説明

従動ローラ、定着装置及び画像形成装置

【課題】 簡単な構成で弾性層が破断し難く高寿命化が図れる従動ローラ。
【解決手段】 他のローラにより駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の弾性層を破断し難くして高寿命化を達成した従動ローラ、内部の弾性層を破断し難くして高寿命化を達成した加圧ローラを設けた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの諸機能を備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置においては、原稿に対応した潜像を感光体に形成し、この潜像にトナーを付与することによって顕像化し、この顕像化されたトナー像を記録紙上に転写し、この後、記録紙上に転写されたトナー像を定着して排紙している。
【0003】
また、カラー画像を形成する場合には、原稿色に対応したY,M,C,Kの潜像を4個の感光体ドラムに形成し、顕像化された4色のトナー像を無端状ベルトからなる中間転写体に一次転写した後、記録紙上に二次転写して、記録紙上に転写されたトナー像を定着して排紙している。
【0004】
このようなトナー像を定着する定着装置としては、ハロゲンランプ等を内蔵した加熱ローラと、加熱ローラに加圧する加圧ローラとの間に形成されたニップ部によって、トナー像が転写された記録紙を挟持・搬送しながら、加熱・加圧する熱ローラ定着方式の定着装置があり、このような定着装置は簡易な構成であるため、広く利用されている。
【0005】
また、無端状の定着ベルトをハロゲンランプ等を内蔵した加熱ローラと定着ローラとに張架し、定着ベルトを介して定着ローラを加圧する加圧ローラを有し、定着ベルトと加圧ローラとの間に形成されたニップ部によって、トナー像が転写された記録紙を挟持・搬送しながら、加熱・加圧するベルト定着方式の定着装置があり、このような定着装置においては、加熱ローラの肉厚を薄くでき、且つ定着ベルトの熱容量が小さいので、ウオーミングアップタイムが短縮し、省エネになる。
【0006】
近年は、単位時間当たりに多数枚の記録材を処理することができる画像形成装置が要求され、記録材の搬送速度の高速化がなされている。これに伴って、定着装置においても各ローラの回転速度を早くする必要があり、充分なニップ時間を確保するために、加圧ローラ等を大型化したり、加圧ローラの弾性層の厚みを厚くしたり、更に加圧ローラの弾性層の硬度を低くしたりするといった方策を用いて、ニップ幅を広げている。
【0007】
なお、加圧ローラは、金属製の芯金と、該芯金の外周面に付着してスポンジやゴム等からなる弾性層と、該弾性体の外周面をコーティング等によって被覆する離型層とから構成されていて、芯金をインサートして弾性層を成型することが一般に行われている。従って、芯金、弾性層及び離型層は一体的に回転する。
【0008】
ここで、充分なニップ時間を確保するために、加圧ローラ等を大型化するのは、定着装置が大型化し、延いては画像形成装置が大型化するので好ましくない。
【0009】
また、加圧ローラの外径寸法を変更しないで、加圧ローラの弾性層の厚みを厚くした場合には、弾性層の内周面側に位置する芯金の外径が小さくなる。従って、芯金の外径が小さくなるほど、ニップ部での押圧力が弾性層と芯金との境界面に集中して強く掛かる。この際に、芯金を押圧して加圧ローラを定着ローラに圧着しているので、芯金を押圧する部材と芯金との間に摩擦力が生じている。依って、加圧ローラが従動回転するときに、離型層及び弾性層は素直に従動回転するが、芯金の回転には抵抗があって、弾性層と芯金との間に剪断力が生ずる。この結果、弾性層が破断し易くなって、高寿命となり難い。
【0010】
また、加圧ローラの弾性層が例えばスポンジの場合に、その発泡倍率を低下させると、硬度も低下する。しかし、弾性層の硬度が低下すると剪断強度も低下して、同様に弾性層が破断し易くなって、高寿命となり難い。
【0011】
なお、低光沢のカラー画像を得るため、弾性層に低硬度のゴムを用いてニップ圧を低下させるようにした画像形成装置が特許文献に開示されている。この画像形成装置によれば、弾性層と離型層の間に、弾性層より硬度の高いゴムを用いた中間層を設けることにより、弾性層の破断に対して高寿命化を図っている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−19880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の画像形成装置においては、弾性層が破断し難くなるとしても、新たに中間層を設ける必要があって、複雑で高価なローラとなる。
【0013】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で弾性層が破断し難く高寿命化が図れる従動ローラ、簡単な構成で弾性層が破断し難く高寿命化が図れる加圧ローラを設けた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は下記の手段によって達成される。
