説明

従来のワルファリン治療に対して有効性が改善されたダビガトランエテキシレートまたはその塩を使用して血栓症を治療または予防するための方法

大出血事象に対する危険因子を有さない心房細動を患う患者における脳卒中を予防するための方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を患者に投与することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のワルファリンおよび他のビタミンKアンタゴニスト治療に対して利点をもたらす、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動(AF)は、脳卒中、他の塞栓性事象および死亡のリスクを増加させる一般的な不整脈である。AFは、合衆国において2.2百万の人々、およびEUにおいて4.5百万の人々に発症した。AFは最も一般的な心律動障害であり、脳卒中の主要な危険因子である。AFの発生率は年齢とともに増加し、65才を超える個体のほぼ6%に発症している。AFの患者は、心臓の速い不規則な拍動により血塊を発生させるリスクがある。AFは脳卒中の可能性を5倍増加する。脳卒中の結果が深刻であり得るため、治療の初期目標は、動脈の血栓形成および血栓塞栓症のリスクを減少させることである。ワルファリンなどのビタミンKアンタゴニスト(VKAまたはクマディン)を用いる長期抗凝固治療は、脳卒中が中等度から高いリスクであると思われるAFの個体に推奨される。これらの脳卒中、血栓症または塞栓症の危険因子として、65才を超える年齢、以前の脳卒中もしくは一過性虚血性発作の病歴、高血圧症、糖尿病または心不全が挙げられる。脳卒中、血栓症または塞栓症に対するさらなる危険因子は医師に知られており、下記でさらに定義する。
【0003】
ワルファリンなどのVKAは、対照に比べて脳卒中のリスクを64%低減させるが、出血のリスクを増加させる。Hart RG、Pearce LAおよびAguilar MI、Meta−analysis:Antithrombotic therapy to prevent stroke in patients who have nonvalvular atrial fibrillation、Ann of Intern Med.、2007、146:857−867。プラセボに比べた場合、ワルファリンは死亡率も低減する。したがって、ワルファリンは、脳卒中のリスクがある心房細動の患者に推奨される。Fuster Vら、ACC/AHA/ESC2006guidelines for the management of patients with atrial fibrillation−executive summary:a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines and European Society of Cardiology Committee for Practice Guidelines(Writing Committee to Revise the 2001 Guidelines for the Management of patients Patient with Arial Fibrillation)、J Am Coll Cardiol、2006、48:854−906。
【0004】
ワルファリンなどのVKAは、複合的な食事療法および薬物の相互作用により使用が厄介であり、頻繁な実験室モニタリングを必要とする。したがって、それらはあまり頻繁に使用されず、中断率は高い。Birman−Deych E、Radford MJ、Nilasena DS、Gage BF、Use and Effectiveness of ワルファリン in Medicare Beneficiaries with Atrial Fibrillation、Stroke、2006、37:1070−1074;Hylek EM、Evans−Molina C、Shea C、Henault LE、Regan S、Major Hemorrhage and Tolerability of ワルファリン in the First Year of Therapy Among Elderly Patients with Atrial Fibrillation、Circulation、2007、115:2689−2696。さらに、ワルファリンでさえも、多くの患者が不適当な抗凝固を有する。Connolly SJ、Pogue J、Eikelboom J、Flaker G、Commerford P、Franzosi MG、Healey JS、Yusuf S、ACTIVE W Investigators。Benefit of oral anticoagulant over antiplatelet therapy in atrial fibrillation depends on the quality of International Normalized Ratio control achieved by centers and countries as measured by time in therapeutic range、Circulation、2008、118(20):2029−37。即ち、ワルファリンは心房細動における脳卒中を低減するが、出血を増加させ、使用するのに難しい。したがって、ワルファリンを用いる抗凝固治療は脳卒中の発生率を有意に低減していると示されてきたが、VKAの投与および使用における様々な障害により、対象となる患者の半分しか適切な治療を受けていないと推定される。したがって、新規の有効、安全および便利な抗凝固薬が必要とされる。
【0005】
本明細書において引用されている特許、特許出願および文献の全てを参照により本明細書に全文をそれぞれ組み込む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
有害な出血事象を予防しながら、それらが必要な患者における血栓症を予防または治療するための方法を提供する。該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの有効量を、10日、42日、50日または90日以内に外科手術を受けていない患者に投与することを要する。こうした組成物は、本発明の方法に従って投与されると、血栓症の予防または治療に有効である。同時に、本発明の方法は、有害な出血事象が患者において予防されるという点において、現在使用されている方法に勝る利点をもたらす。
【0007】
別の実施形態において、該方法は、心房細動の患者における脳卒中を予防するのに使用される。該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの有効量例えば、>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を該患者に投与することを要する。該患者は、特にワルファリンを用いる治療に比べた場合、有害な出血事象に対するリスクが低減される。脳卒中の危険因子は医師に知られており、本明細書において下記でさらに定義する。
本発明の方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの治療有効量を含む医薬組成物を投与することを含む。追加として、医薬組成物は、医薬として許容できる担体を含むことができる。一般に、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート100mg〜600mgの1日投与量は、血栓塞栓の軽減と低い出血率との間の有益なバランスを提供する。特に、1日2回(b.i.d.)のダビガトランエテキシレート100mg〜200mgの単位用量は、血栓塞栓の軽減と低い出血率との間の有益なバランスを示す。
本発明者らは、大出血事象に対するさらなる危険因子を持たない患者において、ダビガトランエテキシレート1日2回(b.i.d.)の140mg〜160mg、好ましくは150mgの単位用量、または210mg〜230mg、好ましくは220mgの単位用量が、血栓塞栓の軽減と低い出血率との有益なバランスを示すことを見出した。
より詳細には、本発明は、心房細動を患う患者における脳卒中を予防するための方法に関し、ここで該患者は、大大出血事象に対する危険因子を有さず、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を患者に投与することを含む。
【0008】
本発明の別の目的は、大出血事象に対する危険因子を有さない心房細動を患う患者における脳卒中の予防用薬物の製造のための、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの使用に関し、ここで該使用は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量の投与を含む。
同様に、本発明は、心房細動を患う患者における脳卒中の予防のための薬物に関し、ここで該患者は、大大出血事象に対する危険因子を有さず、該薬物は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよく、好ましくはb.i.d.投与に適切なダビガトランエテキシレート>150mg〜300mgの投与量を含む。
【0009】
また別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、従来のワルファリン治療に比べて大出血事象、出血性脳卒中、頭蓋内脳卒中または死亡のリスクを低減させるための方法に関し、ここで該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を投与することを含み、ここで該患者は、10日、42日、50日または90日以内に外科手術を受けていない。追加として、この方法は、30mL/分超のクレアチニンクリアランスを有する患者に使用することができる。対照的に、患者が30mL/分以下のクレアチニンクリアランスを有する場合、ダビガトランエテキシレートまたはその塩の投与を中断することが重要であり得る。
【0010】
上記に定義されている方法の一実施形態において、大出血事象は、生命を脅かす出血事象である。他の実施形態において、患者は一般集団より出血に対するリスクが増加しているか、または大出血事象に対する危険因子を少なくとも1つ有しているか、または大出血事象に対する危険因子を有していない。ここに記載した方法は出血有害事象に関して患者をモニタリングすることをさらに含むことがあり、これには、(a)医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を患者に投与すること、(b)出血有害事象に関して患者をモニタリングすること、および(c)モニタリングにより出血有害事象があると決定された場合、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート110mg、b.i.d.を患者に投与することが含まれる。モニタリングステップは、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、または少なくとも1年の期間にわたって行うことができる。
【0011】
本発明は、脳卒中、血栓症または塞栓症の危険因子を少なくとも1つ有する患者における脳卒中を予防し、従来のワルファリン治療に比べて大出血事象または死亡のリスクを低減するための方法にも関し、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を患者に投与することを含む。脳卒中に対する危険因子は医師に知られており、下記でさらに定義する。脳卒中、血栓症または塞栓症の危険因子は以下のものからなる群から選択される。(a)少なくとも75才の年齢を有すること;(b)脳卒中の病歴を有すること;(c)一過性虚血性発作の病歴を有すること;(d)血栓塞栓性事象の病歴を有すること;(e)左心室機能不全を有すること;(f)少なくとも65才の年齢であり、高血圧を有すること;(g)少なくとも65才の年齢であり、糖尿病を有すること;(h)少なくとも65才の年齢であり、冠動脈疾患を有すること;および(i)少なくとも65才の年齢であり、末梢動脈疾患を有すること。この方法の一実施形態において、大出血事象は、生命を脅かす出血事象である。この方法の別の実施形態において、患者は心房細動を有する。ここに記載した方法は出血有害事象に関して患者をモニタリングすることをさらに含むことがあり、これには、(a)医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を患者に投与すること、(b)出血有害事象に関して患者をモニタリングすること、および(c)モニタリングにより出血有害事象があると決定された場合、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート110mg、b.i.d.を患者に投与することが含まれる。モニタリングステップは、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、または少なくとも1年の期間にわたって行うことができる。
【0012】
本発明は、それを必要とする患者における血栓症を予防または治療するための方法にも関し、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートを>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を投与することを含み、ここで、該患者は従来のワルファリン治療に適当でないか、または従来のワルファリン治療が禁忌である。
上に記載されている方法のいずれか1つに従って、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートは、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも9カ月、少なくとも12カ月、または少なくとも48カ月の間投与することができる。
本発明の別の実施形態は、ワルファリンで治療される状態を有する患者における有害事象のリスクを低下させるための方法に関し、該方法は、(a)患者へのワルファリン投与を中断すること、および(b)医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を患者に投与することを含む。一実施形態において、該状態はSPAFである。別の実施形態において、該有害事象は出血である。
【0013】
本発明はまた、心房細動の患者における脳卒中を予防するための方法に関し、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を患者に投与すること、および患者におけるダビガトランの血漿レベルを約20ng/mL〜約180ng/mLの間に保持するため必要に応じて投与を調整することを含み、ここで該患者は、従来のワルファリン治療に比べた場合、大出血事象に対するリスクが低減されている。ダビガトランの血漿レベルはさらに、約43ng/mL〜約143ng/mLの間、約50ng/mL〜約120ng/mLの間、約50ng/mL〜約70ng/mLの間、または約60ng/mL〜約100ng/mLの間であってよく、ダビガトランの血漿レベルは、標準化凍結乾燥ダビガトラン方法を使用して決定することができる。この方法の一実施形態において、大出血事象は、生命を脅かす出血事象である。
【0014】
本発明は、それを必要とする患者において、血栓症を予防または治療し、大出血事象、出血性脳卒中、頭蓋内脳卒中または死亡を予防するための方法にも関し、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を患者に投与すること、および患者におけるダビガトランの血漿レベルを約20ng/mL〜約180ng/mLの間に保持するため必要に応じて投与を調整することを含み、ここで該患者は、従来のワルファリン治療に比べた場合、大出血事象に対するリスクが低減されており、該患者は、10日、42日、50日または90日以内に外科手術を受けていない。ダビガトランの血漿レベルはさらに、約43ng/mL〜約143ng/mLの間、約50ng/mL〜約120ng/mLの間、約50ng/mL〜約70ng/mLの間または約60ng/mL〜約100ng/mLの間であってよく、ダビガトランの血漿レベルは、標準化凍結乾燥ダビガトラン方法を使用して決定することができる。この方法の一実施形態において、大出血事象は、生命を脅かす出血事象である。
【0015】
本発明の別の目的は、心房細動を治療するための薬物を製造するためのダビガトランエテキシレート、または医薬として許容できるその塩の使用に関し、ここで医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートは、>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量の医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートで投与される。この方法に従って、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートは、少なくとも3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、24カ月、48カ月または10年の間投与することができる。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、心房細動の治療のための、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量を含む用量単位に関する。本発明には、b.i.d.治療計画下におけるこの用量単位に関して80%〜125%以内で生物学的に同等である心房細動治療用薬物も含められる。
【0017】
本発明には、(a)医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の固体用量単位を含む、心房細動の治療用薬物、および(b)1つの固体用量を1日2回使用するための指示を含むキットも含められる。
本発明の一実施形態は、>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量のダビガトランエテキシレートに相当するダビガトランの定用量を含む、脳卒中のリスクがある心房細動の患者における脳卒中を予防するための薬物であり、ここで主要アウトカムとしての脳卒中または全身性塞栓症の事象は、脳卒中または全身性塞栓症が従来のワルファリン治療に対して劣性ではない2.0年の追跡期間中央値以内で非盲検の調節ワルファリン治療に対して劣性ではない。
本発明の別の実施形態は、2.0年の追跡期間中央値以内において非盲検の調節ワルファリン治療に比べて主要アウトカムとしての大出血の率が低減された、>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量のダビガトランエテキシレートに相当するダビガトランの定用量を含む、脳卒中のリスクがある心房細動の患者における脳卒中用薬物である。
本発明のまた別の実施形態は、2.0年の追跡期間中央値以内において非盲検の調節ワルファリン治療に比べて主要アウトカムとしての死亡が低減された>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量のダビガトランエテキシレートに相当するダビガトランの定用量を含む、脳卒中のリスクがある心房細動の治療用薬物である。
【0018】
本発明には、80%〜125%の範囲内でダビガトランエテキシレート>150mg〜300mgの投与量と生物学的に同等であるダビガトランプロドラッグ、またはb.i.d.治療計画において適用された>150mg〜300mgの投与量ダビガトランエテキシレートに対応するダビガトランエテキシレートメタンスルホネートの量において80%〜125%の範囲内で生物学的に同等であるダビガトランプロドラッグを含む上記薬物も含まれる。
本発明には、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが、例えばアスピリンである抗血小板剤とともに同時投与され、1日当たり100mg以下で投与される上記方法も含まれる。好ましくは、該抗血小板剤は、アスピリン、ジピリダモール、クロピドグレル、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、エポプロステノール、ストレプトキナーゼまたはプラスミノゲンアクチベーターである。
本発明にはさらに、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが、例えばカリウムチャネル遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、β遮断薬またはカルシウムチャネル遮断薬である抗不整脈剤とともに同時投与される上記方法も含まれる。好ましくは、該抗不整脈剤は、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、フェニトイン、フレカイニド、エンカイニド、プロパフェノン、モラシジン、プロプラノロール、エスモロール、メトプロロール、チモロール、アテノロール、ミオダロン(miodarone)、ソタロール、ドフェチリド、イブチリド、エラパミル(erapamil)、ジルチアゼム、アミオダロン、ブレチリウム、ベラパミル、ジルチアゼム、アデノシンまたはジゴキシンである。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、従来のワルファリン治療に比べて心血管系死亡のリスクを低減するための方法に関し、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートを>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量で投与することを含む。同様に、本発明は、それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、従来のワルファリン治療に比べて血管死のリスクを低減するための方法に関し、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートを>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量で投与することを含む。本発明は、それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、従来のワルファリン治療に比べて総死亡のリスクを低減するための方法にも関し、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートを>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.の投与量で投与することを含む。
明確には、本明細書に記載されている全ての方法は血栓症を治療するのにも有用であり、これは順じて、血栓塞栓症、全身性血栓塞栓症または全身性塞栓症を治療するなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】PETROおよびPETRO延長試験における血栓塞栓性事象および大出血事象を示すグラフである。対象者年=全無作為化対象者の和(無作為化試験終了日+1の日付)/365.25。
【図2】1日2回のダビガトラン110mgおよび150mgならびにワルファリンに対する脳卒中または全身性塞栓症の累積リスク(W=ワルファリン;D110=ダビガトラン110mg、b.i.d.;D150=ダビガトラン150mg、b.i.d.)を示すグラフである。
【図3】重要な患者下位群毎の、ワルファリンと比較した主要アウトカムへのダビガトランの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ダビガトランエテキシレートは、式(I)
【化1】

