラス遷移温度が約15℃と約25℃との間にある請求項11に記載の器具。
【請求項15】
前記形状記憶ポリマーが、第1の部分と、長手方向において前記第1の部分に隣接する第2の部分と、長手方向において前記第2の部分に隣接する第3の部分とからなり、前記導電性材料が該第2の部分上のみにある請求項1に記載の器具。
【請求項16】
前記形状記憶ポリマーが、第1の部分と、長手方向において該第1の部分に隣接する第2の部分と、長手方向において該第2の部分に隣接する第3の部分とからなり、前記導電性材料が、該第1の部分、該第3の部分、および、該第1の部分と該第3の部分との間のストリップの上にある請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記形状記憶ポリマーの少なくとも一部分が、第1の温度において実質的に円形の横方向断面を有し、第2の温度において非円形の横方向断面を有する請求項1に記載の器具。
【請求項18】
前記導電性材料に接続された導体をさらに有する請求項1に記載の器具。
【請求項19】
前記形状記憶ポリマーが第1の表面および第2の表面を有し、前記導電性材料が該第1および第2の表面上にある請求項1に記載の器具。
【請求項20】
形状記憶ポリマーと、該形状記憶ポリマーの表面の少なくとも一部分の上にある導電性材料とからなる遠位部分を有するカテーテル。
【請求項21】
前記形状記憶ポリマーが、第1の所定の温度において、前記カテーテルの前記遠位部分を第1の形状へと変化させるように構成される請求項20に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記形状記憶ポリマーが、第2の所定の温度において、前記カテーテルの前記遠位部分を前記第1の形状とは異なる第2の形状に変化させるように構成される請求項21に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記導電性材料が、前記カテーテルに沿って長手方向に延在しさらに前記カテーテルの一部分のみの周りを円周方向に延在する前記形状記憶ポリマーの一区間上に重ねられる請求項20に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記導電性材料が、前記カテーテルの50%より少ない部分の周りを円周方向に延在する請求項23に記載のカテーテル。
【請求項25】
前記形状記憶ポリマーが前記カテーテルの前記遠位部分の一表面上に重ねられる請求項20に記載のカテーテル。
【請求項26】
前記形状記憶ポリマーが、第1の温度では長手方向において実質的に直線形状になり、第2の温度において折れ曲がって波形になるように構成される請求項23に記載のカテーテル。
【請求項27】
外側部材と、
内側部材と、
該外側部材と該内側部材との間に配置され、形状記憶ポリマー、および、該形状記憶ポリマーの上にある導電性材料からなる構造体と
からなるカテーテル。
【請求項28】
前記構造体が、第1の温度において前記外側部材または前記内側部材のうちの1つから離れように、さらには、第2の温度において前記内側および外側部材の両方に接触するように構成される請求項27に記載のカテーテル。
【請求項29】
前記導電性材料が導体に接続される請求項27に記載のカテーテル。
【請求項1】
形状記憶ポリマーと、
該形状記憶ポリマーの少なくとも一部分の上にある導電性材料と
からなり、
該導電性材料が形状記憶材料ではない、
医療器具。
【請求項2】
前記導電性材料が、前記形状記憶ポリマーの100%より少ない部分を活性化させるように構成される請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記導電性材料が、前記形状記憶ポリマーの50%より少ない部分を活性化させるように構成される請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記導電性材料が、前記形状記憶ポリマーの全長に沿って延在する請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記導電性材料が、前記形状記憶ポリマーからなる構造体の周囲周りを延在する請求項1に記載の器具。
【請求項6】
導電性材料が、金属、合金、セラミックおよびグラファイトからなる群から選択される請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記導電性材料が、金、銀、白金、タングステン、ステンレス鋼、金の合金、銀の合金、白金の合金、タングステンの合金、および、これらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記形状記憶ポリマーが、天然ポリマー、ゼイン、ガゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、コラーゲン、多糖、ポリヒヤルロン酸、ポリ(3−ハイドロキシアルカノアート)、アルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲン、合成ポリマー、コラーゲンの化学的誘導体、セルロースの化学的誘導体、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリアクリル酸塩、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタル酸塩、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、分解性ポリマー、ポリエステルアミド、ポリアンハイドライド、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタン、セルロース誘導体、および、これらのポリマーの混合物からなる群から選択されるポリマーからなる請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記形状記憶ポリマーが、ポリノルボルネン、ポリカプロラクトン、ポリエン、ナイロン、ポリシクロオクテン(polycyclooctene(PCO))、PCOとスチレン−ブタジエンゴムとの混合物、ポリビニルアセテート/ポリフッ化ビニリデン(polyvinyl