【0015】
[1]他のローラにより駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていることを特徴とする従動ローラ。
【0016】
[2]前記芯金の外周面は円滑に加工されていることを特徴とする[1]に記載の従動ローラ。
【0017】
[3]前記芯金の外周面に離型剤を塗布したことを特徴とする[2]に記載の従動ローラ。
【0018】
[4]前記芯金の中心軸と前記弾性層の中心軸が偏心していることを特徴とする[1]又は[2]に記載の従動ローラ。
【0019】
[5]前記弾性層の内周面に、円筒状に形成された非弾性の支持ローラを密着させたことを特徴とする[4]に記載の従動ローラ。
【0020】
[6]前記弾性層が前記芯金に対して軸方向に移動することを規制する規制部材を設けたことを特徴とする[1]〜[5]の何れか1項に記載の従動ローラ。
【0021】
[7]所定の加熱手段によって加熱される加熱ローラと、定着ローラと、前記加熱ローラと前記定着ローラとに張架されて循環駆動される無端状の定着ベルトと、該定着ベルトを介して前記定着ローラを加圧する加圧ローラとを有し、前記定着ベルトと前記加圧ローラとの間に形成されたニップ部で記録紙上のトナー像を定着する定着装置において、前記加圧ローラは、前記定着ベルトにより駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層と、該弾性層の外周面を被覆する離型層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていることを特徴とする定着装置。
【0022】
[8]所定の加熱手段によって加熱される加熱ローラと、定着ローラと、前記加熱ローラと前記定着ローラとに張架されて循環駆動される無端状の定着ベルトと、該定着ベルトを介して前記定着ローラを加圧する加圧ローラとを有し、前記定着ベルトと前記加圧ローラとの間に形成されたニップ部で記録紙上のトナー像を定着する定着装置において、前記定着ローラは、前記加圧ローラにより前記定着ベルトを介して駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていることを特徴とする定着装置。
【0023】
[9]所定の加熱手段によって加熱された定着ローラと、該定着ローラを加圧する加圧ローラとの間に形成されたニップ部で記録材上のトナー像を定着する定着装置において、前記加圧ローラは、前記定着ローラにより駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層と、該弾性層の外周面を被覆する離型層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていることを特徴とする定着装置。
【0024】
[10]前記芯金の外周面は円滑に加工されていることを特徴とする[7]〜[9]の何れか1項に記載の定着装置。
【0025】
[11]前記芯金の外周面に離型剤を塗布したことを特徴とする[10]に記載の定着装置。
【0026】
[12]前記芯金の中心軸と前記弾性層の中心軸が偏心していることを特徴とする[7]〜[11]の何れか1項に記載の定着装置。
【0027】
[13]前記弾性層の内周面に、円筒状に形成された非弾性の支持ローラを密着させたことを特徴とする[12]に記載の定着装置。
【0028】
[14]前記弾性層が前記芯金に対して軸方向に移動することを規制する規制部材を設けたことを特徴とする[1]〜[13]の何れか1項に記載の定着装置。
【0029】
[15][7]〜[14]の何れか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の従動ローラ、請求項7〜9に記載の定着装置によれば、従動ローラ、加圧ローラ若しくは定着ローラが従動回転するときに、ローラ内部の芯金に対して弾性層が回転可能に構成されているので、芯金と弾性層の境界面に応力が集中しても、芯金に対する弾性層の滑りによって境界面に剪断力が作用せず、弾性層が境界面で破断することがないので、高寿命化が図れる。
【0031】
請求項2に記載の従動ローラ、請求項10に記載の定着装置によれば、芯金に対して弾性層が滑り易くなる。
【0032】
請求項3に記載の従動ローラ、請求項11に記載の定着装置によれば、芯金に対して弾性層がより滑り易くなる。
【0033】
請求項4に記載の従動ローラ、請求項12に記載の定着装置によれば、芯金に対して弾性層が更に滑り易くなる。
【0034】
請求項5に記載の従動ローラ、請求項13に記載の定着装置によれば、弾性層の成型がし易く、且つ、芯金に対して弾性層が更に滑り易くなる。
【0035】
請求項6に記載の従動ローラ、請求項14に記載の定着装置によれば、芯金に対して弾性層が軸方向に移動することが防止される。
【0036】
請求項15に記載の画像形成装置によれば、請求項7〜14の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に本発明に関する実施の形態を図を参照して説明する。