(I)
の化合物であり、特に心房細動の患者において、膝または股関節の全置換を受ける患者における血栓塞栓症の予防に有用であり、脳卒中の予防に適当でもある経口の直接トロンビン阻害剤である。他の適応症も存在し、例えば、米国特許出願公開第2008/0015176号;同第2008/0039391号;および同第2008/0200514号を参照されたい。式(I)の化合物は、国際公開第98/37075号(米国特許第6,087,380号;同第6,469,039号;同第6,414,008号;および同第6,710,055号に対応)からすでに知られており、ここでは、トロンビン阻害およびトロンビン時間延長の活性を持つ化合物が、1−メチル−2−[N−[4−(N−n−ヘキシルオキシカルボニルアミジノ)フェニル]アミノメチル]ベンズイミダゾール−5−イルカルボン酸−N−(2−ピリジル)−N−(2−エトキシカルボニルエチル)アミドの名称の下で開示されている。ダビガトランエテキシレートは、ダビガトランのダブルプロドラッグであり、
【0022】
式(II)
【化2】

(II)
の化合物、即ち、ダビガトランエテキシレートは体内でのみ、実際に有効である化合物、即ちダビガトランに変換する。ダビガトランエテキシレートは、そのメタンスルホネート塩の形態で投与するのが好ましいが、他の医薬として許容できる酸とのダビガトランエテキシレートの塩も本発明の範囲に包含される。例えば、米国特許出願公開第2006/0183779号を参照されたい。
【0023】
ダビガトランは、ワルファリンおよび他のVKAに勝る利点を有する新規の経口の直接トロンビン阻害剤である。ダビガトランエテキシレートは、血清エステラーゼによってトロンビンの強力な直接競合阻害剤であるダビガトランに速やかに変換する経口のプロドラッグである。その血清半減期は12〜17時間であり、それは定期的なモニタリングを必要としない。Stangier J、Clinical pharmacokinetics and pharmacodynamics of the oral direct thrombin inhibitor ダビガトランetexilate、Clin Pharmacokinet、2008、47:285−295。ダビガトランは、心房細動におけるパイロット試験、および整形外科手術後の静脈血栓塞栓症の予防において評価されており、ここでは150mg1日2回(b.i.d.)および220mg1日1回の用量が有望であった。Ezekowitz MDら、ダビガトランwith or without concomitant aspirin compared with ワルファリン alone in patients with nonvalvular atrial fibrillation(PETRO study)、Am. J. Cardiol.、2007、100:1419−1426; Eriksson BIら、ダビガトランエテキシレートversus enoxaparin for prevention of venous thromboembolism after total hip replacement: a randomized、double−blind、non−inferiority trial、Lancet 2007、370:949−56。PETRO試験を下に記載する。下に記載されているRELY臨床試験は、ダビガトラン110mg1日2回とワルファリン併用150mg1日2回とを比較する大規模な無作為化試験であった。
【0024】
上で注記した通り、ワルファリン治療の管理は複雑であり、適切な患者モニターの失敗はリスクを伴う。ワルファリンは狭い治療域、緩慢な活性開始および停止を有し、予測不可能な用量応答を伴う。それは、その治療効果を変える多くの一般的な食品、薬物およびアルコールとも相互作用し、出血事象または血栓性事象のいずれかのリスクに患者をさらす。したがって、ワルファリン治療は、慎重な個別投与および頻繁なモニタリングを必要とする。VKAの有意な制約により、作用の迅速な開始、最小の薬物相互作用、およびモニタリングを必要としない予測可能な抗凝固効果を持つ経口の抗凝固薬が要求されてきた。経口の直接トロンビン阻害剤のダビガトランエテキシレートは、これらの要求を満足させる。抗凝固効果の開始は投薬の1時間以内であり、モニタリングをすることなく1日1回または2回投与される。
【0025】
ダビガトランエテキシレートは食品相互作用を呈しない。経口生物学的利用能は低く、平均6.5%である。それは、組織エステラーゼによって活性化合物のダビガトランに代謝される。ピークレベルは経口投与の2〜3時間以内に見られる。血漿半減期は複数回投与後12〜17時間である。それは、このプロドラッグが代謝されず、シトクロムP−450薬物代謝酵素を誘発または阻害することがないので、薬物−薬物相互作用の可能性が低い。ダビガトランは血漿タンパク質に適度に結合される(25〜35%)。1日2回の投与計画で2〜3日以内で、定常状態に達する。ダビガトランのおよそ80%が、腎臓によって変化されることなく除去される。該残渣は、グルクロン酸との共役を受けることにより、主に胆汁中に排泄されるアシルグルクロニドを形成する。
【0026】
ダビガトランはトロンビンにその活性部位で直接および可逆的に結合し、フィブリンへのフィブリノーゲンの切断を防止することにより、凝固カスケードおよび血栓形成の最終ステップを阻止する。ダビガトランは、ヘパリンとは異なり、フィブリンまたはフィブリン分解生成物に結合するトロンビンも阻害する。ダビガトランは、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、エカリン凝固時間およびトロンビン凝固時間の用量依存性延長を呈する。抗凝固効果は血漿濃度と並行する。他の直接トロンビン阻害剤と同様に、aPTTとダビガトラン血漿濃度との間の相関関係は、より高い血漿濃度で考慮すべき可変性および平坦な応答と非直線的である。エカリン凝固時間およびトロンビン凝固時間は、ダビガトラン濃度および低可変性との急峻な直線的相関関係を有する。
ダビガトランは、股関節および膝の外科手術後の血栓塞栓症予防に対してヨーロッパで承認されている。こうした適応症において、ダビガトランエテキシレートは、患者に血栓塞栓症のリスクがある限定された期間に適用され、この期間後に該適用は終了される。こうした治療期間は限られ、一般に10日から最大42日の範囲である。
ダビガトランの安全性および効力のため、有害な出血事象を防止または回避することは治療方法において特に有用である。本発明の一実施形態において、それを必要とする患者における血栓症を予防または治療するための方法が提供され、ここで該患者は、少なくとも約50日、少なくとも約60日、少なくとも約70日またはさらに長い間、外科手術、特に股関節および膝の外科手術を受けていない。該方法は、ダビガトランエテキシレートまたは医薬として許容できるその塩の1日投与量100mg〜600mgを投与することを要する。
【0027】
別の実施形態において、該方法は、心房細動(AF)の患者における血栓症、塞栓症または脳卒中を予防するのに使用される。該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの有効量の1日投与量を、特にワルファリンを用いる患者の治療に比べた場合に有害な出血事象に対するリスクが低減されている患者に投与することを含む。
【0028】
PETRO試験結果の公表前に、AFの患者における脳卒中の予防のための異なる薬量および異なる可能投与量が当技術において言及された。しかし、AFを患う特定の患者のための適切な治療を探している医師は、どの投与量が適切であるのか決定することができなかった。これは、医師がAFおよび本明細書において下記に定義されている通りの大出血事象に対する少なくとも1つの危険因子に苦しむ患者のための適切な薬物療法を決定しなければならない場合、特に困難であった。
したがって、本発明の重要な対象は、心房細動を患う患者における脳卒中の予防のための方法を提供することであり、ここで該患者は、大出血事象に対する少なくとも1つの危険因子をさらに特徴とする。
【0029】
AFを患う患者は、血栓症、塞栓症または脳卒中に対する付加的な危険因子を有する恐れがある。これらの脳卒中、血栓症または塞栓症の危険因子として、以下のものが挙げられる。脳卒中の病歴を有すること;一過性虚血性発作の病歴を有すること;血栓塞栓性事象の病歴を有すること;左心室機能不全を有すること;少なくとも65才の年齢であり、高血圧を有すること;少なくとも65才の年齢であり、糖尿病を有すること;少なくとも65才の年齢であり、冠動脈疾患を有すること;および少なくとも65才の年齢であり、末梢動脈疾患を有すること。
しかし、本発明による方法は、大出血事象に対する危険因子を特徴とする患者における血栓症、塞栓症または脳卒中、好ましくは脳卒中の予防に焦点を合わせる。大出血事象に対する1つの重要な危険因子は、少なくとも75才という年齢である。大出血事象に対する別の危険因子として、事前の出血事象などの病歴を挙げることができる。さらに、80mL/分未満、好ましくは50mL/分未満、最も好ましくは30mL/分未満の低減されたクレアチニンクリアランスは、大出血事象に対する危険因子になる可能性があると思われる。大出血事象に対するさらなる危険因子は医師に知られており、下記でさらに定義する。
該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの有効量を患者に投与することを含む。
大出血事象に対するリスクがあるこれらの患者の治療は、該患者はワルファリンを用いる治療に比べた場合に大出血事象に対するリスクが低減されているため、特に有用である。
【0030】
AFは、現在治癒はできないが軽減だけはすることができる慢性状態である。AFを患う患者は、ダビガトランエテキシレートで生涯治療することが必要である。したがって、AFを患う患者にダビガトランエテキシレートを使用する長期の治療に適当な投与量範囲を決定する必要がある。詳細には、特に大出血事象に対する危険因子が特定された患者において、血栓塞栓の予防のバランスを取り、危険因子、特に出血を最小化する投与量範囲および治療スキーム(薬量)を決定する必要が存在する。AFの治療において、危険因子、例えば脳卒中および出血を有する患者の適合性は、熟練した医師によって決定される。一実施形態において、該医師が、AFおよびダビガトランエテキシレートを用いる治療に対する付加的な危険因子を有する患者を特定する。
【0031】
AFの患者(大出血に対する危険因子の有無にかかわらない)、および/または特定の期間、一般に10日、42日、50日または90日以内に外科手術を受けていない患者における血栓症、塞栓症または脳卒中を予防することを含めて、本明細書に記載されている方法および使用のための医薬有効量または治療有効量は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、375mg、390mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mgおよび600mgを含めて、100mg〜600mgの1日投与量である。好ましい実施形態において、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートは、100mg b.i.d.から、110mg b.i.d.、115mg b.i.d.、120mg b.i.d.、125mg b.i.d.、130mg b.i.d.、135mg b.i.d.、140mg b.i.d.、145mg b.i.d.、150mg、b.i.d.、155mg b.i.d.、160mg b.i.d.、170mg b.i.d.、180mg b.i.d.、190mg b.i.d.、200mg b.i.d.、210mg b.i.d.、220mg b.i.d.、230mg b.i.d.、および75mg b.i.d.〜300mg b.i.d.の間になる任意のこうした用量の1日投与量を含めて、75mg、b.i.d.の1日投与量から300mg、b.i.d.の1日投与量で投与される。好ましい一実施形態において、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートは、150mg、b.i.d.または200mg、b.i.d.の1日投与量で投与される。
【0032】
本発明のさらなる対象は、上記要件を満たし、3カ月以上の治療期間に適当である、ダビガトランエテキシレートの投与計画を提供することである。疾患の慢性性質により、治療期間は、またさらに延長される。異なる年齢、性別および体重ならびに体質の患者に適当である、こうした投与計画を特定することは、本発明のさらなる対象である。
【0033】
ダビガトランは医薬製剤に製造することができ、例えば、米国特許出願公開第2005/0038077号;米国特許出願公開第2005/0095293号;同第2005/0107438号;同第2006/0183779号;および同第2008/0069873号を参照されたい。さらに、ダビガトランは他の活性成分とともに投与することができ、例えば、米国特許出願公開第2006/0222640号;同第2009/0048173号;および同第2009/0075949号を参照されたい。
【0034】
使用される用語および慣例の定義
本明細書において具体的に定義されていない用語は、本開示および本文脈に踏まえて当分野の技術者によって用語に与えられると思われる意味を与えられるべきである。しかし本明細書および添付の請求項に使用されている通り、そうでないと記載されていない限り、以下の用語は示されている意味を有し、以下の慣例は変わらない。
「小出血」および「小出血事象」という用語は、大出血事象に対する基準を満たしていない出血事象を意味する。
「大出血(hemorrhage)」、「大出血(bleeding)事象」および「大出血(bleed)」という用語は、少なくとも2.0g/Lのヘモグロビンレベルの減少、または少なくとも2単位の血液の輸血、または重要な部位または器官における症候性出血を意味する。
「生命を脅かす出血」および「生命を脅かす出血事象」という用語は、致死的出血、症候性頭蓋内出血、5.0g/Lを超えるヘモグロビン減少を伴う出血、または4単位を超える血液の輸血を必要とすること、または変力薬を必要とすること、または外科手術が必然的に伴うことを含める大出血事象のサブセットを意味する。
【0035】
「ワルファリン」という用語は、ビタミンK依存性凝固因子を阻害することによって作用する抗凝固薬を意味し、Coumadin、Jantoven、Marevan、およびWaranという商標名の下で販売されている。化学的に、それは3−(α−アセトニルベンジル)4−ヒドロキシクマリンであり、RおよびSエナンチオマーのラセミ混合物である。ワルファリンは、多くの植物中で天然に発見される化学物質であるクマリンの合成誘導体である。ワルファリンは、酸化ビタミンKをその還元形態に再循環させる酵素であるビタミンKエポキシドレダクターゼを阻害することによって血液凝固を減少させる。
「従来のワルファリン治療」という用語は、参照により本明細書に組み込むACC/AHA/ESC Practice Guidelines(Fusterら、JACC、48巻、第4号、8月15日、2006、854−906;例えば、859頁、第1推奨、指示3および4を参照されたい)に従って患者に投与されるワルファリンの量に関する。RELY臨床試験は、従来のワルファリン治療を比較器として使用した。
【0036】
「ダビガトランエテキシレート」という用語は、その医薬として許容できる塩を含める式(I)の化合物を意味する。mgにおける任意の塩の形態におけるダビガトランエテキシレートの単回投与の量は、該遊離塩基、即ち式(I)の遊離塩基を指す。プロドラッグダビガトランエテキシレートの投与量は、その遊離塩基の質量に基づく。
「ダビガトラン」という用語は、その遊離塩基形態における式(II)の化合物である。
「AF」という用語は、不整脈である心房細動を意味する。
「SPAF」という用語は、心房細動における脳卒中予防を意味する。
「非弁性心房細動」という用語は、リウマチ性僧帽弁狭窄症または人工心臓弁が無いAFを意味する。
「血栓性事象」および「血栓塞栓性事象」という用語は、血栓塞栓または脳卒中の発症を意味する。「血栓症」は、循環系を通る血液の流れを妨害する、血管内部の血餅(血栓)の形成である。血塊が崩壊すると、塞栓が形成される。「血栓塞栓症」は、解き放たれ、血流によって運ばれることにより別の血管を塞ぐ血塊の、血管中における形成である。血塊は、肺(肺塞栓症)、脳(脳卒中)、消化管、腎臓または脚における血管を塞ぐ恐れがある。
「非CNS全身性塞栓症」または「SE」という用語は、しばしば心臓の左心房において血塊から放たれた1片の血餅が、体血行を通って流れ、脳以外の血行の一部を遮断することを意味する(それが脳血行を遮断すると、脳卒中である)。
【0037】
「出血性脳卒中」という用語は、脳内部の出血を意味する。
「クモ膜下出血(hemorrhage)」または「クモ膜下出血(bleed)」という用語は、脳を囲むクモ膜と脳軟膜との間の部位であるクモ膜下腔内に出血することを意味する。
「硬膜下出血(hemorrhage」」または「硬膜下出血(bleed)」という用語は、脳を囲む脳外側保護被覆である硬膜の内髄膜層内で出血することを意味する。
「頭蓋内出血」または「ICH」という用語は、硬膜下出血プラスクモ膜下出血を含めて、出血性脳卒中を意味する。出血性脳卒中は脳内部の出血であり、硬膜下出血およびクモ膜下出血は脳の表面上であるが脳の外側であり、ICHはこれらの異なる出血の複合である。
「国際標準比」または「INR」という用語は、使用される分析システムのISI値を累乗にした、正常の(対照)試料に対する患者のプロトロンビン時間の比を意味する。
【0038】
【数1】