acetate/polyvinylidinefluoride(PVAc/PVDF))、PVAc/PVDF/ポリメチルメタクリル樹脂(polymethylmethacrylate(PMMA))の混合物、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、トランスイソプレン、ポリカプロラクトンとn−ブチルアクリレートとの混合物、および、これらの混合物からなる群から選択されるポリマーからなる請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記形状記憶ポリマーがポリシクロオクテンからなる請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記形状記憶ポリマーが、100℃より低い第1のガラス遷移温度を有する請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記形状記憶ポリマーが、前記第1のガラス遷移温度より低い第2のガラス遷移温度を有する請求項11に記載の器具。
【請求項13】
前記第2のガラス遷移温度が、前記第1のガラス遷移温度より少なくとも約10℃低い請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記第1のガラス遷移温度が約37℃と約55℃との間にあり、前記第2のガラス遷移温度が約15℃と約25℃との間にある請求項11に記載の器具。
【請求項15】
前記形状記憶ポリマーが、第1の部分と、長手方向において前記第1の部分に隣接する第2の部分と、長手方向において前記第2の部分に隣接する第3の部分とからなり、前記導電性材料が該第2の部分上のみにある請求項1に記載の器具。
【請求項16】
前記形状記憶ポリマーが、第1の部分と、長手方向において該第1の部分に隣接する第2の部分と、長手方向において該第2の部分に隣接する第3の部分とからなり、前記導電性材料が、該第1の部分、該第3の部分、および、該第1の部分と該第3の部分との間のストリップの上にある請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記形状記憶ポリマーの少なくとも一部分が、第1の温度において実質的に円形の横方向断面を有し、第2の温度において非円形の横方向断面を有する請求項1に記載の器具。
【請求項18】
前記導電性材料に接続された導体をさらに有する請求項1に記載の器具。
【請求項19】
前記形状記憶ポリマーが第1の表面および第2の表面を有し、前記導電性材料が該第1および第2の表面上にある請求項1に記載の器具。
【請求項20】
形状記憶ポリマーと、該形状記憶ポリマーの表面の少なくとも一部分の上にある導電性材料とからなる遠位部分を有するカテーテル。
【請求項21】
前記形状記憶ポリマーが、第1の所定の温度において、前記カテーテルの前記遠位部分を第1の形状へと変化させるように構成される請求項20に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記形状記憶ポリマーが、第2の所定の温度において、前記カテーテルの前記遠位部分を前記第1の形状とは異なる第2の形状に変化させるように構成される請求項21に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記導電性材料が、前記カテーテルに沿って長手方向に延在しさらに前記カテーテルの一部分のみの周りを円周方向に延在する前記形状記憶ポリマーの一区間上に重ねられる請求項20に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記導電性材料が、前記カテーテルの50%より少ない部分の周りを円周方向に延在する請求項23に記載のカテーテル。
【請求項25】
前記形状記憶ポリマーが前記カテーテルの前記遠位部分の一表面上に重ねられる請求項20に記載のカテーテル。
【請求項26】
前記形状記憶ポリマーが、第1の温度では長手方向において実質的に直線形状になり、第2の温度において折れ曲がって波形になるように構成される請求項23に記載のカテーテル。
【請求項27】
外側部材と、
内側部材と、
該外側部材と該内側部材との間に配置され、形状記憶ポリマー、および、該形状記憶ポリマーの上にある導電性材料からなる構造体と
からなるカテーテル。
【請求項28】
前記構造体が、第1の温度において前記外側部材または前記内側部材のうちの1つから離れように、さらには、第2の温度において前記内側および外側部材の両方に接触するように構成される請求項27に記載のカテーテル。
【請求項29】
前記導電性材料が導体に接続される請求項27に記載のカテーテル。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【公表番号】特表2009−533174(P2009−533174A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505559(P2009−505559)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/066215
【国際公開番号】WO2007/121131
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/066215
【国際公開番号】WO2007/121131
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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