【0038】
先ず、本発明の定着装置を用いた画像形成装置の一例を図1の構成図に基づいて説明する。
【0039】
本画像形成装置は画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとから構成される。
【0040】
画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y,10M,10C,10K、ベルト状の中間転写体6、給紙搬送手段及び定着装置9等からなる。
【0041】
画像形成装置本体GHの上部には、自動原稿送り装置201と原稿画像走査露光装置202から成る画像読取装置YSが設置されている。自動原稿送り装置201の原稿台上に載置された原稿dは搬送手段により搬送され、原稿画像走査露光装置202の光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0042】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y,3M,3C,3Kに送られる。
【0043】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像装置4Y及びクリーニング手段8Yを配置している。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像装置4M及びクリーニング手段8Mを配置している。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体ドラム1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像装置4C及びクリーニング手段8Cを配置している。黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像装置4K及びクリーニング手段8Kを配置している。そして、帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光装置3C、及び帯電手段2Kと露光装置3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0044】
なお、現像装置4Y,4M,4C,4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。
【0045】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0046】
定着装置9は、無端状の定着ベルト91を加熱ローラ92と定着ローラ93とに張架し、定着ベルト91を介して定着ローラ93を押圧する加圧ローラ94を有し、定着ベルト91と加圧ローラ94との間に形成されたニップ部で記録材(記録紙)P上のトナー像を加熱・加圧して定着する。
【0047】
かくして、画像形成部10Y,10M,10C,10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に転写手段7Y,7M,7C,7Kにより逐次転写されて(1次転写)、カラー画像合成されたトナー像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録材Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A,22B,22C,22D,レジストローラ23等を経て、転写手段7Aに搬送され、記録材P上にカラー画像が転写される(2次転写)。カラー画像が転写された記録材Pは定着装置9において加熱・加圧され、記録材P上のカラートナー像が定着される。その後、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
【0048】
一方、転写手段7Aにより記録材Pにカラー画像を転写した後、記録材Pを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8Aにより残留トナーが除去される。
【0049】
なお、以上はカラー画像を形成する画像形成装置であったが、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってもよい。
【0050】
次に、本発明に係わる定着装置について、図2の拡大断面図に基づいて説明する。
【0051】
定着ベルト91は、無端状に形成され、例えば基体として厚さ70μmのPI(ポリイミド)等からなる耐熱性の樹脂ベルトを用い、基体の外周面を弾性層として厚さ200μmの耐熱性のシリコンゴムで被覆し、更に、離型層として厚さ30μmのPFA(パーフルオロアルコキシ)チューブで被覆している。なお、例えば外径寸法は80mmで、幅は340mmである。
【0052】
加熱ローラ92は、定着ベルト91を加熱する加熱手段としてのハロゲンランプ92Aを内蔵し、アルミニュウム等から形成された肉厚2mmの円筒状の中空回転体92Bの外周面を、耐熱性のPFAチューブ92Cで被覆し、ハードローラとして構成されている。なお、外径寸法は例えば47mmである。