プロトロンビン時間(PT)は、組織因子(動物から得られる)の添加後に血漿が凝固するのにかかる時間である。これは、凝固の外因性経路(ならびに一般的な経路)の品質を測定する。外因性経路の速度は、体内における第VII因子のレベルによって大きく影響される。第VII因子は短い半減期を有し、その合成にはビタミンKを必要とする。プロトロンビン時間は、ワルファリン、吸収不良、または細菌による腸管定着(新生児などにおける)の不足によって引き起こされることがあるビタミンK欠乏の結果として延長し得る。さらに、不良な第VII因子の合成(肝疾患による)または摂取の増加(散在性血管内凝固における)は、PTを延長することがある。INR=5などの高いINRレベルが出血する可能性の高いことを示唆する一方、INR=0.5であれば血塊を有する可能性が高い。健康な人の正常範囲は0.9〜1.3であり、ワルファリン治療の人々は2.0〜3.0であるが、標的INRは、人工心臓弁を持つもの、または手術に際して低分子質量ヘパリン(エノキサパリンなど)でワルファリンを架橋するものなど特別な状況において高くなることがある。
【0039】
「総死亡率または死亡率」は、任意の原因からの死亡を意味し、血管死および非血管性死を含める。
「非血管性死」は、癌、外傷、呼吸不全、感染による死亡、血管系のそれらに関連しない他の死亡を意味する。
「血管死」として、これらに限定されないが、心血管系死亡、脳卒中、肺塞栓、末梢塞栓、出血から結果として生じる死亡、および原因が不明にもかかわらず血管として分類されるものから生じる死亡が挙げられる。
「心血管死または心血管死亡率」は、血管死の1つのサブグループに関係し、突然死/不整脈死(例えば、確認された心停止、確認された心室粗動/心室細動、亜急性心筋梗塞、その他)またはポンプ不全死(例えば、心不全/心臓ショック、心タンポナーデ、亜急性心筋梗塞、その他)が挙げられる。
【0040】
「脳卒中、血栓症または塞栓症の危険因子」という用語は、血栓症、塞栓症または脳卒中のリスクを統計的に増加させることが知られている危険因子を意味する。これらの危険因子として以下のものが挙げられる。脳卒中の病歴を有するAF;一過性虚血性発作の病歴を有するAF;血栓塞栓性事象の病歴を有するAF;左心室機能不全を有するAF;少なくとも65才の年齢であり、高血圧を有するAF;少なくとも65才の年齢であり、糖尿病を有するAF;少なくとも65才の年齢であり、冠状動脈疾患を有するAF;および少なくとも65才の年齢であり、末梢動脈疾患を有するAF。即ち、一般に脳卒中、血栓症または塞栓症の危険因子として以下のものが挙げられる。年齢;遺伝;性別;以前の脳卒中、一過性虚血性発作または心臓発作;高血圧;喫煙;真性糖尿病;頸動脈疾患または他の動脈疾患;心房細動または他の心疾患;鎌状赤血球症;高い血中コレステロール;飽和脂肪、トランス脂肪、コレステロールおよびナトリウムが高い食餌;ならびに運動不足および肥満。
【0041】
米国脳卒中協会は、以下の危険因子を少なくとも3つ有する場合に「脳卒中のリスクが高い」ことを示唆している。140/90以上の血圧;240以上のコレステロールレベル;糖尿病を有する;喫煙者である;心房細動を患う;過体重である;運動をしない;または家族に脳卒中の病歴がある。
米国脳卒中協会は、以下のものを4〜6つ有する場合に「脳卒中のリスクが中等度」であることを示唆している。120〜139/80〜89の血圧;200〜239のコレステロールレベル;糖尿病が境界性である;禁煙しようとしている;不規則な心拍があることを自覚していない;若干過体重;時々運動する;および脳卒中の家族歴が不明である。
米国脳卒中協会は、以下のものを6〜8つ有する場合に「脳卒中のリスクは低い」ことを示唆している。120/80以下の血圧;200以下のコレステロール;糖尿病を有していない;喫煙者でない;不規則な心拍がない;健康体重である;規則的に運動している;および家族に脳卒中の病歴がない。
【0042】
「大出血事象に対する危険因子」という用語は、大出血事象を有する患者のリスクを統計的に増加させることが知られている各種危険因子を意味する。大出血事象に対する危険因子は、該分野で働いている医師に知られている。安全性の理由から、大出血事象に対する危険因子の存在は、全ての患者において医師によって決定されることが必要である。一例として、大出血事象に対する危険因子は、人口統計(年齢、性別、および看護施設居留)にグループ化することができる。一例として、75才以上の年齢である患者は、大出血の危険因子と考えることができる。これらの危険因子として、以下のものも挙げることができる。アルコール/薬物濫用、付随疾患(貧血、癌、脳卒中、一過性虚血性発作、MI、高血圧症、心不全/心筋症、虚血性心疾患、糖尿病、肝不全または消化性潰瘍疾患)、および外傷に対する付随リスク(転倒、認知機能障害、または検査入院中の外科手術に対するリスク)。大出血事象に対する危険因子は、以前に出血事象の病歴を有する患者、または低減したクレアチニンクリアランス、例えば80mL/分未満、50mL/分未満、または30mL/分未満を有する患者にも存在する。
【0043】
「b.i.d.」という用語は、1日投与量が、少なくとも4時間、好ましくは少なくとも6時間、およびより好ましくは少なくとも8時間の時間で分けられている2回の別の管理において投与されることを意味する。その結果として、150mg、b.i.d.の投与量は、150mgの単回用量で1日2回投与される300mgの1日投与量を意味する。
本明細書において言及される投与量は、ダビガトランエテキシレート遊離塩基(即ち、式(I)で表される化合物)の量に基づく。ダビガトランエテキシレートが、その医薬として許容できる塩の1種の形態で投与される場合、使用される塩の量は、示唆された投与量から算出することになる。一例として、ダビガトランエテキシレートが、そのメタンスルホネート塩の形態で投与される場合、110mgの投与量はダビガトランエテキシレートメタンスルホネートの172.95mgの量に相当する。
【0044】
「医薬として許容できる塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激およびアレルギー応答などがなく、妥当なベネフィット/リスク比に相応し、一般に水または油に可溶性または分散性の、およびそれらの使用目的に有効な、ヒトおよび下等動物の組織と接触する使用に適当である本発明の化合物の塩を意味する。該用語として、医薬として許容できる酸付加塩、および医薬として許容できる塩基付加塩が挙げられる。本発明の化合物は、遊離塩基および塩の形態の両方に有用であるので、実際に、塩の形態の使用は塩基形態の使用に等しい。適当な塩の一覧が、例えば、参照により本明細書にその全体を組み入れるS.M.Birgeら、J.Pharm.Sci.、1977、66、1−19頁で見られる。本発明による最も好ましいものは、本明細書でダビガトランエテキシレートメタンスルホネートとしても称されるダビガトランエテキシレートのメタンスルホン酸付加塩である。
【0045】
「予防する(prevent)」という用語は、生じないようにする、または持続しないようにすることを意味し、事象発生のリスクの統計的低減に関する。「予防する(preventing)」は、事象発生の「リスクを低減する」または「より低い発生率を実証する」と同義である。リスクを低減すること、またはより低い発生率を実証することは、統計的低減、または少なくとも1%以上の事象発生低下があることを意味する。好ましくは、この低減は、7%以上、10%以上、20%以上、26%以上、34%以上、50%以上、64%以上および74%以上である。これらの低減として、50%超、75%超、80%超、90%超、95%超、98%超および99%超の信頼区間が挙げられる。95%超の信頼区間が好ましい。
【0046】
本発明の方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの安全および治療に有効な量を提供する。「安全および治療に有効な量」によって、本発明に従って投与される場合に医学的に管理することができない有害な出血事象などの主要な合併症がなく、血栓症を予防または治療することによって患者における対象の改善をもたらす、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの量が意図される。治療有効量は、年齢、体重、症状の重症度、全般的な健康および健康状態などに依存して、患者により変動してよいことが認識される。通常、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの治療有効量は約100mg〜約600mgの1日投与量であり、より好ましくは、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの治療有効量は75mg〜約200mgの1日2回の経口投与量であり、最も好ましくは、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの治療有効量は110mgまたは150mgの1日2回の経口投与量である。本明細書で前に記載および定義されている通りの大出血事象に対する危険因子を少なくとも1つ有する患者は、その医薬として許容できる酸付加塩の1種の形態でも可能なダビガトランエテキシレート110mg、b.i.d.の投与量で治療するのが好ましい。
【0047】
「治療有効量」は、患者における医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランの血漿レベルに基づいて決定することもできる。通常、該血漿レベルは以下の範囲になる。約20ng/mL〜約180ng/mL、約43ng/mL〜約143ng/mL、約50ng/mL〜約120ng/mL、約50ng/mL〜約70ng/mLまたは60ng/mL〜約100ng/mL。
【0048】
そのダブルプロドラッグの性質により、「生物学的に同等な治療有効量」のダビガトランエテキシレート量は、ダビガトランエテキシレートを比較薬物として使用して得られるレベルに匹敵するダビガトラン血漿レベルをもたらす、遊離塩基としてのダビガトランエテキシレートもしくはダビガトランエテキシレートの医薬として許容できる塩の任意の製剤、または遊離塩基としての以下の式(III)のダビガトランプロドラッグの任意の誘導体もしくは任意のその医薬として許容できる塩の任意の製剤を意味する。国家または地域の規制基準に依存して、当該の薬物または製剤の血漿レベルが、定義されている百分率の範囲内であれば、生物学的同等性が実証される。U.S.FDAおよびEU EMEAは、生物学的同等性を証明するために80%〜125%の範囲を要求しており、該機関のそれぞれの規制によって確立されている。
【0049】
ダビガトラン血漿レベルの決定
ダビガトランの臨床モニタリングは一般に不要だが、ダビガトランの薬力学的効果を測定するための信頼できる実験室的方法は、本発明の方法の一部に有用である。ダビガトラン血漿レベルを決定するこうした分析法は、体内における薬物活性の速度をモニタリングするだけでなく、薬物の投薬および薬量を調節するために使用することができ、これは、過剰投与を回避し、ダビガトランエテキシレートの薬力学的効果を分析するのに有用であり得る。
1つのこうした方法は、ダビガトランエテキシレートの薬力学的効果の決定のためのアッセイ、特に血液試料におけるダビガトランの定量のための方法における標準物質として使用することができるダビガトランの凍結乾燥形態を要する。該方法は、ヒトトロンビンを精製することによって開始される凝固時間の決定を要する。したがって、ダビガトラン血漿濃度を測定するため、一定分量の試験血漿試料を生理食塩水で希釈し、次いで、α形態における高精製化ヒトトロンビンの一定量を添加することによって凝固が開始され、測定された凝固時間は試験した試料中のダビガトラン濃度に直接比例する。この出願のため、この方法は「標準化凍結乾燥ダビガトラン方法」として知られることになろう。
この方法に従って調査血液試料中のダビガトラン濃度を決定することを可能にするため、凝固時間と標準試料中のダビガトラン濃度とを関係づける検量曲線を作成するべきである。こうした検量曲線の作成には、複数のダビガトラン標準物質または定義濃度の標準物質が使用され得る。こうしたダビガトラン標準物質は安定であるので、ダビガトランの量は−20℃以上で保存されると一定であり、信頼できる検量曲線が容易に確立することができることを確実にする方法で簡単に使用される。
【0050】
ダビガトランエテキシレートは異なる多形形態で結晶化する傾向があり、吸湿性であり(それによって、異なる水和物形態の形成も得られる)、水にやや溶けにくい。即ち、式(II)のダビガトランの凍結乾燥形態は、ダビガトラン用の較正物質として有用である。ダビガトランの凍結乾燥形態を作製するため、ダビガトラン原薬の定義された量を水性酸中に溶解し、水に希釈し、生じる溶液を異なるダビガトラン標準物質試料の調製用原液として使用する。適切に選択した異なるアリコットのダビガトラン原液を、異なるダビガトラン濃度の溶液を生成するための当技術分野において知られている方法に従って、健康なボランティアドナー(ヒトプール血漿)から得られたヒト抗凝固処理血漿に添加する。これらの異なる溶液の特定の体積を適当なチューブ中に移し、完全乾燥まで適切な凍結乾燥装置内で凍結乾燥させ、検量曲線を作成するのに適当な公知濃度のダビガトランの安定な凍結乾燥形態が得られる。この凍結乾燥ダビガトランは簡単に再構成され、したがって、α形態における同量の高精製化ヒトトロンビンを不明な試料に添加することによって凝固が開始した後で観察される凝固時間に基づいて不明な血液試料中のダビガトラン濃度を決定するための標準物質として有用である。凍結乾燥ダビガトランおよびα形態における高精製化ヒトトロンビンのこうした標準試料は、キットに梱包することができる。アッセイの正確度を決定する品質管理は、ダビガトランの公知分量で試料を定期的に試験することによって決定され得る。
【0051】
ダビガトランの溶解のために使用される酸性水溶液のpHは、好ましくは≦3、より好ましくは≦2である。多くの酸が使用され得るが、該酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸またはマレイン酸、特に塩酸が好ましい。ヒト抗凝固処理血漿は、当分野の技術者によって知られている方法のいずれかに従って得ることができ、ヒトクエン酸抗凝固処理血漿またはヒトEDTA抗凝固処理血漿が好ましい。
手順の一例は以下の通りである。2台のBehnk CL4ボール凝固計(Behnk Elektronik、ドイツ)を使用し、操作説明書に従って、測時凝固アッセイを行った。Hemoclot Thrombin Inhibitor Assayを使用した(HYPHEN BioMed、フランス)。キットからの以下の2つの試薬を使用する。(1)凍結乾燥させた正常のプールクエン酸血漿(試薬1);および(2)添加剤で安定化させ、凍結乾燥させた高精製化ヒトカルシウムトロンビン(α形態)(試薬2)。
【0052】
ダビガトラン血漿試料の凝固試験の成績を、分析法評価プログラム「Analyse−it」Excel用、Version2.09、Analyse−it Software、Ltd.PO Box103、Leeds LS27 7WZ England、英国で評価した。
【0053】
ステップA.凍結乾燥ダビガトラン標準物質の調製
式(II)のダビガトラン5.55mgを200μLの1M HCl中に溶解し、超純水に希釈することによって、50mLの最終体積を得る。111μg/mLのダビガトランのこの原液を4℃で保存する。健康なボランティアドナー(ヒトプール血漿)からのヒトクエン酸血漿を、ダビガトラン標準物質の調製に使用する。ダビガトラン原液のアリコットをヒトクエン酸プール血漿に希釈することによって、異なる最終ダビガトラン濃度、100nM、500nM、1500nMおよび2000nMのダビガトランの溶液になる。100nM、500nM、1500nMまたは2000nMのダビガトランのヒトプール血漿500μL体積のアリコットをポリプロピレンチューブ中に移し、Christ Alpha RVC、Typ CMC−2真空遠心機を使用して完全乾燥までおよそ8時間(圧力:3mbar)凍結乾燥させる。凍結乾燥ダビガトラン標準物質を−20℃で保存する。
【0054】
ステップB.標準物質(検量曲線)の調製
超純水0.5mLを、ステップAに従って得られた0nM(ブランク)、100nM、500nM、1500nMおよび2000nMのダビガトランのダビガトラン標準物質の各バイアルに添加し、穏やかに混合し、15分間通常の室温でインキュベートする。標準物質血漿は1:8、例えば100μLの標準物質および700μLの生理NaClに希釈しなければならない。標準物質試料50μLを凝固測定器のキュベット中にピペットで取り入れる(二重決定)。各標準物質を、ステップEに記載されている通りに測定する。