【0053】
定着ローラ93は、鉄等の金属から形成された中実の芯金93Aを、厚さ4.5mmの耐熱性のシリコンゴム93Bで被覆し、更に、厚さ2.5mmのスポンジ93Cで被覆して、ソフトローラとして構成されている。外径寸法は例えば40mmである。
【0054】
加圧ローラ94(従動ローラ)は、アルミニュウム、鉄若しくはステンレス等から形成された肉厚3mmの円筒状の芯金94Aを中央に配置し、芯金94Aの外周面側の位置に、厚さ8mmの耐熱性を有するシリコンスポンジ、シリコンゴム、若しくはフッ素ゴム等から形成された弾性層94Bを設け、更に、弾性層94Bの外周面を離型層94Cとして例えば厚さ30μmにPFA(パーフルオロアルコキシ)若しくはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成したチューブを被覆したりコーティングを施したりして、ソフトローラとして構成されている。なお、外径寸法は例えば45mmである。
【0055】
また、加圧ローラ94の外径は30〜60mmが好ましい。弾性層94Bの厚みは3〜20mmが好ましく、更に5〜10mmが好ましい。離型層94Cの厚みは10〜70μmが好ましい。
【0056】
また、加圧ローラ94の弾性層94Bにゴムを用いた場合には、ゴム硬度が20°(JISA硬度)、引っ張り強度が1.2MPaであることが望ましい。
【0057】
なお、加圧ローラ94を押圧して加圧ローラ94を定着ローラ93に圧着させるために、不図示の付勢手段が芯金94Aに係合して芯金94Aを定着ローラ93の方向に付勢している。
【0058】
また、定着ベルト91を加熱する加熱手段として、どのような加熱手段を用いてもよく、例えば励磁コイルを用いた誘導加熱発熱体を用いてもよい。また、加熱手段は、必ずしも加熱ローラ92の中に配置されていなくてもよく、どこに配置されていてもよい。
【0059】
また、定着ベルト91を介して加熱ローラ92の温度を検知する温度センサS1、及び加圧ローラ94の温度を検知する温度センサS2が設けられていて、定着温度を所定の温度に制御している。
【0060】
以上の構成において、不図示の駆動手段によって定着ローラ93を時計方向に回転させると、定着ベルト91及び加熱ローラ92も時計方向に回転し、加圧ローラ94は反時計方向に従動して回転する。また、加熱ローラ92に当接する定着ベルト91はハロゲンランプ92Aにより加熱される。そして、不図示の付勢手段によって加圧ローラ94が定着ローラ93の方向に付勢されているので、定着ローラ93に巻回された定着ベルト91と加圧ローラ94との間に形成されたニップ部Nによって、トナー像が転写された記録材Pを挟持・搬送しながら加熱・加圧し、記録材P上のトナー像を定着する。
【0061】
ここで、加圧ローラを製造する場合に、従来の方法では金型に芯金をインサートして弾性層を成型し、その後に離型層を被覆していた。そして、芯金の外周面に荒らし加工やローレット加工等を施して、芯金、弾性層及び離型層が一体的に回転するように構成していた。
【0062】
しかし、本発明の加圧ローラ94においては、芯金94Aの外周面を円滑に加工して、荒らし加工等を施すことはしない。そして、同様に金型に芯金94Aをインサートして弾性層94Bを成型し、その後に離型層94Cを被覆したりコーティングしたりする。
【0063】
従って、定着ベルト91を回転させたときに、定着ベルト91に直接圧着している離型層94Cは従動回転し、離型層94Cと一体的に構成されている弾性層94Bもそのまま従動回転する。しかし、弾性層94Bは芯金94Aに対して密着していなく、且つ、芯金94Aの外周面は円滑に加工されているので、弾性層94Bが回転したときに芯金94Aに対して滑り、弾性層94Bと芯金94Aは一体的に回転することがない。
【0064】
依って、弾性層94Bが厚く形成されていたり、硬度が低く形成されていて、弾性層94Bと芯金94Aとの境界面に応力が集中して掛かっているときに、弾性層94Bと芯金94Aとの滑りによって剪断力が作用せず、弾性層94Bがこの境界面で破断することがなくなる。
【0065】
なお、芯金94Aの外周面に離型剤を塗布した後に成型すれば、弾性層94Bは芯金94Aに対して更に滑り易くなるので、より効果的である。
【0066】
但し、弾性層94Bは、芯金94Aに対して固定されていないので、軸方向に移動する虞がある。そこで、例えば図3に示す如き抜け止めを設ければよい。図3は加圧ローラ94の軸方向の断面図であって、加圧ローラ94の両端には抜け止めとしてのCリング96(規制部材)が芯金94Aに係着している。従って、弾性層94BはCリング96によって軸方向の移動が規制される。
【0067】
なお、弾性層94Bが芯金94Aに対して軸方向に移動することを規制する部材ならどのような形態の規制部材であってもよい。
【0068】
図4は前述とは異なる構成の加圧ローラを備えた定着装置の図である。
【0069】