ステップC.試薬の調製
試料の1日量に必要な試薬の体積を算出する。試薬1および試薬2の各バイアルを超純水中に溶解し、穏やかに混合し、15分間通常の室温でインキュベートする。調製した試薬の安定性は以下の通りである。試薬1:+18℃〜+25℃(24時間);+2℃〜+8℃(48時間);および−20℃(2カ月)、ならびに試薬2:+18℃〜+25℃(24時間);+2℃〜+8℃(48時間);および−20℃(2カ月)。
【0055】
ステップD.血漿試料の回収および調製
0.109Mトリクエン酸ナトリウム抗凝固薬(9:1比の血液/シトレート)上に血液試料を回収する。2.5gで20分の遠心分離に続いて血漿の上澄みをデカントする。血漿の安定性は以下の通りである。+18℃〜+25℃(8時間);+2℃〜+8℃(24時間);≦−20℃(最長6カ月まで)。試料を+37℃で最長45分間解凍する。解凍した試料を通常の室温で保持する。試料血漿は1:8、例えば100μLの試料および700μLの生理NaClに希釈しなければならない。
【0056】
ステップE.測定手順
以下の測定手順を、ステップBに従って調製した標準物質試料で最初に行う。検量曲線の調製後、ステップDに従って調製した血漿試料を適宜測定する。
試料(標準物質または血漿)を穏やかな撹拌によって混合する。50μLの血漿試料(ステップBまたはDに従って得られた)をそれぞれ、2つのキュベット中に移す(各試料を二重に測定する)。試薬1(37℃でプレインキュベートされている)100μLをキュベット中にピペットで取り入れる。同時に、タイマーを起動させることによって1分のインキュベーション周期を開始する。インキュベーション時間の終了までに、試薬2(37℃でプレインキュベートされている)100μLを該キュベットに添加する。ストップウオッチを始動させる。Behnk CL4ボール凝固計のボールの回転が停止するまでの時間を測定する(凝固時間[秒])。該機器のソフトウェアにより二重測定の平均凝固時間[秒]を算出する。決定および平均凝固時間の両方の結果を紙印刷で文書にした。
【0057】
ステップF.検量曲線の作成
0nM(ブランク試料)、100nM、500nM、1500nMおよび2000nM(より広い濃度範囲および追加濃度、例えば250nMが可能である)の標準物質試料を測定することによって得られた凝固時間を、表計算プログラム(MS Excelなど)を使用し、散布図におけるダビガトラン標準物質濃度と対比してプロットする。検量曲線を単回帰分析によって確立する。凝固時間の決定によって、血漿試料における対応ダビガトラン濃度を検量線から直接決定することができる。定義濃度、例えば100nM、500nMおよび1500nMの凍結乾燥ダビガトラン試料を用いることで、品質管理系が利用可能である。品質管理試料凝固時間の測定、およびそれに続く検量曲線を使用する対応ダビガトラン濃度の決定が、アッセイ正確度の決定を可能にする。アッセイ正確度は、凝固時間および検量曲線を使用し、ダビガトラン品質管理試料の公知標的濃度とこの品質管理試料の算出濃度との比較によって査定する。
【0058】
本発明の医薬組成物を含有する、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートは、所望の生理的効果、即ち血栓症の予防または治療を達成するのに十分な時間送達される。通常、該医薬組成物は、1日2回の経口用組成物として送達される。該組成物は、定義されている時間または無期限に投与することができる。
本発明の方法に従って投与する場合、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートは、血栓症の予防または治療のための安全および治療効果的方法を患者に提供する。医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートは、血栓症を予防することができるが有害な出血事象をもたらすことはない。
【0059】
ダビガトランは医薬製剤に製造することができ、例えば、米国特許出願公開第2005/0038077号;同第2005/0095293号;同第2005/0107438号;同第2006/0183779号;および同第2008/0069873号を参照されたい。さらに、ダビガトランは他の活性成分とともに投与することができ、例えば、米国特許出願公開第2006/0222640号;同第2009/0048173号;および同第2009/0075949号を参照されたい。治療成分の保存、投与および/または所望の効果を促進するために、当分野において従来から使用されている医薬として許容できる担体または希釈剤を使用することができる。適当な担体は安定であるべき、即ち該製剤における他の成分と反応不可能であるべきである。こうした担体は当技術分野において一般に知られている。製剤ならびに医薬として許容できる担体および安定剤などの選択の完全な考察が、参照により本明細書に組み込むRemington’s Pharmaceutical Sciences(第18版;Mack Pub.Co.:Eaton、Pennsylvania、1990)において見ることができる。
ダビガトランエテキシレートまたは医薬として許容できるその塩は、抗血小板剤と同時投与することができることがさらに認識される。抗血小板剤として、アスピリンなどのシクロオキシゲナーゼ阻害剤;アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤;ホスホジエステラーゼ阻害剤;糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤;およびアデノシン再取込み阻害剤;などが挙げられる。一実施形態において、抗血小板剤はアスピリンであり、1日当たり100mg以下で投与される。
以下の例は例示の目的で提供されるのであり、限定の目的ではない。
【0060】
実験
PETROおよびPETRO延長試験の試験結果
心房細動の患者におけるダビガトランエテキシレートの有効性および安全性を、第2相Prevention of Embolic and Thrombotic Events in Patients With Persistent Atrial Fibrillation(PETRO)試験において試験した。これは、慢性心房細動の患者における、アスピリンを用いないワルファリンの標準抗凝固薬投与計画と比べる、単独またはアスピリン(ASA)と組み合わせたダビガトランエテキシレートの12週間の用量設定試験であった。この試験において、502人の患者を、ワルファリン(2〜3の間のINR目標を持つ)、またはダビガトランエテキシレート(50mg、b.i.d.、150mg、b.i.d.および300mg、b.i.d.)および3つの用量のアスピリン(0、81mgおよび325mg、q.d.)に無作為に分けた。主要なエンドポイントは、出血事象、およびD二量体の変化であった。該試験において2つの全身性血栓塞栓性事象があり、両方ともダビガトランエテキシレート50mg、b.i.d.群であった。4つの(6%)大出血事象がダビガトランエテキシレート300mg、b.i.d.プラスASA群で発生した。小出血が用量関連であった。トランスアミナーゼの上昇>3×正常上限(ULN)が、ダビガトランエテキシレート治療患者の0.9%(432人のうち4人)に生じた。ダビガトランで治療した患者におけるD二量体レベルの変化は、ワルファリンに匹敵した。
【0061】
ダビガトランエテキシレートの長期安全性を決定するため、PETRO試験において無作為にダビガトランエテキシレートに分けられ、アウトカムの事象がなく治療を完了した患者を、該延長上のPETRO延長試験に提供し、このデータを本明細書に示す。
【0062】
方法
PETRO延長試験を、合衆国、デンマーク、オランダおよびスウェーデンの52のセンターで行った。プロトコルは運営委員会によって開発された。データ管理および統計解析はBoehringer Ingelheimによって行われた。統計解析計画書は運営委員会によって作られた。全ての作成者が該知見に同意した。
主要な目的は、大出血事象、全身性血栓塞栓症および肝機能試験異常の発生率を決定することによって心房細動の患者におけるダビガトランの長期安全性および有効性を評価することであった。
PETRO延長は、PETRO試験において無作為にダビガトランに分けられ、プロトコルによって自身の治療を完了した患者の長期延長試験であった。ダビガトランエテキシレート投与量に関して二重盲検であったPETRO試験と異なり、PETRO延長は非盲検であった。PETRO延長はPETRO試験が進行中に始まり、PETROが完了するまで患者治療群に試験者たちが当初見られない状態にした。その後、患者治療群に試験者たちを明らかにすることができた。
データを記述で要約した。仮説は試験しなかった。事象を発症時の治療に基づいて分析した。発生率を事象がある患者の数として報告し、ならびにそれぞれの治療で100の患者年に基準化した。リスク比およびその95%信頼区間(両側)を用いて、事象リスクを治療間で比較した。
【0063】
全ての以下の基準を満たす場合、患者に含めた。≧18才の年齢、PETRO試験におけるダビガトランを用いる以前の治療、および治療の早期中断なし;PETRO試験における登録前の、ECGによって記述されている発作性、持続性または恒久性(慢性の)非リウマチ性心房細動;脳卒中に対する少なくとも1つの付加的な危険因子:高血圧症、糖尿病、心不全または左心室機能不全、以前の虚血性脳卒中または一過性虚血性発作、75才を超える年齢、および冠動脈疾患の病歴(即ち、以前のMI、狭心症、陽性ストレス試験、以前の冠動脈インターベンションもしくはバイパス手術、または冠動脈造影によって診断されたアテローム動脈硬化病変(単数または複数))。全患者から書面によるインフォームドコンセントが得られた。
以下のものを有する場合、患者から除外した。血栓塞栓性事象(例えば、臨床的に有意な僧帽弁狭窄または人工弁)の有意に増加したリスクをもたらす心臓弁膜症、患者が該試験中にいる間の計画的電気除細動、抗凝固治療の禁忌(以前の頭蓋内出血、前3カ月以内のGI出血,治療国際標準比(INR)でワルファリンを用いた以前の重度の出血、非ステロイド性抗炎症薬の定期的な使用、出血性素因)、ならびに過去6カ月以内の大出血(GI出血以外)および糸球体濾過速度が≦30mL/分である重度の腎機能低下。
【0064】
50mg、b.i.d.のPETROを完了した患者を、PETRO延長試験(N=93人の患者)に移行の際、150mg、q.d.に切り換えた。全ての他の患者を当初、PETRO試験において受けたのと同じダビガトランエテキシレート用量で維持した。PETROにおいて糸球体濾過速度≦50mL/分に基づき50mg、q.d.に下方に用量設定した患者は該長期試験から除外し、他の用量レベルを下方に用量設定した患者は、その用量でのq.d.治療に留めた。
【0065】
結果
PETRO試験においてダビガトランで治療した432人の患者のうち396人がプロトコルに従った治療を完了し、これらのうち361人の患者(91%)をPETRO延長試験に登録した。PETRO試験のワルファリン治療群をPETRO延長において中止した。PETRO延長の移行時に、患者は平均69.7±8.2才、女性16.3%であり、平均4.2年の心房細動持続期間および平均2つの脳卒中危険因子を有していた。PETRO延長におけるアスピリンの使用は、試験者の判断に基づいた。
アスピリン有無での数カ月の延長治療後、300mg、b.i.d.群(N=162人)における高頻度の大出血事象により、300mg、b.i.d.を受ける全ての患者を300mg、q.d.または150mg、b.i.d.のいずれかに変えることを、データ安全性モニタリング委員会(DSMB)が推奨し、運営委員会が同意した。同様に、300mg/日未満の用量を受ける治療群(N=103)における血栓塞栓性事象の頻度の増加で、DSMBは、これらの患者を300mg、q.d.または150mg、b.i.d.のいずれか上方に用量設定することを推奨した。運営委員会が同意した。該曝露の大部分がダビガトランエテキシレート150mg、b.i.d.用量(683.9患者年)、続いて300mg、q.d.(198.7患者年)、300mg、b.i.d.(82.0患者年)、150mg、q.d.(58.5患者年)および50mg、b.i.d.(23.5患者年)であった。総曝露は、PETROおよびPETRO延長の両試験を一緒に反映している。
【0066】
血栓塞栓性事象および脳卒中の比率は、ダビガトランエテキシレート150mg、b.i.d.(1年当たり1%)および300mg、b.i.d.(1年当たり1.2%)の治療において最低であった。ダビガトランエテキシレート≦150mg/日での治療中、年間の血栓塞栓性事象の比率は、100患者年当たり5.0を超えた。
【0067】
大出血事象は、ダビガトランエテキシレート300mg、b.i.d.において、150mg、b.i.d.および300mg、q.d.の治療に比べて相対的に高くなった(1年当たり12.2対4.2対2.5%)。150mg、q.d.用量において3例の大出血があった。50mg、b.i.d.のデータと組み合わせると、≦150mg/日の用量での大出血率は、1年当たり3.7%(図1)であった。出血事象の比率は、アスピリン併用の間で有意に高くなった(1年当たり8.5%対3.2%;リスク比2.70、およびCI 1.49〜4.86)。大出血のうち5例は致死的であった。150mg、b.i.d.で4例および300mg、q.d.で1例。これらの致死的出血のうち3例は頭蓋内出血であり、1例はGI出血であり、1例は大動脈解離であった。もう1例頭蓋内出血があったが、非致死的であった。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示されているデータは、図1に例示されている。
【0070】
該試験の過程中、18人の患者(1年当たり1.7%)は、肝臓トランスアミナーゼが上昇し、ASTまたはALT>3×ULN、そのうち11人の患者(1年当たり1.1%)が、トランスアミナーゼ(ASTまたはALT)>5×ULNであった。>3×ULNのトランスアミナーゼ上昇の30日以内に併用ビリルビン上昇>2×ULNである4人の患者(1年当たり0.4%)がいた。これらの事例の全ては、選択的臨床原因によるものであった。
【0071】
全体で、ASTまたはALT>3×ULNである18事例のうち9事例が調査後、説明的臨床診断を有した。治療事例16のうち10事例においてダビガトランの継続でLFT異常が消散し、5事例においてダビガトランの中止後にLFT異常が消散し、治療中のLFT異常がある1人の患者が、心不全、および肝機能における異常に寄与すると思われるセプシスで死亡した。アウトカムが不明な第二患者は、肝機能異常発生の3週間前にダビガトラン治療を(出血により)中断していた(治療休止)。LFT異常および肝胆道に任意の関連問題がある個々の患者の詳細を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
出血および血栓性事象を含めて、184人の患者(51%)における重篤な有害事象を記録した。記録された事象の最も一般的な分類は、心障害(80人の患者;22%)、続いて感染症(34人の患者;9.4%)、神経系障害(33人の患者;9.1%)および胃腸障害(28人の患者;7.8%)であった。出血および血栓性事象以外、特別なパターンは現れなかった。
【0074】
大出血事象
出血事象の発生率は用量に比例して増加した。大出血事象はダビガトランエテキシレート150mg、b.i.d.以上を服用する患者において最も頻繁であり、最高比率は300mg、b.i.d.のダビガトランエテキシレート群において記録されている。1日2回300mgの用量は許容できない。150mg、b.i.d.の用量は、AF患者(表3)における近年の抗凝固試験において認められたものより僅かに高い大出血率を有する。ダビガトランでの5例の致死的出血事象(1年当たり0.5%)は全て、150mg、b.i.d.(4人の患者)または300mg、q.d.(1人の患者)のいずれかで発生した。1年当たり0.4%の頭蓋内出血率は、他の抗血栓薬試験において報告されている0.1%〜0.6%の範囲内である。併用ASAで出血するリスクも増加した。RELY臨床試験において、より詳細に下記で考察されているが、1日100mg超のアスピリン用量は許容されない。
【0075】
【表3−1】

【表3−2】

【0076】
有効性または血栓塞栓性事象
限られたデータは、ダビガトランエテキシレートが脳卒中予防において有望な有効性を有することを示唆している。2つの最も高い用量で、脳卒中または全身性血栓塞栓性事象の比率は1年当たりおよそ1%であり、これは、脳卒中に対する中等度から高いリスクの心房細動患者において最も低く報告されている比率の1つである。これは、現在の標準的な経口標準治療のワルファリンと同様であるか、またはそれより良い。この用量は現在、第3相試験においてより大規模に試験されているところである。興味深いことに、1日1回300mgでの脳卒中の比率は、この差異が統計的に有意ではなくとも、150mg、b.i.d.よりも高い。
【0077】
リスク−ベネフィット
いくつかの用量のダビガトランエテキシレートのこの縦断的非盲検試験からのデータにより、有効性および安全性の両方の境界を確立した。1日当たり150mg以下の用量は、低出血率で、血栓塞栓性事象の許容できない高い比率を有すると思われる一方、1日当たり600mgの用量は、脳卒中リスクは低いが許容できない比率の出血を生じさせる。150mg、b.i.d.の用量に対するリスク−ベネフィットは、より低い脳卒中の比率であるが出血率がより高い300mg、q.d.より良いと思われる。分割用量の薬物動態は、1日1回与えられる同じ合計用量に対して2:1対6:1の血漿濃度比のピークトラフをもたらし、認められた差異の可能な説明となる。150mg、b.i.d.の用量は、大出血に対するさらなる危険因子を有さない患者における血栓塞栓性事象と出血との間の最良のバランスを取ると思われる。
【0078】
表1および図1に示されているデータから、ダビガトランエテキシレートの1日2回(b.i.d.)の適用が好ましいことがわかる。一方ではダビガトランエテキシレートのかなり低い経口生物学的利用能により、および他方ではダビガトランの比較的高いクリアランスにより、b.i.d.の投与量スキームは、より一定のダビガトランの血漿レベルを送達する。
300mg、q.d.と150mg、b.i.d.との治療計画を直接比較することにより実証されている通り、血栓塞栓性事象の全体数は、同じ1日投与量ではb.i.d.投与計画下の方が少ない。したがって、同程度の1日投与量ではb.i.d.薬量がq.d.より好ましい。
表1および図1に示されているデータは、血栓塞栓性事象の発生および大出血事象のリスクに関してダビガトランエテキシレートの各種投与量を比較している。前者は100年当たりの血栓塞栓性事象の数によって表されており、後者は100年当たりの出血事象の数によって表されている。「年」または「対象者年」は、全治療対象者/365.25の和(最後の薬物摂取日−最初の薬物摂取日+1)である。
該データを比較すると、100年当たり12を超える事象であるダビガトランエテキシレート50mg、b.i.d.の投与量は、満足のいく血栓塞栓軽減に達するのに十分ではないという結論を下すことができる。
さらに、300mg、b.i.d.のダビガトランエテキシレートは、低い数の血栓塞栓性事象(100年当たり約1事象)を得られるが、かなり高い数の出血事象(100年当たり12例を超える)を引き起こし、このことで、この投与量は長期治療スキームに不適当になる。
【0079】
他方、150mg、b.i.d.および300mg、b.i.d.の治療スキームは、血栓塞栓性事象(150mg、b.i.d.では約5件、および300mg、b.i.d.では2件を超える)からの保護が弱いが、150mg、b.i.d.に比べてほぼ同等の規模で出血事象をもたらす。
【0080】
ダビガトランエテキシレートb.i.d.150mgの治療計画は、150mg、q.d.および300mg、q.d.に比べて、血栓塞栓性事象からのより良い保護をもたらす一方で、300mg、b.i.d.と同じレベルの血栓塞栓保護を維持しながら、300mg、b.i.d.より良い出血事象からの保護をもたらす。したがって、本明細書において前に記載されており、定義されている通りの大出血に対する付加的な危険因子を有していない患者において、140mg、b.i.d.〜160mg、b.i.d.、好ましくは150mg、b.i.d.の上記の好ましい投与量範囲は、3カ月、好ましくは6カ月、より好ましくは9カ月、より好ましくは12カ月、より好ましくは24カ月、より好ましくは48カ月、およびより好ましくは10年以上の期間、ヒトにおける心房細動を治療するのに適当であると思われる。
そのプロドラッグの性質により、本発明に従った治療計画は、下記式(III)の他のダビガトランのエステルまたは塩の形態に適用することができる。
【0081】
【化3】