図4において、定着ベルト91、加熱ローラ92及び定着ローラ93は図2に基づいて説明したものと同等であるので、説明は省略する。しかし、加圧ローラ194のみが異なる。
【0070】
加圧ローラ194は、中央にアルミニュウム、鉄若しくはステンレス等の金属から形成された円筒状の芯金194Aを配置している。芯金194Aの外周面側の位置には、ステンレス等の金属やPI(ポリイミド)等の樹脂から形成されて非弾性であって、円筒状の支持ローラ194Bが配置され、その外周面に耐熱性を有するシリコンスポンジ、シリコンゴム、若しくはフッ素ゴム等から形成された弾性層194Cを密着させ、更に、弾性層194Cの外周面にPFA若しくはPTFEのチューブを被覆したりコーティングを施したりして離型層194Dを形成している。
【0071】
そして、不図示の付勢部材で芯金194Aを定着ローラ93の方向に付勢し、支持ローラ194B及び弾性層194Cを介して離型層194Dを定着ローラ93に圧着している。なお、支持ローラ194B、弾性層194C及び離型層194Dは一体的に形成されているが、芯金194Aは独立して形成されていて、支持ローラ194B、弾性層194C及び離型層194Dの中心軸と芯金194Aの中心軸は偏心している。
【0072】
従って、定着ベルト91の回転により、離型層194D、弾性層194C及び支持ローラ194Bは一体的に従動回転し、支持ローラ194Bは芯金194Aに対して滑って回転する。
【0073】
依って、弾性層194Cが厚く形成されていたり、硬度が低く形成されていたりしても、弾性層194Cは支持ローラ194Bと一体的に回転し、支持ローラ194Bは芯金194Aに対して滑るので、弾性層194Cと支持ローラ194Bとの境界面に剪断力が作用せず、弾性層194Cが破断することがない。
【0074】
なお、場合によっては支持ローラ194Bを省略して、弾性層194Cを芯金194Aに当接させることも可能である。しかし、支持ローラ194Bを設けた方が、弾性層194Cを成型し易く、且つ、一体化した支持ローラ194B、弾性層194C及び離型層194Dの強度が増すので、好ましい。また、弾性層194Cとして低硬度のゴムを用いると、表面が粘着質で摩擦抵抗が大きくなる場合があるので、芯金94Aに対する摩擦力を低減するためにも支持ローラ194Bを設けた方が好ましい。
【0075】
その他に、以上の如く説明した定着装置は定着ローラ93を駆動して定着ベルト91を介して加圧ローラ94を従動回転させる構成であったが、これとは逆に加圧ローラ94を駆動して定着ベルト91を介して定着ローラ93を駆動する構成の定着装置であってもよい。
【0076】
この場合は、加圧ローラ94の弾性層94Bと芯金94Aは一体的に回転してよいが、定着ローラ93に関してはシリコンゴム93B(弾性層)が回転したときに芯金93Aに対して滑るように前述と同様に構成し、シリコンゴム93Bと芯金93Aとが一体的に回転しないようにする。
【0077】
以上は、ベルト定着装置において加圧ローラの弾性層の破断を防止した構成であったが、熱ローラ定着装置であっても加圧ローラを同様に構成することができる。
【0078】
図5は熱ローラ定着装置の拡大断面図である。
【0079】
加熱ローラ292は、加熱手段としてのハロゲンランプ292Aを中央に内蔵し、アルミニュウム等の金属から形成された芯金292Bと、芯金292Bの外周面に設けたシリコンゴム等から形成された弾性層292Cと、弾性層292Cを被覆するPFA若しくはPTFEから形成された離型層292Dとから構成される。
【0080】
加圧ローラ294は、アルミニュウム、鉄若しくはステンレス等から形成された円筒状の芯金294Aを中央に配置し、芯金294Aの外周面側に設けた耐熱性を有するシリコンスポンジ、シリコンゴム、若しくはフッ素ゴム等から形成された弾性層294Bと、弾性層294Bの外周面を被覆しPFA若しくはPTFEで形成した離型層294Cとから構成されている。
【0081】
以上の構成において、不図示の駆動手段によって加熱ローラ292を時計方向に回転させると、加圧ローラ294は反時計方向に従動して回転する。また、加熱ローラ292はハロゲンランプ292Aにより加熱される。そして、不図示の付勢手段によって加圧ローラ294は加熱ローラ292の方向に付勢されているので、加熱ローラ292と加圧ローラ294との間に形成されたニップ部によって、トナー像が転写された記録材Pを挟持・搬送しながら加熱・加圧し、記録材のトナー像を定着する。
【0082】
ここで、図2に示したベルト定着装置と同様に、加圧ローラ294における芯金294Aに対して弾性層294Bが回転可能に構成されているので、加熱ローラ292の駆動により加圧ローラ294が従動回転したときには、芯金294Aに対して弾性層294Bが滑り、芯金294Aと弾性層294Bとの境界面で剪断力が生じないので、弾性層294Bが破断することがない。
【0083】
また、この加圧ローラ294にも図3に示した構成と同様である抜け止めとしての規制部材を設けることが望ましい。
【0084】