(III)
式中、Rは、最大300までの分子質量を持つ任意のエステル成分、好ましくは式−C(O)−O−C1−C8−アルキルまたは−C(O)−O−C3−C8−シクロアルキルのエステル成分を表し、ここで、該アルキルは分枝または非分枝であってもよく、該アルキルおよび該シクロアルキルは置換されていてもよく、R’は、−C1−C8−アルキルまたは−C3−C8−シクロアルキルを表し、ここで、該アルキルは分枝または非分枝であってもよく、該アルキルおよび該シクロアルキルは置換されていてもよい。
【0082】
本発明によるダビガトランエテキシレートを適用することによって得られる生物学的利用能の80%〜125%、好ましくは80%〜120%の証明済みの生物学的利用能を持つ式(I)または(III)の化合物の任意の製剤または修飾も、同様の特性または匹敵する有益な特性をもたらすことができる。生物学的利用能は、すでに登録された(認可された)発案者の製品に関するジェネリック製品の認可手順においてFDAまたはEMEAによって推奨される通り、生物学的同等性の実証に適用される方法の結果として理解される。
本発明は、心房細動の治療のためのダビガトランエテキシレート140mg〜160mg、好ましくは150mgを含む用量単位、および210mg〜230mg、好ましくは220mgを含む単位用量も包含する。好ましい実施形態において、該用量単位は、錠剤、カプセル、顆粒および粉末などの固形形態である。例えば、こうした製剤は下記の製剤の項に示されている。特に好ましい実施形態において、該固形形態は、単離酒石酸コアペレット上にコーティングされた、ダビガトランエテキシレートを含有するカプセルである。特に好ましい固形形態を下記の製剤の項に記載する。
300を超える人がPETROおよびPETRO延長の両試験を終えた。これらの人は異なる年齢および性別群を代表し、異なる体重および体質を有していた。しかし、上記で考察された結果が全ての個体に同様に当てはまることが判明した。
【0083】
RELY臨床試験結果
長期抗凝固治療の無作為評価(RELY)試験は、脳卒中のリスクが増加している心房細動の患者においてワルファリンとともにダビガトランの2つの用量を比較するように設計された無作為化試験であった。この試験の設計は、ならびに参照により本明細書に全治を組み込むEzekowitz MD、Connolly SJ、Parekh A、Reilly PA、Varrone J、Wang S、Oldgren J、Themeles E、Wallentin LおよびYusuf S、Rationale and design of the RE−LY:Randomized evaluation of long−term anticoagulant therapy、ワルファリン、compared to ダビガトラン、Am Heart J.、2009、157:805−810に公表されている。
【0084】
非劣性試験において、脳卒中のリスクがある心房細動を持つ18,113人の患者を、盲検定用量のダビガトラン110mgまたは150mg1日2回対非盲検調節ワルファリンに無作為に分けた。追跡期間中央値は2.0年であり、主要アウトカムは脳卒中または全身性塞栓症であった。主要アウトカムの率は、ワルファリンで1年当たり1.70%であるのに対して、ダビガトラン110mgで1年当たり1.55%(相対リスク0.91、95%信頼区間0.75〜1.12;p[非劣性]<0.001)およびダビガトラン150mgで1年当たり1.11%(相対リスク0.66、95%信頼区間0.53〜0.82;p[優位性]<0.001)であった。大出血率は、ワルファリンで1年当たり3.46%であるのに対して、ダビガトラン110mgで1年当たり2.74%(p=0.002)およびダビガトラン150mgで1年当たり3.22%(p=0.32)であった。出血性脳卒中の比率は、ワルファリンで1年当たり0.38%であるのに対して、ダビガトラン110mgで1年当たり0.12%(p<0.001)およびダビガトラン150mgで1年当たり0.10%(0.14〜0.49;p<0.001)であった。死亡率は、ワルファリンで1年当たり4.13%であるに対して、ダビガトラン110mgで1年当たり3.74%(p<0.12)およびダビガトラン150mgで1年当たり3.63%(p<0.047)であった。
【0085】
したがって、心房細動の患者において、ダビガトラン110mgは、ワルファリンと同様の比率の脳卒中および全身性塞栓症を伴ったが、より低い比率の大出血を伴った。ダビガトラン150mgは、ワルファリンより低い比率の脳卒中および全身性塞栓症を伴ったが、同様の比率の大出血を伴った。即ち、ダビガトラン110mgは、ワルファリン治療を超える改善された安全性プロフィールを実証し、ダビガトラン150mgは、ワルファリン治療を超える改善された有効性を実証した。
【0086】
RELY試験の詳細
方法
患者は44カ国の951の臨床センターから集めた。手短に言うと、スクリーニングまたは6カ月以内に心電図に記録されている心房細動を有していた場合、および以下の少なくとも1つを有していた場合に患者の資格を有した。以前の脳卒中または一過性虚血性発作;40%未満の左心室駆出率;6カ月以内にニューヨーク心臓協会の分類2以上の心不全症状;少なくとも75才の年齢;または真性糖尿病、高血圧症または冠動脈疾患を持つ少なくとも65才の年齢。除外の理由として、重度の心臓弁障害;14日以内の脳卒中もしくは6カ月以内の重度の脳卒中;出血のリスクを増加させる状態;30mL/分未満のクレアチニンクリアランス;活性肝疾患;または妊娠が挙げられる。
【0087】
書面でインフォームドコンセントを得た後、全ての試験参加者に、中央双方向自動電話システムを使用してダビガトランまたはワルファリンの2つの用量の1つを無作為に割り当てた。ダビガトランは、1日2回服用の110mgまたは150mgのいずれかを含有する盲検用カプセルに供給した。ワルファリンを非盲検用の1mg、3mgまたは5mgの錠剤に供給し、少なくとも毎月INR測定がある2.0〜3.0の国際標準比(INR)に現地で調節した。治療域の時間は、第1週からのINRおよび中断後のINRを除外する、Rosendaal(Rosendaal FRら、A method to determine the optimal intensity of oral anticoagulant therapy、Thromb Haemost、1993、69:236−239)の方法によって算出した。これらのデータを、最適なINRコントロールに関するアドバイスとともにセンターへ報告した。アスピリン(100mg/日未満)または他の抗血小板剤の併用が許容された。キニジンは、ダビガトランと相互作用する可能性があるため、試験が開始してから2年後に禁止した。
無作為抽出の14日後、初年度は1カ月および3カ月、その後3カ月毎、次いで試験が終了するまで4カ月毎に、患者を追跡した。追跡調査の初年度中は肝機能試験を毎月行った。6000人のダビガトラン患者を6カ月以上の間追跡した後の肝機能試験の事前特定評価に続いて、データモニタリング委員会(DMC)は、肝機能試験を、定期的な来診時に行うことに縮小することを推奨した。
【0088】
主要な試験のアウトカムは脳卒中または全身性塞栓症であった。主要な安全性のアウトカムは大出血であった。副次的アウトカムは、脳卒中、全身性塞栓症および死亡であった。他のアウトカムは、心筋梗塞、肺塞栓症、一過性虚血性発作および入院であった。主な実質的なベネフィット−リスクのアウトカムは、脳卒中、全身性塞栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、死亡または大出血の複合であった。脳卒中は、主要大脳動脈の領域に一致する局所神経異常の突然発症として定義し、虚血性、出血性または不特定として分類した。虚血性脳卒中の出血性変化は、出血性脳卒中と思われなかった。頭蓋内出血として、出血性脳卒中および硬膜下出血またはクモ膜下出血があった。全身性塞栓症は、造影、外科手術または検死解剖によって記録された四肢または器官の急性血管閉塞であった。大出血は、少なくとも2.0g/Lのヘモグロビンレベルの低減、または少なくとも2単位の血液の輸血、または重要な部位または器官における症候性出血として定義した。生命を脅かす出血は、致死的出血、症候性頭蓋内出血、5.0g/Lを超えるヘモグロビンが減少する出血を含める大出血、あるいは4単位を超える血液の輸血もしくは変力薬が要求されるか、または外科手術を必要とする大出血のサブセットであった。全ての他の出血は微量と思われた。
【0089】
全ての主要および副次的アウトカムの事象は、盲検下で二重に判定した。判定者の国際チームは盲検後に現地言語で記録文書を再検討するか、または記録文書は独立グループによって翻訳され中央から隠された。全ての一過性虚血性発作を再検討することにより、脳卒中は見逃されなかったことが保証された。可能な非報告事象を見つけ出すため、症状アンケートを患者に定期的に行い、非報告の主要または副次的アウトカムについて有害事象および入院報告を精査した。
【0090】
統計解析
Cox比例ハザードモデリングを使用し、ダビガトランのいずれの用量もワルファリンより非劣性ではないかどうか試験するための主要分析を設計した。非劣性の仮説を満たすためには、相対リスク(ダビガトラン:ワルファリン)の片側97.5%信頼区間の上限が1.46未満に低下する必要があった。この非劣性限界は、相対リスク(ワルファリン:対照)の片側95%信頼区間の下限を使用し、心房細動の対照に対するビタミンKアンタゴニストの試験のメタ分析から引き出した。1.46の限界は、脳卒中または全身性塞栓症の低減に関するコントロールに対してビタミンKアンタゴニストのベネフィットの50%が保存されることを保証すると考えられる。ワルファリンに対する両方のダビガトラン用量の試験を説明するために、2つのp値の最大が片側で0.025未満かどうか試験することを計画し、この場合、両方の仮説を拒絶した。2つのp値の最大が0.025を超える場合、統計的有意性を主張するためには2つのp値の最小が片側で0.0125未満でなければならない。全ての分析は包括解析に基づいた。ダビガトランの各用量の非劣性を評価する84%検出力をもたらすと概算した15,000人の患者を登録することを計画した。治療効果が現れることを認識せずに、患者の登録中に実施委員会によって2つのプロトコルが変更された。これらは、ワルファリン未摂取患者(これまでに61日未満のワルファリンへの曝露)およびワルファリン経験患者のバランスの取れた登録;およびワルファリンに対して各ダビガトラン用量を比較する統計的検出力を増加させるための、18,000人の患者への試験規模増加の施行であった。ダビガトランのベネフィットが3つの標準偏差を上回り、3カ月後の反復分析と一致するならば試験終了を推奨する計画で、独立DMCが非盲検試験データを再検討し、有効性に関する2つの事前特定中間分析を行った。
【0091】
患者の特徴および追跡調査
2005年12月22日から2007年12月15日の間に登録した患者は18,113人であった。治療群はベースライン時にバランスがよく取れていた(表4)。平均年齢は71才で、64%が男性であった。患者の半分はワルファリンを経験していた。平均CHADS2スコア(脳卒中リスクの測定)は2.1であった。
【0092】
最終追跡調査来院は、2008年12月15日から2009年3月15日の間に行われた。追跡期間中央値は2.0年であり、99.9%が完了し、20人の患者の追跡調査に失敗した。ダビガトラン110mg、ダビガトラン150mgおよびワルファリンの中断率はそれぞれ1年で14%、15%および10%であり、2.5年で23%、25%および19%であった。試験における継続的アスピリン使用は、ダビガトラン110mg、ダビガトラン150mgおよびワルファリンの患者それぞれの23.5%、21.6%および23.1%で行われた。ワルファリンの患者の治療域における平均時間は64%であった。
【0093】
【表4】

【0094】
主要なアウトカム
脳卒中または全身性塞栓症は、ダビガトラン110mgで182人の患者(1年当たり1.55%)、ダビガトラン150mg(1年当たり1.11%)で133人の患者、およびワルファリンで198人の患者(1年当たり1.70%)に発症した(表5および図2)。ダビガトランの両用量はワルファリンに非劣性であった(p<0.001)。ダビガトラン150mgはワルファリンに優性でもあった(相対リスク[RR]0.66、95%信頼区間[CI]0.53〜0.82;p<0.001)が、ダビガトラン110mgは優性でなかった(RR0.91、95%CI0.75〜1.12;p=0.37)。出血性脳卒中の比率は、ダビガトラン110mgで1年当たり0.12%(RR0.31、95%CI0.17〜0.56;p<0.001)およびダビガトラン150mgで1年当たり0.10%(RR0.26、95%CI0.14〜0.49;p<0.001)と比較して、ワルファリンで1年当たり0.38%であった。
【0095】
【表5−1】

【表5−2】

【0096】
他のアウトカム
何らかの原因による死亡の比率は、ダビガトラン110mgで1年当たり3.74%(RR0.90、95%CI0.79〜1.03;p=0.12)およびダビガトラン150mgで1年当たり3.63%(RR0.88、95%CI0.77〜1.00;p=0.047)と比較して、ワルファリンで1年当たり4.13%であった。心筋梗塞はワルファリンで1年当たり0.54%の比率で発症し、110mgで1年当たり0.73%(RR1.35、95%CI0.98〜1.87;p=0.069)および150mgで1年当たり0.74%(RR1.38、95%CI1.00〜1.91;p=0.048)のダビガトランより頻繁に発症した。
【0097】
出血
大出血率は、ダビガトラン110mgで1年当たり2.74%(RR0.79、95%CI0.68〜0.92;p=0.002)およびダビガトラン150mgで1年当たり3.22%(RR0.93、95%CI0.81〜1.07;p=0.32)と比較して、ワルファリンで1年当たり3.46%であった(表6)。生命を脅かす出血、頭蓋内出血および全出血の比率は、ダビガトランのいずれの用量よりもワルファリンの方が高かった。ダビガトラン150mgを用いると、ワルファリンより大胃腸系出血の比率が高かった。
【0098】
【表6】

【0099】
全てのp値は優位性を示している。出血性脳卒中は、表5における脳卒中として、大出血/生命を脅かす出血として、両方に計数され、表6における頭蓋内出血の一部である。
実質的なベネフィット−リスクのアウトカムは、主要な血管事象、大出血および死亡から構成されていた。この合わせたポイントの比率は、ダビガトラン110mgで1年当たり7.37%(RR0.92、95%CI0.84〜1.01;p=0.097)およびダビガトラン150mgで1年当たり7.22%(RR0.90、95%CI0.82〜0.99;p=0.04)と比較して、ワルファリンで1年当たり7.99%であった。
【0100】
ダビガトラン用量の比較
110mg用量に比べて、ダビガトラン150mgは脳卒中または全身性塞栓症のリスクを低減した(p=0.004)。この差異は主に、虚血性または不特定病因の脳卒中における減少によって生じたが、出血性脳卒中の比率は両群で同様であった。用量間の血管死亡率または合計死亡率のいずれにも差異はなかった。他方、ダビガトラン110mgに比べると、150mgは大出血のリスクを増加させ(p=0.04)、胃腸系出血、小出血および全出血も増加させた。実質的な臨床的ベネフィットは、2つの用量でほぼ同一であった。
【0101】
有害事象および肝機能試験
ダビガトランによる消化不良に関連した有害事象が増加した(表7)。正常の上限の3倍を超える血清アスパラギン酸またはアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇は、ワルファリンよりダビガトランの方がいずれの用量でも頻度が低かった。
【0102】
【表7−1】

【表7−2】

【0103】
重要な下位群
事前特定サブグループの大部分に関し、ダビガトラン(いずれの用量でも)の治療効果との有意な相互作用は見られなかった(図3)。ダビガトランの治療効果と前のワルファリン経験との間に有意な相互作用は無かった。ダビガトランは80%腎臓で排泄されるが、ベースライン算出のクレアチニンクリアランスとの相互作用は無かった。
【0104】
考察
RELY試験では、脳卒中のリスクがある心房細動の患者においてダビガトラン(110mg1日2回および150mg1日2回)の2つの盲検固定用量投与計画を調節用量のワルファリンと比較した。両方のダビガトラン用量は、脳卒中または全身性塞栓症の主要な有効性エンドポイントに関して、ワルファリンより非劣性であった。さらに、より高い用量は脳卒中または全身性塞栓症に関して優性であり、より低い用量は大出血に関して優性であった。さらに、より高い用量のダビガトランは、ワルファリンより少ない全死亡および血管の原因による死亡を伴う。
【0105】
心房細動の患者におけるワルファリンの安全および有効代替物を同定することを模索する以前の試験は全て、特定の制限に悩まされてきた。クロピドグレルおよびアスピリンの組合せはアスピリン単独より有効であった、ACTIVE Investigators、Effect of Clopidogrel Added to Aspirin in Patients with Atrial Fibrillation、N Engl J Med.2009、360、が、ワルファリンより有効ではなかった、ACTIVE Writing Group of the ACTIVE Investigators、Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial Fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for Prevention of Vascular Events(ACTIVE W):a randomized controlled trial、Lancet、2005、367:1903−1912。皮下のイドラパリナックスはワルファリンより有効であったが、出血のリスクが実質的に高くなった、Amadeus Investigators、et al.、Comparison of idraparinux with vitamin K antagonists for prevention of thromboembolism in patients with atrial fibrillation: a randomized、open−label、non−inferiority trial、Lancet、2008 1月26日、371(9609):315−321。初期の直接トロンビン阻害剤であるキシメラガトランは、ワルファリンと同様の有効性および安全性を有しているかに見えたが、肝毒性であった、Deiner HC、Executive Steering Committee Stroke Prevention Using the Oral Direct Thrombin Inhibitor キシメラガトランin Patients with Non−Valvular Atrial Fibrillation Pooled Analysis from the SPORTIF III and V Studies、Cerebrovasc Dis、2006、21:279−293。対照的に、肝機能試験の連続的測定において、ダビガトランでは肝毒性の証拠が無かった。
【0106】
ワルファリン治療の最も深刻な合併症は、頭蓋内出血、特に出血性脳卒中である。アスピリンに比べて、ワルファリンは頭蓋内出血、Hart、RGのリスクを倍にする、上記参照。したがって、虚血性脳卒中に対する有効性を損なうことなく、ワルファリンに比べて2/3を超えてこの合併症を低減することは、両用量のダビガトランの重要な利点である。ワルファリンでの大出血率は、この試験の方が一部の以前の試験より高かった(Deiner HC、上記参照;The ACTIVE Investigators、上記参照;ACTIVE Writing Group of the ACTIVE Investigators、上記参照)。このことは、この試験における大出血のより包括的定義によって一部説明される。他の部位での出血の比率が全体的に低くなったにもかかわらず、より高いダビガトラン用量で胃腸系出血が増加した。ダビガトランの吸収を増強するため、低いpHが必要である。したがって、ダビガトランのカプセルは、酒石酸の中核を持つダビガトラン被覆ペレットを含有する。この酸性度は、両方のダビガトラン用量での消化不良症状の発生率増加、および150mg用量での胃腸系出血のリスク増加の説明となり得る。
【0107】
ダビガトランのベネフィットは、特に、コントロールするのが困難であるワルファリンと比べて、12〜17時間の排出半減期で抗凝固効果における変動を低減するダビガトランの1日2回投薬によって一部説明され得る。ワルファリンは、(因子II、VII、IX、X、タンパク質CおよびSを阻害する)凝固を広く阻害する。トロンビンのみを選択的に阻害することによって、ダビガトランは、凝固系における一部の他の止血機序を存続させることによって可能な出血を軽減しながら、抗血栓薬の有効性を達成することができる。
【0108】
該試験の制限は、事象の報告または判定に潜在的先入観を導入した可能性のある非盲検ワルファリンの使用であり、追跡調査の比較的短い持続期間である。調節用量のワルファリンを盲検にしないという決定は、ワルファリンを最も実際的に投薬するという目標、およびワルファリンの非盲検が事象時にしばしば行われるという予想に基づいた。ワルファリン抗凝固のコントロールは、我々の患者の半分が、良好なコントロールを有する可能性が低い群であるワルファリン未摂取であっても、以前に報告された網羅的臨床試験のそれに匹敵した(64%の治療域の時間で)(Rosendaal FRら、上記参照;The ACTIVE Investigators、上記参照)。
【0109】
全体的なベネフィットおよびリスクに関する実質的アウトカムは、ダビガトランの2つの用量間で類似する。しかし、この全体的類似性は、ダビガトラン150mgでのより低い虚血リスクが、ダビガトラン110mgでのより低い出血リスクによってバランスが取られているという事実によるものである。これらの知見は、ダビガトランの用量を特定の患者リスク特性に潜在的に合わせ得ることを示唆しているが、この概念は我々の試験で具体的に試験されていない。臨床的調査の結果は、その医薬として許容できる酸付加塩の形態でも可能なダビガトランエテキシレート150mg、b.i.d.の使用が、本明細書で前に記載および定義されている通りの大出血に対するさらなる危険因子を有さない患者において特に好ましいことを示唆している。
最後に、脳卒中のリスクがある心房細動の患者において、2つの用量のダビガトランとワルファリンとを比較した。ダビガトラン110mgは、同様の比率の脳卒中および全身性塞栓症、ならびにワルファリンより低い比率の大出血を伴った。ダビガトラン150mgは、より低い比率の脳卒中および全身性塞栓症、ならびに同様の比率の大出血を伴った。
【0110】
禁忌ならびに特別な警告および注意
ダビガトランを用いる治療に関していくつかの禁忌がある。ダビガトランもしくはダビガトランエテキシレートまたは該製品の賦形剤の1種に対する公知過敏症性;重度の腎機能低下の患者(<30mL/分のクレアチンクリアランス);出血徴候、活動性出血、出血素因を持つ患者、または止血の自然発生のまたは薬理的な障害を持つ患者;直近6カ月以内の出血性脳卒中を含めて、臨床的に有意な出血のリスクがある器官病巣;脊髄または硬膜外カテーテルが留置している患者、および除去後1時間の患者;ならびにキニジン、ベラパミル(verpamil)などとの併用治療、または代替併用P−gp阻害剤。
肝障害:これらに限定されないが、>2が正常上限(ULN)である肝臓酵素の持続的上昇、または肝炎A、BもしくはCを含めて生存に任意の影響を及ぼすと予想される中等度および重度の肝障害(チャイルド・ピュー分類BおよびC)または肝疾患を持つ患者は、臨床試験において除外された。したがって、ダビガトランエテキシレートの使用は、この集団においては一般に推奨されない。
出血リスク:薬理的作用様式により、ダビガトランエテキシレートの使用は、主に、出血性合併症のリスク増加に至ることがある。さらに、腎機能または強いP−gp阻害剤の同時薬物療法などの因子は、ダビガトラン血漿レベルを異なる程度に増加させることが知られている。異なる臨床状況において見られた通り、ダビガトラン血漿レベルにおける上昇は、出血リスクの増加に自動的に至ることはない。こうした因子が出血リスクを増加させ、臨床的ベネフィットを上回ることが知られている場合において、薬量的推奨が必要に応じて与えられる。異なる多変量因子が不明の出血リスクに至る恐れがある場合、患者の出血性合併症徴候を慎重にモニタリングすることを助言する。
【0111】
本発明は、好ましくは、出血性合併症のリスクが増加していることを特徴としない患者の治療を対象とする。これらの患者において、脳卒中の予防に推奨される薬量および投与量は150mg、b.i.d.である。
綿密な観察(出血または貧血の徴候を探す)は、一般に、出血リスクを増加させる恐れがある以下の状況において必要とされる。(a)最近の生検、大外傷、または脳、脊髄もしくは眼科の外科手術直後;(b)ダビガトランエテキシレートと止血または凝固に作用する治療との関連が出血リスクを増加させるなど、出血リスクを増加させやすい治療;ならびに(c)細菌性心内膜炎、先天性または後天性の出血障害、活動性潰瘍性および血管形成異常の胃腸疾患、ならびに出血性脳卒中(6カ月)。
さらに、出血のリスクにおける増加は、一部の併用薬との特定の薬物動態学的または薬力学的相互作用を介して発生することがあり、以下の治療は一般に、ダビガトランエテキシレートと同時に施行されるべきではない。未分画ヘパリンおよびヘパリン誘導体、低分子質量ヘパリン(LMWH)、フォンダパリヌクス、デシルジン、血小板溶解薬、GPIIb/IIIa受容体アンタゴニスト、デキストラン、スルフィンピラゾン、リバロキサバン、プラスグレル、およびビタミンKアンタゴニスト。未分画ヘパリンは、中心静脈または動脈カテーテル開存を保持するのに必要な用量で投与することができることが注目されるべきである。強いP−gp阻害剤ベラパミル、キニジンまたはアミオダロンをダビガトランエテキシレートと同時の経口適用は、出血リスクの増加をもたらす恐れがあるダビガトラン血漿濃度を上昇させることが知られている。
【0112】
製剤
ダビガトランエテキシレートは、メタンスルホネート塩として処方されるのが好ましい(国際公開第03/074056号)。以下の例は、本特許出願において参照されている臨床試験に適用された本発明による剤形およびそれらを製造するための方法を例示するためのものである。
【0113】
言及した臨床試験に使用された医薬組成物を製造するためのプロセスは、一連の部分ステップを特徴とする。最初、中核1を医薬として許容できる有機酸から生成する。本発明の範囲内において、酒石酸を使用することにより中核1を調製する。こうして得られた中核原料1は、次いで単離懸濁液2に噴霧することによって、いわゆる単離酒石酸中核3に変換される。引き続いて調製されるダビガトラン懸濁液4は、1つまたは複数のプロセスステップにおける被覆プロセスの手段によって、これらの被覆された中核3に噴霧される。最終的に、こうして得られた活性物質ペレット5を適当なカプセルに詰める。
【0114】
エアジェットふるい分けによる酒石酸の粒径の決定
測定装置および設定
測定装置:エアジェットふるい分け、例えばAlpine A200LS
ふるい分け:必要に応じる
投入重量:10g/ふるい
持続期間:1分/ふるい、次いで、それぞれ最大重量損失0.1gまで1分
【0115】
試料の調製/生成物の供給
該物質を乳鉢に移し、存在する任意の塊を激しい強打によって破壊する。ゴムのシールおよびカバー付きのふるいを天秤に置き、ゼロに設定し、強打した物質10.0gを秤量してふるいに置く。その内容物、ゴムのシールおよびカバーと一緒にふるいを装置に置く。タイマーを1分に設置し、該原料をエアジェットふるい分けによってこの時間処理する。次いで、残渣を秤量し、記録する。このプロセスを、エアジェットふるい分け後の残渣重量の減少が<0.1gになるまで反復する。
【0116】
(例1)
開始ペレットの調製
上皿およびスターラーを有する従来の混合容器内で、水480kgを50℃に加熱し、アカシア(アラビアゴム)120kgを撹拌しながら添加する。清澄な液が得られるまで、撹拌を一定温度で続ける。清澄な液(通常1〜2時間後)になった時点で、酒石酸600kgを撹拌しながら添加する。酒石酸を一定温度で添加する一方、撹拌を続ける。添加を終えた後、混合物をさらに約5〜6時間撹拌する。
酒石酸1000kgを、噴霧および粉末塗布ユニット(例えば、Driamat2000/2.5)付きの緩回転(1分当たり3回転)無穿孔水平受皿に添加する。噴霧が開始する前、該酸の試料をふるい分析用に取る。当該の酸は、粒径が0.4〜0.6mmの範囲の酒石酸粒子である。上記方法によって得られた酸ゴム溶液を、このように用意した酒石酸粒子上に噴霧する。噴霧中、供給される空気の量を1000m3/時および35℃〜75℃に調節する。差圧は2mbarであり、皿の回転速度は1分当たり9回転である。ノズルは充填物から350〜450mmの距離に配置するべきである。
以下のステップを次々に行うことによって酸ゴム溶液を噴霧する。酸ゴム溶液約4.8kgを粒径0.4〜0.6mmの酒石酸粒子に噴霧し、該溶液を分配した後、酒石酸粉末約3.2kgを湿った酒石酸粒子上に散らす。当該の酒石酸粉末は、粒径が<50ミクロンの微細な酒石酸粒子からなる。全体で、800kgの酒石酸粉末が必要である。酒石酸粉末を散らし、分配した後、約40℃の生成物温度に達するまでスプレー原料を乾燥させる。これは順じて酸ゴム溶液の噴霧に続く。
酸ゴム溶液を使い切るまで、これらのサイクルを反復する。プロセスが終了した時点で、酸ペレットを受皿内にて3rpmで240分間乾燥させる。乾燥が終了した後のケーキングを防ぐため、間欠的なプログラムを3rpmで1時間毎に3分間行う。本例において、これは、受皿を3rpmで3分間、1時間の間隔で回転させ、次いで放置することを意味する。酸ペレットを次いで乾燥機内に移す。それらを次いで60℃で48時間の時間をかけて乾燥させる。最終的に、粒径分布をふるい分析によって決定する。直径が0.6〜0.8mmの粒径は該生成物に対応する。この画分は、>85%を構成するべきである。
【0117】
(例2)
開始ペレットの単離
単離懸濁液を調製するため、エタノール666.1kgを混合容器に入れ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(33.1kg)を、およそ600rpmで撹拌しながら添加し、溶解する。次いで同条件下で、0.6kgのジメチコンを添加する。使用の直前、タルク(33.1kg)を再び撹拌しながら添加し、懸濁させる。
酸ペレット1200kgをコーティング装置(例えば、GS−Coater Mod.600/Mod.1200)に注ぎ、その中で、1200kgの混合物には32kg/時、または600kgの混合物には21kg/時の噴霧速度で数時間続く連続噴霧プロセスにおいて、上に記載されている単離懸濁液を回転受皿で噴霧する。ペレットも最大70℃までの給気で連続的に乾燥させる。
GS−Coaterが空になった後、単離開始ペレットをふるいによって画分化する。直径が≦1.0mmの生成物画分を保存し、さらに使用する。
【0118】
(例3)
ダビガトランエテキシレート懸濁液の調製
ヒドロキシプロピルセルロース26.5kgを、プロペラスターラーが装着されている1200Lの混合容器内でイソプロパノール720kgに添加し、混合物を十分溶解するまで撹拌する(約12〜60時間;およそ500rpm)。溶液が清澄になった時点で、ダビガトランエテキシレートメタンスルホネート132.3kg(多形体I)を撹拌しながら添加し(400rpm)、混合物をさらに約20〜30分間撹拌する。次いでタルク21.15kgを一定の撹拌速度で添加し、撹拌をさらに約10〜15分間同じ速度で続ける。上に記載されているステップは、窒素雰囲気下で実施されるのが好ましい。
形成された任意の凝集塊を、Ultra Turraxスターラーを使用して約60〜200分間均質化することによって粉砕する。懸濁液温度は、製造工程全体を通して30℃を超えるべきでない。
確実に沈殿を発生しないさらなる処理の準備ができるまで懸濁液を(およそ400rpmで)撹拌する。
懸濁液を30℃未満で保存する場合、それを最大でも48時間以内にさらに処理するべきである。例えば、懸濁液を製造し、22℃で保存する場合、それを60時間以内にさらに処理することができる。懸濁液を例えば35℃で保存する場合、それを最大でも24時間以内にさらに処理するべきである。
【0119】
(例4)
ダビガトランエテキシレート活性物質ペレットの調製
無穿孔容器付きの水平受皿を使用する(GS Coater Mod.600)。流動床方法と対照的に、懸濁液を「トップスプレー」方法によって回転受皿でペレットの流動床に噴霧する。それは直径1.4mmのノズルを介して噴霧される。乾燥空気をいわゆる浸漬ブレードを介してペレット床に通し、コーターの後壁の開口を通して送り出す。
例2に従って得られた酒石酸ペレット320kgを水平受皿に装填し、ペレット床を加熱する。43℃の生成物温度に達した時点で噴霧を開始した。例3に従って予め調製した懸濁液900kgを最初2時間、20kg/時次いで24kg/時の噴霧速度および0.8バールの噴霧圧力で噴霧する。懸濁液を絶えず撹拌する。供給される空気の温度は最大でも75℃である。供給される空気の量は約1900m3/時である。
次いでペレットを水平受皿で(1分当たり5回転)少なくとも30℃、最大でも50℃の空気流入温度および500m3/時の空気流入量で約1〜2時間の時間をかけて乾燥させる。
こうして得られたペレット325kgを次いで水平受皿にもう一度充填し、43℃で加熱する。例3に従って予め調製した懸濁液900kgを最初2時間、20kg/時次いで24kg/時の噴霧速度および0.8バールの噴霧圧力で噴霧する。懸濁液を絶えず撹拌する。供給される空気の温度は最大でも75℃である。供給される空気の量は約1900m3/時である。
【0120】
次いでペレットを水平受皿で(1分当たり5回転)少なくとも30℃、最大でも50℃の空気流入温度および500m3/時の流入量で約1〜2時間の時間をかけて乾燥させる。
乾燥させたペレットを次いで、網目サイズが1.6mmの振動ふるいに通過させ、さらなる処理のために必要になるまで乾燥剤付きの容器に保存する。
【0121】
【表8】