更に、熱ローラ定着装置に用いる加圧ローラの構成として、図4に示した構成と同様に弾性層に対して芯金を偏心させた構成を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】画像形成装置の構成図である。
【図2】ベルト定着装置の拡大図である。
【図3】加圧ローラの軸方向の断面図である。
【図4】異なる構成の加圧ローラを備えたベルト定着装置の拡大図である。
【図5】熱ローラ定着装置の拡大図である。
【符号の説明】
【0086】
91 定着ベルト
92,292 加熱ローラ
93 定着ローラ
94,194,294 加圧ローラ
94A,194A,294A 芯金
94B,194C,294B 弾性層
94C,194D,294C 離型層
96 Cリング
194B 支持ローラ
N ニップ部
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のローラにより駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていることを特徴とする従動ローラ。
【請求項2】
前記芯金の外周面は円滑に加工されていることを特徴とする請求項1に記載の従動ローラ。
【請求項3】
前記芯金の外周面に離型剤を塗布したことを特徴とする請求項2に記載の従動ローラ。
【請求項4】
前記芯金の中心軸と前記弾性層の中心軸が偏心していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の従動ローラ。
【請求項5】
前記弾性層の内周面に、円筒状に形成された非弾性の支持ローラを密着させたことを特徴とする請求項4に記載の従動ローラ。
【請求項6】
前記弾性層が前記芯金に対して軸方向に移動することを規制する規制部材を設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の従動ローラ。
【請求項7】
所定の加熱手段によって加熱される加熱ローラと、定着ローラと、前記加熱ローラと前記定着ローラとに張架されて循環駆動される無端状の定着ベルトと、該定着ベルトを介して前記定着ローラを加圧する加圧ローラとを有し、前記定着ベルトと前記加圧ローラとの間に形成されたニップ部で記録紙上のトナー像を定着する定着装置において、
前記加圧ローラは、前記定着ベルトにより駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層と、該弾性層の外周面を被覆する離型層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
所定の加熱手段によって加熱される加熱ローラと、定着ローラと、前記加熱ローラと前記定着ローラとに張架されて循環駆動される無端状の定着ベルトと、該定着ベルトを介して前記定着ローラを加圧する加圧ローラとを有し、前記定着ベルトと前記加圧ローラとの間に形成されたニップ部で記録紙上のトナー像を定着する定着装置において、
前記定着ローラは、前記加圧ローラにより前記定着ベルトを介して駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
所定の加熱手段によって加熱された定着ローラと、該定着ローラを加圧する加圧ローラとの間に形成されたニップ部で記録材上のトナー像を定着する定着装置において、
前記加圧ローラは、前記定着ローラにより駆動されて従動回転すると共に、金属製の芯金と、該芯金の外周面側に位置して弾性を有する弾性層と、該弾性層の外周面を被覆する離型層とを有し、前記芯金に対して前記弾性層が回転可能に構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
前記芯金の外周面は円滑に加工されていることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記芯金の外周面に離型剤を塗布したことを特徴とする請求項10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記芯金の中心軸と前記弾性層の中心軸が偏心していることを特徴とする請求項7〜11の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記弾性層の内周面に、円筒状に形成された非弾性の支持ローラを密着させたことを特徴とする請求項12に記載の定着装置。
【請求項14】
前記弾性層が前記芯金に対して軸方向に移動することを規制する規制部材を設けたことを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項15】
請求項7〜14の何れか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−308756(P2006−308756A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129533(P2005−129533)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】