【0122】
本発明の特に好ましい実施形態は、上文ですでに言及しているが、下記でもう一度要約する。本発明は、心房細動を患う患者における脳卒中を予防するための方法に関し、ここで該患者は、大出血事象に対する危険因子を有さず、該方法は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.好ましくは200mg、b.i.d.の投与量を患者に投与することを含む。特に好ましくは、該方法は、一例として上文に開示されている医薬組成物の形態でのダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.好ましくは200mg、b.i.d.の投与量の投与を含む。
本発明はさらに、心房細動を患う患者における脳卒中の予防用薬物を製造するための、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの使用に関し、ここで該患者は、大出血事象に対する危険因子を有さず、ここで該使用は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg〜300mg、好ましくは200mgの投与量のb.i.d.投与を含む。特に好ましくは、該使用は、一例として上文に開示されている医薬組成物の形態でのダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.好ましくは200mg、b.i.d.の投与量の投与を含む。
本発明は、同様に、心房細動を患う患者における脳卒中の予防のための薬物に関し、ここで該患者は、大出血事象に対する危険因子を有さず、該薬物は、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート>150mg〜300mg、好ましくは200mgの投与量を含む。特に好ましくは、該薬物はb.i.d.投与に適している。特に好ましくは、該薬物は、一例として上文に開示されている医薬組成物の形態でのダビガトランエテキシレート>150mg、b.i.d.〜300mg、b.i.d.好ましくは200mg、b.i.d.の投与量の投与を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大出血事象に対する危険因子を有さない心房細動を患う患者における脳卒中を予防する方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を患者に1日2回投与することを含む方法。
【請求項2】
大出血事象に対する危険因子を有さない心房細動を患う患者における脳卒中の予防用薬物を製造するための、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの使用であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量の1日2回の投与を含む使用。
【請求項3】
大出血事象に対する危険因子を有さない心房細動を患う患者における脳卒中の予防のための薬物であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を含む薬物。
【請求項4】
1日2回の投与に適切な、請求項3に記載の薬物。
【請求項5】
それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、従来のワルファリン治療に比べて大出血事象、出血性脳卒中、頭蓋内脳卒中または死亡のリスクを低減する方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を1日2回投与することを含み、患者は10日以内に外科手術を受けていない方法。
【請求項6】
前記患者が42日以内に外科手術を受けていない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が90日以内に外科手術を受けていない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記大出血事象が生命を脅かす出血事象である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が一般集団より出血に対するリスクが増加している、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が大出血事象に対する危険因子を少なくとも1つ有する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が大出血事象に対する危険因子を有さない、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
請求項5から11の1項に記載の、それを必要とする患者における血栓症を治療し、大出血事象、出血性脳卒中、頭蓋内脳卒中または死亡のリスクを低減するための薬物。
【請求項13】
脳卒中、血栓症または塞栓症の危険因子を少なくとも1つ有する患者における脳卒中を予防し、従来のワルファリン治療に比べて大出血事象または死亡のリスクを低減する方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を患者に1日2回投与することを含む方法。
【請求項14】
前記脳卒中、血栓症または塞栓症の危険因子が、
(a)少なくとも75才の年齢を有すること、
(b)脳卒中の病歴を有すること、
(c)一過性虚血性発作の病歴を有すること、
(d)血栓塞栓性事象の病歴を有すること、
(e)左心室機能不全を有すること、
(f)少なくとも65才の年齢であり、高血圧を有すること、
(g)少なくとも65才の年齢であり、糖尿病を有すること、
(h)少なくとも65才の年齢であり、冠動脈疾患を有すること、および
(i)少なくとも65才の年齢であり、末梢動脈疾患を有すること
からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記大出血事象が生命を脅かす出血事象である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が心房細動を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
出血有害事象に関して患者をモニタリングすることをさらに含む、請求項5から16の1項に記載の方法。
【請求項18】
(a)医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を患者に1日2回投与すること、
(b)出血有害事象に関して患者をモニタリングすること、および
(c)モニタリングにより出血有害事象があると決定された場合、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート110mgを患者に1日2回投与すること
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記モニタリングが少なくとも3カ月の期間にわたって行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記モニタリングが少なくとも6カ月の期間にわたって行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記モニタリングが少なくとも1年の期間にわたって行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項22】
従来のワルファリン治療に適当でない、それを必要とする患者における血栓症を予防または治療する方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を1日2回投与することを含む方法。
【請求項23】
従来のワルファリン治療が禁忌である、それを必要とする患者における血栓症を予防または治療する方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を1日2回投与することを含む方法。
【請求項24】
前記患者が30mL/分を超えるクレアチンクリアランスを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が30mL/分以下のクレアチンクリアランスを有する場合、ダビガトランの投与を中断することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項26】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが少なくとも3カ月間投与される、請求項5から16の1項に記載の方法。
【請求項27】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが少なくとも6カ月間投与される、請求項5から16の1項に記載の方法。
【請求項28】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが少なくとも9カ月間投与される、請求項5から16の1項に記載の方法。
【請求項29】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが少なくとも12カ月間投与される、請求項5から16の1項に記載の方法。
【請求項30】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが少なくとも48カ月間投与される、請求項5から16の1項に記載の方法。
【請求項31】
ワルファリンで治療される状態を有する患者における有害事象のリスクを低下させる方法であって、
(a)患者へのワルファリン投与を中断すること、および
(b)医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を患者に1日2回投与すること
を含む方法。
【請求項32】
前記状態がSPAFである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記有害事象が出血である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
心房細動の患者における脳卒中を予防する方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を患者に1日2回投与すること、および患者におけるダビガトランの血漿レベルを約20ng/mL〜約180ng/mLの間に保持するため必要に応じて投与を調整することを含み、従来のワルファリン治療に比べた場合に患者の大出血事象に対するリスクが低減している方法。
【請求項35】
ダビガトランの血漿レベルが約43ng/mL〜約143ng/mLの間である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ダビガトランの血漿レベルが約50ng/mL〜約120ng/mLの間である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
ダビガトランの血漿レベルが約50ng/mL〜約70ng/mLの間である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
ダビガトランの血漿レベルが約60ng/mL〜約100ng/mLの間である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記大出血事象が生命を脅かす出血事象である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
ダビガトランの血漿レベルが標準化凍結乾燥ダビガトラン方法を使用して決定される、請求項34から39の1項に記載の方法。
【請求項41】
それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、大出血事象、出血性脳卒中、頭蓋内脳卒中または死亡率を予防する方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を患者に1日2回投与すること、および患者におけるダビガトランの血漿レベルを約20ng/mL〜約180ng/mLの間に保持するため必要に応じて投与を調整することを含み、従来のワルファリン治療に比べた場合に患者の大出血事象に対するリスクが低減し、患者が10日以内に外科手術を受けていない方法。
【請求項42】
ダビガトランの血漿レベルが約43ng/mL〜約143ng/mLの間である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ダビガトランの血漿レベルが約50ng/mL〜約120ng/mLの間である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ダビガトランの血漿レベルが約50ng/mL〜約70ng/mLの間である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
ダビガトランの血漿レベルが約60ng/mL〜約100ng/mLの間である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記大出血事象が生命を脅かす出血事象である、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
ダビガトランエテキシレートの血漿レベルが標準化凍結乾燥ダビガトラン方法を使用して決定される、請求項41から46の1項に記載の方法。
【請求項48】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが、150mgよりも多く300mg以下の投与量の医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートで1日2回投与される、心房細動の治療用薬物を製造するための、ダビガトランエテキシレートまたは医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項49】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが3カ月間以上投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが6カ月間以上投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項51】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが9カ月間投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項52】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが12カ月間投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項53】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが24カ月間投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項54】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが48カ月間投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項55】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが10年間投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項56】
心房細動の治療のための、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレート150mgを含む用量単位。
【請求項57】
1日2回の治療計画下において請求項48に記載の用量単位に対して80%〜125%以内で生物学的に同等である心房細動治療用薬物。
【請求項58】
(a)医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下を1日2回の固体用量単位を含む心房細動治療用薬物、および
(b)1つの固体用量を1日2回使用する指示
を含むキット。
【請求項59】
脳卒中または全身性塞栓症が従来のワルファリン治療より劣性ではない2.0年以内の追跡期間中央値で、主要アウトカムとしての脳卒中または全身性塞栓症の事象が非盲検の調節ワルファリン治療より劣性ではない、1日2回の150mgよりも多く300mg以下の投与量のダビガトランエテキシレートに相当する定用量のダビガトランを含む、脳卒中のリスクがある心房細動の患者における脳卒中を予防するための薬物。
【請求項60】
2.0年以内の追跡期間中央値で非盲検の調節ワルファリン治療に比べて主要アウトカムとしての大出血率が低減する、1日2回の150mgよりも多く300mg以下の投与量のダビガトランエテキシレートに相当する定用量のダビガトランを含む、脳卒中のリスクがある心房細動の患者における脳卒中のための薬物。
【請求項61】
2.0年以内の追跡期間中央値で非盲検の調節ワルファリン治療に比べて主要アウトカムとしての死亡が低減する、1日2回の150mgよりも多く300mg以下の投与量のダビガトランエテキシレートに相当する定用量のダビガトランを含む、脳卒中のリスクがある心房細動の治療用薬物。
【請求項62】
ダビガトランエテキシレートの150mgよりも多く300mg以下の投与量を1日2回と80%〜125%の範囲内で生物学的に同等であるダビガトランプロドラッグを含む、請求項59から61の1項に記載の薬物。
【請求項63】
80%〜125%の範囲内で生物学的に同等であるダビガトランプロドラッグを含み、ダビガトランエテキシレートメタンスルホネートの量が1日2回の治療計画に適用する150mgよりも多く300mg以下の投与量のダビガトランエテキシレートに対応する、請求項59から61の1項に記載の薬物。
【請求項64】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが抗血小板剤と同時投与される、請求項15、13、22、23、34または41の1項に記載の方法。
【請求項65】
前記抗血小板剤がアスピリンであり、1日当たり100mg以下で投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記抗血小板剤が、アスピリン、ジピリダモール、クロピドグレル、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、エポプロステノール、ストレプトキナーゼまたはプラスミノゲンアクチベーターである、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートが抗不整脈剤と同時投与される、請求項15、13、22、23、34または41の1項に記載の方法。
【請求項68】
前記抗不整脈剤が、カリウムチャネル遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、β遮断薬またはカルシウムチャネル遮断薬である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記抗不整脈剤が、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、フェニトイン、フレカイニド、エンカイニド、プロパフェノン、モラシジン、プロプラノロール、エスモロール、メトプロロール、チモロール、アテノロール、ミオダロン(miodarone)、ソタロール、ドフェチリド、イブチリド、エラパミル(erapamil)、ジルチアゼム、アミオダロン、ブレチリウム、ベラパミル、ジルチアゼム、アデノシンまたはジゴキシンである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記抗不整脈剤がキニジンである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、従来のワルファリン治療に比べて心血管系死亡のリスクを低減するための方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートを150mgよりも多く300mg以下の投与量で1日2回投与することを含む方法。
【請求項72】
それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、従来のワルファリン治療に比べて血管死のリスクを低減するための方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートを150mgよりも多く300mg以下の投与量で1日2回投与することを含む方法。
【請求項73】
それを必要とする患者における血栓症を予防または治療し、従来のワルファリン治療に比べて総死亡のリスクを低減するための方法であって、医薬として許容できるその塩の形態であってもよいダビガトランエテキシレートを150mgよりも多く300mg以下の投与量で1日2回投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−510074(P2013−510074A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535126(P2011−535126)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064875
【国際公開番号】WO2010/055023
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】